説明

難燃性繊維複合体

【課題】シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される繊維複合体に難燃成分を付与することで、極めて高い難燃性を示すポリエステル系繊維とセルロース系繊維からなる繊維複合体を提供する。
【解決手段】シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される繊維複合体であって、難燃成分を難燃元素量換算で1000ppm以上20000ppm以下を付与した難燃性繊維構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される繊維複合体に難燃成分を付与することで、極めて高い難燃性を示すポリエステル系繊維とセルロース系繊維からなる繊維複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系繊維とセルロース系繊維からなる繊維複合体としては、通常ポリエステルと綿、ポリエステルとレーヨンからなる布帛などがあり、衣料、寝装、インテリア材料に広く用いられている。しかしながら、防炎性能が求められる用途においては、難燃化されたポリエステル系繊維あるいはセルロース系繊維の単独素材の布帛が専ら用いられてきた。これは従来技術におけるポリエステル系繊維とセルロース系繊維の複合体は、ポリエステル系繊維またはセルロース系繊維の単独の燃焼性から予想されるよりはるかに燃焼しやすく、この傾向は各々の素材に対して難燃性を付与した場合において、より顕著であることによる。すなわち、従来のポリエステル系繊維の難燃化技術は、燃焼時の溶融落下(ドリップ)を促進させることによるものであり、一方、セルロース系繊維では燃焼時の炭化により難燃性を付与するものであることから、これらの素材を組み合わせると、互いの難燃性能が打ち消されて、それぞれ単独の素材の場合よりも燃焼しやすくなる、いわゆるSCAFOLDING効果が生じるためである。
【0003】
従来、ポリエステル系繊維の難燃性を高める方法として、ハロゲン系難燃剤を浴中法またはパッド法により繊維に吸尽もしくは付着させる方法や、地球環境保全に対する意識の高まりから、より環境負荷の少ない難燃加工技術として、リン系難燃剤を付着させる方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、接炎による溶融を促進して、熱源から速やかに離れるドリップ型と呼ばれる難燃挙動を生じる加工方法であり、溶融を阻害する混紡繊維製品への利用や他の機能との複合化が難しい問題があった。
【0004】
一方、セルロース系繊維の難燃化技術としては、種々の方法が提案されているが、中でも効果の大きい方法としてテトラキス(ハイドロキシメチル)ホスホニウム塩やN−メチロール(ジメチル)ホスホノプロピオンアミドを付着させる方法(非特許文献1)が知られている。
【0005】
しかしながら、例えば、前述のテトラキス(ハイドロキシメチル)ホスホニウム塩をポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体に処理したもの(特許文献1)では、十分な難燃性能を付与するためには、多量の難燃剤を付与しなければならず、風合い、耐光性等の布帛の特性が悪化するといった問題があった。
【0006】
また、テトラキス(ハイドロキシメチル)ホスホニウム塩をセルロース系繊維に処理し、環状リン酸エステルまたはヘキサシクロブロモドデカンをポリエステル系繊維に処理された難燃性複合繊維があるが(特許文献2参照)、満足すべき難燃性能を付与するためには、多量の難燃剤が必要であり、また風合いが低下するといった問題があった。
【0007】
さらに、2官能性リン化合物を共重合させたポリエステル系繊維を用いて、セルロース系繊維と繊維複合体を形成し、その後、テトラキス(ハイドロキシメチル)ホスホニウム塩などで後加工した難燃性繊維複合体があるが(特許文献3)、後加工時に難燃剤を多量に付与しなければ、目標の難燃性能を得られないといった問題があった。
【0008】
また、近年、ハロゲン系化合物やリン系化合物を使用せず、シリコーン系化合物を難燃助剤的に利用して、ポリエステル繊維に添加し、難溶融性を高める技術が見出されている(特許文献4、5)。しかし、このポリエステル繊維にセルロース系繊維と複合体にしても、燃焼時にコイルで保護された状態の試験であるJIS L 1091繊維製品の難燃試験法D法(接炎試験)ではドリップの抑制が観察されるものの、自己消火性が低くなる問題があった。
【特許文献1】特開平6−101176号公報
【特許文献2】特開平2−500454号公報
【特許文献3】特開昭62−276039号公報
【特許文献4】特開平8−209446号公報
【特許文献5】特開2005−97819号公報
【非特許文献1】「染色工業」22号(No.10)559〜568
