説明

難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物及びそれよりなる成形体

【課題】 難燃性、耐熱性、耐寒性、柔軟性に優れる難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物及びそれよりなる成形体を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、難燃剤0.1〜500重量部よりなることを特徴とする難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物及びそれよりなる成形体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性、耐熱性、耐寒性、柔軟性に優れる難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物及びそれよりなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器や、FA機器等は近年高性能化が進み、様々な環境で使用され、耐熱性、耐寒性、耐油性、柔軟性、耐摩耗性等に加え難燃性の要求特性が近年益々厳しくなっている。
【0003】
この様な状況下、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーは、引張り強度、耐油性、耐熱性等に優れた材料であることから種々の成形体として使用されている。
【0004】
その際に、これら熱可塑性エラストマーが難燃性を必要とする分野においては、難燃剤を添加し難燃性を付与し使用されている。例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーに特定の難燃剤を添加した難燃性ポリエステル系熱可塑性エラストマー組成物にて被覆された耐熱難燃性絶縁ケーブル(例えば、特許文献1参照。)や光ファイバ心線(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−107919号公報
【特許文献2】特開2003−306350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に提案の難燃性ポリエステル系熱可塑性エラストマーにて被覆された絶縁ケーブルや光ファイバ心線は、耐熱性はある程度高いものの環境温度に対する性能の変化が大きく、例えば得られた絶縁ケーブルや光ファイバ心線は環境温度により柔軟性が変わってしまうと言う問題、及び耐寒性が良くないと言う問題を有していた。
【0007】
一般に熱可塑性エラストマーを単独で難燃性が必要な分野に用いる場合、難燃性に劣り難燃剤の添加が必要である。そこで、熱可塑性エラストマーの特性である引張り強度、耐油性、耐熱性等を保持し、かつ難燃性に優れた熱可塑性エラストマー樹脂組成物が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討した結果、ハードセグメントに特定の芳香族アミド単位を用いた芳香族アミドブロック共重合体及び難燃剤からなる難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物が難燃性、耐熱性、耐寒性、柔軟性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、難燃剤0.1〜500重量部よりなることを特徴とする難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物及びそれよりなる成形体に関するものである。
【0010】
【化1】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物は、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体と難燃剤よりなる樹脂組成物である。
【0012】
ここで、本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物に用いる芳香族アミドブロック共重合体を構成する一般式(1)で示される芳香族アミド単位中のRおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基であり、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また直鎖状又は分岐状であってもよい。
【0013】
該オキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシペンタメチレン基、オキシヘキサメチレン基等の無置換オキシアルキレン基またはこれらにメチル基、エチル基等のアルキル置換基もしくはフェニル基等のアリール置換基が1個以上結合したものが挙げられる。さらには、上記の無置換オキシアルキレン基単位やアルキルまたはアリール置換オキシアルキレン基単位が任意に2個以上結合したものであっても良く、これらの1種または2種以上が使用される。中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。なお、これらオキシアルキレン基中の酸素は、一般式(1)において直接ベンゼン環に結合することが好ましい。
【0014】
該アルキレンカルバモイル基としては、例えばメチレンカルバモイル基、エチレンカルバモイル基、トリメチレンカルバモイル基、テトラメチレンカルバモイル基、ペンタメチレンカルバモイル基、2,2−ジメチルトリメチレンカルバモイル基、ネオペンチルカルバモイル基、ヘキサメチレンカルバモイル基、3−メチルペンタメチレンカルバモイル基、2−メチルヘプタメチレンカルバモイル基、ヘプタメチレンカルバモイル基、オクタメチレンカルバモイル基、ノナメチレンカルバモイル基、デカメチレンカルバモイル基、1,4−シクロヘキシレンカルバモイル基等を挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。中でもエチレンカルバモイル基が好ましい。
【0015】
該アリーレンカルバモイル基としては、例えば2−ベンジルカルバモイル基、3−ベンジルカルバモイル基、4−ベンジルカルバモイル基、1,2−フェニレンカルバモイル基、1,3−フェニレンカルバモイル基、1,4−フェニレンカルバモイル基等を挙げることができ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0016】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物に用いる芳香族アミドブロック共重合体を構成するポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位とは、公知のものであれば特に制限はない。
【0017】
該ポリエステルは、例えばジカルボン酸あるいはジカルボン酸無水物と短鎖ポリオールを縮合重合することによって得ることができる。該ジカルボン酸あるいはジカルボン酸無水物成分としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。一方、該短鎖ポリオール成分としては、例えば脂肪族、脂環式、芳香族、置換脂肪族または複素環式のジヒドロキシ化合物;トリヒドロキシ化合物;テトラヒドロキシ化合物等を挙げることでき、具体的な短鎖ポリオール成分としては、例えば1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカメチレンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシレンジオール、ジヒドロキシエチルテトラヒドロフタレート、トリメチロールプロパン、グリセリン、2−メチルプロパン−1,2,3−トリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0018】
該ポリエステルを得る別の方法として、例えばβ−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物の1種または2種以上をヒドロキシ化合物と共に反応せしめる方法によることも可能である。
【0019】
