説明

難燃性ポリエステル

【課題】難燃性に優れるとともに優れた耐加水分解性を備え、重合反応性を改良させた、かかる従来技術の課題を解消した難燃性ポリエステルの提供。
【解決手段】ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として、下記式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物から誘導される成分を1〜25モル%含むポリエステルであり、チタン化合物をチタン原子として50ppm〜400ppm含有し、ゲルマニウム化合物をゲルマニウム原子として30ppm〜300ppm含有する難燃性ポリエステル。
【化1】


(式中、Rは水素、炭素数1〜12の1価の飽和炭化水素または1価の芳香族炭化水素のいずれか1つを表し、m、nはそれぞれ1〜6の整数を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フィルムなどの成形品にしたとき優れた難燃性を有し、さらに優れた耐加水分解性および耐熱性を有する難燃性ポリエステルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため繊維、フィルム、その他の成形物に広く利用されている。近年、製造物責任法の施行に伴い、火災に対する安全性を確保するために樹脂の難燃化の要望が高まっている。
【0003】
従来用いられているハロゲン系難燃剤を含有するポリエステル樹脂は、燃焼時にハロゲン化水素などのガスを発生する等の理由で、ハロゲンを含まない環境に配慮した難燃剤が望まれている。
【0004】
このため、リン酸エステル系難燃剤などのノンハロゲン系難燃剤が提案されている(特許文献1)。しかし、これらの難燃剤は十分な難燃性を発揮させるためには、その添加量を多くする必要があり、得られる成形品の機械的特性の低下を招いたり、ポリエステル樹脂中から難燃剤がブリードアウトしたりする。
【0005】
一方、ポリエステル樹脂に化学的に結合させる反応型難燃剤も種々提案されており、特にリン化合物の共重合が知られている(特許文献1、特許文献2)。しかし、これらの化合物は難燃性が向上するものの、共重合されたポリエステルは耐加水分解性が著しく低下することが問題となっている。そこで特許文献3には水酸基を両末端に有するホスフィンオキサイド化合物などが種々例示されており、そこでは難燃性に優れ、耐加水分解性の向上が記載されている。
しかし、上記化合物の反応性、耐熱性に問題があり、難燃および耐加水分解効果だけでなく、よりポリエステル本来の諸特性を維持した実用性の高い樹脂が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭50−56488号公報
【特許文献2】特開2000−319368号公報
【特許文献3】特開平10−25338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、難燃性に優れるとともに優れた耐加水分解性を備え、重合反応性を改良させた、かかる従来技術の課題を解消した難燃性ポリエステルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決しようと鋭意研究した結果、水酸基を両末端に有するホスフィンオキサイド化合物を共重合したポリエステルを製造する際に、触媒として使用しているチタン化合物にゲルマニウム化合物を加えることにより、優れた難燃性、耐加水分解性、重合反応性を得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち本発明の目的は、ポリエステルの全ジカルボン成分を基準として、下記式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物から誘導される成分を1〜25モル%含む難燃性ポリエステル樹脂であり、チタン化合物をチタン原子として50ppm〜400ppmを含有し、ゲルマニウム化合物をゲルマニウム原子として30ppm〜300ppmを含有する難燃性ポリエステルが提供される。
【0010】
【化1】

(式中、Rは水素、炭素数1〜12の1価の飽和炭化水素または1価の芳香族炭化水素のいずれか1つを表し、m、nはそれぞれ1〜6の整数を表す)
【0011】
また本発明の難燃性ポリエステルは、その好ましい形態として、含有するチタン化合物の原子とゲルマニウム原子の量の比が
0.5< Ti/Ge < 5
であること、含有するチタン化合物は、下記一般式(2)で表わされる化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物であることであることも包含する。
Ti(OR ・・・(2)
(上記式中、Rはアルキル基および/またはフェニル基を示す)
【発明の効果】
【0012】
本発明の難燃性ポリエステルは、難燃性に優れるとともに、優れた耐加水分解性および耐熱性を有しており、フィルムなどの成形体として好適に利用することができ、難燃性が求められる種々の用途、例えばフレキシブルプリント回路基板のような電気電子用途などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における難燃性ポリエステルについて、詳述する。
本発明におけるポリエステルは、ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として下記式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物から誘導される成分(以下、リン含有共重合単位と称することがある)を1〜25モル%の範囲で有する。
【0014】
【化2】

