説明

難燃性ポリカーボネート−ABS成形組成物

【課題】難燃性、引っ張り強さ及び降伏応力並びに引っ張り弾性率が改善されたポリカーボネイト−ABS組成物を提供。
【解決手段】A.熱可塑性ポリカーボネート又はポリエステルカーボネート40〜99重量部、B.2<0℃のガラス転移温度と0.20〜0.35μmの平均粒径(d50値)を有する1種以上のグラフトベース95〜5重量%に対する、B.11種以上のビニルモノマー5〜95重量%の、B.グラフトポリマー0.5〜60重量部、C.熱可塑性ビニルコポリマー0〜45重量部、D.リン化合物の混合物0.5〜20重量部、及び、E.フッ素化ポリオレフィン0.05〜5重量部、を含有する熱可塑性難燃性成形組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン化合物により難燃性(flame−retardant)にされそして優れた水準の機械的性質、特に相当改良された極限引張強さ(ultimate tensile strength)及び降伏応力並びに格段の引張弾性率を示すポリカーボネート−ABS成形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ特許公開公報第0363608号(EP−A−0363608)は、芳香族ポリカーボネート及びスチレンを含有するコポリマー又はグラフトコポリマー及び難燃性添加剤としてオリゴマーホスフェートを含有して成るポリマー混合物を記載している。これらの混合物の機械的性質の水準は或る使用の目的にはしばしば十分である。
【0003】
ヨーロッパ特許公開公報第0704488号(EP−A−0704488)は、規定された量比において芳香族ポリカーボネート、スチレンを含有するコポリマー、及び特定のグラフトベースとのグラフトポリマーを含有して成る成形組成物を記載している。これらの成形組成物は非常に良好なノッチ付き衝撃強さを有しておりそして随時リン化合物により難燃性とすることができる。それらの機械的性質の水準は強い弾性荷重(intensified elastic loading)にさらされる成形品の製造には必ずしも満足なものではない。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の目的は、必要な高い水準の難燃性に加えて優れた極限引張強さ及び優れた引張弾性率を有する難燃性ポリカーボネート−ABS成形組成物を提供することである。
【0005】
成分D(下記参照)に従うリン化合物、及び規定された粒径(particle size)のグラフトベースを含んで成るグラフトポリマーを含有するPC/ABS成形組成物を加工して特に強い弾性荷重の下でも非常に良好な水準の機械的性質を有する成形品を形成することができることが今回見いだされた。
【0006】
それ故、本発明は、
A.芳香族ポリカーボネート又はポリエステルカーボネート40〜99重量部、好ましくは60〜98.5重量部と、
B.2 <0℃、好ましくは<−20℃のガラス転移温度と0.20〜0.35μm、好ましくは0.25〜0.30μmの平均粒径(d50値)を有する1種以上のグラフトベース95〜5重量%、好ましくは20〜70重量%に対する、
B.1 1種以上のビニルモノマー5〜95重量%、好ましくは30〜80重量%の
B.グラフトポリマー0.5〜60重量部、好ましくは1〜40重量部、特に2〜25重量部と、
C.熱可塑性ビニル(コ)ポリマー0〜45重量部、好ましくは0〜30重量部、最も好ましくは2〜25重量部と、
D.一般式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
式中、
1、R2、R3及びR4は、互いに独立に、各々、各場合に随時ハロゲン化されていてもよいC1ーC8アルキル、各々随時アルキル、好ましくはC1ーC4アルキル及び/又はハロゲン、好ましくは塩素又は臭素により置換されていてもよいC5−C6シクロアルキル、C6−C20アリール又はC7−C20アラルキルを表し、
nは互いに独立に0又は1を表し、
Nは0〜30を表し、そして
Xは6〜30個のC原子を含む単核又は多核芳香族基を表す、
の少なくとも1種のモノリン化合物(monophosphorus compound)及び少なくとも1種のオリゴリン化合物(oligophosphorus compound)0.5〜20重量部、好ましくは1〜18重量部、最も好ましくは2〜15重量部と、
E. フッ素化ポリオレフィン0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部、最も好ましくは0.1〜0.5重量部、
を含有し、A+B+C+D+Eの全重量部の和は100である、難燃性熱可塑性成形組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
特に好ましい成形組成物は、成分B:Cの重量比が2:1〜1:4、好ましくは1:1〜1:3である成形組成物である。
【0010】
本発明に従う成形組成物においては、成分Dは、好ましくは、各場合にリン化合物の全量に対して、式(I)の少なくとも1種のモノリン化合物10〜90重量%、好ましくは12〜40重量%と式(I)の少なくとも1種のオリゴリン化合物10〜90重量%、好ましくは60〜88重量%の混合物として存在し、その際該混合物は0.3〜20、好ましくは0.5〜10、最も好ましくは0.5〜6の平均Nを有する。
【0011】
成分A
本発明に従って適当な成分Aに従う芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートは、文献から知られているか又は文献から知られている方法により製造することができる(例えば、芳香族ポリカーボネートの製造については、Shnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964,及びドイツ公告公報第1495626号、ドイツ公開公報第2232877号、ドイツ公開公報第2703376号、ドイツ公開公報第2714544号、ドイツ公開公報第3000610号及びドイツ公開公報第3832396号参照。芳香族ポリエステルカーボネートの製造については、例えばドイツ公開公報第3077934号参照)。