該脂肪族ポリ(オキシアルキレン)としては、例えばポリ(オキシエチレン)、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)、ポリ(オキシヘキサメチレン)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)のエチレンオキシド付加重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0020】
該ポリカーボネートとしては、例えばヒドロキシ化合物の1種または2種以上と、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のカーボネート化合物とのエステル交換法によって得られたものが挙げられ、具体的なカーボネート化合物としては、例えばポリ(1,6−ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(2,2’−ビス(4−ヒドロキシヘキシル)プロピレンカーボネート)等が挙げられる。また、ポリカーボネートを得る他の方法としては、いわゆるホスゲン法によっても得ることもできる。
【0021】
また該ポリジエンとしては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0022】
該ポリオレフィンとしては、例えばポリジエンを水素添加したポリオレフィン;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類の単独重合体;ランダム共重合体;交互共重合体;ブロック共重合体等が挙げられる。
【0023】
該ポリオルガノシロキサンとしては、例えばポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)等が挙げられる。
【0024】
その中でも、耐熱性に優れた難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物が得られることから、芳香族アミドブロック共重合体が、一般式(1)で示される芳香族アミド単位とポリエステルからなることが好ましく、特に一般式(1)で示される芳香族アミド単位とポリ(ε−カプロラクトン)からなることが好ましい。
【0025】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物で用いられる芳香族アミドブロック共重合体は、一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位が直接結合していても、他の化合物残基を含有していても良い。他の化合物残基としては、例えば二官能性ハライド化合物、二官能性イソシアネート化合物、二官能性カーボネート化合物、二官能性エステル化合物、二官能性アシルラクタム化合物、二官能性エポキシ化合物、二官能性テトラカルボン酸無水物等から誘導される化合物残基が挙げられ、これらの1種または2種以上を含有していても良い。
【0026】
二官能性ハライド化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、シュウ酸ジクロライド、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ピメリン酸ジクロライド、スベリン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、ドデカン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、フタル酸ジクロライド等の二官能性酸クロライドから誘導される化合物残基;シュウ酸ジブロマイド、マロン酸ジブロマイド、コハク酸ジブロマイド、グルタル酸ジブロマイド、アジピン酸ジブロマイド、ピメリン酸ジブロマイド、スベリン酸ジブロマイド、アゼライン酸ジブロマイド、セバシン酸ジブロマイド、ドデカン酸ジブロマイド、テレフタル酸ジブロマイド、イソフタル酸ジブロマイド、フタル酸ジブロマイド等の二官能性酸ブロマイドから誘導される化合物残基等を挙げることができる。
【0027】
二官能性イソシアネート化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等から誘導される化合物残基が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。その中でも、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等から誘導される化合物残基が好ましく用いられる。
【0028】
二官能性カーボネート化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも特に反応性に優れ、効率よく難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等から誘導される化合物残基が好ましい。
【0029】
二官能性エステル化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル、フタル酸ジフェニル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジフェニル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、フタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、フタル酸ジエチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、4,4−ビフェニルジカルボン酸ジエチル等から誘導される化合物残基が挙げられ、その中でも特に反応性に優れ、効率よく難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、テレフタル酸ジフェニル、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジメチル等から誘導される化合物残基が好ましい。
【0030】
二官能性アシルラクタム化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)、イソフタロイルビス(ε−カプロラクタム)、アジポイルビス(ε−カプロラクタム)、スクシニルビス(ε−カプロラクタム)等から誘導される化合物残基が挙げられる。中でも特に反応性に優れ、効率よく難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)から誘導される化合物残基が好ましい。
【0031】
二官能性エポキシ化合物から誘導される化合物残基としては、例えば、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等の芳香族ジカルボン酸ジグリシジルエステルから誘導される化合物残基;p−フェニレンジグリシジルエーテル等の芳香族ジグリシジルエーテルから誘導される化合物残基;ジエチレングリコールジグリシジルエステル等の脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエステルから誘導される化合物残基;ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジカルボン酸ジグリシジルエーテルから誘導される化合物残基等が挙げられる。
【0032】
二官能性芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される化合物残基としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等から誘導される化合物残基が挙げられる。
【0033】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物が柔軟で伸縮性に優れることから、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる単位の数平均分子量は200〜10000の範囲であることが好ましく、特に300〜5000の範囲であることが好ましい。
【0034】
