説明

難燃性樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板、カバーレイ、フレキシブルプリント配線板用接着シート及びフレキシブルプリント配線板。

【課題】プリント配線板の接着剤として硬化成形後の接着性、プリント配線板の電気特性に優れている難燃性樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を用いたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板、カバーレイ、フレキシブルプリント配線板用接着シート及びフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】難燃性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、リン含有ポリマーとを含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物、更に詳細には、電子材料分野においてガラス繊維からなる複合体やポリイミド、金属箔などの接着剤に主として使用される難燃性樹脂組成物、並びにこれを用いたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板、カバーレイ、接着シート及びフレキシブルプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
難燃性樹脂組成物は、電子材料分野(特にプリント配線板[より具体的には金属張積層板等の基板も含むフレキシブルプリント配線板(以下、FPCともいう。)など])において接着剤として幅広く用いられており、主に金属箔(例えば銅箔など)とフィルム(例えばポリエステルフィルムやポリイミドフィルムなど)、若しくは金属箔同士、フィルム同士、ガラス繊維を含む複合体と前記金属箔、前記複合体とフィルムを接着する際の接着剤として使用されている。
【0003】
従来の難燃性樹脂組成物として、特開2001−002931号公報には、回路基板用接着剤等の用途に利用すべく耐熱性や接着性等の向上を目的として、リンを分子中に含有する樹脂(例えばリン含有ポリエステル樹脂やリン含有ポリウレタン樹脂)、リン含有化合物(ポリ燐酸アンモニウム等)及び必要に応じてエポキシ樹脂やイソシアネート化合物等の硬化剤を含む難燃性樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、該公報に記載の難燃性樹脂組成物では、低分子量のリン含有化合物(リン系難燃剤)が所定量含まれることから、例えばプリント配線板の接着剤として使用しようとする場合、吸収した水分によるリン含有化合物の加水分解のため接着強度やマイグレーション特性が著しく低下すると考えられる。また、かかる難燃性樹脂組成物では、硬化成形後の樹脂組成物の特性(ガラス転移温度や弾性率等)が低下することにより、硬化成形後のプリント配線板の電気特性等における効果を十分に発揮できないという問題がある。また、かかる難燃性樹脂組成物では、エポキシ樹脂及び硬化剤とリンとの含有割合によっては、特に難燃性や接着性等において満足した効果が得られないという問題がある。
また、リン含有率が高い物質、例えば、リン系フィラー(OP930(クラリアントジャパン社製))を含む樹脂組成物においては、優れた難燃性を示すものの、耐熱性が劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−002931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上述の従来技術の問題点を解決することである。すなわち、本発明の目的は、例えばプリント配線板の接着剤として硬化成形後の接着性、プリント配線板の電気特性にも優れている難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、リン含有ポリマーとを含む難燃性樹脂組成物を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えばプリント配線板の接着剤として硬化成形後の接着性、プリント配線板の電気特性にも優れている難燃性樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、かかる難燃性樹脂組成物を用いてなる、優れたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板、カバーレイ、接着シート及びフレキシブルプリント配線板がそれぞれ提供される。
【0009】
尚、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る金属張積層板の一実施形態(片面金属張積層板)を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る金属張積層板の別の実施形態(両面金属張積層板)を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明に係るカバーレイの一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の一実施形態(片面板)を示す概略断面図である。
【図5】図5は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の別の実施形態(両面板)を示す概略断面図である。
