難燃性ポリオレフィン樹脂組成物およびその製造方法

【課題】 高度の難燃性、機械的特性、耐熱性を併せ持ち、外観に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、金属水酸化物(B)110〜500重量部、水架橋触媒(C)0.001〜0.11重量部を含有することを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、金属水酸化物(B)110〜500重量部を混合して難燃マスターバッチを得る工程と、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂100重量部に対し、水架橋触媒(C)0.01〜10重量部を混合する触媒マスターバッチを得る工程と、前記難燃マスターバッチと前記触媒マスターバッチとを混合する工程とを有する難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物およびその製造方法に関する。詳細には、本発明は、高度の難燃性、機械的特性、耐熱性を併せ持ち、外観に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル樹脂組成物は、電気絶縁性に優れ、且つ自消性の難燃特性を持つことから、古くより、電線被覆、チューブ、テープ、建材、自動車部品、家電部品などに広く使用されている。しかしながら、ポリ塩化ビニル樹脂組成物は塩素を含んでいるため、燃焼時に腐食性ガスである塩化水素ガスを発生し、また、燃焼条件によってはダイオキシン類などの有毒ガスを発生する恐れがある。このため、最近の環境問題への対策の一環として、燃焼時におけるこれら有毒ガス発生の可能性が殆どない、ハロゲンを含有しない材料(以下、ハロゲンを含有しないことを「非ハロゲン」という場合がある。)が使用されるようになっている。
【0003】
非ハロゲン系の材料としては、ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるポリオレフィン系樹脂およびスチレン系樹脂が挙げられる。ところが、ポリオレフィン系樹脂等は難燃性ではないため、用途によっては難燃化する必要がある。その対策としては、ハロゲン系難燃剤を添加する手法が古くより行われてきた。しかしながら、ハロゲン系難燃剤も燃焼時に有毒ガスを発生する可能性があるため、最近では、非ハロゲン系難燃剤として、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムといった金属水酸化物を配合する手法が採られている。
これら水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等を含む難燃性樹脂組成物は、燃焼時のハロゲン系ガスの発生を防止し得るが、燃焼時に該樹脂組成物が溶融し、着火した溶融樹脂が落下するという所謂ドリップ現象を発生したり、或いは高温時の形状保持性に劣るといった問題があった。
【0004】
ドリップ現象を改良する方法としては、樹脂組成物の難燃性と耐熱性を同時に向上させる手法が挙げられ、そのために該樹脂組成物を架橋させる方法、例えば電子線照射架橋法、化学架橋法、水架橋法などの方法が知られている。このうち、電子線照射架橋法及び化学架橋法は、高価で大型な特殊架橋設備等が必要であり、コストが増大するといった難点があった。そこで、近年では、このような難点がなく、簡便に架橋することが可能な水架橋法が広く用いられている(例えば特許文献1)。
一般に水架橋法による架橋オレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂に、ジクミルパーオキサイドなどの遊離ラジカル発生剤、ビニルトリメトキシシランなどのシラン化合物を添加し溶融混練によりグラフト反応させた変性ポリオレフィン系樹脂に、ジオクチルスズジラウレートなどのシラノール縮合触媒を配合して加熱成形することによって得られる。
【0005】
しかしながら、水架橋法を用いた難燃架橋ポリオレフィン系樹脂組成物に難燃剤として水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を配合すると、成形時にせん断発熱により金属水酸化物が分解して水を放出する為に発泡現象が起こったり、押出機内で架橋反応が起こって成形できないなど、良好な外観を達成することが困難であった。
これを解決する為に、例えば、特許文献2では、ポリオレフィン系樹脂に金属水酸化物、シランカップリング剤、架橋剤、架橋触媒などを一括混練してコンパウンドを形成して加熱成形する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、金属水酸化物中の水分がシランカップリング剤と反応してシランカップリング剤が加水分解するため、加水分
解により生成したゲル状物質が成形品表面に凹凸を形成して外観が低下していた。さらに、シランカップリングが不完全であるため、ドリップ現象を改良する方法としては不十分であった。
【0006】
また、特許文献3では、シラングラフトマスターバッチ、難燃マスターバッチ、架橋触媒マスターバッチの3成分を予め製造しておき、成形時にこれらを溶融混練することにより得ることが提案されている。しかしながら、この方法では、難燃マスターバッチとシラングラフトマスターバッチの溶融時の流動性の差が大きいため、均一な分散が困難であり、良好な外観の成形体が得られなかった。さらに、難燃マスターバッチや架橋触媒マスターバッチは架橋されていないことから、ドリップ現象を改良する方法としては不十分であった。
また、電線被覆の分野等では、UL−94試験V−0レベルの高度な難燃性を要求されるが、そのレベルの難燃性を確保する為には多量の水酸化マグネシウムを添加する必要性が生じる。しかしながら、特許文献2、3の方法では、難燃剤の含有量を増やすと、一層、発泡現象や早期架橋が起き易いため、水平燃焼レベルの難燃性は得られても、垂直燃焼レベルの難燃性を得るには不十分であった。従って、十分な難燃性、耐熱性、そして良好な外観の成形物を得るためには、特許文献2、3の方法では未だ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭53−65343号公報
【特許文献2】特開2000−1578号公報
