説明

難燃性ポリエステルフィルム

【課題】薄膜であってもUL94VTM試験における薄手材料垂直燃焼試験に合格する優れた難燃性を備える難燃性ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】特定のホスフィンオキシド化合物を共重合成分として5〜25モル%有する共重合ポリエチレンテレフタレートを含む難燃性ポリエステルフィルムであって、フィルム中のリン原子濃度が0.7〜3.0重量%、フィルム厚みが5〜40μm、かつ200℃で10分熱処理したときの縦方向および横方向の熱収縮率がいずれも5〜15%である難燃性ポリエステルフィルムによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性を有するポリエステルフィルムに関するものである。さらに詳しくは、難燃性に優れるとともに、薄膜でありながらUL94VTM試験に合格することができる難燃性ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、磁気テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネート用フィルムおよび保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
近年、製造物責任法の施行に伴い、火災に対する安全性を確保するために樹脂の難燃化が強く要望されている。
【0003】
従来用いられている有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物等のハロゲン系難燃剤は、難燃効果は高いものの、成形・加工時にハロゲンが遊離し、腐食性のハロゲン化水素ガスを発生して、成形・加工機器を腐食させる可能性、また作業環境を悪化させる可能性が指摘されている。また前記難燃剤は、火災などの燃焼に際してハロゲン化水素等のガスを発生する可能性が指摘されている。そのため、近年ハロゲン系難燃剤に替わり、ハロゲンを含まない難燃剤を用いることが強く要望されている。
【0004】
ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法の1つとして種々のリン系化合物が検討されており、ポリエステルと共重合可能なリン系化合物として、例えばカルボン酸を両末端に有するホスフィンオキサイド化合物(特許文献1、2)や水酸基を両末端に有するホスフィンオキサイド化合物(特許文献2)が種々提案され、かかる共重合ポリエステルからなるポリエステルフィルムの難燃性は改善されることが記載されている。
しかしながら、上記の共重合ポリエステルからなるポリエステルフィルムであっても、フィルムの厚みが薄くなるとUL94VTM試験における接炎によりVTM不合格になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−272734号公報
【特許文献2】特開平10−25338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解消し、薄膜であってもUL94VTM試験における薄手材料垂直燃焼試験に合格する優れた難燃性を備える難燃性ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ホスフィンオキサイド化合物を共重合したポリエステルは難燃性が向上するものの、薄膜としたフィルムの状態では、UL94VTM試験中において、接炎時に接炎部分のみが上に向かって溶融して標線まで達するためにVTM不合格となることを知見し、さらに検討を重ねた結果、この現象はフィルムの200℃における熱収縮率を特定することにより抑制でき、薄膜フィルムであってもUL94VTM試験に合格できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、「ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として、下記式(1)で表わされるホスフィンオキシド化合物を共重合成分として5モル%以上25モル%以下の範囲で有する共重合ポリエチレンタレフタレートを含む難燃性ポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルム中のリン原子濃度がポリエステルフィルムの重量を基準として0.7重量%以上3.0重量%以下であり、フィルム厚みが5μm以上40μm以下であり、かつ200℃、10分熱処理したときの縦方向および横方向の熱収縮率がいずれも5%以上15%以下であることを特徴とする難燃性ポリエステルフィルム」により達成される。
【0009】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜12の1価の飽和炭化水素基または1価の芳香族炭化水素基のいずれか1つを表わし、m、nはそれぞれ1〜6の整数を表わす)
【0010】
また、本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、その好ましい態様として、フラットケーブルの基板として用いられることを具備するものを包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、薄膜フィルムでありながらUL94VTM試験に合格する優れた難燃性を備えることから、難燃性と共にフィルムの薄膜化が求められる種々の用途、例えばフラットケーブルなどの電線用途、リチウムイオン電池などのラベルや絶縁部材といった蓄電池用途などに好適に用いることができ、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
<ポリエステル>