【図6】図6は、本発明に係る難燃性樹脂組成物を適用することのできるフレックスリジットプリント配線板の一例を示す概略断面図である。
【図7】図7は、回路パターンの形成前の銅箔を備えた積層板を示す概略断面図である。
【図8】図8は、本発明に係る難燃性樹脂組成物を使用したプリント配線板の特性評価試験に用いた回路パターンを示す説明図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(難燃性樹脂組成物)
本発明の難燃性樹脂組成物は、主に、フレキシブルプリント配線板用金属張積層板、カバーレイ、接着シート、フレキシブルプリント配線板等の用途に好適に用いられる。ここで、フレキシブルプリント配線板用金属張積層板とは、フィルムと金属箔とが積層されたものである。また、カバーレイとは、金属箔に形成される導体パターン(以下、回路ともいう)を設けたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板の該回路を保護する為に設けられるもの、例えば、電気絶縁性を有する合成樹脂フィルムに前記樹脂組成物が単層又は複数層の積層状態で塗布等の手段により設けられたものである。また、フレキシブルプリント配線板とは、回路を設けたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板の必要な部分に、カバーレイを設けたものである。
【0012】
尚、本発明の難燃性樹脂組成物は、主として上記用途に使用することが好ましいが、その他、多層プリント配線板や、フレックスリジットプリント配線板等にも用いることができる。ここで、フレックスリジットプリント配線板としては、図6に示す形態のフレックスリジットプリント配線板40を一例として例示することができる。図6に示すように、フレックスリジットプリント配線板40は、回路42を形成済みの銅張積層板41とその両面に積層された一対のカバーレイ43,43とからなるFPC44と、該FPC44の両面に設けられ、プリプレグをコアとする一対のリジット基板46,46と、該FPC44及び該リジット基板46,46の間に設けられた接着シート45,45と、銅箔をエッチング処理して該リジット基板46,46の表面に形成される複数の回路47と、所定の回路において積層後ドリル等で孔を開け、銅メッキを施すためのスルーホール48と、を主たる構成とするものである。尚、ここでいうプリプレグとは、ガラスクロスに熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、BT樹脂等に硬化剤、溶剤、充填剤、添加剤等を混合したもの)を含浸して加熱乾燥し、保管可能な安定状態まである程度硬化を進めた状態(Bステージ)のものをいう。
【0013】
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、リン含有ポリマーと、を配合してなるものである。前記リン含有ポリマーは、難燃性を付与する性質を持つリン含有ポリマーである。このリン含有ポリマーが配合されていることにより、高い難燃性が発揮される。このリン含有ポリマーによる難燃性のメカニズムは、以下のように考えられる。まずリン含有ポリマーが燃焼時の熱により分解し、被燃焼物の表面にリン酸を生成する。このリン酸は脱水反応により被燃焼物を炭化させチャー層を形成する。これによって空気、および外部からの熱エネルギーの供給を遮断し、燃焼を抑制する。
【0014】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、硬化剤、およびリンを多く含むリン含有ポリマーを基本成分としていることから、樹脂組成物全体に占める難燃性に寄与する添加剤の量を減らすことができる。これにより硬化前の難燃性樹脂組成物の相溶性、成形加工性が容易になり、硬化成形後の難燃性樹脂組成物の接着特性、及び電気特性を向上させることができる。
【0015】
リン含有ポリマーとしては、下記式(1)で表される構造単位をポリマーの主鎖または側鎖に有するポリマー若しくはコポリマーが挙げられる。前記コポリマーとしては、下記式(2)で表されるコポリマーが挙げられる。
【0016】
【化1】

(式(1)中、R1、R2は、同一でも異なっていても良く、水素原子またはメチル基を表す。また、nは、 50〜 300の整数である。)
【0017】
【化2】

(式(2)中、R1、R2は、同一でも異なっていても良く、水素原子またはメチル基を表す。また、nは、6〜19の整数であり、mは、1〜15の整数である。)
【0018】
前記リン含有ポリマー中のリン重量%は5重量%以上である。例えば、下記式(1)のポリマーと下記式(2)のコポリマーを併用した場合、これらリン含有ポリマー全体に含まれる合計のリン重量%は5重量%以上である。これにより、硬化後の樹脂組成物において、少ない量で高い難燃効果を発揮することができる。さらに前記リン含有ポリマーは、主鎖若しくは側鎖中にリン成分に係る構造が組み込まれている。すなわち、化学結合によりリン成分に係る構造が保持されている。これにより、該樹脂組成物からリン成分が析出することがなく、さらに水分による加水分解にも強く、電気特性に極めて優れた難燃性樹脂組成物となる。
【0019】
難燃性樹脂組成物中におけるリン含有ポリマーの配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対し、好ましくは5〜50重量部、更に好ましくは10〜40重量部である。
【0020】
