説明

難燃性ポリカーボネート樹脂組成物

【課題】 高湿度条件下におかれた場合でも加水分解し難く、耐湿性が改良され、透明性、耐衝撃性、耐熱性、熱安定性などに優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂0〜80重量%と、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂100〜20重量%の合計量100重量部に、オルガノポリシロキサン0.1〜15重量部、および、有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部をそれぞれ配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物において、前記オルガノポリシロキサンが、重量平均分子量が400〜1500で、分子中に必須置換基としてフェニル基を有し、かつ、オルガノオキシ基の含有量が5重量%未満であることを特徴とする、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【効果】 上記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、この難燃性樹脂組成物からの成形品が高湿度条件下に置かれた場合でも加水分解し難く、耐加水分解性(耐湿性)が改良され、さらに燃焼時の滴下防止性の改良された難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート樹脂は優れた機械的性質を有しており、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野をはじめその他の工業分野においても、部品製造用材料として広く利用されている。一方、OA機器、家電製品等の用途を中心に、部品製造用材料としての合成樹脂材料には難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるために多数の難燃剤、難燃化した樹脂組成物が開発され提案されている。
【0003】ポリカーボネート樹脂を難燃化するには、従来、主にハロゲンを含有する化合物が使用されていた。ハロゲンを含有する化合物は、これを配合した樹脂組成物の熱安定性を低下させたり、成形機のスクリューや成形金型などを腐食させるなどの欠点があるほか、近年は、環境汚染などの問題があるので、ハロゲンを含有する化合物の減量を目的として、例えばリン酸エステル系化合物、またはリン酸エステル系化合物とフェノール系安定剤とを併用した難燃性組成物が提案されている。しかし、こうした難燃性ポリカーボネート樹脂組成物においては、耐衝撃性や熱安定性が低下するという欠点があった。
【0004】基体樹脂にハロゲンを含有しない化合物を配合して難燃化する技術として、例えば基体樹脂のポリカーボネート樹脂に、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩と、置換基としてアルコキシ基、ビニル基およびフェニル基を有する有機シロキサンとを配合した難燃性組成物が提案されている(特許第2719486号公報参照)。この刊行物に記載の発明は、基体樹脂に置換基としてビニル基を含有した有機シロキサンを配合することによって難燃性を改良することを目論んでいる。しかしこの樹脂組成物では、使用される有機シロキサンの詳細な構造は記載されておらず、また、得られる樹脂組成物の耐湿性の改良効果は十分とはいえない。
【0005】他方、特開平10−139964号公報には、芳香環を有する非シリコーン樹脂に、難燃剤として機能する重量平均分子量が1万〜27万の範囲のシリコーン樹脂を添加した難燃性樹脂組成物が記載されている。この刊行物に記載の難燃性樹脂組成物では、基体樹脂である芳香環を有する非シリコーン樹脂の難燃性は改良されるが、配合されるシリコーン樹脂の分子量が高いため、この分子量の高いシリコーン樹脂をポリカーボネート樹脂に配合する場合には、ポリカーボネート樹脂自体が本来持っている透明性を損なうという欠点がある。また、アルコキシ基を有するシリコーン樹脂のアルコキシ基の含有量が高いと、難燃性樹脂組成物またはこれから得られる成形品を高湿度条件下に置いた場合に、容易に吸湿して透明性を大幅に損なう(耐湿性に劣る)という問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、次のとおりである。
1.高湿度条件下に置かれた場合でも加水分解し難い、耐加水分解性(耐湿性)の改良された難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供すること。
2.耐衝撃性、耐熱性、熱安定性などに優れた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供すること。