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として下記式(1)で表わされるホスフィンオキシド化合物(以下リン含有共重合成分と称することがある)を共重合成分として5モル%以上25モル%以下の範囲で有する共重合ポリエチレンテレフタレートを含む。
【0013】
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜12の1価の飽和炭化水素基または1価の芳香族炭化水素基のいずれか1つを表わし、m、nはそれぞれ1〜6の整数を表わす)
【0014】
式(1)で表されるジオールタイプのホスフィンオキシド化合物を共重合成分として有することにより、難燃性だけでなく、耐加水分解性や耐熱耐久性が向上する。
は、なかでも炭素数1〜6の飽和炭化水素基またはフェニル基が好ましく、かかるホスフィンオキシド化合物を共重合成分として有する共重合ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、得られるフィルムの機械的特性や耐熱性が向上する。さらにm、nで表わされるメチレン鎖数は、それぞれ好ましくは1〜4であり、さらに好ましくは2〜3である。
【0015】
また、共重合ポリエチレンテレフタレートにおける上記リン含有共重合成分の含有量は、ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として5モル%以上25モル%以下の範囲であり、その下限値は好ましくは6モル%であり、上限値は好ましくは20モル%、さらに好ましくは15モル%、特に好ましくは10モル%である。
該リン含有共重合単位の含有量が下限値に満たない場合には、本発明の目的とする難燃性を得ることができなくなり、一方、上限値を超える場合には、ポリエステルフィルムとしての十分な機械的特性や耐熱性を得ることができなくなる。
【0016】
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、さらにポリエステルフィルム中のリン原子濃度が、ポリエステルフィルムの重量を基準として0.7重量%以上3.0重量%以下であることが、本発明の目的とする難燃性を得るために必要である。かかるリン原子濃度の下限値は、より好ましくは0.8重量%、さらに好ましくは0.9重量%であり、一方上限値は、より好ましくは2.5重量%、さらに好ましくは2.2重量%、特に好ましくは2.0重量%である。
【0017】
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の50モル%以上を占めていればよく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは85モル%以上である。
【0018】
本発明の共重合ポリエチレンテレフタレートは、上記リン含有共重合成分以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で他の共重合成分を含むことができる。好ましく用いられる共重合成分としては、具体的には、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸成分、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸成分、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分などを、またジオール成分としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの脂肪族ジオール成分、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールなどの脂環族ジオール成分、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール成分、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのエーテル縮合型ジオール成分などを挙げることができる。また、前述の好ましいジカルボン酸およびジオール成分以外の成分として、p−ヒドロキシ安息香酸、ω−ヒドロキシ酪酸、ω−ヒドロキシ吉草酸、乳酸などのヒドロキシカルボン酸成分、ポリカーボネートに見られるような炭酸成分、さらに、トリメリット酸、ピロメリット酸やグリセリンなどの3官能以上の成分が挙げられる。
【0019】
上記の共重合ポリエチレンテレフタレートは、従来公知の方法、例えばジカルボン酸とグリコールの反応で直接低重合度ポリエステルを得た後、または、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを従来公知のエステル交換触媒である、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を用いて反応させた後、重縮合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重縮合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を用いることができる。
【0020】
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(o−クロロフェノールを溶媒として25℃で測定)は、フィルムの製膜性と得られるフィルムの耐熱性や機械的特性の観点から、0.50dl/g以上1.5dl/g以下であることが好ましく、さらに0.55dl/g以上1.2dl/g以下であることが好ましい。
【0021】
さらに、共重合ポリエチレンテレフタレートがフィルムの主成分であって、得られるフィルムの特性が本発明の範囲を超えない限り、他の樹脂を混合してもよい。ここで「共重合ポリエチレンテレフタレートがフィルムの主成分である」とは、例えば混合物が海島構造をとった場合には連続した「海」領域を構成する樹脂が共重合ポリエステル樹脂である状態を指し、より好ましくはフィルム重量を基準として共重合ポリエチレンテレフタレートの含有量が50重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
