説明

難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物、及び該組成物を塗布してなる塗工品

【課題】物質表面にブリード現象が生じない難燃性皮膜を付与するに適すると共に、作業性にも優れた、ノンハロゲン系水系ポリウレタン樹脂組成物を提供すること
【解決手段】ポリイソシアネート成分(a)と下記式(1)で表されるリン含有ポリオール化合物を必須成分とするポリオール成分(b)とを反応させて得られたウレタンプレポリマーを水に分散させ、次いで該ウレタンプレポリマーを鎖伸長させてなる水系ポリウレタン樹脂組成物。前記式(1)で表される化合物に対応する単位が、ウレタン樹脂固形分中のリン含有量として0.3〜5.0%となるように含有されていることを特徴とする。但し、式中のRは炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、mは1〜10の数、nは1〜10の数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンを含有する特定のポリオールを必須とした水系ポリウレタン樹脂組成物、及び該組成を塗布してなる塗工品に関し、特に、難燃性に優れた皮膜を提供することが可能な難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物、及び前記皮膜を有するネット、メッシュ、シート、等の他、テント倉庫やパイプテント等の屋外テント等に代表される、難燃性を必要とするノンハロゲン系の塗工品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性、接着性、非粘着性及びゴム弾性等を有する塗膜や成形品を与えるので、塗料、接着剤、バインダー及びコーティング剤等として広く用いられている。
【0003】
従来の溶剤系塗工材においては、作業における引火性及び臭気等が避けられないため、環境の改善や作業性の向上及び廃溶剤等の産業廃棄物を低減する等、種々の改善が求められており、環境汚染や労働衛生等の安全性の面から、水系塗工材が有望視されている。
【0004】
例えば、建築現場で用いられる養生用ネット、メッシュ及びシート等には、ポリエステル繊維又はナイロン繊維が使用されてきたが、難燃性、防水性、耐候性及び耐久性等を付与するために、これらの繊維には通常ポリ塩化ビニルゾルがコーティングされており、また、このポリ塩化ビニルゾルには、DOP(ジオクチルフタレート)等の可塑剤が添加される場合もあった。
【0005】
しかしながら、昨今の環境問題の高まりを背景に、これらの養生用ネット等を焼却する際に発生するダイオキシン等の有毒ガスや、DOP等の可塑剤が環境ホルモンであるという問題等の理由から、上記ポリ塩化ビニルゾルを他の材料によって代替すべきであるとの要請が強くなっている。
【0006】
また、ポリ塩化ビニルは、それ自体ある程度の難燃性を有しているが、更に難燃剤が添加されることが多い。従来、この難燃剤も臭素や塩素といったハロゲンを含有する化合物であることが多く、ダイオキシン等の有毒ガスが発生するという問題がある。この様な問題を解決するために、下記特許文献1〜3に開示されている様なポリリン酸塩、芳香族縮合リン酸エステル等のリン系化合物、更に水酸化マグネシウム等の無機化合物が使用されているが、前記したような添加型のリン系化合物は可塑化効果も有するため、多量に添加すると塗膜の強度が極端に低下したり、更には、塗膜表面のベタツキ(タック)やブリードが生じたりするという問題もある。また、無機系難燃剤の場合においては、多量に添加しないと難燃性の効果が発現せず、塗膜の耐擦過性や柔軟性等の性能が劣る等の問題があり、何れも満足するものは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−505239号公報
【特許文献2】特開2006−206835号公報
【特許文献3】特開2008−081916号公報
【0008】
本発明者らは上記の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一定のポリオキシアルキレン構造を有するリン酸エステル系のポリオール化合物は、水系ポリウレタン樹脂に配合しても耐加水分解性が良好である上、難燃性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。この発見は、リン酸エステル系化合物は一般に耐加水分解性に劣り、特に水系樹脂に配合した場合にはその加水分解性が大きく懸念されるだけでなく、酸素原子を多く有するポリオキシアルキレン構造が燃えやすいものであると一般に認識されていることからすると、驚くべき発見である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の第1の目的は、物質表面にブリード現象が生じない難燃性皮膜を付与するに適すると共に、作業性にも優れた、ノンハロゲン系水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、塗膜表面にブリード現象が生じないだけでなく、難燃性に優れた皮膜を有する上、焼却時に有害なハロゲン化合物を生成することのない塗工品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち本発明は、ポリイソシアネート成分(a)と、下記一般式(1)で表されるリン含有ポリオール化合物を必須成分として含有するポリオール成分(b)とを反応させて得られたウレタンプレポリマーを水に分散させ、次いで該ウレタンプレポリマーを鎖伸長させてなる水系ポリウレタン樹脂組成物であって、前記一般式(1)で表される化合物に対応する単位が、ウレタン樹脂固形分中のリン含有量として0.3〜5.0%となるように含有されていることを特徴とする難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物、及び、該組成物を塗布してなる塗工品である。


但し、(1)式中のRは炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、mは1〜10の数、nは1〜10の数を表す。
本発明においては、特に、mが2〜5の数、nが2〜3の数であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の難燃性塗工用水系ポリウレタン樹脂組成物は、リン含有ポリオール成分をウレタン骨格に含有するので、被塗工材に、表面ブリードがなく、かつ、難燃性に優れた塗膜を容易に付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物は、リンを含有する特定のポリオール成分を必須とすること以外は、原料の構造や水分散方法等において特に限定されることはなく、公知の原料(ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)、イオン性基導入成分(c)、イオン性基中和剤成分(d)、乳化剤成分(e)及び鎖伸長剤成分(f)等)を用い、公知の方法によって製造することができる。
【0013】
