説明

難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線及びケーブル

【課題】優れた機械的特性及び難燃性を両立させることができる難燃性樹脂組成物等を提供すること。
【解決手段】2種以上のポリオレフィン系樹脂からなるベース樹脂と、金属水酸化物粒子と、シリコン原子を含む無機酸化物粒子と、ガム状シリコーン化合物とを含み、前記ベース樹脂100質量部に対して150質量部以下の割合で配合されている難燃性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線及びケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル組成物は電気絶縁性が良く、優れた難燃性、機械特性を有していることから電線被覆、チューブ、テープ、包装材、建材等に広く使用されているが、近年では環境や人体への影響の懸念から、安定剤として鉛を使用しない非鉛ポリ塩化ビニル樹脂が主流となりつつある。
【0003】
上記非鉛ポリ塩化ビニル樹脂は、分子構造中に塩素原子を含有し、燃焼時に有毒、有害な塩素ガスを発生する。そのため、より安全性の高い、いわゆるエコマテリアルを使用した塩化ビニル電線代替品が検討されている。
【0004】
このようなエコマテリアルとして、ポリオレフィン樹脂をベースに、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物粒子からなる難燃剤、および、ガム状シリコーンオイルなどのシリコーン系化合物からなる難燃助剤を添加してなるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−248126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の難燃性樹脂組成物には、特に難燃性の点で未だ改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることができる難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題が生じる原因が、ポリオレフィン樹脂とガム状シリコーン系化合物との親和性が良好ではなく、分散性が不十分であることにあるのではないかと考えた。ここで、ガム状シリコーン系化合物の分散性を改善するためには、ガム状シリコーン系化合物を、ベース樹脂と同一の樹脂と混練してマスターバッチを作製し、このマスターバッチを、ベース樹脂、金属酸化物粒子とともに混練すればとよいとも考えられる。しかし、この場合でも、ベース樹脂が2種以上の樹脂のブレンドで構成されると、ガム状シリコーン系化合物の分散性を十分には改善できず、やはり難燃性の点で改善の余地があった。そこで、本発明者は、さらに難燃性を改善するべく鋭意研究を続けた結果、難燃性樹脂組成物中にガム状シリコーン系化合物のみならず、一般的に滑り性を付与するために使用されるシリカなどのシリコン原子を含有する無機酸化物粒子をも含めることで、意外にも難燃性が十分に改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、2種以上のポリオレフィン系樹脂からなるベース樹脂と、金属水酸化物粒子と、シリコン原子を含む無機酸化物粒子と、ガム状シリコーン化合物とを含み、前記金属水酸化物粒子が前記ベース樹脂100質量部に対して150質量部以下の割合で配合されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることができる。
【0011】
なお、本発明者は、本発明の難燃性樹脂組成物においてより優れた難燃性が得られる理由については以下のように推察している。
【0012】
即ち、無機酸化物を起点としたチャー形成促進作用及びシリコーン化合物の高分散によって、優れた難燃性が得られたのではないかと推察している。
【0013】
また本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層とを備えており、前記絶縁層が、上記難燃性樹脂組成物で構成される絶縁電線である。なお、上記絶縁層は、上記難燃性樹脂組成物を架橋処理してなるものであってもよい。
【0014】
さらに本発明は、導体及び前記導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、前記絶縁電線を被覆するシースとを備え、前記絶縁層及び前記シースの少なくとも一方が上記難燃性樹脂組成物で構成されるケーブルであってもよい。なお、絶縁層及びシースの少なくとも一方が上記難燃性樹脂組成物を架橋処理してなるものであってもよい。
【0015】
さらに本発明は、2種以上のポリオレフィン系樹脂からなるベース樹脂と、金属酸化物粒子と、シリコン原子を含有する無機酸化物粒子と、ガム状シリコーン化合物とを混練する混練工程を含み、前記金属酸化物粒子が前記ベース樹脂100質量部に対して150質量部以下の割合で配合されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法である。
【0016】
この難燃性樹脂組成物の製造方法によれば、ガム状シリコーン系化合物と、シリコン原子を含有する無機酸化物粒子とをベース樹脂とともに混練することで、ガム状シリコーン系化合物の分散性を十分に改善することが可能となり、難燃性を向上させることができる。このため、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることが可能な難燃性樹脂組成物を得ることができる。