【0012】
芳香族ポリカーボネートの製造は、例えば、随時連鎖停止剤、例えばモノフェノール類を使用して、随時三官能性分岐剤又は3より高い官能性を有する分岐剤、例えばトリフェノール類又はテトラフェノール類を使用して、界面法(phase boundary
method)により、ジフェノール類と炭酸ハライド類、好ましくはホスゲン及び/又は芳香族ジカルボン酸ジハライド類、好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライド類との反応により行われる。
【0013】
芳香族ポリカーボネート及び/又は芳香族ポリエステルカーボネートの製造のためのジフェノール類は好ましくは式(II)
【0014】
【化2】

【0015】
式中、
Aは、単結合、C1ーC5アルキレン、C2ーC5アルキリデン、C5−C6シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO2−又はC6−C12アリーレンを表し、該アリーレンには随時ヘテロ原子を含有していてもよい他の芳香族環が縮合していてもよく、又は
式(III)又は式(IV)
【0016】
【化3】

【0017】
の基を表し、
Bは各場合に水素、C1−C12アルキル、好ましくはメチル、又はハロゲン、好ましくは塩素及び/又は臭素を表し、
xは各場合に互いに独立に0、1又は2であり、
pは1又は2であり、そして
5及びR6は、互いに独立でありそして各X1について個々に選択可能であり、水素又はC1ーC6アルキル、好ましくは水素、メチル又はエチルを表し、
1は炭素を表し、そして
mは4〜7、好ましくは4又は5の整数を表し、但しR5及びR6は少なくとも1つのX1原子上のアルキルを同時に表すものとする、
のジフェノール類である。
【0018】
好ましいジフェノール類は、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェノール類、ビス(ヒドロキシフェニル)−C1ーC5−アルカン類、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C5−C6−シクロアルカン類、ビス−(ヒドロキシフェニル)−エーテル類、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホキシド類、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン類、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン類及びα,α′−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン類及び臭素化及び/又は塩素化された核を有するそれらの誘導体である。
【0019】
特に好ましいジフェノール類は、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、及び4,4−ジヒドロキシジフェニル−スルホン及びそれらのジ−及びテトラ臭素化又は塩素化誘導体、例えば、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン又は2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。
【0020】
2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0021】
ジフェノール類は個々に使用するか又は任意の混合物として使用することができる。
【0022】
ジフェノール類は、文献から知られており又は文献から知られた方法により得ることができる。
【0023】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造のための適当な連鎖停止剤の例は、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert.−ブチルフェノール、又は2,4,6−トリブロモフェノール、及び長鎖アルキルフェノール類、例えば、ドイツ公開公報第2842005号に従う4−(1,3−テトラメチル−ブチル)−フェノール又はアルキル置換基において全部で8〜20個のC原子を含むモノアルキルフェノール類又はジアルキルフェノール類、例えば、3,5−ジ−tert.−ブチルフェノール、p−イソ−オクチルフェノール、p−tert.−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノール、及び4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノール、を包含する。使用される連鎖停止剤の量は、一般に、各場合に使用されるジフェノール類のモル和に対して0.5モル%〜10モル%である。
【0024】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、10,000〜200,000、好ましくは20
,000〜80,000の平均重量平均分子量(mean weight average molecular weight)(超遠心により又は散乱光測定により測定されたMw)を有する。
【0025】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、実際に、使用したジフェノール類の和に対して、三官能性化合物又は3より高い官能性の化合物、例えば、3個以上のフェノール基を含む化合物0.05〜2.0モル%の導入により既知の方法で分岐させることができる。
【0026】
