説明

難燃性ポリエステル繊維

【課題】耐摩耗性に非常に優れるとともに、加工時の製網性、製織性および製品品位が良好なポリエステル繊維を供給する。
【解決手段】ポリマ分子中に2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルからなり単糸断面が円形であるポリエステル繊維であって、下記(1)〜(4)を満たすことを特徴とする難燃性ポリエステル繊維。
(1)総繊度 :400〜2000 dtex
(2)単糸繊度:10〜30 dtex
(3)交絡度(CF値):15〜50
(4)交絡度(CF値)のバラつき(σ):1〜10

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築資材用のネットやメッシュ等に使用される難燃ポリエステル繊維に関する。詳しくは単糸繊度が太いため耐摩耗性に非常に優れるとともに、バラつきが少なく均等に高い交絡がかかっているため、加工時の製網性・製織性および製品品位が良好な難燃ポリエステル繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル繊維はその優れた機械的性質・寸法安定性・耐久性から産業用途にも幅広く利用されている。この高い特性を生かす用途の一つとして、安全ネット・建築工事用メッシュなどの建築資材がある。
【0003】
このような建築資材は、防風、落石防止等多岐にわたって使用されているが、近年特に建設業界において作業の安全性および周囲の安全性を確保するために、仮設工業会において安全ネットの具備すべき諸特性の規制が厳しくなってきている。例えば、安全ネットは火災に繋がらないよう難燃性能を具備していること、人や物の落下衝撃力に耐えること、建設現場において建築物、建築資材等との摩擦による製品の削れが起こりにくい耐摩耗性を有することが求められている。このうち耐摩耗性の向上は、安全ネット等を長く使用するために特に重要な項目である。また、一方で安全ネット、メッシュ等の製造コストを下げるため製網、製織工程のスピードアップ、装置の大型化が進められつつあるなか、製網性、製織性を維持するべく工程通過性のよい合成繊維の要求はますます高まりつつある。これまでに建築資材用のポリエステル繊維に関する技術として種々の提案がなされている。
【0004】
特許文献1はポリエステル繊維に2官能性リン化合物を含有させることで、強度、風合を維持した難燃性ポリエステル繊維について記載されているが、単糸繊度が5.6dtex程度と小さすぎて耐摩耗性が不十分であるという問題があった。
【0005】
特許文献2では、合成繊維の繊度、単糸繊度、強伸度等を規定し、編地の強力・寸法安定性等の特性を向上させる技術が記載されている。このうち単糸繊度については6dtex以上と規定されている。通常、単糸繊度を太くすると製織性の悪化を伴うことが多いが、特許文献2では製織性改善のための施策は記載されておらず、製織性悪化、製品品位悪化の懸念が残るものであった。また、実際に具体的に例示されている単糸繊度8.7dtexからなるネットの場合、近年要求される高い耐摩耗性を得るには不十分であった。
【0006】
一方、シートベルトに関する技術として特許文献3がある。この文献では単糸繊度を17dtex程度にまで大きくすることで、耐摩耗性の向上を図っている。また、原糸に5〜15cm間隔で交絡を付与することで、製織時のガイドへの引っ掛かり等のトラブルを回避している。確かにニードル織機を使用し、シートベルト用ウエビングを作製するには、この程度の交絡を付与することで製織性の向上が図れるが、高速回転するレピア織機等を用いて幅広の建築資材用のシート類を作製するには、製織性不良、品位不良を引き起こすことがあった。
【0007】
建築資材用ネットの製網性改善を図る技術として特許文献4がある。この文献には単糸断面を中空形状としたポリエステル繊維を用い、高い交絡を付与することで製織性向上を図る技術が掲載されている。しかしながら、いくら交絡性を高めても製織時に起こるガイドへの引っ掛かりや解舒性不良を完全に解消することはできず、特に更なる生産性向上を狙い製織速度アップをした場合には、まだまだ改善の余地が残るものであった。また、特許文献4では単糸断面が中空形状であることから、耐摩耗性の点でも十分に満足できるものではなかった。
【特許文献1】特許第2641720号公報
【特許文献2】特開2001−207357号公報
