説明

難燃性接着剤樹脂組成物及びそれを用いた接着剤フィルム、カバーレイフィルム及びフレキシブル銅張積層板

【課題】実質的にハロゲン元素を含まない高耐熱、難燃性の接着剤樹脂組成物及びそれを用いた接着剤フィルム、カバーレイフィルム及びフレキシブル銅張積層板に関するものであり、特にフレキシブルプリント基板に適した難燃性接着剤樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(イ)エポキシ樹脂、(ロ)硬化剤、(ハ)硬化促進剤、及び(ニ)下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂、(ホ)常温で固体の有機リン化合物又はリン含有樹脂、を必須成分として含有し、実質的にハロゲン元素を含まないことを特徴とする難燃性接着剤樹脂組成物。


(1)(式中、Xは例えば置換フェニル基含有の2価の基であり、Zは水素原子又は例えばグリシジル基であり、Aは例えばカルボキシル基含有の1価の基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性接着剤樹脂組成物に関し、詳しくは高耐熱、難燃性の接着剤樹脂組成物並びにそれを用いた接着剤フィルム、カバーレイフィルム及びフレキシブル銅張積層板に関するものであり、特にフレキシブルプリント基板(以下、FPCと略称することがある。)に適した難燃性接着剤樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板としては、従来、紙−フェノール樹脂、ガラス繊維−エポキシ樹脂からなる基材あるいはポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材と金属を貼り合わせたものが用いられている。
本明細書において、プリント配線基板は回路加工前の積層体をいい、この金属箔を回路加工したものをプリント配線板といい、両者をプリント基板という。
【0003】
また、近年、電機・電子機器、精密機器の分野において用いるプリント配線板においては、配線占有面積が小さくなり、このため多層プリント基板の需要はますます高くなっている。プリント配線板を積層して多層プリント配線板を作製したり、異種の回路材料を複合化する工程においては、種々の接着剤あるいは接着剤フィルムが用いられている。
【0004】
このような接着剤は、多層プリント基板用接着剤、カバーレイフィルム用接着剤として広く使われているが、接着強度、耐薬品性、はんだ耐熱性、耐折性等に優れた材料が求められるようになってきた。また、火災安全性確保の点から難燃性に優れた材料が求められてきた。
【0005】
従来の接着剤フィルムは、難燃性を付与するために、臭素等のハロゲンを含有する樹脂又は添加物等が使用されていた。ハロゲンは難燃性の付与の他、コストパフォーマンスが高く、プラスチックを劣化させにくいなどの理由から広く用いられてきた。しかしここに含まれるハロゲンは、燃焼時にダイオキシン等の有害物質を発生させる原因となる可能性が懸念されており、材料からのハロゲンの排除が強く望まれている。
【0006】
プリント基板用途に使用される接着剤は、例えば、特許文献1〜5等で提案されている。これらの特許文献は、いずれもエポキシ樹脂、硬化剤、アクリロニトリルブタジエンゴムもしくはフェノキシ樹脂を主要成分とするものであり、難燃化の手段はいずれも臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂を配合することによっている。
【0007】
一方、ハロゲンに替わる難燃性付与材料として、非ハロゲン系の様々な材料が開発されている。その中でも最も一般的な手法はリンを含む樹脂の使用又は有機リン系化合物の添加である。このような難燃性接着剤としては、例えば、特許文献6〜10等が挙げられる。
【0008】
【特許文献1】特開平10−102025号公報
【特許文献2】特開2001−164226号公報
【特許文献3】特開2001−323242号公報
【特許文献4】特開2001−354936号公報
【特許文献5】特開2003−181993号公報
【特許文献6】特開2001−339131号公報
【特許文献7】特開2002−60720号公報
【特許文献8】特開2003−176470号公報
【特許文献9】特開2004−331783号公報
【特許文献10】特開2005−290229号公報
【0009】
特許文献6、7、9は有機リン化合物を、特許文献8及び10は公知のリン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノキシ樹脂を非ハロゲン系での難燃化の手段として各々配合することとしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、硬化前のフィルム状態において、ワレ、ハガレなどがなく作業性に優れ、かつ硬化後のピール接着力、ハンダ耐熱性等の接着剤特性に優れ、しかも環境に対応するために非ハロゲン化を実現した難燃性の接着剤樹脂組成物を提供することであり、更に、このような接着剤樹脂組成物を用いた難燃性の接着剤フィルム、カバーレイフィルム及びフレキシブル銅張積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、接着剤樹脂組成物に特定の樹脂を使用し、特定の成分を見出したことで、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、下記(イ)〜(ホ)成分、
(イ)エポキシ樹脂、
(ロ)硬化剤、
(ハ)硬化促進剤、
(ニ)下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂、及び
(ホ)常温で固体の有機リン化合物又はリン含有樹脂
を必須成分として含有することを特徴とする難燃性接着剤樹脂組成物である。
【0013】
【化1】

