説明

難燃性樹脂組成物

【課題】保存中に吸湿・変質せず、樹脂組成物や難燃処理液に配合し易く、ハロゲンガスやホルムアルデヒドガスを発生せず、繊維糸条、綱、紐、織物、編物、不織布、繊維ウエブ、不織布状繊維積層クッション材等の繊維製品の難燃化処理に適用してヌメリ感を与えず、シックハウス症候群を誘発しない難燃性樹脂組成物を得る。
【解決手段】ポリリン酸化合物とシリコーン系樹脂によってポリリン酸系難燃剤を組成し、エラストマー樹脂に配合して繊維製品の難燃化処理に適用する。シリコーン系樹脂は、ポリリン酸化合物の粒子の周りに固着させる。ポリリン酸化合物には、重量平均重合度20〜2000のポリリン酸アンモニウムを適用し、シリコーン系樹脂には、四官能性モノマーユニットまたは三官能性モノマーユニットに成るものを適用するとよい。エラストマー樹脂には、アクリル系樹脂エマルジョンを適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、ポリリン酸カルバメート、トリポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリ、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸アンモニウム・カリウム、ポリリン酸グアニジン等のポリリン酸化合物(以下、“ポリリン酸系難燃剤”と言う。)によって難燃化された樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂組成物や繊維製品の難燃化のために、ハロゲンを主成分とするハロゲン系難燃剤が広く使用されている。しかし、ハロゲン系難燃剤によって難燃化された樹脂組成物や繊維製品は、燃焼時に有害なハロゲンガスを発生するので、火災時にはガス中毒による二次災害を惹起し、又、焼却時には公害問題を惹起する。
このため、近時、ハロゲン系を含まないポリリン酸系難燃剤が注目されている。
しかし、ポリリン酸系難燃剤は湿気を帯び易く、それによって難燃化された樹脂組成物の難燃性能にバラツキが生じ易く、又、その難燃化された樹脂組成物が湿気を帯びて感触が悪く、使用上それに触れ合う金属器具の錆や繊維製品の劣化変色を誘発し易い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリリン酸系難燃剤の吸湿性を抑える方法としては、(1) その製造時の原料にメラミンまたはメラミン尿素を共存させてポリリン酸系難燃剤にメラミンを付加する方法(例えば、特許文献1参照)、(2) そのメラミン付加ポリリン酸系難燃剤による難燃化処理において、その配合された処理液にリン酸メラミンを添加して耐水性を付与する方法(例えば、特許文献2参照)、(3) ポリリン酸系難燃剤の製造時の原料または製造後の分散液にメラミン・ホルムアルデヒド樹脂を配合し、ポリリン酸系難燃剤を包み込んでマイクロカプセル化し、加水分解し難い安定な粒子にする方法(例えば、特許文献3参照)、(4) メラミン付加ポリリン酸系難燃剤にシランカップリング剤を共存させ、その付与された被難燃加工物からのポリリン酸系難燃剤のブリードを抑える方法(例えば、特許文献4、5、6参照)が知られている。
【特許文献1】特開昭49−061099号公報(特公昭61−15478)
【特許文献2】特開昭51−023312号公報(特公昭52−39930)
【特許文献3】特開昭61−103962号公報
【特許文献4】特開平02−263851号公報(特公平06−18944)
【特許文献5】特開平03−020342号公報(特公平06−04735)
【特許文献6】特開平03−056547号公報(特公平06−06655)
【0004】
然るに、これらの方法で処理されたメラミン付加ポリリン酸系難燃剤によって処理された樹脂組成物からはホルムアルデヒド残留ガスが発生し、それによるシックハウス症候群を誘発する。
そこで、ホルムアルデヒド残留ガスを発生する虞のないウレタン系樹脂とエチレン酢酸ビニル系樹脂とアクリル系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂等の樹脂によってポリリン酸系難燃剤を包み込んで、その吸湿性を抑えることを種々試みた。