【特許文献3】特開平3−40829号公報
【特許文献4】特開2002−212866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術におけるそれぞれの問題点を同時に解決したものであり、建築資材用のネットやメッシュに使用される上で重要となる以下の特性を具備する。すなわち、単糸が太いために優れた耐摩耗性を有する。さらに太い単糸においてもバラつきが少なく高い交絡が付与できていることで、製網性、製織性および製品品位が良好である。これらすべての特性を同時に満足する難燃性ポリエステル繊維を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は主として次の構成を有する。すなわち、ポリマ分子中に2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルからなり単糸断面が円形であるポリエステル繊維であって、下記(1)〜(4)を満たすことを特徴とする難燃性ポリエステル繊維。
(1)総繊度 :400〜2000 dtex
(2)単糸繊度:10〜30 dtex
(3)交絡度(CF値):15〜50
(4)交絡度(CF値)のバラつき(σ):1〜10
【0010】
さらに、本発明のポリエステル繊維においては、次の(a)〜(b)のいずれか1つまたはその組み合わせを満たすことが好ましい態様であり、これらの要件を満足することでさらに優れた効果が期待できる。
(a)2官能性リン化合物が、ポリエステル中にポリエステル全体の0.2〜1.5重量%共重合されていること。
(b)さらに顔料がポリエステル繊維中に0.1〜1.0重量%含有されていること。
【発明の効果】
【0011】
この難燃性ポリエステル繊維は以下に示す特徴が全て含まれているため、従来存在しえなかった建築資材用ネット・メッシュを高効率、高品質で得られる。すなわち、単糸断面が円形で単糸繊度が10〜30dtexと太いことでネット、メッシュに製織した時の耐摩耗性が非常に優れている。また、太い単糸繊度においても、交絡間隔のバラつきが小さく高交絡を付与できていることにより、加工時にガイドに引っかかったり、チーズからの解舒不良などの問題を生じることなく、安定した品位良好なネット・メッシュを製織することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0013】
本発明のネットやメッシュに用いるポリエステル繊維をなすポリマは特に限定されるものではないが、高強度、高タフネスの繊維を得るためにはポリエチレンテレフタレートが好適に用いられる。なお、上述のポリエチレンテレフタレートには、さらなる強度、寸法安定性、耐候性の向上を目的として、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニールカルボン酸等のジカルボン酸、およびプロピレングリコール、ブチレングルコール等のジオール成分やエチレンオキサイド等の成分が含まれていてもよい。
【0014】
本発明のポリエステル繊維に使用するポリエステルは難燃性を付与する目的でポリマ分子中には2官能性リン化合物が共重合されている。2官能性リン化合物としては、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシドが好ましく使用される。
【0015】
ホスホネート類としては、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル等が好ましく使用される。ホスフィネート類としては、(2−カルボキシルエチル)メチルホスフィン酸、(2−メトキシカルボニルエチル)メチルホスフィン酸メチル、(2−カルボキシルエチル)フェニルホスフィン酸、(2−メトキシカルボニルエチル)フェニルホスフィン酸メチル、(4−メトキシカルボニルフェニル)フェニルホスフィン酸メチル、[2−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]メチルホスフィン酸のエチレングリコールエステル等が好ましく使用される。ホスフィンオキシド類としては、(1,2−ジカルボキシエチル)ジメチルホスフィンオキシド、(2,3−ジカルボキシプロピル)ジメチルホスフィンオキシド、(1,2−ジメトキシカルボニルエチル)ジメチルホスフィンオキシド、(2,3−ジメトキシカルボニルエチル)ジメチルホスフィンオキシド、[1,2ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]ジメチルホスフィンオキシド、[2,3ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチル]ジメチルホスフィンオキシド等が好ましく使用される。
