説明

難燃性熱可塑性樹脂組成物

少なくとも植物由来樹脂(A)及び難燃化剤(B)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、前記難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合植物由来樹脂(A)の質量%をW1、前記難燃化剤(B)の質量%をX1としたとき
30≦W1<55.5
44.5<X1≦70
であり、
かつ前記難燃化剤(B)は90質量%以上が、アルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下である金属水和物よりなることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来樹脂を含有し、難燃性や実用物性に優れる難燃性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油原料の代替として、近年、植物由来樹脂が注目され、各種の植物由来樹脂を利用した樹脂組成物の実用化検討が盛んに行われている。植物由来樹脂を利用した樹脂組成物の一例として、最近では、ポリ乳酸をはじめとする生分解性樹脂が特に注目され、各種用途で製品化されつつある。前記の生分解性樹脂の用途としては、容器包装や農業用フィルム等のように使用期間が短く、廃棄を前提とした用途や、家電製品やOA機器のハウジング及び自動車用部品などのように、初期の特性を長期間保持できるような高機能用途まで、実に多岐にわたっている。
【0003】
しかしながらこれらの植物由来樹脂は、一般的に燃えやすいため、人々の安全を脅かす災害原因ともなるので、家電製品やOA機器のハウジングや自動車部品などのように、高度な難燃性を要求される用途に使用する場合には、難燃化対策が必要である。特に、電気製品の筐体に、植物由来樹脂からなる樹脂組成物を使用する場合には、アメリカのUL規格をはじめとする難燃規格を満足する必要がある。しかし、既存の植物由来樹脂からなる樹脂組成物では、前記の難燃規格を満足することはできなかった。
【0004】
これに対して、一般的な方法として、難燃化効率の高い臭素化合物などのハロゲン系難燃剤を樹脂に配合して難燃化する方法が考えられる。しかし、ポリエステル系樹脂の代表であるポリカーボネート樹脂にハロゲン系難燃剤を添加した場合には、再利用を目的として繰り返し溶融混練すると、樹脂が劣化して、難燃性や耐衝撃性などの物性が低下する問題があった。したがって、植物由来樹脂の代表で、エステル結合を有するポリ乳酸樹脂に、ハロゲン系難燃剤を使用すると、前記ポリカーボネート樹脂と同様に、繰り返し溶融混練したときに、物性が低下することが懸念された。
【0005】
一方、ポリ乳酸樹脂に、リン系化合物、水酸化物系化合物(金属水和物とも呼ばれ、水酸化アルミニウムが含まれる。)及びシリカ系化合物から選ばれる少なくとも一種の難燃系添加剤を使用した生分解性樹脂組成物が、特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1には、難燃系添加剤としてリン系化合物が例示されているが、一般的に、リン系化合物は樹脂を可塑化しやすく、樹脂の流動性の向上には極めて効果的である。その反面、この可塑化の影響で、リン系化合物を含有する樹脂組成物の耐熱性(特に荷重たわみ温度〈HDT〉を指す。)や機械特性が低下する場合があった。
【特許文献1】特開2003−192925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的課題は、ハロゲン系の難燃剤を使用しないで、難燃性や実用物性に優れる、植物由来樹脂を含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上から、本発明者らは、ハロゲン系の難燃剤を使用しないで、難燃性や実用物性に優れる、植物由来樹脂を含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物を開発すべく鋭意検討を重ねた。
【0009】
まず、樹脂に、難燃剤として水酸化アルミニウムをはじめとする金属水和物を加熱混練して、樹脂との混合物(以下、樹脂組成物と呼ぶ。)を得る場合、なかでもエステル結合を有する樹脂の場合には、金属水和物中のアルカリ金属系物質(例えば、Na2Oが挙げられる。)の影響で、樹脂が加水分解して分子量が低下する。このように樹脂の分子量が低下すると、樹脂組成物の流動性は向上するものの、難燃性などの主要物性が低下してしまう。特に、ポリ乳酸樹脂及びこれの類縁体のポリエステル系樹脂では、微量のアルカリ金属系物質の影響で、混練時や使用時に容易に加水分解して分子量が低下し、その影響で、難燃性、耐熱性及び機械特性などの実用物性が低下する。すなわち、特許文献1に記載があるような水酸化物系化合物(金属水和物ともいえる。)を使用すると、ポリ乳酸樹脂の分子量が低下して、十分な難燃性や実用物性が得られないので、長期にわたって安定した実用物性が要求される、OA機器の筐体等の用途への適用は困難であった。
【0010】
また、特許文献1には、水酸化物系化合物(金属水和物とも呼ぶ。)として、純度99.5質量%以上の水酸化アルミニウムを使用した例が開示されている。特許文献1の金属水和物中に含まれる不純物の総量は0.5質量%であり、不純物として、Fe2O3、SiO2、Na2Oなどが挙げられている。しかし、特許文献1では、ポリ乳酸樹脂に代表されるポリエステル系樹脂の加水分解に最も大きな影響を及ぼす、アルカリ金属系物質(例えば、Na2Oも含まれる。)の不純物の含有量に関する規定が一切なされていない。加えて、水酸化アルミニウムを製造する際には、苛性ソーダ(NaOHを指す。)を必ず使用するので、金属水和物中に含まれるアルカリ金属系物質(例えばNa2Oに換算できる。)の割合が最も多く、この問題が顕著である。
【0011】
以上を踏まえて、本発明では、植物由来樹脂(分子構造中にエステル結合を有するポリ乳酸樹脂を含む。)の難燃化に、金属水和物を利用する場合に、アルカリ金属系物質を一定量以下(特に0.2質量%以下を指す。)に低減した、特殊な金属水和物を使用することで、優れた難燃性や、実用物性(耐加水分解性も含む。)を達成できることを見出した。このような、アルカリ金属系物質の割合が0.2質量%以下となるような金属水和物は、水洗を多数回行うなどの処理をして、意図的に濃度調整することで得ることができる。
【0012】
さらに、植物由来樹脂を高度に難燃化するには、この特殊な金属水和物だけでは、多量の添加が必要であり、樹脂組成物の流動性が低下する場合がある。したがって、この樹脂組成物を薄肉成形材料に適用するには、流動性を一層向上させる必要があった。これに対して、芳香環を有する化合物として、フェノール類、シリコーン化合物、ホウ素系化合物のうち少なくとも一つを添加することで、アルカリ金属系物質の含有量が少ない水酸化アルミニウムの使用量を低減化して、高度な難燃性に加えて、良好な流動性を達成できる、特異的な効果が得られることをさらに見出した。さらに、これらの芳香環を有する化合物に加えて、粘土鉱物等の無機系結晶核剤を添加すると、樹脂の結晶化を促進できるだけでなく、さらに大幅に難燃性を向上できることも見出した。
【0013】
即ち、本発明は、以下の難燃性熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0014】
本第1発明に係る難燃性熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも植物由来樹脂(A)及び難燃化剤(B)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、