本発明で使用する(a)成分のポリイソシアネートは特に限定されるものではないが、ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス及び/又はシス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類等;及びこれらの混合物が挙げられる。また、イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートを使用することもでき、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、及びこれらの混合物等からなる3官能以上のイソシアネート、これら3官能以上のイソシアネートのカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物、これらを各種のブロッキング剤によってブロックしたブロックイソシアネート、前記したジイソシアネートのイソシアヌレート三量体及びビウレット三量体等が挙げられる。
【0014】
本発明においては、これらの中でも、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートを使用した場合には、特に、密着性、耐食性、及び強度等に優れた水系ポリウレタン樹脂組成物が得られるので好ましい。
【0015】
本発明に係る水系ポリウレタン樹脂組成物の最大の特徴は、前記(a)成分のポリイソシアネートと、下記一般式(1)で表される、リン含有ポリオールとの反応生成物である、難燃性ポリウレタンを必須成分として含有する点にある。
一般式(1):

上記一般式(1)におけるRは炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、その具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。製造容易性の観点からはエチレン又はプロピレンが好ましく、更に、本発明の特徴である難燃性の観点からは、特にプロピレンが好ましい。
【0016】
前記一般式(1)におけるmは1〜10の数を表わす。mが増加するに伴って水酸基官能基数(m+2)が増すので、形成されるウレタン樹脂の架橋密度も増す。したがって、mが増加するに伴ってウレタンプレポリマーの水分散性や、塗膜として形成されたときのウレタン樹脂の特性である柔軟性が損なわれる傾向となる。mが10を超えると上記柔軟性が極端に損なわれるので好ましくない。また、前記柔軟性及び原料リン化合物の入手容易性の観点から、mは1〜5の数であることが好ましく、ウレタンプレポリマーの水分散性、最終的に形成されるウレタン樹脂塗膜における難燃性及び柔軟性のバランスの観点から2〜4であることがより好ましく、2であることが最も好ましい。
【0017】
前記一般式(1)におけるnは1〜10の数を表し、好ましくは1〜5であり、より好ましくは2〜3である。nが10を超えるとポリエーテル鎖が増えるので、本発明の効果である難燃性が劣る傾向となる。nが1未満では、酸性基(P(=O)OH)が残存するという問題や、低分子量であるためにウレタン樹脂の架橋密度が増加し、これによってウレタンプレポリマーの水分散性やウレタン樹脂の塗膜物性が低下する等といった傾向が生じるので好ましくない。nが1〜10の数であれば、上記した性能のバランスが良好である。
【0018】
前記一般式(1)で表される、リン含有ポリオールの使用量は、形成されるポリウレタン樹脂中のリン含有量が、0.3〜5.0%となる量であることが必要であり、0.7〜4.0%となる量であることが好ましく、1.5〜3.5%となる量であることがより好ましい。使用量が0.3%より少ないと難燃性の効果が不十分となり、5.0%を超えると、ウレタンプレポリマーの水分散性、水系ポリウレタン樹脂組成物の保存安定性及びポリウレタン樹脂塗膜の機械物性等が、それぞれ不十分となる。
【0019】
本発明で使用することのできる、前記一般式(1)で表されるリン含有ポリオール以外のポリオールについては、特に限定されることはない。具体例としては、数平均分子量200未満の低分子ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエステルポリカーボネートポリオール類、結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオール類等が挙げられる。
上記したように、本発明で使用する(b)成分のポリオールは、前記一般式(1)で表されるリン含有ポリオールのみで有っても良いし、本発明の効果が得られる範囲で、更に、それ以外のポリオールが含有されていても良い。
【0020】
前記低分子ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のポリオールが挙げられる。
【0021】
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの他、ビスフェノールA、エチレンジアミン等のアミン化合物等へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。本発明に用いられるポリエーテルポリオール類の数平均分子量は300〜5000であることが好ましく、特に1000〜3000であることが好ましい。
【0022】
前記ポリエステルポリオール類としては、既に例示した低分子ポリオール等のポリオールと、(1)その化学量論量より少ない量の多価カルボン酸又はそのエステル若しくはその無水物、若しくはそのカルボン酸ハライド等のエステル形成性誘導体、及び/又は、(2)ラクトン類、若しくはその加水分解開環反応によって得られるヒドロキシカルボン酸との、直接エステル化反応、及び/又はエステル交換反応によって得られるものが挙げられる。
【0023】
上記多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類等の多価カルボン酸が挙げられる。これらの多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらの酸無水物、該多価カルボン酸のクロライド、ブロマイド等のカルボン酸ハライド、該多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステル等が挙げられる。
【0024】
前記ラクトン類としては、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチルε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。本発明に用いられるポリエステルポリオール類の数平均分子量は300〜5000であることが好ましく、特に500〜3000であることが好ましい。
【0025】
前記ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルグリコ−ルとアルキレンカーボネートとの反応生成物、エチレンカーボネートを多価アルコ−ルと反応させ、次いで、得られた反応混合物と有機ジカルボン酸との反応生成物等が挙げられる。
【0026】
前記結晶性又は非結晶性のポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコール等のジオールとホスゲン、ジアリルカーボネート(例えばジフェニルカーボネート)若しくは環式カーボネート(例えばプロピレンカーボネート)との反応生成物等が挙げられる。
【0027】
鎖伸長剤(f)により高分子化された本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、アニオン性基及びカチオン性基等のイオン性基導入成分(c)、或いはポリエチレングリコール基等の親水性基等を、ポリウレタン骨格中に導入して水中に分散させた、自己乳化系ポリウレタン樹脂組成物であっても良いだけでなく、界面活性剤等の乳化分散剤成分(e)を用いた強制乳化系ポリウレタン樹脂組成物であっても良く、これら自己乳化及び強制乳化の併用系組成物であっても良い。