ホモポリカーボネート及びコポリカーボネートの両方が適当である。本発明に従う成分A)に従うコポリカーボネートの製造のためには、ヒドロキシ−アリールオキシ末端基を含むポリジオルガノシロキサン類1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%(使用されるべきジフェノール類の全量に対して)を使用することもできる。これらは文献から知られているか(例えば米国特許第3419634号参照)又は文献から知られた方法により製造することができる。例えば、ポリジオルガノシロキサン類を含有するコポリカーボネートの製造はドイツ公開公報第3334782号に記載されている。
【0027】
ビスフェノールAホモポリカーボネートの外に、好ましいポリカーボネートはビスフェノールAと、ジフェノール類のモル和に対して、好ましいものとして又は特に好ましいものとして挙げられている他のジフェノール類、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン15モル%以下とのコポリカーボネートである。
【0028】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための好ましい芳香族ジカルボン酸ジハライド類は、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸及びナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸ジクロリドである。
【0029】
1:20〜20:1の割合のイソフタル酸とテレフタル酸の二酸ジクロリド類の混合物は特に好ましい。
【0030】
炭酸ハライド、好ましくはホスゲンは、ポリエステルカーボネートの製造中に二官能性酸誘導体として共に使用される。
【0031】
前記したモノフェノール類の外に、芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための適当な連鎖停止剤は、そのクロロカルボン酸エステル及び随時C1−C22アルキル基又はハロゲン原子により置換されていてもよい芳香族モノカルボン酸の酸クロリドを包含しそして脂肪族C2ーC22モノカルボン酸クロリドも包含する。
【0032】
連鎖停止剤の量は、フェノール系連鎖停止剤の場合にはジフェノール類のモルに対して及びモノカルボン酸クロリド連鎖停止剤の場合にはジカルボン酸ジクロリド類のモルに対して各場合に0.1〜10モル%である。
【0033】
芳香族ポリエステルカーボネートは組み込まれた(incorporated)ヒドロキシカルボン酸を含有することもできる。
【0034】
芳香族ポリエステルカーボネートは線状であってもよく又は既知の方法で分岐させることができる(この点についてもドイツ公開公報第2940024号及びドイツ公開公報第3007934号参照)。
【0035】
三官能性又は多官能性カルボン酸クロリド類、例えば、トリメシン酸トリクロリド、シアヌール酸トリクロリド、3,3′−4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボン酸テトナクロリド又はピロメリ
ト酸テトラクロリドを、(使用したジカルボン酸ジクロリド類に対して)0.01〜1.0モル%の量で分岐剤として使用することができ、又は三官能性又は多官能性フェノール類、例えば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,4−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシ−フェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル]−フェノキシ)−メタン又は1,4−ビス[4,4′−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]ベンゼンを、使用したジフェノール類に対して0.01〜1.0モル%の量で分岐剤として使用することができる。フェノール系分岐剤はジフェノール類と共に反応器に入れることができる。酸クロリド分岐剤は酸クロリドと共に導入することができる。
【0036】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構造単位の比は任意に変えることができる。カーボネート基の含有率は、エステル基とカーボネート基の和に対して好ましくは100モル%以下、特に80モル%以下、最も好ましくは50モル%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル及びカーボネートフラクションの両方共ブロックの形態で存在することができ又は縮合ポリマー中ににランダムに分布させることができる。
【0037】
芳香族ポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は1.18〜1.4、好ましくは1.22〜1.3の範囲内にある(25℃で100ml塩化メチレン中のポリエステルカーボネート0.5gの溶液に関して測定して)。
【0038】
熱可塑性芳香族ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートはそれら自身で又は互いに混合物として使用することができる。
【0039】
成分B
成分Bは、
B.2 <0℃、好ましくは<−20℃のガラス転移温度と0.20〜0.35μmの平均粒径(d50値)を有する1種以上のグラフトベース95〜5重量%、好ましくは70〜20重量%に対する、
B.1 1種以上のビニルモノマー5〜95重量%、好ましくは30〜80重量%の、
1種以上のグラフトコポリマーを含んで成る。
【0040】
モノマーB.1は好ましくは、
B1.1 芳香族ビニル化合物及び/又は核が置換された芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン又はp−クロロスチレンのような)及び/又は(メタ)アクリル酸のC1ーC4アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート又はエチルメタクリレートのような)50〜99重量部と、
