説明

難燃性有機樹脂組成物

【課題】 難燃性に優れた有機樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)芳香族環含有有機樹脂100重量部と(B)平均分子式:(R13SiO1/2)a(R2SiO3/2)b(SiO4/2)c(R31/2)d(HO1/2)e(式中、R1およびR2は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルケニル基、炭素原子数6〜12のアリ−ル基からなる群から選ばれる一価炭化水素基であり、R1とR2を合計した全一価炭化水素基中のアリール基の含有量が30〜100モル%である。R3はアルキル基である。a、bは正数であり、c、dおよびeは0または正数である。)で示される分岐状オルガノポリシロキサン0.01〜50重量部とからなることを特徴とする難燃性有機樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は難燃性有機樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリカーボネート樹脂やポルフェニレンエ−テル樹脂に代表される芳香族環を有する有機樹脂は、機械的強度、電気的特性等に優れるので、エンジニアリングプラスチックとして、OA機器、電気・電子機器、自動車、建築・土木等の分野で使用されている。これらの有機樹脂は、火災防止の観点から難燃化されている場合が多い。従来、かかる有機樹脂を難燃化する方法としては、これらの有機樹脂に、塩素原子や臭素原子を含有する化合物を混和する方法が採用されてきた。ところが、この種の化合物を配合した有機樹脂組成物は、燃焼時に大量の黒煙を発生したり、人体に有害なガスあるいは金属等を腐食するガスを発生するという欠点があった。そのため、人体に有害なガスを発生しない難燃性樹脂組成物が多数提案されている。
【0003】例えば、特開平8−176425号公報では、芳香族ポリカーボネート樹脂に、エポキシ基含有シランとフェニル基含有シランを加水分解処理して得られたエポキシ基とフェニル基を含有するシリコ−ン樹脂を配合してなる組成物が提案されている。しかし、この組成物はエポキシ基の存在により、耐熱性が低下したり、変色したりするという問題点があった。、また、特開平10−139964号公報では芳香族ポリカーボネート樹脂に2官能性シロキサン単位(D単位)と3官能性シロキサン単位(T単位)からなり、重量平均分子量が10,000を超える高分子量のシリコ−ン樹脂を配合したポリカーボネート組成物が提案されている。しかし、この組成物に使用されるシリコーン樹脂は分子量の高いシリコ−ン樹脂であるので、このものを製造することは容易ではなかった。また、得られる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性も不十分であり、必ずしも満足できるものとは言えなかった。また、特開平11−140294号公報では、芳香族ポリカーボネート樹脂にフェニル基を含有する2官能性シロキサン単位(D単位)と3官能性シロキサン単位(T単位)からなるシリコ−ン樹脂を配合した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。また、特開平11−222559号公報では、芳香族ポリカーボネート樹脂にフェニル基とアルコキシ基を含有する2官能性シロキサン単位(D単位)と3官能性シロキサン単位(T単位)からなるシリコ−ン樹脂を配合した難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。しかし、これらの芳香族ポリカーボネート樹脂組成物はその難燃性が十分とはいえず、用途によっては満足できるものではなかった。さらに、特開平11−140329号公報では、芳香族ポリカーボネート樹脂に、フェニル基とアルコキシ基を含有する2官能性シロキサン単位(D単位)と3官能性シロキサン単位(T単位)からなり1官能性シロキサン単位(M単位)を含むシリコーン樹脂とシリカ粉末とからなる難燃組成物が提案されている。しかし、この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、シリカ粉末を配合する必要性があり、製造工程が煩雑である等の問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記問題点を解消するために鋭意検討した結果、芳香族環含有有機樹脂に特定の分岐状オルガノポリシロキサンを配合すれば、その難燃性が著しく向上することを見出し本発明に到達した。即ち、本発明の目的は、難燃性に優れた有機樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、(A)芳香族環含有有機樹脂100重量部と(B)平均分子式:(R13SiO1/2)a(R2SiO3/2)b(SiO4/2)c(R31/2)d(HO1/2)e(式中、R1およびR2は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルケニル基、炭素原子数6〜12のアリ−ル基からなる群から選ばれる一価炭化水素基であり、R1とR2を合計した全一価炭化水素基中のアリール基の含有量が30〜100モル%である。