(式中、Rは水素、炭素数1〜12の1価の飽和炭化水素または1価の芳香族炭化水素のいずれか1つを表し、m、nはそれぞれ1〜6の整数を表す)
【0015】
式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物からなる単位のうち、m、nで表されるメチレン鎖数は好ましくは1〜4であり、さらに好ましくは2〜3である。
また、式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物からなる単位のうち、Rで表される置換基の中でも、炭素数1〜6の飽和炭化水素、フェニル基が好ましく例示される。
【0016】
本発明において、難燃性付与成分としてホスフィンオキシド化合物を用いることが必要であり、かつホスフィンオキシド化合物の中でもモノマーの状態でジオールの化合物またはその誘導体を用いることが必要である。ポリエステル主鎖中にホスフィンオキシド化合物以外の化合物に由来するリン含有共重合単位、例えばホスフィン酸あるいはホスホン酸エステル由来のリン化合物重合単位が存在すると、ポリエステル組成物の耐熱性、耐加水分解性に悪影響を及ぼす。またホスフィンオキシド化合物においてもジカルボン酸の化合物またはその誘導体をモノマー成分として用いた場合、ジオールタイプのホスフィンオキシド化合物ほどの耐加水分解性が得られない。
【0017】
また、本発明のポリエステルにおける上記式(1)で表されるホスフィンオキシドの含有量は、ポリエステルの全ジカルボン成分のモル数を基準として1モル%以上25モル%以下の範囲である。好ましい下限値は3モル%、さらに5モル%であり、好ましい上限値は15モル%、さらに10モル%、特に8モル%である。該リン含有共重合単位の含有量が下限値に満たないと本発明の目的とする難燃性を得ることができない。また、該リン含有共重合単位の含有量が上限値を超えると重合反応性に問題が生じ、フィルムなどの成形体としたときの十分な機械的特性を得ることできない。
【0018】
上記ホスフィンオキシド化合物からなるモノマー成分を共重合させた結果、ポリエステル中のリン原子濃度は、ポリエステルの質量を基準として、0.5質量%以上3.0質量%以下、さらに0.5質量%以上2.0質量%以下であることが、本発明の目的とする難燃性を得るために好ましい。
【0019】
本発明におけるポリエステル樹脂の主たる繰り返し単位は、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分と、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールなどのジオール成分からなる。ここで「主たる」とは、全繰り返し単位の50モル%以上であることをいい、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは85モル%以上である。
【0020】
本発明におけるポリエステル樹脂は、得られる特性を大きく変化させない範囲でその他の共重合成分を含むことができる。その他の共重合成分としては特に限定されないが、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸、テレフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸成分から主たる成分以外の成分、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸成分、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分など、ジオール成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコールなどの脂肪族ジオール成分から主たる成分以外の成分、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールなどの脂環族ジオール成分、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール成分、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのエーテル縮合型ジオール成分などが挙げられる。また、前述の好ましいジカルボン酸およびジオール成分以外の成分として、p−ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上の成分が挙げられる。
【0021】
本発明の難燃性ポリエステルはジカルボン酸とグリコールとのエステル化反応やジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとのエステル交換反応のどちらの方法も利用できる。エステル交換反応触媒としては、マンガン、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、コバルト、チタンを含む化合物の一種または二種以上を用いることができる。
【0022】
ただし、本発明の難燃性ポリエステルは、その重縮合反応において、重縮合触媒としてチタン化合物を使用したものであることが必要である。従来公知の重縮合触媒である、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるゲルマニウム化合物のみで反応させると十分に重合度が上がらないという問題が発生するために、本発明ではチタン化合物を使用することになる。チタン化合物としては、酢酸チタンやテトラ−n−ブトキシチタンなどが挙げられるが、特に望ましいのは、下記一般式(2)で表わされる化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物である。