前記難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合は植物由来樹脂(A)の質量%をW1、前記難燃化剤(B)の質量%をX1としたとき
30≦W1<55.5
44.5<X1≦70
であり、
かつ前記難燃剤(B)は90質量%以上が、アルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下である金属水和物よりなることを特徴とする。
【0015】
本第2発明に係る難燃性熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも植物由来樹脂(A)、難燃化剤(B)、及び芳香環を有する化合物(C)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、
前記難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合は植物由来樹脂(A)の質量%をW2、前記難燃化剤(B)の質量%をX2、前記芳香環を有する化合物(C)の質量%をYとしたとき
25≦W2<55.5
39.5≦X2≦70
0.5≦Y≦20
であり、
かつ前記難燃剤(B)は90質量%以上が、アルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下である金属水和物よりなることを特徴とする。
【0016】
本第3発明に係る難燃性熱可塑性樹脂組成物は、少なくとも植物由来樹脂(A)、難燃化剤(B)、芳香環を有する化合物(C)、及び結晶核剤(D)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、前記難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合は植物由来樹脂(A)の質量%をW3、前記難燃化剤(B)の質量%をX3、前記芳香環を有する化合物(C)の質量%をY、前記結晶核剤(D)の質量%をZとしたとき
25≦W3<55.5
29.5<X3≦70
0.5≦Y≦20
0.05<Z≦20
であり、
かつ前記難燃剤(B)は90質量%以上が、アルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下である金属水和物よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上示したように、本発明は、ハロゲン系の難燃剤を使用しないで、難燃性や実用物性に優れる、植物由来樹脂を含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物を実現できる。
【0018】
すなわち、本発明は、まず、難燃化剤としてアルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下であることを特徴とする金属水和物を使用することで、難燃性の改良に特異的な効果を得るものである。さらに、芳香環を有する化合物を添加することで、難燃性及び流動性の改良に同時に特異的な効果を得るものである。加えて、これらの芳香環を有する化合物と結晶核剤を併用して添加することで、一層の難燃性改良効果を得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】例1から3及び、比較例1及び2におけるアルカリ金属系物質の濃度とUL94V規格の合計残炎時間の関係を示す図である。
【図2】例1から3及び、比較例1及び2におけるアルカリ金属系物質の濃度と数平均分子量の関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明についてさらに詳細に説明する。
【0021】
本発明は、少なくとも植物由来樹脂(A)及び難燃化剤(B)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物であることを特徴とする。
【0022】
本発明における、植物由来樹脂(A)としては、植物に由来するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、トウモロコシや芋などに含まれる糖質を出発原料として得られる、ポリ乳酸やコハク酸を使用することができる。コハク酸を基にした植物由来樹脂としては、ポリブチレンサクシネートなどのエステル類がある。また、澱粉、アミロース、セルロース、セルロースエステル、キチン、キトサン、ゲランガム、カルボキシル基含有セルロース、カルボキシル基含有デンプン、ペクチン酸、アルギン酸などの多糖類なども植物由来樹脂である。
【0023】
また、微生物により合成されるヒドロキシブチレート及び/またはヒドロキシバリレートの重合体であるポリベータヒドロキシアルカノエート(ゼネカ社製、商品名:バイオポール等)などは、植物由来ではないが、石油資源を必要としない点で、植物由来樹脂と同様の意義を持つため使用することが出来る。
【0024】
リグニンは、木材中に20〜30%含有されるコニフェリルアルコール及びシナピルアルコールの脱水素重合体で、これを変成したものも植物由来樹脂である。即ち、リグニン、ヘミセルロース、セルロース等の植物原料を使用した熱硬化性樹脂も使用することもできる。
【0025】
以上の様な植物由来樹脂の中でも、人工合成した生分解性オリゴマー及びポリマー、人工合成した生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体、天然合成した生分解性オリゴマー及びポリマーの変性体が、分子間の結合力が適度であるため熱可塑性に優れ、溶融時の粘度が著しく上昇することは無く、良好な成形加工性を有するため好ましい。なかでも、結晶性を有するポリエステル類及びポリエステル類の変性体が好ましく、脂肪族ポリエステル類及び脂肪族ポリエステル類の変性体が更に好ましい。また、ポリアミノ酸類及びポリアミノ酸類の変性体が好ましく、脂肪族ポリアミノ酸類及び脂肪族ポリアミノ酸類の変性体が更に好ましい。また、ポリオール類及びポリオール類の変性体が好ましく、脂肪族ポリオール類及び脂肪族ポリオール類の変性体が更に好ましい。
【0026】
また、石油由来の樹脂も、植物由来樹脂に混合することが可能である。石油由来の樹脂として、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シアネート系樹脂、イソシアネート系樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化型ポリイミド、熱硬化型ポリアミド、スチリルピリジン系樹脂、ニトリル末端型樹脂、付加硬化型キノキサリン、付加硬化型ポリキノキサリン樹脂などの熱硬化性樹脂と、前記植物由来樹脂とのアロイが挙げられる。熱硬化性樹脂を使用する場合は、硬化反応に必要な硬化剤や硬化促進剤を使用できる。
【0027】
また、本第1発明に係る難燃性熱可塑性樹脂組成物(すなわち、少なくとも植物由来樹脂(A)及び難燃化剤(B)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物を指す。)の総量に占める、前記難燃化剤(B)の重量割合をX1とした場合に、前記X1が44.5質量%<X1≦70質量%の範囲であると、難燃性と成形性が良好なので特に好ましい。前記X1が44.5質量%以下だと難燃性が不十分な場合がある。前記X1が70質量%を超えると、流動性が不十分で、高度な成形性が要求される薄肉成形材料への適用が困難になる場合がある。
【0028】
