説明

難燃性採光断熱材

【課題】断熱性に優れ、透明性が高く、軽量であり、かつ、難燃性に優れる難燃性採光断熱材を提供する。
【解決手段】可視光透過率が15%以上である難燃性採光断熱材であって、20〜200μm厚の樹脂フィルムからなる2枚の外層と、目付量10〜50g/m2のガラス繊維からなる不織布若しくは織布又は20〜60μm厚の樹脂フィルムからなる内層との少なくとも合計4枚以上が樹脂スペーサを介して空気層を挟んで各々対向した構造を有し、前記内層は、少なくとも1枚がガラス繊維からなる不織布若しくは織布であり、前記空気層は、厚さが100μm〜3mmであり、かつ、少なくともその周辺部が封止されており、含有する全樹脂重量が300g/m以下である難燃性採光断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性に優れ、透明性が高く、軽量であり、かつ、難燃性に優れる難燃性採光断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の建築物では、省エネルギーの観点から、外界との高い断熱効果を達成し冷暖房の効率を極限にまで高める試みがなされている。このような目的のために断熱性の高い壁材等が種々提案されている。
建築物の住環境等を考える場合に、採光は極めて重要である。現在の建築物においては、採光部にはガラス窓を設置するのが一般的であるが、壁材等に比べて高い断熱効果を発揮させるのは難しかった。「省エネルギー技術戦略報告書」(平成14年6月12日、経済産業省)によれば、全消費エネルギーの45%が窓等の開口部から損失しているといわれている。
【0003】
断熱性の高いガラスとしては、いわゆるペアガラスが提案されている(例えば、特許文献1等)。ペアガラスは、2枚のガラス間に隙間を設け、ガラス間を真空としたり、アルゴン等の不活性ガスを吹き込んだりしたものであり、ガラス間の空間の存在により、高い断熱効果を発揮しようとするものである。しかしながら、ペアガラスは通常のガラスに比べて重くて嵩張るという問題があった。また、コスト面でも数万〜十数万円/mかかり、通常の住宅へ応用するのは困難であった。更に、長期間使用する間に空気が侵入して真空状態が破れたり、ガス抜けが起こったりして、性能が低下してしまうことがあるという問題もあった。そこで、断熱性に優れ、透明性が高くかつ軽量である採光断熱材が求められていた。
【0004】
このような軽量な採光断熱材としては、ペアガラスのガラスに代えて軽量かつ透明な樹脂フィルムを用いることも検討されている。しかしながら、建築物に用いる建材には、火災時の安全性を確保するために高い難燃性が求められており、その最終形態や取付け方式等に応じて、建築基準法及び消防法等で難燃性や防火性等の要求性能が厳しく定められている。一般に樹脂フィルムは可燃性であることから、ガラスの代わりに樹脂フィルムを用いた場合には、難燃性の点で建築基準法や消防法等の基準をクリアできず、建材として使用する際に、使用地域や使用部位が限定されるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−026453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑み、断熱性に優れ、透明性が高く、軽量であり、かつ、難燃性に優れる難燃性採光断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可視光透過率が15%以上である難燃性採光断熱材であって、20〜200μm厚の樹脂フィルムからなる2枚の外層と、目付量10〜50g/m2のガラス繊維からなる不織布若しくは織布又は20〜60μm厚の樹脂フィルムからなる内層との少なくとも合計4枚以上が樹脂スペーサを介して空気層を挟んで各々対向した構造を有し、前記内層は、少なくとも1枚がガラス繊維からなる不織布若しくは織布であり、前記空気層は、厚さが100μm〜3mmであり、かつ、少なくともその周辺部が封止されており、含有する全樹脂重量が300g/m以下である難燃性採光断熱材である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明の難燃性採光断熱材は、複数の樹脂フィルム、ガラス繊維からなる不織布若しくは織布が、空気層を挟んで各々対向して接着した構造を有する。上記空気層は、周辺部を封止することにより「動かない空気の層」を形成して高い断熱効果を発揮するものである。
【0008】
