説明

難燃性粘着剤及び難燃性粘着テープ

【課題】本発明は、難燃性、粘着性および長期保存性に優れた粘着テープを得ることができる粘着剤、ならびに粘着テープの提供を目的とする。
【解決手段】少なくともカルボキシル基含有モノマー(a)を0.1〜15重量%用いてなるアクリル系ポリマー(A)と、イソシアネート系硬化剤(B)と、下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩(C)とを含む難燃性粘着剤であって、前記ホスフィン酸塩(C)を、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、30〜70重量部含有し、さらに前記ホスフィン酸塩(C)の平均粒子径が0.1μm以上〜20μm以下であることを特徴とする難燃性粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた難燃性と粘着力を有する難燃性粘着剤及び難燃性粘着テープに関するものである。詳しくは、粘着性、長期保存性および難燃性に優れた粘着剤で、電気・電子部品や家電、建材などの各分野で難燃性が必要な部分の固定用に好適な粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器の高集積化、高性能化が進み、それに伴い内部の高温化や畜熱による発火の危険性が非常に高くなってきている。そのような危険を防止する必要性から、機器内の各種部品はもちろん、それらの接着用部材にも高度な難燃性が要求されるようになってきている。また、家電、建材などの各分野でも、プラスチック材料の難燃化について様々な研究が盛んに行われており、それらの固定に用いられる接着材料にも、当然ながら高い難燃性が要求されるようになってきている。
【0003】
粘着剤の難燃化手法については、ハロゲン系の難燃剤と酸化アンチモンとを併用する手法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、ハロゲン系の難燃剤は燃焼時に人体に毒性のあるハロゲン系ガスを発生することや、機器などを腐食せしめるという問題があった。このような観点から、ハロゲン系難燃剤を用いない難燃化方法の開発が求められるようになっている。
【0004】
ハロゲン系難燃剤以外の難燃化手法としては、無機系難燃剤、窒素系難燃剤などが知られているが、これらの難燃剤は、ハロゲン系難燃剤よりも難燃効果が遙かに劣っている為、粘着剤中に大量に配合しなければならず、粘着力を大幅に低下させるという問題があった。
【0005】
また、ハロゲン系難燃剤程の高い難燃性ではないが、比較的難燃効果が高いリン系化合物を用いることも知られている。中でも、ポリリン酸アンモニウム等の窒素元素を含有したリン系難燃剤と赤リンとの組み合わせが高い難燃性を示すことが知られているが(特許文献2参照)、赤リンを使用している為、焼却時に有害なホスフィンガスを発生したり、ポリリン酸アンモニウムの吸湿性のため、湿熱環境で十分な性能がでないという問題点があり、用途や難燃剤量が限られてしまう(非特許文献1参照)。
【0006】
前記窒素含有リン系化合物以外のリン系難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤を用いることが知られているが、リン酸エステル系化合物の性状が液状の場合には、粘着剤層を可塑化して凝集力を低下させたり,粘着剤層表面に該難燃剤がブリードしたりするといった問題があり、又、リン酸エステル系難燃剤の性状が固体の場合には、粘着剤層表面に該難燃剤粒子が析出するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−173657号公報
【特許文献2】特開平8−193187号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】西沢仁著,プラスチックス,VOL.54,No.3(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来技術における問題点を解決しようとするものであり、難燃性、粘着性および長期保存性に優れた粘着テープを得ることができる粘着剤、ならびに粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアクリル系粘着剤と、特定のホスフィン酸塩を配合すると、難燃性を持ち、粘着性、長期保存性に優れたアクリル粘着剤が得られることを見出した。
【0011】
すなわち、第一の発明は、少なくともカルボキシル基含有モノマー(a)を0.1〜15重量%用いてなるアクリル系ポリマー(A)と、イソシアネート系硬化剤(B)と、下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩(C)とを含む難燃性粘着剤であって、
前記ホスフィン酸塩(C)を、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、30〜70重量部含有し、
さらに前記ホスフィン酸塩(C)の平均粒子径が0.1μm以上〜20μm以下であることを特徴とする難燃性粘着剤である。
一般式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
(但し、式中R1、R2は同一かまたは異なり、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、またはアリール基を示し、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kから成る群より選択される少なくとも一種の金属を示し、mは、1〜4の整数である。)