一般式(1)において、Xは一般式(2)又は(3)から選ばれる少なくとも1種の2価の基を示し、Zは水素原子又はグリシジル基を示し、Aは一般式(4)を示すが、nとmは、総和が21以上で、且つnは0より大きい数値である。
【0014】
【化2】

ここで、式(3)中、Bは単結合又は―CH―、―C(CH―、―CH(CH)―、−S−、−SO−、−O−、−CO−若しくは一般式(5)から選ばれる2価の基を示す。式(4)中、Dは炭素数2〜24の直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれかの炭化水素基を示すが、ヘテロ原子を含んでもよく、qは1〜3の整数である。
【0015】
【化3】

ここで、式(6)中、R〜Rは独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示すが、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。
【0016】
また、本発明は、(イ)成分が、下記一般式(6)で表され、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した重合度r=0体の含有率がクロマトグラムの面積パーセントで50%以上である上記の難燃性接着剤樹脂組成物である。
【0017】
【化4】

一般式(6)において、Xは一般式(2)又は(3)から選ばれる少なくとも1種の2価の基を示し、rは0以上の整数である。
【0018】
また、本発明は、上記の難燃性接着剤樹脂組成物を、フィルム状に形成してなることを特徴とする難燃性接着剤フィルムである。更に、本発明は、基材樹脂フィルムの片面又は両面に上記の難燃性接着剤樹脂組成物の層を有することを特徴とする接着剤フィルムである。更にまた、本発明は、ポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムに設けられた上記の難燃性接着剤樹脂組成物からなる層とを有することを特徴とするカバーレイフィルムである。また、本発明は、ポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムに設けられた上記の難燃性接着剤樹脂組成物からなる層と、銅箔とを有することを特徴とするフレキシブル銅張積層板である。更に、本発明は、上記の難燃性接着剤樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物である。
【0019】
以下、本発明の難燃性接着剤樹脂組成物に関する説明をし、次に難燃性接着剤フィルム、カバーレイフィルム及びフレキシブル銅張積層板に関する説明をするが、共通する部分は同時に説明する。
【0020】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物(以下、接着剤樹脂組成物又は樹脂組成物と略称することがある。)は、上記(イ)〜(ホ)成分を必須成分として含有する。(イ)成分はエポキシ樹脂であり、(ロ)成分は硬化剤であり、(ハ)成分は硬化促進剤であり、(ニ)成分は上記一般式(1)式で表されるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂であり、(ホ)成分は常温で固体の有機リン化合物又はリン含有樹脂である。
【0021】
本発明で用いる(イ)成分のエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。エポキシ樹脂は、実質的にハロゲン元素を含まないものであることが好ましい。
【0022】
樹脂組成物を乾燥して得られる乾燥物又はフィルム(以下、Bステージ状態組成物という)の耐割れ性向上を考慮すると、エポキシ樹脂が上記一般式(6)で表され、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した重合度r=0体の含有率がクロマトグラムの面積パーセントで好ましくは50%以上であることがよく、より好ましくは70%以上であることがよく、更に好ましくは80%以上がよい。そして、常温で液状ないし半固形状であるものが好ましい。
【0023】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物100重量部中には、(イ)成分を20〜70重量部配合することが好ましい。20重量部を下回ると、架橋密度が低下して接着剤樹脂組成物の耐熱性が低下し、70重量部を上回ると、可とう性が低下して接着剤樹脂組成物の剥離接着力が低下する、という問題が生ずる。ここで、難燃性接着剤樹脂組成物の重量の計算に当っては、乾燥除去される溶剤が含まれる場合、これは除外される。
【0024】
本発明で用いる(ロ)成分の硬化剤としては、例えばノボラック型フェノール樹脂、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等、エポキシ樹脂硬化剤として知られているものが挙げられる。硬化剤は(イ)成分のエポキシ樹脂に対し当量比((ロ)/(イ))が0.5〜1.5となるように配合することが好ましい。一般に、フェノール樹脂系硬化剤を用いる場合は、0.8〜1.2の範囲がよく、アミン系硬化剤を用いる場合は、0.5〜1.0の範囲とすることがよい。
【0025】
本発明で用いる(ハ)成分の硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物や2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等を用いることができる。その配合率は、求められる硬化時間に応じて適宜選定されるが、一般的には、難燃性接着剤樹脂組成物100重量部に対し、0.01〜3.0重量部の範囲で用いられることがよい。また、(ハ)成分として、有機リン系化合物を使用する場合、これは(ホ)成分でもあるので、(ホ)成分としても計算される。したがって、この場合は、他の(ホ)成分と合わせて、難燃性樹脂組成物100重量部に対し、リンとして0.5〜5重量部の範囲となるように配合する。
【0026】
本発明で用いる(ニ)成分のカルボキシル基含有フェノキシ樹脂は、上記一般式(1)で表される。一般式(1)において、Xは一般式(2)又は(3)から選ばれる少なくとも1種の2価の基を示し、Zは水素原子又は下記式(7)で表されるグリシジル基を示す。
【0027】
【化5】