B1.2 シアン化ビニル類(例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリルのような不飽和ニトリル)及び/又は(メタ)アクリル酸のC1ーC4アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレートのような)及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体(無水物及びイミドのような)(例えば無水マレイン酸及びN−フェニルマレインイミド)1〜50重量部、
の混合物である。
【0041】
好ましいモノマーB.1.1は、モノマースチレン、α−メチルスチレン及びメチルメタクリレートの少なくとも1種から選ばれる。好ましいB.1.2は、モノマーアクリロニトリル、無水マレイン酸及びメチルメタクリレートの少なくとも1種から選ばれる。
【0042】
特に好ましいモノマーは、B,1,1としてはスチレンであり、B.1.2グとしてはアクリロニトリルである。
【0043】
グラフトポリマーBのための適当なグラフトベースB.2の例は、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、即ち、エチレン/プロピレン及び場合によりジエンをベースとするゴム、アクリレートゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム及びエチレン/酢酸ビニルゴムをを包含する。
【0044】
好ましいグラフトベースB.2は、ジエンゴム(例えば、ブタジエン、イソプレン等をベースとするジエンゴム)、又はジエンゴムもしくはジエンゴムのコポリマーもしくはその混合物と他の共重合可能なモノマー(例えば、B.1.1及びB.1.2に従う)との混合物であり、但し、成分B.2のガラス転移温度は0℃より低いものとする。
【0045】
純粋なポリブタジエンゴムは特に好ましい。
【0046】
特に好ましいポリマーBの例は、、例えばドイツ公開公報第2035390号、(=米国特許第3644574号)又はドイツ公開公報第2248242号(=英国特許第1409275号)又はUlmann,Enzyklopaedie der Technischen Chemie,Volume 19(1980),pages280 et
seq.に記載のABSポリマーの如きABSポリマー(乳化、バルク及び懸濁ABS)を包含する。グラフトベースB.2のゲル含有率は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%(トルエン中で測定して)であり、そしてグラフトベースB.2の平均粒径は0.20〜0.35μm、好ましくは0.25〜0.30μmである。
【0047】
グラフトコポリマーB.はラジカル重合、例えば乳化重合、懸濁重合、溶液重合又はバルク重合、好ましくは乳化重合により製造される。
【0048】
米国特許第4937285号に従う有機ヒドロペルオキシド及びアスコルビン酸を含んで成る開始剤系によるレドックス開始により製造されるABSポリマーは特に適当なグラフトゴムである。
【0049】
ポリマーBのB.2に従う適当なアクリレートゴムは、好ましくは、随時、B.2に対して、40重量%以下の他の重合可能なエチレン系不飽和モノマーを伴うアクリル酸アルキルエステルのポリマーである。好ましい重合可能なアクリル酸エステルは、C1−C8アルキルエステル、例えば、メチル、エチル、ブチル、n−オクチル及び2−エチルヘキシルエステル;ハロゲノアルキルエステル、好ましくは、ハロゲノ−C1−C8−アルキルエステル、例えば、クロロエチルアクリレート及びこれらのモノマーの混合物を包含する。
【0050】
1個より多くの重合可能な二重結合を有するモノマーを共重合させて架橋を与えることができる。架橋性モノマーの好ましい例は、3〜8個のC原子を含む不飽和モノカルボン酸と3〜12個のC原子を含む不飽和一価アルコール又は2〜4個のOH基を含みそして2〜20個のC原子を含む飽和ポリオールとのエステル、例えばエチレングリコールジメタクリレート又はアリルメタクリレート;多重不飽和複素環式化合物、例えばトリビニルシアヌレート及びトリアリルシアヌレート;多官能性ビニル化合物、例えばジビニルベンゼン類及びトリビニルベンゼン類;及びトリアリルホスフェート及びジアリルフタレート
である。
【0051】
好ましい架橋性モノマーはアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレート、及び少なくも3個のエチレン系不飽和基を含む複素環式化合物である。
【0052】
特に好ましい架橋性モノマーは、環式モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン及びトリアリルベンゼン類である。架橋されたモノマーの量はグラフトベースB.2に対して0.02〜5、特に0.05〜2重量%である。
【0053】
少なくとも3個のエチレン系不飽和基を含む環式架橋性モノマーでは、その量をグラフトベースB.2の1重量%未満に制限するのが有利である。
【0054】
グラフトベースB.2の製造のためのアクリル酸エステルトの外に場合により使用されうる好ましい“他の”重合可能なエチレン系不飽和モノマーの例は、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド類、ビニル−C1ーC6−アルキルエーテル類、メチルメタクリレート及びブタジエンを包含する。グラフトベースB.2として好ましいアクリレートゴムは少なくとも60重量%のゲル含有率を有するエマルションポリマーである。
【0055】