第二の発明は、基材と請求項1記載の難燃性粘着剤から形成されてなる粘着剤層を有することを特徴とする難燃性粘着テープである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、従来のような難燃化方法における問題点を解決しようとするものであり、難燃性を持ち、粘着性に優れたアクリル粘着剤、ならびに、該粘着剤を用いた塗工物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明に用いるアクリル系ポリマー(A)について説明する。
【0016】
本発明に用いるアクリル系ポリマー(A)は、カルボキシル基含有モノマー(a)と、カルボキシル基含有モノマー(a)以外のモノマーを共重合して得られる共重合体である。
【0017】
カルボキシル基含有モノマー(a)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、β − カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ブチル等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらはモノマー100重量%中0.1〜15.0重量%、好ましくは0.3〜10重量%、さらに好ましく1〜6重量%の割合で用いられる。
【0018】
ここで、カルボキシル基含有モノマー(a)の量が0.1重量部未満であると、得られるアクリル系ポリマーとホスフィン酸塩粒子の微細分散安定性が得られにくい。また、15.0重量部以上であると、アクリル系ポリマーの合成が困難であったり、またイソシアネート系硬化剤(B)との反応でゲル化したり、また該粘着テープにおいて十分な接着力を得られにくい。
【0019】
カルボキシル基含有モノマー(a)以外のモノマーは、(メタ)アルキルアクリレートモノマー(b)、(a)または(b)と共重合可能な分子内にカルボキシル基以外の極性基を有する共重合性モノマー(c)(以下、モノマー(c)ともいう)を挙げることができる。
【0020】
(メタ)アルキルアクリレートモノマー(b)の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、エタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。
【0021】
モノマー(c)は、例えば(メタ)アクリルアミド、置換アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルフォリン、(メタ)アクリルアミド等の窒素含有モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマーなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。これら共重合性モノマー(b)および(c)は、モノマー混合物中85.0〜99.9重量部、好ましくは90.0〜99.7重量部、さらに好ましくは94.0重量部〜99.0重量部の割合で用いられる。
【0022】
本発明で好ましく用いられるアクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、好ましくは30万〜120万、より好ましくは40万〜80万、さらに好ましくは50万〜70万である。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の値である。
【0023】
次に、本発明に用いるイソシアネート系硬化剤(B)について説明する。
【0024】
本発明に用いるイソシアネート系硬化剤(B)は、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、およびこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体、更にはこれらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0025】
イソシアネート系硬化剤(B)は、上記アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部用いることが好ましい。
【0026】
次に、本発明において難燃剤として下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩(C)(以下、単にホスフィン酸塩(C)ともいう)を用いることが重要である。ホスフィン酸塩(C)は、化合物中のリン含有率が高いため、難燃性を大きく向上できる。またホスフィン酸塩(C)は、高温高湿条件下においても加水分解しにくいため難燃性が低下しにくい傾向にある上に、粘着性が低下しにくい特徴がある。また、本発明において、有機フィラーとは、微粉末状の有機化合物であり、有機溶剤や水等に難溶または不溶なものである。
一般式(1)
【0027】
【化2】

【0028】
(式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に直鎖状のまたは枝分かれした炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基であり、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Fe、Zr、Zn、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kまたはプロトン化した窒素塩基であり、mは1〜4の整数である。)
上記ホスフィン酸塩(C)としては、たとえば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等およびそれらの任意の混合物よりなる群から選択されるもの等が挙げられる。これらの中でもトリスジエチルホスフィン酸アルミニウムが特に好適に用いられる。
【0029】
