説明

難燃性樹脂組成物、それが含まれた電線被覆材及びそれによって被覆された電線

【課題】比重が小さく、耐摩耗性及び成形加工性に優れ、ガス酸性度が低い難燃性樹脂組成物、それが含まれた電線被覆材及びそれによって被覆された電線を提供することを目的とする。
【解決手段】高密度ポリエチレンと赤リンを含有し、比重が1.05g/cm以下である難燃性樹脂組成物であって、前記高密度ポリエチレンは、密度が0.950g/cm以上、分子量分布(Mw/Mn)が15以上であり、前記赤リンは、2〜5wt%含まれることを特徴とする難燃性樹脂組成物を電線被覆材として用いた電線である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物、それが含まれた電線被覆材及びそれによって被覆された電線に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂は、物理的性質及び化学的性質に優れているため、フィルム、シート、パイプ、容器、被覆電線及びケーブル(以下、被覆電線及びケーブルを併せて単に「電線」という)など、家庭用又は工業用として様々な用途に用いられているが、ポリオレフィン系樹脂は、易燃性であるため、これを難燃化するために、例えば、ポリオレフィン系樹脂に、臭素原子や塩素原子が含有されたハロゲン系難燃剤が添加されたものが用いられている。しかしながら、これらハロゲン系難燃剤は、少量の配合量で難燃効果を発揮させることができるが、燃焼時に有害なハロゲンガスを発生するという欠点を有する。
【0003】
そこで、近年、燃焼時にハロゲンガスが発生せず、低発煙性で、無公害型の難燃剤として、水酸化マグネシウムなどの無機金属化合物の水和物が添加されたものが提案されている(特許文献1及び2)。
【特許文献1】特開平02−053845号公報
【特許文献2】特開平02−145632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無機難燃剤の主成分として水酸化マグネシウムが添加された難燃性樹脂組成物は、比重が1.2〜1.4g/cm程度で比重が大きく、電線に用いると、光ケーブル等の電線の敷設の施工時に取り扱いが不便で、また輸送時にも比重が大きい分だけ輸送コストを要する。
【0005】
また、従来の難燃性樹脂組成物においては、耐摩耗性が不十分で、マンション、ビル、工場、戸建等、管路に光ケーブル等を敷設する際に管路壁とケーブルとの摩擦により、傷付き・摩耗が生じる恐れがある。また、難燃性樹脂組成物を被覆して電線にするには、難燃性樹脂組成物の成形加工性が重要となる。さらに、燃焼時にガスの酸性度が低い(pHが大きい)ことが安全性等の面から必要である。その他、電線に必要な特性は、JISなどに規定されており、これらを満たす必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、比重が小さく、耐摩耗性及び成形加工性に優れ、ガス酸性度が低い難燃性樹脂組成物、それが含まれた電線被覆材及びそれによって被覆された電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、密度が0.950g/cm以上であり、かつ分子量分布(Mw/Mn)が15以上である高密度ポリエチレンと、赤リン2〜5wt%とを含有し、比重が1.05g/cm以下に調整されていることを特徴とする。また、前記難燃性樹脂組成物が含まれたことを特徴とする電線被覆材であり、前記電線被覆材によって被覆されたことを特徴とする電線である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、比重が小さく、耐摩耗性及び成形加工性に優れ、ガス
酸性度が低い難燃性樹脂組成物、それが含まれた電線被覆材及びそれによって被覆された電線を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、比重が1.05g/cm以下、好ましくは0.95〜1.03である。本発明に係る難燃性樹脂組成物は、比重が軽いので、電線被膜材として好適に用いることができる。
【0010】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、高密度ポリエチレンを含有する。高密度ポリエチレンは、密度が0.950g/cm以上、好ましくは0.955〜0.965である。密度が低いと、耐摩耗性が悪い。分子量分布(Mw/Mn)は、15以上、好ましくは20以上である。分子量分布が低いと、高速成形性及び機械特性を保持できない。分子量分布は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて求めることができる。このような高密度ポリエチレンは、公知の方法を用いて製造することができ、例えば、チーグラー系触媒やメタロセン系触媒を用いてエチレンを重合することにより得ることができる。
【0011】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、赤リンを含有する。赤リンは、市販のものを用いることができる。