【特許文献3】特開2008−297453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は高度の難燃性、機械的特性、耐熱性を併せ持ち、外観に優れた難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、水架橋性ポリオレフィン樹脂、金属水酸化物、架橋触媒を特定量配合させることにより上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[6]を要旨とする。
[1] 水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、金属水酸化物(B)110〜500重量部、水架橋触媒(C)0.001〜0.11重量部を含有することを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[2] [1]において、樹脂組成物中に、ポリオレフィン樹脂(D)を0.1〜50重量%含有する難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[3] [1]または[2]において、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)がシラングラフトポリオレフィン樹脂である難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[4] [1]〜[3]の何れかの電線被覆用難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
[5] [1]〜[3]の何れかの難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなる成形品。
[6] [1]〜[3]の何れかの難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を被覆してなる電線。
【0011】
また、本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、水架橋性ポリオレフィン
樹脂と金属水酸化物とを含有する組成物と、水架橋性ポリオレフィン樹脂以外の樹脂と架橋触媒とを含有する組成物とを別々に製造し、これらを混合することにより上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明の他の1つは、以下の[7]〜[9]を要旨とする。
[7] 水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、金属水酸化物(B)
110〜500重量部を混合して難燃マスターバッチを得る工程と、
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂100重量部に対し、水架橋触媒(C)0.01〜10重量部を混合する触媒マスターバッチを得る工程と、
前記難燃マスターバッチと前記触媒マスターバッチとを混合する工程とを有する難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
[8] [7]において、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)がシラングラフトポリオレフィン樹脂である難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
[9] [7]または[8]において、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂がポリオレフィン樹脂(D)である難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高度の難燃性、機械的特性、耐熱性を併せ持ち、外観に優れる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物および該樹脂組成物を被覆してなる電線が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)、金属水酸化物(B)、および水架橋触媒(C)を含有する。
【0015】
<水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)>
本発明における水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)とは、水架橋反応が可能であって、未だ架橋されていないポリオレフィン樹脂を意味する。ここで、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の架橋度は0である必要は無く、実質的に溶融成形可能な程度の熱可塑性を有していればよい。具体的には、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の架橋度は、後述する架橋度の測定方法において、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
【0016】
本発明において水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)は、水架橋反応によって架橋可能なポリオレフィン樹脂であれば限定されないが、通常、水架橋が可能なように変性または共重合されたポリオレフィン樹脂が好適に用いられる。
変性する原料として用いるポリオレフィン樹脂は限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィン同士あるいはそれらのα−オレフィンと3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数2〜20程度の他のα−オレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられる。
【0017】
ポリオレフィン樹脂として具体的には、例えば、低・中・高密度ポリエチレン等(分岐状又は直鎖状)のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエ
チレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−4−メチル1−ペンテン共重合体等のプロピレン系樹脂;及び、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂等が挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
ここで、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、1−ブテン系樹脂とは、それぞれ、エチレン、プロピレン、または1−ブテンをモノマー単位の50重量%以上の組成で含有する樹脂を言う。
【0018】
これらの中でも、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の原料に用いるポリオレフィン樹脂としては、エチレン系樹脂が好ましい。本発明における水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)は、後述する通り、遊離ラジカル発生剤によるグラフト反応でシラン化合物をグラフトしたものが好適であるが、原料に用いるポリオレフィン樹脂がエチレン系樹脂であれば、グラフト化が好適になされるので好ましい。また、原料に用いるポリオレフィン樹脂がエチレン系樹脂であれば、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を電線被覆用に用いた場合に、耐熱性や難燃性が良好となるので好ましい。水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の原料に用いるポリオレフィン樹脂としては、エチレン系樹脂の中でも、特にエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【0019】
本発明における水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)は、前記のポリオレフィン樹脂を水架橋が可能なように変性することによって好適に得られる。変性の方法は限定されないが、シラン化合物をグラフト化することが好ましい。以下に、ポリオレフィン樹脂をシラン化合物でグラフト化した樹脂(以下、シラングラフトポリオレフィン樹脂ということがある)について詳細に説明する。
本発明においてシラングラフトポリオレフィン樹脂としては、前記ポリオレフィン樹脂を有機過酸化物等の遊離ラジカル発生剤の存在下にエチレン性不飽和シラン化合物のグラフト反応工程に付して得られた変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。なお、グラフト化ではなく共重合によって水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)を得る場合は、前記したポリオレフィン樹脂を構成するモノマーとエチレン性不飽和シラン化合物とをラジカル共重合させて得ることができる。
【0020】
前記ポリオレフィン樹脂にエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト化させるためには、例えば、公知の方法、すなわち前記ポリオレフィン樹脂に所定量のエチレン性不飽和シラン化合物、遊離ラジカル発生剤を溶融混練する方法を用いることができる。
ここで、エチレン性不飽和シラン化合物とは、下記一般式(I)で表される化合物を言う。
【0021】
R1・SiR23−n (I)
式(I)中、R1はエチレン性不飽和炭化水素基又はハイドロカーボンオキシ基、R2は炭化水素基、Yは加水分解可能な有機基を表し、nは0〜2の整数である。
ここで、R1としては炭素数3〜10のエチレン性不飽和炭化水素基又はハイドロカーボンオキシ基が好ましく、例えば、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等が挙げられる。R2としては炭素数1〜10の炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、デシル基、フェニル基等が挙げられる。Yとしては炭素数1〜10の加水分解可能な有機基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基等が挙げられる。
このようなエチレン性不飽和シラン化合物の具体例としては、例えば、ビニルトリメト
キシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、臭気等の観点から、ビニルトリメトキシシランが好適に用いられる。
【0022】
エチレン性不飽和シラン化合物の添加量は限定されず、十分な架橋効果を得て本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の強度、耐熱性を得る為には多いほうが望ましいが、加工性の観点からは少ないほうが望ましい。具体的には、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1.0重量部以上であり、一方、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。
又、遊離ラジカル発生剤としては、ポリオレフィン樹脂に対してエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト化可能であれば限定されないが、有機過酸化物またはアゾ化合物が好ましく、具体的には、ジクミルパーオキサイト、2,5−(第三ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,1,3−ビス(第三ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0023】
遊離ラジカル発生剤の添加量は限定されず、エチレン性不飽和シラン化合物が十分にグラフト化して十分な架橋効果を得る為には多いほうが望ましいが、加工性の観点からは少ないほうが望ましい。具体的には、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.05重量部以上であり、一方、好ましくは3重量部以下、より好ましくは2重量部以下、更に好ましくは1重量部以下である。