また、本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体における芳香族アミド単位の含有量は特に制限はなく、柔軟性、耐熱性、耐寒性に優れた難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物が得られることから、芳香族アミド単位の含有量は5〜95重量%の範囲であることが好ましく、特に5〜50重量%の範囲であることが好ましく、さらに15〜45重量%であることが好ましい。
【0035】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCと記す。)で測定した標準ポリスチレン換算の数平均分子量が10000〜1000000であることが好ましく、特に30000〜500000であることが好ましい。また、該芳香族アミドブロック共重合体は、硬さがタイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:1997年)が60〜99であることが好ましく、特に65〜98であることが好ましい。
【0036】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体の製造方法としては、一般式(1)で示されるアミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体を製造することが可能な限りにおいていかなる方法を用いてもよく、例えば一般式(1)で示されるアミド単位からなる化合物と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位とを、直接反応させる方法;一般式(1)で示されるアミド単位からなる化合物と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位とを反応させる際に、二官能性ハライド化合物、二官能性イソシアネート化合物、二官能性カーボネート化合物、二官能性エステル化合物、二官能性アシルラクタム化合物、二官能性エポキシ化合物、二官能性テトラカルボン酸無水物等よりなる群から選ばれる1種以上の単位存在下に反応させる方法;等が挙げられる。その際の重合方法としては、例えば溶液重合法、溶融重合法、界面重合法、固相重合法等が挙げられ、これらを組み合わせて製造してもよい。その中でも容易に分子量を増大させた芳香族アミドブロック共重合体が得られることから、溶液重合法を行った後に溶融縮合を行うことが好ましい。
【0037】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する難燃剤としては、難燃効果を発揮するものであれば特に制限は無く公知のものを使用でき、その中でも効率よく難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物に難燃性を付与できることから、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フッ素系難燃剤よりなる群から選ばれる1種以上の難燃剤であることが好ましい。
【0038】
塩素系難燃剤としては、例えば塩素化パラフィン、パークロロシクロデカン、パークロロシクロペンタデカン、無水クロレンド酸、クロレンド酸、塩素化ポリエチレン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0039】
リン系難燃剤としては、例えばトリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジ2,6−キシレニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリフェニルホスフェート、レゾシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、レゾルシノールジフェニルホスフェート等の芳香族ホスフェート;芳香族ホスフェートの縮合物;2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート等のアルキルアリールホスフェート;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジメチルメチルホスフォネート、ジエチルエチルホスフォネート等の脂肪族ホスフェート;脂肪族ホスフェートの縮合物;ホスフォリネート等のホスフェート;トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(2−クロロエチレン)ホスフェート、トリス(1,3−ジクロロ−2−プロピル)ホスフェート、トリス(2,4−ジブロモフェニル)ホスフェート、テトラキス−(2−クロロエチル)エチレンジホスフェート等の含ハロゲンホスフェート;含ハロゲンホスフェートの縮合物;縮合型ポリホスフォネート;テトラキスヒドロキシメチルホスホニウムサルフェート;赤リン;ポリリン酸アンモニウム;ポリリン酸アンモニウム・アミドポリクロロホスフェート;ビニルホスフェートオリゴマー;ビニルホスフォネートオリゴマー;テトラフェニル−m−フェニレンジホスフェート;アミドホスファゼン;ホスフィンオキサイド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0040】
臭素系難燃剤としては、例えばデカブロモジフェニルエーテル、トリブロモフェニルアリルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモビスフェノールA(以下、TBAと略す。)、TBA−カーボネートオリゴマー、TBA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、TBA−エトキシレート、ヘキサブロモシクロドデカン、トリブロモフェノール、ジブロモフェノール、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ヘキサブロモベンゼン、トリブロモスチレン、ペンタブロモスチレン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモネオペンチルアルコール、ジブロモネオペンチルアルコール、ポリジブロモフェニレンオキサイド、キサブロモシクロドデカン、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレート、臭素化ポリスチレン、臭素化エポキシオリゴマー、ビオメソブロモフェノキシエタン、臭素化アセナフチレン、TBA−エポキシオリゴマー、TBA−エポキシポリマー、ペンタブロモベンジルアクリレート、テトラブロモグリシジルエーテル、TBA−グリシジルエーテル、エチレンビステトラブロモフタルイミド、バイロチェック、TBA−ビスヒドロキシエチルエーテル、テトラブロモビスフェノールS−ビスヒドロキシエチルエーテル、TBA−ビス(ジブロモプロピル)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールS、トリス(ジブロモプロピル)・イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)・ホスフェート、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、ポリブロモフェニルインダン、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化フェニレノキサイドオリゴマー、エチレンビス(ポリブロモフェニールエーテル)、臭素化芳香族トリアジン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0041】
無機系難燃剤としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ;スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、リン酸メラミン等のグアニジン塩;ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモン、ホウ酸、アンモニウムアルミニウムハイドロオキシカーボネート、モリブデン酸アンモン、モリブデン酸化物、酸化モリブデン、ベンゾイルフェロセン、フェロセン;酸化スズ、水和スズ化合物、スズ酸亜鉛等のスズ化合物;芳香族スルフェンアシド、アセチルアセトン、サリチルアルデヒド、8−ヒドロキシノリン、ジメチルグリオキシモの金属塩等の無機錯体;リン−窒素化合物、カルシウム−アルミネート水和物、カルシウム−アルミニウム−シリケート、ジルコニウム化合物、ドーソナイト;脂肪族スルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、芳香族スルホンアミド塩、スルフイミド塩、イミドジリン酸テトラエステル塩、フッ素化脂肪族スルホン酸塩等のアルカリ・アルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0042】