【0012】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、前記高密度ポリエチレン以外のポリオレフィンを含有してもよい。このようなポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独重合体またはそれらの共重合体、エチレンと極性モノマーとのエチレン系共重合体等であり、具体的には、高・中・低密度・超低密度ポリエチレン(前記高密度ポリエチレン除く)、ポリプロピレン、ポリブテン−1等の単独共重合体、エチレンとプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等との共重合体、プロピレンとエチレンの共重合体、エチレンとビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸および/またはそのアルキルエステルとのエチレン系共重合体等が挙げられる。この中でもエチレン系共重合体が好ましく、エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体ゴム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体ゴム(アクリルゴム)及びエチレン・α−オレフィン共重合体などがある。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。難燃性および機械特性向上の点からは、この中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が特に好ましい。
【0013】
前記エチレン系共重合体においては、難燃性を向上させる上でエチレンに対し共重合させた共重合成分の含有量(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体ではVA含有量、エチレン−エチルアクリレート共重合体ではEA含有量)が、8〜40w%であること好ましく、12〜35w%であることがさらに好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂のMFR(メルトフローレイト、JIS K7210に準拠、190℃/2.16kg)は、強度の面、樹脂組成物の混練り加工性の面から0.05〜20g/10分、さらに好ましくは0.1〜10g/10分程度が好ましい。
【0014】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、官能基含有化合物変性エチレン系樹脂を含有してもよい。官能基含有化合物変性エチレン系樹脂としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体、エポキシ基含有化合物、ヒドロキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物、有機シラン化合物、及び有機チタネート化合物から選ばれる官能基含有化合物の少なくとも1種以上
で変性されたものが挙げられ、特に不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性されたエチレン系樹脂が好ましい。
【0015】
変性に用いられる不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フラン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、ペンテン酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のα,β−不飽和ジカルボン酸又は無水物、あるいはそれらの金属塩等があり、特にマレイン酸又はその無水物が好ましい。
【0016】
官能基含有化合物変性エチレン系樹脂中の官能基含有化合物の含有量は、0.01〜10wt%が好ましく、0.05〜5.0wt%がより好ましい。上記含有量が0.01wt%未満では、樹脂と難燃剤とのカップリング効果が発揮されない虞が生じる。また、10wt%を超える場合は、変性させる際に分解、架橋反応が併発する虞を生じる。
【0017】
官能基含有化合物変性エチレン系樹脂は、未変性ポリエチレン系樹脂に官能基含有化合物と有機過酸化物を添加し、加熱混合することで得ることができる。この加熱混合による変性で官能基含有化合物の含有量を0.01〜10wt%としたもの、またはより含有量の大きい変性物を未変性エチレン系樹脂に混合して官能基含有化合物の含有量を上記範囲に調整したものが用いられる。
【0018】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、無機難燃剤を含有してもよい。無機難燃剤としては、無機塩及び金属水和物が挙げられる。無機塩としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化ジルコン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、二硫化モリブデン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、粘土、ケイソウ土、カオリナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、タルク、シリカ、ホワイトカーボン、ゼオライト、及びハイドロマグネサイト等が挙げられる。水和金属酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、及び水酸化バリウムなどが挙げられる。耐低温衝撃性・加工性の点から、水酸化マグネシウムが好ましい。
【0019】
無機難燃剤は、表面処理剤で表面処理したものを使用してもよい。表面処理剤としては、脂肪酸及び脂肪酸金属塩又はこれらの混合物、並びに、脂肪酸エステル、ワックス又はその変性物、硬化性樹脂、有機シラン、有機チタネート、及び有機ボラン等の表面処理剤、ポリカルボン酸系分散剤、ポリグリセリン誘導体、N−アシル塩基性アミノ酸、あるいは二塩基酸エリスリトール類エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、アルコールリン酸エステル、その他のリン化合物等が挙げられる。
