説明

難燃性ポリカーボネートブレンド

【課題】流線強度および耐薬品性、さらに破断点伸び、熱的安定性および溶融流動性に関して良好な特性プロファイルを有する難燃性ポリカーボネート組成物の提供。
【解決手段】A)芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、B)ポリアルキル(アルキル)アクリレート、C)実質的にスチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルがモノマー成分として含まれていない構造のグラフトポリマー、D)有機リン酸エステルおよびE)要すればアンチドリップ剤(anti-drip agent)、およびF)要すればポリマー添加剤および/または別のポリマー、を含有する組成物であって、アルキル(アルキル)アクリレートおよびハロゲンフリーオリゴホスフェートを含有するが、ブタジエン、スチレンおよびアクリロニトリルから構成されるポリマーを含まない、難燃性ポリカーボネート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキル(アルキル)アクリレートおよびハロゲンフリーオリゴホスフェートを含む組成物であって、その構造にはブタジエン、スチレンおよびアクリロニトリルが含まれるポリマーを含まれるポリマーを含まない難燃性ポリカーボネート組成物、並びにその組成物から得られ得る成形物品に関する。本発明による組成物は、流線強度および耐薬品性、さらに破断点伸び、熱的安定性および溶融流動性に関して良好な特性プロファイルを有する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンフリー難燃性ポリカーボネートブレンドは知られている。
【0003】
US-A 5,204,394は、オリゴマー化リン酸エステルによって難燃性にされた、例えばポリカーボネート、スチレン含有コポリマーおよび/またはスチレン含有グラフトポリマーの混合物について開示している。そのようなポリマー混合物の例は、PC/ABSブレンドおよびPC/HIPSブレンドである。
【0004】
いくつかの用途については、その構造にスチレン、ブタジエンおよび/またはアクリロニトリルがモノマー成分として含まれている、ポリマー成分を中へ含んでいない比較特性または改良した特性を有する組成物を提供することが望まれている。そのようなポリマーおよびこれらのポリマーを含んでいる組成物は、それらの製造により、スチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルを含む残存モノマーの微量を常に含んでおり、それから生産される製造物の用途のいくつかの領域における使用にとって必須であると考えられている。
【0005】
JP-A 08 259791およびJP-A 07 316409には、ポリカーボネートに加えて、メチルメタクリレート(MMA)―グラフト化シリコーン/アクリレートコンポジットゴム、モノマー性またはオリゴマー性リン酸エステルおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)もまた含む組成物が記載されている。これらの組成は難燃性で、高いノッチバー衝撃強度を有する。しかしながら、そのような組成物の流動性、特に良好な耐薬品性を達成するために、十分に高い分子量を有するポリカーボネートが用いられるならば、あるいは満足な耐熱性を達成するために、十分に小さなリン酸エステル・フラクションが使用されるならば、概して不十分である。同様のコメントは、US 6,423,766 B1およびUS 6,369,141 B1に記載されている組成物を適用する。
【0006】
EP-A 0463368は、難燃性でかつ改善された流線強度によって特徴づけられるポリカーボネート、PMMA、ABSおよびモノマー状リン酸エステルの組成物について開示している。しかしながら、これらの組成物は、スチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルがない材料に対する前述の望みを満たさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,204,394号明細書
【特許文献2】特開08−259791号公報
【特許文献3】特開07−316409号公報
【特許文献4】米国特許第6,423,766号明細書
【特許文献5】米国特許第6,369,141号明細書
【特許文献6】欧州特許公開第0463368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ブタジエン、スチレンおよびアクリロニトリルからなる群から選択された少なくとも1つのモノマーから構成されたポリマーを含んでおらず、従ってブタジエン、アクリロニトリルおよびスチレン残存モノマーがなく、かつ改善された流線強度、耐薬品性、破断点伸びおよび熱安定性と、同等のPC+ABS組成物と比較して、射出成形プロセスにおける不変の良好な処理可能性、すなわち、溶融流動性および耐炎性によって特徴づけられる性能との良好な特性の組合せによって特徴づけられる難燃性のポリカーボネート組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、芳香族ポリカーボネート、グラフトベースとしてブタジエンフリーおよびスチレンフリーゴムに基づき、およびアルキル(アルキル)アクリレートに基づいたスチレンフリーおよびアクリロニトリルフリーのグラフトシース(sheath)に基づくグラフトポリマー、難燃剤としてハロゲンフリーのリン化合物およびマトリックスとしてアルキル(アルキル)アクリレートに基づいた(コ)ポリマーとのマスターバッチとして好ましくは使用されるアルキル(アルキル)アクリレートおよびフッ素化ポリオレフィンに基づいたコポリマーを含有する組成物が所望性状プロフィルを持っていることが解った。
【0010】
従って本発明は、
A)芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、
B)ポリアルキル(アルキル)アクリレート、好ましくはポリ(C−C−アルキル)アクリル酸C−Cアルキルエステル、特に好ましくはポリアルキルメタクリレート、特にポリメチルメタクリレート(PMMA)、