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記した現状に鑑み、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体において、シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される繊維複合体に難燃成分を付与することで、極めて高い難燃性を有する繊維複合体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる目的を達成するために以下の構成を有する。
【0011】
シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される繊維複合体に難燃成分を付与した難燃性繊維複合体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される繊維複合体において、難燃成分を付与することで、極めて高い難燃性を示す繊維複合体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の難燃性繊維複合体の最良の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明で用いられるポリエステル系繊維を構成するポリエステル系ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリテトレメチレンテレフタレートなどに代表されるジカルボン酸とジオールの縮合物である。
【0015】
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルカルボン酸、ビス−(4−カルボキシフェニル)スルフォン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、1,2−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェニルオキシド−p,p´−ジカルボン酸、p−フェニレンジ酢酸、ジフェニルオキシド−p,p´−ジカルボン酸、trans−ヘキサヒドロテレフタル酸およびそれらのアルキルエステル、アリールエステル、およびエチレングレコールエステルなどのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0016】
また、ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールや、ビスフェノールA、ビスフェノールSおよびそのエチレングリコール、ポリエチレングリコール付加体、ジエチレングリコール、およびポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0017】
このようなポリエステル系ポリマーは、主成分のジカルボン酸とジオールに、他のジカルボン酸やジオールを第三成分として共重合しても良い。第三成分としては、具体的にはイソフタル酸、イソフタル酸スルホネートおよびアジピン酸等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0018】
ポリエステル系ポリマーとしては、さらには非石油系ポリエステル化合物であるポリ乳酸でもよい。
【0019】
本発明のセルロース系繊維とは、綿、麻のような天然繊維、ビスコースレーヨン、アセテートレーヨンのような再生セルロース繊維、アセテート(ジアセテート)またはトリアセテートなどの半合成繊維などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明のシリコーンレジンとは、有機ケイ素化合物の1種であり、シロキサン結合とケイ素原子に結合する有機基を同一分子内に有する化合物の中で、Rが水素または有機基である1官能性のRSiO0.5(M単位)、2官能性のRSiO1.0(D単位)、3官能性のRSiO1.5(T単位)、4官能性のSiO2.0(Q単位)で示される構成モノマー単位において、少なくともRSiO1.5(R:水素または有機基)を含む有機ケイ素化合物のことをいう。本発明では、少なくともT単位を含有していればよく、M単位、D単位、Q単位の一つ以上と組み合わせから構成されるシリコーンレジンを用いてもよい。
【0021】
また、
シリコーンレジンを構成する単位において、RSiO1.5が全構成単位に対して85mol%以上であることが好ましい。RSiO1.5がシリコーンレジン中85mol%以上含まれることにより、繊維複合体としたときの耐熱性・炭化性が向上し、さらに好ましくは99mol%以上である。
【0022】
また、RSiO1.5の含有率は29Si−NMRによって測定可能であり、RSiO1.5に帰属するピーク面積比から含有率を測定することが可能である。