【0024】
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)は、JIS K7210に従って測定した190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、加工性の点では大きい方が好ましく、力学的特性の点では小さい方が好ましい。具体的には、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の190℃、2.16kg荷重におけるMFRが0.01g/10min以上であるのが好ましく、0.1g/10min以上であるのが更に好ましく、一方、10g/10min以下であるのが好ましく、5g/10min以下であるのがより好ましい。
【0025】
前記ポリオレフィン樹脂にエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト化させる方法は限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン性不飽和シラン化合物、遊離ラジカル発生剤を80〜250℃の温度で溶融混練することにより得られる。この際、水を含んでいると、水架橋反応が行われるので、水を含まない状態で溶融混練することが好ましい。
なお、前記シラングラフトポリオレフィン樹脂は市販品を用いることもでき、例えば、三菱化学株式会社製、商品名「リンクロン」を好適に用いることができる。
【0026】
<金属水酸化物(B)>
本発明において金属水酸化物(B)は、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物に難燃作用を付与するために用いる。
金属水酸化物(B)の種類は限定されないが、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カリウム、ハイドロタルサイト等が挙げられ、中でも、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムが好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
【0027】
本発明に用いる金属水酸化物(B)は、表面処理剤によって表面処理されたものを使用することができる。表面処理剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸または脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらの表面処理剤で金属水酸化物を処理する方法としては、湿式法、乾式法、直接混練法などの既知の方法を用いること
ができる。金属水酸化物(B)として表面処理されたものを使用することにより、得られる難燃性ポリオレフィン樹脂組成物中での分散性が向上する場合や、力学的特性が向上する場合がある。
また、金属水酸化物(B)の平均粒子径は、機械的特性、分散性、難燃性の点から4μm以下のものが好適である。
【0028】
金属水酸化物(B)の使用量は、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、110重量部以上であり、150重量部以上であるのが好ましく、一方、500重量部以下であり、400重量部以下であるのが好ましい。金属水酸化物(B)の使用量が前記下限値未満では、本発明が課題とするレベルの難燃性が得られない。一方、金属水酸化物(B)の使用量が前記上限値を超過すると、加工性や機械的強度が著しく低下する。
【0029】
本発明では、金属水酸化物(B)の使用量を前記範囲内とすることにより、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を構成するポリオレフィン樹脂が燃焼し難くなり、燃焼した際に燃え殻を炭化させ保形性を持たせる作用を有することとなる。また、このような特定の使用量とすれば、水平燃焼レベルの難燃性のみならず、垂直燃焼レベルの難燃性を確保することができ、UL−94試験でV−0レベルの高度な難燃性を得ることができるので、電線被覆の分野等で好適に用いることができる。このように従来よりも金属水酸化物(B)の使用量を多く出来るのは、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の架橋度が高いため、多量に金属水酸化物(B)を含有していてもドリップ現象が起こらないためである。
【0030】
<水架橋触媒(C)>
本発明において水架橋触媒(C)は、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)を水架橋するために用いる。
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)が前記シラングラフトポリオレフィン樹脂である場合は、水架橋触媒(C)としては、シラノール縮合触媒の存在下に水分と接触させてポリオレフィン樹脂内に架橋構造を形成させることができる化合物、いわゆるシラノール縮合触媒が選択される。シラノール縮合触媒としては、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクタエート、酢酸第1錫、カプリル酸第1錫、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト等の金属脂肪酸塩が挙げられる。水架橋触媒(C)は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用しても良い。
【0031】
水架橋触媒(C)の使用量は、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、0.001重量部以上であり、0.005重量部以上であるのが好ましく、一方、0.11重量部以下であり、0.09重量部以下であるのが好ましい。水架橋触媒(C)の使用量が前記下限値未満では、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の架橋が不十分であるため、本発明が課題とするレベルの難燃性が得られない。一方、水架橋触媒(C)の使用量が前記上限値を超過すると、加工性が著しく低下する。