【0017】
また本発明は、難燃性樹脂組成物を準備する難燃性樹脂組成物準備工程と、前記難燃性樹脂組成物で導体を被覆して絶縁層を形成し、絶縁電線を得る絶縁層形成工程とを含む絶縁電線の製造方法であって、前記難燃性樹脂組成物を、上述した難燃性樹脂組成物の製造方法によって製造することを特徴とする絶縁電線の製造方法である。
【0018】
この絶縁電線の製造方法によれば、難燃性樹脂組成物を上述した方法で製造するため、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることが可能な絶縁電線を得ることができる。
【0019】
また本発明は、難燃性樹脂組成物を準備する難燃性樹脂組成物準備工程と、前記難燃性樹脂組成物を押出成形することによりシースを得るシース形成工程とを含むシースの製造方法であって、前記難燃性樹脂組成物を、上述した難燃性樹脂組成物の製造方法によって製造することを特徴とするシースの製造方法である。
【0020】
このシースの製造方法によれば、難燃性樹脂組成物を上述した方法で製造するため、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることが可能なシースを得ることができる。
【0021】
さらに本発明は、内部導体を絶縁層で被覆して絶縁電線を製造する電線製造工程と、前記絶縁電線をシースで被覆してケーブルを得るシース被覆工程とを含み、前記絶縁電線を、上述した絶縁電線の製造方法によって製造することを特徴とするケーブルの製造方法である。また本発明は、内部導体を絶縁層で被覆して絶縁電線を製造する電線製造工程と、前記絶縁電線を包囲するシースをシースで被覆してケーブルを得るシース被覆工程とを含むケーブルの製造方法であって、前記シースを、上述したシースの製造方法によって製造することを特徴とするケーブルの製造方法である。
【0022】
これらのケーブルの製造方法によれば、難燃性樹脂組成物又はシースを上述した方法で製造するため、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることが可能なケーブルを得ることができる。
【0023】
上記金属水酸化物粒子は、前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上の割合で配合されていることが好ましい。この場合、難燃性樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0024】
前記無機酸化物粒子及びガム状シリコーン系化合物は、前記ベース樹脂100質量部に対して合計で1〜30質量部の割合で配合されていることが好ましい。この場合、前記無機酸化物粒子及びガム状シリコーン系化合物の配合割合が上記範囲を外れる場合に比べてより優れた難燃性が得られやすくなる。
【0025】
前記無機酸化物粒子及びガム状シリコーン系化合物中の前記無機酸化物粒子の配合率は20〜45質量%であることが好ましい。この場合、前記無機酸化物粒子及びガム状シリコーン系化合物中の前記無機酸化物粒子の配合率が上記範囲を外れる場合に比べてより優れた難燃性が得られやすくなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることができる難燃性樹脂組成物、これを用いた絶縁電線及びケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のケーブルの一実施形態を示す部分側面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図1を用いて詳細に説明する。
【0029】
[ケーブル]
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図であり、屋内配線用平形ケーブルを示すものである。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1に示すように、平形ケーブル10は、絶縁電線4と、絶縁電線4を被覆するシース3とを備えている。そして、絶縁電線4は、内部導体1と、内部導体1を被覆する絶縁層2とを有している。
【0030】
ここで、絶縁層2は難燃性樹脂組成物からなり、この難燃性樹脂組成物は、2種以上のポリオレフィン系樹脂からなるベース樹脂と、金属水酸化物粒子と、シリコン原子を含む無機酸化物粒子と、ガム状シリコーン化合物とを含んでいる。ここで、金属酸化物粒子は、ベース樹脂100質量部に対して150質量部以下の割合で配合されている。
【0031】
このような構成を有するケーブル10によれば、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることができる。
【0032】
なお、難燃性樹脂組成物においては、無機酸化物粒子の少なくとも一部がガム状シリコーン化合物中に埋め込まれていることが好ましい。この場合、チャー形成が促進される傾向がある。
【0033】
[ケーブルの製造方法]
次に、上述した平形ケーブル10の製造方法について説明する。
【0034】
<難燃性樹脂組成物の準備工程>