3.ハロゲンを含む化合物の使用量を可及的に少なくして、成形機スクリューや成形金型などの腐食の問題を大幅に改良した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供すること。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明では、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂0〜80重量%と、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂100〜20重量%とよりなる基体樹脂の合計量100重量部に、オルガノポリシロキサン0.1〜15重量部、および有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部をそれぞれ配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物において、前記オルガノポリシロキサンが、重量平均分子量が400〜1500で、分子中に必須置換基としてフェニル基を有し、かつ、オルガノオキシ基の含有量が5重量%未満であることを特徴とする、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0008】
【発明の実施の態様】以下、本発明を詳細に説明する。本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の基体樹脂を構成するもので、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって製造され、分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。この樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、または、溶融法(エステル交換法)などの従来法によって製造することができる。さらに、溶融法で末端基のOH基量を調整して製造された芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0009】芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられる。これらの中でも特に好ましいのは、ビスフェノールAである。
【0010】芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、m−およびp−メチルフェノール、m−およびp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、およびp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
【0011】芳香族ポリカーボネート樹脂として好ましいのは、2,2ービス(4ーヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、原料成分の異なる2種以上の重合体および/または共重合体の混合物であってもよい。難燃性をさらに高める目的で、前記の芳香族ジヒドロキシ化合物に、スルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物、および/または、シロキサン構造を有するポリマーあるいはオリゴマーを共重合させるとができる。
【0012】直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、メチレンクロライドを溶媒として用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量が、16,000〜30,000の範囲のものが好適であり、中でも特に好ましいのは18,000〜26,000の範囲のものである。この直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは、好ましくは1.1以下である。
【0013】難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の基体樹脂を構成する、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂としては、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられ、特開平8ー259687、特開平8ー245782に記載されているように、触媒の条件または製造条件を選択することにより、分岐剤を添加することなく、溶融法(エステル交換法)によって、構造粘性指数が高く、加水分解安定性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0014】本発明において「構造粘性指数N」とは、文献(小野木重治著、化学者のためのレオロジー、第15〜16頁)に記載の式(1.15)および式(1.17)より応力σを消去し、数式より所定のγの2点間を直進近似して、傾き(1ーN)/NおよびNを求める。傾きについては、粘度挙動が大きく異なる低せん段域で評価することができる。因みに、γ=12.16 sec-1およびγ=24.32sec-1でのηからN値を決定することができる。
【0015】
【数1】


【0016】
【数2】


【0017】
【数3】


【0018】
【数4】


【0019】
【数5】


【0020】(上記の数式において、Nは構造粘性指数、aは定数、ηaは見かけの粘度、ηは粘度をそれぞれ意味する。)
