説明

難燃性繊維強化複合材料、サンドイッチパネル、それらの製造方法及びエレベータかご

【課題】成形時の樹脂のハンドリング性が良好で、成形後に優れた難燃性を有すると共に燃焼させた場合おいてもハロゲン含有ガスを発生することなく且つ軽量で高剛性を有する難燃性繊維強化複合材料を提供すること。
【解決手段】本発明の難燃性繊維強化複合材料は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種100質量部に対し、50%粒子径D50が10μm以下であり且つ95%粒子径D95が30μm以下である有機リン酸金属塩粒子を10質量部以上17質量部以下添加したマトリクス樹脂を、繊維基材に含浸硬化させて得られるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性繊維強化複合材料、サンドイッチパネル、それらの製造方法及びエレベータかごに関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化複合材料は、軽量・高剛性という特性を有することから、電気・電子機器、鉄道車両、航空機、建築材料など幅広い分野で使用されている。近年、これらの使用分野において、繊維強化複合材料の難燃性を向上させることが重要となっている。繊維強化複合材料の難燃化には、その構成材料である樹脂の難燃化が必須である。これまで、樹脂の難燃化には、ハロゲン系難燃剤と難燃助剤である三酸化アンチモンとを配合する手法が採られてきたが、近年の環境問題等への取り組みの中で、ハロゲン・アンチモンフリー化が求められている。
【0003】
ハロゲン・アンチモンを含有しない樹脂組成物の難燃化技術として、ハロゲンを含有しないエポキシ樹脂、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物、ガラス転移温度が120℃以上の熱可塑性樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤を含有するマトリクス樹脂と、繊維強化材とからなる繊維強化樹脂複合材料が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、リン酸エステルなどの液状難燃剤を樹脂に配合する手法も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−147965号公報
【特許文献2】特開2009−120780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術で十分な難燃化効果を得るためには、金属酸化物を多量に添加する必要がある。このため、樹脂の粘度が高くなり、樹脂が繊維強化材へ含浸しない部分が生じたり、ボイドが発生したりするという問題があった。また、特許文献2に記載の技術では、樹脂硬化物のTgの低下や強度低下などの問題があった。
【0006】
従って、本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、樹脂の未含浸部分やボイドがなく、優れた難燃性を有すると共に燃焼させた場合おいてもハロゲン含有ガスを発生することなく且つ軽量で高剛性を有する難燃性繊維強化複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種100質量部に対し、50%粒子径D50が10μm以下であり且つ95%粒子径D95が30μm以下である有機リン酸金属塩粒子を10質量部以上17質量部以下添加したマトリクス樹脂を、繊維基材に含浸硬化させて得られる難燃性繊維強化複合材料である。
また、本発明は、繊維基材上に、樹脂透過性離型用シート及び樹脂拡散用メッシュを順次積層する工程と、該繊維基材、該樹脂透過性離型用シート及び該樹脂拡散用メッシュからなる積層体を密閉用フィルムで覆って、該積層体を外気から遮断する工程と、該密閉用フィルム内を減圧する工程と、上記したマトリクス樹脂を、該密閉用フィルム内に該樹脂拡散用メッシュを通じて注入し、該繊維基材に含浸させる工程と、該マトリクス樹脂を硬化させる工程と、該樹脂透過性離型用シートを剥離することにより該樹脂拡散用メッシュを分離し、難燃性繊維強化複合材料を得る工程とを備えることを特徴とする難燃性繊維強化複合材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、樹脂の未含浸部分やボイドがなく、優れた難燃性を有すると共に燃焼させた場合おいてもハロゲン含有ガスを発生することなく且つ軽量で高剛性を有する難燃性繊維強化複合材料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による難燃性繊維強化複合材料の模式断面図である。
【図2】特定の粒子径を有する有機リン酸金属塩粒子のマトリクス樹脂に対する添加量と、難燃性及び成形性との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1による難燃性繊維強化複合材料の製造方法に使用する真空含浸装置の概観図である。
【図4】本発明の実施の形態2によるサンドイッチパネルの模式断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2によるサンドイッチパネルの製造方法に使用する真空含浸装置の概観図である。