【0016】
これらの化合物の中でも、ホスフィンオキシド類がポリエステルとの共重合反応性がよいこと、および重合反応時の飛散が少ないことなどから好ましく使用される。
【0017】
さらにこのポリエステル繊維には、2官能性リン化合物が、ポリエステル中に0.2〜1.5重量%共重合されていることが好ましく、0.4〜1.2重量%共重合されていることがより好ましい。すなわちポリエステル中に2官能性リン化合物が0.2〜1.5重量%共重合されていると、ポリエステル繊維の強伸度を低下させることなく、難燃性を有した品位良好なポリエステル繊維を得ることができる。
【0018】
本発明のネットやメッシュに使用されるポリエステル繊維の単糸断面は円形である。すなわちポリエステル繊維の単糸断面を円形にすることにより、耐摩耗性が良好なネット、メッシュを得ることができる。ポリエステル繊維が異形断面糸であると、単糸断面が円形である原糸に比べて強伸度特性が劣る。さらに、単糸同士の接触面積が大きくなり、耐摩耗性が劣る。また、単糸断面が中空形状である場合も、強伸度特性、耐摩耗性が劣るので好ましくない。
【0019】
本発明のネットやメッシュに使用されるポリエステル繊維の総繊度は400〜2000dtexである。すなわちポリエステル繊維の繊度を400〜2000dtexにすることにより、品位良好なネットやメッシュを得ることができる。総繊度が400未満であると、同じ目付けのネットやメッシュを製織するのに必要なポリエステル繊維の本数が多くなるため、製織にかかる手間が増すばかりか、品位面でも悪化する可能性が高くなる。また、同じ本数のポリエステル繊維を製織した場合には、得られる製品の強力は低く、建築資材用途として適さない。また、総繊度が2000dtexを超える場合、取り扱いが難しくなり、良好な品位のメッシュやネットを得ることができない。
【0020】
本発明のネットやメッシュに使用されるポリエステル繊維の単糸繊度は10〜30dtexである。すなわち単糸繊度10〜30dtexにすることにより高強度、高耐摩耗性を兼ね備えた繊維となり、該繊維を用いたネットやメッシュは従来品よりも耐久性が高くなる。ここでポリエステル繊維の単糸繊度が10dtex未満であると、製織されたネットやメッシュが建築物、建築資材との摩擦により劣化しやすく、十分な耐摩耗性が得られない。また、30dtexより単糸繊度が太いと、高強度なポリエステル繊維が得られにくく、メッシュやネットの強力も低下してしまう。
【0021】
本発明の建築資材用のネットやメッシュに使用する難燃性ポリエステル繊維は、単糸繊度が10〜30dtexと太いにも関わらず、交絡が高く、均一にかかっているという特徴を有する。すなわち、交絡度(CF値)は15〜50であり、より好ましくは20〜50である。また、交絡の均一性を示すバラつき(σ)は1〜10である。交絡度およびそのバラつきをかかる範囲とすることで、これまで問題のあった製網性・製織性が飛躍的に改善し、単糸太繊度糸を使用した場合であっても、品位良好なネットやメッシュが高収率で得られるようになったのである。CF値が15未満であったり、CF値(σ)が10を越えてしまうと、製網・製織工程においてガイドに引っかかったり、製品チーズからの解舒不良を誘発してしまい、高品位のネット・メッシュ製品を高収率で得ることができなくなる。製網性・製織性向上のためにはCF値は高いほどよく、CF値(σ)は低いほどよいが、現時点での技術レベルでは、それぞれ50程度、1程度が限界である。
【0022】
単糸太繊度糸に高く、均一な交絡を付与するには、ポリエステル繊維を製造する工程において、巻き取り直前で交絡付与装置を用い、圧空を吹き付けることによって達成できる。この際、交絡付与装置内での糸条処理領域を大きくして、該領域全体での圧空流速をできる限り均一に保つことが重要である。従来は糸条処理領域の一部分、すなわち通過する糸条の中心部分の圧空流速を高めて交絡処理を行っており、交絡処理装置内での糸条処理領域が小さいため、処理領域全体での圧空流速バランスが悪かった。そのため、特に単糸太繊度糸に高交絡を付与しようとした場合、高い交絡度が得られなかったり、交絡バラつきが大きくなったりしていた。なお、従来の方法の場合、交絡処理装置の糸条処理領域の大きさは、交絡処理装置の孔径をD、ポリエステル繊維の糸径をdとした場合、D/dが5〜8程度であった。