【0021】なお、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を、溶融法で製造る際に分岐剤を使用することもできる。さらに必要に応じ、例えば、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部に代えて、次に挙げる化合物を使用することもできる。化合物の具体例としては、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどで示されるポリヒドロキシ化合物、または、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノールなどが挙げられる。その使用量は0.01〜10モル%の範囲であり、特に好ましいのは0.1〜2モル%の範囲である。
【0022】ホスゲン法(界面法)においても同様に、前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部に代えて上記に挙げる化合物を使用することにより、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0023】構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、メチレンクロライドを溶媒として用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量が、16,000〜100,000の範囲のものが好適であり、中でも特に好ましいのは18,000〜30,000の範囲のものである。
【0024】本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の基体樹脂は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂0〜80重量%と、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂20〜100重量%とよりなる。なお、樹脂組成物の耐衝撃性、流動性などを勘案すると、構造粘性指数Nの高い芳香族ポリカーボネート樹脂を配合するのが好ましい。
【0025】本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、上記の基体樹脂の芳香族ポリカーボネート樹脂に、特定構造のオルガノポリシロキサンが配合されてなる。特定構造のオルガノポリシロキサンは、分子中に必須の置換基としてフェニル基を含有するものを使用する。なお、置換基としてはフェニル基以外のものを含有していてもよい。オルガノポリシロキサンの置換基としてのフェニル基は、オルガノポリシロキサンと芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性を向上させ、かつ、樹脂組成物の難燃性を向上させるように機能する。
【0026】上記のオルガノポリシロキサンは、GPC法によって測定した重量平均分子量が400〜1500の範囲のものから選ぶものとする。オルガノポリシロキサンの分子量が400未満であると、低分子量体の含有量が多くなって、基体樹脂のポリカーボネート樹脂と溶融混合する際に系外に揮発する成分が多くなり、難燃効果が発揮されず好ましくないし、他方分子量が1500を越えると、基体樹脂への分散性が不良となって、最終的に得られる難燃性樹脂組成物から得られる成形品の透明性、衝撃強度が低下すると共に、燃焼時の表面移行性が悪くなって、期待される燃焼効果が発揮されず好ましくない。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、好ましくは400〜1400であり、より好ましくは500〜1300である。
【0027】オルガノポリシロキサンが、ケイ素原子に結合する全有機基、および、オルガノオキシ基の酸素原子を介してケイ素原子に結合する有機基を含む全置換基の合計重量に占めるフェニル基の割合が、30〜70重量%の範囲となるように選ぶのが好ましい。オルガノポリシロキサン分子中の全置換基に占めるフェニル基の割合が30重量%未満であると、最終的に得られる難燃性樹脂組成物の難燃効果が十分に発揮されず、しかも基体樹脂の芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性が低下して不均一な分散となり、この難燃性樹脂組成物から得られる成形品の外観(透明性)、耐衝撃性などが低下する原因となる。他方、全置換基に占めるフェニル基の割合が70重量%を越えると、基体樹脂の芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性が高くなりすぎて、燃焼時の表面移行性が悪くなり、この場合も難燃効果が低下してしまう。
【0028】オルガノポリシロキサンは、さらに分子中に占めるアルコキシ基の含有量が5重量%未満のものが好ましい。このオルガノポリシロキサン中のアルコキシ基は、燃焼時のドリップを抑える効果を発揮するものであるが、他方、難燃性樹脂組成物またはこれから得られる成形品を高湿度条件下に置いた場合には、吸湿水分と加水分解反応してアルコールを生成させ、耐湿性に劣り、成形品の透明性を損なう虞れがある。従って、耐湿性という観点からは、オルガノポリシロキサンの分子中のアルコキシ基含有量を5重量%未満として、上記の加水分解反応に寄与するアルコキシ基の量を少なくすることによって、難燃性樹脂組成物またはこれから得られる成形品の耐湿性を大幅に向上させることが可能で、透明性に優れた成形品を得ることができる。