【0028】
前記(c)成分であるイオン性基導入成分としては、アニオン性基を導入するものとカチオン性基を導入するものが挙げられる。アニオン性基を導入するものとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられる。また、カチオン性基を導入するものとしては、例えば、N,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N−ブチル−N,N−ジエタノールアミン等のN−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類が挙げられる。
【0029】
前記イオン性基導入成分(c)の使用量は、用いるポリオール及びポリイソシアネートの種類や使用する乳化剤との関係にもよるが、イオン性基導入成分を用いた自己乳化系においては、通常、水系ポリウレタン樹脂を構成する全ての反応成分に対して0.5〜50質量%使用し、好ましくは1〜30質量%使用する。0.5質量%未満では、得られた水系ポリウレタン樹脂組成物の保存安定性が劣り、また、50質量%を超えて使用すると、ウレタンプレポリマーの水分散性やウレタン塗膜の物性に悪影響を及ぼすことがある。
【0030】
前記イオン性基中和剤成分(d)の内、アニオン性基の中和剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン類、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、1−ジメチルアミノ−2−メチル−2−プロパノール等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン類等の3級アミン化合物;アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物が挙げられる。カチオン性基の中和剤としては、蟻酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸等の有機カルボン酸、パラトルエンスルホン酸、スルホン酸アルキル等の有機スルホン酸、塩酸、リン酸、硝酸、スルホン酸等の無機酸、エピハロヒドリン等エポキシ化合物の他、ジアルキル硫酸、ハロゲン化アルキル等の4級化剤が挙げられる。これらの中和剤の使用量は、通常、イオン性基1当量に対して過不足が大きいと、水系ポリウレタン樹脂組成物から得られる塗膜等の耐水性、強度、伸び等の物性が低下するおそれがあるので、イオン性基1当量に対して0.5〜2.0当量であることが好ましく、0.8〜1.5当量であることがより好ましい。
【0031】
前記乳化剤成分(e)は、必要に応じて使用することができる成分であり、通常のアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤、並びに第一アミン塩、第二アミン塩、第三アミン塩、第四級アミン塩及びピリジニウム塩等のカチオン性界面活性剤、更に、ベタイン型、硫酸エステル型及びスルホン酸型等の両性界面活性剤等の中から適宜選択して使用することができ、特に限定されることはない。
【0032】
前記アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート類;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート、アンモニウムポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート等のポリオキシエチレンエーテルサルフェート類;ナトリウムスルホリシノレート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレート、トルエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ポリオキシエチレンエーテルリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩;N−アシルアミノ酸塩;N−アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。
【0033】
前記ノニオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの脂肪酸部分エステル類;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;炭素数1〜18のアルコールの、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキルフェノールの、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;アルキレングリコール及び/又はアルキレンジアミンの、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤を構成する炭素数1〜18のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール、ヘキサノール、オクタノール、デカンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
【0034】
前記アルキルフェノールとしては、フェノール、メチルフェノール、2,4−ジ第3ブチルフェノール、2,5−ジ第3ブチルフェノール、3,5−ジ第3ブチルフェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−第3オクチルフェノール、4−ドデシルフェノール、2−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、4−(3,5−ジメチルヘプチル)フェノール、ナフトール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。
【0035】
前記アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。アルキレンジアミンとしては、上記アルキレングリコールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたもの等が挙げられる。また、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物は、ランダム付加物であってもブロック付加物であってもよい。
【0036】
前記カチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムブロマイド及びイミダゾリニウムラウレート等が挙げられる。
【0037】
前記両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸のベタイン型金属塩等、β−ラウリルアミノプロピオン酸金属塩等のアミノ酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型等が挙げられる。
【0038】
前記必要に応じて用いられる乳化剤成分(e)の使用量は、特に制限されるものではないが、水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布して得られる塗膜等の耐水性、強度、伸び等の物性的観点から、ポリウレタン樹脂100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、特に5〜20質量部であることが好ましい。1質量部より小さいと充分な分散性が得られない場合があり、30質量部を超えると前記した塗膜等の物性が低下するおそれがある。