また、ホスフィン酸塩(C)は、平均粒子径が0.1μm以上〜20μm以下であることが重要である。さらに0.5μm以上〜10μ m以下が好ましく、さらに1μm以上5μm以下がより好ましい。平均粒子径が20μm以下よりも大きいと、単位重量当りの表面積が低下する傾向にあり、難燃性の不足や、分散不良が生じる恐れがある。一方0.1μmに満たない場合は、分散溶液の粘度の増大を引き起こし、塗工性が悪化する可能性がある。本発明においてホスフィン酸塩(C)は、上記の通り有機フィラーであるため粘着物性に寄与できる。なお本発明における平均粒子径は、体積基準での累積分布の50%に相当する粒子径を意味し、動的光散乱法を利用した粒子径分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、「マイクロトラック」)によって測定した数値である。
【0030】
ホスフィン酸塩(C)は、上記アクリル系ポリマー(A)100に対して、好ましくは30〜70重量部、より好ましくは35〜65重量部、さらに好ましくは40〜60重量部用いることが好ましい。配合量が30重量部に満たない場合は、難燃性が不足する恐れがある。一方、配合量が70重量部を超える場合は、著しく粘着性が低下する恐れがある。
【0031】
本発明の難燃性粘着剤には、必要に応じて、メラミン樹脂微粒子やグアナミン樹脂(N含有)など、また水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの水和金属化合物を少量添加することにより、難燃性をさらに向上させることもできる。 また、難燃性を損なわない範囲で、粘着特性などの向上のため、ロジン系樹脂などの各種粘着付与剤などを添加することもできる。
【0032】
また、前記粘着剤中には、本発明の難燃性及び接着性を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、耐候剤、軟化剤、安定剤、充填剤、増量剤、補強剤等の各種添加剤を1 種、又は2種以上を組み合わせて加えることができる。
【0033】
こうして得られた難燃性粘着剤は剥離シート上に塗布し、乾燥させ成膜し、基材と貼りあわせ、該粘着剤を積層してなる片面粘着テープとすることができる。もちろん、この難燃性粘着剤を用いて基材レスの粘着シートとすることができるし、芯材を用いて両面に前記粘着剤層を設けて両面粘着テープとすることもできる。
【0034】
剥離シートとしては、例えば、紙、またはポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースアセテート等のプラスチックフィルムや、アルミ、ステンレスなどの金属箔等を用いることができ、表面に厚みが10 〜250μm のものが好適に使用される。
【0035】
基材としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアセテート、ポリエーテルエーテルケトン等のフィルム基材や、ガラスクロス、アセテートクロス等の布基材やペーパー基材、芯材等を用いることができ、厚みが10〜250μmのものが好適に使用される。
【0036】
両面粘着テープの一般的な芯材としては、例えば, 和紙、レーヨン紙、マニラ紙など、合成樹脂フィルム類のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなど、及び織布の布類又は不織布の合成樹脂類などを挙げることができ、厚みが4.5〜250μmのものが好適に使用される。
【0037】
また必要に応じて、これら基材や芯材には易接着処理を施してもよい。処理方法としては、例えば、支持体の表面性の違いを利用して、粘着剤面に凹凸を持たせる方法、粘着剤塗布面にコロナ放電を処理する方法、および公知のアンカーコート剤を粘着剤層と支持体の境界に施す方法などが挙げられる。
【0038】
難燃性粘着剤の塗布は、従来公知の方法、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、バーコート方式等により行うことができる。難燃性粘着剤は、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよい。また、異なる方式を複数組み合わせてもよい。
【0039】
本発明の難燃性粘着テープは、粘着剤層の膜厚が10〜200μm程度が好ましいが、この範囲内に限定されるものではなく、用途、要求性能に適した膜厚となるように塗布すればよい。
【0040】
本発明の難燃性粘着テープの難燃性は、着火・延焼の危険性を排除する面から、UL94VTM−0を満足する事が好ましい。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また「部」、「%」は、それぞれ「重量部」、「重量%」を意味する。
<アクリル系ポリマー(A)合成例1>
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、n−ブチル
アクリレート99.85部、アクリル酸0.15部、酢酸エチル121.0部、ベンゾイルパーオキサイド0.2部を仕込み、攪拌しながら反応器中の空気を窒素置換し、還流するまで昇温して保持し、合計5 時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル34.4部、トルエン28.3部、重合禁止剤として2、5−ジターシャリブチルハイドロキノン0.5部を添加して希釈し、室温まで冷却し、不揮発分34.0%のアクリル系ポリマー1の溶液を得た。アクリル系ポリマー1の重量平均分子量は50万であった。
【0042】
<アクリル系ポリマー(A)合成例2>
n−ブチルアクリレート99.7部、アクリル酸0.3部とした以外は、合成例1と同様な手順で反応を行い、不揮発分34.0%のアクリル系ポリマー2の溶液を得た。アクリル系ポリマー2の重量平均分子量は55万であった。
【0043】
<アクリル系ポリマー(A)合成例3>
n−ブチルアクリレート98.0部、アクリル酸2.0部とした以外は、合成例1と同様な手順で反応を行い、不揮発分34.0%のアクリル系ポリマー3の溶液を得た。アクリル系ポリマー3の重量平均分子量は60万であった。