難燃性樹脂組成物に用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、特に、金属箔やフィルムとの密着性、半硬化状態(いわゆるBステージ)の安定性の点で、エポキシ樹脂が好適である。
【0021】
エポキシ樹脂としては、例えば、一分子中にエポキシ基を少なくとも二個以上有し、且つ、ハロゲンを含まないエポキシ樹脂等が採用される。具体的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型等)、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。特に、難燃性を向上できる点で、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ノボラック型のエポキシ樹脂が好ましい。
【0022】
尚、上述したエポキシ樹脂と、リン含有エポキシ樹脂を併用することができる。また、エポキシ樹脂に代えてリン含有エポキシ樹脂を用いることができる。また、リン含有エポキシ樹脂とリン含有ポリマーを併用することもできる。リン含有エポキシ樹脂は、例えば、後述する式(2)で表されるオリゴマーと上述したエポキシ樹脂のうち少なくとも一つ以上のエポキシ樹脂とを100〜150℃、2〜5時間反応させることにより得ることができる。
【0023】
【化3】

(式(3)中、nは、1〜16の整数である。)
【0024】
硬化剤としては、熱硬化性樹脂の硬化剤として使用されているものであれば特に制限はない。例えば、前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合は、該エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている硬化剤とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0025】
硬化剤としては、具体的には、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、イミダゾール類、ヘキサメチレンジアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド、フェノールノボラック等が採用される。特に、反応の安定性の点で、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤が好ましく、とりわけアミン系硬化剤が好ましい。また、式(2)のオリゴマーをフェノール系硬化剤として用いることもできる。その場合、エポキシ樹脂の重合触媒となるイミダゾール類を併用することが好ましい。これにより樹脂組成物中に含まれるリン含有量を増加させ、難燃性をさらに向上させることができる。
【0026】
難燃性樹脂組成物中における硬化剤の配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対し、好ましくは1〜200重量部、更に好ましくは3〜100重量部である。また、かかる硬化剤とともに、必要に応じて硬化促進剤を併用しても良い。
【0027】
また、難燃性樹脂組成物には、屈曲性、接着性の向上の点で、柔軟剤を添加することが好ましい。ここで、柔軟剤としてはアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、アクリルゴム(ACM、ANM)などの合成ゴム、および、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリウレタン樹脂(PU)、ポリアミド樹脂(PA)、などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0028】
難燃性樹脂組成物中における柔軟剤の配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対し、好ましくは3〜80重量部、更に好ましくは5〜60重量部である。
【0029】
また、難燃性樹脂組成物には、当該樹脂組成物を半硬化状態(Bステージ状態)にした際の手扱い性(例えば、べたつきの調整)、硬化後の当該樹脂組成物の接着性の向上、および溶融粘度の調整を容易にする目的で、リン含有ポリマー以外の難燃剤を添加することができる。難燃剤として、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水和物、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩などの金属含有難燃剤を挙げることができる。
【0030】
難燃性樹脂組成物中における金属含有難燃剤の配合量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部である。これにより、硬化後の樹脂組成物の電気的特性、接着性を向上させることができる。また、カバーレイに用いた場合は、回路間へ樹脂組成物を十分に行き渡らせることができ、難燃性も向上させることができる。
【0031】
また、難燃剤樹脂組成物には、諸特性を低下させない範囲で、必要に応じて前述した各成分に加えて、種々の添加剤、(例えば、酸化防止剤、界面活性剤、カップリング剤等)を加えても良い。
【0032】
難燃性樹脂組成物は、その使用(特に前記用途への使用)に際し、硬化されて用いられる。当該樹脂組成物をどの程度まで硬化させるかは、用途、設備等により決まる。通常は、加熱・加圧等の所定条件下で硬化されて用いられる。前記所定条件として、温度は130〜180℃が好ましく、圧力は2〜5MPa/cmが好ましく、時間は10〜60分が好ましい。