C)その構造中にスチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルがモノマー成分として実質的に含まれないグラフトポリマー、好ましくはアルキル(アルキル)アクリレート−グラフト化シリコーン、アクリレートまたはシリコーンアクリレートコンポジットゴム
D)有機リン酸エステル、好ましくはオリゴマーのリン酸エステル、特にビスフェノール性化合物でブリッジされたもの、および
E)要すれば、アルキル(アルキル)アクリレートに基づいた(コ)ポリマーにおいてマスターバッチとして好ましく使用される、アンチドリップ剤、好ましくはフッ素化ポリオレフィン、
を含有する組成物を提供する。
【0011】
組成物は、常套のポリマー添加剤(成分F)をさらに含有し得る。
【0012】
本組成物は、好ましくは、
A)芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネート40〜95、好ましくは50〜90、特に60〜90重量部、最も特に好ましくは65〜85重量部、
B)ポリアルキル(アルキル)アクリレート、好ましくはポリアルキルメタクリレート、特にポリメチルメタクリレート0.1〜25、好ましくは0.5〜20、特に1〜10および最も特に好ましくは1〜6重量部、
C)その構造中にスチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルがモノマー成分として実質的に含まれないグラフトポリマー、好ましくはアルキル(アルキル)アクリレート−グラフト化シリコーン、アクリレートまたはシリコーンアクリレートコンポジットゴム0.1〜25、好ましくは0.5〜20、特に1〜15および最も特に好ましくは1〜10重量部、および
D)リン酸エステル、好ましくは有機リン酸エステル、特にビスフェノール性化合物をもちいて架橋化したもの0.2〜30、好ましくは0.5〜25、特に1〜20および最も特に好ましくは2〜17重量部、および
E)好ましくはアルキル(アルキル)アクリレートに基づいた(コ)ポリマーにおいてマスターバッチとして使用したアンチドリップ剤、好ましくはフッ素化ポリオレフィン0〜2、好ましくは0〜1、特に0.1〜1重量部、最も特に好ましくは0.2〜0.5重量部、
を含有し、本発明による組成物が、モノマー性ブタジエン、アクリロニトリルおよびスチレンまたはポリマー性成分(構造)において結合したブタジエン、アクリロニトリルおよびスチレンを有さず、前記全てのおよび任意別成分の重量部の総量が100に標準化したことを特徴とする。
【0013】
本発明の構成において、組成物は、これらの化合物の総量(即ち、残存モノマーとして存在する対応する成分(構造)とポリマー中で結合形態で存在する対応する成分(構造)との総量)が、各々の場合における組成物の総量に対して、0.5重量%、好ましくは0.2重量%、特に0.1重量%および特に好ましくは0.05重量%を超えない量であるならば、ブタジエン、スチレンおよびアクリロニトリルを有さないとみなされる。
【0014】
本発明による組成物は、好ましくはハロゲン含有化合物(例えば、ハロゲン化ビスフェノールに基づく芳香族ポリカーボネートまたはエポキシ樹脂など)およびハロゲン化難燃剤を含まない。
【発明の効果】
【0015】
驚くべきことに、芳香族ポリカーボネート、グラフトベースとしてブタジエンフリーおよびスチレンフリーゴムに基づき、およびアルキル(アルキル)アクリレートに基づいたスチレンフリーおよびアクリロニトリルフリーのグラフトシース(sheath)に基づくグラフトポリマー、難燃剤としてハロゲンフリーのリン化合物およびマトリックスとしてアルキル(アルキル)アクリレートに基づいた(コ)ポリマーとのマスターバッチとして好ましくは使用されるアルキル(アルキル)アクリレートおよびフッ素化ポリオレフィンに基づいたコポリマーを含有する組成物が所望性状プロフィルを持っていることが解った。
【発明を実施するための形態】
【0016】
成分A
本発明による成分Aに従った好適な芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは文献公知であり、文献公知の製造方法によって製造してもよい(芳香族ポリカーボネートの製造については、例えば(Schnell,「ポリカーボネートの化学と物理」(「Chemistry and Physics of Polycarbonates」)、Interscience Publishers,1964年)並びにDE-AS 1495626、DE-A 2232877、DE-A 2703376、DE-A 2714544、DE-A 3000610、DE-A 3832396;芳香族ポリエステルカーボネートの製造については例えば(DE-A 3077934)を参照のこと。
【0017】
芳香族ポリカーボネートの製造は、例えばジフェノールと炭酸ハライド、好ましくはホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸ジハライド、好ましくはベンゼンジカルボン酸ジハライドとを、界面プロセスによって、要すれば連鎖停止剤、例えばモノフェノールを用い、および要すれば三官能またはより高い官能性分岐剤、例えばトリフェノールまたはテトラフェノールを用いて溶融加工または反応することよって合成される。
【0018】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造に用いる好適なジフェノールは、好ましくは式(I):
【0019】
【化1】

[式中、Aは単結合、C〜Cアルキレン、C〜Cアルキリデン、C〜Cシクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C〜C12アリーレンであり、それらはさらなる芳香環、要すればヘテロ原子含有芳香環が縮合してもよく、
または式(II)または(III)で表される基であってもよく:
【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

BはそれぞれC〜C12アルキル、好ましくはメチルであり、