【図6】本発明の実施の形態3による難燃性繊維強化複合材料の模式断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4によるエレベータかごを備えるエレベータ装置の斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態4によるエレベータかごのかご室の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の難燃性繊維強化複合材料、サンドイッチパネル、それらの製造方法及びエレベータかごについて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施形態1に係る難燃性繊維強化複合材料の模式断面図である。図1において、難燃性繊維強化複合材料10は、難燃剤として有機リン酸金属塩粒子11を含有するマトリクス樹脂12が繊維基材13に含浸され硬化された形態をとる。本実施の形態による難燃性繊維強化複合材料10では、マトリクス樹脂12の未含浸部分がなく、また、難燃剤である有機リン酸金属塩粒子11が偏在することなくマトリクス樹脂12中に均一に分散した状態となっている。
【0011】
マトリクス樹脂12としては、成形体の大きさに応じて硬化速度が調節でき、注型中に希釈剤成分が蒸発しても増粘しにくい樹脂が望ましく、特に、後述するVacuum assisted Resin Transfer Molding法(以下、VaRTM法と略記する場合がある)により成形する場合、低粘度で室温〜100℃で硬化する樹脂が好ましい。このような樹脂の具体例としては、ビニルエステル樹脂、スチレン樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、中でも、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びシリコーン樹脂がより好ましく、ビニルエステル樹脂をスチレンモノマーで希釈したビニルエステル系樹脂が最も好ましい。このビニルエステル系樹脂は、低粘度であり、触媒の添加量により硬化速度を調節することができる室温硬化型樹脂であり、樹脂注入後の加熱硬化が不要という点で優れる。
【0012】
マトリクス樹脂12中に均一に分散されるノンハロゲン系の有機リン酸金属塩としては、有機ホスフィン酸金属塩がマトリクス樹脂12への分散性の点で好ましく、特に、ジエチルホスフィン酸アルミニウム等の有機ホスフィン酸アルミニウムが難燃効率の高さ、マトリクス樹脂(特にビニルエステル樹脂)との熱分解温度のマッチング、粉砕・分散の容易さの点で優れる。
一般的に、難燃剤は粒子径が小さいほど表面積が大きくなるので、難燃効率が高まるが、反面、マトリクス樹脂の増粘作用が大きくなりマトリクス樹脂の拡散性が低下するという問題がある。また、後述するVaRTM法でマトリクス樹脂を注入する場合、難燃剤は、樹脂透過性離型用シートを透過できる粒度分布を有することが必要であり、樹脂透過性離型用シートとの離型性が良好であることも求められる。
本発明者らは、これらを鑑みた上で有機リン酸金属塩粒子11の50%粒子径D50を10μm以下、95%粒子径D95を30μm以下と規定した。
なお、本発明におけるD50及びD95は次のように定義される。D50とは、測定される粒子の体積割合の合計値に対して、ある粒子径以下の体積割合の合計が50%となるときの粒子径の値を表す。同様に、D95とは、測定される粒子の体積割合の合計値に対して、ある粒子径以下の体積割合の合計が95%となるときの粒子径の値を表す。
【0013】
更に、一般的に、難燃剤は添加量を増大させるほど難燃性が向上するが、反面、マトリクス樹脂が増粘するという問題がある。
本発明者らは、有機リン酸金属塩粒子11の粒子径及び添加量について鋭意検討した結果、図2に示すような知見を得た。図2は、マトリクス樹脂100質量部に対する特定の粒子径を有する有機リン酸金属塩粒子11の添加量と、難燃性及び成形性との関係を示す図である。図2から分かるように、50%粒子径D50が10μm以下であり且つ95%粒子径D95が30μm以下である有機リン酸金属塩粒子11であっても、添加量が25質量部以上となるとVaRTM法による成形性を確保することができない。また、50%粒子径D50が10μm以下であり且つ95%粒子径D95が30μm以下である有機リン酸金属塩粒子11であっても、添加量が10質量部未満となるとV−0レベルの難燃性を達成することができない。本発明者らは、これらを鑑みた上で50%粒子径D50が10μm以下であり且つ95%粒子径D95が30μm以下である有機リン酸金属塩粒子11の添加量を、マトリクス樹脂100質量部に対して10質量部以上17質量部以下と規定した。
【0014】
このように特定範囲の粒子径を有する有機リン酸金属塩粒子11を特定範囲の量で添加することによって、十分な難燃化効果を備え且つ成形時の樹脂のハンドリング性が良好な含浸用樹脂組成物とすることができる。
【0015】
繊維基材13としては、高強度で、高弾性率で、軽量である繊維であればよく、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維等を用いることができるが、軽量・高強度の点から炭素繊維が好ましい。繊維基材13の織り方は、平織が強度の異方性がない点で好ましいが、一方向に引き揃えた繊維、綾織を用いることもできる。マトリクス樹脂12の良好な含浸及び有機リン酸金属塩粒子11の均一な分散を確保する観点から、1,000以上12,000以下のフィラメント数及び92g/m以上480g/m以下の繊物重量(目付け)を有する繊維基材13が好ましい。