まず上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、2種以上のポリオレフィン系樹脂からなるベース樹脂と、金属酸化物粒子と、シリコン原子を含有する無機酸化物粒子をガム状シリコーン化合物中に埋め込んでなる複合粒子とを混練することによって得ることができる。以下、ベース樹脂、金属酸化物粒子及び複合粒子のそれぞれについて詳細に説明する。
【0035】
(ベース樹脂)
ベース樹脂は、上述したように、2種以上のポリオレフィン系樹脂を含むものである。このような2種以上のポリオレフィン系樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;エチレンエチルアクリレート(EEA)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、エチレンメチルアクリレート(EMA)、エチレンメチルメタアクリレート(EMMA)などのエチレン−アクリレート共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンジエンゴム(EPDM);酸変性ポリオレフィン;アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレンなどから選ばれる2種以上のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。中でも、ガム状シリコーン系化合物ととともに優れた難燃性を発揮できることから、EEA、EMA、EMMA、EVAの中から選ばれる2種以上のポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、さらにはEVA及びEEAからなる混合樹脂を用いることがより好ましい。ここで、混合樹脂中のEVAの配合率は、50質量%以下であることが難燃性向上の点から好ましい。またEVAとともに用いられるEEAとしては、190℃、荷重2.16kgで測定したMFRが0.5(g/10min)以下であるものが難燃性向上の点から好ましい。
【0036】
(金属水酸化物粒子)
金属水酸化物粒子は金属水酸化物で構成されている。金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどが例示できる。中でも、水酸化マグネシウムが好ましい。これは、内部導体1を被覆する際の押出加工性や難燃性を向上させることができるためである。
【0037】
金属水酸化物粒子は、ベース樹脂100質量部に対して150質量部以下の割合で含まれており、5〜100質量部の割合で含まれていることが好ましく、5〜80質量部の割合で含まれていることがより好ましい。金属水酸化物粒子の割合が150質量部を超えると機械的特性が低下する。金属水酸化物粒子の割合が5質量部未満であると、5質量部以上である場合に比べて難燃性が低下する。またリサイクル性の点からは、金属水酸化物の添加量を50質量部以下程度とすることが好ましい。金属水酸化物の添加量を50質量部以下程度とすることで、樹脂組成物の比重が1.15以下程度となり、架橋ポリエチレン(比重0.9)、ポリ塩化ビニル(比重1.4程度)、従来のエコマテリアル(比重1.4程度)と比重分別することが可能となる。
【0038】
(複合粒子)
複合粒子は、シリコン原子を含有する無機酸化物粒子をガム状シリコーン化合物中に埋め込んでなるものである。このような複合粒子を上記ベース樹脂、金属水酸化物粒子とともに混練することで、ベース樹脂に対するガム状シリコーン系化合物の分散性を十分に改善することができる。
【0039】
ガム状シリコーン系化合物は、難燃助剤として機能し、シリコーンオイルの中でも特に高粘度のもので、数平均分子量が10万〜100万程度のポリオルガノシロキサンを言う。ポリオルガノシロキサンは、シロキサン結合を主鎖とし側鎖に有機基を有するものであり、有機基としては、例えばメチル基、ビニル基、エチル基、プロピル基、フェニル基などが挙げられる。具体的にはポリオルガノシロキサンとしては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルエチルポリシロキサン、メチルオクチルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0040】
無機酸化物粒子は、シリコン(Si)原子を含有する無機酸化物粒子であればよく、Si原子のほか、アルミニウム(Al)原子やマグネシウム(Mg)原子をも含む無機複合酸化物粒子であってもよい。このような無機酸化物粒子としては、例えばSiO、SiO、アルミノケイ酸塩、MgSiO、などが挙げられる。中でも、シリコーンガムとの相溶性の点から、SiOが好ましい。
【0041】
上記複合粒子は、難燃性樹脂組成物において、ベース樹脂100質量部に対して合計で1〜30質量部の割合でベース樹脂、金属水酸化物粒子とともに混練することが好ましい。この場合、複合粒子の配合割合が上記範囲を外れる場合に比べてより優れた難燃性が得られやすくなる。
【0042】
上記複合粒子中の無機酸化物粒子の配合率は好ましくは20〜45質量%であり、より好ましくは30〜40質量%である。この場合、上記複合粒子中の無機酸化物粒子の配合率が上記範囲を外れる場合に比べてより優れた難燃性が得られやすくなる。
【0043】
上記難燃性樹脂組成物は、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、加工助剤、着色顔料、滑剤、カーボンブラック、架橋助剤などの充填剤を必要に応じて含んでもよい。
【0044】