xは互いに独立して0、1または2であり、
pは1または0であり、および
およびRは、各Xと独立に選択されていてもよく、互いに独立して、水素またはC〜Cアルキル、好ましくは水素、メチルまたはエチルを示し、
は炭素を示し、および
mは4〜7の整数、好ましくは4または5であるが、少なくとも1つのX原子上で、RおよびRはともにアルキルである。]
を有する化合物である。
【0022】
好ましいジフェノ−ルはヒドロキノン、レゾルシノ−ル、ジヒドロキシジフェノ−ル、ビス(ヒドロキシフェニル)−C1−C−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C−C−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホンおよびα,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼンである。
【0023】
特に好ましいジフェノールとしては、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが挙げられる。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が最も特に好ましい。
【0024】
ジフェノールは単独でまたはある混合物として使うことができる。ジフェノールは文献公知であり、文献公知の方法で得てもよい。
【0025】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤としては、例えばフェノール、p−t−ブチルフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール、例えばDE-A 2842005による4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノールまたはアルキル置換基に合計8〜20の炭素原子を有するモノアルキルフェノールまたはジアルキルフェノール、例えば3,5−ジ−t−ブチルフェノール、p−i−オクチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノールが挙げられる。使用される連鎖停止剤の総量は通常0.5〜10モル%(それぞれ使用するジフェノールの総モル量に基づく)である。
【0026】
熱可塑性、芳香族ポリカーボネートは公知の方法で分岐、およびより詳細に好ましくは使用したジフェノールの総重量に基づいて、三官能またはそれ以上の化合物(例えば、3またはそれ以上のフェノール基を有する化合物)を0.05〜2.0モル%の量で導入することによって合成する。
【0027】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートはいずれも好適である。使用され得るジフェノールの総量に基づいて1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%のヒドロキシアリーロキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンもまた、本発明による成分Aのコポリカーボネートの製造において使用され得る。これらは例えばUS 3419634で知られており、および/または文献公知の方法によって調製することができる。ポリジオルガノシロキサン−含有コポリカーボネートの製法はDE-A 3334782に記載されている。
【0028】
また、ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて好ましいポリカーボネートとしては、ジフェノールの総モル量に対して15モル%以下を有するビスフェノールAのコポリカーボネート、好ましいまたは特に好ましい上記ジフェノール以外のジフェノールとのコポリカーボネートが挙げられる。
【0029】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための芳香族ジカルボン酸ジハライドは、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0030】
イソフタル酸およびテレフタル酸の二酸二塩化物の割合1:20〜20:1の混合物は特に好ましい。
【0031】
ポリエステルカーボネートの製造において、炭酸ハライド、好ましくはホスゲンを、二官能性酸の誘導体として付加的に共に使用される。
【0032】
また、芳香族ポリエステルカーボネートの製造のための適切な連鎖停止剤としては、上記のモノフェノールに加えて、それらのクロロカルボン酸エステル、並びに芳香族モノカルボン酸の酸クロリド(要すればC〜C22アルキル基で置換されてもよい)、並びに脂肪族C〜C22モノカルボン酸クロリドを使用してもよい。
【0033】
連鎖停止剤の量はいずれの場合も0.1〜10モル%で、フェノール連鎖停止剤の場合はジフェノール1モルあたりの量に基づき、かつモノカルボン酸クロリド連鎖停止剤の場合はジカルボン酸ジクロリド1モルあたりの量に基づく。
【0034】
芳香族ポリエステルカーボネートはまた、結合した芳香族ヒドロキシカルボン酸を含有してもよい。
【0035】
芳香族ポリエステルカーボネートは公知の方法で直鎖状および分岐状でありうる(これに関しては、DE-A 2-940-024およびDE-A 3-007-934を参照のこと)。
【0036】
分岐剤の例としては、3官能性またはそれより高い官能性カルボン酸クロリド、例えばトリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロリドまたはピロメリット酸テトラクロリドが使用されていてもよく、0.01〜1.0モル%の量(使用したジカルボン酸ジクロリドに基づく)で使用されていてもよく、また3官能性またはより高い官能性フェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2,4,4−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]フェノキシ)メタン、1,4−ビス−[4,4'−(ジヒドロキシトリフェニル)メチル]−ベンゼンを、0.01〜1.0モル%(使用ジフェノールに基づく)の量で使用してもよい。フェノール性分岐剤はジフェノールと共に添加してもよく、酸クロリド分岐剤は、酸ジクロリドとともに導入してもよい。