本発明の難燃性採光断熱材は、樹脂フィルムからなる2枚の外層と内層とが少なくとも合計4枚以上、樹脂スペーサを介して空気層を挟んで各々対向した構造を有することにより、難燃性採光断熱材の内部に「動かない空気の層」を形成して、これが断熱層となって優れた断熱効果を発揮する。外層を樹脂フィルムとすることで、ガラスと比較すると軽量になり、かつ、耐殺傷性を備えた表面層が実現可能となる。
【0009】
上記樹脂フィルムとしては、透明性に優れるものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう)、トリ酢酸セルロース等からなるものが挙げられる。なかでも、自消性であって建築材として適合性がよいことから、ポリカーボネート、塩化ビニルが好適である。上記2枚の外層は、同一種類の樹脂フィルムを用いてもよいし、異なる種類の樹脂フィルムを用いてもよい。なお、後述するように外層を樹脂フィルムとガラス繊維からなる不織布等との積層体とする場合には、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレン等が、溶融時の粘度が低く不織布等との接着性が良好であることから好適である。また、EVA等からなる樹脂は極性を有し、樹脂スペーサと接着するために用いる接着剤との接着性、又は、接着性樹脂からなる樹脂スペーサとの接着性に優れることから好適である。
【0010】
上記外層を構成する樹脂フィルムの厚さの下限は20μm、上限は200μmである。20μm未満であると、得られる難燃性採光断熱材の強度が劣り、200μmを超えると、同じ断熱効果を得るのに必要以上に難燃性採光断熱材が厚くなって重量が増し、施工性の低下、住空間の減少、取付け部位の制限の狭小を招き、更に難燃性の低下を生じる。好ましい下限は30μm、好ましい上限は150μmである。
【0011】
上記外層を構成する樹脂フィルムの少なくとも一方は、層状珪酸塩、アエロジェル及びヒュームドシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。火災時に最初に火炎に晒される外層が層状珪酸塩、アエロジェル、ヒュームドシリカを含有することにより、より高い難燃性を発揮することができる。なかでも、透明性に優れることから、アエロジェルを含有することが好ましい。
上記層状珪酸塩は、燃焼時に遮蔽効果を発揮して発熱速度を抑制するとともに、被膜を形成し、炎の貫通を防ぐ効果が大きい。上記アエロジェル、ヒュームドシリカは、燃焼時に遮蔽効果を発揮して発熱速度を抑制するが、配合樹脂層を単層で使用した場合には被膜形成効果はほとんどない。しかしながら、後述するようにガラス繊維からなる不織布等と積層した場合には、繊維の空隙に絡み合うような構造となり、良好な被膜効果を発揮する。
【0012】
本明細書において層状珪酸塩とは、層間に交換性金属カチオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。上記層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物や、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。なかでも、膨潤性マイカが発熱速度抑制効果、被膜形成能に関して効果的であり、かつ着色も見られない点から好適である。
【0013】
上記層状珪酸塩は、燃焼時に熱遮蔽膜として作用し、燃焼の遅延や発熱速度の低減、炭化層からなる残渣被膜の形成等による難燃効果がある。とりわけ樹脂中で層間が開き、ナノレベルに分散すると難燃性及び透明性が大きく向上する。
樹脂に中に分散・混練する方法としては特に限定されず、従来公知の方法により分散・混練することができる。例えば溶融混練法により上記層間珪酸塩を樹脂中にナノレベルで分散させるためには、例えば、層間処理剤の耐熱性が少なくとも樹脂成形温度と同等かそれ以上のものを使用するのが好ましい。例えば、耐熱性が高く、本発明の難燃性採光断熱材に好適に用いられる樹脂であるポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に対して溶融混練法により分散を行う場合には、成形温度が250℃近辺にあるため、熱分解開始温度が250℃以上にある層間有機処理剤で処理を施した親油性の膨潤性マイカを使用することが好ましい。分解開始温度が250℃未満の層間有機処理剤を使用すると混練時に、分解が生じて着色を誘発すると同時に樹脂の分解も促進し、良好なフィルムが得られないことがある。
【0014】