【0016】
次に、本実施の形態に係る難燃性繊維強化複合材料10の製造方法について説明する。
図3は、難燃性繊維強化複合材料10の製造方法に使用する真空含浸装置の概観図である。図3において、真空含浸装置14は、成形型15と、この成形型15の上面を覆うバギングフィルム等の密閉用フィルム16と、この密閉用フィルム16と成形型15との間の隙間を塞いで内部を気密にする粘着性のシール材17a,17bと、一方のシール材17aを貫通し先端部が気密空間内に通じ、他端部が樹脂タンク18に接続されている注入配管19と、他方のシール材17bを貫通し先端部が気密空間内に通じ、他端部が真空ポンプ20に接続されている吸引配管21とを備えている。
【0017】
この真空含浸装置14を用いて難燃性繊維強化複合材料10をVaRTM法により製造するには、先ず、成形型15上に繊維基材13を配置し、この繊維基材13の上面に樹脂透過性離型用シート22(ピールプライと呼ぶことがある)及び樹脂拡散用メッシュ23(樹脂フローメディアと呼ぶことがある)を順次積層する。この積層体の厚みは、繊維基材13の層数により適宜設定される。その後、繊維基材13、樹脂透過性離型用シート22及び樹脂拡散用メッシュ23からなる積層体の上面を密閉用フィルム16(バギングフィルムと呼ぶことがある)で覆い、密閉用フィルム16の縁部をシール材17a,17bで成形型15に接着し、積層体を外気から遮断する。次に、真空ポンプ20を駆動し、密閉用フィルム16内の空気を吸引配管21を介して吸引し、密閉用フィルム16内を減圧する。真空吸引後、樹脂タンク18内の上述した有機リン酸金属塩粒子11を含有するマトリクス樹脂12が、注入配管19を通り、減圧された密閉用フィルム16内に注入される。水平方向におけるマトリクス樹脂12の拡散性は、繊維基材13よりも樹脂拡散用メッシュ23の方が著しく大きいので、マトリクス樹脂12が、密閉用フィルム16内に注入されると、主に樹脂拡散用メッシュ23を通じて繊維基材13の内部に含浸が進行する。含浸後、所定の硬化方法にてマトリクス樹脂12を硬化させた後、樹脂透過性離型用シート22を剥離することにより樹脂拡散用メッシュ23を分離し、難燃性繊維強化複合材料10が得られる。
【0018】
こうして得られる難燃性繊維強化複合材料10では、マトリクス樹脂12の未含浸部分がなく、また、難燃剤である有機リン酸金属塩粒子11が偏在することなくマトリクス樹脂12中に均一に分散した状態となる。そのため、本実施の形態による難燃性繊維強化複合材料は、優れた難燃性を有すると共に接炎時においてもハロゲン含有ガスを発生することなく且つ軽量で高剛性を有するものとなる。
【0019】
本実施の形態による難燃性繊維強化複合材料10の製造方法は、プリプレグを積層して加圧成形する従来法とは異なり、オートクレーブ(加圧炉)などの大掛かりな設備が不要である上に、成形型を適宜選択することにより平面、曲面、L字、筒型又は箱型の形状の成形が可能となる。接炎時にハロゲン含有ガスを発生しない難燃性繊維強化複合材料を得ようとするのに、従来法では、マトリクス樹脂にノンハロゲン系難燃剤を多量に添加する必要があったが、本実施の形態では少量の添加で達成可能である。
【0020】
なお、難燃性及び防食性を高めるために、後述するめっき処理により、難燃性繊維強化複合材料10の片側表面又は両側表面に下地層を形成してもよく、更にその上に上地層を形成してもよい。
【0021】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2に係るサンドイッチパネルの模式断面図である。図4において、サンドイッチパネル30は、発泡体又はハニカム体からなるコア材31の両側表面を、実施の形態1に記載の難燃性繊維強化複合材料10で挟み込んで一体化させたものである。このような構成とすることで、実施の形態1による難燃性繊維強化複合材料10よりも、軽量で高剛性を有する成形体の低コスト化を図ることができる。
【0022】
コア材31としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂又はポリウレタン樹脂の発泡体(フォーム)を用いることができる。中でも、難燃性を有する樹脂素材であるフェノール樹脂を用いることが好ましい。また、アルミニウムフォーム等の無機質フォームやシンタクチックを用いることができる。更に、アルミニウムハニカム、紙ハニカム、ポリアラミド繊維紙のハニカムにフェノール樹脂を含浸してなるハニカム体を用いることもできる。
【0023】
次に、本実施の形態に係るサンドイッチパネル30の製造方法について説明する。
図5は、サンドイッチパネル30の製造方法に使用する真空含浸装置の概観図である。図5において、真空含浸装置14は、成形型15と、この成形型15の上面を覆うバギングフィルム等の密閉用フィルム16と、この密閉用フィルム16と成形型15との間の隙間を塞いで内部を気密にする粘着性のシール材17a,17bと、一方のシール材17aを貫通し先端部が気密空間内に通じ、他端部が樹脂タンク18に接続されている注入配管19と、他方のシール材17bを貫通し先端部が気密空間内に通じ、他端部が真空ポンプ20に接続されている吸引配管21とを備えている。
【0024】