【0032】
本発明では、水架橋触媒(C)の使用量を前記範囲内とすることにより、外観を損なうことなく良好な耐熱性、具体的には、後述するホットセット試験における耐熱性を得ることができる。また、このような特定の使用量とすれば、水平燃焼レベルの難燃性のみならず、垂直燃焼レベルの難燃性を確保することができ、UL−94試験でV−0レベルの高度な難燃性を得ることができるので、電線被覆の分野等で好適に用いることができる。
本発明における水架橋触媒(C)の添加量は、例えば特許文献2(特開2000−1578号公報)や特許文献3(特開2008−297453号公報)のような従来技術における添加量に比べ著しく少ない。これは、後述するように難燃マスターバッチと触媒マスターバッチとを用いて難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を製造する方法を取れば、難燃マスターバッチ中の金属水酸化物がシラノール縮合反応の活性化エネルギーを大幅に低減し
、少量の架橋触媒量でも十分に架橋を促進させることができる為であると考えられる。
【0033】
<ポリオレフィン樹脂(D)>
本発明では、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の他に、水架橋性ではないポリオレフィン樹脂(D)を用いることができる。
ポリオレフィン樹脂(D)は限定されないが、前記した、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の原料として用いるポリオレフィン樹脂そのものを用いることができる。更には、不飽和カルボン酸などで変性されたポリオレフィン樹脂も含む。ポリオレフィン樹脂(D)は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用しても良い。
ポリオレフィン樹脂(D)を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物中に、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下であり、一方、通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上である。
【0034】
また、ポリオレフィン樹脂(D)を用いる場合の水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対する使用量は限定されないが、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、一方、通常400重量部以下、好ましくは250重量部以下である。
ポリオレフィン樹脂(D)を前記範囲の使用量で用いた場合、加工性や得られる成形品の外観が良好となる場合があるが、前記範囲を超えて用いた場合は、耐熱性や難燃性が低下する傾向にある。従って、加工性や外観改良のためにはポリオレフィン樹脂(D)の使用量が多い方が好ましく、耐熱性や難燃性の点ではポリオレフィン樹脂(D)の使用量が少ない方が好ましい。
【0035】
<その他の成分>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分(A)〜(D)以外の添加剤や樹脂等を、「その他の成分」として必要に応じて用いてもよい。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用しても良い。また、その他の成分は、後述するように難燃マスターバッチと触媒マスターバッチとを用いて難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を製造する場合においては、何れのマスターバッチに含有されていてもよい。
添加剤等としては、具体的には、プロセス油、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、充填剤、相溶化剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、カーボンブラック、着色剤等が挙げられる。これら添加剤の含有量は限定されないが、上述の成分(A)〜(D)の合計量が難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の50重量%以上になる範囲で使用するのが好ましい。
【0036】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物には、その他の成分として、金属水酸化物(B)以外の難燃剤を併用してもよい。難燃剤はハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が好ましい。金属水酸化物(B)以外の非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
【0037】
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバル
ーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0038】
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(D)以外の樹脂としては、具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂及びポリメチルメタクリレート系樹脂等アクリル/メタクリル系樹脂等を挙げることができる。
【0039】
<難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)、金属水酸化物(B)、水架橋触媒(C)を前記の割合で有するように製造できれば、同時に又は任意の順序で混合して製造することができる。具体的には、(1)水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)と金属水酸化物(B)を先に混合し、水架橋触媒(C)を後に加える方法、(2)水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)と水架橋触媒(C)を先に混合し、金属水酸化物(B)を後に加える方法、(3)全てを一括して混合する方法などがある。その他、酸化防止剤や着色剤などのその他成分は均一に分散させることが出来ればどのタイミングで加えても良い。