【0033】
(フレキシブルプリント配線板用金属張積層板)
本発明のフレキシブルプリント配線板用金属張積層板は、図1に示すように、フィルム2と金属箔3とが積層された積層板20であって、前述した難燃性樹脂組成物1が、該フィルム2と該金属箔3とを貼着せしめる接着剤として使用されているものである。尚、図1は、本発明に係る金属張積層板の一実施形態20(片面金属張積層板)を示す概略断面図である。本発明の金属張積層板は、フレキシブルプリント配線板に対して使用する際の基板に相当する。
【0034】
本発明の金属張積層板においては、フィルムの厚さが4〜75μmであり、接着剤としての難燃性樹脂組成物からなる層の厚さが5〜30μmであるものが好ましい。
【0035】
また、本発明の金属張積層板は、別の実施形態として、図2に示すように、フィルム2の両面に一対の金属箔3,3が積層された積層板21であって、前述した難燃性樹脂組成物1,1が、該フィルム2と両面における該金属箔3,3とをそれぞれ貼着せしめる接着剤として使用されているものを挙げることができる。尚、図2は、本発明に係る金属張積層板の別の一実施形態21(両面金属張積層板)を示す概略断面図である。
【0036】
ここで使用されるフィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等が採用され、中でも、難燃性、電気絶縁性、耐熱性、弾性率等の点で、ポリイミドフィルムが好ましい。尚、他の素材のフィルムを採用しても良い。
【0037】
また、金属箔としては、例えば、銅箔や銀箔等の通電素材が採用される。
【0038】
図1及び図2に示す金属張積層板20,21においては、フィルム2としてポリイミドフィルムが用いられ、また金属箔3として銅箔が用いられている。
【0039】
(カバーレイ)
本発明のカバーレイは、図3に示すように、前述した難熱性樹脂組成物1が、電気絶縁性を有する合成樹脂フィルム2に設けられているものである。尚、図3は、本発明に係るカバーレイの一実施形態10を示す概略断面図である。
【0040】
本発明のカバーレイとしては、例えば、電気絶縁性を有する合成樹脂フィルムに、前述した難熱性樹脂組成物が積層状態で塗布された構成のもの等が挙げられる。かかるカバーレイは、回路を設けたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板等の該回路を保護する為に設けられるものとして使用される。
【0041】
この実施形態のカバーレイにおいては、前記合成樹脂フィルムの厚さが4〜75μmであり、難燃性樹脂組成物からなる層の厚さが5〜50μmであるものが好ましい。
【0042】
前記合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム等が採用され、中でも、難燃性、電気絶縁性、耐熱性、弾性率等の点で、ポリイミドフィルムが好ましい。尚、他の素材のフィルムを採用しても良い。
【0043】
図3に示すカバーレイ10においては、フィルム2としてポリイミドフィルムが用いられ、該フィルム2に設けられた難燃性樹脂組成物1は接着剤として機能する。ここで用いる接着剤は、前述した金属張積層板に用いる接着剤と同一でも異なっても良い。
【0044】
(フレキシブルプリント配線板用接着シート)
本発明のフレキシブルプリント配線板用接着シートは、前述した難燃性樹脂組成物からなるもので、シート状のものである。具体的には離型フィルムの離型面に難燃性樹脂組成物を塗布し、半硬化状態にしたシート状の接着シートである。
【0045】
本発明の接着シートの厚さは、10〜60μmであることが好ましい。本発明の接着シートは、金属箔同士、フィルム同士、ガラス繊維と熱硬化性樹脂からなる複合体と金属箔、前記複合体とフィルム等を接着する際の貼着可能なシートとして使用される。
【0046】
(フレキシブルプリント配線板)
図4は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の一実施形態30(片面板)を示す概略断面図である。図4に示すように、フィルム2、難燃性樹脂組成物1(1b)、回路が形成された金属箔3からなる片面金属張積層板20の金属箔3に、フィルム2に難燃性樹脂組成物1(1a)が設けられたカバーレイ10の難燃性樹脂組成物1(1a)の面が接するように積層することで得られる片面フレキシブルプリント配線板30である。尚、本実施形態において、回路の形成は、エッチング処理を施すことにより形成することができる。
【0047】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、全体の厚さを用途に応じて任意に設定することが可能である。
【0048】
図5は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の別の実施形態31(両面板)を示す概略断面図である。図5に示すように、フィルム2が中心に配され、前記フィルム2の両面に接着剤としての難燃性樹脂組成物1(1b), 1(1b)、さらにその外側に金属箔3,3が配された両面金属張積層板21を配線板の基板として用い、該積層板21の金属箔3,3にエッチング処理を施すことにより所望の回路を描き、次いで、該回路としての金属箔3,3に、フィルム2及び接着剤としての難燃性樹脂組成物1からなるカバーレイの難燃性樹脂組成物1の面が接するように積層することで得られるフレキシブルプリント配線板31が挙げられる。