この真空含浸装置14を用いてサンドイッチパネル30をVaRTM法により製造するには、先ず、発泡体又はハニカム体からなるコア材31の両側表面を繊維基材13で挟み込んだ構造体を用意し、その構造体の両側表面に樹脂透過性離型用シート22及び樹脂拡散用メッシュ23をそれぞれ順次積層し、その積層体を成形型15上に配置する。この積層体の厚みは、コア材31の厚さや繊維基材13の層数により適宜設定される。その後、構造体、樹脂透過性離型用シート22及び樹脂拡散用メッシュ23からなる積層体の上面を密閉用フィルム16で覆い、密閉用フィルム16の縁部をシール材17a,17bで成形型15に接着し、積層体を外気から遮断する。次に、真空ポンプ20を駆動し、密閉用フィルム16内の空気を吸引配管21を介して吸引し、密閉用フィルム16内を減圧する。真空吸引後、樹脂タンク18内の有機リン酸金属塩粒子11を含有するマトリクス樹脂12が、注入配管19を通り、減圧された密閉用フィルム16内に注入される。水平方向におけるマトリクス樹脂12の拡散性は、繊維基材13よりも樹脂拡散用メッシュ23の方が著しく大きいので、マトリクス樹脂12が、密閉用フィルム16内に注入されると、主に樹脂拡散用メッシュ23を通じて繊維基材13の内部に含浸が進行する。含浸後、所定の硬化方法にてマトリクス樹脂12を硬化させた後、樹脂透過性離型用シート22を剥離することにより樹脂拡散用メッシュ23を分離し、サンドイッチパネル30が得られる。なお、ここで使用する繊維基材13、有機リン酸金属塩粒子11及びマトリクス樹脂12は実施の形態1と同じであるのでその説明は省略する。
【0025】
こうして得られるサンドイッチパネル30では、マトリクス樹脂12の未含浸部分がなく、また、難燃剤である有機リン酸金属塩粒子11が偏在することなくマトリクス樹脂12中に均一に分散した状態の難燃性繊維強化複合材料10からなるスキン材で、発泡体又はハニカム体からなるコア材31を挟み込んで一体化しているので、優れた難燃性を有すると共に接炎時においてもハロゲン含有ガスを発生することなく且つ軽量で高剛性を有する成形体でありながら、低コスト化を図ることができる。
【0026】
本実施の形態によるサンドイッチパネル30の製造方法は、難燃性繊維強化複合材料10をスキン材とし、発泡体又はハニカム体をコア材31とする一体成形体を得ることができる。また、成形型を適宜選択することにより平面、曲面、L字、筒状又は箱型の成形が可能となる。また、コア材とスキン材とを一体成形可能であるので、スキン材とコア材31とを個別に成形して貼り合わせるよりも工数を削減することができる。
【0027】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3に係るめっき処理サンドイッチパネル40の模式断面図である。図6において、めっき処理サンドイッチパネル40は、実施の形態2によるサンドイッチパネル30の両側表面に、下地層41及びその上に形成された上地層42を備えるものである。下地層41は、無電解銅めっきにより形成された銅めっきであるか又は無電解銅めっき及び電気銅めっきにより形成された銅めっきであることが好ましく、上地層42は、電気ニッケルめっきにより形成されたニッケルめっきであることが好ましい。このような構成とすることで、実施の形態2によるサンドイッチパネル30よりも、難燃性を更に高めることができる上に、防食性も向上させることができる。
ここで、発明者らの評価によれば、下地層41として銅めっきを形成する場合、無電解銅めっき層の厚さは数nm程度であり、その無電解銅めっき層の上にムラなく電気銅めっき層を形成しようとすると、下地層41の厚みは少なくとも5μm必要になることが分かった。一方、電気銅めっき層を厚くするに従い、反りが大きくなる傾向があり、また、生産性も阻害され、コストも上昇してしまうことになることから、電気銅めっき層が薄い方が好ましく、適切な厚みを設定する必要があることが分かった。
【0028】
次に、本実施の形態に係るめっき処理サンドイッチパネル40の製造方法について説明する。
サンドイッチパネル30を作製するまでは実施の形態2と同様であるのでその説明は省略する。実施の形態2と同様の方法で得られるサンドイッチパネル30は、難燃性繊維強化複合材料10をスキン材としているので電気伝導性に乏しい。そのため、まず、スキン材である難燃性繊維強化複合材料10の表面に、無電解銅めっきによって所望の厚さの無電解銅めっき層を形成して(必要に応じて、その上に電気銅めっきによって所望の厚さの電気銅めっき層を形成して)下地層41とし、その後、電気ニッケルめっきによって所望の厚さの上地層42を形成することが望ましい。この下地層41及び上地層42の形成は、主に、(1)脱脂・整面工程、(2)表面粗化工程、(3)触媒付与工程、(4)触媒活性化工程及び(5)めっき処理工程からなる。各工程間は水洗処理を行う。各工程について以下に説明する。
【0029】
(1)脱脂・整面工程
油脂、指紋、埃等を除去すると同時に後に示すエッチング液による濡れ性を改善するための工程である。難燃性繊維強化複合材料10の表面を脱脂処理する。処理液としては、例えばアルカリタイプの脱脂剤を用いることができる。
(2)表面粗化工程
めっきの密着性を向上させるための工程である。脱脂処理された難燃性繊維強化複合材料10をプリエッチングし、表面近傍の組織を膨潤化させると共に低分子物質を溶出させることにより後工程のエッチングを選択的に促進するものである。その後、酸等でエッチングして表面に凹凸を形成する。ここで形成された凹凸にめっき被膜を析出させることで、アンカー効果による物理的な密着力を得ることができる。