上記ベース樹脂、金属水酸化物粒子、複合粒子等の混練は例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。
【0045】
なお、混練に際して、金属水酸化物粒子は、上記複合粒子を構成するガム状シリコーン系化合物と同様のガム状シリコーン化合物や脂肪酸で予め表面処理されていてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物中に含まれる各金属水酸化物粒子の全体がガム状シリコーン系化合物や脂肪酸で被覆されていることが好ましい。
【0046】
金属水酸化物粒子の表面にガム状シリコーン系化合物又は脂肪酸を付着させる方法としては、例えば金属水酸化物粒子にガム状シリコーン系化合物又は脂肪酸を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕することによって得ることができる。
シリコーン系化合物は、金属水酸化物粒子の表面にあらかじめ付着させず、混練時に添加されてもよい。
【0047】
<絶縁層形成工程>
次に、上記難燃性樹脂組成物で内部導体1を被覆する。具体的には、上記の難燃性樹脂組成物を、押出機を用いて溶融混練し、チューブ状の押出物を形成する。そして、このチューブ状押出物を内部導体1上に連続的に被覆する。こうして内部導体1が絶縁層2で被覆された絶縁電線4が得られる。なお、内部導体1は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体1は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
【0048】
<シース被覆工程>
最後に、上記のようにして得られた絶縁電線4を2本用意し、これら絶縁電線4を、前記難燃性樹脂組成物で被覆し、シース3を形成する(シース形成工程)。シース3は、絶縁層を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。以上のようにして、絶縁電線4をシース3で被覆した平形ケーブル10が得られる。
【0049】
上述した平形ケーブル10の製造方法によれば、得られる平形ケーブル10において優れた機械的特性及び難燃性を両立させることができる。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、平形ケーブル10が2本の絶縁電線4を有しているが、平形ケーブル10は、絶縁電線4を1本のみ有していてもよく、3本以上有していてもよい。
【0051】
また上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁層2、シース4が上記の難燃樹脂組成物で構成されているが、絶縁層2が通常の絶縁樹脂で構成され、シース3のみが、絶縁層2を構成する難燃性樹脂組成物で構成されてもよい。
【0052】
さらに上記実施形態では、混練に際し、無機酸化物粒子及びガム状シリコーン化合物が、複合粒子の状態で、即ち無機酸化物粒子がガム状シリコーン化合物中に埋め込まれた状態で添加されているが、無機酸化物粒子及びガム状シリコーン化合物は必ずしも複合粒子の状態で添加される必要はない。即ち、無機酸化物粒子及びガム状シリコーン化合物は、混練に際して別々に添加されてもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1〜11及び比較例1〜5)
EVA、EEA1、EEA2、EEA3、表面処理水酸化マグネシウム(以下、「水酸化マグネシウム」を「水酸化Mg」と呼ぶ)1、表面処理水酸化Mg2、シリコーンガムマスターバッチ、シリカ含有シリコーンガム1、シリカ含有シリコーンガム2及びシリカ含有シリコーンガム3を、表1〜3に示す配合比で配合し、バンバリーミキサによって混練し、難燃性樹脂組成物を得た。なお、表1〜表3において、上記各配合成分の配合量の単位は質量部である。
【0055】
上記EVA、EEA1、EEA2、EEA3、表面処理水酸化Mg1、表面処理水酸化Mg2、シリコーンガムマスターバッチ、シリカ含有シリコーンガム1、シリカ含有シリコーンガム2及びシリカ含有シリコーンガム3としては具体的には以下の(1)〜(10)のものを用いた。
(1)EVA
EV460(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
(2)EEA1
エルバロイ2116AC(商品名、MFR:0.3g/10min、デュポン社製)
(3)EEA2
ZE708(商品名、MFR:0.5g/10min、宇部丸善ポリエチレン社製)
(4)EEA3
エルバロイ2116AC(商品名、MFR:0.9g/10min、デュポン社製)
(5)表面処理水酸化Mg1
X−22−1894A(商品名、信越化学工業社製)
(6)表面処理水酸化Mg2
キスマ5A(商品名、協和化学社製)
(7)シリコーンガムマスターバッチ
X−22−2138B(商品名、EVA460とポリオルガノシロキサン(X−21−3043)とを60:40(質量比)で混練してマスターバッチとしたもの、信越化学工業社製)
(8)シリカ含有シリコーンガム1
GENIOPLAST PELLET S(商品名、シリカ:35質量%、ポリオルガノシロキサン含有率:65%、Wacker Chemie株式会社製)
(9)シリカ含有シリコーンガム2
ポリオルガノシロキサン中にシリカを埋め込んだ複合粒子(シリカ:20質量%、ポリオルガノシロキサン含有率:含有率80%)
(10)シリカ含有シリコーンガム3