しかし、ウレタン系樹脂とエチレン酢酸ビニル系樹脂とアクリル系樹脂は、水に馴染み易く、ヌメリ感を与え、防湿未処理のポリリン酸系難燃剤と同様に保存中に粒子が凝集して肥大化し、それによる難燃処理効果にバラツキが生じ易く、又、攪拌して使用しようとするとき樹脂皮膜が亀裂し剥落してポリリン酸化合物が露出し、樹脂皮膜による防湿効果が損なわれる。
そして、ポリメチルメタアクリレート樹脂は、比較的硬質でヌメリ感を与えないものの、樹脂組成物や難燃処理液への分散過程で樹脂皮膜が亀裂し易く、その樹脂皮膜による防湿効果が損なわれる。
【0005】
ところが、シリコーン系樹脂は、撥水性や防汚剤、コーキング剤に使用されていることからして明らかなように、疎水性で吸湿せず、その樹脂皮膜は柔軟で亀裂し難い。
特に、四官能性モノマーユニットや三官能性モノマーユニットに成るシリコーン系樹脂は、強靱で耐熱性に優れ、その樹脂皮膜に包み込まれたポリリン酸系難燃剤粒子は、その配合された樹脂組成物の攪拌過程で樹脂皮膜が亀裂することなく、保存中に沈澱したり凝集して分離することなく、その分散状態が安定に維持される。
【0006】
本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、その目的とするところは、保存中にポリリン酸系難燃剤が凝集し沈澱分離することなく、その分散状態が安定に保たれ、ホルムアルデヒド残留ガスを発生しない難燃性樹脂組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る難燃性樹脂組成物は、ポリリン酸化合物とシリコーン系樹脂との複合粒子に成るポリリン酸系難燃剤を、液中に要すれば助剤を用いてまたは直接樹脂に配合して成ることを第1の特徴とする。
【0008】
本発明に係る難燃性樹脂組成物の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、ポリリン酸系難燃剤がポリリン酸化合物の粒子の周りにシリコーン系樹脂が固着している点にある。
【0009】
本発明に係る難燃性樹脂組成物の第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、ポリリン酸化合物の重量平均重合度が20〜2000である点にある。
【0010】
本発明に係る難燃性樹脂組成物の第4の特徴は、上記第1と第2と第3の何れかの特徴に加えて、ポリリン酸化合物がポリリン酸アンモニウムである点にある。
【0011】
本発明に係る難燃性樹脂組成物の第5の特徴は、上記第1と第2と第3と第4の何れかの特徴に加えて、シリコーン系樹脂が四官能性モノマーユニットまたは三官能性モノマーユニットを有している点にある。
【0012】
本発明に係る難燃性樹脂組成物の第6の特徴は、上記第1と第2と第3と第4と第5の何れかの特徴に加えて、樹脂がエラストマー樹脂である点にある。
【0013】
本発明に係る難燃性樹脂組成物の第7の特徴は、上記第1と第2と第3と第4と第5と第6の何れかの特徴に加えて、エラストマー樹脂がアクリル系樹脂である点にある。
【発明の効果】
【0014】
シリコーン系樹脂は、ハロゲンガスやホルムアルデヒドガスを発生することがなく、撥水性を有し、疎水性で吸湿せず、その樹脂皮膜は柔軟で亀裂し難い。
このため、シリコーン系樹脂皮膜によって囲まれたポリリン酸系難燃剤の粒子は、樹脂組成物の中にあって吸湿、凝集して沈降分離することなく、長期安定した分散状態に保たれ、使用時の攪拌過程でシリコーン樹脂皮膜が亀裂することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
シリコーン系樹脂は、ポリリン酸系難燃剤の粒子を被覆するために適用されるのであり、それを溶媒溶液に溶解したシリコーン樹脂溶液として調製することが望ましい。
それをシリコーン樹脂分散液として調製するときは、そのシリコーン樹脂粒子をポリリン酸系難燃剤の粒子よりも細かく、その粒径を3〜25μmにし、ポリリン酸系難燃剤の粒子の表面に付着し易くする。
シリコーン系樹脂の適用量は、ポリリン酸系難燃剤100重量部に対して2〜20重量となる程度でよい。
【0016】
シリコーン系樹脂は、一般式(Rn SiO(4-n)/2m (但し、Rは、メチル基、アルキル基、フッ素化アルキル基、フェニル基、ビニル基などの置換基,n=1〜3,m≧2)で表示される。