R3はアルキル基である。a、bは正数であり、c、dおよびeは0または正数である。)で示される分岐状オルガノポリシロキサン0.01〜50重量部とからなることを特徴とする難燃性有機樹脂組成物に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】これを説明するに、本発明に使用される(A)成分の芳香族環含有有機樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂およびそのアロイ、ポリフェニレンエ−テル樹脂およびそのアロイ、ポリアリレ−ト樹脂、ポリスルホン樹脂,ポリエチレンテレフタレ−ト樹脂,ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポフェニレンスルフィド樹脂、ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂;フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が例示される。これらの中でも、特に、芳香族ポリカーボネート樹脂およびそのアロイが好ましく用いられる。
【0007】本発明に使用される(B)成分の分岐状オルガノポリシロキサンは、本発明の特徴となる成分であり、(A)成分を難燃性にする働きを有する。かかる(B)成分は、平均分子式:(R13SiO1/2)a(R2SiO3/2)b(SiO4/2)c(R31/2)d(HO1/2)e(式中、R1およびR2は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルケニル基、炭素原子数6〜12のアリ−ル基からなる群から選ばれる一価炭化水素基であり、R1とR2を合計した全一価炭化水素基中のアリール基の含有量が30〜100モル%である。R3はアルキル基である。a、bは正数であり、c、dおよびeは0または正数である。)で示される。上記式中、炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基が例示され、これらの中でもメチル基、エチル基およびイソプロピル基が好ましい。炭素数1〜12のアルケニル基としては、ビニル基、ブテニル基が例示される。炭素数1〜12のアリ−ル基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基が例示され、これらの中でもフェニル基が好ましい。R3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示され、上記式:R3Oで示される基、即ちアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロピロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基が例示される。(B)成分はR1とR2を合計した全一価炭化水素基中のアリール基の含有量が30〜100モル%であることが必要であり、40〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがさらに好ましく、60〜100モル%であることが最も好ましい。特に、R2のアリール基の含有量が重要であり、R1とR2を合計した全一価炭化水素基中のR2中のアリール基の含有量が30〜100モル%であることが好ましく、50〜100モル%であることがさらに好ましい。
【0008】また、(B)成分中の式:R3Oで示される基、即ち、アルコキシ基の含有量は10重量%以下であることが好ましい。また(B)成分中の水酸基の含有量は3重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがさらに好ましい。また(B)成分の重量平均分子量は300〜50,000であることが好ましい。これは重量平均分子量が50,000を超えると本発明組成物の成形性が低下する等の問題点が生じるからである。尚、この重量平均分子量は、通常、ゲル透過クロマトグラフィ−(GPC)によって定量される。
【0009】本発明に使用される(B)成分は、1分子中に、少なくとも式:RSiO3/2(式中、Rは前記と同じである。)で示される3官能性シロキサン単位(T単位)と式:R3SiO1/2(式中、Rは前記と同じである。)で示される1官能性シロキサン単位(M単位)を必須とするものであるが、該3官能性シロキサン単位(T単位)と該1官能性シロキサン単位(M単位)に加えて、式:SiO4/2で示される4官能性シロキサン単位(Q単位)を含有することは、本発明の目的を損なわない限り差し支えない。
【0010】本発明に使用される(B)成分はその軟化点が100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。これは(B)成分の軟化点が100℃未満では、(A)成分への分散性が低下するからであり、また(A)成分への混練が難しくなるからである。
【0011】本成分の配合割合は(A)成分100重量部に対して、0.01〜50重量部であり、0.1〜30重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。この配合量が0.01重量部未満になると難燃性の向上効果がみられず、また、50重量部を超えると機械的強度が低下するためである。