その他、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば紫外線吸収剤、安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、滑剤などを含有させてもよい。
【0022】
<フィルムの物性>
(厚み)
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、フィルム厚みが5μm以上40μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下である。フィルム厚みが5μm未満の場合には、後述する熱収縮率を満足させても十分な難燃性を得ることが難しい。一方、40μmを超える場合には、後述する熱収縮率の範囲未満であっても、十分な難燃性を得ることができる。
【0023】
(熱収縮特性)
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、200℃、10分熱処理したときの縦方向および横方向の熱収縮率がいずれも5%以上15%以下であること、好ましくは6%以上12%以下、さらに好ましくは7%以上10%以下であることが肝要である。熱収縮率がこの範囲にあることにより、フィルム厚みが上記範囲にあっても、接炎時にサンプル下端が収縮するため、接炎部分のみが上に向かって溶けて行きVTM不合格となることがない。
熱収縮率が5%未満の場合には、薄膜フィルムでは接炎時に接炎部が上に向かって溶けていくためVTM不合格となる。一方、15%を超える場合には、耐熱寸法安定性が不十分である。
【0024】
<フィルムの製造方法>
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、例えば次の方法で製造することができる。すなわち、前述の共重合ポリエチレンテレフタレートを押出機に供給して溶融押出し、固化成形したシートを二方向に延伸する。
フィルム製膜方法は、公知の製膜方法を用いて製造することができ、例えば共重合ポリエチレンテレフタレートを十分に乾燥させた後、該共重合ポリエチレンテレフタレートの融点であるTm〜(Tm+70)℃、好ましくは(Tm+10)〜(Tm+60)℃の温度で押出機内で溶融し、Tダイなどのスリットダイを通じて未延伸フィルムとする。その際、得られるフィルムの固有粘度低下を少なくするためには、押出温度を上記範囲内で極力低くすることが好ましい。
【0025】
次いで該未延伸フィルムを逐次または同時二軸延伸し、熱固定する。例えば逐次二軸延伸により製膜する場合、未延伸フィルムを共重合ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度(以下Tgと称することがある)以上(Tg+80)℃以下の温度範囲で、縦方向(フィルム連続製膜方向、フィルム長手方向、MD方向と称することがある)および横方向(フィルム幅方向、MD方向と称することがある)に延伸することが好ましい。延伸温度のより好ましい範囲は(Tg+20)〜(Tg+60)℃である。
【0026】
またフィルムの延伸倍率については、該未延伸フィルムを縦方向に2.5〜5.5倍および横方向に2.5〜6.0倍となる範囲で延伸処理を行う。延伸倍率の好ましい値は、縦方向に3.0〜4.5倍、横方向に3.5〜5.0倍である。かかる範囲の延伸倍率で延伸を行うことにより、得られる延伸フィルムの分子配向を適正なものとすることができ、ポリエステルフィルムとして十分な機械特性が得られる。延伸倍率が下限値に満たない場合は、これらの特性を十分なものとすることが困難な可能性があり、一方、延伸倍率値が上限を超える場合は、延伸工程中に破断が生じるため生産性が劣る。
延伸後の熱固定処理は、上記の延伸条件に応じて、熱固定処理温度を(Tm−35)〜(Tm−15)℃の範囲、好ましくは(Tm−30)〜(Tm−20)℃の範囲として、熱収縮率前記の範囲となるように調節することが肝要である。また、さらに熱収縮率を最適化するために、この熱固定処理に加えてフィルムの弛緩処理や、さらなる延伸処理などの処理を施してもよい。
【0027】
<用途>
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、難燃性が求められる種々の用途に用いることができる。例えばフラットケーブルなどの電線用途、リチウムイオン電池などのラベルや絶縁部材といった蓄電池用途、などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0029】
(1)ポリエステル成分量
H−NMR測定、13C−NMR測定、よりポリエステルの成分および共重合成分及び各成分量を特定した。
【0030】
(2)リン原子濃度
得られたフィルムのリン原子濃度を蛍光X線の発光強度より算出した。
【0031】
(3)熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに200℃のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、下記式にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=((熱処理前標点間距離−熱処理後標点間距離)/熱処理前標点間距離)×100
【0032】
(4)燃焼性
フィルムサンプルをUL−94VTM法に準拠して評価した。サンプルを20cm×5cmにカットし、23±2℃、50±5%RH中で48時間放置し、その後、試料下端をバーナーから10mm上方に離し垂直に保持した。該試料の下端を内径9.5mm、炎長20mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、3秒間接炎を2回行った。VTM−0、VTM−1、VTM−2、不合格の評価基準に沿って難燃性を評価し、n=5の測定回数のうち、同じランクになった数の最も多いランクとした。