【0029】また、このように分子中にフェニル基を含有し、アルコキシ基含有量を5重量%未満のたオルガノポリシロキサンは、本質的に非反応性のものであり、高耐熱性を有することから、300℃以下の温度範囲においてはほとんどその構造が変化しないため、再使用(リサイクル)が可能な難燃性ポリカーボネート樹脂成形品製造用の原料樹脂とすることができる。アルコキシ基は、その反応性および難燃性の観点から、イソプロポキシ基、2ーブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基などから選択される炭素数が3〜6個の2級、および/または、3級のアルコキシ基であるのが好ましい。
【0030】さらに、オルガノポリシロキサンは、その分子中に含むSi−OH基としての水酸基の含有量が2重量%以下のものが好ましい。これは、分子中に含む水酸基の含有量が2重量%を越えると、基体のポリカーボネート樹脂と溶融混合する際に、Si−OH基間での縮合反応が起こり易く、オルガノポリシロキサンが高分子量化し、分散性が不良となり、最終的に得られる難燃性樹脂組成物および成形品の透明性、衝撃強度低下の原因となると共に、燃焼時の表面移行性が悪くなって難燃性も低下するからである。
【0031】本発明で必須成分とするオルガノポリシロキサンは、従来から知られている方法によって容易に製造することができる。すなわち、目的とするオルガノポリシロキサンの分子構造および分子量に従って、フェニル基を有するオルガノクロロシラン類に適宜のアルコールと水を反応させた後、必要に応じて添加した有機溶媒、副生する塩酸や低沸分を除去することによって、フェニル基を含有するオルガノポリシロキサンを製造することができる。また、フェニル基を有するアルコキシシラン類を出発原料とする場合には、同様に目的とするオルガノポリシロキサンの分子量に従って、所定量の水を添加して加水分解反応を進行させる方法によって製造することができ、この場合には、塩酸、酢酸などの酸触媒またはアンモニア、水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒を使用することができる。
【0032】また、この際には、各種シリル化剤を使用して、残存アルコキシ基の含有量を低下させると共に、生成するSi−OH基をキャッピングすることが好ましく、副生するアルコールなどの不純物を除去することによって、同様にオルガノポリシロキサンを製造することができる。いずれの場合においても、フェニル基の含有量、アルコキシ基の種類と含有量および分子量は、各原料の種類と使用量を選ぶことによって容易に調整することができる。
【0033】オルガノポリシロキサンの分子中に含まれる置換基としてのフェニル基、アルコキシ基などは、NMRによって測定することができる。分子中に含むSi−OH基としての水酸基の含有量(重量%)は、グリニヤ法に従って、所定量のオルガノポリシロキサンをメチルグリニヤ試薬と反応させて、生成するメタンガスを定量することによって測定することができる。
【0034】本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、基体樹脂の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、上記オルガノポリシロキサンを0.1〜15重量部の範囲で配合する。配合量が0.1重量部未満では最終的に得られる難燃性樹脂組成物の難燃効果が不十分であるし、15重量部を越えた場合は、難燃効果の向上がみられないばかりでなく、衝撃強度などの機械的特性が大幅に低下するので好ましくない。オルガノポリシロキサンの配合量は、好ましくは0.2〜10重量部であり、より好ましくは0.3〜5重量部である。
【0035】本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、さらに、有機スルホン酸金属塩を配合する。有機スルホン酸金属塩としては、脂肪族スルホン酸金属塩、芳香族スルホン酸金属塩などが挙げられる。有機スルホン酸金属塩の金属としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムなどが挙げられる。有機スルホン酸金属塩は、2種以上の混合物であってもよい。
【0036】有機スルホン酸金属塩としては、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩、芳香族スルホンスルホン酸金属塩などが挙げられる。中でも好ましいのは、前者のパーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩である。パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ金属塩、パーフルオロアルカン−スルホン酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。中でも好ましいのは、炭素数が1〜8個のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ金属塩、炭素数が1〜8個のパーフルオロアルカン基を有するスルホン酸アルカリ土類金属塩などである。