【0044】
<アクリル系ポリマー(A)合成例4>
n−ブチルアクリレート94.0部、アクリル酸6.0部とした以外は、合成例1と同様な手順で反応を行い、不揮発分34.0%のアクリル系ポリマー4の溶液を得た。アクリル系ポリマー4の重量平均分子量は61万であった。
【0045】
<アクリル系ポリマー(A)合成例5>
n−ブチルアクリレート90.0部、アクリル酸10.0部とした以外は、合成例1と同様な手順で反応を行い、不揮発分34.0%のアクリル系ポリマー5の溶液を得た。アクリル系ポリマー5の重量平均分子量は70万であった。
【0046】
<アクリル系ポリマー(A)合成例6>
n−ブチルアクリレート80.0部、アクリル酸20.0部とした以外は、合成例1と同様な手順で反応を行ったが、反応途中でゲル化してしまった。
【0047】
<アクリル系ポリマー(A)合成例7>
n−ブチルアクリレート100.0部とした以外は、合成例1と同様な手順で反応を行い、不揮発分34.0%のアクリル系ポリマー7の溶液を得た。アクリル系ポリマー7の重量平均分子量は55万であった。
【0048】
<難燃剤分散液調整例1>
合成例1で得られたアクリル系ポリマー(A)溶液100部、ホスフィン酸塩(B)としてトリスジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントジャパン株式会社製:エクソリットOP−935 平均粒子径2〜3μm)68部、ついでこの溶液にメチルエチルケトンを加えて、不揮発分が30.0%になるように調製し、溶液を十分に攪拌した後に直径3.0mmのガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ社製)を用いてペイントコンデショナーで1時間分散し難燃剤分散液1を得た。
【0049】
<難燃剤分散液調整例2>
アクリル系ポリマー(A)として合成例2で得られたアクリル系ポリマー溶液を用いた以外は、難燃剤分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液2を得た。
【0050】
<難燃剤分散液調整例3>
アクリル系ポリマー(A)として合成例2で得られたアクリル系ポリマー溶液、ホスフィン酸塩(B)としてトリスジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアントジャパン株式会社製:エクソリットOP−935 平均粒子径2〜3μm)102部を用いた以外は、分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液3を得た。
【0051】
<難燃剤分散液調整例4>
アクリル系ポリマー(A)として合成例3で得られたアクリル系ポリマー溶液を用いた以外は、難燃剤分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液4を得た。
【0052】
<難燃剤分散液調整例5>
アクリル系ポリマー(A)として合成例4で得られたアクリル系ポリマー溶液を用いた以外は、難燃剤分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液5を得た。
【0053】
<難燃剤分散液調整例6>
アクリル系ポリマー(A)として合成例4で得られたアクリル系ポリマー溶液を用いた以外は、難燃剤分散液調整例3と同様の配合、手順で難燃剤分散液6を得た。
【0054】
<難燃剤分散液調整例7>
アクリル系ポリマー(A)として合成例5で得られたアクリル系ポリマー溶液を用いた以外は、難燃剤分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液7を得た。
【0055】
<難燃剤分散液調整例8>
アクリル系ポリマー(A)として合成例7で得られたアクリル系ポリマー溶液を用いた以外は、難燃剤分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液8を得た。
【0056】
<難燃剤分散液調整例9>
アクリル系ポリマー(A)として合成例3で得られたアクリル系ポリマー溶液とホスフィン酸塩(B)の代わりに水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製:BF−013 平均粒子径1〜2μm)を用いた以外は、難燃剤分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液9を得た。
【0057】
<難燃剤分散液調整例10>
アクリル系ポリマー(A)として合成例4で得られたアクリル系ポリマー溶液とホスフィン酸塩(B)の代わりに水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製:BF−013平均粒子径1〜2μm)を用いた以外は、難燃剤分散液調整例3と同様の配合、手順で難燃剤分散液10を得た。
【0058】
<難燃剤分散液調整例11>
アクリル系ポリマー(A)として合成例3で得られたアクリル系ポリマー溶液とホスフィン酸塩( B )の代わりにメラミンシアヌレート(CBC株式会社:BUDIT315S 平均粒子径3μm)を用いた以外は、難燃剤分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液11を得た。
【0059】
<難燃剤分散液調整例12>
アクリル系ポリマー(A)として合成例4で得られたアクリル系ポリマー溶液とホスフィン酸塩(B)の代わりにメラミンシアヌレート(CBC株式会社:BUDIT315S 平均粒子径3μm)を用いた以外は、難燃剤分散液調整例3と同様の配合、手順で難燃剤分散液12を得た。
【0060】
<難燃剤分散液調整例13>
アクリル系ポリマー(A)として合成例3で得られたアクリル系ポリマー溶液とホスフィン酸塩(B)の代わりにポリリン酸アンモニウム(CBC株式会社:C−60 平均粒子径7〜8μm)を用いた以外は、難燃剤分散液調整例1と同様の配合、手順で難燃剤分散液13を得た。