B.2に従う適当な他のグラフトベースは、グラフト活性部位を有するシリコーンゴム、例えば、ドイツ公開公報第3704657号、ドイツ公開公報第3704655号、ドイツ公開公報第3631540号及びドイツ公開公報第3631539号に記載のシリコーンゴムである。 グラフトベースB.2のゲル含有率は適当な溶媒中で25℃で決定される。(M.Hoffmann,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I and II,Georg Tieme−Verlag,Stuttgart 1977)。
【0056】
平均粒径d50は、各場合に粒子の50%がそれより上及び下にあるような直径である。それは超遠心測定によって決定することができる(W Scholtan,H.Lange,Kolloide,Z.and Z.Polymer 250(1972),782−1796)。
【0057】
知られているとおり、グラフトモノマーはグラフト化反応中に実際にはグラフトベースに必ずしも完全にはグラフト化されないので、グラフトポリマーBは、グラフトベースの存在下にグラフトモノマーの(共)重合により得られるこれらの生成物及びそして加工中に共に生じるこれらの生成物も包含するものと理解されるべきでもある。
【0058】
成分C
成分Cは1種以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーを含んで成る。
【0059】
成分Cとして適当なポリマーは芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C1−C8)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸の誘導体(無水物及びイミドのような)より成る群より選ばれる少なくとも1種のモノマーのポリマーである。特に適当な(コ)ポリマーは、
C.1 スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレンのような、芳香族ビニル化合物及び/又は置換された核を含んで成る芳香族ビニル化合物、及び/又は例えばメチルメタクリレート又はエチルメタクリレートのようなメタクリル酸(C1ーC4)−アルキルエステル50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部と、
C.2 アクリロニトリル及びメタクリロニトリルのようなシアン化ビニル類(不飽和ニトリル)及び/又は(メタ)アクリル酸(C1−C8)エステル(例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート又はt−ブチルアクリレートのような)及び/又は不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸)及び/又は不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物及びイミド)(例えば無水マレイン酸及びN−フェニル−マレインイミド)1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部、
の(コ)ポリマーである。
【0060】
(コ)ポリマーCは樹脂状であり、熱可塑性でありそしてゴムを含まない。
【0061】
C.1スチレン及びC.2アクリロニトリルのコポリマーが特に好ましい。
【0062】
Cに従う(コ)ポリマーは知られており、そしてラジカル重合、特に乳化重合、懸濁重合、溶液重合又はバルク重合により製造することができる。成分Cに従う(コ)ポリマーは、好ましくは15,000〜200,000の分子量Mw(光散乱又は沈降により決定された重量平均)を有する。
【0063】
成分Cに従う(コ)ポリマーは、しばしば、成分Bのグラフト重合中に、特に大量のモノマーB1が少量のゴムB.2にグラフトされるとき、副生物として製造される。本発明に従って場合により使用することもできるCの量はBのグラフト重合のこれらの副生物を包含しない。
【0064】
しかしながら、成分Cは或る使用の目的には本発明に従う成形組成物中に存在するべきである。
【0065】
成分Cが成形組成物中に存在するならば、成分B:Cの重量比は、或る使用目的の所望の水準の機械的性質を得るためには、2:1〜1:4、好ましくは1:1〜1:2とするべきである。
【0066】
成分D
成分Dは、式(I)の少なくとも1種のモノリン化合物及び少なくとも2種のオリゴマーリン化合物の混合物である。
【0067】
【化4】

【0068】
この式において、R1、R2、R3及びR4は前記した意味を有する。R1、R2、R3及びR4は、好ましくは互いに独立に、C1ーC4アルキル、フェニル、ナフチル、又はフェニル−C1ーC4−アルキルを表す。芳香族基R1、R2、R3及びR4は、それ自体ハロゲン及び/又はアルキル基、好ましくは塩素、臭素及び/又はC1ーC4−アルキルで置換されていてもよい。最も好ましいアリール基は、クレジル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニル又はブチルフェニル並びに対応する臭素化及び塩素化されたそれらの誘導体である。
【0069】
式(I)のXは6〜30個のC原子を含む単核又は多核芳香族基を表す。これは、例えばジフェニル−フェノール、ビスフェノールA、レゾルシノール又はヒドロキノンのようなジフェノール類又はそれらの塩素化又は臭素化誘導体由来のものである。
【0070】
式(I)のnは互いに独立に0又は1であることができ、nは好ましくは1に等しい。
【0071】
Nは0〜30の値を表し、好ましくは0.3〜20、最も好ましくは0.5〜10、特に0.5〜6の平均値を表す。
【0072】
本発明に従う成分Dとして、好ましくは、リン化合物の全量に対して、式(I)の少なくとも1種のモノリン化合物及び少なくとも1種のオリゴマーリン化合物10〜90重量%、最も好ましくは12〜40重量%を含んで成る混合物又は10〜90重量%、好ましくは60〜88重量%の量のオリゴマーリン化合物の混合物を含んで成る混合物が使用される。
【0073】
式(I)の特定のモノリン化合物は、トリブチルホスフェート、トリス−(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル−2−エチル−クレジルホスフェート、トリ−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、ハロゲン置換アリールホスフェート、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、トリフェニルホスフィンオキシド及び/又はトリクレジルホスフィンオキシドである。
【0074】
式(I)のモノマーリン化合物及びオリゴマーリン化合物の混合物は0.3〜20、好ましくは0.5〜10、特に0.5〜6の平均N値を有する。
【0075】
成分Dに従うリン化合物は知られているか(例えばヨーロッパ特許公開公報第363608号、ヨーロッパ特許公開公報第640655号参照)或いは既知の方法によって類似した方式で製造することができる(例えば、Ulmanns,Enzyklopaedie der Technischen Chemie,Volume 8,page 301 et seq.1979;Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,Volume12/1 page 43;Beilstein Volume 6.page 177)。
【0076】
成分E
フッ素化ポリオレフィンE)は高い分子量でありそして−30℃以上の、一般に100℃以上のガラス転移温度を有する。それらは好ましくは、65〜76重量%、特に70〜76重量%のフッ素含有率及び0.05〜1000μm、好ましくは0.08〜20μmの平均粒径d50を有する。一般に、フッ素化ポリオレフィンE)は、1.2〜2.3g/cm3の密度を有する。好ましいフッ素化ポリオレフィンE)は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及びテトラフルオロエチレン(ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー及びエチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーである。これらのフッ素化ポリオレフィンは知られている(“Vinyl and Related Polymers” by Schildknecht,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1962,pages 484−494;“Fluoropolymers”by Wall,Weley−Interscience,John
Wiley & Sons,Inc.,New York,Volume 13,1970,pages 623−654;“Modern Plastics Encyclopedia”,1970−1971,Volume 47,No.10A,Octob
er 1970.McGraw−Hill,Inc.,New York,pages 134 and 774;“Modern Plastics Encyclopedia”,1975−1976,October 1975,Volume 52,No.10A,McGraw−Hill,Inc.,New York,pages 27,28
and 472;及び米国特許第3671487号、第3723373号及び第3838092号参照)。
【0077】
それらは、既知の方法により、例えば、7〜71kg/cm2の圧力及び0〜200℃の温度、好ましくは20〜100℃の温度における、遊離基を形成する触媒、例えばナトリウムペルオキシジサルフェート、カリウムペルオキシジサルフェート又はアンモニウムペルオキシジサルフェートを使用する水性媒体中でのテトラフルオロエチレンの重合により製造することができる(更なる詳細については、例えば、米国特許第2393967号参照)。それらが使用される形態に依存して、これらの材料の密度は、1.2〜2.3g/cm3であることができ、そしてそれらの平均粒径は0.5〜1000μmであることができる。
【0078】
本発明に従う好ましいポリオレフィンE)は、0.05〜20μm、好ましくは0.08〜10μmの平均粒径及び1.2〜1.9g/cm3の密度を有するテトラフルオロエチレンポリマーである。それらは好ましくはテトラフルオロエチレンポリマーE)のエマルションとグラフトポリマーB)のエマルションとの凝固した混合物(coagulated mixture)の形態で使用される。
【0079】
100〜1000μmの平均粒径及び2.0g/cm3〜2.3g/cm3の密度を有するテトラフルオロエチレンポリマーは、粉末形態で使用することができる適当なフッ素化ポリオレフィンE)である。
【0080】
B)とE)の凝固した混合物を製造するために、グラフトポリマーB)の水性エマルション(ラテックス)をテトラエチレンポリマーE)の微細に分散したエマルションと先ず最初に混合する。適当なテトラフルオロエチレンポリマーエマルションは、通常30〜70重量%、特に50〜60重量%、好ましくは30〜35重量%の固体含有率を有する。
【0081】
成分B)の説明における量的データは、グラフトポリマーとフッ素化ポリオレフィンとの凝固した混合物についてのグラフトポリマーの割合を含むことができる。
【0082】
エマルション混合物において、グラフトポリマーB)対テトラフルオロエチレンポリマーEの平衡比(equilibrium ratio)は95:5〜60:40である。次いで、エマルション混合物を既知の方法で、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、又は好ましくは20〜150℃、特に50〜100℃における、無機又は有機の塩、酸又は塩基、又は水と混和性の有機溶媒、例えばアルコール又はケトンを加えることによる凝固により凝固させる。必要ならば、それは50〜200℃、好ましくは70〜100℃で乾燥することができる。