【0037】パーフルオロアルカン−スルホン酸の具体例としては、パーフルオロメタン−スルホン酸、パーフルオロエタン−スルホン酸、パーフルオロプロパン−スルホン酸、パーフルオロブタン−スルホン酸、パーフルオロヘキサン−スルホン酸、パーフルオロヘプタン−スルホン酸、パーフルオロオクタン−スルホン酸などが挙げられる。
【0038】芳香族スルホンスルホン酸金属塩としては、好ましくは、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩などが挙げられ、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ金属塩、芳香族スルホンスルホン酸アルカリ土類金属塩は重合体であってもよい。
【0039】芳香族スルホンスルホン酸金属塩の具体例としては、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのナトリウム塩、4・4’−ジブロモジフェニル−スルホン−3−スルホンのカリウム塩、4−クロロ−4’−ニトロジフェニルスルホン−3ースルホン酸のカルシウム塩、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3・3’−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。
【0040】有機スルホン酸金属塩の配合量は、基体樹脂の芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲で選ぶものとする。有機スルホン酸金属塩の配合量が0.01重量部未満であると、最終的に得られる難燃性樹脂組成物の難燃性が充分でなく、5重量部を越えると熱安定性が低下し、いずれも好ましくない。有機スルホン酸金属塩の配合量は、上記範囲の中では0.01〜4重量部が好ましく、特に好ましいのは0.02〜3重量部である。
【0041】本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤などの安定剤、顔料、染料、滑剤、上記以外の難燃剤、滴下防止剤、離型剤、摺動性改良剤などの添加剤、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、ウィスカーなどの強化材、または基体樹脂を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を添加配合することができる。
【0042】配合できる他の熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6・6などのポリアミド系樹脂、ゴム強化ポリスチレン、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。他の熱可塑性樹脂の樹脂の配合量は、最終的に得られる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0043】本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、その主成分となる基体樹脂はハロゲンを含まない芳香族ポリカーボネート樹脂であるのが好ましく、またこの基体樹脂に配合される各成分もハロゲンを含む化合物を極力少なくするか、非ハロゲンの化合物とするのが好ましい。このようなハロゲンを含む化合物を極力少なくしたか、非ハロゲンの化合物とした難燃性樹脂組成物は、熱安定性、耐衝撃性や耐熱性の低下が少なく、成形機のスクリューや成形金型の腐食の問題、環境汚染の問題も生起こり難くなり好ましい。
【0044】本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の調製方法には、特に制限はなく、例えば、(1)基体樹脂の芳香族ポリカーボネート樹脂、オルガノポリシロキサンおよびスルホン酸金属塩、さらに必要に応じ、他の添加剤などをそれぞれ所定量秤量し、一括混合して溶融混練する方法、(2)基体樹脂の芳香族ポリカーボネート樹脂、オルガノポリシロキサンおよびスルホン酸金属塩などをあらかじめ溶融混練した後、さらに必要に応じ、他の添加剤を配合し溶融混練する方法などが挙げられる。
【0045】本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を調製する際の混合・混練は、従来から知られている混合機・混練機、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダーなどを用いて行うことができる。混練に際しての加熱温度は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する原材料の種類、割合などにより変るが、240〜300℃の範囲で選ばれる。
【0046】こうして得られる本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、ガス射出成形法、精密射出成形法など、従来から知られている成形法によって容易に目的の製品・部品などの成形品を製造することができる。得られた成形品は、機械的強度、耐熱性、耐湿性、成形時の熱安定性などに優れると共に、成形品の表面外観、難燃性、燃焼時の非ドリップ性などの諸特性に優れていることから、自動車分野、電気・電子分野、OA機器分野、家庭電器分野などの広い分野で、製品・部品製造用材料として利用することができる。