【0023】
しかし本発明では、交絡付与装置内での糸条処理領域を大きくすることにより、単糸太繊度糸に高く、均一な交絡を付与することが可能となったのである。なお、交絡付与装置内での糸条処理領域の大きさとしては、D/dが10〜30であることが好ましく、さらに11〜25であることがより好ましい。D/dが10未満であれば従来と同様、単糸太繊度糸に高交絡を付与しようとした場合、高い交絡度が得られなかったり、交絡バラつきが大きくなったりしてしまう。一方D/dが30を超えても、単糸太繊度糸に高く、均一な交絡を付与することが可能であるが、交絡付与装置が必要以上に大きくなってしまうため好ましくない。
【0024】
また噴射する圧空圧力は0.6〜1.0MPaとするのが好ましい。かかる範囲の圧空圧力で糸条処理することで、単糸太繊度糸への均一かつ高交絡の付与が容易となり、耐摩耗性に優れたネット、メッシュを製網性、製織性良好で得られるようになる。
【0025】
また本発明のネットやメッシュに使用されるポリエステル繊維は原着糸であっても良い。顔料としては通常シアニン系、スチレン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ぺリノン系、およびイソインドリノン系等から選ばれた1種以上が用いられるが、これらに限定されない。なお、原着糸を得るにあたっては、これらの顔料をポリエステルポリマに溶融添加して、原着ポリエステルチップを得て、該原着ポリエステルチップと通常のポリエステルチップを所望の割合でブレンド混合し、溶融紡糸する方法で得られる。
【0026】
本発明のネットやメッシュに使用されるポリエステル繊維に含まれる顔料は、0.1〜
1.0重量%であることが好ましく、さらに0.2〜0.6重量%であることがより好ましい。すなわちポリエステル繊維に含まれる顔料を0.1〜1.0重量%にすることによって、ポリエステル繊維の強伸度を低下させることなく、品位良好な原着ポリエステル繊維を得ることができる。
【0027】
本発明のネットやメッシュに使用されるポリエステル繊維の強度は7.0cN/dtex以上であるのが好ましく、7.5cN/dtex以上であるとさらに好ましい。上限は生産性や毛羽品位等を悪化させない限り特に制限はないが、一般的には9.0cN/dtex程度である。強度が7.0cN/dtexに満たない場合は、ネット、メッシュとして要求される高強力、軽量化が達成できない場合がある。
【0028】
本発明のネットやメッシュに使用されるポリエステル繊維の伸度は14%以上であることが好ましい。ポリエステル繊維の伸度が14%に満たない場合は、JIS A8960 7.4で定めている耐貫性通試験の基準を達成できない場合がある。ここで耐貫通性試験の方法は水平面に対し30度傾斜している試験枠に供試体を取り付け、5kgの落下体を1mの高さから供試体の中心へ自由落下させて貫通及び破断の有無を調べる。
なお、強度および伸度の測定法としては例えば、試料をオリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L1013 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定するとよい。この時の掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分、試験回数10回である。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求める。
【0029】
本発明のネットやメッシュに使用されるポリエステル繊維の乾熱収縮率は4%以上、15%以下であることが好ましい。より好ましくは6%以上、13%以下である。ポリエステル繊維の乾熱収縮率が4%に満たない場合は、ネットやメッシュを製織した時に形状が定まらない場合がある。また乾熱収縮率が15%を超える場合もネットやメッシュを製織する際、熱処理時に大きく収縮し、所定の形状を得にくい。
【0030】