【0033】
(5)フィルム厚み
フィルムサンプルをスピンドル検出器(安立電気(株)製K107C)にはさみ、デジタル差動電子マイクロメーター(安立電気(株)製K351)にて、異なる位置で厚みを10点測定し、平均値を求めフィルム厚みとした。
【0034】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチルエステル100重量部、エチレングリコール60重量部を、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03重量部を使用して、常法に従ってエステル交換反応させた後、エチレングリコールに分散させた平均粒径1.5μmの多孔質シリカ粒子0.06重量%(フィルムの重量基準)を添加した。ついで、下記式(2)で表わされる、ビス(3−ヒドロキシトリメチレン)n−ブチルホスフィンオキシド13重量部を添加し、トリメット酸チタン0.08重量部を添加して、引き続き高温高真空下で常法にて重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/gのポリエステルを得た。ポリエステル中のリン原子濃度は、表1に示すとおりであった。
【0035】
【化3】

【0036】
得られたポリエステルを170℃ドライヤーで3時間乾燥後、押出機に投入し、270℃で溶融混練し、270℃のダイスよりシート状に成形した。この溶融物を、表面温度20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出して、厚み360μmの未延伸フィルムを製膜した。次に、得られた未延伸フィルムを75℃に予熱し、低速ローラーと高速ローラーの間で15mm上方より800℃の表面温度の赤外線ヒーター1本にて加熱しながら製膜方向(MD方向)に3.6倍延伸し、さらに、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で製膜方向に垂直な方向(TD方向)に4.0倍延伸し、さらに横方向に固定したまま全幅の4%の弛緩(トーイン)を与えながら215℃で熱処理し、厚み25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0037】
[実施例2]
添加するホスフィンオキシド化合物を下記式(3)であらわされるものとした以外は、実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0038】
【化4】

【0039】
[実施例3]
添加するホスフィンオキシド化合物の量を変更し、ポリエステル中のリン濃度を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0040】
[実施例4]
フィルム厚みを15μmとした以外は、実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0041】
[実施例5]
熱固定温度を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
添加するホスフィンオキシド化合物の量を変更し、ポリエステル中のリン濃度を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。十分な難燃性が得られなかった。
【0043】
[比較例2]
熱固定温度を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法によって二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。VTM試験時に接炎部分のみが溶けて標線まで達したため不合格となった。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、単体の薄膜フィルムであってもVTM試験に合格するような難燃性を有していることから、難燃性が求められる種々の用途、例えばフラットケーブルなどの電線用途、リチウムイオン電池などのラベルや絶縁部材といった蓄電池用途などに好適に用いることができ、その工業的価値は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として、下記式(1)で表わされるホスフィンオキシド化合物を共重合成分として5モル%以上25モル%以下の範囲で有する共重合ポリエチレンタレフタレートを含む難燃性ポリエステルフィルムであって、該ポリエステルフィルム中のリン原子濃度がポリエステルフィルムの重量を基準として0.7重量%以上3.0重量%以下であり、フィルム厚みが5μm以上40μm以下であり、かつ200℃、10分熱処理したときの縦方向および横方向の熱収縮率がいずれも5%以上15%以下であることを特徴とする難燃性ポリエステルフィルム。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜12の1価の飽和炭化水素基または1価の芳香族炭化水素基のいずれか1つを表わし、m、nはそれぞれ1〜6の整数を表わす)
【請求項2】
フラットケーブルの基板として用いられる請求項1に記載の難燃性ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−112778(P2013−112778A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261961(P2011−261961)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】