【0020】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、難燃助剤を含有してもよい。難燃助剤としては、シリコーンパウダー、シリコーンガムなどのシリコーン化合物、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウムなどのリン系難燃剤、硼酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛などの亜鉛化合物、メラミンシアヌレート、メラミンなどの窒素含有有機難燃剤、カーボンブラック、N,N´−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド化合物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。
【0021】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、その特性を損なわない範囲で、その使用目的に応じて、各種添加剤や補助資材を配合することができる。それら各種添加剤や補助資材としては、傷付き白化防止剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、加工性改良剤、充填剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、気泡防止剤、着色剤
、及びカーボンブラック等を挙げることができる。また、架橋剤、例えば有機過酸化物、硫黄又はシラン系架橋剤や架橋助剤を添加することにより架橋したり、電離性放射線を照射する等により架橋したりすることもできる。
【0022】
本発明に係る難燃性樹脂組成物の高密度ポリエチレンの含有量は、好ましくは45〜98wt%であり、さらに好ましくは60〜95wt%、特に好ましくは70〜90wt%である。赤リンの含有量は、2〜5wt%、好ましくは3〜5wt%である。赤リンの含有量が2wt%未満では、難燃性が低下し、5wt%を越えると耐低温衝撃性・引張特性が低下する。高密度ポリエチレン以外のポリオレフィンの含有量は、好ましくは30wt%以下であり、さらに好ましくは20wt%以下、特に好ましくは5〜10wt%である。無機難燃剤の含有量は、好ましくは10wt%以下であり、さらに好ましくは8wt%以下、特に好ましくは1〜6wt%である。
【0023】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、上記の各成分を、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど、通常用いられる混練装置で溶融混練して得ることができる。
【0024】
本発明に係る電線は、導体や光ファイバ、テンションメンバ、支持線(以下導体等とする)と被覆層を含み、導体等は被覆層によって覆われている。導体等の導体径や材質などは特に制限はなく、用途に応じて適宜定められる。導体等の周りに形成される難燃性樹脂組成物を含む被覆層の肉厚も特に制限はないが、0.15〜5mmが好ましい。被覆層は多層構造であってもよく、本発明の樹脂組成物で形成した被覆層の他に中間層などの他の層を有してもよい。
【0025】
本発明に係る電線は、本発明に係る電線被覆材を絶縁層やシース層として押出して、導体に被覆することにより電線を製造することができる。これら電線被覆材及び電線は、被覆層を架橋体とすることにより、耐熱性の向上のみならず、難燃性も向上させることができる。その場合には、本発明に係る難燃性樹脂組成物を通常の電線製造用押出成形機を用いて押出し導体に被覆し、その後、その被覆層を架橋することにより製造することができる。架橋の方法は特に制限はなく、電子線架橋法や化学架橋法で行うことができる。電子線架橋法で行う場合、電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋を行うために、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として配合してもよい。化学架橋法の場合は樹脂組成物、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ケトンペルオキシエステル、ケトンペルオキシドなどの有機過酸化物を架橋剤として配合し、押出成形被覆後に加熱処理により架橋を行う。
【実施例】
【0026】
次に、本発明に係る難燃性樹脂組成物の実施例について説明する。本実施例に係る難燃性樹脂組成物及びその比較例においては、下記の原材料を用いた。
(1)高密度ポリエチレン(HDPEという)
MFR:0.17g/10min, 密度:0.956g/cm, Mw/Mn=20(京葉ポリエチレン社製)
(2)直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPEという)
MFR:4g/10min, 密度:0.944g/cm, Mw/Mn=8(宇部丸善ポリエチレン社製)
(3)エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAという)
MFR:2g/10min, VA含量:21重量%(宇部丸善ポリエチレン社製)
(4)無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(MAH-LLという)
MFR:1.5g/10min, 密度 0.920g/cm
