説明

難燃性ポリアミド樹脂組成物及び製造方法

【課題】従来の難燃性ポリアミド樹脂組成物に比べ、高いグローワイヤー着火温度を有し、また高靭性、高い流動性並びに外観、またそれらのバランスに優れるポリアミド樹脂組成物とその製造方法を提供するものである。
【解決手段】メラミンシアヌレート(B)の含有量が11質量%以上20質量%以下である難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、融点が255度以上350度以下のポリアミド樹脂(I)と、融点が180度以上250度以下のポリアミド樹脂(A)に対しメラミンシアヌレート(B)とポリアルキレン多価アルコールまたはその脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1種の界面活性剤(C)からなるポリアミド樹脂複合物(II)を溶融混練することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IEC60695−2−13規格によるグローワイヤー着火温度で表される難燃性、靭性、成型性及び外観に優れる難燃性ポリアミド樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械的特性、電気特性、耐薬品性、成型加工性などに優れることを利用して自動車部品、電気・電子部品などの各種分野で使用されている。中でも、ハロゲンを含まない難燃剤であるメラミンシアヌレートを配合してなる難燃性ポリアミド樹脂は、コネクター等の電気・電子部品等のように難燃性を要求される分野で広く利用されている。コネクター用途では難燃性の他に靭性や流動性が高いことが要求されている。さらに近年では、コネクター用途において、より高い難燃性としてIEC60695−2−13規格によるグローワイヤー着火温度が、厚さ3mmの平板で775度以上であることが求められている。しかしながら、これまでのコネクター用途に用いられている難燃性ポリアミド樹脂では、これらの要求を満たしていないのが現状であった。
【0003】
従来から知られている難燃性ポリアミド樹脂組成物として、成型後の成型品の外観を向上させるため、メラミンシアヌレートを含むポリアミド樹脂組成物粒状体とポリアミド樹脂粒状体を混合したものを成形することで、シルバーの発生を抑制し外観を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら該技術ではメラミンシアヌレートを高濃度に配合しようとする際に分散不良を起こし、靭性の低下が見られた。また、ポリアミドとトリアジン系難燃剤とカルボン酸アマイド系ワックスを溶融混練することで、グローワイヤー着火温度を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、該技術でもメラミンシアヌレートが分散不良を起こし、靭性の低下が見られた。また、ポリアミド樹脂とメラミンシアヌレートを溶融混練してなるマスターバッチとポリアミド樹脂を混合することで靭性を向上させる技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら該技術ではシルバーの発生が抑えられず外観が低下することがわかった。
【特許文献1】特開平11−302536号公報
【特許文献2】特開2005−171232号公報
【特許文献3】特開平08−245875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、グローワイヤー着火温度で示される難燃性、靭性、成型性及び外観に優れたポリアミド樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記本発明課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂とメラミンシアヌレートと特定の界面活性剤を特定の配合比で配合したポリアミド樹脂複合物を溶融混練して得られる樹脂組成物によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)メラミンシアヌレート(B)の含有量が11質量%以上20質量%以下である難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、融点が255度以上350度以下のポリアミド樹脂(I)と、融点が180度以上250度以下のポリアミド樹脂(A)に対しメラミンシアヌレート(B)とポリアルキレン多価アルコールまたはその脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1種の界面活性剤(C)からなるポリアミド樹脂複合物(II)を溶融混練することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法、
(2)樹脂複合物(II)中のメラミンシアヌレート(B)の含有量が30質量%以上45質量%以下である上記(1)に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法、
(3)樹脂組成物中の界面活性剤(C)の含有量が0.25質量%以上2.0質量%以下である上記(1)または(2)に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法、
【0007】
(4)界面活性剤の含有量[C]とメラミンシアヌレートの含有量[B]の比([C]/[B])が0.025<[C]/[B]<0.1であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法、
(5)ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド6、ポリアミド6Iあるいはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6C、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6Iのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体から選ばれたものであることを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法、
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載の製造方法により製造される難燃性ポリアミド樹脂組成物、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、厚さが3mmの試験片でIEC60695−2−13規格によるグローワイヤー着火温度が775度以上と優れた難燃性を有し、高靭性、高い流動性並びに外観に優れるポリアミド樹脂組成物およびその製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明について、以下具体的に説明する。