前記の各原料成分を混合する際の装置に限定はないが、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、一軸押出機、二軸押出機などの汎用のものが使用できる。溶融混合時の温度は、各原料成分の少なくとも一つが溶融状態となる温度であればよいが、通常は用いる全成分が溶融する温度が選択され、一般には150〜250℃で行う。
【0040】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を製造する方法としては、金属水酸化物(B)を水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)に含有させたマスターバッチ(以下、「難燃マスターバッチ」という場合がある。)と、水架橋触媒(C)を水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂に含有させたマスターバッチ(以下、「触媒マスターバッチ」という場合がある。)とを別々に製造しておき、これらを混合することによって製造することが好ましい。触媒マスターバッチを構成する樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(D)または前記のその他の成分で例示した樹脂等を用いることが出来るが、難燃マスターバッチとの相溶性の観点からポリオレフィン樹脂(D)を用いることが好ましい。
このように、難燃マスターバッチと触媒マスターバッチとを用いれば、成形する際に両者を混合することが可能となり、成形体を得る前に架橋反応が進行することを抑制することができる。
【0041】
本発明における難燃マスターバッチに含有する金属水酸化物(B)の含有量は限定されないが、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、通常110重量部以上であり、150重量部以上であるのが好ましく、一方、通常500重量部以下であり、400重量部以下であるのが好ましい。
難燃マスターバッチを製造する方法に限定は無く、前記した装置を同様に使用することができる。製造工程としては、(1)水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)を製造する工程、すなわちシラン化合物をグラフト化させる工程と、(2)水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)、金属水酸化物(B)および、必要に応じて用いるポリオレフィン樹脂(D)やその他成分とを混合する工程の二つがあり、これらを別々に分けて行っても、例えば二軸押出機などで両工程を一度に行ってもよいが、前者が好ましい。
【0042】
本発明における触媒マスターバッチに含有する水架橋触媒(C)の含有量は、十分に架橋させる為には多いほうが好ましいが、一方、加工性の点では少ないほうが好ましい。具体的には、樹脂100重量部に対し、通常0.01重量部以上であり、0.05重量部以
上であるのが好ましく、一方、通常10重量部以下であり、5重量部以下であるのが好ましい。なお、触媒マスターバッチを製造する方法に限定は無く、前記した装置を同様に使用することができる。
【0043】
難燃マスターバッチに対する触媒マスターバッチの配合割合は、使用する水架橋触媒の種類にもよるが、十分に架橋させる為には触媒マスターバッチが多いほうが好ましいが、一方加工性や機械的強度の点では触媒マスターバッチが少ないほうが好ましい。具体的には難燃マスターバッチ100重量部に対し、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上であり、通常30重量部以下、、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。
難燃マスターバッチと触媒マスターバッチとを混合する際にも、前記した装置を同様に使用することができる。
【0044】
<難燃性ポリオレフィン樹脂組成物>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、JIS K7210に従って測定した230℃、10kg荷重におけるMFRが、加工性の点では大きい方が好ましく、力学的特性の点では小さい方が好ましい。具体的には、水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)の230℃、10kg荷重におけるMFRが0.05g/10min以上であるのが好ましく、0.1g/10min以上であるのが更に好ましく、一方、20g/10min以下であるのが好ましく、10g/10min以下であるのがより好ましい。
【0045】
<水架橋処理>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は水架橋性であるので、水分と接触させることにより樹脂組成物内に架橋構造を形成させることができる。水架橋処理は、常温〜200℃程度、通常は常温〜100℃程度の液状又は蒸気状の水に、10秒〜1週間程度、通常は1分〜1日程度接触させることによりなされるが、このような処理を行わなくても空気中の水分によって架橋することが可能である。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、水架橋処理することによって、難燃性、機械的特性、耐熱性、外観に優れた難燃性架橋ポリオレフィン樹脂組成物を得ることができる。架橋後の難燃性架橋ポリオレフィン樹脂組成物(以下、水架橋ポリオレフィン樹脂組成物という場合がある)は、以下の特性を有する。
【0046】