【0039】
前記鎖延長剤成分(f)としては、例えば、数平均分子量200未満の低分子量ポリオール化合物及び低分子量ポリアミン化合物のような、通常用いられる鎖伸長剤の中から適宜選択して使用することができる。このような鎖伸長剤成分としては、例えば、前記した低分子ジオール類の他、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン等の低分子量ジアミン類;ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)アミノメタノール、2−(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール等のアミノアルコール類;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類;m−キシレンジアミン、α−(m-/p-アミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の、芳香族ジアミン類等のポリアミン;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、水加ヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等のヒドラジン類、及び水等が挙げられる。
【0040】
これらの鎖伸長剤の使用量は、ウレタン樹脂塗膜物性等の観点から、鎖伸長反応前のウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の1当量に対し、鎖伸長剤のアミノ基が0.1〜1.0当量となる範囲であることが好ましい。
【0041】
また、本発明に係る難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂の製造においては、必要に応じて、反応に不活性な溶媒を使用することもできる。このような溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。これらの溶媒は、通常、プレポリマーを製造するために用いられる上記原料の合計量に対して、3〜100質量%用いられる。本発明においては、これらの溶媒の内、沸点が100℃以下の溶媒については、ウレタンプレポリマーを水分散した後減圧留去することが好ましい。
【0042】
また、本発明においては、使用される前記ポリイソシアネート成分(a)のイソシアネート基の数と前記ポリオール成分(b)のアルコール性水酸基の数の比であるNCO数/OH数は、1.0〜5.0であることが好ましく、1.05〜3.0の範囲であることがより好ましい。前記(a)成分と(b)成分とからなるウレタンプレポリマーは、必要に応じて用いられる前記イオン性基導入成分(c)と反応するために、末端がイソシアネート基であることが好ましい。したがって、NCO数/OH数が1.0より小さいと、末端が水酸基であるウレタンプレポリマーとなるため好ましくない。また、5.0を超えると、得られる水系ポリウレタン樹脂組成物の保存安定性が低下する場合があるので好ましくない。
【0043】
また、本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物は、ウレタンプレポリマーを鎖伸長させた後のウレタン樹脂100質量部に対し、水を30〜900質量部、好ましくは80〜400質量部含有する。上記ウレタン樹脂に対する水の配合量が30質量部よりも少ない場合には、粘度が高くなって取扱いが困難になり、900質量部よりも多い場合には、塗料に用いた場合の塗膜の硬化性が低下するため塗膜の物性も低下する。
【0044】
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物の製造における前記ポリイソシアネート成分(a)、ポリオール成分(b)及びイオン性基導入成分(c)の配合比は、特に制限されることはないが、(a)成分と(b)及び(c)成分を反応させる段階で、(b)及び(c)成分が有する水酸基等のイソシアネート反応性基1当量に対して、(a)成分のイソシアネート基当量が0.5〜5となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜3.0、特に1〜2.0となるように配合することが最も好ましい。
【0045】
また、本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗料やコーティング剤に用いる場合には、基材に対して特に強固な密着性を付与する、シランカップリング剤、コロイダルシリカ、テトラアルコキシシラン又はその縮重合物、キレート剤、及びエポキシ化合物を用いてもよい。
【0046】
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物は一液型として使用することができるが、硬化剤を用いた二液型としても使用することができる。更に、必要に応じて、一般に用いられる周知の各種添加剤を用いてもよい。該添加剤としては、例えば、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、造膜助剤、硬化剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強剤、触媒、揺変剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐触剤、消泡剤、非会合型増粘剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等が挙げられる。
【0047】
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗膜や塗装に用いる場合には、前記の各種添加剤の中でも、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤(リン系、フェノール系又は硫黄系抗酸化剤)を使用することが好ましい。
【0048】
前記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメチルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第3−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第3オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0049】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第3オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第3ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜C13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第3ブチルフェニル−3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩又は金属キレート、特にニッケル又はクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