本発明のポリアミド樹脂(I)は、主鎖中にアミド結合(-NHCO-)を有する重合体で融点が255度以上350度以下であるものが用いられる。特に、融点が255度以上300度以下であることが好ましく、255度以上280度以下だと更に好ましい。融点は示差走査熱量(DSC)測定で求めることができる。具体的には、示差熱量測定装置を用いて試料を室温から20度/分の昇温条件下で測定し、吸熱ピーク温度(Tm1)を観測した後、Tm1より20〜50度高い温度で3分間保持する。次いで20度/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20度/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を融点とする。融点が255度以上のポリアミド樹脂を用いると、高い熱時剛性を有するポリアミド樹脂組成物となり、350度以下のポリアミド樹脂を用いるとメラミンシアヌレートの分解が抑えられるとともに良好な加工性を有するポリアミド樹脂組成物となる。
【0010】
ポリアミド樹脂(I)として好適なポリアミドは、例えばポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)およびこれらのうち少なくとも2種類の異なったポリアミド形成成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などのうち、上記の融点の範囲を満たすものが挙げられる。中でも本発明の課題を達成するための好ましいポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6C、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド12T及びこれらのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体あるいはこれらの混合物などである。さらに好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6C、ポリアミド6I及びこれらのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体あるいはこれらの混合物などである。
【0011】
本発明のポリアミド樹脂複合物(II)は、融点が180度以上250度以下のポリアミド樹脂(A)、メラミンシアヌレート(B)及び界面活性剤(C)を溶融混練して得たものである。
当該複合物(II)に用いられるポリアミド樹脂(A)は、主鎖中にアミド結合(-NHCO-)を有する重合体で融点が180度以上250度以下であるものが用いられる。特に融点が210度以上250度以下であることが好ましく、230度以上250度以下であると更に好ましい。融点が180度以上250度以下のポリアミド樹脂を用いると、加工時のメラミンシアヌレートの分解が著しく抑えられ、また組成物の熱時剛性と流動性のバランスに優れたポリアミド樹脂組成物となる。
【0012】
ポリアミド樹脂(A)として好適なポリアミドは、例えばポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド6C、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6I、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド12T、ポリアミドMXD6およびこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分を含むポリアミド共重合体、およびこれらの混合物などのうち融点が上記の温度範囲を満たすものが挙げられる。中でも本発明の課題を達成するための好ましいポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド6Iあるいはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6C、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6Iのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体あるいはこれらの混合物などである。更に好ましくは、ポリアミド6あるいはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6Iのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体である。
【0013】
当該複合物(II)に用いられるメラミンシアヌレート(B)は、メラミンとシアヌル酸との等モル反応物であり、例えば90〜100度程度の水中下で、メラミンとシアヌル酸の水溶液とを撹拌し、反応生成として得られた沈殿物を濾過乾燥後、粉砕して微粉末とした物であって、この様なメラミンシアヌレートは市販されており、工業的に入手可能な物を使用することができる。
【0014】
当該複合物(II)に用いられる界面活性剤(C)は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類やこれらグリコールと、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、エルカ酸等の脂肪族カルボン酸とのエステル誘導体が挙げられるが、工業的に入手が容易である。特に作用効果が高い物としてはポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどが好適に用いられる。
【0015】
難燃性ポリアミド樹脂複合物(II)中のメラミンシアヌレート(B)、及び界面活性剤(C)の含有量については特に制約はないが、当該複合物(II)中のメラミンシアヌレート(B)の含有量は30質量%以上45質量%以下であることが好ましく、35質量%以上45質量%以下が更に好ましい。メラミンシアヌレートが30質量%以上45質量%以下であると、熱時剛性と引張特性の観点から好ましい。
一方、当該複合物(II)中の界面活性剤(C)の含有量は、加工性のバランスの観点から、0.75質量%以上4.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以上4.0質量%以下が機械的物性と難燃性のバランスの観点から更に好ましい。
【0016】
本発明のポリアミド樹脂複合物(II)を得る方法としては、ポリアミド形成モノマー中にメラミンシアヌレート(B)と界面活性剤(C)を配合し、縮重合した後ストランド状にして冷却し切断して造粒する方法や、押出機等でポリアミド樹脂(A)にメラミンシアヌレート(B)と界面活性剤(C)を溶融混練し、ストランド状となし冷却し切断して造粒する方法を挙げることができる。溶融混練を行う装置としては、一般に実用化されている混練機が適用できる。例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール等を用いればよい。溶融混練の順序には特に制限は無く、全成分を同時に混練する方法、又は任意の2成分をあらかじめ混練し、得られたものと残りの1成分を混練する方法、更に押出し機の途中から逐次各成分をフィードし混練する方法などを用いてもよい。溶融混練によって当該複合物を得る場合、混練の温度はポリアミド樹脂(A)の融点以上であって270度未満が加工性およびメラミンシアヌレート(B)の分解を著しく抑制できることから好ましく、更に好ましくはポリアミド樹脂(A)の融点より5度以上高い温度であって260度以下である。又、難燃性ポリアミド樹脂複合物(II)にはポリアミド樹脂に常用の滑剤、成型性改良剤が含有されていても良い。