【0023】
本発明では、Rが有機基である有機化シリコーンレジンであることが好ましく、メチル基あるいはフェニル基であるとポリエステルに対する分散性が向上し、かつ繊維複合体としたときの難燃性も向上するため好ましく、特にフェニル基が好ましい。フェニル基の含有量としては分散性と難燃性の観点からシリコーンレジンの末端基を除く側鎖有機基中85mol%以上が好ましく、さらに好ましくは99mol%以上であることが好ましい。フェニル基以外の有機基としては、シリコーンレジンの諸特性を低下させない範囲で種々の有機基が選定できる。
また、フェニル基の含有率は29Si−NMRによって測定可能であり、CSiO1.5に帰属するピーク面積比から含有率を測定することが可能である。
【0024】
本発明のシリコーンレジンの重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィ)で測定することができ、ポリスチレン換算で求めた値をいう。分散性と耐熱性の観点から、重量平均分子量は1500〜200000の範囲であり、さらに好ましくは3000〜100000の範囲である。
【0025】
また、本発明のシリコーン系化合物のシラノール基量は重量比で2%以上10%以下であり、更に好ましくは3%以上7%以下であることが好ましい。
【0026】
シラノール基量を本範囲内とすることで、燃焼時にポリエステル系繊維とシリコーン系化合物が架橋構造を形成し、ポリエステル系樹脂の炭化を促進するためドリップを抑制することができる。
【0027】
シラノール基量が本範囲を下回るとドリップ抑制の効果が低くなるため好ましくなく、本範囲を上回るとドリップ抑制の効果は平衡に達し、ポリエステル系樹脂と溶融混練する際にゲル化し、物性の低下や加工特性の低下を招くため好ましくない。
【0028】
このシラノール基量の測定には29Si−NMRにおいてシラノール基を含有しない構造由来のSiO2.0、RSiO1.5、RSiO1.0、RSiO0.5のピークの面積(積分値)とシラノール基を含有する構造由来のSi(OH)、SiO0.5(OH)、SiO1.0(OH)、SiO1.5(OH)、RSi(OH)、RSiO0.5(OH)、RSiO1.0(OH)、RSi(OH)、RSiO0.5(OH)、RSi(OH)のピークの面積(積分値)の比からシラノール基量を算出することが可能である。
【0029】
例えば、RSiO1.5とRSiO1.0(OH)の積分値の比が1.5(RSiO1.5):1.0(RSiO1.0(OH))であれば下記式1の通り求めることができる。
【0030】
【数1】

【0031】
また、ポリエステル系繊維に含まれるシリコーンレジンの含有量は、繊維あるいは複合体としたときの力学的特性の観点から0.5重量%以上30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは2.5重量%以上10重量%以下である。
【0032】
本発明のポリエステル系繊維は、シリコーンレジンを含むが、これは繊維を構成するポリマー中にシリコーンレジンが分散および/または相溶されていることを言う。繊維あるいは複合体としたときの力学的特性および難燃性能がともに具備される範囲であれば特に限定されないが、特に単繊維中に均一に、しかも微細に分散または相溶した方が難燃性の観点から好ましい。
【0033】
本発明では、繊維複合体が難燃成分を含んでなり、難燃成分における難燃元素換算量が1000ppm以上20000ppm以下であることが好ましく、X線マイクロアナライザー(XMA)によって難燃元素を観察することで求めた値をいう。
【0034】
本発明では難燃成分をポリエステル系繊維のみに含んでいても良く、またセルロース系繊維のみに含まれていても良い。最も好ましくは、ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の両繊維に含まれていることが難燃性能から好ましい。
【0035】
本発明で用いられる難燃成分とは、ハロゲン元素、アルカリ金属元素、Mg、アルカリ土類金属元素、Zn、B、Al、N、P、Sbを含んだ化合物である。
【0036】
本発明では、繊維複合体が難燃成分を含んで、難燃効果を十分発現できるので望ましいが、布帛の風合いを良好に維持する観点から難燃成分における難燃元素換算量が繊維複合体に対して、1000ppm以上20000ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは2000ppm以上10000ppm以下である。
【0037】
具体的な難燃成分としては、不燃性ガスの発生等の難燃作用を有するハロゲン系化合物が挙げられる。具体的には、臭素化ビスフェノール類、臭素化芳香族ジカルボン酸、多臭素化ベンゼンおよびその誘導体、臭素化ビフェニル誘導体などが挙げられる。
【0038】