【0050】
前記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第3ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第3ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第3ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第3ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−メチル−4−[3−[[2,4,8,10−トラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]プロピル]フェノール2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第3ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0051】
前記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第3ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第3ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第3ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第3ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第3ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル3−ヒドロキシ−4−第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ第3ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トコフェノール等が挙げられる。
【0052】
前記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等の、ポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0053】
前記ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤のそれぞれの使用量は、本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.001質量部より小さいと充分な添加効果を得られない場合があり、10質量部より大きいと分散性や塗装物性に影響を及ぼすおそれがあるので0.001〜10質量部であることが好ましく、0.01〜5質量部であることがより好ましい。また、これらのヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤の添加方法は、ポリオール成分に添加する方法、プレポリマーに添加する方法、水分散時に水相に添加する方法、水分散後に添加する方法が挙げられるが、操作が容易で有るという観点から、特に、ポリオール成分に添加する方法及びプレポリマーに添加する方法が好ましい。
【0054】
更に、本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物には、一般式(1)で表されるリン含有ポリオール以外に、他のリン系難燃剤、無機系難燃剤等を添加することもできる。
【0055】
上記リン系難燃剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム等のポリリン酸塩系難燃剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジ−(ポリオキシエチレン)−ヒドロキシメチルホスフォネート、ジエチルフェニルホスフォネート、ジメチルフェニルホスフォネート、ジエトキシ−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アミノメチルホスフォネート、レゾルシノールジフェニルホスフェート、ビスフェノールAジフェニルホスフェート等のリン酸エステル系難燃剤;ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフォネート等の反応性リン系難燃剤;リン酸チタン等の無機リン酸系難燃剤;赤リン等の赤リン系難燃剤;フェニルホスフォン酸等、及び、これらのリン系難燃剤を水系化したもの等が挙げられる。
【0056】
前記無機系難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモニーシリコオキシド等のアンチモン化合物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;水和金属化合物;酸化スズ、水酸化スズ、スズ酸亜鉛等のスズ化合物;酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ酸化合物;リン酸グアニジン、窒素化グアニジン等のグアニジン化合物;三酸化モリブテン等のモリブテン化合物;シリコーン系樹脂、シリコーンオイル等のシリコーン化合物;有機トリアジン等のトリアジン化合物等、及び、これら無機系難燃剤を水系化したもの等が挙げられる。
【0057】
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物の用途としては、塗料、接着剤、表面改質剤、有機及び/又は無機粉体のバインダー等が挙げられる。具体的な被塗工材としては、合板、集成材、単層積層材等の木質材料、床、壁、天井、内装タイル、煉瓦、コンクリート等無機系構造材用塗料等の建築材料;道路舗装、橋梁の防水・補修・補強や基礎部、目地部、鋼構造物の防食等の土木材料;自動車の内装部品、外装部品、エンジン部品やブレーキ部品等の自動車材料;車両の屋根、風道、化粧板、断熱材、窓、床、ドア等の鉄道車両材料;アルミニウム合金、チタニウム合金、FRP等の構造材料を主とする航空・宇宙用材料;半導体、電池、ケーブル材料、磁性ディスクやテープ、小型モーター、圧電素子、導電材料、センサ、感光材料、端末(電話機、ファクシミリ等)用材料、銅ばり積層板材料等の電気電子材料;光ファイバ等の光部品を主とする通信機器材料;カメラ、時計、計測機器、複写機等に用いられる精密・OA機器用材料;スキー、アーチェリー、ゴルフ、テニス等のスポーツ用具材料;建築養生用ネット、メッシュ、シート及びテント、垂れ幕、カーテン、テーブルクロス、手袋等の繊維用材料;靴の甲材、底、しん材、ヒール、トップリフト、中敷等のはきもの材料、及び植毛加工用バインダー等の繊維植毛材料;紙、プラスチック、アルミニウム箔等を基材フィルムとする包装材料;表紙、見返し、背等の製本材料;ピアノ、エレクトーン、電子楽器等の楽器材料;たんす、棚、机、椅子、ソファ等の家具材料;人工関節、人工骨や血管、皮膚の接着、縫合、歯科の矯正・補綴・保存等の領域で用いられる医療材料;その他ガラス繊維収束剤、農業用フィルム用コート剤等が挙げられる。
【0058】