【0047】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0048】なお、実施例および比較例においては使用した各成分は、次のとおりである。
(1)直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂:ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネートであって、粘度平均分子量が21,000で構造粘性指数Nが1.0のもの(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンS−3000、以下、「直鎖状PC」と略記する)。
(2)構造粘性指数Nが1.2以上のポリカーボネート樹脂:以下のN−PC−1ないしN−PC−3の合成例に記載の方法で調製したものである(以下、「N−PC」と略記する)。
【0049】(3)オルガノポリシロキサン:前記したオルガノポリシロキサンの製造方法に従い、表−1に示した各種物性を有するオルガノポリシロキサン(S−1ないしS−5)を合成した。なお、各オルガノポリシロキサンにおける全置換基中のフェニル基含有量(重量%)と、分子中のアルコキシ基含有量(重量%)はNMRによって測定し、重量平均分子量はGPC法によって測定した。さらに、分子中におけるSi−OH基としての水酸基含有量(重量%)は、グリニヤ法に従って、所定量のオルガノポリシロキサンをメチルグリニヤ試薬と反応させて、生成するメタンガスを定量することによって測定した。
(4)有機スルホン酸金属塩−1:パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(大日本インキ化学工業社製、商品名:F−114)。
【0050】
【表1】


【0051】なお、得られた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物についての物性評価は、以下に記載の方法によって行ったものである。
(a)燃焼性試験:厚さが1.6mmおよび1.2mmのUL規格の試験片につき、垂直燃焼試験を行った。ULクラスは、「V0」はV0合格を、「V2」はV2合格を、「V2NG」はV2に合格しないことをそれぞれ意味する。
(b)荷重撓み温度(℃):厚さ6.4mmの曲げ試験片を使用し、18.5kg/cm2荷重下での撓み温度を測定した。
【0052】(c)アイゾット衝撃強度(kg-cm/cm2):厚さ3.2mmで、0.25Rのノッチを切削した衝撃試験片につき、衝撃強度を測定した。
(d)成形品のヘーズ(%):射出成形機で成形した厚さ3mmのプレートにつき、プレッシャークッカー(以下、PCTとする)によって試験する前と(「PCT前」という)、120℃の温度で5時間試験を行った後(「PCT後」という)、ヘーズメータによってヘーズを測定した。PCT後の値が大きくなるほど、成形品の耐湿性が劣ることを意味する。
【0053】<構造粘性指数Nが1.2以上のN−PCの合成>[N−PC−1の合成]窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールA(BPA)とジフェニルカーボネート(DPC)とを一定のモル比(DPC/BPA=1.040)に混合調整した溶融混合物を88.7kg/hrの流量で、原料導入管を介して常圧、窒素雰囲気下、140℃に制御した第1竪型撹拌重合槽内に連続供給し、平均滞留時間が60分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ液面レベルを一定に保った。また、上記原料混合物の供給を開始すると同時に、触媒として0.02重量%の炭酸セシウム水溶液を320ml/hr(BPA1モルに対して、1×10-6モル)の流量で連続供給した。
【0054】第1重合槽の槽底より排出された重合液は、引き続き、直列に配した第2、3、4の竪型重合槽および第5の横型重合槽に逐次連続供給した。各槽では、反応の間、平均滞留時間が60分になるように液面レベルを制御し、また同時に、副生するフェノールの留去も行った。重合条件はそれぞれ、第2重合槽(220℃、100Torr、160rpm)、第3重合槽(240℃、15Torr、130rpm)、第4重合槽(270℃、0.5Torr、44rpm)、第5重合槽(285℃、0.5Torr、5rpm)とし、重合反応の進行と共に高温、高真空、低撹拌速度に条件を設定した。
【0055】ポリカーボネートの製造速度は、50kg/hrである。こうして得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は27000であった。得られたポリカーボネート樹脂を溶融状態のまま、3段ベント口を具備し、樹脂供給口にもっとも近いベント口の手前に酸性化合物圧入孔を有した二軸押出機に供給し、連続的に酸性化合物の溶液(アセトン600ml、純水500ml、パラトルエンスルホン酸ブチル7g)を35g/hrの流量で添加し脱揮した後ペレット化した。得られた分岐状ポリカーボネート樹脂(N−PC−1)の構造粘性指数Nを、前記の評価方法で測定したところ1.46であった。