また、表面温度を低下させる等の難燃作用を有する無機系化合物が挙げられる。具体的には、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化第二錫、メタ錫酸、水酸化第一錫などが挙げられる。
【0039】
さらに、炭化層形成による

熱の遮断および酸素の遮断などの難燃作用を有するリン系化合物が挙げられる。具体的には、トリフェニルフォスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルフォスフェート)、およびビスフェノールAビス(ジフェニルフォスフェート)のリン酸エステル系、あるいはN−メチロール・ジメチルホスホノプロピオンアミド、エチレンジメチルホスホン酸、ベンゼンホスホン酸誘導体のホスホン酸類、リン酸あるいは亜リン酸エステル、ホスフィン誘導体などが挙げられる。
【0040】
本発明においては、環境への負荷を考慮するとハロゲン系元素を含有しない化合物、いわゆる非ハロゲン系化合物を用いることが好ましい。かかる非ハロゲン系化合物としては、リン系化合物が好適に用いられる。具体的には、環式ホスホン酸エステルが難燃性能の観点から好ましく、このときのリン元素換算量は繊維複合体に対して、2500ppm以上5000ppm以下である。
【0041】
本発明では、シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体に難燃成分を付与することで、燃焼時にポリエステル系繊維部分の炭化が著しく促進され、一方、セルロース系繊維も燃焼時に炭化することから、本発明の繊維複合体は両繊維が炭化型、つまりノンドリップ型となり、高度な難燃性を達成することができる。
【0042】
本発明の難燃性繊維複合体を用いると、JIS L 1091 D法(コイル法)で規定する難燃性試験において溶融滴下せず、自己消火する状態を達成することが可能ある。JIS L 1091 D法(コイル法)は燃焼時に溶融滴下(ドリップ)する繊維製品における燃焼試験法である。ここで、溶融滴下しないとは試料片に接炎中あるいは接炎後に溶融による試験片落下が見られないことを言い、自己消火するとは、接炎後に炎が自然に消えることをいう。
【0043】
さらに、本発明では、難燃成分を付与することで、JIS L 1091 A−4法(垂直法)で規定する難燃性試験において溶融滴下せず、自己消火することが好ましい。JIS L 1091とは繊維製品の燃焼試験法でありA法(A−1法からA−4法)からD法まで適用品種ごとに存在する試験法の中で、垂直法と呼ばれているものであり、ドリップの有無を確認するのに適した方法である。ここで、溶融滴下しないとは試料片に接炎中あるいは接炎後に溶融による試験片落下が見られないことを言い、自己消火するとは、接炎後に炎が自然に消えることをいう。
【0044】
次に本発明の繊維複合体の製造方法に関して詳細に説明する。
【0045】
まず、ポリエステル系繊維に関しては、シリコーンレジンをポリエステル系繊維に付与する方法として、例えばシリコーンレジンをポリエステルの重合時に添加する方法、ポリエステルのチップとシリコーンレジンを2軸押し出し機等の混練機で混練する方法、またはポリエステルの紡糸時にシリコーンレジンを添加する方法などが挙げられるが、シリコーンレジンをポリエステルに付与することができればこれらに限るものではない。
【0046】
次に、シリコーンレジンを含有するポリエステル繊維の製造方法としては、通常の製糸工程、延伸工程が採用できる。また、製糸工程では高速紡糸、複合紡糸など、延伸工程では製糸工程と延伸工程を連続で行う方法なども利用できる。
【0047】
また、不織布とする場合には製糸工程と直結で、また、織編物などの場合では、製糸後、既知の方法により必要とされる繊維形態とすれば良い。
【0048】
本発明のポリエステル系繊維とセルロース系繊維は、糸形状物や帯形状物、または、織物、編物、不織布などの布帛形状物、綿状形状物などが挙げられるがこれらに限るものではない。繊維断面形状は丸型、異型(三角、四角、多角、扁平、中空断面など)を問わない。
【0049】
ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体は両者を、交織、交編、または交撚糸、混繊糸などとして得られる繊維複合体である。例えば、綿紡績糸や麻紡績糸などのセルロース系繊維をタテ糸またはヨコ糸のいずれかに用いて、ポリエステル系繊維のフィラメントと織物にしたり、交撚や混繊等でポリエステル系繊維とセルロース系繊維を複合した糸を、タテ、ヨコ両方に用い織物としても良い。
【0050】
難燃成分を繊維複合体に付与する方法としては、ポリエステル系繊維へ共重合、ブレンドする方法、製糸後、高次加工などにより付与する方法、セルロース系繊維に高次加工する方法、シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維の複合体に高次加工する方法などが利用できるが、いずれの方法で付与してもよい。