Ti(OR ・・・(2)
(上記式中、Rはアルキル基および/またはフェニル基を示す)
【0023】
一般式(2)で表わされるテトラアルコキサイドチタンとしては、Rがアルキル基および/またはフェニル基であれば特に限定されないが、テトライソプロポキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラフェノキシチタンなどが好ましく用いられる。また、かかるチタン化合物と反応させる芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物が好ましく用いられる。上記チタン化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸またはその無水物の一部とを溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させれば良い。この生成物を用いることにより、重縮合反応中に分解されるホスフィンオキシド化合物によるチタン触媒化合物の触媒機能失活を抑えることができる。
【0024】
本発明の難燃性ポリエステルには、ポリマー中に可溶な上記チタン化合物を、難燃性ポリエステルの質量を基準として、チタン金属原子量で50〜400ppmの範囲で含有する必要がある。特に好ましい下限値は、100ppm、さらに140ppmであり、特に好ましい上限値は、250ppm、さらに240ppmである。該チタン原子量が下限未満ではポリエステルの生産性が低下し、目標の分子量のポリエステルが得られない。また、該チタン原子量が上限を超える場合は熱安定性が低下しやすくなる。
【0025】
また本発明のポリエステルには重合反応性を向上させるために二酸化ゲルマニウムで代表されるゲルマニウム化合物を、難燃性ポリエステルの質量を基準として、ゲルマニウム原子量で30ppm〜300ppmをあわせて含有する必要がある。好ましい下限値は75ppm、さらに100ppmであり、好ましい上限値は200ppm、さらに180ppmである。チタン化合物の他にゲルマニウム化合物を含有させることで、リン化合物の分解によるチタン化合物の失活に伴う重縮合反応速度の低下を補うことができ、チタン化合物のみでは、反応活性の低い温度範囲で長時間重縮合反応を行わなければならないのに対して、やや反応温度を上げることができ、重縮合反応時間を短縮させる効果が得られる。ゲルマニウム原子量が下限未満であると上述の効果は得られがたくなり、ゲルマニウム原子量が上限を超える場合は熱安定性が低下する可能性があり、コスト面からも好ましくない。
【0026】
また含有させるチタン原子とゲルマニウム原子との質量比は、
0.5< Ti/Ge < 5
の範囲にあることが好ましい。この比が上記範囲にあることで重合反応性をより向上させることができる。なお、上記式中のTiはチタン原子量であり、Geはゲルマニウム原子量である。好ましいTi/Geの下限値は0.8、上限値は2.0である。
【0027】
本発明における難燃性ポリエステル樹脂の固有粘度(重量比4/6のP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの混合溶媒を用いて温度35℃で測定)が0.60dl/g以上1.5dl/g以下であることが好ましく、さらに0.65dl/g以上1.0dl/g以下であることが好ましい。難燃性ポリエステル樹脂の固有粘度が下限値に満たないと、成形品の機械的特性を満足しなくなる。一方、上限値を超える難燃性ポリエステル樹脂は、溶融粘度が高いため、成形時の溶融押出が困難となる。
【0028】
なお、本発明の目的を阻害しない範囲内で、従来公知の各種添加剤を含有していてもよく、例えば有機または無機の滑剤粒子、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを挙げることができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0030】
(1)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。単位はdl/gである。
【0031】
(2)ホスフィンオキシドから誘導される成分の共重合量
試料10mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解した。イソプロピルアミンを加えて、十分に混合した後にH−NMR(日本電子製 JEOL A600)にて80℃で測定した。
【0032】
(3)チタン原子、ゲルマニウム原子量、リン原子の含有量
ポリマーサンプルを加熱溶融して、円形ディスクを作成し、リガク製蛍光X線装置3270型を用いて測定し、定量を行った。
【0033】
(4)燃焼性
フィルムサンプルをUL−94VTM法に準拠して評価した。サンプルを20cm×5cmにカットし、23±2℃、50±5%RH中で48時間放置し、その後、試料下端をバーナーから10mm上方に離し垂直に保持した。該試料の下端を内径9.5mm、炎長20mmのブンゼンバーナーを加熱源とし、3秒間接炎した。VTM−0、VTM−1、VTM−2の評価基準に沿って難燃性を評価し、n=5の測定回数のうち、同じランクになった数の最も多いランクとした。