本明細書においてアエロジェルとは、湿ったシリカのゲル体を高温高圧下で乾燥させて得られる気孔率が80〜98%程度の比重の小さいシリカ乾燥物を意味する。乾燥方法、条件等の製法によってアエロジェルの構造が変化し、それに伴い気孔率が変化するが、本発明においては気孔率が80〜98%程度のアエロジェルであれば、特に限定されない。なかでも気孔率90%以上のアエロジェルが透明性の点で好適である。また、建材としての長期耐久性を維持するために、疎水処理を施したアエロジェルも好適である。
アエロジェルの粒子径についても特に限定されないが、0.3〜3mm径のグラニュー状粒状体が樹脂中における分散性に優れることから好ましい。また、0.3〜3mm径のグラニュー状粒状体のアエロジェルは、後述するようにアエロジェル層として樹脂フィルムやガラス繊維からなる不織布等に挟み込む場合にも好適である。更に0.5〜2mm径のものは、ガラス繊維からなる不織布等に担持させる際にも、繊維との絡み合い点が増加し、粒子の欠落が少なくなるため好ましい。更に好ましくは0.7〜1mm径のものである。
【0015】
上記樹脂フィルムが上記アエロジェルを含有する場合、上記樹脂フィルム及び後述する樹脂スペーサは、上記アエロジェルと同一又は近似する屈折率を有する樹脂からなることが好ましい。このような樹脂を用いることによって、より高い透明性を発揮することができる。
上記アエロジェルと同一又は近似する屈折率を有する樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0016】
上記外層を構成する樹脂フィルムが層状珪酸塩、アエロジェル及びヒュームドシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含有する場合、その含有量の好ましい下限は3重量%、好ましい上限は10重量%である。3重量%未満であると、難燃性向上効果が得られないことがあり、10重量%を超えると透明性が悪化して採光材として用いることができないことがある。
【0017】
上記外層を構成する樹脂フィルムは、上記層状珪酸塩、アエロジェル、ヒュームドシリカ以外にも、熱線反射防止効果を有するLaBやITO等の化合物を含有してもよい。このような熱線反射防止効果を有する化合物を含有することにより、夏場の断熱性を更に向上させることができる。
上記外層を構成する樹脂フィルムは、必要に応じて、成形助剤、可塑剤、耐候性改良剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0018】
上記外層を構成する樹脂フィルムのうち、少なくとも一方は、ガラス繊維からなる不織布又は織布が積層されていてもよい。火災時に最初に火炎に晒される外層にガラス繊維からなる不織布若しくは織布が積層されていることにより、より高い難燃性を発揮することができる。なお、外層を構成する樹脂フィルムをガラス繊維からなる不織布又は織布と積層する場合、樹脂の種類によっては、成形時又は使用時の熱履歴により生じる反りを防止する必要があり、ガラス繊維からなる不織布又は織布の両面に同程度の厚み、熱特性を有する樹脂層が積層されていることが好ましい。樹脂の種類や配合によって、熱履歴による反り等の変形が生じにくい場合には、ガラス繊維からなる不織布又は織布の片面に同程度の厚み、熱特性を有する樹脂層を積層すればよい。
上記積層の方法としては特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えば、ガラス繊維からなる不織布又は織布に押出溶融させた樹脂をラミネートする方法;ホットメルト接着剤を塗布したガラス繊維からなる不織布又は織布を熱プレスにより樹脂フィルムに圧着する方法等が挙げられる。ガラス繊維からなる不織布又は織布の両面に樹脂フィルム層を設ける場合でも、一方の面に樹脂フィルムを積層した後に他方の面に積層する2段階工程であってもよいし、ダイの中央からガラス繊維からなる不織布又は織布を送り出す金型を使用し、該ガラス繊維からなる不織布又は織布の両面から同時に樹脂を押出して溶融ラミネート加工してもよい。
【0019】
上記外層に積層するガラス繊維からなる不織布又は織布としては特に限定されないが、目付量10〜50g/m、かつ、厚さが0.10〜0.45mmのものが好ましい。本発明の難燃性採光断熱材の難燃性は主として用いるガラス繊維からなる不織布又は織布により決まり、この使用量が多いほど高い難燃性を発揮することができる。一方、使用量が多いほど透光性は劣る。従って、内層として用いられるガラス繊維からなる不織布若しくは織布の目付量、厚さ及び枚数とともに、目的とする難燃性及び透明性の兼ね合いにより用いるガラス繊維からなる不織布若しくは織布を適宜選択することになるが、目付量が10g/m未満、厚さが0.10mm未満であると、面としての連続性、熱遮断性が低下するため、充分な断熱性および難燃性向上効果を発揮できない。目付量が50g/mを超え、厚さが0.45mmを超えると、採光断熱材として充分な透光性を確保できないことがある。好ましくは目付量15〜40g/mであり、より好ましくは20〜30g/mである。