【0017】
ポリアミド樹脂(I)と難燃性ポリアミド樹脂複合物(II)の混合割合は、難燃性ポリアミド樹脂組成物中にメラミンシアヌレート(B)が11質量%以上20質量%以下含有できるように混合すればよい。機械的物性と難燃性の観点から好ましくは12質量%以上18質量%以下であり、更に好ましくは13質量%以上17質量%である。
樹脂組成物中の界面活性剤(C)の含有量については特に限定されないが、機械的物性と難燃性のバランスの観点から樹脂組成物中に0.25質量%以上2.0質量%以下となるように混合することが好ましく、0.5質量%以上1.0質量%以下が更に好ましい。また、本発明の効果をより発現するために、組成物中の界面活性剤の含有量[C]とメラミンシアヌレートの含有量[B]の比([C]/[B])が0.025<[C]/[B]<0.1であることが機械物性と加工性、難燃性の面から好ましく、0.03<[C]/[B]<0.07であると更に好ましい。
【0018】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(I)と難燃性ポリアミド樹脂複合物(II)を溶融混練することにより製造される。溶融混練を行う装置としては、一般に実用化されている混練機が適用できる。例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール等を用いればよい。溶融混練の順序には特に制限は無く、2成分を同時に混練する方法、又は押出し機の途中から逐次各成分をフィードし混練する方法などを用いてもよい。混練の温度は、生産性と熱劣化の抑制の観点から、ポリアミド樹脂(I)の融点あるいは軟化点より5〜60度高い温度が好ましく、5〜50度がより好ましく、5〜30度が最も好ましい。
【0019】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で慣用的に用いられる充填剤、例えばガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維、マイカ、タルク、粘土鉱物、アルミナ、シリカ、アパタイトなどの無機充填剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、すず酸亜鉛、ヒドロキシすず酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、サクシノグアナミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、フタル酸メラミン、リン酸アルミニウム等の難燃剤、チタンホワイト、カーボンブラック等の顔料や着色剤、次亜リン酸ソーダ等の亜リン酸金属塩、ヒンダードフェノールやヒンダードアミンに代表される熱安定剤、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等の滑剤、種々の可塑剤、帯電防止剤等の各種添加剤を加えることができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において記載した物性評価は、以下のように行った。
(1) 融点
パーキンエルマー社製示差熱量測定装置DSC−7を用いた。昇温、降温条件は±20℃/分で行った。試料約10mgを室温から昇温させ、吸熱ピーク温度(Tm1)を観測した後、Tm1より20〜50℃高い温度で3分間保持した。次いで室温まで試料を冷却した後に、再度昇温させて吸熱ピークを観測した。そのピークトップが示した温度を融点とした。
【0021】
(2)グローワイヤー着火温度
射出成型機(日精樹脂(株)製FN3000)を用いて、シリンダー温度270度、金型温度80度に設定し、射出12秒、冷却12秒の射出成型条件で9.0mm×6.0mm×3.0mmの試験片を得た。この試験片の着火温度をIEC60695−2−13規格(2000年版)に準拠して測定した。着火温度が775度以上のものを775度と記載し、725度で着火するものを725度、750度で着火するものを750度と記載した。
【0022】
(3) 引張強度及び引張伸度、外観
射出成型機(日精樹脂(株)製PS−40E)を用いて、シリンダー温度270度、金型温度80度に設定し、射出12秒、冷却12秒の射出成型条件で3mm厚みのASTM1号試験片を得たのち、ASTM D638に準じて引張強度及び引張伸度の測定を行った。あわせて外観検査として試験片表面のシルバー発生の有無を目視観察し、発生が無い場合は○、発生が認められる場合は×とした。
【0023】
[難燃性ポリアミド樹脂複合物(II−1)の製造例]
(A)ポリアミド66/6コポリマー(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ9200:融点245度)と(B)メラミンシアヌレート粉末(三菱化学工業株式会社製MCA―C0)と界面活性剤(C)としてポリエチレングリコールモノラウレート(花王株式会社製・エマノーン1112)とを別々に供給出来る重量フィーダーおよび液体供給ポンプを用いてメラミンシアヌレートの含有量が40質量%、界面活性剤の含有量が1.5質量%になるように配合して二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=47.6(D=37mmφ))を用いて溶融混練をシリンダー温度255度、押出レート30Kg/hr(滞留時間2分)で、減圧せずに押出しを行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷、カッティングを行い、ペレットとし、難燃性ポリアミド樹脂複合物(II−1)を得た。
【0024】
[実施例1]
(I)ポリアミド66(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ1300:融点262度)60質量%と難燃性ポリアミド樹脂複合物(II−1)40質量%をブレンドし、2軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=47.6(D=37mmφ))を用いて溶融混練をシリンダー温度270度、押出レート30Kg/hr(滞留時間2分)で、減圧せずに押出しを行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷、カッティングを行い、ペレットとした。得られた樹脂組成物を成型材料として評価を行った結果を表1に示す。
【0025】
[実施例2]