(7)
Aは一般式(4)を示すが、nとmは、総和が21以上で、且つnは0より大きい数値である。nとmの総和の上限値は特に制限はされず、一般式(1)で表されるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂の重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した標準ポリエチレンオキサイド換算で、好ましくは200,000以下、より好ましくは130,000以下となるものであればよい。重量平均分子量が200,000を超えると、溶剤に溶解しても、一般的に工業的に利用されている樹脂溶液濃度である70重量%から30重量%の濃度では、溶剤粘度が高すぎて利便性に欠ける傾向になる。ここで、式(3)中、Bは単結合又は―CH―、―C(CH―、―CH(CH)―、−S−、−SO−、−O−、−CO−若しくは一般式(5)から選ばれる2価の基を示す。また、式(4)中、Dは炭素数2〜24の直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれかの炭化水素基を示し、これらはヘテロ原子を含んでもよく、耐加水分解性の観点から、Dは環状のものが好ましく、より好ましくは式(4)は下記式(8)を示すものがよい。
【0028】
【化6】

(8)
ここで、式(8)中、R〜Rは水素原子又はカルボキシル基を示すが、R〜Rのうちの1個以上がカルボキシル基である。
【0029】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物は、該樹脂組成物100重量部に対し、カルボキシル基の含有量が0.5重量部〜3.0重量部、好ましくは0.5〜2.0重量部の範囲になるように、(ニ)成分を配合することが好ましく、カルボキシル基の含有量をこのような範囲に制御することによって、得られる樹脂組成物をカバーレイフィルムに適用した場合、熱圧着して積層一体化する際に接着剤の適度な流れ性(フロー性)を発現させることができる。また、フェノキシ樹脂は、金属箔、特に銅箔又は銅合金との高い接着性を発現させる成分であり、しかも(イ)成分のエポキシ樹脂及び(ロ)成分の硬化剤との架橋を阻害しにくいため、得られる樹脂組成物の熱硬化後のガラス転移温度(Tg)を低下させずに、樹脂組成物の硬化物特性としての半田耐熱性及び耐加水分解性を向上させることができる。カルボキシル基の含有量が上記範囲より少ない場合、得られる樹脂組成物をカバーレイフィルムに適用した場合のフロー性が過大となり、一方、上記範囲を超えると、樹脂組成物の保存安定性、金属箔との接着性及び半田耐熱性が低下する傾向になる。また、金属箔との接着性付与のため、カルボキシル基を含有しないフェノキシ樹脂も併用可能であり、併用するフェノキシ樹脂は、好ましくは下記一般式(9):
【0030】
【化7】

(9)
(式中、Xは一般式(10)又は(11)から選ばれる少なくとも1種の2価の基を示し、Zは水素原子又はグリシジル基を示し、mは平均値で21以上である。)
【0031】
【化8】

(式(11)中、Bは単結合又は―CH―、―C(CH―、―CH(CH)―、−S−、−SO−、−O−、−CO−若しくは一般式(12)から選ばれる2価の基を示す。)
【0032】
【化9】

(12)
(式(12)中、R〜Rは独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示すが、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。)
で表されるものがよい。
【0033】
本発明で用いる(ホ)成分は、常温で固体の有機リン化合物又はリン含有樹脂であり、樹脂組成物の硬化後の半田耐熱性を低下させずに難燃性を付与しつつ、耐マイグレーション性を向上させる成分である。(ホ)成分の配合量は、難燃性樹脂組成物100重量部に対し、リンとして0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量部、より好ましくは1.5〜3重量部の範囲とすることがよい。(ホ)成分は、難燃性を向上させるための成分としてハロゲン元素(ハロゲン化合物)を含まない。有利には、実質的にハロゲン元素を含まない。ここで、実質的にハロゲン元素を含まないとは、ハロゲン元素として900wtppm以上のハロゲン及びハロゲン化合物を含まないことをいう。
【0034】
(ホ)成分における常温で固体の有機リン化合物は、下記一般式(13):
【0035】
【化10】