ポリオルガノシロキサン中にシリカを埋め込んだ複合粒子(シリカ:45質量%、ポリオルガノシロキサン含有率:55%)
【0056】
なお、キスマ5Aは、水酸化Mgを脂肪酸で約3%表面処理したものである。ここで、3%表面処理とは、表面処理水酸化Mg2中の脂肪酸の含有率が3%であることを意味する。またX−22−1894Aは、表面処理水酸化Mg2をポリオルガノシロキサン(X−21−3043)で約6%表面処理したものである。ここで、6%表面処理とは、表面処理水酸化Mg1中のポリオルガノシロキサンの含有率が6%であることを意味する。
【0057】
次いで、この難燃性樹脂組成物をバンバリーミキサによって160℃にて15分間混練した。その後、この難燃性樹脂組成物を、単軸押出機(L/D=20、スクリュー形状:フルフライトスクリュー、マース精機社製)に投入し、その押出機の吐出口からクロスヘッド中の円筒状空間に難燃性樹脂組成物を注入し、円筒状空間からチューブ状の押出物を押し出し、導体(素線数7本/素線径0.6mm)上に、厚さ0.8mmとなるように被覆した。こうして外径3.4mmの絶縁電線を得た。
【表1】

【表2】

【表3】

【0058】
上記のようにして得られた実施例1〜11及び比較例1〜5の絶縁電線について、以下のようにして機械的特性及び難燃性の評価を行った。
【0059】
(機械的特性)
機械的特性の評価は、実施例1〜11及び比較例1〜5の絶縁電線について、JIS規格C3005により引張試験を行った。このとき、引張速度は200mm/min、標線間距離は20mmとした。そして、引張強度が10MPa以上のものは合格とし、10MPa未満のものは不合格とした。結果を表1〜表3に示す。なお、表1〜表3において、合格の絶縁電線については「○」で表示し、不合格の絶縁電線については「×」と表示した。
【0060】
(難燃性)
実施例1〜11及び比較例1〜5の絶縁電線について、JIS K7201の試験法に準処して酸素指数を測定した。結果を表1〜3に示す。
【0061】
表1〜表3に示す結果より、実施例1〜11の絶縁電線は、比較例1〜5の絶縁電線と比較して、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることができることが分かった。
【0062】
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた機械的特性及び難燃性を両立させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0063】
1…内部導体、2…絶縁層、3…外部導体、4…シース、5…絶縁電線、10…平形ケーブル。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のポリオレフィン系樹脂からなるベース樹脂と、
金属水酸化物粒子と、
シリコン原子を含む無機酸化物粒子と、
ガム状シリコーン化合物と、
を含み、
前記金属水酸化物粒子が、前記ベース樹脂100質量部に対して150質量部以下の割合で配合されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記金属水酸化物粒子が、前記ベース樹脂100質量部に対して5質量部以上の割合で配合されている、請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機酸化物粒子及び前記ガム状シリコーン化合物が、前記ベース樹脂100質量部に対して合計で1〜30質量部の割合で配合されている、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機酸化物粒子及び前記ガム状シリコーン化合物中の前記無機酸化物粒子の配合率が20〜45質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
導体と、
前記導体を被覆する絶縁層と、
を備えており、
前記絶縁層が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成されること、
を特徴とする絶縁電線。
【請求項6】
導体と、
前記導体を被覆する絶縁層と、
を備えており、
前記絶縁層が、請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を架橋処理してなること、
を特徴とする絶縁電線。
【請求項7】
内部導体及び前記内部導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、
前記絶縁電線を被覆するシースとを備え、
前記絶縁層及び前記シースの少なくとも一方が請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物で構成され、又は請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性樹脂組成物を架橋処理してなるものであることを特徴とするケーブル。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−46786(P2011−46786A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194687(P2009−194687)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】