更に、本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物は、他の水系樹脂エマルジョン、例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂等の合成樹脂エマルジョン、及び、天然ゴム、SBR、NBR等のゴムラテックスとの相溶性が良好であるので、これらの改質剤としても有用である。
【0059】
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂を塗布する基体の材質は特に制限されるものではなく、プラスチック、金属、紙、木材、繊維、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリート等の何れであっても良い。形状は、フィルム状、シート状、板状、繊維状等の各種成形体等が挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0060】
前記プラスチックとしては、例えば、アセタール、アクリル、メチルメタクリレート、アセチルセルロース、ニトロセルロース、エチレン・アクリル、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ナイロン等のポリアミド、ポリブタジエン・アクリロニトリル、ポリブタジエン・スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ポリヒドロキシエーテル、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリプロピレン、ポリスチレン及びその共重合体、ポリサルホン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂;アルキッド、カゼイン、シアノアクリレート、ジアリルフタレート、エポキシ及びその変性物、フラン、メラミンホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、フェノール・フルフラール、不飽和ポリエステル、ポリサルファイド、レゾルシノール・フェノールホルムアルデヒド、シリコーン、ユリアホルムアルデヒド等の熱硬化性樹脂;エポキシ−ノボラック、エポキシ−フェノリック、エポキシ−ポリサルファイド、エポキシ−シリコーン、フェノリック−ブチラール、フェノリック−ニトリル、フェノリック−ポリアミド、ポリアミド−エポキシ、ポリイミド−エポキシ、シリコーン−ビニルフェノリック、シリコーン−フェノリック、ビニルホルマール−フェノリック、ビニルブチラール−フェノリック等のアロイが挙げられる。
【0061】
前記金属としては、例えば、鉄、炭素鋼、鋳鉄、亜鉛メッキ鋼板、Zn−Fe系、Zn−Ni系等の合金メッキ鋼板、有機複合メッキ鋼板、ステンレス鋼、アルミニウム及びその合金、銅及びその合金、チタン及びその合金等が挙げられる。
【0062】
前記紙としては、例えば、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、新聞用紙、含浸加工用原紙、薄葉紙、模造紙、板紙、ティッシュ紙等が挙げられる。
【0063】
前記木材の樹種としては、例えば、モミ、トドマツ、シラベ、タイワンヒノキ、ヒノキ、サワラ、スギ、カラマツ、エゾマツ、トウヒ、アカマツ、ヒメコマツ、クロマツ、ヒバ、ツガ等の針葉樹材、イタヤカエデ、トチノキ、ミズメ、マカンバ、カツラ、クスノキ、イスノキ、ブナ、オニグルミ、タブ、ホオノキ、ドロノキ、シナノキ、ヤチダモ、ハリギリ、キリ、ミズナラ、ハルニレ、ケヤキ、アカガシ等の広葉樹材、アカラワン、シロラワン等のフィリピン材等が挙げられる。
【0064】
前記繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ等のセルロース系再生繊維、セルロース系のアセテートや蛋白質系のプロミックス等の半合成繊維、ナイロン等のポリアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリウレタン系、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系、フェノール系等の合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、綿、亜麻、芋麻、黄麻等の植物繊維、羊毛、絹等の動物繊維、石綿等の鉱物繊維が挙げられる。
【0065】
前記ガラスとしては、例えば、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、ソーダライムガラス、亜鉛ガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0066】
前記ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ターポリマー、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0067】
前記セラミックとしては、例えば、アルミナ、ステアタイト、フォルステライト、ジルコン、ベリリア、ジルコニア、窒化珪素、窒化アルミ、炭化珪素等が挙げられる。
【0068】
前記コンクリートとしては、例えば、普通コンクリート、軽量コンクリート、重量コンクリート、砕石コンクリート、AEコンクリート、水密コンクリート、セメントモルタル、軽量気泡コンクリート、炭素繊維強化コンクリート、ガラス繊維強化コンクリート等が挙げられる。
【0069】
上記基体の中でも、本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗工するのに好適な基体は繊維であり、特にポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、木綿等の繊維が好ましい。これらの繊維に本発明の難燃性水系塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗工することにより、難燃性、耐擦過性、柔軟性、耐水性、耐久性等の性能を付与することができる。特に、建築養生用ネット、メッシュ、シート、テント、垂れ幕及びカーテン等の、難燃性を要する繊維製品への適用が好適である。
【0070】
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物における固形分濃度は、特に制限されるものではないが、後述する粘性の範囲が保持し易くなる点、乾燥時間の短縮、厚膜塗布が容易であること等の作業性の観点から、30〜70重量%であることが好ましく、特に35〜60重量%であることが好ましい。
【0071】
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗料として用いる場合には、例えば、浸漬塗工、ハケ塗り、ローラーコート、スプレーコート、グラビアコート、リバースロールコート、エアナイフコート、バーコート、カーテンロールコート、ディップコート、ロッドコート、ドクターブレートコート等の公知の方法により適宜塗布することができる。
【0072】
本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗工する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、ハイドロバーコーター、トランスファロールコーター、リバースコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、フローコーター、ロールコーター、刷毛等によって実施することができ、これらによって、基体の一部又は全面に塗工することができる。本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布した後、皮膜を形成させるための乾燥温度は室温でも良いが、50〜200℃で5〜600秒間加熱しても良い。