なお、乾熱収縮率の測定方法は、JIS L−1013 8.18.2乾熱収縮率a)かせ収縮率(A法)に従って、試料採取時の所定荷重としては5mN/tex×表示テックス数、処理温度としては150℃、また、かせ長測定時の所定荷重としては200mN/tex×表示テックス数として測定した。
【0031】
本発明のネットやメッシュに使用される難燃ポリエステル繊維の動摩擦係数は0.20〜0.35であることが好ましい。すなわち難燃ポリエステル繊維の動摩擦係数を0.20〜0.35にすることにより、太繊度糸においても交絡を付与する際に糸条の開繊が起こりやすく、交絡が高く、均一にかかり易くなる。また、加工時においてガイドに引っかかることなく製織できるようになるので、製織性が良好な高交絡ポリエステル繊維を得ることができる。動摩擦係数を0.20〜0.35にする方法としては、脂肪族エステル、高分子ワックス、シリコン等を油剤に添加して糸条に塗付すればよい。ここで、ポリエステル繊維の動摩擦係数が0.35よりも高いと、交絡付与時、糸条の開繊が起こりにくくなり、高交絡を付与するのが困難となる。また、製織工程においてガイドへの引っ掛かりが起こり、品位良好なネットやメッシュが得られにくい。また、ポリエステル繊維の動摩擦係数が0.20よりも低いポリエステル繊維は現段階の油剤による塗付方法では、作ることが非常に困難である。動摩擦係数の測定法としては、例えば東レエンジニアリング(株)製摩擦試験機YF850を使用して、糸速100m/分、初期張力500gで直径5cmの固定金属ピン(表面Cr梨地メッキ加工)摩擦体に常温で180度接触させた後の張力から摩擦係数を算出する方法が挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下実施例を挙げて発明を詳細に説明する。
【0033】
[ポリマ中のリン元素含有量]試料であるリン化合物含有ベースチップ7gを加熱してペレット状に成形し、蛍光X線元素分析装置(Rigaku社製、ZSX100E型)を用いて、含有量既知のサンプルで予め作成した検量線から金属含有量に換算して求めた。
【0034】
[総繊度]原糸をJIS L1013(1999)8.3.1正量繊度 a)A法に従って、所定荷重としては5mN/tex×表示テックス数、所定糸長90mで測定した。
【0035】
[単糸繊度]繊度をフィラメント数で除した。
【0036】
[CF値]1m試長の試料に100gの荷重をかけ、6gのフックを下降速度1〜2cm/秒で下降させ、式:交絡度(CF値)=100(cm)/下降距離(cm)により計算して求めた。試行回数10回の平均値を採用した。
【0037】
[CF値のバラつき]上述の方法によって求められた試験回数10回分のCF値を用いて標準偏差を求め、バラつきとした。
【0038】
[難燃性]原糸をネットに製織し、JIS L1091(1999)の8.4D法により接炎回数を測定した。
【0039】
[耐摩耗性]原糸をネットに製織し、ネットから直径120mmの試験片を切り出し、ASTM D1175に規定されるテーバー摩耗試験機に取り付け、摩耗輪CS#10、荷重500gとして、1,000回転摩耗を行なった。その後、この試験片の表面摩耗状態を観察し、次の指標で耐摩耗性を評価した。
○:殆ど摩耗していない
△:少し摩耗している
×:かなり摩耗している。
【0040】
[製織性]製織性の評価は製織機の1時間あたりの停台回数より判定した。
【0041】
[実施例1]
二官能性リン化合物であるホスホランがリン元素量換算して0.5重量%含有する固有粘度1.1のベースポリエステルチップ(a)と固有粘度が0.7で顔料としてフタロシアニンブルーをポリマに対して8重量%含有するマスターポリエステルチップ(b)を40:1の割合で混合し、エクストルーダー型紡糸機に供給し、紡糸温度300℃にて溶融紡糸した。口金は0.6mmφの丸孔で孔数144個の吐出孔から押し出した後、油剤を糸条に付与し、引き続き230℃の温度でトータル倍率が6.0倍となるように2段延伸熱処理した後、6%の弛緩率で処理し、巻き取り直前で孔径が5.1mmの交絡付与装置を用いて0.7MPaの圧空で交絡付与を行なった後、巻き取ることにより1840dtex、144フィラメントからなるポリエステル繊維を得た。なお、孔径(D)は5.1mm、得られたポリエステル繊維の糸径(d)は0.42mmのため、D/d=12であった。
【0042】
また得られたポリエステル繊維をビーム整経しラッセル編み機に仕掛けて編網し、目付け600g/mのネットを得た。