【0049】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、前記回路が形成られたフレキシブルプリント配線板用金属張積層板と前記カバーレイとを熱プレスにより貼り合わせたものを好ましい態様とする。ここで、熱プレスの条件としては、温度が130〜180℃で、圧力が2〜5MPaで、時間が10〜60分であることが好ましい。
【0050】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、例えば、ICチップ実装用の所謂チップオンフレキ用フレキシブルプリント配線板として好適に用いられる。
【0051】
図4及び図5に示すフレキシブルプリント配線板30,31においては、フィルム2としてポリイミドフィルムが用いられ、また回路としての金属箔3として銅箔が用いられている。また、プリント配線板30,31における接着剤は、難燃性樹脂組成物1が用いられており、これらは互いに配合組成が同一でも異なっていてもよい。また、本発明のフレキシブルプリント配線板は、かかる実施形態に限らず、上記のような構成の層が何層かに積層された多層プリント配線板であってもよい。
【0052】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により何等制限されるものではない。
【0053】
(実施例1〜11及び比較例1〜4)
表1および表2に示す配合物をそれぞれ調製した。また、部数は、固形分換算で表した値である。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表1および表2中の各成分等の詳細は、次の通りである。
エポキシ樹脂:エポキシ当量数が170g/eqであるビスフェノールタイプのエポキシ樹脂(固形分100%)。
リン含有ポリマーA:FRX100(FRX Polymers社製、固形分100%、分子量50000)、リン含有ポリマーに含まれるリン含有率は10.8重量%である。ここで、表中のリン含有率(重量%)とは、リン含有ポリマーに含まれるリンの量を熱硬化性樹脂(固形分換算)、硬化剤(固形分換算)及びリン含有ポリマー(固形分換算)の合計量で除し、それを百分率で示したものである。
リン含有ポリマーB:FRX CO95(FRX Polymers社製、固形分100%、分子量43000)、リン含有ポリマーに含まれるリン含有率は10.3重量%である。
リン含有ポリマーC:FRX CO60(FRX Polymers社製、固形分100%、分子量50000)、リン含有ポリマーに含まれるリン含有率は6.5重量%である。
リン含有ポリマーD:FRX CO35(FRX Polymers社製、固形分100%、分子量30000)、リン含有ポリマーに含まれるリン含有率は3.8重量%である。
リン含有エポキシ樹脂:後述に示した樹脂を用いた。
硬化剤:ジアミノジフェニルメタン(DDM、固形分100%)。
柔軟剤:ニポール1072(日本ゼオン社製、固形分100%)。
金属含有難燃剤:水酸化アルミ(昭和電工社製、ハイジライトH43STE)。
【0057】
(リン含有エポキシ樹脂の調製)
リン含有エポキシ樹脂は、エポキシ当量が188g/eqのビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、JER828)550gとリン含有オリゴマー(FRX Polymers社製、FRX OL 1500)450gとを2リットルのセパラブルフラスコに計り入れ、130℃で加熱撹拌した。その後、トリフェニルフォスフィンを2.5g添加し、約3時間加熱撹拌することにより、エポキシ当量が約510g/eq、リン含有量が約4.1質量%のリン含有エポキシ樹脂を得た。
【0058】
(難燃性)
UL94規格に準拠した各樹脂組成物の樹脂シートサンプルを作製した。シートサンプルの硬化状態は、Cステージ状態(完全硬化状態)となるようにした。硬化条件は、次の通りとした。
(1)加熱温度:180℃、(2)時間:60分。
難燃性は、以下の基準に基づきUL94規格V−0グレードを達成できるか否かにより難燃性を評価した。
◎:UL94規格V−0グレードを完璧に達成できる(難燃性にとても優れる)。
○:UL94規格V−0グレードをほぼ達成できる(実用上問題がない)。
×:UL94規格V−0グレードを達成することができない(実用上問題がある)。
【0059】
(耐熱性)
耐熱性は、各樹脂組成物の評価用サンプルを作製し評価した。評価方法は、IPC TM650に準拠して行った。
◎:はんだフロート耐熱性が300℃以上であり、実用上全く問題のない耐熱性を有する。
○:はんだフロート耐熱性が288℃以上であり、実用可能な耐熱性を有する。
×:はんだフロート耐熱性が288℃を達成することができず、耐熱性が不十分である。
【0060】
評価用サンプルは、以下の手順で作製した。まず、各樹脂組成物を夫々ポリイミドフィルム(鐘淵化学工業(株)製、アピカル25NPI)にバーコーターを用いて乾燥後の厚さが10μmとなるように塗布し、150℃で5分間加熱乾燥してBステージ化(半硬化状態)を行った後、樹脂組成物面に電解銅箔(三井金属鉱業(株)製、3EC−3、18μm)の粗化面をラミネーターによって貼り合わせて得られた片面板を180℃、1時間でCステージ状態になるまで硬化させたものをサンプルとした。
【0061】
(耐マイグレーション性)