(3)触媒付与工程
めっき液中の還元剤の酸化を開始させるためには、表面を触媒化処理する必要があり、この工程では、無電解めっきの析出に必要な触媒核を表面に吸着させる。触媒を付与する方法としては、キャタリスト−アクセラレーター法が挙げられる。この方法では、塩化パラジウム−塩化第一錫保護コロイド溶液からなる触媒液に浸漬することにより表面に触媒を付与することができる。
(4)触媒活性化工程
表面に析出した錫は無電解めっき液に不要であるため、酸又はアルカリを用いて除去し、パラジウムを活性化させる。
(5)めっき処理工程
触媒化処理された表面に無電解銅めっきにより無電解銅めっき層を形成する。その後、電気めっきする場合は、無電解銅めっき層を電極として電気めっき層(電気銅めっき層や電気ニッケルめっき層)を形成することができる。必要に応じて、下地層41と上地層42との間に中間層を設けることもできる。
【0030】
本実施の形態によるめっき処理サンドイッチパネル40の製造方法では、製造可能なめっき処理サンドイッチパネル40の大きさは、めっき槽の大きさで決まるので、所望の容量のめっき槽を用意すれば、大型の成形体であっても比較的容易に製造することができる。
【0031】
なお、上地層42は、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂もしくはアクリル系樹脂からなる焼付被膜としてもよい。上地層42としてシリコーン系樹脂を用いる場合、その塗布量は、発火(燃焼)を抑えて防錆効果を確保する観点から、30g/m以上50g/m以下に設定することが望ましいことが発明者らの評価によって分かった。
また、図6では、めっき処理サンドイッチパネル40の両側表面に下地層41及び上地層42が形成されているが、求められる特性に応じて、それらを片側表面のみに形成してもよいし、片側表面又は両側表面に下地層41のみを形成してもよい。
【0032】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4に係るエレベータかごを備えるエレベータ装置の斜視図である。本実施に形態において、エレベータかごの構成部材には、実施の形態1〜3による難燃性繊維強化複合材料又はサンドイッチパネルを使用している。図7において、エレベータ装置は、駆動シーブを有する巻上機50と、巻上機50により昇降路内を昇降されるエレベータかご51及び釣合おもり52と、駆動シーブに巻き掛けられ、エレベータかご51及び釣合おもり52を吊り下げるロープ53とを備えており、エレベータかご51のかご室は、床板54、側板55、天板56、背板57等のかご室パネルと、かごドア58とを有している。実施の形態1〜3による難燃性繊維強化複合材料又はサンドイッチパネルは、軽量で高い機械的強度を備えていることから、床板54、床板55、天板56、背板57等のかご室パネル、かごドア58のパネルに好適であり、また、乗場ドアのパネルに用いることもできる。
【0033】
図8は、エレベータかご51のかご室の分解斜視図である。かご室は、断面L字形状の連結部材59(例えば、アングル材)で連結された床板54、床板55、天板56及び背板57により構成されている。このかご室は、所定の大きさの難燃性繊維強化複合材料又はサンドイッチパネルを複数準備し、隣接する難燃性繊維強化複合材料又はサンドイッチパネルを断面L字形状の連結部材59で連結することにより製造することができる。連結部材59の材質は、床板54、床板55、天板56及び背板57を高強度に固定することができるものであれば特に限定されるものではなく、金属であってもよいし、本発明の難燃性繊維強化複合材料であってもよい。このように、かご室を構成する床板54、床板55、天板56及び背板57に実施の形態1〜3による難燃性繊維強化複合材料又はサンドイッチパネルを用いることで、軽量で高剛性なエレベータかご室とすることができる。
【実施例】
【0034】
本発明の難燃性繊維強化複合材料について、実施例を挙げて具体的に説明する。実施例1〜5及び比較例1〜5の繊維強化複合材料は、下記の材料及び図3に示した真空含浸装置を用いて作製した。なお、各難燃剤のD50及びD95はメーカーカタログ値である。
【0035】
<使用材料>
マトリクス樹脂:ビスフェノールA型ビニルエステル樹脂(昭和電工株式会社製リポキシ(登録商標)R806)
硬化剤:有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製328E)
硬化促進剤:オクチル酸コバルト(昭和電工株式会社製リゴラック(登録商標)コバルトO)
難燃剤1:有機リン酸塩(クラリアント社製エクソリット(登録商標)OP935、D50=2〜3μm、D95=10μm)
難燃剤2:有機リン酸塩(クラリアント社製エクソリット(登録商標)OP930、D50=3〜5μm、D95=20μm)
難燃剤3:有機リン酸塩(クラリアント社製エクソリット(登録商標)OP935をナノジェットマイザーにより可能な限り粉砕し、D50=0.65μm、D95=5μmまで微細化したもの)
難燃剤4:ジエチルホスフィン酸アルミニウム(D50=2〜3μm、D95=10μm)
難燃剤5:Al(OH)(ナバルテック社製APYRAL(登録商標)60CD、D50=1.1μm)
難燃剤6:有機リン酸塩(クラリアント社製エクソリット(登録商標)OP1240、D50=25〜50μm、D95=50μm超)