本発明により得られる水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の架橋度は、65重量%以上が好ましく、より好ましくは70重量%以上である。水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の架橋度が前記範囲であることにより、良好な耐熱性、具体的には、後述するホットセット試験における耐熱性を得ることができる。ここで架橋度とは、144℃の沸騰キシレン中で10時間ソックスレー抽出を行った際の、不溶分の重量%をいうものとする。なお、水架橋する前の樹脂組成物自体が沸騰キシレンに溶解しないものである場合は、適宜他の溶媒に置き換えて測定すればよい。
【0047】
本発明により得られる水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の引張強度(破断強度)は、通常10.3MPa以上であり、好ましくは15MPa以上である。水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の引張強度が前記範囲であることにより、電線被覆の用途に好適に用いることができる。
また、本発明により得られる水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の引張伸び(破断伸度)は、通常50%以上であり、好ましくは150%以上である。水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の引張伸びが前記範囲であることにより、電線被覆の用途に好適に用いることができる。ここで引張強度や引張伸びは、JIS K6251の4.1に規定する3号ダンベルによる200mm/分の引張速度で試験を行った際の引張特性をいうものとする。
【0048】
本発明により得られる水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の耐熱性は、IEC−540Aに準拠したホットセット試験を行った際に、JIS K6251の4.1に規定する3号ダンベルに20N/cmの錘を取り付けた後200℃のオーブンの中に15分間放置した時の伸びが175%以下であることが好ましい。また、錘を取り除いて200℃のオーブンの中に5分間放置した後の伸びが15%以下であることが好ましい。このような耐熱性をもつことにより、例えば電線被覆の用途において、燃焼時にドリップを発生させず、難燃性が向上するので好ましい。
本発明により得られる水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の難燃性は、UL−94に準拠した燃焼試験において、燃焼レベルがV−0であることが好ましい。このような難燃性をもつことにより、例えば電線被覆の用途において好適に使用することができる。
【0049】
<成形品および用途>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形する方法は、押出成形、圧縮成形、射出成形など特に限定するものではないが、樹脂組成物の溶融状態での流動性の観点から押出成形で成形することが望ましい。また成形温度は樹脂組成物の溶融温度より高温であれば限定されないが、150℃〜250℃が望ましい。成形温度が前記下限値より高ければ溶融した樹脂組成物の流動性が高く、目的の形状の成形体を得やすい。また成形温度が前記上限値より低ければ、金属水酸化物の分解による発泡が起こりにくい。
【0050】
なお、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、水架橋処理を行って水架橋ポリオレフィン樹脂組成物とした後に成形してもよいが、水架橋処理を行う前に予め所望の形状に成形しておき、その後に水架橋処理を行うことが好ましい。本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は成形性が良好であるので、例えば押出成形等を行った場合に、表面が平滑であり、スコーチ(焼け痕)等が無い外観が良好な成形品を得ることができる。また、この成形品を水架橋処理することにより、水架橋前と同様に外観が良好な、水架橋ポリオレフィン樹脂組成物の成形品を得ることができる。成形後の水架橋ポリオレフィン樹脂組成物は、前記した架橋度、引張特性、耐熱性、難燃性を有するものである。
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を用いて得られる成形体の用途は特に限定するものではないが、優れた難燃性、機械的特性、耐熱性を併せ持ち、外観に優れることから、絶縁体、シースとして電線・ケーブルに好適に用いることができる。特にUL−94
のV−0レベルの難燃性が望まれる用途において好適な成形品として使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例及び比較例では、以下の原料を用いた。
【0052】
<ポリオレフィン樹脂>
・ポリオレフィン樹脂−1: エチレン−1−ブテン共重合体(ダウケミカル日本株式会社製、密度0.898g/cm)。
・ポリオレフィン樹脂−2: エチレン・酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、密度0.950g/cm、酢酸ビニル含有量25%)。
・ポリオレフィン樹脂−3: 高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、密度0.953g/cm)。
<金属水酸化物>
・水酸化マグネシウム−1: 協和化学工業株式会社製、平均粒径0.8μm、表面処理なし。
・水酸化マグネシウム−2: 協和化学工業株式会社製、平均粒径0.8μm、シランカップリング剤表面処理品。
【0053】
<シラン化合物>
・トリメトキシビニルシラン、信越化学工業株式会社製。
<遊離ラジカル発生剤>
・ジクミルパーオキサイド:日油株式会社製。
<架橋触媒>
・ジオクチルスズジラウレート、日東化成株式会社製。
<酸化防止剤>
・ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASFジャパン株式会社製。
【0054】
(水架橋性ポリオレフィン樹脂の製造)
ポリオレフィン樹脂−1、トリメトキシビニルシラン、ジクミルパーオキサイドをそれぞれ、100/3/0.01重量部の比率で含浸混合したものを準備し、これを40mmφ単軸押出機(L/D=24、フルフライトスクリュー:圧縮比2.7)にて押出樹脂温度200℃で押出した。押出したストランドをペレタイザーでペレット化し、シラングラフトポリオレフィン樹脂として水架橋性ポリオレフィン樹脂を作製した。