【0051】
また、本発明の難燃性繊維複合体にはヒンダードフェノール系、アミン系、ホスファイト系、チオエステル系などの酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、シアニン系、スチルベン系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリノン系、キナクリドン系などの有機顔料、無機顔料、蛍光増白剤、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン等の粒子、抗菌剤、静電剤などの添加剤が含有されても良い。
【0052】
また、本発明の難燃性繊維複合体は様々な後加工をすることができる。例えば、浴中加工、吸尽加工、コーティング加工、Pad−dry加工、Pad−steam加工などにより撥水性、親水性、制電性、消臭性、抗菌性、深色性などの機能を付与することができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
実施例における繊維、繊維複合体の調製およびその評価は、次の通り行った。
1.シリコーンレジン含有ポリエステル系繊維の調製
混練温度280℃、スクリュー回転数300rpm、L/D:30の2軸押し出し機で、シリコーンレジンとポリエステル系ポリマーとを所望の重量比で混練してチップを作製した。次にこのチップを真空乾燥機で150℃、12時間真空乾燥した後、紡糸温度285℃、紡糸速度1250m/min、口金口径0.23mm-6H(ホール)の条件で紡糸し未延伸糸を得た。次いで得られた未延伸糸を合糸して24フィラメントにした後、延伸温度85℃、延伸倍率3.3倍の条件で延伸し延伸糸を得た。なお、ここで用いたシリコーンレジンは表1記載のシリコーンレジンをそれぞれ所望量となるよう用いた。
2.ポリエステル系繊維とセルロース系繊維の繊維複合体の調製
所定量のシリコーンレジンを含むポリエステル系延伸糸を40番双糸の綿糸との混合重量比率が下記の撚糸を得て、ポリエステル65重量%/綿35重量%(目付170g/m)の筒編み地を作製した。
【0054】
次いで、表2記載の難燃成分をそれぞれ所望量となるよう、サーモゾル法あるいは浴中吸尽法で付与した。
3.繊維強度の評価方法
糸強度の測定方法として、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度100mm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重を示した点の応力を繊維の強度(cN/dtex)とした。
4.燃焼試験
燃焼試験
A.JIS L 1091(1992) D法に準じ接炎時・接炎後のドリップの有無、接炎回数を評価した。
【0055】
・ノンドリップ性:接炎後のドリップ回数を評価した。
【0056】
・自己消火性:接炎回数を評価した。
【0057】
なお、合格基準としてはドリップ回数が0回、接炎回数が3回以上とする。
B.JIS L 1091(1992) A−4法に準じて、接炎時・接炎後のドリップの有無、接炎後の自己消火性の有無を評価した。
【0058】
・ノンドリップ性:接炎後のドリップ回数を評価した。
【0059】
・自己消火性:接炎後の残炎時間(自己消火するまでの時間)を評価した。
【0060】
なお、合格基準としては、ドリップ回数が0もしくは1回、残炎時間が10秒以下とした。
【0061】
実施例1
有機基Rの100mol%がフェニル基であるとともに、構成単位の100mol%がRSiO1.5からなる、重量平均分子量が3000、シラノール末端を6.0重量%含むシリコーンレジン(製品名:217Flake、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)を2Torr、180℃で6時間脱水縮合し、シリコーンAを作製した。
【0062】
ポリエステル系ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートチップ(極限粘度:0.64)を使用し、シリコーンAを5.0重量%繊維内部に含有した延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体を得た。
次いで、上記の繊維複合体を難燃成分Aにて、リン元素を繊維複合体に対して4000ppm付与するように、190℃・2min、サーモゾル法で繊維内部に吸尽させ、難燃性繊維複合体を得た。
【0063】
表4記載のように、ポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、得られた繊維複合体の難燃評価ではD法をクリアし、しかもA−4法でドリップがなく、かつ、自己消火性に優れたものであった。