【0083】
適当なテトラフルオロエチレンポリマーエマルションは、商業的に入手可能な製品であり、そしてデュポン・カンパニーによりテフロン30Nとして販売されている。
【0084】
本発明に従う成形組成物は、慣用の添加剤、例えば、内部滑剤及び離型剤、核剤、帯電防止剤及び安定剤及び着色剤及び顔料の少なくとも1種を含有することができる。
【0085】
更に、本発明に従う成形組成物は、50重量部以下、好ましくは20重量部以下、特に0.5〜10重量部の量の極めて微細に分割された無機粉末を含有することもできる。
【0086】
これらの極めて微細に分割された無機化合物は、酸素、硫黄、ホウ素、リン、炭素、窒素、水素及びケイ素から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素と組み合わせた、元素の周期律表の主族1〜5又は亜族1〜8、好ましくは主族2〜5及び亜族4〜8、最も好ましくは主族3〜5及び亜族4〜8からの1種以上の金属から成る。
【0087】
好ましい化合物の例は、酸化物、水酸化物、水和酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、炭酸塩、炭化物、硝酸塩、亜硝酸塩、窒化物、硼酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、水素化物、亜リン酸塩又はホスホン酸塩を包含する。
【0088】
好ましい極めて微細に分割された無機化合物の特定の例は、TiN、TiO2、SnO2、WC、ZnO、Al23、AlO(OH)、ZrO2、Sb23、SiO2、酸化鉄、Na2SO4、BaSO4、酸化バナジウム、ホウ酸亜鉛、ケイ酸塩、例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及び一次元、二次元及び三次元ケイ酸塩を包含する。混合物及びドープされた化合物を使用することもできる。更に、これらのナノスケール(nano−scale)粒子の表面は、ポリマーとのその相容性を改良するために、有機分子で変性する(modified)ことができる。疎水性又は親水性の表面をこのようにして生成させることができる。
【0089】
平均粒径は、200nm以下、好ましくは150nm以下、特に1〜100nmである。
【0090】
“粒径”(“particle size”and“particle diameter”)という表現は、W.Scholtan et al.,Kolloid−Z.und Z.Polymere 250(1972),pages 782 to 796により記載された超遠心機による測定により決定された平均粒径d50を常に表す。
【0091】
無機化合物は、粉末、ペースト、ゾル、分散液、又は懸濁液として存在することができる。粉末は分散液、ゾル又は懸濁液からの沈殿により得ることができる。
【0092】
粉末は、慣用の方法により、例えば、成形組成物の成分及び極めて微細に分割された無機粉末の直接の混練(kneading)又は押出により、合成熱可塑性材料中に配合することができる。好ましい方法は、例えば、成分A中に難燃性添加剤、他の添加剤、モノマー及び溶媒を含んで成るマスターバッチの製造又は極めて微細に分割された無機材料の分散液、懸濁液、ペースト又はゾルと共にグラフトゴムの分散液からの共沈(co−precipitation)である。
【0093】
本発明に従う成形組成物は、全成形組成物に対して、35重量%以下の、随時相乗効果を有していてもよい更なる難燃剤を含有することができる。更なる難燃剤の例は、有機ハロゲン化合物、例えばデカブロモビスフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール、無機ハロゲン化合物、例えば、臭化アンモニウム、窒素化合物、例えば、メラミン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、無機水酸化物化合物、例えば水酸化Mg又はAl、無機化合物、例えば、酸化アンチモン、メタホウ酸バリウム、ヒドロキソアンチモネート(hydroxoantimonate)、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、メタホウ酸バリウム及び酸化錫並びにシロキサン化合物を包含する。
【0094】
成分A)乃至E)及び随時他の既知の添加剤、例えば、安定剤、着色剤、顔料、内部滑剤、離型剤、及び核剤並びに帯電防止剤を含有する本発明に従う成形組成物は、既知の方式でそれぞれの構成成分を混合することにより及び内部混練機(internal kn
eaders)、押出機及び二軸エンドレススクリュー装置(twin−shaft endless screw devices)のような慣用の加工装置で200〜300℃の温度で溶融物においてそれぞれの構成成分を配合及び押し出すことにより製造され、その際成分E)は好ましくは前記した凝固した混合物の形態で使用される。
【0095】
個々の構成成分の混合は、既知の方法で、約20℃(室温)で又は高められた温度で、引き続いて又は同時に行うことができる。
【0096】
優れた耐燃性、極めて良好な加工性及び極めて良好機械的性質、特に格段の剛性により、本発明に従う熱可塑性成形組成物はいかなる種類の成形品の製造にも適当であり、特に増加した耐破壊性(fracture−resistance)を要求される成形品の製造に適当である。
【0097】
本発明の成形組成物はいかなる種類の成形品の製造にも使用することができる。成形品は、特に射出成形により製造することができる。製造することができる成形品の例は、いかなる種類のハウジング部品も包含し、例えば、ジュースプレス(juice presses)、コーヒー機械(coffee machines)又はミキサーのような家庭用品又は事務機械のためのハウジング部品、建築分野のおおい板(covering panels)及び自動車分野の部品を包含する。これらの成形品は電気工学の分野で使用することもできる。何故ならば、それらは非常に良好な電気的性質を有するからである。