【0073】
また、本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物から形成させたフィルムを、他のフィルムとラミネートさせる方法や、フィルム同士を熱、あるいは高周波接着させる方法、或いは、他の材料と共に複層皮膜を形成させる事も可能である。更に、基体に本発明の難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布し、風合いや滑り止め効果付基材として使用することも可能である。
【0074】
以下に、実施例を示して本発明を更に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0075】
リン含有ポリオールとしてアデカポリオールFB−330(前記一般式(1)におけるRがプロピレン基、n=2〜3、m=1、水酸基価335、りん含有量7.5%)81g、(b)ポリオールとしてポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール+アジピン酸/イソフタル酸:(株)ADEKA製、製品名アデカニューエースYG−108(水酸基価120))57g、トリメチロールプロパン4g、(c)成分としてジメチロールプロピオン酸19g、(a)成分のポリイソシアネートとしてジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下水添MDIと記す)を142g、溶剤として、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと記す)115gを入れて混合し、100℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量が1.5%のウレタンプレポリマーを得た。
【0076】
得られたウレタンプレポリマーを冷却した後、(d)成分の中和剤としてトリエチルアミン14gを混合し、予め用意してある水560gの中に徐々に仕込みながら更に水と混合した。次いで、(f)成分の鎖伸長剤としてエチレンジアミン4gを水と一緒に仕込み、赤外分光光度計(以下IRと記す)による測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、固形分30%、粘度100mPa・s/25℃、pH=7、樹脂中のリン含有量が2%の、アニオン型水系ポリウレタン樹脂を得た。
【実施例2】
【0077】
リン含有ポリオールとして前記アデカポリオールFB−330を87g、(b)成分のポリオールとしてポリエステルポリオール((メチルペンタンジオール+アジピン酸:(株)クラレ製、製品名クラポールP−510(水酸基価224))43g、(c)成分としてポリオキシエチレン基を含有するジオール(パーストープ社製、製品名YMER-N120:水酸基価113)65g、(a)成分のポリイソシアネートとして水添MDIを113g、溶剤としてNMPを80g入れて混合し、100℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量が1.0%のウレタンプレポリマーを得た。
【0078】
得られたウレタンプレポリマーを冷却した後、予め用意してある水610gの中に徐々に仕込みながら水と混合した。更に(f)成分の鎖伸長剤としてジエチレントリアミン2gを水と一緒に仕込み、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、固形分30%、粘度200mPa・s/25℃、pH=6、樹脂中のリン含有量が2%の、ノニオン型水系ポリウレタン樹脂を得た。
【実施例3】
【0079】
リン含有ポリオールとして前記アデカポリオールFB−330を80g、(b)成分のポリオールとして前記アデカニューエースYG−108を56g、(c)成分としてN-メチルジエタノールアミン23g、(a)成分のポリイソシアネートとして水添MDIを145g、溶剤としてNMPを113g入れて混合し、100℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量が1.5%のウレタンプレポリマーを得た。
【0080】
得られたウレタンプレポリマーを冷却した後、(d)成分としてジメチル硫酸40gを混合し、次いで、予め用意してある水530gの中に徐々に仕込みながら水と混合した。更に(f)成分の鎖伸長剤としてエチレンジアミン3.5gを水と一緒に仕込み、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、固形分30%、粘度150mPa・s/25℃、pH=5、樹脂中のリン含有量が2%のカチオン型水系ウレタン樹脂を得た。
【実施例4】
【0081】
リン含有ポリオールとして前記アデカポリオールFB−330を127g、(b)成分のポリオールとして前記アデカニューエースYG−108を8g、(c)成分としてジメチロールプロピオン酸17g、(a)成分のポリイソシアネートとして水添MDIを152g、溶剤としてNMPを118g入れて混合し、100℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量が1.5%のウレタンプレポリマーを得た。
【0082】
得られたウレタンプレポリマーを冷却した後、(e)成分としてトリエチルアミン13gを混合し、次いで、予め用意してある水550gの中に徐々に仕込みながら水と混合した。更に(f)成分の鎖伸長剤としてエチレンジアミン4gを水と一緒に仕込み、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、固形分30%、粘度200mPa・s/25℃、pH=7、樹脂中のリン含有量が3%のアニオン型水系ポリウレタン樹脂を得た。
【実施例5】
【0083】
リン含有ポリオールとして前記アデカポリオールFB−330を87g、(b)成分のポリオールとして前記クラポールP−510を43g、(c)成分として前記YMER−N120を65g、(a)成分のポリイソシアネートとして水添MDIを113g、溶剤としてNMPを80g入れて混合し、100℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量が1%のウレタンプレポリマーを得た。
【0084】
得られたウレタンプレポリマーを冷却した後、その他の難燃剤としてビスフェノールAビスジフェニルホスフェート((株)ADEKA製、製品名アデカスタブFP−600、リン含有量8.9%)43gを添加・混合した。均一になった後、予め用意してある水630gの中に徐々に仕込みながら水と混合した。更に(f)成分の鎖伸長剤としてジエチレントリアミン1.5gを水と一緒に仕込み、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、固形分30%、粘度150mPa・s/25℃、pH=6、樹脂中のリン含有量が3%の、ノニオン型水系ポリウレタン樹脂を得た。
【0085】
比較例1
(b)成分のポリオールとして前記アデカニューエースYG−108を150g、トリメチロールプロパン4g、(c)成分としてジメチロールプロピオン酸17g、(a)成分のポリイソシアネートとして水添MDIを131g、溶剤としてNMPを105g入れて混合し、100℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量が3.5%のウレタンプレポリマーを得た。