シリコーン系樹脂としては、組成式(CH33 SiO1/2 で表示される一官能性モノマーユニットと、組成式SiO2 で表示される四官能性モノマーユニットから成り、組成式(CH3 )SiO3/2 で表示される三官能性モノマーユニットの硬いレジン状のシリコーン樹脂が、強靱性や耐熱性の点でも推奨される。
組成式(CH33 SiO1/2 で表示される一官能性モノマーユニット単独のシリコーン樹脂や、組成式(CH32 SiOで表示される二官能性モノマーユニットのシリコーン樹脂、或いは、それらの一官能性モノマーユニットと二官能性モノマーユニットを組み合わせた組合シリコーン樹脂等のオイル状やガム状を成すシリコーン樹脂は好ましくない。
【0017】
シリコーン系樹脂によってポリリン酸系難燃剤の粒子を効果的に被覆するためには、前記特許文献1・2が示すように、ポリリン酸系難燃剤の製造時の原料にシリコーン系樹脂成分を共存させ、或いは、前記特許文献3が示すように、シリコーン系樹脂溶液やシリコーン系樹脂分散液とポリリン酸系難燃剤の粉末や分散液を混合・攪拌し、加熱処理するとよい。
シリコーン系樹脂溶液やシリコーン系樹脂分散液の溶媒としては、アセトン、酢酸エチル、メチルアルコール等の親水性有機溶剤を用いるとよい。
又、シリコーン系樹脂によってポリリン酸系難燃剤の粒子を被覆するためには、平均粒径3〜25μmのシリコーン系樹脂粒子の分散液とポリリン酸系難燃剤粉末分散液との混合液や、シリコーン系樹脂微粉末をトルエンその他の有機溶剤に溶解したシリコーン系樹脂溶液にポリリン酸系難燃剤の微粉末を混合した混合液を乾燥して得られるシリコーン系樹脂とポリリン酸系難燃剤との混合物を、ボールミルやジェットミル等の粉砕装置によって粉砕して微粉末にしてもよい。
シリコーン系樹脂は、紫外線吸収剤、抗酸化剤、着色顔料等との混合組成物として調製することが出来る。
ポリリン酸系難燃剤の粒子の表面を被覆するシリコーン系樹脂皮膜の硬質化のためには、シリコーン系樹脂組成物にポリメチルアクリレート樹脂を混用するとよい。
【0018】
ポリリン酸系難燃剤の粒子とシリコーン系樹脂に成るシリコーン付加ポリリン酸系難燃剤は、バインダー樹脂に配合して使用される。
バインダー樹脂には、アクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン系樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル系樹脂エマルジョン等の樹脂エマルジョンが使用される。
シリコーン付加ポリリン酸系難燃剤を繊維製品の難燃化処理に適用する場合、アクリル系樹脂エマルジョンをバインダー樹脂に適用することが推奨される。
当然のことながら、本発明の目的からして、バインダー樹脂には、ハロゲン成分やホルムアルデヒド成分を含有しないものを使用する。
【0019】
ポリリン酸系難燃剤としては、重量平均重合度20〜2000のポリリン酸アンモニウムが推奨される。
重量平均重合度が20未満のものは水溶性を示し、重量平均重合度が2000を越えるものは、重合時間が長く、コスト高になるので実用性を欠く。
【0020】
シリコーン付加ポリリン酸系難燃剤によって難燃化処理される繊維製品は、繊維糸条、綱、紐、織物、編物、不織布、織パイル布帛、編パイル布帛、タフテッドパイル布帛、起毛布帛、静電植毛布帛、繊維ウエブ、不織布状繊維積層クッション材等の繊維を主材とするものであれば、その繊維の絡合構造や用途は格別限定されない。
椅子張地、天井・壁張地、カーペット(繊維床材、敷物)等の片面だけが肌身に触れて使用される繊維製品、特に、織パイル布帛、編パイル布帛、タフテッドパイル布帛、起毛布帛、静電植毛布帛等の厚手の布帛では、表面の風合いを確保する上でも、直接肌身に触れることのない裏面にシリコーン付加ポリリン酸系難燃剤を付与するとよい。
【実施例】
【0021】
シリコーン系樹脂エマルジョン(樹脂成分;オルガノポリシロキサン20重量%、明成化学工業株式会社製品名;KR−50)(実施例1)と、ウレタン系樹脂エマルジョン(樹脂成分;ポリウレタン30重量%、大日本インキ化学工業株式会社製品名;ハイドランHW−930)(比較例1)と、エチレン・酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(樹脂成分;エチレン・酢酸ビニル45重量%、伸葉株式会社製品名;YS−912)(比較例2)と、アクリル系樹脂エマルジョン(樹脂成分;アクリル樹脂50重量%、新中村化学工業株式会社製品名;ニューコートFH−45)(比較例3)と、触媒(住友ケムテックス株式会社製品名;スミテックスアクセラレーターACX)を配合したエポキシ系樹脂エマルジョン(樹脂成分;エポキシ樹脂75重量%、住友ケムテックス株式会社製品名;スミテックスレジンM−3)(比較例4)の各樹脂エマルジョン100重量部に、水を200重量部加え、80℃に加熱して20分間攪拌し、その各樹脂エマルジョンを主成分とする5種類の樹脂溶液を調製する。