【0012】本発明組成物は上記(A)成分と(B)成分からなるものであるが、難燃性をさらに高めるためにこれらの成分に加えて(C)成分として有機酸もしくは有機酸エステルのアルカリ金属塩、または有機酸もしくは有機酸エステルのアルカリ土類金属塩を配合することができる。かかる(C)成分を構成する有機酸としては有機スルホン酸、有機カルボン酸が例示され、 有機酸エステルとしては有機リン酸エステルが例示される。 アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムが例示され、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、 ストロンチウム、バリウムが例示される。これらの中でも、有機スルホン酸金属塩が好ましく用いられ、さらに、パーフロロアルカンスルホン酸金属塩、芳香族スルホンスルホン酸金属塩が好ましく用いられる。パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩の具体例としては、パーフルオロブタンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム、パ−フルオロメチルブタンスルホン酸ナトリウム、パ−フルオロメチルブタン−スルホン酸カリウム、パ−フルオロオクタン−スルホン酸ナトリウム、パ−フルオロオクタン−スルホン酸カリウムなどが挙げられる。芳香族スルホンスルホン酸金属塩の具体例としては、ジフエニルスルホン−3−スルホン酸のナトリウム塩、ジフエニルスルホン-3-スルホン酸のカリウム塩、4,4-ジブロモジフエニル-スルホン-3-スルホン酸のナトリウム塩、4,4−ジブロモジフエニルースルホン−3−スルホン酸のカリウム塩、4−クロロ−4−ニトロジフエニルスルホン−3−スルホン酸のカルシウム塩、ジフエニルスルホン−3,3−ジスルホン酸のジナトリウム塩、ジフェニルスルホン−3,3−ジスルホン酸のジカリウム塩などが挙げられる。本成分の配合量は(A)成分100重量部に対して0.02〜1重量%である。
【0013】本発明組成物は上記(A)成分と(B)成分あるいは(A)成分と(B) 成分と(C)成分からなるものであるが、難燃性をさらに高めるためにこれらの成分に加えて(D)成分としてフッ素樹脂粉末を配合することができる。かかるフッ素樹脂粉末を構成するフッ素樹脂としては、フッ化エチレン樹脂(エチレンの水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された単量体の重合体、代表例、四フッ化エチレン樹脂粉末)、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂が例示される。これらのフッ素樹脂粉末の形状は、一般に球状であるが繊維状であってもよい。本成分の配合量は、通常、(A)成分100重量部に対して0.01〜5重量部である。
【0014】本発明組成物には、芳香族環含有有機樹脂に添加配合されることが公知とされる各種添加剤を配合することは本発明の目的を損なわれない限り差し支えない。かかる添加剤としては、ガラス繊維、ガラスビ−ズ、ガラスフレ−ク、カ−ボンブラック、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ、アスベスト、タルク、クレ−、マイカ、石英粉等の無機充填剤;各種合成樹脂、各種エラストマ−等の有機樹脂添加剤;ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤、亜リン酸エステル系酸化防止剤、リン酸エステル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などの酸化防止剤;脂肪族カルボン酸エステル、パラフィン、ポリエチレンワックスなどの滑剤;有機系あるいは無機系の各種顔料や着色剤;ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤;ヒンダ−ドアミン系光安定剤などの光安定剤;リン系難燃剤などの各種難燃化剤;各種離型剤;各種帯電防止剤が例示される。
【0015】本発明組成物は、上記(A)成分と(B)成分、あるいは(A)成分〜(C)成分、あるいは(A)成分〜(D)成分を均一に混合することによって容易に製造される。かかる成分を混合するための装置としては、例えば、リボンブレンダ−、ヘンシェルミキサ−、バンバリ−ミキサ−、ドラムタンブラ−、単軸スクリュ−押出機、二軸スクリュ−押出機、コニ−ダ、多軸スクリュ−押出機などが例示される。ここで、上記成分の混合は200〜350℃の加熱下で混合することが好ましい。
【0016】以上のような本発明の組成物は難燃性に優れるので、かかる特性を生かして家電,自動車内装等のハウジング材料、電気電子部品材料などに好適に使用される。