【0037】
熱可塑性、芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構造単位の割合は任意に変化してもよい。好ましいカーボネート基の割合は、エステル基、並びにカーボネート基の総量に基づいて、100モル%以下、特に80モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル成分およびカーボネート成分は、縮合重合物中でブロック型またはランダムに分散された形で存在し得る。
【0038】
熱可塑性、芳香族ポリ(エステル)カーボネートは、好ましくは、(Mをゲル透過クロマトグラフィーで測定して)重量平均分子量M≧18,000、好ましくはM≧23,000、特にM≧25,000g/モルを有する。重量平均分子量40,000以下、好ましくは35,000以下、特に好ましくは33,000g/モル以下のポリ(エステル)カーボネートが本発明において好ましく使用される。
【0039】
熱可塑性、芳香族ポリ(エステル)カーボネートは、単独または任意の混合物中で使用され得る。
【0040】
成分B
好ましいポリアルキル(アルキル)アクリレートは好ましくはアルキル基に1〜8個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するポリアルキルメタクリレート、特に好ましくはポリメチルメタクリレートおよびポリエチルメタクリレートである。ポリアルキル(アルキル)アクリレートはホモポリマーまたはコポリマーとして存在し得る。一般的にポリメチルメタクリレートは商業的に入手可能である。
【0041】
好ましくは用いられるポリアルキル(アルキル)アクリレートは、230℃およびプランジャー荷重3.8kgで測定した溶融流量(melt flow rate)MVR少なくとも8cm/10分、好ましくは少なくとも10cm/10分を有する比較的低分子量ポリマーである。
【0042】
成分C
コア/シェル構造を有するグラフトポリマーは、好ましくはグラフトポリマーCとして使用される。好適なグラフトベースC.1は、例えばアクリレート、ポリウレタン、シリコーン、並びにシリコーン−アクリレートコンポジットゴムが挙げられる。
【0043】
アクリレートゴム、シリコーンゴムおよびシリコーン−アクリレートコンポジットゴムは好ましい。シリコーン−アクリレートコンポジットゴムが特に好ましい。
【0044】
これらのグラフトベースは、一般的に平均粒径(d50値)0.05〜5μm、好ましくは0.1〜2μm、特に0.1〜1μmを有する。
【0045】
平均粒径d50値は、それより上と下にそれぞれ50重量%の粒子が存在する粒径であり、かつ超遠心分離器測定によって決定されうる(W. Scholtan, H. Lange, Kolloid, Z. および Z. Polymere 250(1972年),782-1796)。
【0046】
これらグラフトベースのゲル含量は、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%(トルエン中で測定)である。
【0047】
ゲル含量は、25℃で好適な溶媒中で測定される(M.Hoffmann, H.Kroemer, R.Kuhn, Polymeranalytik I and II, Georg Thieme-Verlag, シュトゥットガルト、1977年)。
【0048】
コア/シェル構造を有するグラフトポリマーCに適したのグラフトベースC.1として特に好適なものは、ポリオルガノシロキサン成分0〜100重量%、好ましくは1〜99重量%、特に10〜99重量%、特に好ましくは30〜99重量%およびポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分100〜0重量%、好ましくは99〜1重量%、特に90〜1重量%、特に好ましくは70〜1重量%(各々のゴム成分全体の量をあわせて100重量%として)を含有する、アクリレートゴム、シリコーンゴムまたはシリコーン−アクリレートコンポジットゴムである。
【0049】
好ましく使用され得るシリコーン−アクリレートゴムは、その製造がJP 08-259791-A、JP 07-316409-AおよびEP-A 0315035に開示されているものである。これらに開示の内容は、本明細書に組み入れられる。
【0050】
シリコーン−アクリレートコンポジットゴム中のポリオルガノシロキサン成分は、乳化重合プロセスにおけるオルガノシロキサンと多官能性架橋剤との反応によって製造され得る。また、好適な不飽和オルガノシロキサンを加えることによってゴムにグラフト活性部位を導入することも可能である。
【0051】
オルガノシロキサンは一般的に環状であり、環状構造は好ましくはケイ素原子3〜6個を含有する。ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサン(これらは単独または2種以上の混合物で使用してもよい)を例示することができる。オルガノシロキサン成分は、シリコーン−アクリレートゴム中のシリコーン成分の構造中に、シリコーンアクリレートゴム中のシリコーン成分に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%の量で包含されるべきである。
【0052】
3−または4−官能性シラン化合物が、一般的に架橋剤として使用される。特に好ましい化合物の例としては:トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシランおよび4官能性分岐剤、特にテトラエトキシシランであってもよい。分岐剤の量は一般的に(シリコーン−アクリレートゴムのポリオルガノシロキサン成分に関して)、0〜30重量%である。
【0053】
シリコーン−アクリレートゴムのポリオルガノシロキサン成分中へのグラフト活性部位の導入のために、好ましくは以下の構造の1つを形成する化合物が使用される:
【0054】
【化4】

[式中Rはメチル、エチル、プロピルまたはフェニルを意味し、
は水素またはメチルを意味し、
nは0、1または2を意味し、かつ
pは1〜6の数を意味する。]
【0055】
(メタ)アクリロイルオキシシランは構造(GI−1)の形成に好適な化合物である。好ましい(メタ)アクリロイルオキシシランは、例えば、β−メタクリロイルオキシエチル−ジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイル−オキシ−プロピルメトキシ−ジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピル−ジメトキシ−メチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシ−シラン、γ−メタクリロイルオキシ−プロピル−エトキシ−ジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピル−ジエトキシ−メチルシラン、γ−メタクリロイルオキシ−ブチル−ジエトキシ−メチルシランが挙げられる。
【0056】
ビニルシロキサン、特にテトラメチル−テトラビニル−シクロテトラシロキサンは構造GI−2を形成することができる。
【0057】
p−ビニルフェニル−ジメトキシ−メチルシランは、例えば、構造GI−3を形成することができる。γ−メルカプトプロピルジメトキシ−メチルシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシ−ジメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシランは構造(GI−4)を形成することができる
【0058】
これらの化合物の量は、(ポリオルガノシロキサン成分に関して)0〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0059】
シリコーン−アクリレートコンポジットゴムにおけるアクリレート成分は、アルキル(メタ)アクリレート、架橋剤およびグラフト活性モノマーユニットから製造されてもよい。
【0060】
好ましいアルキル(メタ)アクリレートの例としては、アルキルアクリレート、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびアルキルメタクリレート、例えば、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびn−ラウリルメタクリレートが挙げられ、特に好ましくはn−ブチルアクリレートである。
【0061】
多官能性化合物が架橋剤として使用され得る。その例としては:エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートおよび1,4−ブチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。
【0062】
例えば、以下の化合物を、グラフト活性部位の導入のために、単独でまたは混合して使用され得る:アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびアリルメタクリレート。アリルメタクリレートは、架橋剤として作用することもできる。これらの化合物は、シリコーン−アクリレートコンポジットゴムにおけるアクリレートゴム成分に関して、0.1〜20重量%の量で使用される。
【0063】
本発明による組成物中に好ましく使用されるシリコーン−アクリレートコンポジットゴムを製造する方法並びにこれをモノマーとグラフトする方法は、例えばUS-A 4888388、JP 08-259791 A2、JP 07-316409AおよびEP-A 0315035に開示されている。グラフトポリマーCに適したグラフトベースC.1は、シリコーン成分とアクリレート成分がコア/シェル構造を形成したシリコーン−アクリレートコンポジットゴム、並びにアクリレート成分とシリコーン成分が互いに完全に相互貫入したネットワークを形成した(相互貫入ネットワーク)シリコーン−アクリレートコンポジットゴムが挙げられる。
【0064】
前述のグラフトベースにおけるグラフト重合は、懸濁液、分散液またはエマルション中で行われ得る。連続または回分式エマルション重合が好ましい。このグラフト重合はフリーラジカル開始剤(例えば、パーオキサイド、アゾ化合物、ヒドロパーオキサイド、パースルフェート、パーホスフェート)とともに、要すればアニオン性乳化剤、例えば、カルボキソニウム塩、スルホン酸塩または有機スルフェートを用いて行われる。高いグラフト率、即ち高い割合のグラフトモノマーのポリマーを有するグラフトポリマーが、化学的にゴムに結合されるものが、このように形成される。
【0065】
グラフトシェルC.2は、(メタ)アクリル酸(C−C)アルキルエステル、好ましくはメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレートから形成される。
【0066】
グラフトシェルは特に好ましくは、1種またはいくつかの純粋な(メタ)アクリル酸(C−C)アルキルエステル、特に純粋なメチルメタクリレートの混合物からなる。
【0067】
成分D
式(IV):
【0068】
【化5】

[式中、R、R、RおよびRは互いに独立してそれぞれC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルを示し、要すればアルキル、好ましくはC〜Cアルキルで置換されていてもよいC〜C20アリールまたはC〜C12アラルキル、
nは互いに独立して0または1を示し、
qは0〜30を意味し、かつ
Xは6〜30個の炭素原子を有する単核または多核芳香族基、または2〜30個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状脂肪族基を意味し、これらはOH−置換されてもよく、8個以下のエーテル結合を含有してもよい。]
を有するハロゲンフリーのオリゴマーリン酸エステルまたはホスホン酸エステルが好ましくは難燃剤として使用される。
【0069】