【0061】
<難燃剤分散液調整例14>
アクリル系ポリマー(A)として合成例4で得られたアクリル系ポリマー溶液とホスフィン酸塩(B)の代わりにポリリン酸アンモニウム(CBC株式会社:C−60 平均粒子径7〜8μm)を用いた以外は、難燃剤分散液調整例3と同様の配合、手順で難燃剤分散液14を得た。
【0062】
[難燃剤分散液の安定性の評価]
得られた難燃剤分散液を23℃で放置し、経時での安定性を確認し、次の基準で評価した。結果は表1に示す。
◎・・・1週間放置後の分散液に変化がない
○・・・1週間放置後の分散液にほとんど変化がない
△・・・1週間放置後の分散液に凝集物が生じた
×・・・1週間以内に分散液がゲル化した。
【0063】
<実施例1>
難燃剤分散液例1で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例1で得られたアクリル系ポリマー(A)を88.2部、架橋剤としてTDI/TMP(トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)0.7部を添加して良く攪拌し、粘着剤溶液を得た。得られた粘着剤溶液を、ドクターブレードで乾燥膜厚45μmとなるように、厚さ75μm の剥離シート上に塗布し、乾燥させ、粘着剤層を形成し、次いで厚さ25μmのPETフィルムの片面、及び坪量が6g/m2のレーヨン不織布の両面にラミネートして、PETフィルム/粘着剤層/剥離シートからなる片面粘着テープ1及び、剥離シート/粘着剤層/不織布/粘着剤層/剥離シートからなる両面粘着テープ1をそれぞれ得た。この粘着テープを23℃50%RHの雰囲気下で7日間熟成させた。
【0064】
<実施例2>
難燃剤分散液例2で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例2で得られたアクリル系ポリマー(A)88.2部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ2及び両面粘着テープ2を得た。
【0065】
<実施例3>
難燃剤分散液例4で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例3で得られたアクリル系ポリマー(A)88.2部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ3及び両面粘着テープ3を得た
【0066】
<実施例4>
難燃剤分散液例5で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例4で得られたアクリル系ポリマー(A)138.7部、架橋剤としてTDI/TMP(トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)1.1部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ4及び両面粘着テープ4を得た。
【0067】
<実施例5>
難燃剤分散液例5で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例4で得られたアクリル系ポリマー(A)88.2部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ5及び両面粘着テープ5を得た。
【0068】
<実施例6>
難燃剤分散液例5で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例4で得られたアクリル系ポリマー(A)61.1部、架橋剤としてTDI/TMP(トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)0.6部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ6及び両面粘着テープ6を得た。
【0069】
<実施例7>
難燃剤分散液例7で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例5で得られたアクリル系ポリマー(A)88.2部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ7及び両面粘着テープ7を得た。
【0070】
<比較例1>
難燃剤分散液例5で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例4で得られたアクリル系ポリマー(A)166.7部、架橋剤としてTDI/TMP(トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)1.3部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ8及び両面粘着テープ8を得た。
【0071】
<比較例2>
難燃剤分散液例5で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例4で得られたアクリル系ポリマー(A)29.4部、架橋剤としてTDI/TMP(トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)0.4部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ9及び両面粘着テープ9を得た。
【0072】
<比較例3>
難燃剤分散液例8で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例7で得られたアクリル系ポリマー(A)88.2部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ10及び両面粘着テープ10を得た。
【0073】
<比較例4>