【0020】
上記外層が樹脂フィルムとガラス繊維からなる不織布又は織布との積層体である場合、該樹脂フィルムとガラス繊維からなる不織布又は織布との間に更にアエロジェル層を有していてもよい。火災時に最初に火炎に晒される外層が樹脂フィルム、アエロジェル層、及び、ガラス繊維からなる不織布若しくは織布がこの順に積層された積層体であることにより、より高い難燃性を発揮することができる。
樹脂フィルム、アエロジェル層、及び、ガラス繊維からなる不織布又は織布がこの順に積層された積層体のガラス繊維からなる不織布又は織布側に、更に樹脂フィルムが積層されている場合には、フィルムの反りを防ぐことが可能となり、成形性や使用時の耐久性が向上することから好ましい。
【0021】
上記アエロジェル層の目付量の好ましい下限は0.05g/m、好ましい上限は0.2g/mである。0.05g/m未満であると、充分な難燃性向上効果が得られないことがある。0.2g/mを超えると、透明性に劣ることがある。
【0022】
本発明の難燃性採光断熱材は、ガラス繊維からなる不織布若しくは織布又は樹脂フィルムからなる内層を有する。
上記内層を構成する樹脂フィルムとしては、上記外層に用いるものと同様のものを用いることができる。
上記内層を構成するガラス繊維からなる不織布若しくは織布としては、上述した外層に用いるものと同様のものを用いることができる。
【0023】
上記内層の少なくとも1枚は、ガラス繊維からなる不織布又は織布である。一般に、ガラス繊維からなる不織布若しくは織布の層数が多いほど難燃性は向上するが、透光性は劣ることになる。内層として何枚のガラス繊維からなる不織布若しくは織布を用いるかは、本発明の難燃性採光断熱材の使用目的等により適宜選択すればよい。
【0024】
上記内層として用いる樹脂フィルムの厚さの好ましい下限は20μm、好ましい上限は60μmである。20μm未満であると、得られる難燃性採光断熱材の強度が劣り、60μmを超えると、同じ断熱効果を得るのに必要以上に難燃性採光断熱材が厚くなって重量が増し、施工性の低下、住空間の減少、取付け部位の制限の狭小を招き、更に難燃性の低下を生じる。
【0025】
本発明の難燃性採光断熱材は、上記外層及び内層が樹脂スペーサを介して空気層を挟んで各々対向した構造を有する。上記空気層は、周辺部を封止することにより「動かない空気の層」を形成して高い断熱効果を発揮する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、空気層の厚さを特定の範囲としたときに、特に高い断熱効果を発揮できることを見出し、本発明を完成するに至った。熱貫通率は空気層の厚さに関係するが、空気層の厚さが0のときには樹脂フィルム自身の熱貫通率に等しく、空気層が充分に厚くなると空気自身の熱貫通率(理論値)に近くなる。ところが、本発明者らが詳細に検討したところ、熱貫通率は、一定の空気層厚のときに極小値を示すことが判った。即ち、空気層の厚さの下限を100μm、上限を3mmとした場合に、特に高い断熱効果が得られることが判った。より好ましい下限は500μm、より好ましい上限は2mmである。また、このことは、厚い空気層をただ一つだけ有するものよりも、一定の厚さの空気層を複数有するもののほうが断熱効果が高いことを意味している。本発明の難燃性採光断熱材においては、外層と内層との合計が4枚以上、即ち3層以上の空気層を有することを特徴とする。
【0026】
上記空気層は、各空気層が独立していてもよく、各空気層が通じていてもよい。各空気層が独立していると、得られる採光断熱材の断熱性が向上する。
上記空気層は、複数のセルに分割されていてもよい。空気層が複数のセルに分割されることにより、本発明の難燃性採光断熱材全体の強度を高めることができる。本発明の難燃性採光断熱材の大きさが3mを超える場合には、空気層のセルが分割されていることが好ましい。このように分割されることによって、本発明の難燃性採光断熱材の断熱性を高めることができる。
上記空気層の各セルの大きさの好ましい下限は4cmである。空気層の各セルが4cmより小さいと、得られる採光断熱材の可視光線透過率が劣ったり、分割セルを構成するためのスペーサ量が増すことから、熱伝導しやすくなり断熱性が低下したりすることがある。
【0027】
上記樹脂スペーサは、上記空気層の維持(樹脂フィルム間隔の維持)の他、空気層の周辺部の封止、空気層の分割等の役割を有する。