【0064】
実施例2〜6
表3に示すように、シリコーンレジン及び難燃成分の種類や含有量を変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル系繊維および繊維複合体を得た。
【0065】
表4記載のように、ポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、得られた繊維複合体の難燃評価ではD法をクリアし、しかもA−4法でドリップがなく、かつ、自己消火性に優れたものであった。
【0066】
実施例7
シリコーンEを用いた以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維および繊維複合体を得た。
【0067】
表4記載のように、得られたポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、得られた繊維複合体の難燃評価ではA−4法でのドリップ回数は1回あるものの、ノンドリップ性と自己消火性に優れたものであった。
【0068】
実施例8、9
ポリエチレンテレフタレートチップをポリプロピレンテレフタレートまたは、ポリブチレンテレフタレートとする以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維及び難燃性繊維複合体を得た。
【0069】
表4記載のように、ポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、得られた繊維複合体の難燃評価ではD法をクリアし、しかもA−4法でドリップがなく、かつ、自己消火性に優れたものであった。
【0070】
実施例10
L−ラクチドに対しオクチル酸錫を150ppm混合し、撹拌装置付きの反応容器中で窒素雰囲気中192℃の温度で10分間重合し、更に二軸押し出し機にてチップ化した後、140℃の温度の窒素雰囲気中で固相重合して、重量平均分子量15.1万のポリ−L−乳酸ポリマーを得た。このポリ乳酸を用いる以外は実施例1と同様にポリエステル系繊維及び難燃性繊維複合体を得た。
【0071】
表4記載のように、ポリエステル系繊維の糸強度は良好であり、得られた繊維複合体の難燃評価ではD法をクリアし、しかもA−4法でドリップがなく、かつ、自己消火性に優れたものであった。
【0072】
比較例1
ポリエチレンテレフタレートチップとシリコーンEのみを繊維内部に10重量%含有した延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体を得た。
【0073】
表4記載のようにD法及びA−4法でドリップし、自己消火性も低いものであった。
【0074】
比較例2
ポリエチレンテレフタレートチップのみの延伸糸を作製した後、セルロース系繊維である綿糸との撚糸を得て、繊維複合体を得た。次いで、上記の繊維複合体を難燃成分Aにて、リン元素を繊維複合体に対して11000ppm付与するように、190℃・2min、サーモゾル法で繊維内部に吸尽させ、本発明の難燃性繊維複合体を得た。
【0075】
表4記載のようにD法及びA−4法でドリップし、ノンドリップ性が低いものであった。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンレジンを含むポリエステル系繊維とセルロース系繊維から構成される繊維複合体であって、難燃成分を難燃元素量換算で1000ppm以上20000ppm以下を含むことを特徴とする難燃性繊維複合体。
【請求項2】
シリコーンレジンを構成するモノマー単位において、RSiO1.5(R:水素または有機基)単位が85mol%以上であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性繊維複合体。
【請求項3】
シリコーンレジンの有機基Rの少なくとも一部がフェニル基であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性繊維複合体。
【請求項4】
シリコーンレジンの重量平均分子量が、1500以上200000以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の難燃性繊維複合体。
【請求項5】
難燃元素が非ハロゲン系元素であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の難燃性繊維複合体。

【公開番号】特開2007−182664(P2007−182664A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329771(P2006−329771)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】