好ましくは、R、R、RおよびRは互いに独立して、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニルC−Cアルキルを表す。芳香族基R、R、RおよびRはそれ自身、アルキル基、好ましくはC〜C−アルキルで置換され得る。特に好ましいアリール基は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニルである。
【0070】
好ましくは式(IV)でXは6〜30個の炭素原子を有する単核または多核芳香族基を示す。これは好ましくは、式(I)のジフェノールから誘導される。
【0071】
式(IV)のnは互いに独立して0または1であってもよく、nは好ましくは1である。
【0072】
qは0〜30、好ましくは0.5〜15、特に好ましくは0.8〜10、特に1〜5、最も特に好ましくは1〜2の値を示す。
【0073】
Xは好ましくは、
【0074】
【化6】

[特にXはレゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールAまたはジフェニルフェノールから誘導される。特に好ましくはXはビスフェノールAから誘導される。]
を示す。
【0075】
その他の好ましいリン含有化合物は式(IVa):
【0076】
【化7】

[式中R、R、R、R、nおよびqは式(IV)と同意義を有し、
mは互いに独立して0、1、または2を示し、
およびRは互いに独立して、C〜Cアルキル、好ましくはメチルまたはエチルを示し、かつ
Yは、C〜Cアルキリデン、C〜Cアルキレン、C〜C12シクロアルキレン、C〜C12シクロアルキリデン、−O−、−S−、−SO−または−CO−、好ましくはイソプロピリデンまたはメチレンを示す。]
を有する化合物である。
【0077】
【化8】

[ここでq=1〜2]
は特に好ましい。
【0078】
成分Dのリン化合物は公知であり(例えば、EP-A 0363608、EP-A 0640655参照)、公知の方法によって(例えば、「Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie」、第18巻、第301頁以下、1979年、Houben-Weyl, 「Methoden der Organischen Chemie」、第12/1巻、第43頁、「Beilstein」第6巻、第177頁参照)同様に製造され得る。
【0079】
平均q値は、好適な方法(ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC))によってホスフェート混合物の組成(モル質量分布)を測定し、これからqについて平均値を計算することによって同定され得る。
【0080】
成分E
成分Dによる難燃剤は、しばしば、いわゆるアンチドリップ剤(anti-drip agents)と組合せて使用され、これは火災時に燃焼する液滴を生じる材料の傾向を低減するものである。フッ素化ポリオレフィン、シリコーン、並びにアラミドファイバーを含有する物質群からの化合物がここに例示され得る。これらはまた、発明による組成物中に使用され得る。フッ素化ポリオレフィンは好ましくは液滴防止剤として使用される。
【0081】
フッ素化ポリオレフィンは公知であり、例えばEP-A 0640655に開示されている。これらは例えば、デュポン社によって商品名Teflon(登録商標)30Nで市販されている。
【0082】
フッ素化ポリオレフィンは純粋な形態で使用され得る。しかしながら、これらは好ましくはマスターバッチの形態で使用される。
【0083】
マスターバッチとして、例えば、フッ素化ポリオレフィンのエマルションと、グラフトポリマー(成分C)のエマルションとまたはアクリレートベース(コ)ポリマー(成分B)のエマルションとの凝集混合物を使用することができ、その場合、フッ素化ポリオレフィンが、グラフトポリマーまたはコポリマーのエマルションと、エマルションとして混合され、かつ、その次に凝集される。
【0084】
さらに、このマスターバッチは、フッ素化ポリオレフィンを、グラフトポリマー(成分C)または(コ)ポリマー(成分B)、好ましくはポリメチルメタクリレートとプレコンパウンド化して調製することができる。フッ素化ポリオレフィンを、粉末として、グラフトポリマーまたはコポリマーの粉末または顆粒材料とともに混合し、一般に200〜330℃の温度で、常套の装置、例えば、インターナルニーダー、押出機または二軸押出機中で溶融中でコンパウンド化する。
【0085】
マスターバッチは、フッ素化ポリオレフィンの水性分散体の存在下に、少なくとも1つのアルキル(アルキル)アクリレートモノマーのエマルション重合によってさらに調製され得る。酸を用いた沈殿およびそれに続く乾燥の後、ポリマーは流動性パウダーとして使用される。
【0086】
マスターバッチは通常、フッ素化ポリオレフィンの固形分含量5〜95重量%、好ましくは7〜80重量%を含有する。
【0087】
フッ素化ポリオレフィンは、好ましくは0〜2重量部、好ましくは0〜1重量部、特に0.1〜1重量部および最も特に好ましくは0.2〜0.5重量部の濃度で用いてもよく、これらの量はマスターバッチを使用する場合には、純粋なフッ素化ポリオレフィンに対するものである。
【0088】
成分F(別の添加剤)
本発明による組成物はまた、20重量部以下、好ましくは10重量部以下、および特に5重量部以下の少なくとも1種の常套のポリマー添加剤、例えば、潤滑剤または離型剤、例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート、成核剤、静電防止剤、安定剤、光安定剤、充填剤および強化剤、染料または顔料、並びに別の難燃剤または難燃相乗剤、例えばナノスケールの形態の無機物質および/またはシリケート物質、例えばタルクまたは珪灰石を含んでもよい。
【0089】
本発明による組成物はまた、別のポリマー成分、例えばポリフェニレンオキシド、ポリエステル、エポキシ樹脂またはノボラック樹脂の20重量部以下、好ましくは10重量部以下および特に5重量部以下を含有し得る。
【0090】
本明細書中すべての重量部は、組成物中のすべての成分の重量部の合計が100になるように標準化される。
【0091】