耐マイグレーション性は、所定の条件(電圧:100V、温度:85℃、湿度:85%RH)下で試験を行い、一定時間(1000hr)の電圧の変化により評価を行った。このとき、下記基準に基づいて、マイグレーション性を評価した。
◎:抵抗値が1.0×1010 以上であった(優れたマイグレーション性を有する)。
○:抵抗値が1.0×107 以上、1.0×1010 未満であった(実用上問題がないレベルであった)。
×:抵抗値が1.0×107 未満となった(実用上問題がある)。
【0062】
評価サンプルは、以下の手順で作製した。まず、図7に示した片面銅張積層板を準備し、当該積層板の銅箔面に図8に示す回路パターンをエッチング処理により描き回路形成済みの片面銅張積層板を得た。片面銅張積層板は前述の耐熱性試験で用いた構成と同じである。次に、表1に基づき各樹脂組成物をそれぞれ調整し、各樹脂組成物をバーコーター法により、加熱乾燥後の塗布厚さが25μmとなるようにポリイミドフィルムに塗布し、樹脂組成物が半硬化状態(Bステージ状態)であるカバーレイをそれぞれ得た。このときの半硬化状態の条件は、180℃、1時間で行った。これら積層板、カバーレイを用いて、片面銅張積層板の回路パターンの上に、各カバーレイを積層し、180℃、1時間、3MPa/cmの条件で加熱加圧することにより評価サンプルのフレキシブルプリント配線板をそれぞれ得た。
【0063】
マイグレーション評価用パターンは、L/S(ライン/スペース)=100/100のクシ型パターンとした。
【0064】
尚、マイグレーション(銅マイグレーションともいう)とは、銅箔回路間に電圧を印加すると、接着剤中のイオン性不純物を媒体として陽極から銅イオンが溶出し、陰極側に銅が析出してしまう現象のことをいう。この析出が多くなると回路間の抵抗値が低下する。
【0065】
以上の各実施例の実験結果により、本発明の難燃性樹脂組成物が、例えばプリント配線板の接着剤として硬化成形後の難燃性、接着性およびプリント配線板の電気特性にも優れていることを確認した。
【符号の説明】
【0066】
1…難燃性樹脂組成物、2…フィルム、3…金属箔、10…カバーレイ、20,21…金属張積層板、30,31…フレキシブルプリント配線板、40…フレックスリジットプリント配線板、41…銅張積層板、42,47…回路、43…カバーレイ、44…FPC、45…接着シート、46…リジット基板、48…スルーホール、70…片面銅張り積層板、71…銅箔、72…接着剤、73…ポリイミドフィルム、80…回路パターン、81…ライン、82…スペース、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、硬化剤と、リン含有ポリマーと、を含む難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である、請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記リン含有ポリマーは、下記式(1)で表される構造単位からなる、請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1、R2は、同一でも異なっていても良く、水素原子またはメチル基を表す。また、nは、50〜300の整数である。)
【請求項4】
前記リン含有ポリマーは、下記式(2)で表される構造単位からなる、請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
【化2】

(式(2)中、R1、R2は、同一でも異なっていても良く、水素原子またはメチル基を表す。また、nは、6〜19の整数であり、mは、1〜15の整数である。)
【請求項5】
熱硬化性樹脂と、硬化剤と、を含み、前記熱硬化性樹脂がリン含有エポキシ樹脂であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、柔軟剤が添加されており、前記柔軟剤が合成ゴム、熱可塑性樹脂から少なくとも1つ以上選択されたものであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
更に、難燃剤が添加されており、前記難燃剤が金属水和物、金属炭酸塩から少なくとも1つ以上選択されたものであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の難燃性樹脂組成物が、フィルムと金属箔とを貼着せしめる接着剤として使用されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板用金属張積層板。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかに記載の難燃性樹脂組成物が、電気絶縁性を有する合成樹脂フィルムの少なくとも一面に設けられていることを特徴とするカバーレイ。
【請求項10】
請求項1〜7の何れかに記載の難燃性樹脂組成物からなることを特徴とするフレキシブルプリント配線板用接着シート。
【請求項11】
請求項1〜7の何れかに記載の難燃性樹脂組成物によりカバーレイを形成し、前記カバーレイが金属箔上に設けられていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10955(P2013−10955A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127561(P2012−127561)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】