また、本第2発明に係る難燃性熱可塑性樹脂組成物(すなわち、少なくとも植物由来樹脂(A)、難燃化剤(B)、及び芳香環を有する化合物(C)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物を指す。)の総量に占める、前記難燃化剤(B)の重量割合をX2とした場合に、前記X2が39.5質量%≦X2≦70質量%の範囲であると、難燃性と成形性が良好なので特に好ましい。前記X2が39.5質量%未満だと難燃性が不十分な場合がある。前記X2が70質量%を超えると、流動性が不十分で、高度な成形性が要求される薄肉成形材料への適用が困難になる場合がある。
【0029】
また、本第3発明に係る難燃性熱可塑性樹脂組成物(すなわち、少なくとも植物由来樹脂(A)、難燃化剤(B)、芳香環を有する化合物(C)、及び結晶核剤(D)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物を指す。)の総量に占める、前記難燃化剤(B)の重量割合をX3とした場合に、前記X3が29.5質量%<X2≦70質量%の範囲であると、難燃性と成形性が良好なので特に好ましい。前記X3が29.5質量%以下だと難燃性が不十分な場合がある。前記X3が70質量%を超えると、流動性が不十分で、高度な成形性が要求される薄肉成形材料への適用が困難になる場合がある。
【0030】
本発明における難燃化剤(B)の90質量%以上が、アルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下である金属水和物であると、エステル結合を有する植物由来樹脂(たとえば、ポリ乳酸樹脂に代表される。)と難燃化剤(B)を併用する場合に、植物由来樹脂の分子量低下が少なく(耐加水分解性が良好である。)、難燃性に優れるので特に好ましい。
【0031】
このような金属水和物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム、水和石膏、水酸化カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂、カオリンクレー及び炭酸カルシウムなどの金属水和物、表面をエポキシ樹脂やフェノール樹脂をはじめとする各種有機物で表面処理した金属水和物、金属を固溶化させた金属水和物が好ましい。さらに、これらのうち、水酸化アルミニウムは吸熱効果が高く、難燃性に優れるので特に好ましい。
【0032】
さらに、本発明において、金属水和物の50質量%粒径が0.5μm以上で20μm以下の範囲であると、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に含まれる植物由来樹脂中での分散性が良好で、難燃性や機械特性の向上効果に優れるためより好ましい。
【0033】
加えて、金属水和物の50質量%粒径を0.5μm以上とすると、これを含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物(植物由来樹脂と他の添加剤からなる本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を指す。)の粘度が上昇して成形性が低下してしまうことがない。さらに、粘度上昇に起因して、混練時や成形時のせん断力が増加する影響で、ドリップ防止剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン〈PTFE〉などを指す。)や、機械特性(特に、耐衝撃性が上げられる。)の向上効果が期待できる有機質や無機質の繊維状物質が劣化することもなく、十分な難燃性や機械特性が得られる。
【0034】
加えて、金属水和物の50質量%粒径を20μm以下とすると、これを含有する難燃性熱可塑性樹脂組成物の表面性状も優れ、表面に凹凸が発生して意匠性が低下することもない。
【0035】
また、本発明における芳香環を有する化合物(C)としては、本発明における植物由来樹脂(A)と併用して混練や成形をする際に、前記植物由来樹脂(A)よりも溶融粘度が低い化合物であれば特に限定されるものではないが、耐熱分解性に優れ、炭化成分(チャーとも呼ぶ。)を形成しやすい、フェノール類、シリコーン化合物、ホウ素系化合物などが、難燃性と流動性の向上の点から特に好ましい。
【0036】
すなわち、前記フェノール類としては、樹脂の混練温度や成形温度で揮発したり、分解したりしなければ、特に限定されるものではなく、一般的にエポキシ樹脂用の硬化剤に使用されているフェノール樹脂が利用できる。これらのフェノール樹脂を例示すると、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールキシレンアラルキル型樹脂、フェノールビフェニレンアラルキル型樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、ビフェニル異性体のジヒドロキシエーテル型フェノール樹脂、ナフタレンジオール型フェノール樹脂、フェノールジフェニルエーテルアラルキル型樹脂、ナフタレン含有ノボラック型樹脂、アントラセン含有型ノボラック樹脂、フルオレン含有ノボラック型樹脂、ビスフェノールフルオレン含有ノボラック型樹脂、ビスフェノールF含有ノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノールA含有ノボラック型フェノール樹脂、フェノールビフェニレントリアジン型樹脂、フェノールキシリレントリアジン型樹脂、フェノールトリアジン型樹脂、トリスフェニロールエタン型樹脂、テトラフェニロールエタン型樹脂、ポリフェノール型樹脂、芳香族エステル型フェノール樹脂、環状脂肪族エステル含有フェノール樹脂、エーテルエステル型フェノール樹脂及びフェノキシ樹脂などが挙げられる。また、その他のフェノール類として、ビフェノール、キシレノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、カテコールやカテコール樹脂が挙げられる。さらに、カテコールと芳香族類の誘導体を共重合させて得られる、カテコールビフェニレンアラルキル樹脂やカテコールキシレンアラルキル樹脂なども使用できる。加えて、リグニンやその類縁体(例えばリグノフェノール類が挙げられる。)を使用しても良い。
【0037】
ただし、フェノール類は酸化されやすいので、意匠性が要求される用途では、一般的に、酸化防止剤として使用されている化合物と併用するとより好ましい。また、フェノール類の構造中のフェノール性水酸基をグリシジル化またはエチレンオキサイド化した化合物は、フェノール樹脂が着色する原因であるキノン構造に変化しないので、この化合物を含有する本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、意匠性に特に優れる。
【0038】
また、シリコーン化合物としては、芳香環を含有するオルガノシランであって、樹脂の混練温度や成形温度で揮発したり、分解したりしなければ、分岐状でも直鎖状でもよく、特に構造は限定されない。これらのうち、分岐構造のシリコーン化合物としては、式RSiO1.5で示される単位(T単位)を含むものであることが好ましい。さらに、式SiO2.0で示される単位(Q単位)を含有しても良い。さらに前記シリコーン化合物の分岐構造が、式RSiO1.5で示される単位(T単位)、式R2SiO1.0で示される単位(D単位)、式R3SiO0.5で示される単位(M単位)から構成されていると難燃性改良の点で特に好ましい。このような構造のものであれば、難燃性を一層向上することができる。また、直鎖構造のシリコーン化合物は、式R2SiO1.0で示される単位(D単位)、式R3SiO0.5で示される単位(M単位)から構成されるものを指す。さらに、このようなシリコーン化合物は、難燃性と流動性の向上にくわえて、耐衝撃性の改良にも効果的である。たとえば、このようなシリコーン化合物として、下記式のような構造のものが挙げられる。