本発明による組成物は、種々の成分を公知の方法で混合し、200℃〜300℃の温度で、常套の装置、例えば、インターナルニーダー、押出機および二軸押出成形機中で、溶融コンパウンド化および溶融押出することによって製造される。
【0092】
各々の成分の混合は、既知の方法で、並びに連続的にまたは同時に、およびより特に約20℃(室温)、ならびにより高温で実施してもよい。
【0093】
本発明による組成物は、すべてのタイプの成形部品の製造に用いられ得る。これらは例えば、射出成形、押出成形およびブロー成形法によって製造され得る。さらに形成の形態は、予め熱成形されたシートまたはフィルムから成形部品を製造することである。
【0094】
本発明はまた、組成物の製造方法、その成形部品の製造のための使用、並びにそれらの成型部品自体を提供する。
【0095】
このような成形部品の例は、シート、プロファイル付セクション、すべてのタイプのハウジング部品、例えば、家庭用品用、例えば、ジュースプレス、コーヒーメイキングマシン、ミキサー;オフィス装置用、例えば、モニター、プリンター、複写機;またパネル、チューブ、電気取付ダクト、建築および建物領域用の内装および外装用途用のプロファイル付セクション;電気装置領域用の部品、例えば、スイッチおよびプラグ、および内外自動車部品である。
【0096】
特に、本発明による組成物は、以下の成形部品を製造するために使用することができる、例えば:軌道車、船、飛行機、バスおよび自動車用の内部構造部品、小さい変圧器を含む電気装置用のハウジング、情報処理および通信のために使用される装置用のハウジング、医療目的のハウジングおよびケーシング、マッサージ機およびそのためのハウジング、子供用おもちゃの自動車、平面壁要素、安全装置および設備用のハウジング、浴室用成形部品、換気口用のカバー格子およびガーデニング用品用のハウジングが挙げられる。
【0097】
以下の実施例は本発明をより詳細に説明するものである。
【実施例】
【0098】
実施例
表1に記載し、以下に簡単に説明した成分をZSK−25マシンで、240℃で溶融コンパウンドした。試験片をArburg270E型射出成形装置において、240℃で製造した。
【0099】
成分A
ゲル透過クロマトグラフィーによる重量平均分子量(M)26,000g/モルを有するビスフェノールAに基づいた直鎖状ポリカーボネート。
【0100】
成分B1
Plexiglas(登録商標)6N:Roehn GmbH & Co. KG(ドイツ国、Darmstadt)からのポリメチルメタクリレート(230℃およびプランジャー荷重3.8kgで測定した溶融流量(melt flow rate)MVR 12cm/10分を有する)。
【0101】
成分B2
スチレン:アクリロニトリルの重量比73:27および固有粘度0.55dl/g(20℃でメチレンクロリド0.5g/100ml溶液中で測定した)を有するスチレン/アクリロニトリルコポリマー。
【0102】
成分C1
平均粒径d50=0.3μmを有し、エマルション重合によって製造された架橋化ポリブタジエンゴム60重量部上で重量比73:27のスチレンおよびアクリロニトリルのコポリマー40重量部のABSグラフトポリマー。
【0103】
成分C2
Paraloid(登録商標)EXL2300:(Rohm & Haas(ベルギー国、Atnwerp))からのメチルメタクリレート−グラフト化ブチルアクリレートゴム)。
【0104】
成分C3
Metablen(登録商標)S2001:三菱レーヨン株式会社(日本国、東京)からのメチルメタクリレート−グラフト化シリコーン−ブチルアクリレートコンポジットゴム。
【0105】
成分D
ビスフェノールAに基づいたオリゴフォスフェート:
【0106】
【化9】

【0107】
成分E1
Blendex(登録商標)449: General Electric Speciality Chemicals、オランダ国、ベルヘン・オフ・ゾーム)のスチレン−アクリロニトリルコポリマー50重量%およびPTFE50重量%を含有するテフロンマスターバッチ。
【0108】
成分E2
PTFE60重量%およびPMMA40重量%のPTFE/PMMAマスターバッチ。
【0109】
成分F1/F2
ペンタエリスリトールテトラステアレート(PETS)(F1)
ホスファイト安定剤(F2)
【0110】
応力亀裂特性(ESC特性)を、80mm×10mm×4mmの大きさのロッドで試験した。60体積%のトルエンと40体積%のイソプロパノールの混合物を試験媒体として使用した。試験体を環状のテンプレートを用いて事前に延伸し、かつこの試験体の破砕が起こるまでの時間を予備延伸の関数として決定した。破砕が5分以内に起こる最小の予備延伸を評価した。
【0111】
破断点伸びを、ISO 527による引張試験で決定した。
【0112】
火炎特性を、サイズ127mm×12.7mm×1.5mmのロッド上でUL-Subj. 94Vに従って評価した。
【0113】
HDT/Aの測定は、ISO 75によって行った。
【0114】
溶接線強度(flow line strength)を測定するために、耐衝撃性を、ISO 179/1Uに従って、両側にゲートされた170mm×10mm×4mmの大きさの試験体の溶接線で測定した。
【0115】
熱可塑性流量特性MVR(溶融体積流量(melt volume flow rate))をISO 1133に従って測定した。
【0116】
本発明による組成物およびそれから得られた試験体の特性の要約は、表1に与える。すべての組成物はPTFE0.4重量%およびポリビニル(コ)ポリマー(SANまたはPMMA)3.4重量%を含有し、後者はB1および成分Eの対応する画分の総量を表わす。
【0117】
表1 成形組成物およびそれらの特性
【0118】
【表1】

【0119】
V = 比較例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)芳香族ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートまたはそれらの混合物、
B)ポリアルキル(アルキル)アクリレート、
C)実質的にスチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルがモノマー成分として含まれていない構造のグラフトポリマー、