繊維基材:炭素繊維平織りクロス(東レ株式会社製トレカ(登録商標)T300−3000、フィラメント数:3,000、織物重量:198g/m
【0036】
[実施例1]
繊維基材を12枚(ply)積層したものを成形型上に配置し、その上にピールプライ及び樹脂フローメディアを順に配置した。これらをバギングフィルムで覆い、バギングフィルムと成形型と間の隙間を粘着剤で塞ぎ完全に密閉し、密閉された空間内を真空ポンプで減圧した。その後、減圧された密閉空間内に、マトリクス樹脂100質量部に対し難燃剤1を17質量部、硬化剤を1質量部及び硬化促進剤を0.2質量部添加した樹脂組成物(25℃における粘度:305mPas・s)を注入配管から注入し、繊維基材に含浸させた。2時間後、樹脂が硬化していることを確認した後、バギングフィルムを除去し、繊維強化複合材料を取り出した。完全硬化させるため、150℃のオーブンに5時間静置し、実施例1の繊維強化複合材料を得た。
【0037】
[実施例2]
難燃剤1の代わりに難燃剤2を17質量部添加した樹脂組成物(25℃における粘度:262mPas・s)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の繊維強化複合材料を得た。
【0038】
[実施例3]
難燃剤1を10質量部した樹脂組成物(25℃における粘度:246mPas・s)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、実施例3の繊維強化複合材料を得た。
【0039】
[実施例4]
難燃剤1の代わりに難燃剤3を17質量部添加した樹脂組成物(25℃における粘度:400mPas・s)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、実施例4の繊維強化複合材料を得た。
【0040】
[実施例5]
難燃剤1の代わりに難燃剤4を17質量部添加した樹脂組成物(25℃における粘度:305mPas・s)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、実施例5の繊維強化複合材料を得た。
【0041】
[比較例1]
難燃剤1の代わりに難燃剤6を30質量部添加した樹脂組成物(25℃における粘度:356.6mPas・s)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、比較例1の繊維強化複合材料を得た。
【0042】
[比較例2]
難燃剤1の代わりに難燃剤6を40質量部添加した樹脂組成物(25℃における粘度:1,000mPas・s超)を使用した以外は実施例1と同様の方法で繊維強化複合材料の作製を試みたところ、注入配管から注入した樹脂組成物は、粘度が高く、樹脂フローメディアを拡散せずに成形不良となった。
【0043】
[比較例3]
難燃剤1を5質量部した樹脂組成物(25℃における粘度:202mPas・s)を使用した以外は実施例1と同様の方法で、比較例3の繊維強化複合材料を得た。
【0044】
[比較例4]
難燃剤1を40質量部した添加した樹脂組成物(25℃における粘度:3,000mPas・s超)を使用した以外は実施例1と同様の方法で繊維強化複合材料の作製を試みたところ、注入配管から注入した樹脂組成物は、粘度が高く、樹脂フローメディアを拡散せずに成形不良となった。
【0045】
[比較例5]
難燃剤1の代わりに難燃剤7を10質量部添加した樹脂組成物(25℃における粘度:210mPas・s超)を使用した以外は実施例1と同様の方法で繊維強化複合材料の作製を試みたところ、ピールプライの目開きが50μm程度であるため、樹脂組成物中の難燃剤がピールプライで目詰まりし、繊維強化複合材料に難燃剤を分散させることができず、成形不良となった。
【0046】
<成形性評価>
成形物に未含浸部分はなく、ピールプライに難燃剤の目詰まりが見られないものを◎、成形物に未含浸部分はないが、ピールプライに難燃剤の僅かな目詰まりが見られたものを○、多少のボイドが残ったものの、成形は可能であったものを△、成形不良となったものを×とそれぞれ評価した。結果を表1及び2に示す。
【0047】
<繊維強化複合材料の難燃性評価>
UL94燃焼試験に従い、垂直燃焼試験により難燃性を評価した。評価にあたっては幅12.7±0.1mm、長さ127±1mmの試験片を用いた。バーナーの炎の高さを19mmに設定し、垂直に保持した試験片の下端に10秒間接炎(以下、一次接炎と呼ぶ)後、試験片から炎を離して燃焼時間を計測した。消炎後、直ちにバーナーを10秒間接炎(以下、二次接炎と呼ぶ)し、燃焼時間を計測した。有炎滴下物(ドリップ)がなく、5本の試験片で燃焼時間が50秒以内であれば、「V−0」と判定した。250秒以内であれば、「V−1」と判定した。V−1と同じ燃焼時間でも有炎滴下物(ドリップ)がある場合は「V−2」、燃焼時間がそれより長い場合は「全焼」と判定した。結果を表1及び2に示す。
【0048】
<繊維強化複合材料の機械的強度評価>