【0039】
【化1】

【0040】
なお、上記式はシリコーン化合物の構造の一例を示すことを意図したものであり、特に上記の構造に限定されるものではない。なお、上記式中の各々のRa、Rb及びRcは、それぞれ同じであっても異なっていても良く、芳香環を有する置換基を必須とし、この他に、水素、水酸基、炭素数1乃至5のアルコキシル基及びアルキル基から選ばれる置換基を含有してもよい。また、mは好ましくは0以上20以下の整数であり、nは好ましくは0以上29以下の整数である。さらに、芳香環を有する置換基の含有量が該シリコーン化合物に含まれる全置換基に対し50モル%以上であるとより好ましい。また、シリコーン化合物として、シリコーン化合物の混合物を用いる場合は、該シリコーン化合物の混合物に含まれる芳香環を有する置換基の含有量が、該シリコーン化合物の混合物に含まれる全置換基に対し50モル%以上であるとより好ましい。すなわち、芳香族類の含有量が50モル%以上であると、難燃性が向上する。また、反応性が低いシリコーン化合物が好ましい。この理由の詳細は不明であるが、反応性の低いシリコーン化合物を植物由来樹脂と併用すると、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物について、粘度の上昇がなく、流動性の低下を防ぐことができるからであると考える。また、シリコーン化合物の分子量が500以上で5000以下の範囲であるとより好ましい。すなわち、前記の分子量を500以上とすると、シリコーン化合物自体が、樹脂の混練温度や成形温度で揮発したり分解したりすることがない。また、前記の分子量を5000以下とすると、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の流動性が良好である。
【0041】
また、ホウ素系化合物としては、芳香環を含有するホウ酸エステルが特に好ましい。ホウ酸エステルとしては、樹脂の混練温度や成形温度で揮発したり、分解したりしなければ、特に構造は限定されない。上記の芳香環を含有するホウ酸エステルが、フェノール性水酸基やアミノ基などをはじめとする極性基を含有しても良い。例えば、下記のようなホウ酸エステル化合物が挙げられる。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

上記式においてnは、好ましくは1以上10以下の整数である。
【0046】
なお、上記式はホウ酸エステル化合物の構造の一例を示すことを意図したものであり、特にこれらに限定されるものではない。
【0047】
また、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める、上記の芳香環を有する化合物(C)の重量割合をYとした場合に、前記Yが0.5質量%以上20質量%以下の範囲であると、金属水和物の使用量を低減して、難燃性及び流動性に加えて、耐熱性も優れるのでより好ましい。なお、芳香環を有する化合物(C)の重量割合Yが0.5質量%未満であると、難燃性と流動性の向上効果が不十分なものとなる場合がある。また、芳香環を有する化合物(C)の重量割合Yが20質量%を超えると、耐熱性(特に荷重たわみ温度〈HDT〉を指す。)が低下する場合がある。
【0048】
上記の芳香環を有する化合物(C)を、植物由来樹脂(A)と難燃化剤(B)からなる本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物にさらに併用すると、流動性の向上効果だけでなく、優れた難燃性の改良効果があることを発見した。この効果の原因は必ずしも明らかではないが、前記の芳香環を有する化合物(C)を含有する本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に着火した際にできる炭化物(溶融した樹脂も含む。)が、前記の難燃化剤(B)の主成分である金属水和物(生成した金属酸化物を含む)と複合化して、特有の複合層(炭化物、溶融樹脂、金属水和物及びこの酸化物から成る複合物の層)を形成し、この複合層が、金属水和物の熱分解で発生する水分や、前記樹脂組成物中の樹脂成分の分解ガス(可燃性ガス含有)を含有して膨張し、着火の熱を効率的に遮断できる断熱層を形成した結果、難燃性が向上したと考える。さらに、この断熱層には、樹脂の分解ガスを捕捉して、分解ガスが外部に拡散して樹脂を延焼させることを抑制する効果もあったものと想定する。
【0049】
さらに、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に、結晶核剤(D)を添加するのが好ましい。結晶核剤(D)としては、無機系の結晶核剤または有機系の結晶核剤を使用することができる。無機系の結晶核剤としては、粘土鉱物、炭酸カルシウム、窒化硼素、合成珪酸、珪酸塩、シリカ、カーボンブラック、亜鉛華、塩基性炭酸マグネシウム、石英粉、ガラスファイバー、ガラス粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素等を挙げることが可能である。ここで、粘土鉱物とは、粘土の主成分として産する含水ケイ酸塩を指す。粘土鉱物の具体例としては、アロフェン、ヒシンゲル石、フィロケイ酸塩、パイロフィライト、タルク、ウンモ(マイカとも呼ぶ。)群、モンモリロン石群、バーミキュル石、リョクデイ石群、カオリン群、イノケイ酸塩、パリゴルスカイト群などが挙げられる。
【0050】
また、有機系の結晶核剤としては、(1)有機カルボン酸類、例示すると、オクチル酸、トルイル酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、テレフタル酸、テレフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸、イソフタル酸モノメチルエステル、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、コール酸等、(2)有機カルボン酸アルカリ(土類)金属塩、例示すると、上記有機カルボン酸のアルカリ(土類)金属塩等、(3)カルボキシル基の金属塩を有する高分子有機化合物、例示すると、ポリエチレンの酸化によって得られるカルボキシル基含有ポリエチレン、ポリプロピレンの酸化によって得られるカルボキシル基含有ポリプロピレン、エチレン、プロピレン、ブテン−1等のオレフィン類とアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、スチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、オレフィン類と無水マレイン酸との共重合体、スチレンと無水マレイン酸との共重合体等の金属塩等、(4)脂肪族カルボン酸アミド、例示すると、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N,N’−エチレンビス(ステアロアミド)、N,N’−メチレンビス(ステアロアミド)、メチロール・ステアロアミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N’−ジステアリルセバシン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、N−オレイルオレイン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ブチル−N’ステアリル尿素、N−プロピル−N’ステアリル酸尿素、N−アリル−N’ステアリル尿素、N−フェニル−N’ステアリル尿素、N−ステアリル−N’ステアリル尿素、ジメチトール油アミド、ジメチルラウリン酸アミド、ジメチルステアリン酸アミド等、N,N’−シクロヘキサンビス(ステアロアミド)、N―ラウロイルーL−グルタミン酸―α、γ―n−ブチルアミド等、(5)高分子有機化合物、例示すると、3,3−ジメチルブテン−1,3−メチルブテン−1,3−メチルペンテン−1,3−メチルヘキセン−1,3,5,5−トリメチルヘキセン−1などの炭素数5以上の3位分岐α−オレフィン、ならびにビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニルシクロアルカンの重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリグリコール酸、セルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート等、(6)リン酸または亜リン酸及の有機化合物またはその金属塩、例示すると、リン酸ジフェニル、亜リン酸ジフェニル、リン酸ビス(4−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸メチレン(2,4−tert−ブチルフェニル)ナトリウム等;(7)ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール誘導体、(8)コレステリルステアレート、コレステリロキシステアラミド等のコレステロール誘導体、(9)無水チオグリコール酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸アミド及びその金属塩等を挙げることが出来る。
【0051】
本発明に用いることができる植物由来樹脂のうち、ポリ乳酸樹脂に代表されるポリエステル系樹脂は、加水分解して分子量が低下する場合があるので、上記の結晶核剤の中でもポリエステル系樹脂の加水分解を促進しない中性物質からなる結晶核剤が特に好ましく用いられる。また、エステル交換反応によるポリエステル系樹脂の低分子量化を防ぐためには、カルボキシル基を有する結晶核剤よりもその誘導体であるエステルやアミド化合物の方が結晶核剤としては好ましく、同様に、ヒドロキシル基を有する結晶核剤よりもその誘導体であるエステルやエーテル化合物の方が結晶核剤としては好ましい。
【0052】
有機結晶核剤については、射出成形等において高温溶融状態で樹脂と相溶あるいは微分散し、金型内での成形冷却段階で析出あるいは相分離し、結晶核として作用する有機結晶核剤が好ましく用いられる。また、無機結晶核剤は、微粒子の無機物が樹脂中で高分散することにより結晶核として効率よく機能する。無機結晶核剤の表面を相溶化処理(相溶化作用を有する樹脂や化合物を用いた被覆処理、または、イオン交換処理やカップリング剤による表面処理等を指す。)することが好ましい。表面が相溶化処理された無機結晶核剤は、樹脂との相互作用が高められて分散性が向上し、核剤の凝集を防止することができる。
【0053】
また、ポリ乳酸樹脂などの植物由来樹脂に、結晶核剤(D)をあらかじめ分散させたマスターバッチを使用しても良い。なお、結晶核剤(D)を使用する場合には、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合をZとしたときに、Zが0.05質量%より多く20質量%以下であると、耐衝撃性が良好であるとともに、ポリ乳酸樹脂などのような結晶性樹脂の結晶化速度が上昇して、生産性を向上できるので特に好ましい。すなわち、結晶核剤(D)の重量割合Zを0.05質量%より多くすると、結晶化が速やかに進行し、生産速度が向上する。加えて、結晶核剤(D)の重量割合Zを20質量%以下とすると、特に無機系の結晶核剤を使用した場合に、無機系の結晶核剤を基点としたクラックの成長が抑えられ、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が向上する。
【0054】
また、上記の結晶核剤(D)のうち、タルク、マイカ及びカオリンをはじめとする各種の粘土鉱物は、着火した際に炭化物(チャーと表すことがある。)を形成しやすい前記の芳香環を有する化合物(C)と併用したときに、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に対して、極めて優れた難燃性の向上効果を発現することを発見した。この併用効果の原因も必ずしも明らかではないが、前記の芳香環を有する化合物(C)を含有する樹脂組成物に着火した際にできる炭化物(溶融した樹脂も含む。)と、前記の金属水和物(生成した金属酸化物を含む。)からなる複合層が、金属水和物の熱分解で発生する水分や、本樹脂組中の樹脂成分の分解ガス(可燃性ガス含有)を含有することで膨張して断熱層を形成する際、添加された前記の粘土鉱物が、この水分や分解ガスの組成物内部から外部への揮散を防止した結果、より効率的に複合層が膨張して断熱性が著しく高くなって、難燃性が大幅に向上したと考える。さらに、形成した断熱層は、樹脂の分解ガスの外部への揮散に対する抑制効果が極めて高いので、樹脂の延焼もより一層抑制されたものと想定する。
【0055】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に、ドリップ防止剤(E)を併用しても良い。ドリップ防止剤(E)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びアクリル変成したPTFE等の有機繊維が挙げられる。特にこれらのドリップ防止剤を使用する場合には、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合が、1質量%以下であることが好ましい。これらのドリップ防止剤の重量割合を1質量%以下とすると、ペレットを作成する際に造粒性が良好である。
【0056】
さらに、衝撃強度を向上させる手法として、高強度繊維(F)を使用することができる。高強度繊維(F)としては、アラミド繊維やナイロン繊維などのポリアミド繊維、ポリアリレート繊維やポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、超高強度ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維などが挙げられる。
【0057】
アラミド繊維やポリアリレート繊維は芳香族化合物であり、他の繊維に比べ耐熱性が高く、かつ高強度であること、淡色であることから樹脂に添加しても意匠性を損なわないこと、比重も低いことから、特に望ましい。
【0058】
また、高強度繊維(F)の形状は、繊維断面を円状ではなく、多角形、不定形あるいは凹凸のある形状のもので、アスペクト比が高いものや、繊維径の小さいものが、樹脂との接合面積が大きくなるため、繊維とマトリックスの脱結合効果が増大し、繊維の引き抜きによる衝撃緩和効果も増大するため、衝撃強度が向上する。また、繊維の表面に凹凸を形成したものや、繊維の両端部分を中心部より太くしたような一種のくさび形状を形成した繊維や、繊維の一部にくびれがあるもの、あるいは非直線状の縮れた形状の繊維を用いることにより、繊維の引き抜け時の摩擦が増大し、耐衝撃性が向上する。
【0059】
また、高強度繊維(F)には必要に応じて、基材となる樹脂との親和性または繊維間の絡み合いを高めるために、表面処理を施すことができる。表面処理方法としては、シラン系、チタネート系などのカップリング剤による処理、オゾンやプラズマ処理、さらには、アルキルリン酸エステル型の界面活性剤による処理などが有効である。しかしながら、これらに特に限定されるものでは無く、充填材の表面改質に通常使用できる処理方法が可能である。
【0060】