(I)ポリアミド66(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ1300:融点262度)65質量%と難燃性ポリアミド樹脂複合物(II−1)35質量%をブレンドした。以降の操作は実施例1と同様にしてペレットとした。得られた樹脂組成物を成型材料として評価を行った結果を表1に示す。
【0026】
[比較例1]
(I)ポリアミド66(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ1300:融点262度)75質量%と難燃性ポリアミド樹脂複合物(II−1)25質量%をブレンドした。以降の操作は実施例1と同様にしてペレットとした。得られた樹脂組成物を成型材料として評価を行った結果を表1に示す。得られた樹脂組成物は難燃性が低く、グローワイヤー着火温度が775度を満たさず、本発明の目的を達成できなかった。
【0027】
[比較例2]
(I)ポリアミド66(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ1300:融点262度)40質量%と難燃性ポリアミド樹脂複合物(II−1)60質量%をブレンドした。以降の操作は実施例1と同様にしてペレットとした。得られた樹脂組成物の評価結果を表1に示す。得られた樹脂組成物は引張伸度が低く、本発明の目的を達成できなかった。
【0028】
[比較例3]
(I)ポリアミド66(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ1300:融点262度)60質量%と難燃性ポリアミド樹脂複合物(II−1)40質量%をブレンドしたのち、2軸押出機での溶融混練を行わずに成型材料として評価を行った結果を表1に示す。得られた樹脂組成物はグローワイヤー着火温度が775度を満たさず、本発明の目的を達成できなかった。
【0029】
[比較例4]
ポリアミド66(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ1300:融点262度)とメラミンシアヌレート粉末(三菱化学工業株式会社製MCA―C0)と界面活性剤としてポリエチレングリコールモノラウレート(花王株式会社製・エマノーン1112)とを別々に供給出来る重量フィーダーおよび液体供給ポンプを用いてメラミンシアヌレートの含有量が16質量%、界面活性剤の含有量が0.6質量%になるように配合して二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=47.6(D=37mmφ))を用いて溶融混錬をシリンダー温度270度、押出レート30Kg/hr(滞留時間2分)で、減圧せずに押出しを行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷、カッティングを行い、ペレットを得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表1に示す。得られた樹脂組成物は特に外観が悪く、本発明の目的を達成できなかった。
【0030】
[比較例5]
ポリアミド66(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ1300:融点262度)とポリアミド66/6コポリマー(旭化成ケミカルズ(株)製レオナ9200:融点245度)とメラミンシアヌレート粉末(三菱化学工業株式会社製MCA―C0)と界面活性剤としてポリエチレングリコールモノラウレート(花王株式会社製・エマノーン1112)とを別々に供給出来る重量フィーダーおよび液体供給ポンプを用いて、ポリアミド66/6コポリマーの含有量が23.4質量%、メラミンシアヌレートの含有量が16質量%、界面活性剤の含有量が0.6質量%になるように配合して二軸押出機(東芝機械(株)製TEM35、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=47.6(D=37mmφ))を用いて溶融混錬をシリンダー温度270度、押出レート30Kg/hr(滞留時間2分)で、減圧せずに押出しを行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷、カッティングを行い、ペレットを得た。得られた樹脂組成物の評価結果を表1に示す。得られた樹脂組成物はグローワイヤー着火温度が775度を満たさないと共に引張伸度が低く、本発明の目的を達成できなかった。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、高い難燃性や高靭性、高い流動性並びに外観に優れている為、様々な機械工業部品や電気電子部品、特にコネクタ等の産業用材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミンシアヌレート(B)の含有量が11質量%以上20質量%以下である難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、融点が255度以上350度以下のポリアミド樹脂(I)と、融点が180度以上250度以下のポリアミド樹脂(A)に対しメラミンシアヌレート(B)とポリアルキレン多価アルコールまたはその脂肪酸エステルから選ばれた少なくとも1種の界面活性剤(C)からなるポリアミド樹脂複合物(II)を溶融混練することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
樹脂複合物(II)中のメラミンシアヌレート(B)の含有量が30質量%以上45質量%以下である請求項1に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
樹脂組成物中の界面活性剤(C)の含有量が0.25質量%以上2.0質量%以下である請求項1または2に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
界面活性剤の含有量[C]とメラミンシアヌレートの含有量[B]の比([C]/[B])が0.025<[C]/[B]<0.1であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド6、ポリアミド6Iあるいはポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6C、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6Iのうち少なくとも2種類の異なるポリアミド成分を含むポリアミド共重合体から選ばれたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の製造方法により製造される難燃性ポリアミド樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−7614(P2008−7614A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179003(P2006−179003)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】