繊維強化複合材料を10mm×800mm×3mmの形状の試験片に加工し、3点曲げ試験を行ったところ、実施例1の繊維強化複合材料の曲げ強度は652MPaであり、実施例2の繊維強化複合材料の曲げ強度は620MPaであった。また、他の繊維強化複合材料についても同程度の曲げ強度が得られた。なお、難燃剤を添加せずに作製した繊維強化複合材料の曲げ強度は606MPaであった。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表1から分かるように、実施例1、4及び5の繊維強化複合材料は、一次及び二次接炎後の燃焼時間が共に0秒であり、「V−0」レベルの難燃性が得られた。実施例2及び3の繊維強化複合材料は、「V−0」レベルの難燃性が得られるものの、燃焼時間が長く、実施例1、4及び5よりやや劣る結果となった。また、実施例4では、成形物に未含浸部分がなく成形性は良好であったが、樹脂拡散性は実施例1よりやや劣っていた。
【0052】
表2から分かるように、比較例1の繊維強化複合材料は、一次接炎での燃焼時間が0秒、二次接炎で全焼し、難燃性を確保できなかった。これは水酸化アルミニウムの難燃効率が低いためである。比較例3の繊維強化複合材料は、一次接炎での燃焼時間が0秒、二次接炎で全焼し、難燃性が確保できなかった。これは難燃剤の添加量不足である。
【0053】
[実施例6]
実施例1と同様の方法で得られた繊維強化複合材料に、下記(1)〜(5)の工程に従って下地層に銅めっき層、上地層にニッケルめっき層を形成した。
(1)脱脂・整面工程
50g/L アルカリ性脱脂剤(奥野製薬工業株式会社製エースクリーンA−220)の水溶液中に繊維強化複合材料を50℃で5分間浸漬した。
(2)表面粗化工程
繊維強化複合材料を、N,N−ジメチルホルムアミド中に25℃で5分間浸漬した後、400g/L 無水クロム酸及び400g/L 98%硫酸の水溶液中に67℃で10分間浸漬した。その後、35%塩酸及び還元剤(奥野製薬工業株式会社製トップキャッチ(登録商標)CR−200)の水溶液中に25℃で1分間浸漬し、繊維強化複合材料の表面に付着したクロム化合物を除去した。
(3)触媒付与工程
プリディップ処理として、50mL/L 35%塩酸の水溶液中に繊維強化複合材料を25℃/1分間浸漬下した後、塩化パラジウム−塩化第一錫保護コロイド溶液からなる触媒液(0.32g/L 塩化パラジウム、29g/L 塩化第一錫、300mL/L 35%塩酸)中に30℃で6分間浸漬し、繊維強化複合材料の表面を触媒化処理した。
(4)触媒活性化工程
100g/L 硫酸の水溶液中に繊維強化複合材料を40℃で5分浸漬し、上記(3)工程にて吸着したパラジウム−錫化合物の錫を除去し、パラジウムを活性化した。
(5)めっき処理工程
繊維強化複合材料の下地層として密着性の高い無電解銅めっき及び電気銅めっきを形成し、上地層として防食性の高いニッケルめっきを電気めっきにより形成する。以下に工程を具体的に説明する。
繊維強化複合材料を、金属塩として10g/L 硫酸銅、還元剤として20ml/L ホルマリン、pH緩衝剤として10g/L 水酸化ナトリウム及び錯化剤として25g/L EDTA4Naを含有する自己触媒型無電解銅めっき液中に70℃で5分間浸漬した。その後、電気銅めっきに切り替えて、200g/L 硫酸銅、55g/L 硫酸及び40mg/L 塩化物イオンを含有する銅めっき液中に繊維強化複合材料を浸漬し、25℃で10分間、電流密度3A/dmの電気めっきにより膜厚5〜7μmの銅めっきを形成した。
次いで、通常のワット浴を用い、300g/L 硫酸ニッケル、50g/L 塩化ニッケル及び40g/L ホウ酸を含有するニッケルめっき液中に繊維強化複合材料を浸漬し、60℃で5分間、電流密度3A/dmの電気めっきにより膜厚2〜3μmのニッケルめっきを形成した。
【0054】
[実施例7]
ニッケルめっきの形成を省略したこと以外は実施例6と同様の方法で、下地層として膜厚5〜7μmの銅めっきが形成された繊維強化複合材料を得た。
【0055】
[実施例8]
実施例6と同様の方法で下地層として膜厚5〜7μmの銅めっきを形成した後、防食効果を高める目的で、銅めっき上にシリコーン系樹脂焼付コート処理を施した。コート量は30g/mとした。
【0056】
<難燃性>
実施例6〜8で得られた繊維強化複合材料は、国土交通省建築基準法に定める発熱性試験により難燃性を評価した。発熱性試験にはコーンカロリーメーターを用い、100mm□(t<50mm)の平板に50kW/mの輻射熱(約650℃)を与えながら、イグナイターにて発生させる電気スパークを点火源として燃焼させるもので、経時的な発熱速度と総発熱量を求めることができる。発熱速度や発熱量は「酸素消費法」により算出している。これは有機材料において燃焼により生ずる発熱量は物質の種類によらず、ほぼ一定の数値(酸素1kgあたり13.1MJ)になることを利用している。なお、建築基準法ではグレードの低い順に難燃材料、準不燃材料、不燃材料にカテゴリ分けされており、エレベータかごへの適用には「難燃グレード」以上が必要となる。具体的にはコーンカロリーメーターによる燃焼性試験において試験開始から5分間の総発熱量が8MJ/m以下、発熱速度が10秒以上継続して200kW/m超えないことが求められる。結果を表3に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
表3から分かるように、実施例6〜8の繊維強化複合材料は、エレベータかごに要求される難燃性を十分に備えている。
【符号の説明】
【0059】