【0034】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル(DMT)31Kg(160モル)、エチレングリコール(EG)16.2Kg(261モル)、リン化合物として、ビス(3−ヒドロキシトリメチレン)n−ブチル−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド(日本化学工業社 PO−4500)2.45Kg(11モル)を、攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、そこに触媒として、酢酸マンガン4水和物を30ミリモル%(全酸性分に対して)加え、エステル交換反応を行った。続いて、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)70ミリモル%(全酸性分に対して)、ニ酸化ゲルマニウム30ミリモル%(全酸成分に対して)を加えて、270℃にて真空下重縮合反応を行った。180分間重縮合反応を行い、固有粘度0.650dl/gのポリエステルを得た。
得られたポリエステルを170℃ドライヤーで3時間乾燥後、270℃でダイより表面温度20℃に維持した回転ドラム上に溶融押出して、厚み630μmの未延伸フィルムを製膜した。この未延伸フィルムを75℃に予熱し、低速ローラーと高速ローラーの間で15mm上方より800℃の表面温度の赤外線ヒーター1本にて加熱しながら製膜方向(MD方向)に4.1倍延伸し、さらに縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながら100℃で加熱された雰囲気中で製膜方向に垂直な方向(TD方向)に4.2倍延伸し、さらに横方向に固定したまま全幅の3%の弛緩を与えながら220℃で熱処理し、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。
【0035】
[実施例2〜4]
実施例1において、リン化合物の添加量、チタン化合物の添加量、ゲルマニウム化合物の添加量、重縮合温度を変えたこと以外は実施例1と同様に行った。得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。特性を表1に示す。
【0036】
[実施例5]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDC)35Kg(143モル)、エチレングリコール(EG)17.1Kg(276モル)、ビス(3−ヒドロキシトリメチレン)n−ブチルホスフィンオキシド(日本化学工業社 PO−4500)2.19Kg(9.9モル)を、攪拌機、精留塔、冷却器を供えた反応槽に仕込み、そこに触媒として、酢酸マンガン4水和物を30ミリモル%(全酸性分に対して)加え、エステル交換反応を行った。続いて、チタンテトラブトキシドとトリメリット酸無水物をモル比1:2で175℃、4時間反応させた反応物(トリメリット酸チタン)70ミリモル%(全酸性分に対して)、ニ酸化ゲルマニウム30ミリモル%(全酸成分に対して)を加えて、275℃にて真空下重縮合反応を行った。重縮合反応を180分間行い、固有粘度0.60のポリエステルを得た。
フィルム化においては、MD方向延伸における予熱温度を120℃に、TD方向延伸における温度を140℃にした以外は、実施例1と同様の方法によってフィルムサンプルを得た。
得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。
【0037】
[比較例1〜8]
リン化合物の添加量、重縮合反応触媒の添加量、重縮合反応温度、後処理反応温度、時間を変えたこと以外は、実施例1と同様におこなった。得られたポリエステル、およびそれからなるフィルムサンプルの特性を表1に示す。なお、途中で重合度の上昇が停止したものは途中で反応を終了させている。また、比較例4は、表1に示すように重縮合反応触媒として、三酸化二アンチモンを、アンチモン元素量で202ppmとなるように添加した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1中の*は、途中で重合度の上昇が停止し、反応を途中で終了させたものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の難燃性ポリエステルは、難燃性が求められる種々の用途、例えばフレキシブルプリント回路基板のような電気電子用途などに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルの全ジカルボン酸成分を基準として、下記式(1)で表されるホスフィンオキシド化合物から誘導される成分を1〜25モル%含むポリエステルであり、チタン化合物をチタン原子として50ppm〜400ppm含有し、ゲルマニウム化合物をゲルマニウム原子として30ppm〜300ppm含有する難燃性ポリエステル。
【化1】

(式中、Rは水素、炭素数1〜12の1価の飽和炭化水素または1価の芳香族炭化水素のいずれか1つを表し、m、nはそれぞれ1〜6の整数を表す)
【請求項2】
含有するチタン原子とゲルマニウム原子の量の比が
0.5 < Ti/Ge < 5
の範囲である請求項1記載の難燃性ポリエステル。
【請求項3】
含有するチタン化合物が、下記一般式(2)で表わされる化合物と芳香族多価カルボン酸またはその無水物とを反応させた生成物である請求項1記載の難燃性ポリエステル。
Ti(OR ・・・(2)
(上記式中、Rはアルキル基および/またはフェニル基を示す)

【公開番号】特開2013−67730(P2013−67730A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207619(P2011−207619)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】