難燃剤分散液例9で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例3で得られたアクリル系ポリマー(A)29.4部、架橋剤としてTDI/TMP(トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)0.4部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ11及び両面粘着テープ11を得た。
【0074】
<比較例5>
難燃剤分散液例11で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例3で得られたアクリル系ポリマー(A)88.2部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ12及び両面粘着テープ12を得た。
【0075】
<比較例6>
難燃剤分散液例11で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例3で得られたアクリル系ポリマー(A)29.4部、架橋剤としてTDI/TMP(トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)0.4部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ13及び両面粘着テープ13を得た。
【0076】
<比較例7>
難燃剤分散液例14で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例4で得られたアクリル系ポリマー(A)88.2部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ14及び両面粘着テープ14を得た。
【0077】
<比較例8>
難燃剤分散液例14で得られた難燃剤分散液100部に対して、合成例4で得られたアクリル系ポリマー(A)29.4部、架橋剤としてTDI/TMP(トリレンジイソシネートのトリメチロールプロパンアダクト体)0.4部を用いた以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ15及び両面粘着テープ15を得た。
【0078】
<比較例9>
合成例4で得られたアクリル系ポリマー(A)を100重量部に対して、難燃剤としてホスフィン酸塩(B)の代わりにホスファゼン(大塚化学株式会社:SPB−100)17部を17部のMEKで溶解させて添加して良く攪拌し、粘着剤溶液を得た以外は、実施例1と同様な配合、手順で片面粘着テープ16及び両面粘着テープ16を得た
【0079】
以上、各実施例及び比較例として得られた粘着テープの物性評価を以下の方法で行った。得られた結果を〔表2〕〜〔表4〕に示した。
【0080】
〔粘着力〕
上記片面粘着テープを23℃×50%RHの標準状態において、それぞれ25mm幅×100mm長さでカットし、ステンレス板に2kgのゴムローラーを1往復させて貼り付け、同標準状態で24時間放置後、85℃及び60℃×95%RH環境下で168時間放置後、引っ張り速度300mm/分、剥離角度180°の条件で引っ張り試験機にて粘着力を測定した。
【0081】
〔保持力〕
上記片面粘着テープを23℃×50%RHの標準状態において、それぞれ25mm幅×100mm長さでカットし、そのうち25mm幅×25mm長さをステンレス板に2kgのゴムローラーを1往復させて貼り付け、貼付から20分後に80℃雰囲気下1kgfの荷重をかけ、1時間後のズレ距離または落下時間を測定した。
【0082】
〔難燃性〕
上記両面粘着テープを用いて、UL規格(UL94:薄手材料垂直燃焼試験)に準じて燃焼試験を行って判定した。
○:UL94規格VTM−0グレードを達成できる。
△:UL94規格VTM−1グレードを達成できる。
×:UL94規格VTM−0、VTM−1グレードを達成できない。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【0087】
表2〜表4の結果から明らかのように、本発明における難燃性アクリル粘着剤及び該粘着剤を用いた塗工物は、優れた粘着性と難燃性を持ち、85℃および65℃−95%経時後においてもそれぞれ高い粘着性を維持することから長期保存性にも優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカルボキシル基含有モノマー(a)を0.1〜15重量%用いてなるアクリル系ポリマー(A)と、イソシアネート系硬化剤(B)と、下記一般式(1)で示されるホスフィン酸塩(C)とを含む難燃性粘着剤であって、
前記ホスフィン酸塩(C)を、アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、30〜70重量部含有し、
さらに前記ホスフィン酸塩(C)の平均粒子径が0.1μm以上〜20μm以下であることを特徴とする難燃性粘着剤。
一般式(1)
【化1】

(但し、式中R1、R2は同一かまたは異なり、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、またはアリール基を示し、Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、Kから成る群より選択される少なくとも一種の金属を示し、mは、1〜4の整数である。)
【請求項2】
基材と、請求項1記載の難燃性粘着剤から形成されてなる粘着剤層とを有することを特徴とする難燃性粘着テープ。

【公開番号】特開2012−149183(P2012−149183A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9357(P2011−9357)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】