10 難燃性繊維強化複合材料、11 有機リン酸金属塩粒子、12 マトリクス樹脂、13 繊維基材、14 真空含浸装置、15 成形型、16 密閉用フィルム、17a,17b シール材、18 樹脂タンク、19 注入配管、20 真空ポンプ、21 吸引配管、22 樹脂透過性離型用シート、23 樹脂拡散用メッシュ、30 サンドイッチパネル、31 コア材、40 めっき処理サンドイッチパネル、41 下地層、42 上地層、50 巻上機、51 エレベータかご、52 釣合おもり、53 ロープ、54 床板、55 側板、56 天板、57 背板、58 かごドア、59 連結部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種100質量部に対し、50%粒子径D50が10μm以下であり且つ95%粒子径D95が30μm以下である有機リン酸金属塩粒子を10質量部以上17質量部以下添加したマトリクス樹脂を、繊維基材に含浸硬化させて得られる難燃性繊維強化複合材料。
【請求項2】
前記有機リン酸金属塩は、有機ホスフィン酸金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性繊維強化複合材料。
【請求項3】
前記有機ホスフィン酸金属塩は、有機ホスフィン酸アルミニウムであることを特徴とする請求項2に記載の難燃性繊維強化複合材料。
【請求項4】
前記難燃性繊維強化複合材料の片側表面又は両側表面に、下地層として銅めっき及びその上の上地層としてニッケルめっきを備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の難燃性繊維強化複合材料。
【請求項5】
前記下地層の厚みは5μm以上であることを特徴とする請求項4に記載の難燃性繊維強化複合材料。
【請求項6】
前記難燃性繊維強化複合材料の片側表面又は両側表面に、下地層として銅めっき及びその上の上地層としてシリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂又はアクリル系樹脂からなる焼付被膜を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の難燃性繊維強化複合材料。
【請求項7】
発泡体又はハニカム体からなるコア材の両側表面を、請求項1〜6の何れか一項に記載の難燃性繊維強化複合材料で挟み込んで一体化されていることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項8】
繊維基材上に、樹脂透過性離型用シート及び樹脂拡散用メッシュを順次積層する工程と、
該繊維基材、該樹脂透過性離型用シート及び該樹脂拡散用メッシュからなる積層体を密閉用フィルムで覆って、該積層体を外気から遮断する工程と、
該密閉用フィルム内を減圧する工程と、
ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種100質量部に対し、50%粒子径D50が10μm以下であり且つ95%粒子径D95が30μm以下である有機リン酸金属塩粒子を10質量部以上17質量部以下添加したマトリクス樹脂を、該密閉用フィルム内に該樹脂拡散用メッシュを通じて注入し、該繊維基材に含浸させる工程と、
該マトリクス樹脂を硬化させる工程と、
該樹脂透過性離型用シートを剥離することにより該樹脂拡散用メッシュを分離し、難燃性繊維強化複合材料を得る工程と
を備えることを特徴とする難燃性繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記得られた難燃性繊維強化複合材料の片側表面又は両側表面に、無電解銅めっきにより無電解銅めっき層を形成し、その上に電気銅めっきにより電気銅めっき層を形成し、更にその上に電気ニッケルめっきにより電気ニッケルめっき層を形成する工程を更に備えることを特徴とする請求項8に記載の難燃性繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項10】
発泡体又はハニカム体からなるコア材の両側表面を繊維基材で挟み込んでなる構造体の両側表面に、樹脂透過性離型用シート及び樹脂拡散用メッシュをそれぞれ順次積層する工程と、
該構造体、該樹脂透過性離型用シート及び該樹脂拡散用メッシュからなる積層体を密閉用フィルムで覆って、該積層体を外気から遮断する工程と、
該密閉用フィルム内を減圧する工程と、
ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種100質量部に対し、50%粒子径D50が10μm以下であり且つ95%粒子径D95が30μm以下である有機リン酸金属塩粒子を10質量部以上17質量部以下添加したマトリクス樹脂を、該密閉用フィルム内に該樹脂拡散用メッシュを通じて注入し、該繊維基材に含浸させる工程と、
該マトリクス樹脂を硬化させる工程と、
該樹脂透過性離型用シートを剥離することにより該樹脂拡散用メッシュを分離し、サンドイッチパネルを得る工程と
を備えることを特徴とするサンドイッチパネルの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6の何れか一項に記載の難燃性繊維強化複合材料又は請求項7に記載のサンドイッチパネルを構成部材として使用したことを特徴とするエレベータかご。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−214651(P2012−214651A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81710(P2011−81710)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】