【0017】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。実施例中、部とあるのは重量部のことである。また、実施例中、難燃性は、JIS−K7201「酸素指数法によるプラスチックの燃焼試験方法」に準じて酸素指数を測定した。また、実施例で使用した分岐状オルガノポリシロキサンSNR1、SNR2、SNR3、SNR4、SNR5、SNR6、SNR7、SNR8、SNR9およびSNR10は、下記表1に示す平均単位式と平均分子式を有し、下記表2に示す特性を有するものであった。尚、表1において、Meはメチル基を表し、Proはプロピル基を表し、Phはフェニル基を表し、MはMe3SiO1/2単位を表し、DはMe2SiO2/2単位を表し、TはMeSiO3/2単位を表し、TProはC37SiO3/2単位を表し、TPhはPhSiO3/2単位を表す。また、この分岐状オルガノポリシロキサンの化学構造の解析は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)を用いて行い、重量平均分子量の測定はゲルパ−ミュエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)を用いて行なった。ここで重量平均分子量は分子量既知の標準ポリスチレンに換算した値である。またこの分岐状オルガノポリシロキサ軟化点は融点測定装置を用い、顕微鏡にて白色の微粉末が軟化して透明に変化した温度を測定した。
【0018】
【表1】


【0019】
【表2】


【0020】
【参考例1】攪拌装置、冷却装置、滴下ロート、温度計を取り付けた2Lの4つ口フラスコにトルエン400g、水250gを入れ、氷浴で冷却しながらフェニルトリクロロシラン300gとトルエン200gの混合溶液を滴下した。滴下終了後、室温で30分攪拌した後、3時間還流した。その後、静置して水層を除去した。引き続き水を加えて攪拌し静置して水層を除去した。この水洗操作を3回繰り返した後、得られたトルエン相に4%重曹水を加えて1時間還流し、冷却後3回水洗して、分岐状オルガノポリシロキサンのトルエン溶液を得た。このトルエン溶液を濾過して不溶物を除去し、減圧蒸留によりトルエンを除去して固体状の分岐状オルガノポリシロキサン(SNR1)177.7gを得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR1)はPhSiO3/2単位から成り、水酸基を3.7重量%含有していた。また、その重量平均分子量は5,200であった。
【0021】
【参考例2】攪拌装置、冷却装置、滴下ロート、温度計を取り付けた2Lの4つ口フラスコにトルエン400g、水250gを入れ、氷浴で冷却しながらフェニルトリクロロシラン147gとイソプロピルトリクロロシラン200gとトルエン200gの混合溶液を滴下した。滴下終了後、室温で30分攪拌した後、3時間還流した。その後、静置して水層を除去した。引き続き水を加えて攪拌し静置して水層を除去した。この水洗操作を3回繰り返した後、得られたトルエン相に4%重曹水を加えて1時間還流し、冷却後3回水洗して、分岐状オルガノポリシロキサンのトルエン溶液を得た。このトルエン溶液を濾過して不溶物を除去し、減圧蒸留によりトルエンを除去して固体状の分岐状オルガノポリシロキサン(SNR2)115.2gを得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR2)はPhSiO3/2単位70モル%とC37SiO3/2単位30モル%からなり、水酸基を6.0重量%含有していた。また、その重量平均分子量は1,600であった。
【0022】
【参考例3】攪拌装置、冷却装置、滴下ロート、温度計を取り付けた2Lの4つ口フラスコに水400g、メチルイソブチルケトン300gを入れ、二層を形成しないよう激しく攪拌しておき、その中にメチルイソブチルケトン100gに溶解させたメチルトリクロロシラン149gを、反応混合物の温度が50℃を超えないようにゆっくりと滴下した。しかる後、反応混合物を50℃で2時間加熱攪拌した。反応終了後、有機相を洗浄水が中性になるまで洗浄し、次いで有機相を乾燥剤を用いて乾燥した。乾燥剤を除去した後、低沸点物を減圧で留去し、8時間真空乾燥を行い分岐状オルガノポリシロキサン(SNR3)56.9gを得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR3)はMeSiO3/2単位から成り、水酸基を5.3重量%含有していた。また、その重量平均分子量は9,180であった。
【0023】
【参考例4】攪拌装置、冷却装置、滴下ロート、温度計を取り付けた1Lの4つ口フラスコにトルエン108g、メチルエチルケトン36g、水29gを入れ、氷浴で冷却しながらフェニルトリクロロシラン114.8g、ジメチルジクロロシラン7.8g、トルエン38gの混合溶液を滴下した。滴下終了後、室温で30分攪拌した後、加水分解を完全に進行させるため1時間還流した。冷却後トルエンを30ml追加し、静置して水層を除去した。引き続き水を加えて攪拌し静置して水層を除去する水洗操作を3回繰り返した。さらにトルエン相に4%重曹水を加えて1時間還流し、冷却後3回水洗した後、乾燥剤を加えて静置した。乾燥剤を濾別して得た分岐状オルガノポリシロキサンのトルエン溶液から、減圧蒸留により低沸点物を除去して固体の分岐状オルガノポリシロキサン(SNR4)69gを得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR4)はPhSiO3/2単位90モル%とMe2SiO2/2単位10モル%からなり、水酸基を3.1重量%含有していた。また、その重量平均分子量は4,400であった。