(難燃マスターバッチa1〜a10の製造)
上記で得られたシラングラフトポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂−1、ポリオレフィン樹脂−2、水酸化マグネシウム−1、水酸化マグネシウム−2、および酸化防止剤を表−1に示す割合で内容量1.0Lの加圧ニーダーへ挿入し、加圧ニーダーの設定温度70℃で混練し、せん断による自己発熱で樹脂温度が200℃になった時点で混練を終了した。得られた混練物をさらにロールによりシート化した後、ペレタイザーでペレット化して難燃マスターバッチa1〜a10を作製した。
【0055】
(触媒マスターバッチb1〜b3の製造)
ポリオレフィン樹脂−3、架橋触媒、および酸化防止剤を表−1に示す割合で準備し、これらを40mmφ単軸押出機(L/D=24、フルフライトスクリュー:圧縮比2.7)、押出樹脂温度200℃で押出し、ペレタイザーでペレット化して触媒マスターバッチb1〜b3を作製した。
【0056】
【表1】

【0057】
<実施例1〜8、比較例1〜6>
難燃マスターバッチおよび触媒マスターバッチを表−2及び表−3に示す割合で準備し、これを厚み0.5mm×幅45mmのダイスを装備した20mmφ単軸押出機(L/D=22、フルフライトスクリュー:圧縮比2.5)に供給し、押出樹脂温度200℃で押出成形を行ってシートを得た。得られたシートを80℃の温水に8時間浸漬し、水架橋処
理を行い、厚み0.5mmのシートを得た。
水架橋処理を行った上記シートを用い、以下の方法により押出シートの外観、架橋の有無、引張特性、耐熱性、難燃性について測定した結果を表−2及び表−3に示す。
なお、比較例4は、押出成形時の負荷が高過ぎてシートを成形することが出来なかったため、シートの外観および架橋の有無以外の評価は行わなかった。
【0058】
<押出シートの外観>
前記の通り、20mm単軸押出機を用い成形温度200℃で押出成形した際のシート外観を観察し、表面が平滑であり、スコーチ(焼け痕)が無いものを良好と判断し「合格」とした。
<架橋の有無>
水架橋処理後の厚み0.5mmのシートを144℃の沸騰キシレン中で10時間ソックスレー抽出を行うことにより、架橋の有無を確認した。不溶分65重量%以上のものを架橋「有り」とした。
【0059】
<引張特性>
水架橋処理後の厚み0.5mmのシートからJIS K6251の4.1に規定する3号ダンベルを打ち抜き、オートグラフを使用し200mm/分の引張速度で試験を行った。引張強度(破断強度)は10.3MPa以上を合格とし、引張伸び(破断伸度)は150%以上を合格とした。
<耐熱性>
耐熱性の評価としては、IEC−540Aに準拠したホットセット試験を行った。水架橋処理後の厚み0.5mmのシートからJIS3号ダンベルを打ち抜き、ダンベルに20N/cmの錘を取り付けた後200℃のオーブンの中に15分間放置した時の伸び、及び錘を取り除いて200℃のオーブンの中に5分間放置した後の伸びを測定した。錘を取り付けた状態での伸びが175%以下、錘を取り除いた状態での伸びが15%以下の何れも達成している場合を「合格」とした。
【0060】
<難燃性>
難燃性評価用のサンプルは、前記の20mmφ単軸押出機での押出成形ではなく、表面温度140℃のオープンロールで厚み2〜3mmのシートを成形した後、プレス成形(温度190℃、圧力10MPa)で2mm厚みのシートを成形することで得た。得られたプレスシートは、80℃の温水に8時間浸漬し、水架橋処理を行った。
水架橋処理したシートを用いてUL−94に準拠した燃焼試験を行い、燃焼レベルがV−0であるものを「合格」とした。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、金属水酸化物(B)110〜500重量部、水架橋触媒(C)0.001〜0.11重量部を含有することを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂組成物中に、ポリオレフィン樹脂(D)を0.1〜50重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)がシラングラフトポリオレフィン樹脂である請求項1または2に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の電線被覆用難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項6】
請求項1〜3の何れかに記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を被覆してなる電線。
【請求項7】
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対し、金属水酸化物(B)110〜500重量部を混合して難燃マスターバッチを得る工程と、
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂100重量部に対し、水架橋触媒(C)0.01〜10重量部を混合する触媒マスターバッチを得る工程と、
前記難燃マスターバッチと前記触媒マスターバッチとを混合する工程とを有する難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)がシラングラフトポリオレフィン樹脂である請求項7に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
水架橋性ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂がポリオレフィン樹脂(D)である請求項7または8に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。



【公開番号】特開2012−177028(P2012−177028A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40499(P2011−40499)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】