上記樹脂スペーサとしては特に限定されないが、採光断熱材の可視光線透過率を確保するために透明であることが好ましく、また、採光断熱材の断熱性能を阻害しないために断熱性が高いものであることが好ましい。
具体的には、上記樹脂フィルムと同様の樹脂からなるものを用いることができるが、例えば、FRP、接着性を有するアクリル樹脂等が好適に用いられる。
上記FRPを用いると、得られる採光断熱材の強度保持性及び難燃性を向上させることができることから好ましい。上記接着性を有するアクリル樹脂を用いると、樹脂フィルムと樹脂スペーサとを接着する際、接着剤塗布工程が不要となることから好ましい。
【0028】
上記樹脂スペーサは、層状珪酸塩、アエロジェル及びヒュームドシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。上記樹脂スペーサがアエロジェル等を含有することにより、より高い難燃性を発揮することができる。なかでも、透明性に優れることから、アエロジェルを含有することが好ましい。
【0029】
上記樹脂スペーサが含有する層状珪酸塩、アエロジェル及びヒュームドシリカとしては特に限定されず、上記外層を構成する樹脂フィルムが含有する上記層状珪酸塩、アエロジェル及びヒュームドシリカと同様のものを使用することができる。
【0030】
上記樹脂スペーサが上記アエロジェルを含有する場合、上記樹脂フィルム及び上記樹脂スペーサは、上記アエロジェルと同一又は近似する屈折率を有する樹脂からなることが好ましい。このような樹脂を用いることによって、より高い透明性を発揮することができる。
上記アエロジェルと同一又は近似する屈折率を有する樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル等が挙げられる。
【0031】
上記樹脂スペーサが層状珪酸塩、アエロジェル及びヒュームドシリカからなる群より選択される少なくとも1種を含有する場合、その含有量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は30重量%である。1重量%未満であると、難燃性向上効果が得られないことがある。30重量%を超えると透明性が悪化して採光材として用いることができないことがあったり、上記樹脂スペーサとして、接着性を有するアクリル樹脂等の接着性を有する材料を用いた場合、樹脂スペーサ自身の接着性が低下したりすることがある。
【0032】
上記樹脂スペーサは、より高い断熱性を発揮するために、中空体(発泡体を含む)等であってもよい。具体的には例えば、中空状であるポリカーボネートチューブ、発泡ウレタン、エポキシ樹脂等があげられる。
上記樹脂スペーサの形状としては特に限定されず、粒子状、線状等であってもよい。
上記空気層の周辺部の封止、空気層の分割サイズは、本発明の層数および空気層間隔の範疇であれば特に限定されない。ただし、上述のように、断熱性はスペーサ面積にも依存することから、同一スペーサ形状部材を使用した場合には使用スペーサ量を少なくするような分割方法が好ましい。また、上記スペーサの形状により、得られる採光断熱材に意匠性を付与してもよい。なお、上記空気層が複数ある場合には、各々の空気層を規定するスペーサは同一の形状であってもよいし、異なった形状であってもよい。例えば、隣接する空気層を規定するスペーサが直交するようにして、全体としてスペーサが格子状となっていてもよい。
【0033】
上記樹脂スペーサは、2mmの厚さとしたときに、JIS R 3106に準拠した方法により測定した可視光線透過率の好ましい下限が30%である。30%未満であると、得られる採光断熱材の透光性が不充分となることがある。
【0034】
上記樹脂スペーサは、接着剤や両面テープで固定してもよく、ホットメルト接着剤用樹脂をスペーサとして使用してそのまま熱圧着により固定してもよい。また、常温で自己粘着性を有する樹脂からなる樹脂スペーサも、圧着により容易に固定できることから好適である。
【0035】
本発明の難燃性採光断熱材は、可視光線透過率の下限が15%である。15%未満であると、充分な採光を得ることができない。好ましい下限は20%、更に好ましい下限は30%である。
【0036】
本発明の難燃性採光断熱材において外層、内層として用いる樹脂フィルムの厚さや枚数、及び、用いる樹脂スペーサの量は適宜選択されるが、全樹脂重量としては300g/m以下である。全体としての樹脂の目付量が300g/mを超えると、充分な難燃性能を得られない。
【0037】