上記の高強度繊維(F)の平均繊維長が、1mm以上10mm以下の範囲であると、耐衝撃性の向上に特に有効である。高強度繊維(F)の平均繊維長を1mm以上とすると、繊維の引き抜けによるエネルギー吸収効果が高く、十分な耐衝撃性が得られる。加えて、高強度繊維(F)の平均繊維長を10mm以下とすると成形性が良好なので好ましい。また、高強度繊維(F)を使用する場合には、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める高強度繊維(F)の重量割合が10質量%以下になるようにすると、耐衝撃性や成形性が特に優れるので好ましい。
【0061】
また、上記の高強度繊維(F)のほかに、ケナフ、亜麻などの植物繊維や、ガラス繊維、カーボンファイバーなどの無機繊維も使用できる。これらの繊維は、平均繊維長が10mm以下のものが好ましい。本発明において、植物繊維とは、植物に由来する繊維をいい、具体例として、木材、ケナフ、竹、麻類などから得られる繊維を挙げることができる。また、これらの繊維は、平均繊維長が10mm以下のものが好ましい。また、これらの植物繊維を脱リグニンや脱ペクチンして得られるパルプ等は、熱による分解や変色といった劣化が少ないため特に好ましい。ケナフや竹は光合成速度が速く成長が速いので、二酸化炭素を多量に吸収できることから、二酸化炭素による地球温暖化、森林破壊という地球問題を同時に解決する手段の一つとしても優れている。また、高強度繊維(F)や、前記の植物繊維などの有機系繊維は、樹脂の結晶核剤として作用して、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐熱性(特に荷重たわみ温度〈HDT〉を指す。)を向上できる効果がある。
【0062】
また、耐衝撃性を改良する手法として、公知の柔軟成分を使用することができる。これらの柔軟成分として、特に植物由来の物質が好ましく、下記のような物質が挙げられる。ポリエステルセグメント、ポリエーテルセグメント及びポリヒドロキシカルボン酸セグメントからなる群から選ばれるポリマーブロックを有する共重合体、ポリ乳酸セグメント、芳香族ポリエステルセグメント及びポリアルキレンエーテルセグメントが互いに結合されてなるブロック共重合物、ポリ乳酸セグメントと、ポリカプロラクトンセグメントからなるブロック共重合物、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単位を主成分とする重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリカブロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペートなどの脂肪族ポリエステル、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ポリグリセリン酢酸エステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化亜麻仁油脂肪酸ブチル、アジピン酸系脂肪族ポリエステル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルリシノール酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アジピン酸ジアルキルエステル、アルキルフタリルアルキルグリコレートなどの可塑剤。
【0063】
また、植物由来樹脂が構造中にエステル結合を有する場合には、一般的に、加水分解しやすいので、公知の耐加水分解抑制剤を併用しても良い。前記の加水分解抑制剤としては、植物由来樹脂中の活性水素と反応性を有する化合物が使用できる。ここで、活性水素としては、植物由来樹脂中のカルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基などにおける水素が挙げられる。これらの活性水素と反応性を有する化合物としては、特許文献1に記載の、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物やオキサゾリン系化合物が適用可能である。また、脂肪族炭素鎖を有するカルボジイミド化合物も使用できる。しかしながら、特にこれらに限定されるものではなく、加水分解抑制剤として通常使用できる化合物の適用が可能である。
【0064】
さらに、本発明では、難燃助剤として、樹脂分の炭化を促進する化合物(たとえば、炭化促進触媒が挙げられる。)を使用することができる。このような化合物としては、例えば、モリブデン酸亜鉛やスズ酸亜鉛等の化合物、及びこれらの化合物を、例えば、タルク表面に被覆させたもの等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
くわえて、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物に、必要に応じて、そのほかの難燃剤を適宜配合しても良い。これらの難燃剤としては、窒素系難燃剤やリン系難燃剤が挙げられる。窒素系難燃剤としては、メラミンやイソシアヌル酸化合物などが挙げられる。リン系難燃剤としては、赤燐、燐酸化合物、有機リン化合物などが挙げられる。ただし、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物においては、上記難燃剤や他の難燃剤の添加量は少なくて済み、耐湿性、耐熱性、機械特性など、他の物性が低下するのを抑えることができる。また、上記の難燃助剤や他の難燃剤を、高強度繊維や植物由来の繊維にあらかじめ処理して使用しても良い。
【0066】
その他、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、無機フィラー、補強材、着色剤(酸化チタンなど)、安定剤(ラジカル補足剤、酸化防止剤など)、抗菌剤や防かび材などを併用できる。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、砂、粘土、鉱滓などを使用できる。補強材としては針状無機物などを使用できる。抗菌剤としては、銀イオン、銅イオン、これらを含有するゼオライトなどを使用できる。
【0067】
以上の様な本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、フィルム成形法、ブロー成形法、発泡成形法などの方法により、電化製品の筐体などの電気・電子機器用途、建材用途、自動車部品用途、日用品用途、医療用途、農業用途などの成形体に加工できる。
【0068】
本発明における難燃性熱可塑性樹脂組成物の各種配合成分の混合方法には、特に制限はなく、公知の混合機、たとえばタンブラー、リボンブレンダー、単軸や二軸の混練機等による混合や押出機、ロール等による溶融混合が挙げられる。
【0069】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物を成型する方法としては、特に制限はなく、公知の射出成型、射出・圧縮成型、圧縮成型法等、通常の電気・電子機器製品の製造に必要とされる成型方法を用いることができる。これらの溶融混合や成型時における温度については、基材となる樹脂の溶融温度以上でかつ植物繊維や植物由来樹脂が熱劣化しない範囲を設定することが可能である。
【実施例】
【0070】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0071】
まず、本発明例及び比較例で用いた原材料について説明する。下記表1または表2に示される、植物由来樹脂、金属水和物、芳香環を有する化合物、結晶核剤、ドリップ防止剤や高強度繊維、柔軟成分を用いた。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