(13)
(式中、Xは独立に一般式(14)、(15)、(16)又は(17)から選ばれる有機基を示す。)
【0036】
【化11】

で表されるシクロホスファゼン、下記一般式(18)又は(19):
【0037】
【化12】

(式中、Rは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。)
で表されるリン酸エステルアミド、下記一般式(20):
【0038】
【化13】

(20)
(式中、wは2又は3である。)
で表される芳香族縮合リン酸エステル、下記一般式(21);
【0039】
【化14】

(21)
(式中、R1及びR2は互いに同じか又は異なる、直鎖状の又は枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基若しくはトリル基であり、好ましくはR1及びR2は炭素数1〜3のアルキル基がよく、MはMg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na及びKからなる群の少なくとも1種の金属種であり、vは1〜4の整数であるが、特に好ましい金属種はAlである。)
で表される有機ホスフィン酸の金属塩、あるいは下記一般式(22)
【0040】
【化15】

(22)
で表されるトリフェニルホスフェート等が挙げられる。有利にはシクロホスファゼン、特にシクロフェノキシホスファゼンである。
【0041】
また、(ホ)成分におけるリン含有樹脂は、リン含有エポキシ樹脂又はリン含有フェノキシ樹脂などを用いることができる。ここで、リン含有エポキシ樹脂を用いる場合、リン含有エポキシ樹脂は(イ)成分でもあるので、(イ)成分としても計算される。リン含有樹脂は、その分子構造中にフェノキシ骨格を有するものが好ましく、より好ましくは下記一般式(23);
【0042】
【化16】

(23)
(式中、一つのXは一般式(24)または(25)で表される2価の基、他のXは一般式(24)、(25)、(26)又は(27)から選ばれる少なくとも1種の2価の基を示し、Zは水素原子又はグリシジル基を示し、nは平均値で21以上である。)
【0043】
【化17】

(式中、Yは一般式(28)又は(29)で表されるリン含有基を示し、R〜R、R〜R、R〜Rは独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。Aは単結合又は―CH―、−C(CH−、−CH(CH)−、−S−、−SO−、−O−、−CO−若しくは一般式(30)から選ばれる2価の基を示す。)
【0044】
【化18】