【0056】[N−PC−2の合成]窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールA(BPA)とジフェニルカーボネート(DPC)とを一定のモル比(DPC/BPA=1.040)に混合調整した溶融混合物を88.7kg/hrの流量で、原料導入管を介して常圧、窒素雰囲気下、210℃に制御した第1竪型撹拌重合槽内に連続供給し、平均滞留時間が60分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ液面レベルを一定に保った。また、上記原料混合物の供給を開始すると同時に、触媒として0.02重量%の炭酸セシウム水溶液を320ml/hr(BPA1モルに対して、1×10-6モル)の流量で連続供給した。
【0057】第1重合槽の槽底より排出された重合液は、引き続き、直列に配した第2、3、4の竪型重合槽および第5の横型重合槽に逐次連続供給した。各槽では、反応の間、平均滞留時間が60分になるように液面レベルを制御し、また同時に、副生するフェノールの留去も行った。重合条件はそれぞれ第2重合槽(210℃、100Torr、200rpm)、第3重合槽(240℃、15Torr、100rpm)、第4重合槽(270℃、0.5Torr、44rpm)、第5重合槽(285℃、0.5Torr、55rpm)とし、重合反応の進行と共に高温、高真空、低撹拌速度に条件を設定した。
【0058】ポリカーボネートの製造速度は、50kg/hrである。こうして得られたポリカーボネート樹脂のMvは、22500であった。得られたポリカーボネート樹脂を溶融状態のまま、3段ベント口を具備し、樹脂供給口にもっとも近いベント口の手前に酸性化合物圧入孔を有した二軸押出機に供給し、連続的に酸性化合物の溶液(アセトン600ml、純水500ml、パラトルエンスルホン酸ブチル7g)を35g/hrの流量で添加し脱揮した後ペレット化した。得られた分岐状ポリカーボネート樹脂(N−PC−2)の構造粘性指数Nを、前記の評価方法で測定したところ1.28であった。
【0059】[N−PC−3の合成]撹拌機付き反応容器にBPA250Kg、分岐剤として1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン1.678kg、水酸化ナトリウム水溶液1220リットルおよび塩化メチレン550リットル、脱イオン水450リットルをそれぞれ仕込んだ。反応容器内容物を撹拌しつつ、ホスゲンを123kg吹き込んだ後、水相と有機相を分離させて上液を採取し、さらに水酸化ナトリウム235リットル、脱イオン水100リットル、塩化メチレン275リットル、p−tert−ブチルフェノール6.414kgをそれぞれ仕込み、5分間静置し、その後10分間撹拌を行い、トリエチルアミンを添加し、1時間重縮合反応を行った。
【0060】得られた反応溶液を、水相と生成ポリマーを含有する有機相とに静置分離し、上液を採取し、撹拌しながら塩化メチレンを800リットル加えて排出し、水および酸によって洗浄し、得られた有機相から塩化メチレンを減圧除去し、Mvが26600の分岐状ポリカーボネート樹脂を得た。得られた分岐状ポリカーボネート樹脂(N−PC−3)の構造粘性指数Nを、前記の評価方法で測定したところ1.39であった。
【0061】[実施例1〜実施例5]直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂を0〜100重量部に対し、構造粘性指数Nが1.2以上のPC(N−PC−1、N−PC−2、N−PC−3)、前記表−1に掲げたオルガノポリシロキサン(S−1ないしS−5)、および、有機スルホン酸金属塩を、それぞれ表−2に記載した割合で秤量し、タンブラーによって20分混合した。得られた混合物を、シリンダー温度を270℃とした30mmφの二軸押出機によって溶融・混練してペレット化した。得られたペレットを原料とし、シリンダー温度を270℃とした射出成形機によって、厚さ1.6mmと1.2mmの燃焼試験片を成形した。さらに、同じ射出成形機で、シリンダー温度を270℃とし、アイゾット衝撃試験片、曲げ試験片、および厚さ3mmのプレートを成形した。得られた試験片およびプレートにつき、前記の評価試験を行った。評価試験結果を、表−2に示す。
【0062】[比較例1〜比較例3]実施例1に記載の例おいて、オルガノポリシロキサンの種類および配合量を表−2に示したように変更したほかは、同例におけると同様の手順でペレット化し、試験片を成形し、得られた試験片につき同様に評価試験を行った。評価試験結果を、表−2に示す。
【0063】
【表2】


【0064】表−1および表−2より、次のことが明らかである。
(1)基体樹脂の芳香族ポリカーボネート樹脂に配合されるオルガノポリシロキサンが、置換基のメトキシ基が1%と少ない場合(実施例1、実施例2)、アルコキシ基が2−ブトキシ基で2%の場合(実施例3)には、得られた難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、いずれも衝撃強度が高く、厚さの異なる試験片でも難燃性はV−0合格となり優れており、しかもPCT前後の成形品のヘーズは低く耐湿性に優れている。
【0065】(2)分岐状PCー1をホスゲン法によって製造した分岐状PCー3に変えた材料(実施例4)、溶融法によって製造した分岐状PC−2のみの材料(実施例5)のいずれも、難燃性、耐衝撃性、耐湿性いずれも良好であった。