【0098】
他の形態の加工は、予め製造された板又はシートの熱成形(swaging)による成形品の製造である。
【0099】
それ故、本発明は、更に、いかなる種類であれ成形品の製造のための、好ましくは上記した種類の成形品の製造のための本発明に従う成形組成物の使用に関し、そして本発明に従う成形組成物からの成形品にも関する。
【実施例】
【0100】
成分A
25℃で、0.5g/100mlの濃度で溶媒としてCH2Cl2中で測定して1.252の相対溶液粘度を有するビスフェノールAをベースとする線状ポリカーボネート。
【0101】
成分B
乳化重合により製造された粒状の架橋したポリブタジエンゴム(平均粒径d500.28μm)55重量部への、72:28の割合のスチレンとアクリロニトリルとのコポリマー45重量部のグラフトポリマー。
【0102】
成分C
72:28のスチレン/アクリロニトリルの重量比と極限粘度(limiting viscosity)0.55dl/g(20℃でジメチルホルムアミド中で測定して)を有するスチレン/アクリロニトリルコポリマー。
【0103】
成分D.1
3:1の重量比のm−フェニレン−ビス(ジ−フェニル−ホスフェート)[Akzoにより供給されたフィロールフレックス(Fyrolflex) RDP]及びトリフェニルホスフエート(TTP)の混合物。
【0104】
成分D.2
比較としてのトリフェニルホスフエート(TTP)。
【0105】
成分E
水中の前記成分B及び水中のテトラフルオロエチレンポリマーエマルションに従うSANグラフトポリマーエマルションの凝固した混合物としてのテトラフルオロエチレンポリマー。混合物におけるグラフトポリマーB対テトラフルオロエチレンポリマーEの重量比は90重量%対10重量%であった。テトラフルオロエチレンポリマーエマルションは60重量%の固体含有率を有しておりそしてその平均粒径は0.05〜0.5μmであった。SANグラフトポリマーエマルションは34%の固体含有率及びd50=0.28μmの平均ラテックス粒径を有していた。
【0106】
Eの製造
テトラフルオロエチレンポリマーのエマルション(デュポンにより供給されたテフロン30N)をSANグラフトポリマーBのエマルションと混合し、そしてポリマー固体に対して1.8重量%のフェノール系酸化防止剤により安定化させた。混合物を、MgSO4(Epsom salts)の水性溶液及び酢酸によりpH4〜5で85〜95℃で凝固させ、ろ過しそして、実質的に電解質がなくなるまで洗浄し、次いで遠心分離により水の大部分を除去し、次いで100℃で乾燥して粉末を形成した。次いでこの粉末を上記した加工装置において他の成分と配合することができる。
【0107】
本発明に従う成形組成物の製造及び試験
成分を3リットルの内部混練機中で混合した。成形品をアルブルグタイプ270E(Arburg Type 270 E)射出成形機で260℃で製造した。
【0108】
ビカーB耐熱変形性(Vicat B thermal deformation resistance)を寸法80×10×4mm3の試験片でDIN53460(ISO306)に従って決定した。
【0109】
引張弾性率をDIN53457/ISO527に従って決定した。
【0110】
降伏応力をISO527に従って決定した。
【0111】
極限引張強さ(引張試験)をISO527/DIN53455に従って決定した。
【0112】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.熱可塑性ポリカーボネート又はポリエステルカーボネート40〜99重量部と、
B.2 <0℃のガラス転移温度と0.20〜0.35μmの平均粒径(d50値)を有する1種以上のグラフトベース95〜5重量%に対する、
B.1 1種以上のビニルモノマー5〜95重量%の
B.グラフトポリマー0.5〜60重量部と、
C.熱可塑性ビニルコポリマー0〜45重量部と、
D.一般式(I)
【化1】

式中、
1、R2、R3及びR4は、互いに独立に、各々、随時ハロゲン化されていてもよいC1−C8アルキル、各々随時アルキル及び/又はハロゲンにより置換されていてもよいC5−C6シクロアルキル、C6−C20アリール又はC7−C20アラルキルを表し、
nは互いに独立に0又は1を表し、
Nは0〜30を表し、そして
Xは6〜30個のC原子を含む単核又は多核芳香族基を表す、
の少なくとも1種のモノリン化合物及び少なくとも1種のオリゴリン化合物の混合物0.5〜20重量部と、
E.フッ素化ポリオレフィン0.05〜5重量部、
を含有する熱可塑性難燃性成形組成物。
【請求項2】
式(I)のNが0.3〜20の平均値を有する請求項1記載の成形組成物。
【請求項3】
TiN、TiO2、SnO2、WC、ZnO、Al23、AlO(OH)、ZrO2、Sb23、SiO2、酸化鉄、Na2SO4、BaSO4、酸化バナジウム、ホウ酸亜鉛及びケイ酸塩から成る群より選ばれた少なくとも1種の極めて微細に分割された無機化合物、ただし該極めて微細に分割された無機化合物の平均粒径は200nm以下である、を含有する請求項1又は2記載の成形組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つ記載の成形組成物から製造された成形品。

【公開番号】特開2011−246723(P2011−246723A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168532(P2011−168532)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2000−506271(P2000−506271)の分割
【原出願日】平成10年7月29日(1998.7.29)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen, Germany
【Fターム(参考)】