(式中、R〜R、R〜R10、R〜Rは独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示すが、好ましくは水素原子又はメチル基であり、メチル基の数は4以下であることがよい。)
で表されるものがよい。また、一般式(23)において、リン含有率が1重量%〜6重量%であるものが好ましい。
【0045】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物は、上記必須成分以外の成分として、無機系難燃剤としての水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム、補強剤もしくは増量剤としてのシリカ、炭酸カルシウム等の体質顔料を配合することができる。その添加率は、求められる特性に応じて適宜選定される。
【0046】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物は、メチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジグライム、シクロペンタノン、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール等の有機溶剤に溶解又は分散した接着剤溶液として使用に供される。その場合の固形分濃度は、使用条件によって適宜選定されるが、20〜60重量%とするのが一般的である。なお、溶剤は本発明の難燃性接着剤樹脂組成物を構成する成分ではなく、難燃性接着剤樹脂組成物を溶液とするために使用される成分と理解される。したがって、難燃性接着剤樹脂組成物中への各成分中への各成分の配合量の計算にあたっては、溶剤の計算からは除外される。
【0047】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物は、フィルム状に成形して用いることができる。この場合、従来から公知の方法を用いてフィルム化することが可能であるが、好適な成形方法の例としては、難燃性接着剤樹脂組成物をメチルエチルケトン等の有機溶剤で希釈して溶液状にした後、得られた接着剤樹脂溶液を、表面が剥離処理された金属箔、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の基材上に従来公知の方法により塗工し、溶剤を蒸発させてタックフリー化し、且つ接着剤樹脂層を構成する組成物が硬化反応しない温度、時間条件で乾燥して、接着剤フィルム層を形成し、これを基材より剥離して、難燃性接着剤フィルムとする。この乾燥条件は、使用する溶剤や樹脂組成物によって変化するが、一般的には130〜160℃、3〜10分の温度、時間範囲が選定される。また、ポリエステル等の離型フィルム及び接着剤フィルム層よりなるボンディングシートとして使用する場合には、離型フィルムと接着剤フィルム層の厚みの比は、特に限定されないが、離型フィルム厚12.5μmに接着剤層15〜30μmを設けたものが好適に利用できる。
【0048】
また、本発明の接着剤フィルム(以下、ボンディングシートともいう)の好適な使用方法としては、例えば、フレキシブルプリント配線基板、ガラス繊維−エポキシ配線基板、紙−フェノール配線基板又はこれらを回路加工して得られる各種プリント配線板、金属、樹脂基材等の被接着物の接着に適する。金属箔と樹脂基材を接着することによりプリント配線基板を得ることができ、プリント配線基板又はプリント配線板同士を接着させることにより多層のプリント配線基板又はプリント配線板を得ることができ、プリント配線板とカバーレイを接着させることにより、カバーレイ付き、プリント配線板を得ることができる。その他、プリント配線基板又はプリント配線板の接続用接着剤フィルムとしても使用できる。いずれにしても、プリント基板の製造又は加工の工程に有利に使用される。
【0049】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物は、カバーレイフィルム(以下、カバーレイともいう)の接着剤層に適用することもできる。その場合、カバーレイフィルムはポリイミドフィルム及びこの樹脂組成物より形成される。本発明のカバーレイフィルムを形成する方法としては、従来の方法を用いてフィルム化することが可能である。好適な成形方法の例としては、上記樹脂組成物をメチルエチルケトン等の有機溶剤で希釈して溶液状にした後、得られた樹脂溶液を、ポリイミドフィルム上に塗工し、溶剤を蒸発させてタックフリー化し、かつ接着剤層を構成する樹脂組成物は硬化反応しない温度、時間条件で乾燥して、カバーレイフィルムとする方法がある。ポリイミドフィルムに2〜200μmの厚さ、好ましくは5〜100μm、更に好ましくは10〜50μmの厚さでコーティングした後、乾燥する。この乾燥条件は、使用する溶剤や樹脂組成物によって変化するが、一般的には130〜160℃、3〜10分の温度、時間範囲が選定される。また、ポリイミドフィルムは耐熱性及び難燃性を増すために必要であり、このポリイミドフィルムの厚さは、必要に応じて適切な厚さのものを使用すればよいが、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜30μmがよい。ポリイミドフィルムと接着剤層の厚みの比は、限定されないが、フィルム厚12.5μmに接着剤層15〜20μm、フィルム厚25μmに接着剤層25〜35μm、各々設けたカバーレイフィルムが一般的である。
【0050】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物は、フレキシブル銅張積層板(以下、3層銅張積層板ともいう)の接着剤層に適用することもできる。その場合、フレキシブル銅張積層板はポリイミドフィルム、前記の接着剤樹脂組成物及び銅箔より形成されるが、本発明のフレキシブル銅張積層板を形成する方法としては、従来の方法を用いて積層することが可能である。好適な積層方法の例としては、上記接着剤樹脂組成物をメチルエチルケトン等の有機溶剤で希釈して溶液状にした後、ポリイミドフィルムの片面又は両面に塗工し有機溶剤分を乾燥後、熱ロールで銅箔をポリイミドフィルムの片面又は両面に張り合わせた後、加熱硬化することで製造できる。乾燥条件は、使用する溶剤や樹脂組成物によって変化するが、一般的には130〜160℃、3〜10分の温度、時間範囲が選定され、硬化条件は、160〜190℃、10〜120分の温度、時間範囲から選定されるのが一般的である。ポリイミドフィルム層、接着剤層及び銅箔の厚みは、特に限定されないが、ポリイミドフィルム厚5〜25μm、接着剤層10〜30μm、銅箔厚10〜35μmとするのが一般的である。
【発明の効果】
【0051】
本発明の難燃性接着剤樹脂組成物及びそれを用いた接着剤フィルム、カバーレイフィルム及び3層銅張積層板は、ハロゲンを含まず、且つ難燃性であるため環境問題対策に有効である上、加工作業性、耐マイグレーション性及びスルーホールメッキ導通信頼性等のFPC特性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
次に、合成例、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。硬化物特性およびFPC用材料特性である、カバーレイ、ボンディングシートおよび3層銅張積層板の特性評価方法は、以下の通りである。