無水マレイン酸含量:0.1重量%(宇部丸善ポリエチレン社製)
(5)赤リン
(燐化学工業社製 ノーバレッド120UF)
(6)水酸化マグネシウム(Mg(OH)という)
キスマ5B(協和化学工業製)
(7)滑剤
工マグネシウムステアレート(日本油脂製)
(8)顔料
VULCAN9A32(キャボット社製)
【0027】
実施例1:
表1に示す配合で、HDEP、EVA、赤リン、及びMg(OH)が100wt%になるように、さらにその配合物100重量部に対して、滑剤0.5重量部及び顔料2重量部を配合し、バンバリーミキサーにて165℃で5分間混練した後、ロール混練機により180℃で7分間混練、造粒してペレットにすることにより実施例1に係る難燃性樹脂組成物を得た。
【0028】
実施例2及び比較例1乃至3:
配合物として表1に記載の原材料を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2及び比較例1乃至3に係る難燃性樹脂組成物を得た。
【0029】
実施例1及び2、並びに比較例1乃至3に係る難燃性樹脂組成物を用いて、熱プレス成形機より180℃、100kg/cmで3分間成形することによりシートを作成し、この得られたシートを使用してMFR、比重、引張強度、引張伸度、ぜい化温度、発煙濃度、及び発生ガス酸性度を下記の条件で測定した。結果を表1に示す。
【0030】
実施例1及び2、並びに比較例1乃至3に係る難燃性樹脂組成物を用いて、単軸押出機(スクリュー径:φ20mm)、1穴ダイス(穴径:φ2.0mm)、設定温度:160〜200℃、スクリュー回転数:40rpm、引取速度:4〜6m/minにより、ケーブル模擬試料として外径2.5mm程度のストランドを作製し、耐摩耗性、押出外観、及び燃焼試験の評価試験を下記の条件で測定した。結果を表1に示す。
【0031】
評価試験法
(1)MFR
JIS K7210に準拠して測定した。測定条件は、荷重2.16kg、測定温度190℃。
(2)比重
水中置換法により測定した。
(3)引張強度及び引張伸度
シートは厚さ1mmのものを使用し、JIS K6301指定の3号ダンベルにて打ち抜き、試験速度50mm/minにて測定した。
(4)ぜい化温度
シートは厚さ2mmのものを使用し、JIS K7216に準拠して測定した。結果はぜい化温度で表されるが、この値は、小さい程、耐低温衝撃性がより優れていることを意味する。
(5)耐摩耗性
前記ストランドを用い、JIS C3005に準拠して、2000rpmの摩耗試験前後でストランド外径を測定した。摩耗試験前の外径と摩耗試験後の外径との差が0.5mm以下の場合を○と評価した。
(6)押出外観
前記ストランドを用い、JIS B0601に準拠し、ストランド表面の中心線平均あらさ(Ra)を測定した。Ra≦2.0μmの場合を○と評価した。
(7)燃焼試験
前記ストランドを用い、JIS C3005の60度傾斜試験に準拠して測定した。60秒以内に消火した場合を○と評価した。
(8)発煙濃度
JCS 7397に準拠して、発煙濃度Dsを測定した。
(9)発生ガス酸性度
JIS C3662−2に準拠して、燃焼時発生ガスの酸性度(pH)を測定した。
(10)判定
比重、引張強度、引張伸度、ぜい化温度、耐摩耗性、押出外観、燃焼試験、発煙量及び発生ガス酸性度が全て下記の範囲に入った場合を○と判定した。
比重 :1.05g/cm
引張強さ:10MPa≦ (JCS 4418等の耐燃性ケーブル規格)
引張伸び:350%≦ (JCS 4418等の耐燃性ケーブル規格)
ぜい化温度:−60℃≧ (寒冷地での耐低温衝撃性)
耐摩耗性:(摩耗試験前の外径)−(摩耗試験後の外形)≦0.5mm
押出外観:Ra≦2.0μm
燃焼試験:60秒以内に消火 (JCS 4418等の耐燃性ケーブル規格)
発煙濃度:Ds≦150 (JCS 4418等の耐燃性ケーブル規格)
発生ガス酸性度:pH≧4.3 (JIS C3662−2)
【0032】
【表1】

表1に示すように、実施例1及び2に係る難燃性樹脂組成物は、特に、比重、耐摩耗性、押出外観、及び発生ガス酸性度いずれにおいても優れているが、比較例1乃至3に係る難燃性樹脂組成物は、少なくともいずれかにおいて劣っていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.950g/cm以上であり、かつ分子量分布(Mw/Mn)が15以上である高密度ポリエチレンと、赤リン2〜5wt%とを含有し、比重が1.05g/cm以下に調整されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記高密度ポリエチレン以外のポリオレフィンを30wt%以下含むことを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
無機難燃剤を10wt%以下含むことを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載の難燃性樹脂組成物が含まれたことを特徴とする電線被覆材。
【請求項5】
請求項4記載の電線被覆材によって被覆されたことを特徴とする電線。

【公開番号】特開2009−84373(P2009−84373A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254370(P2007−254370)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(506252783)宇部丸善ポリエチレン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】