本発明の難燃性採光断熱材は、ISO 1182に準拠して、不燃性材料に貼り合わせて50kW/mの輻射加熱条件下で燃焼する際、加熱開始後5分間において、最大発熱速度が連続して200kW/m以上となる時間が10秒未満であり、かつ、総発熱量が8MJ/m以下であることが好ましい。より好ましくは、加熱開始後10分間で上記条件を満たすことが好ましく、加熱開始後20分間において上記条件を満たすことが更に好ましい。加熱開始後5分間において、最大発熱速度が連続して200kW/m以上となる時間が10秒以上、又は、上記総発熱量が8MJ/mを超えると、難燃性が不充分であるとして使用形態によっては建材に用いることができない場合がある。
【0038】
本発明の難燃性採光断熱材を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、図1に記載した態様の製造装置を用いる方法が挙げられる。
図1に記載した製造装置1は、ロール状に巻き取った樹脂フィルム又はガラス繊維からなる不織布若しくは織布のロールから樹脂フィルム等を送り出すフィルム送り出し部2、ロール状に巻き取ったロールから樹脂スペーサを送り出すスペーサ送り出し部3、各フィルムと樹脂スペーサとを積層する貼り合せ部4とからなる。また、図1に記載した製造装置は、更に、スペーサ送り出し部3から送り出した樹脂スペーサの両面にホットメルト接着剤を塗布する接着剤加工部5を有する。
【0039】
図1に記載した製造装置を用いて本発明の難燃性採光断熱材を製造する方法では、まず、スペーサ送り出し部3から樹脂スペーサを送り出す。送り出されたスペーサは、接着剤加工部5において両面にホットメルト接着剤が塗布される。次いで、樹脂スペーサの送り出しに合わせて、樹脂フィルム又はガラス繊維からなる不織布若しくは織布を送り出し部2から送り出す。各フィルムとスペーサとは、貼り合わせ部4においてエアブロー等により積層され、加熱されて接着される。上記エアブローは、積層の直前まで樹脂フィルムや樹脂スペーサが合着するのを防ぐとともに、積層後には熱風により接着するのにも用いられる。
なお、樹脂フィルムと樹脂スペーサとは、積層する前に、50〜130℃程度の予熱を行うことが好ましい。予熱により樹脂フィルムやスペーサの歪をとることができ、積層後に収縮等が発生するのを防止することができる。
【0040】
本発明の難燃性採光断熱材は、また、樹脂フィルム又はガラス繊維からなる不織布若しくは織布上に、発泡剤を含有する硬化性樹脂組成物(例えば、エポキシ系等熱硬化型硬化性樹脂組成物やウレタン系等反応型硬化性樹脂組成物等)や熱可塑性樹脂組成物を塗工した後、発泡剤を発泡させる方法によっても製造することができる。また、熱可塑性樹脂組成物の溶融工程において窒素ガス等の無機ガスを機械的に混合することで塗布時にガスが解放されて発泡する、いわゆる無機ガス発泡方法も用いることができる。
【0041】
本発明の難燃性採光断熱材は、単独で、又は、通常のガラスと併用して建築物の採光部に設置することにより高い断熱性能を発揮することができるとともに、火災時にも充分な難燃性を発揮することができる。本発明の難燃性採光断熱材の設置態様としては特に限定されないが、例えば、通常のガラスによる出窓状の採光部において、該ガラスの内側に該ガラスから離して設置することが考えられる。本発明の難燃性採光断熱材を着脱可能なように設置することにより、季節や目的に合わせて本発明の難燃性採光断熱材を用いることができる。また、本発明の難燃性採光断熱材を、開閉可能な形としてもよい。
本発明の難燃性採光断熱材は、また、例えばビニールハウス等の農業用フィルムとしても好適である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、断熱性に優れ、透明性が高く、軽量であり、かつ、難燃性に優れる難燃性採光断熱材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0044】
(実施例1〜10、比較例1〜4)
表1に示した材料を用いて、以下の方法により表3、4に示した各構成の難燃性採光断熱材を製造した。
【0045】
【表1】

【0046】
(樹脂フィルムの調製)
表2に示した構成により樹脂フィルムを調製した。樹脂フィルム3〜9、11〜12に関しては、充填剤を15.5重量%でスクリュー径φ32、L/D60の二軸押出機械を使用して500rpmで混練し、コンパウンドを実施した。最終充填剤濃度が表2になるようにバージン樹脂とプレブレンドして、短軸押出機に供給し、各厚みにダイのクリアランスを調整し、シート成型を行った。樹脂フィルム1、2、10に関しては、1段階で単軸押出機を使用してシート成型を行った。
【0047】