D)有機リン酸エステル、および
E)要すればアンチドリップ剤(anti-drip agent)、および
F)要すればポリマー添加剤および/または別のポリマー、
を含有する組成物であって、該組成物におけるスチレン、アクリロニトリルおよびブタジエンの総量、即ち、残存モノマーとして存在する対応する構造およびポリマーにおいて結合した形態で存在する対応する構造との合計が、組成物の総量に対して0.5重量%の最大値を超えないことを特徴とする組成物。
【請求項2】
スチレン、アクリロニトリルおよびブタジエンの最大含量が、組成物の総量に対して合計で0.1重量%を超えない、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
スチレン、アクリロニトリルおよびブタジエンの最大含量が、組成物の総量に対して合計で0.05重量%を超えない、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
成分A 40〜95重量部、
成分B 0.1〜25重量部、
成分C 0.1〜25重量部、
成分D 0.2〜30重量部および
成分E 0〜2重量部
を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ポリアルキル(アルキル)アクリレート(成分B)がプランジャー荷重3.8kgを用いて、230℃で測定した溶融流量(MVR)少なくとも8cm/10分を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
ポリアルキル(アルキル)アクリレートが、ポリメチルメタクリレートである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
グラフトポリマーCのグラフトベースが、シリコーンゴム、アクリレートゴムおよびシリコーン−アクリレートコンポジットゴムからなる群の少なくとも1つから選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
グラフトポリマーCのグラフトシースが、(メタ)アクリル酸(C−C)アルキルエステルまたは(メタ)アクリル酸(C−C)アルキルエステルの混合物から構成される、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
グラフトポリマーCのグラフトベースが、アクリレートゴム、シリコーンゴムおよびシリコーン−アクリレートコンポジットゴムからなる群の少なくとも1つから選択され、なおかつ、グラフトシースが純粋なメチルメタクリレートから構成される、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
リン酸エステルまたは式(IV):
【化1】

[式中、R、R、RおよびRは互いに独立して各々C〜C−アルキル、またはC〜C−シクロアルキルを示し、要すればいずれの場合もアルキルによって置換されてもよいC〜C20−アリールまたはC〜C12−アラルキルであり、
nは互いに独立して0または1であり、
qは0〜30であり、かつ
Xは6〜30個の炭素原子を有する単核または多核芳香族基、または2〜30個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状脂肪族基を意味し、これらはOH−置換されてもよく、かつ8個以下のエーテル結合を含有してもよい。]
で表されるリン酸エステルが成分Dとして含有される、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
成分Dが、q値0.5〜15を有するオリゴマー状リン酸エステルまたはリン酸エステルである、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
qが1〜2を示す、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
式IVのXが:
【化2】

を示す、請求項8記載の組成物。
【請求項14】
XがビスフェノールAから誘導される、請求項11記載の組成物。
【請求項15】
成分A) 65〜85重量部、
成分B) 1〜6重量部、
成分C) 1〜10重量部、
成分D) 2〜17重量部および
成分E) 0.2〜0.5重量部
を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
アンチドリップ剤がフッ素化ポリオレフィンである、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
フッ素化ポリオレフィンが、マトリックスとしてポリアルキル(アルキル)アクリレートを用いるマスターバッチの形態において使用される請求項14記載の組成物。
【請求項18】
潤滑剤および離型剤、成核剤、静電防止剤、安定剤、光安定剤、染料、顔料、フィラーおよび強化材料、成分Dと異なる難燃剤、および難燃性相乗剤からなる群の少なくとも1つから選択される成分Fによる添加剤、および/またはポリフェニレンオキシド、ポリエステル、エポキシ樹脂およびノボラック樹脂からなる群から選択された成分Fに属するさらなるポリマー化合物を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
構造が高温で混合、次いで溶融コンパウンドまたは溶融押出される、請求項1記載の組成物の製造方法。
【請求項20】
成形部品の製造のための、請求項1記載の組成物の使用。
【請求項21】
請求項1記載の組成物を含有する成形部品。

【公開番号】特開2011−46956(P2011−46956A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237668(P2010−237668)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【分割の表示】特願2006−501570(P2006−501570)の分割
【原出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】