(3)これに対して、実施例1の配合処方から分岐状PC−1を除いた材料(比較例1)では、1.2mmでの燃焼性がVー2(滴下綿着火)となり難燃性の観点からは十分とはいえない。実施例5と比較例1とから、より肉薄成形品での燃焼性を向上させる必要がある場合には、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂の配合が必須であることが分かる。
【0066】(4)さらに、オルガノポリシロキサンの分子量が1600と大きい場合(比較例2)には、衝撃強度は低く、いずれの厚さの試験片でも難燃性はVー2と劣り、さらに成形品のPCT前のヘーズが大で透明性が悪い。この結果から、成形品の耐湿性(PCT前後のヘーズ変化)を改良するには、オルガノポリシロキサンの分子量を1000以下にすることが好ましいことが分かる。
(5)また、オルガノポリシロキサンとして、置換基のメトキシ基を36%、フェニル基を40%含有するものを配合した場合は(比較例3)、成形品のPCT前のヘーズは低く透明性は影響を受けないが、PCT後のヘーズは高くなり、耐湿性は劣る。この結果から、成形品の耐湿性(PCT前後のヘーズ変化)を改良するには、オルガノポリシロキサンの置換基のアルコキシ基の量を低くすることが必要であることが分かる。
【0067】
【発明の効果】本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、構造粘性指数Nが1.2以上の分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を20重量%以上含む芳香族ポリカーボネート樹脂を基体樹脂とするので、耐衝撃性などの機械的強度に優れているほか、肉薄成形品でも優れた難燃性を発揮する。
2.本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品は、オルガノポリシロキサンと有機スルホン酸金属塩とが、特定の範囲で配合されているので、高湿度条件下に置かれた場合でも加水分解し難く、耐湿性に優れている。
【0068】3.本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、基体樹脂とオルガノポリシロキサンとの相溶性が優れているので、耐衝撃性などの機械的強度に優れている。
4.本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、肉薄成形品における難燃性に優れているだけでなく、熱安定性、耐衝撃強度にも優れている。
5.本発明に係る難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、ハロゲンを含まないポリカーボネート樹脂を基体樹脂とし、ハロゲンを含まない有機スルフォン酸金属塩を組合せると、成形時に使用する成形機のシリンダー、成形金型などの腐食性の問題が大幅に改良される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂0〜80重量%と、構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂100〜20重量%とよりなる基体樹脂の合計量100重量部に、オルガノポリシロキサン0.1〜15重量部、および有機スルホン酸金属塩0.01〜5重量部をそれぞれ配合してなる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物において、前記オルガノポリシロキサンが、重量平均分子量が400〜1500で、分子中に必須置換基としてフェニル基を有し、かつ、オルガノオキシ基の含有量が5重量%未満であることを特徴とする、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】 直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が、16,000〜30,000である、請求項1に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】 構造粘性指数Nが1.2以上の芳香族ポリカーボネート樹脂のそれぞれの粘度平均分子量が、16,000〜100,000である、請求項1または請求項2に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】 オルガノポリシロキサンが、ケイ素原子に結合する全有機基、および、オルガノオキシ基の酸素原子を介してケイ素原子に結合する有機基を含む全置換基の合計重量に占めるフェニル基の割合が30〜70重量%である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】 オルガノポリシロキサンの残存オルガノオキシ基が、炭素数が3〜6個の2級および/または3級のアルコキシ基である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】 オルガノポリシロキサンが、分子中にSi−OH基としての水酸基を2重量%以下の範囲で含有するものである、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】 有機スルホン酸金属塩が、パーフルオロアルカン−スルホン酸金属塩である、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。