【0053】
<Bステージ物性>
[耐割れ性及び耐ハガレ性]
上記35重量%接着剤溶液を、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカルNPI)の片面に接着剤溶液を塗布し、135℃で5分間乾燥を行い、接着剤層厚さ25μmのカバーレイフィルムを調製後、カバーレイフィルムの接着剤塗布面が内側になるように、指でカバーレイフィルムを折り曲げた時、接着剤層に割れ、ハガレが発生するかどうかを目視観察した。判定は、割れ、ハガレの発生が認められた場合を「不可」、割れ、ハガレの発生が認められない場合を「良」とした。
【0054】
<カバーレイフィルム特性>
[耐燃性]
上記35重量%接着剤溶液を、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカルNPI)の片面に接着剤溶液を塗布し、135℃で5分間乾燥を行い、接着剤層厚さ25μmのカバーレイフィルムを調製後、JPCA−BM02−1991の7.7記載の寸法に切り取った2枚のカバーレイフィルムを接着剤面で貼り合わせ、その後、170℃で1時間、加熱プレスを行い、その後190℃で2時間、後硬化を行って試料調製を行った。続いて、JPCA−BM02−1991の7.7の手順に従って耐燃性試験耐燃性測定を行い、UL規格94の判定基準である、「VTM−0」、「耐燃性なし」の2水準で耐燃性を判定した。「VTM−0」は耐燃性があることを意味する。
【0055】
[引きはがし強さ]
上記と同じ条件でカバーレイフィルムを調製後、銅張積層板(新日鐵化学株式会社製、エスパネックスMC−12−25−00CEM)と加熱プレスにより、テストピースを作製した。テストピース作製時における接着剤樹脂組成物の熱硬化条件は前記同様、170℃で1時間の加熱プレス後、190℃で2時間の後硬化とした。作製したテストピースをJPCA−BM02−1991の7.5引きはがし強さに従ってテストピースの作製及び引き剥がし強さを測定した。
【0056】
[加湿引きはがし強さ]
上記と同じ条件でカバーレイフィルムを調製後、銅張積層板(新日鐵化学株式会社製、エスパネックスMC−12−25−00CEM)と加熱プレスにより、テストピースを作製した。テストピース作製時における接着剤樹脂組成物の熱硬化条件は前記同様、170℃で1時間の加熱プレス後、190℃で2時間の後硬化とした。作製したテストピースを45℃85%の恒温恒湿機で24時間吸湿させた後、JPCA−BM02−1991の7.5引きはがし強さに従ってテストピースの引き剥がし強さを測定した。
【0057】
[はんだ耐熱性(乾燥)]
上記と同じ条件でカバーレイフィルムを調製後、JPCA−BM02−1991−7.9のはんだ耐熱性(外観)に従って、テストピースの作製及びはんだ耐熱性試験を実施した。テストピース作製時の接着剤熱硬化条件は前記同様、170℃で1時間の加熱プレス後、190℃で2時間の後硬化とした。このテストピースを105℃で1時間乾燥させた後、各評価温度に設定した半田浴中に5秒間浮かせて、その接着状態を観察、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。表中の「260℃」は、260℃の半田浴中で評価して、不具合が認められないことを意味する。
【0058】
[はんだ耐熱性(耐湿)]
上記と同じ条件でカバーレイフィルムを調製後、45℃、相対湿度85%で24時間放置した後、各評価温度に設定した半田浴中に5秒間浮かせて、その接着状態を観察、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。表中の「260℃」は、260℃の半田浴中で評価して、不具合が認められないことを意味する。
【0059】
[接着剤樹脂組成物(接着剤)のフロー]
上記と同じ条件でカバーレイフィルムを調製後、JPCA−BM02−1991−7.10に従って、テストピースの作製及び接着剤のフロー試験を実施した。判定は、接着剤の染み出した長さを測定した。
【0060】
[貯蔵安定性]
上記と同じ条件でカバーレイフィルムを調製後、23℃の恒温室で保管した。保管1ヵ月後、新日鐵化学(株)製エスパネックスSC35−25−00FRを、回路のライン/スペースが100μm/200μmとなるように銅箔をエッチング加工した櫛型回路パターンにカバーレイフィルムを、170℃で1時間、加熱プレス後、断面観察を行った。貯蔵安定性の判定は、回路が接着剤で充填されている場合を「良」、充填されていない場合を「不可」とした。
【0061】
[耐マイグレーション性]
上記と同じ条件でカバーレイフィルムを調製後、回路のライン/スペースが100μm/200μmとなるように銅張積層板の銅箔をエッチング加工した櫛型回路パターンにカバーレイフィルムを、170℃で1時間、加熱プレス後、190℃で2時間、後硬化させ試料を調製した。同試料を85℃―85RH%に温湿度調節した恒温恒湿槽中に入れ、試料中の櫛型回路に直流50Vを500時間通電した後、試料を取り出し、櫛型回路とその周辺を顕微鏡観察した。判定は、デンドライト発生が認められた場合は「不可」、認められなかった場合は「良」と判定した。
【0062】
<ボンディングシート特性>
[耐燃性]
上記35重量%接着剤溶液を、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μmのポリエステル剥離フィルムの片面に接着剤溶液を塗布し、135℃で5分間乾燥を行い、厚さ25μmのボンディングシートを調製後、170℃で1時間の前硬化、その後190℃で2時間、後硬化を行って試料調製を行った。続いて、JIS C 6471の手順に従って耐燃性試験を行い、UL規格94の判定基準である、「V−0」、「耐燃性なし」の2水準で耐燃性を判定した。「V−0」は耐燃性があることを意味する。
【0063】
[引きはがし強さ]
上記と同じ条件でボンディングシートを調製後、ボンディングシートをはく離フィルムからはがした後、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μmの銅箔を2枚用意し、それぞれの銅箔における光沢面の間に挟み、170℃で1時間加熱プレスを行った後、190℃で2時間、後硬化を行って試料を作製、引きはがし強さを、JIS C 6471に従って測定した。
【0064】
[スルーホールメッキ導通性]
上記と同じ条件でボンディングシートを調製後、ボンディングシートをはく離フィルムからはがした、170℃で1時間の前硬化、190℃で2時間の後硬化を行い硬化シートを調製した。この硬化シートにドリリングによって直径0.3mmのスルーホールを開け、同ホールの内側に無電解銅メッキ法にて、20〜25μmの銅メッキ層を形成し、試料とした。試料に−40℃・15分、150℃・15分の冷熱サイクル暴露を施し、導通不良を生じるまでのサイクル数を測定した。判定は、500サイクル以下を「不可」、500〜2000サイクルを「可」、2000サイクル以上を「良」とした。
【0065】
<3層銅張積層板特性>
[耐燃性]