次いで、その各樹脂溶液に平均粒径8μmのポリリン酸アンモニウム粒子を、それらの各樹脂溶液の含有する樹脂分に対するポリリン酸アンモニウム粒子の配合比率が等しくなるように配合して5種類のポリリン酸アンモニウム粒子分散溶液を調製する。
又、上記5種類の樹脂溶液とは別に、実施例2として、シリコーン系樹脂(オルガノポリシロキサン、信越化学工業株式会社製品)6重量部とトルエン100重量部とからなる樹脂溶解溶液に、平均粒径8μmのポリリン酸アンモニウム粒子(100重量部)を、その配合比率が上記の5種類のポリリン酸アンモニウム粒子分散溶液の含有する樹脂分に対するポリリン酸アンモニウム粒子の配合比率と等しくなるように、配合してポリリン酸アンモニウム粒子分散溶液を調製する。
更に、実施例3として、シリコーン系樹脂(オルガノポリシロキサン、信越化学工業株式会社製品)6重量部とトルエン100重量部とからなる樹脂溶解溶液に、平均粒径20μmのポリリン酸アンモニウム粒子(100重量部)を、実施例2と同様に、その配合比率が上記の5種類のポリリン酸アンモニウム粒子分散溶液の含有する樹脂分に対するポリリン酸アンモニウム粒子の配合比率と等しくなるように、配合してポリリン酸アンモニウム粒子分散溶液を調製する。
【0022】
上記合計7種類のポリリン酸アンモニウム粒子分散溶液を加熱して溶媒(水・トルエン)を除去し、樹脂で被覆されて乾燥した7種類の樹脂被覆ポリリン酸アンモニウム粒子を調製し、(1) それらの合計7種類の乾燥した樹脂被覆ポリリン酸アンモニウム粒子の各100重量部と、樹脂に被覆されないブランクの未処理ポリリン酸アンモニウム粒子(比較例5)100重量部に、それぞれ水(60℃)100重量部を加えて1分間攪拌して調製された樹脂被覆ポリリン酸アンモニウム粒子と未処理ポリリン酸アンモニウム粒子の加湿粉末のヌメリ感と、(2) それらの合計7種類の樹脂被覆ポリリン酸アンモニウム粒子と未処理ポリリン酸アンモニウム粒子をそれぞれ個別に臭い袋(近江オドエァーサービス株式会社製)に5gf装填して密封し、その臭い袋に空気を2000ml(cc)注入して80℃にて2時間加熱して発生するホルムアルデヒドの濃度をガステック検知管(株式会社ガステック製品名;ホルムアルデヒド検知管No.91L)によって測定すると共に、(3) それらの合計7種類の樹脂被覆ポリリン酸アンモニウム粒子と未処理ポリリン酸アンモニウム粒子の各20重量部をアクリル系樹脂エマルジョン(樹脂成分;アクリル樹脂50重量%、新中村化学工業株式会社製品名;ニューコートFH−45)に混合した分散溶液中のポリリン酸アンモニウム粒子の分散状態を調べ、下記〔表1〕の上段に示す結果を得た。
【0023】
下記〔表1〕の上段に示すポリリン酸アンモニウム粒子に関するデータにおいて、
(1) ホルムアルデヒドの発生の有無については、ガステック検知管によってホルムアルデヒドの濃度が検出されない場合は「○」と表示し、ホルムアルデヒドの濃度が検出された場合は「×」と表示して検出濃度(単位;ppm)を付記している。
(2) ヌメリ感については、ポリリン酸アンモニウム粒子を摘んだ手が滑らない場合は「◎」、微かに手が滑る場合は「○」、稍々手が滑る場合は「△」、手が滑る場合は「×」と表示している。
【0024】
上記7種類の樹脂被覆ポリリン酸アンモニウム粒子と未処理ポリリン酸アンモニウム粒子(乾燥粉末)各25重量部とアクリル系樹脂エマルジョン(樹脂成分;アクリル樹脂50重量%、新中村化学工業株式会社製品名;ニューコートFH−45)100重量部と増粘剤(サンノプコ株式会社製品名;高分子シックナー612)2重量部とによって合計8種類の難燃性樹脂組成物(粘度7000mPa・s)を調製し、その調製直後のポリリン酸アンモニウム粒子の分散状態と、24時間放置後のポリリン酸アンモニウム粒子の分散状態と、難燃性樹脂組成物の粘度の経時変化を調べ、下記〔表1〕の中段に示す結果を得た。
【0025】