【0043】
[実施例2]
リン元素量を2.0重量%とした以外は実施例1と同様の方法で1840dtex、144フィラメントからなるポリエステル繊維、及び目付け600g/mのネットを得た。なお、孔径(D)は5.1mm、得られたポリエステル繊維の糸径(d)は0.42mmのため、D/d=12であった。
【0044】
[実施例3]
72個の吐出孔を有する紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で1840dtex、72フィラメントからなるポリエステル繊維、及び目付け600g/mのネットを得た。なお、孔径(D)は5.1mm、得られたポリエステル繊維の糸径(d)は0.42mmのため、D/d=12であった。
【0045】
[実施例4]
0.80MPaの圧空で交絡付与を行なった以外は実施例1と同様の方法で1840dtex、144フィラメントからなるポリエステル繊維、及び目付け600g/mのネットを得た。なお、孔径(D)は5.1mm、得られたポリエステル繊維の糸径(d)は0.42mmのため、D/d=12であった。
【0046】
[実施例5]
0.60MPaの圧空で交絡付与を行なった以外は実施例1と同様の方法で1840dtex、144フィラメントからなるポリエステル繊維、及び目付け600g/mのネットを得た。なお、孔径(D)は5.1mm、得られたポリエステル繊維の糸径(d)は0.42mmのため、D/d=12であった。
【0047】
[比較例1]
288個の吐出孔を有する紡糸口金を用い、さらに総繊度が3300dtexになるように吐出量を調節した以外は実施例1と同様の方法で3300dtex、288フィラメントからなるポリエステル繊維、及び目付け600g/mのネットを得た。なお、孔径(D)は5.1mm、得られたポリエステル繊維の糸径(d)は0.55mmのため、D/d=9.3であった。
【0048】
[比較例2]
288個の吐出孔を有する紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で1840dtex、288フィラメントからなるポリエステル繊維、及び目付け600g/mのネットを得た。なお、孔径(D)は5.1mm、得られたポリエステル繊維の糸径(d)は0.42mmのため、D/d=12であった。
【0049】
[比較例3]
48個の吐出孔を有する紡糸口金を用いた以外は実施例1と同様の方法で1840dtex、48フィラメントからなるポリエステル繊維、及び目付け600g/mのネットを得た。なお、孔径(D)は5.1mm、得られたポリエステル繊維の糸径(d)は0.42mmのため、D/d=12であった。
【0050】
以上、実施例1〜5、比較例1〜3で得られたポリエステル繊維の物性、及び難燃性、耐摩耗性、製織性について表1に記載した。本発明のポリエステル繊維からなるネットはいずれも難燃性を具備しており、耐摩耗性、製織性も良好であった。一方、比較例1〜3では耐摩耗性、製織性の点で満足のいく結果が得られなかった。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
建築資材用のネットやメッシュに使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマ分子中に2官能性リン化合物が共重合されてなるポリエステルからなり単糸断面が円形であるポリエステル繊維であって、下記(1)〜(4)を満たすことを特徴とする難燃性ポリエステル繊維。
(1)総繊度 :400〜2000 dtex
(2)単糸繊度:10〜30 dtex
(3)交絡度(CF値):15〜50
(4)交絡度(CF値)のバラつき(σ):1〜10
【請求項2】
2官能性リン化合物が、ポリエステル中にポリエステル全体の0.2〜1.5重量%共重合されてなる請求項1記載の難燃性ポリエステル繊維。
【請求項3】
さらに顔料がポリエステル繊維中に0.1〜1.0重量%含有されてなる請求項1または2記載の難燃性ポリエステル繊維。

【公開番号】特開2008−31575(P2008−31575A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204449(P2006−204449)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】