上記35重量%接着剤溶液を、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μmのポリイミドフィルム(株式会社カネカ製、アピカルNPI)の片面に接着剤溶液を塗布し、135℃で5分間乾燥を行い、接着剤層厚さ25μmの絶縁樹脂層を形成後、縦×横×厚さ=200mm×300mm×18μmの銅箔を粗化面で重ね、170℃で1時間の熱プレス後、190℃で2時間の後硬化を行って3層銅張積層板を調製した。続いて、JIS C 6471の手順に従って耐燃性試験を行い、UL規格94の判定基準である、「V−0」、「耐燃性なし」の2水準で耐燃性を判定した。「V−0」は耐燃性があることを意味する。
【0066】
[引きはがし強さ]
上記と同じ条件で調製した3層銅張積層板における銅箔層と絶縁樹脂層の引きはがし強さを、JIS C 6471に従って測定した。
【0067】
[耐マイグレーション性]
上記と同じ条件で調製した3層銅張積層板における銅箔層の回路のライン/スペースが100μm/200μmとなるようにエッチング加工した櫛型回路パターンを形成した試料を85℃―85RH%に温湿度調節した恒温恒湿槽中に入れ、試料中の櫛型回路に直流50Vを500時間通電した後、試料を取り出し、櫛型回路とその周辺を顕微鏡観察した。判定は、デンドライト発生が認められた場合は「不可」、認められなかった場合は「良」と判定した。
【実施例】
【0068】
合成例1
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成(株)製、YP−50SC、水酸基当量284g/eq)を750g、溶剤としてのジグライム750gを、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、溶解させた。次に、触媒としてのトリエチルアミン1.01gを仕込み、110℃まで加熱した後、無水トリメリット酸50.7gを仕込み、110℃で7時間反応を行った。最後に、ジグライム450gを追加仕込みし、固形分を40重量%に調整し、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂Aを得た。カルボキシル基含有フェノキシ樹脂Aの酸価は、固形分値で41.3mgKOH/gであった。
【0069】
合成例2
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成(株)製、YP−50SC、水酸基当量284g/eq)を750g、溶剤としてのジグライム750gを、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、溶解させた。次に、触媒としてのトリエチルアミン1.01gを仕込み、110℃まで加熱した後、無水トリメリット酸28.0gを仕込み、110℃で7時間反応を行った。最後に、ジグライム450gを追加仕込みし、固形分を40重量%に調整し、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂Bを得た。カルボキシル基含有フェノキシ樹脂Bの酸価は、固形分値で22.8mgKOH/gであった。
【0070】
合成例3
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成(株)製、YP−50SC、水酸基当量284g/eq)を750g、溶剤としてのジグライム750gを、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、溶解させた。次に、触媒としてのトリエチルアミン1.01gを仕込み、110℃まで加熱した後、無水コハク酸25.3gを仕込み、110℃で11時間反応を行った。最後に、ジグライム450gを追加仕込みし、固形分を40重量%に調整し、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂Cを得た。カルボキシル基含有フェノキシ樹脂Cの酸価は、固形分値で39.5mgKOH/gであった。
【0071】
合成例4
ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成(株)製、YP−50SC、水酸基当量284g/eq)を750g、溶剤としてのジグライム750gを、攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに仕込み、溶解させた。次に、触媒としてのトリエチルアミン1.01gを仕込み、110℃まで加熱した後、無水トリメリット酸86.1gを仕込み、110℃で7時間反応を行った。最後に、ジグライム450gを追加仕込みし、固形分を40重量%に調整し、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂Dを得た。カルボキシル基含有フェノキシ樹脂Dの酸価は、固形分値で70.1mgKOH/gであった。
【0072】
接着剤樹脂組成物を調製するために使用した各成分の略号を次に示す。
YD-128:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成社製)
YDF-170:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成社製)
DICY:ジシアンジアミド(日本カーバイト工業社製)
樹脂A:合成例1のカルボキシル基含有フェノキシ樹脂A
樹脂B:合成例1のカルボキシル基含有フェノキシ樹脂B
樹脂C:合成例1のカルボキシル基含有フェノキシ樹脂C
樹脂D:合成例1のカルボキシル基含有フェノキシ樹脂D
YP-50SC:重量平均分子量45,000のフェノキシ樹脂(東都化成社製)
SPE-100:シクロフェノキシホスファゼン(大塚化学社製)
SP-703H:リン酸エステルアミド(四国化成工業社製)
PX-200:芳香族縮合リン酸エステル(大八化学社製)
OP-935:有機ホスフィン酸のアルミニウム塩(クラリアントジャパン社製)
ERF-001:リン含有フェノキシ樹脂(東都化成社製)
2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業社製)
【0073】
[実施例1〜実施例13]
表1及び2記載の配合(重量部)で、接着剤を調製後、前記方法に従い、カバーレイフィルム、ボンディングシート及び3層銅張積層板を調製し、各々の特性を評価した結果、いずれも、表1及び2に示すとおり、優れた特性を示した。特に、これまで課題であったカバーレイフィルム特性におけるフロー性は、いずれも0.2mm以下であり、カルボキシル基含有フェノキシ樹脂配合の効果が認められ、更に、難燃性も良好であった。また、フェノキシ樹脂に含有するカルボキシル基の濃度を適正範囲とすることで、貯蔵安定性及び引き剥がし強度も良好であった。
【0074】
[比較例1〜比較例9]
表3及び4記載の配合(重量部)で、接着剤を調製後、前記方法に従い、カバーレイフィルム、ボンディングシート及び3層銅張積層板を調製した。表3に示すとおり、カバーレイフィルム特性のフロー性は、いずれも2.5mmとなり、不可であった。また、表4に示すとおり、カバーレイフィルム特性のフロー性は良好であったが、貯蔵安定性が不可であり、引き剥がし強度も低い。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(イ)〜(ホ)成分、
(イ)エポキシ樹脂、
(ロ)硬化剤、
(ハ)硬化促進剤、
(ニ)下記一般式(1)で表されるカルボキシル基含有フェノキシ樹脂、及び
(ホ)常温で固体の有機リン化合物又はリン含有樹脂、
を必須成分として含有することを特徴とする難燃性接着剤樹脂組成物。
【化1】