【0024】
【参考例5】攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた300mlの4つ口フラスコに、参考例3で得た分岐状オルガノポリシロキサン25.2gと乾燥トルエン溶液50gを仕込み、これにヘキサメチルジシラザン10gを加えて室温で3時間攪拌した。その後、さらに、70℃で1時間攪拌した。低沸点物を減圧蒸留し25.8gの無色の固体状の分岐状オルガノポリシロキサン(SNR5)を得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR5)はMeSiO3/2単位91モル%とMe3SiO1/2単位9モル%からなり、水酸基を2.5重量%含有していた。また、その重量平均分子量は3,4000であった。
【0025】
【参考例6】攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた300mlの4つ口フラスコに、参考例1で得た分岐状オルガノポリシロキサン29gと乾燥トルエン溶液110gを仕込み、次いで、ヘキサメチルジシラザン5gを加えて室温で3時間攪拌した。その後、さらに、70℃で1時間攪拌した。低沸点物を減圧蒸留し29.7gの無色の固体状の分岐状オルガノポリシロキサン(SNR6)を得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR6)はPhSiO3/2単位92モル%とMe3SiO1/2単位8モル%からなり、水酸基を1.4重量%含有していた。また、その重量平均分子量は5,300であった。
【0026】
【参考例7】攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた300mlの4つ口フラスコに、参考例2で得た分岐状オルガノポリシロキサン35gと乾燥トルエン溶液130gを仕込み、続いて、ヘキサジメチルジシラザン6gを加えて室温で3時間攪拌した。その後、さらに、70℃で1時間攪拌した。低沸点物を減圧蒸留して35.7gの無色の固体状の分岐状オルガノポリシロキサン(SNR7)を得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR7)は、PhSiO3/2単位を65.8モル%と、C37SiO3/2単位を28.2モル%とMe3SiO1/2単位を6モル%からなり、重量平均分子量は8,200であった。
【0027】
【参考例8】攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた300mlの4つ口フラスコに、参考例1で得た分岐状オルガノポリシロキサン(SNR1)21.5gと乾燥トルエン溶液70gを入れ、続いて、これにジエチルアミン4.4gとトリメチルクロルシラン4.8gを氷冷下で加えて1時間攪拌した。その後、さらに、室温で2時間、さらに70℃で1時間攪拌した。反応終了後、室温に戻し水を加えて反応液を中性になるまで洗浄した後、有機相に無水酸化マグネシウムを加えて乾燥した。乾燥剤を濾別し取り除き、低沸点物を減圧蒸留し22.4gの無色の固体状の分岐状オルガノポリシロキサン(SNR8)を得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR8)はPhSiO3/2単位85モル%とMe3SiO1/2単位15モル%からなり、水酸基を0.9重量%含有していた。また、その重量平均分子量は6,600であった。
【0028】
【参考例9】攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた300mlの4つ口フラスコに、参考例1で得た分岐状オルガノポリシロキサン(SNR1)21.5gと乾燥トルエン溶液43gを入れた。これにトリエチルアミン4.2gとトリメチルクロルシラン4.8gを室温で加えて3時間攪拌した。その後、さらに70℃で1時間攪拌した。反応終了後、室温に戻し水を加えて反応液を中性になるまで洗浄した後、有機相に無水酸化マグネシウムを加えて乾燥した。乾燥剤を濾別し取り除き、22.4gの無色の固体状の分岐状オルガノポリシロキサン(SNR9)を得た。この分岐状オルガノポリシロキサン(SNR9)はPhSiO3/2単位を96モル%とMe3SiO1/2単位4モル%からなり、水酸基を1.0重量%含有していた。また、その重量平均分子量は9,000であった。
【0029】
【参考例10】攪拌装置、冷却装置、エステルアダプター、温度計を取り付けた100mlの4つ口フラスコに、参考例1で得た分岐状オルガノポリシロキサン(SNR1)5.16g、参考例3で得た分岐状オルガノポリシロキサン(SNR3)4.02g、ヘキサメチルジシロキサン1.6gとトルエン40gを入れた。これに活性白土0.4gを加えて6時間加熱還流下に脱水反応させた。反応終了後、活性白土を濾別し、このトルエン溶液を3回水洗した。乾燥剤を加えて乾燥させた後、乾燥剤を濾別した。このトルエン溶液から、減圧蒸留によりトルエンを除去して、分岐状オルガノポリシロキサン(SNR10)9.3gを得た。この分岐状オルガノポリシロキサンはPhSiO3/2単位36モル%とMeSiO3/2単位54モル%とMe3SiO1/2単位10モル%からなり、その重量平均分子量は16,200であった。
【0030】