なお、金属水和物(水酸化アルミニウム)中のアルカリ金属系物質の総量として、表1および表2では、Na2Oの総量を示した。
【0074】
次に、本発明例及び比較例における、難燃性、流動性、耐熱性、耐衝撃性や耐加水分解性の評価方法を示す。
【0075】
(1)樹脂組成物の混練
実施例(例と表すことがある。)と比較例に示した熱可塑性樹脂組成物用の各材料を、この組成物の温度が約190℃になるように設定した、混練機(二軸タイプを使用)内で、溶融混合して、射出成型用のペレットを作成した。
【0076】
(2)評価用サンプルの作成1(低温金型での成型)
100℃で7時間以上乾燥させたペレットを用いて、金型温度を25℃に設定して、射出成型機で板厚1.6mm及び3.2mmの成型体をそれぞれ作成した。次に、これらの成型体を100℃で4時間加熱して、樹脂分を結晶化させたのち、各種評価用サンプルとした。ちなみに、射出成型機のバレルの温度は190℃または200℃に設定した。
【0077】
(3)評価用サンプルの作成2(高温金型での成型)
100℃で7時間以上乾燥させたペレットを用いて、金型温度を110℃に設定して、射出成型機で板厚1.6mm及び3.2mmの成型体をそれぞれ作成し、各種評価用サンプルとした。ちなみに、射出成型機のバレルの温度は190℃または200℃に設定した。
【0078】
(4)難燃性の評価
上記の方法で成型したサンプル(板厚1.6mmまたは3.2mm)について、UL(Underwriter Laboratories)94規格の垂直燃焼試験を実施して、難燃性を評価した。
【0079】
難燃性の評価基準は表3に示した通りである。
【0080】
【表3】

なお、上記の分類以外の燃焼形態をとる場合は、NOTと分類した。ちなみに、難燃性が良好な順から悪い順に並べると、V−0、V−1、(V−2またはNOT)となる。
【0081】
(5)流動性の評価
(5−1)常温金型を使用した場合の流動性
金型温度を25℃、射出成型機のバレル温度を190℃または200℃、射出圧力を118MPa、射出速度を100mm/sに設定して、1mm板厚のスパイラルフロー評価用の成型体を射出成型した。この成型体の長さ(これがスパイラルフローである。)を測定し、流動性の指標とした。ちなみに、スパイラルフローが長い樹脂組成物ほど、流動性に優れているといえる。
(5−2)高温金型を使用した場合の流動性
金型温度を100℃、射出成型機のバレル温度を190℃、射出圧力を157MPa、射出速度を100mm/sにそれぞれ設定して、1mm厚のスパイラルフロー評価用の成型体を射出成型した。この成形体の長さを測定し、流動性の指標とした。
【0082】
(6)耐熱性の評価
(2)または(3)で成型したサンプルのうち、板厚3.2mmの成型体について、JIS
K 7191-2に準拠して、荷重たわみ温度(HDT)を測定した。測定条件は、荷重を1.8MPa、昇温速度を2℃/min、支点間距離を100mmとした。上記のHDTを耐熱性の指標とした。
【0083】
(7)耐衝撃性の評価
(3)で成型したサンプルを加工した試験片について、JIS K 7110付属書−1に準拠した試験(おもり2.75J、振り上げ角150°)を行って、アイゾッド衝撃値を算出し、耐衝撃性の指標とした。なお、ここで使用した試験片は、2号A型試験片に準拠した成型体で、ノッチ付(d=2.54mm、r=0.25mm)で、長さlが64mm、幅bが約3.2mm、厚さtが約10.3mmである。
【0084】
(8)耐加水分解性の評価
(1)で得られたペレットをクロロホルムに浸漬して溶解させた植物由来樹脂(たとえば、ポリ乳酸樹脂)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で、ポリスチレン換算の分子量を算出して、耐加水分解性の指標とした。ここでは、特に、金属水和物中のアルカリ金属系物質の濃度の違いによる、混練時の、植物由来樹脂の分子量低下への影響を比較する目的で、数平均分子量(Mn)に着目した。この数値が大きいほうが、分子量低下が少なく、耐加水分解性に優れているといえる。
【0085】
(例1)
植物由来樹脂(A)としてポリ乳酸樹脂1を50質量%、難燃化剤(B)として金属水和物である水酸化アルミニウム1を49.5質量%、ドリップ防止剤(E)としてPTFEを0.5質量%混合してなる樹脂組成物を、混練機を用いて溶融混合してペレットを作成した。なお、上記の樹脂組成物の温度が約190℃になるように、混練機の温度を設定した。
【0086】
次に、得られたペレットを、100℃で7時間以上、乾燥させた後、バレル温度を190℃に設定した射出成型機を使用して、各評価用サンプルを成型した。
【0087】
(例2−23)、(比較例1−4)(参考例1)
表4乃至10に示した配合の樹脂組成物を用いたこと以外は例1と同様にして、各種評価用サンプルを作成した。評価結果を表4乃至10に示す。また、例1から3並びに比較例1及び2の各評価サンプルのアルカリ金属系物質の濃度とUL94V規格の合計残炎時間、数平均分子量との関係を各々プロットし、図1及び図2に示した。
【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
上記表4乃至10に示した結果から、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、従来技術にかかわる各比較例の樹脂組成物よりも、難燃性に優れていることが分かる。さらに、芳香環を有する化合物を併用した本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、難燃性だけでなく、流動性も良好なことが分かる。加えて、結晶核剤を併用すると、難燃性が一層向上することが明らかである。さらに、高強度繊維を併用した場合に、難燃性、流動性だけでなく、耐衝撃性や耐熱性も良好な難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られることが分かる。
【0096】
表4に示した本発明例1から3と、比較例1及び2との比較から明らかなように、植物由来樹脂(A)に、難燃化剤(B)としてアルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下の金属水和物を使用することで、難燃性に優れるとともに、耐加水分解性も良好な難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られることが分かる。
【0097】
さらに、表5に示した本発明例4から6と、例1及び比較例3との比較から明らかなように、植物由来樹脂(A)と、難燃化剤(B)としてアルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下の金属水和物を使用し、さらに、芳香環を有する化合物(C)を併用することで、難燃性に優れるだけでなく、流動性が良好な難燃性熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【0098】
加えて、表6に示した本発明例7と、例4または比較例4との比較、表7に示した本発明例7と、例10及び例11との比較から明らかなように、植物由来樹脂(A)、難燃化剤(B)としてアルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下の金属水和物を使用し、さらに、芳香環を有する化合物(C)と結晶核剤(D)を同時に併用することで、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の難燃性を一層強化することができる。すなわち、芳香環を有する化合物(C)と結晶核剤(D)の併用には、難燃性を向上させる著しい相乗効果がある。