【0086】
得られたウレタンプレポリマーを冷却した後、(e)成分としてトリエチルアミン13gを混合し、次いで、予め用意してある水540gの中に徐々に仕込みながら水と混合した。更に(f)成分の鎖伸長剤としてエチレンジアミン10gを水と一緒に仕込み、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、固形分30%、粘度50mPa・s/25℃、pH=8の、アニオン型水系ポリウレタン樹脂を得た。
【0087】
比較例2
(b)成分のポリオールとして前記クラポールP−510を128g、(c)成分として前記YMER−N120を64g、(a)成分のポリイソシアネートとして水添MDIを111g、溶剤としてNMPを77g入れて混合し、100℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量が2.5%のウレタンプレポリマーを得た。
【0088】
得られたウレタンプレポリマーを冷却した後、予め用意してある水600gの中に徐々に仕込みながら水と混合した。更に、(f)成分の鎖伸長剤としてジエチレントリアミン6.5gを水と一緒に仕込み、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、固形分30%、粘度100mPa・s/25℃、pH=7の、ノニオン型水系ポリウレタン樹脂を得た。
【0089】
比較例3
(b)成分のポリオールとして前記アデカニューエースYG−108を138g、(c)成分としてN-メチルジエタノールアミン27g、(a)成分のポリイソシアネートとして水添MDIを138g、溶剤としてNMPを110g入れて混合し、100℃で3時間反応させ、イソシアネート含有量が3.5%のウレタンプレポリマーを得た。
【0090】
得られたウレタンプレポリマーを冷却した後、(e)成分としてジメチル硫酸48gを混合した。次いで、予め用意してある水510gの中に得られた混合物を徐々に仕込みながら水と混合した。更に(f)成分の鎖伸長剤としてエチレンジアミン9gを水と一緒に仕込み、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、固形分30%、粘度100mPa・s/25℃、pH=5の、カチオン型水系ポリウレタン樹脂を得た。
【0091】
比較例4
前記比較例1で得られた水系ポリウレタン樹脂に、前記アデカスタブFP−600(40g)の添加を試みたが、分散性良好な水系ポリウレタン樹脂を得ることができなかった。
【0092】
比較例5
前記比較例1で得られた水系ポリウレタン樹脂に、トリエチルホスフェート57gを添加して、固形分30%、粘度100mPa・s/25℃、pH=7の、リン酸エステル化合物を後添加した水系ポリウレタン樹脂を得た。
【0093】
比較例6
前記実施例1でリン含有ポリオールとして使用したアデカポリオールFB−330の替わりに、リン含有量が同一になるように、下記化合物No.1(リン含有量12%)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、固形分30%、粘度100mPa・s/25℃、pH=7の水系ポリウレタン樹脂を得た。

【0094】
〔評価〕
前記実施例及び比較例で得られた水系ポリウレタン樹脂につき、耐加水分解性、塗膜表面ブリード(タック)性、及び、塗膜フィルムの難燃性を、下記の様にして評価した。
【0095】
〔耐加水分解性評価〕
前記実施例1〜5及び比較例5の水系ポリウレタン樹脂を250mlの密閉容器中に入れ、40℃の雰囲気下で2週間放置し、試験前後の塗膜物性(伸び及び強度)を比較した。結果を表1に記す。ただし、比較例5の場合には、試験後に塗膜が形成せず、物性の評価を行うことができなかった。
【0096】
〔塗膜表面ブリード(タック)性評価〕
前記実施例1〜5及び比較例5の水系ポリウレタン樹脂を用いて塗膜(100μm)を作製し、20℃の雰囲気下で1ヶ月間放置し、塗膜表面のブリード(タック)性を、指触評価した。結果を表1に示した。
【0097】
(評価基準)
塗膜表面ブリード全くなし:○
塗膜表面ブリード僅かにあり:△
塗膜表面ブリードあり:×
【0098】
【表1】

【0099】
〔塗膜フィルムの難燃性評価〕
前記実施例1〜5、比較例1〜3、5及び6の水系ポリウレタン樹脂を用いて塗膜(厚さ100μm)を作製し、UL94VTM(「薄手材料垂直燃焼試験:ASTM D4804」)に準拠して測定を行った。結果を表2に示した。
【0100】
【表2】

【0101】
上記比較例の結果から明らかなように、難燃剤を添加していない比較例1〜3の場合は当然のことながら難燃性でなく、芳香族リン酸エステルを添加した比較例4の場合は水系樹脂の分散性が悪く、トリエチルホスフェートを添加した比較例5の場合は、特に加水分解性及び表面ブリード性の面で劣ること、更に一般式(1)では表されず、本発明には包含されないリン含有ポリオールを配合した比較例6の場合も難燃性が劣る。これに対し、一般式(1)で表される特定のリン含有ポリオールを配合した本発明の場合には、加水分解性、ブリード性及び難燃性の全てにおいて良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の難燃性塗工用水系ポリウレタン樹脂組成物は、塗膜の表面ブリードがなく、かつ、難燃性に優れた塗工品を提供できるだけでなく、難燃性発現成分としてノンハロゲン系のリン含有ポリオールを用いているため、焼却時にダイオキシン等の有害な物質を生成しない上、環境ホルモンを使用しないので、産業上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分(a)と、下記一般式(1)で表されるリン含有ポリオール化合物を必須成分として含有するポリオール成分(b)とを反応させて得られたウレタンプレポリマーを水に分散させ、次いで該ウレタンプレポリマーを鎖伸長させてなる水系ポリウレタン樹脂組成物であって、前記一般式(1)で表される化合物に対応する単位が、ウレタン樹脂固形分中のリン含有量として0.3〜5.0%となるように含有されていることを特徴とする難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物;

但し、(1)式中のRは炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、mは1〜10の数を表し、nは1〜10の数を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)におけるmが2〜5の数である、請求項1に記載された難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)におけるnが2〜3の数である、請求項1又は2に記載された難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された難燃性塗工材用水系ポリウレタン樹脂組成物を塗布してなる塗工品。

【公開番号】特開2012−72246(P2012−72246A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217220(P2010−217220)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】