【実施例1〜9、比較例1〜6、】芳香族環含有有機樹脂として、芳香族ポリカ−ボネ−ト樹脂(出光石油化学(株)製商品名;タフロンA1900)を使用し、分岐状オルガノポリシロキサンとして上記表1に示したSNR1からSRN10を使用して、これらの成分を後記する表2および表3に示す配合比率にて混合して難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を得た。また、第三成分として、フッ素樹脂粉末(ダイキン工業株式会社製のパーフルオロエチレン樹脂、商品名; ポリフロンMPA、FA−500)とトリクロロベンゼンスルフォン酸ナトリウム(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名;メガファックF114)を用いた。混合方法は次に示す通りであった。芳香族ポリカーボネート樹脂を混合装置(東洋精機製作所株式会社製、ラボプラストミル)に投入し、280〜320℃の条件下にて加熱して溶融した。ついで、分岐状オルガノポリシロキサン(SRN1〜SRN10)を投入し混錬して、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を製造した。この組成物を成形温度280〜320℃にて射出成形した。この成形品の酸素指数を測定し、これらの測定結果を後記する表3および表5に記した。
【0031】
【表3】


【0032】
【表4】


【0033】
【表5】


【0034】
【表6】


【0035】
【発明の効果】本発明の難燃性有機樹脂組成物は、(A)成分および(B)成分からなり、特に(B)成分の特殊な分岐状オルガノポリシロキサンを含有しているので、難燃性に優れているという特徴を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)芳香族環含有有機樹脂100重量部と(B)平均分子式:(R13SiO1/2)a(R2SiO3/2)b(SiO4/2)c(R31/2)d(HO1/2)e(式中、R1およびR2は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルケニル基、炭素原子数6〜12のアリ−ル基からなる群から選ばれる一価炭化水素基であり、R1とR2を合計した全一価炭化水素基中のアリール基の含有量が30〜100モル%である。R3はアルキル基である。a、bは正数であり、c、dおよびeは0または正数である。)で示さる分岐状オルガノポリシロキサン0.01〜50重量部とからなることを特徴とする難燃性有機樹脂組成物。
【請求項2】 (A)成分が熱可塑性樹脂である請求項1に記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項3】 (A)成分が芳香族ポリカーボネート樹脂またはそのアロイである請求項1または請求項2に記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項4】 (B)成分の全一価炭化水素基中のR1の含有量が、0.02〜50モル%である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項5】 (B)成分の軟化点が100℃以上である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項6】 (B)成分中の水酸基の含有量が3重量%以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項7】 (B)成分中のアルキル基がメチル基、エチル基またはプロピル基であり、アルケニル基がビニル基であり、アリ−ル基がフェニル基である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項8】 (B)成分のR2のアリール基の含有量が30〜100モル%である請求項1に記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項9】 (B)成分の重量平均分子量が300〜50,000である請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項10】 さらに、(C)成分として有機酸もしくは有機酸エステルのアルカリ金属塩、または有機酸もしくは有機酸エステルのアルカリ土類金属塩0.02〜1重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の難燃性有機樹脂組成物。
【請求項11】 さらに(D)成分としてフッ素樹脂粉末0.01〜5重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の難燃性有機樹脂組成物。

【公開番号】特開2001−200150(P2001−200150A)
【公開日】平成13年7月24日(2001.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−11872(P2000−11872)
【出願日】平成12年1月20日(2000.1.20)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社 (338)
【Fターム(参考)】