【0099】
さらに、表7に示した本発明例8及び例12と、例7との比較から明らかなように、植物由来樹脂(A)と難燃化剤(B)としてアルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下の金属水和物を使用し、芳香環を有する化合物(C)及び結晶核剤(D)に加えて、高強度繊維(F)を併用することで、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が特異的に向上する。
【0100】
さらに、表6に示した本発明例9と例8の比較から明らかなように、植物由来樹脂(A)と難燃化剤(B)としてアルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下の金属水和物を使用し、芳香環を有する化合物(C)、結晶核剤(D)及び高強度繊維(F)に加えて、柔軟成分を併用することで、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が一層向上する。
【0101】
さらに、表8に示した本発明例1と13の比較および、表10に示した本発明例16と17の比較から明らかなように、粒径の小さい金属水和物を難燃化剤(B)として使用することで、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の難燃性が一層向上する。
【0102】
さらに、表9に示した本発明例12と14の比較から明らかなように、高強度繊維(F)としてポリアリレート繊維を使用すると、ポリアミド繊維を使用した場合に比べて、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が一層向上する。
【0103】
さらに、表9に示した本発明例14と15の比較から明らかなように、高強度繊維(F)の繊維径を小さくすると、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性だけでなく、難燃性が一層向上する。
【0104】
さらに、表10に示した本発明例14と16の比較から明らかなように、柔軟成分を使用すると、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の流動性と耐衝撃性が一層向上する。
【0105】
さらに、表10に示した本発明例17と18の比較から明らかなように、ケナフ繊維を併用すると、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が一層向上する。
【0106】
さらに、表10に示した本発明例17と19の比較から明らかなように、ガラス繊維を併用すると、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が一層向上する。
【0107】
さらに、表10に示した本発明例18と20の比較および、本発明例19と21の比較から明らかなように、柔軟成分を増量すると、本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物の流動性が一層向上する。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物は、射出成型法、フィルム成形法、ブロー成形法、発泡成形法などの方法により、電気・電子機器用途、建材用途、自動車部品用途、日用品用途、医療用途、農業用途、玩具用と、娯楽用途などの成型体に加工される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも植物由来樹脂(A)及び難燃化剤(B)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、
前記難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合は植物由来樹脂(A)の質量%をW1、前記難燃化剤(B)の質量%をX1としたとき
30≦W1<55.5
44.5<X1≦70
であり、
かつ前記難燃化剤(B)は90質量%以上が、アルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下である金属水和物よりなることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
少なくとも植物由来樹脂(A)、難燃化剤(B)、及び芳香環を有する化合物(C)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、
前記難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合は植物由来樹脂(A)の質量%をW2、前記難燃化剤(B)の質量%をX2、前記芳香環を有する化合物(C)の質量%をYとしたとき
25≦W2<55.5
39.5≦X2≦70
0.5≦Y≦20
であり、
かつ前記難燃化剤(B)は90質量%以上が、アルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下である金属水和物よりなることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも植物由来樹脂(A)、難燃化剤(B)、芳香環を有する化合物(C)、及び結晶核剤(D)を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、前記難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合は植物由来樹脂(A)の質量%をW3、前記難燃化剤(B)の質量%をX3、前記芳香環を有する化合物(C)の質量%をY、前記結晶核剤(D)の質量%をZとしたとき
25≦W3<55.5
29.5<X3≦70
0.5≦Y≦20
0.05<Z≦20
であり、
かつ前記難燃化剤(B)は90質量%以上が、アルカリ金属系物質の含有量が0.2質量%以下である金属水和物よりなることを特徴とする難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香環を有する化合物(C)が、フェノール類、シリコーン化合物及びホウ素化合物からなる群より選ばれた一つの化合物であることを特徴とする、請求項2または3に記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記植物由来樹脂(A)がポリ乳酸樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
さらにドリップ防止剤(E)を、難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合で1質量%以下含有せしめることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに高強度繊維(F)を、難燃性熱可塑性樹脂組成物の総量に占める重量割合で10質量%以下含有せしめることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/061626
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516441(P2005−516441)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018009
【国際出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】