【表2】

【0048】
(外層の調製:ガラスペーパー及びオレフィン不織布と樹脂フィルムとの積層体の成型)
実施例7、9、10の外層に関しては、表2の配合に従ってコンパウンドを作製した後、シート成型時にガラスペーパー又はオレフィン不織布を供給して片面溶融ラミネートを実施し、更に片面ラミネート原反を供給してガラスペーパー又はオレフィン不織布材が露出した面にラミネートを実施し、二段階で両面ラミシートを作製した。
【0049】
(外層の調製:アエロジェル層と樹脂フィルムとの積層体の成型)
実施例8に関しては、オレフィン繊維製不織布への片面ラミネート時に、オレフィン繊維製不織布に対する担持量が100g/mとなるようにアエロジェル1を幅方向に均一に散布し、アエロジェル1をはさみこんだラミネートフィルムを得た。
【0050】
(実施例1〜10、比較例1〜5における樹脂スペーサの調製)
外径2.0mm、内径1.5mmのポリカーボネートチューブ(以下、PCチューブともいう)、外径2mmのFRPからなる線材(以下、FRP線材ともいう)、外径2mmの接着性アクリル樹脂からなる線材(以下、接着性アクリル線材ともいう)、又は、外径2mmであって、アエロジェル(CABOT社製「ナノジェルTLD301」)を20重量%含有する接着性アクリル樹脂(以下、アエロジェル担持接着性アクリル樹脂ともいう)からなる線材を樹脂スペーサとして使用した。
【0051】
(実施例1〜10、比較例1〜4における難燃性採光断熱材の製造)
樹脂スペーサとして接着性アクリル樹脂からなる線材、又は、アエロジェル担持接着性アクリル樹脂を用いた場合は、接着性アクリル樹脂の自己粘着性を利用して、各層を貼り合わせることにより、表3、4に示した各構成の難燃性採光断熱材を製造した。
樹脂スペーサとしてPCチューブ、又は、FRPからなる線材を用いた場合は、アクリル系粘着剤を用いて樹脂スペーサを各々挟持するようにして、各層を貼り合せることにより、表3、4に示した各構成の難燃性採光断熱材を製造した。
図2に示すように、幅300×高さ1200mmの面積の樹脂フィルムに対し、5mmの長さを有する樹脂スペーサを、樹脂スペーサの幅間隔が50mm、高さ間隔50mmとなるように120箇所に設置して、難燃性採光材を作製した。
【0052】
(比較例5における難燃性採光断熱材の製造)
樹脂スペーサとして用いた接着性アクリル線材の自己粘着性を利用して、各層を貼り合わせることにより、表3、4に示した各構成の難燃性採光断熱材を製造した。
図3に示すように、幅300×高さ1200mmの面積の樹脂フィルムに対し、150×150mmの開口部を16箇所有する格子状体を形成するように樹脂スペーサを設置して、難燃性採光材を作製した。
【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
実施例1〜10及び比較例1〜4にて得られた難燃性採光断熱材の評価を以下のように行った。結果を表5、6に示した。
(1)力学物性の評価
室内側に設置するとよりよい外層1のみについて、テンシロン(UTA−500、ORIENTEC社製)を用い、JIS K 7127に準拠し、23℃、50%RH下で引張り試験を行った。試験片はタイプ5のダンベル状試験片を使用し、速度500mm/minで試験を行い、下記の基準により評価した。
◎:最大点応力(引張り強度)が80N/mm以上
○:最大点応力(引張り強度)が20N/mm以上、80N/mm未満
△:最大点応力(引張り強度)が20N/mm未満
【0056】
(2)断熱性の評価
幅300mm×高さ1200mm開口を有し、開口部と対向する面にスライダックにより温度制御可能な面状ラバーヒーターを設置した断熱箱を使用して、熱流板による熱貫流率評価を実施した。開口部に300×1200mmサイズのサンプルを留め付け、内外の空気温度差が約20℃となるように、ヒーター制御を行い、サンプル表面を通過する熱量を定常状態で測定した。通過熱量と空気温度から、熱貫流率を算出し、以下の基準により断熱性を評価した。
○:熱貫流率が2.5W/m・K以下
×:熱貫流率が2.5W/m・Kを超える
【0057】
(3)採光性の評価
分光光度計(島津製作所社製)を使用して可視光透過率を測定し、以下の基準により透光性を評価した。
○:可視光透過率が15%以上
×:可視光透過率が15%未満
また、目視により以下の基準により着色性を評価した。
○:白色又は透明であり着色が認められない
×:着色が認められた
【0058】
(4)難燃性の評価