(式中、Xは一般式(2)又は(3)から選ばれる少なくとも1種の2価の基を示し、Zは水素原子又はグリシジル基を示し、Aは一般式(4)を示すが、nとmは、総和が21以上で、且つnは0より大きい数値である。)
【化2】

(式(3)中、Bは単結合又は―CH―、―C(CH―、―CH(CH)―、−S−、−SO−、−O−、−CO−若しくは一般式(5)から選ばれる2価の基を示す。式(4)中、Dは炭素数2〜24の直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれかの炭化水素基を示すが、ヘテロ原子を含んでもよく、qは1〜3の整数である。)
【化3】

(式(5)中、R〜Rは独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示すが、R〜Rのうちの2個以上が同一であっても良い。)
【請求項2】
(イ)成分が、下記一般式(6)で表され、且つゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した重合度r=0体の含有率がクロマトグラムの面積パーセントで50%以上である請求項1記載の難燃性接着剤樹脂組成物。
【化4】

(式中、Xは一般式(2)又は(3)から選ばれる少なくとも1種の2価の基を示し、rは0以上の整数である。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の難燃性接着剤樹脂組成物を、フィルム状に形成してなることを特徴とする難燃性接着剤フィルム。
【請求項4】
基材樹脂フィルムの片面又は両面に請求項1又は2に記載の難燃性接着剤樹脂組成物の層を有することを特徴とする接着剤フィルム。
【請求項5】
ポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムに設けられた請求項1又は2に記載の難燃性接着剤樹脂組成物からなる層とを有することを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項6】
ポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムに設けられた請求項1又は2に記載の難燃性接着剤樹脂組成物からなる層と、銅箔とを有することを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の難燃性接着剤樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。

【公開番号】特開2009−280775(P2009−280775A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137320(P2008−137320)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【Fターム(参考)】