下記〔表1〕の中段に示す難燃性樹脂組成物に関するデータにおいて、
(1) 分散状態については、ポリリン酸アンモニウム粒子が分離することなく分散している場合は「○」、一時的に分散状態になるが次第に分離している場合は「△」、殆ど分散状態にならず混合し得ない場合は「×」、ポリリン酸アンモニウム粒子が分離し沈澱している場合は「▲」と表示している。
(2) 粘度変化については、調製した難燃性樹脂組成物の6時間後の粘度が変わらない場合は「○」、増粘している場合は「△」、ポリリン酸アンモニウム粒子が分離し沈澱して変化した難燃性樹脂組成物の粘度を調べることが出来ない場合は「×」と表示している。
【0026】
上記8種類の難燃性樹脂組成物(粘度7000mPa・s)を、それぞれパイル糸と地糸の双方にポリエステル繊維を使用したパイル目付450gf/m2 のパイル経編地の裏面に塗布し、150℃にて2分間加熱乾燥して難燃性パイル経編地を試作し、下記〔表1〕の下段に示す結果を得た。
【0027】
下記〔表1〕の下段に示す難燃性パイル経編地に関するデータにおいて、
(1) 難燃性能については、米国自動車安全基準(FMVSS−302)に準拠して水平に支持した難燃性パイル経編地の燃焼速度を測定し、火炎が標線に達しない場合に「難燃」と判定する。
(2) ホルムアルデヒドの発生の有無については、難燃性パイル経編地を10cm角に裁断して臭い袋(近江オドエァーサービス株式会社製)に装填して密封し、その臭い袋に空気を2000ml(cc)注入して80℃にて1時間加熱して発生するホルムアルデヒドの濃度をガステック検知管(株式会社ガステック製品名;ホルムアルデヒド検知管No.91L)によって測定し、ガステック検知管によってホルムアルデヒドの濃度が検出されない場合は「○」と表示し、ホルムアルデヒドの濃度が検出された場合は「×」と表示して検出濃度(単位;ppm)を付記している。
(3) ヌメリ感については、難燃性パイル経編地を20cm角に裁断して2枚の試料片を調製し、その1枚の試料片については表面(パイル面)の中央部に、他の1枚の試料片については裏面の中央部に、それぞれ60℃の温水を5cc付与し、その付与直後と5分後に指で触れ、ヌメリが感じられない場合は◎、微かにヌメリが感じられる場合は「○」、稍々ヌメリが感じられる場合は「△」、ハッキリとヌメリが感じられる場合は「×」と表示している。
【0028】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリリン酸化合物とシリコーン系樹脂との複合粒子に成るポリリン酸系難燃剤を、液中に要すれば助剤を用いてまたは直接樹脂に配合して成る難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリリン酸系難燃剤がポリリン酸化合物の粒子の周りにシリコーン系樹脂が固着している前掲請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリリン酸化合物の重量平均重合度が20〜2000である前掲請求項1と請求項2の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリリン酸化合物がポリリン酸アンモニウムである前掲請求項1と請求項2と請求項3の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
シリコーン系樹脂が四官能性モノマーユニットまたは三官能性モノマーユニットを有している前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂がエラストマー樹脂である前掲請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
エラストマー樹脂がアクリル系樹脂である前掲請求項1と請求項2の何れかに記載の難燃性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−63125(P2006−63125A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244892(P2004−244892)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物 (104)
【Fターム(参考)】