各難燃性採光断熱材を100mm×100mmに細切した試験片を、樹脂スペーサの格子が交わる部分を中央において試験に供した。ISO 1182に準拠して、東洋精機製作所社製のコーンカロリメーターを使用し、照射熱量50kW/mの条件下で加熱開始後、スパーク着火させ、20分間燃焼させ、200kW/m以上となる時間及び総発熱量を5、10、20分間で各々算出した。建築基準法では、5、10、20分間の3段階で発熱速度200kW/m超過継続時間が10秒未満内、総発熱量が8MJ/m以下、及び燃焼後残渣に亀裂、貫通孔がないという全ての項目を満たすことで、難燃レベルを分別していることから、本発明においてもこの3段階で難燃性のレベル確認を行った。具体的には、以下の基準で評価を行った。
総発熱量
○:8MJ/m以下のもの
×:8MJ/mを超えるもの
発熱速度
○:200kW/m超過継続時間が10秒未満のもの
×:200kW/m超過継続時間が10秒を超えるもの
燃焼後残渣の貫通・亀裂
○:認められないもの
×:認められるもの
TOTAL評価
○:該当時間において総発熱量、発熱速度、燃焼残渣の貫通・亀裂の評価が全て○のもの
×:該当時間において総発熱量、発熱速度、燃焼残渣の貫通・亀裂の評価が一つでも×のもの
なお、難燃性のレベルは、どのくらい長い時間でTOTAL評価が○であるかということで判断可能である。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、断熱性に優れ、透明性が高く、軽量であり、かつ、難燃性に優れる難燃性採光断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の難燃性採光断熱材を製造する製造装置を示す模式図である。
【図2】実施例1で製造した難燃性採光断熱材の樹脂スペーサの配置を示す模式図である。
【図3】比較例5で製造した難燃性採光断熱材の樹脂スペーサの配置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1 製造装置
2 樹脂フィルム送り出し部
3 スペーサ送り出し部
4 貼り合せ部
5 接着剤加工部
6 樹脂フィルム
7 樹脂スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光透過率が15%以上である難燃性採光断熱材であって、
20〜200μm厚の樹脂フィルムからなる2枚の外層と、目付量10〜50g/m2のガラス繊維からなる不織布若しくは織布又は20〜60μm厚の樹脂フィルムからなる内層との少なくとも合計4枚以上が樹脂スペーサを介して空気層を挟んで各々対向した構造を有し、
前記内層は、少なくとも1枚がガラス繊維からなる不織布若しくは織布であり、
前記空気層は、厚さが100μm〜3mmであり、かつ、少なくともその周辺部が封止されており、
含有する全樹脂重量が300g/m以下である
ことを特徴とする難燃性採光断熱材。
【請求項2】
外層を構成する樹脂フィルムの少なくとも一方は、層状珪酸塩、アエロジェル及びヒュームドシリカからなる群より選択される少なくとも1種を3〜10重量%含有することを特徴とする請求項1記載の難燃性採光断熱材。
【請求項3】
外層の少なくとも一方は、樹脂フィルムとガラス繊維からなる不織布又は織布との積層体であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性採光断熱材。
【請求項4】
外層の少なくとも一方は、樹脂フィルム、アエロジェル層、及び、ガラス繊維からなる不織布又は織布がこの順に積層された積層体であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性採光断熱材。
【請求項5】
外層の少なくとも一方は、アエロジェル層を担持したガラス繊維又は樹脂繊維からなる不織布層の両面を樹脂フィルムではさみこんだ積層体であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性採光断熱材。
【請求項6】
樹脂スペーサは、層状珪酸塩、アエロジェル及びヒュームドシリカからなる群より選択される少なくとも1種を1〜30重量%含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の難燃性採光断熱材。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2007−327320(P2007−327320A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278140(P2006−278140)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】