シリコーン系難燃剤としては、例えばポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)等のポリオルガノシロキサン;エポキシ変性ポリオルガノシロキサン、メタクリル基変性ポリオルガノシロキサン、アミノ基変性ポリオルガノシロキサン;等のシリコンオイル、シリコン樹脂、シリコンゴム、シリコンパウダー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0043】
窒素系難燃剤としては、例えばメラミン、シアヌール酸、メラミンシアヌレート、メラミンフォスフェート等のトリアジン化合物;ポリリン酸メラミン;硫酸メラミン;尿素;イソシアヌレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0044】
フッ素系難燃剤としては、例えばフッ素系金属塩、ポリテトラフロロエチレン、テトラフロロエチレンとヘキサフロロプロピレンの共重合体、フッ素系フタルイミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用できる。
【0045】
該難燃剤の配合量は難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物に用いられる芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、0.1〜500重量部であり、好ましくは3〜350重量部、特に好ましくは5〜250重量部である。難燃剤が0.1重量部未満では難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物の難燃性が得られず、500重量部を超えると難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物の機械特性が低下することがある。
【0046】
また本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物には、耐熱性、特に耐熱変色性を向上させるため安定剤を添加してもよく、該安定剤としては、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体;フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;ヒンダードフェノール系化合物;ヒドロキシジオキサホスフェピン系化合物;ヒドロキシアクリレート系化合物;チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、チオジプロピオン酸エステルなどの硫黄含有化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシドなどのスズ系化合物;ラクトン系化合物;ヒドロキシルアミン系化合物;ビタミンE系化合物;アリルアミン系化合物;アミン−ケトン系化合物;芳香族第二級アミン系化合物;モノフェノール系化合物;ビスフェノール系化合物;ポリフェノール系化合物;ベンツイミダゾール系化合物;ジチオカルバミン酸系化合物;チオウレア系化合物;有機チオ酸系化合物等が挙げられ、該安定剤の添加量は特に制限なく、難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物に用いられる芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、0.0001〜10重量部が好ましく用いられる。
【0047】
さらに本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物には、成形加工性を向上させる目的で、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸類;ステアリン酸エステル;シリコンオイル;ワックス類;エチレンビスステアリルアミドなどの滑剤を添加することもできる。これらの添加量は特に制限はなく、難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物に用いられる芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、0.05〜5重量部が好ましく用いられる。
【0048】
また本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物には、例えば染料;有機顔料あるいは無機顔料;無機補強剤;可塑剤;ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等の光安定剤;ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、フェニルサィシレート系化合物、フェニルアクリレート系化合物等の紫外線吸収剤;発泡剤;帯電防止剤;導電剤;結晶核剤;可塑剤;離型剤;カルボジイミド等の加水分解防止剤;等の公知の添加剤を加えることができる。
【0049】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物は芳香族アミドブロック共重合体と難燃剤を混合することにより得られ、混合方法としては例えば溶液混合、溶融混合等の方法により行われる。
【0050】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。加熱溶融混合する際の温度は120〜300℃が好ましく、特に好ましくは150〜270℃である。
【0051】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる成形体とは、例えばケーブル用被覆体、シート・フィルム、中空成形体、糸等が挙げられる。
【0052】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるケーブル用被覆体とは、コア材と被覆体からなるケーブルにおいて、本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を、コア材を被覆する被覆体とし用いたものである。該コア材としては一般的にケーブルのコア材として用いられるものであれば、長さ、太さに特に制限はなく、例えば電線、光ファイバ等を挙げることができ、より具体的には、例えば銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線、白金線等の電線;石英ガラスファイバ、多成分ガラスファイバ、プラスチッククラッドシリカファイバ、プラスチックファイバ等の光ファイバ等を挙げることができる。
【0053】
また、本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物による被覆が行われていれば、その被覆の構成に特に制限はなく、コア材と被覆体である難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物との間に、例えばフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン等の単量体よりなる単独重合体又は共重合体;ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系熱可塑性エラストマー;ポリオルガノシロキサン;ポリオレフィン;ポリエチレン;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル系重合体等の中間層により被覆されていても構わない。
【0054】
該ケーブル用被覆体の製造方法としては、ケーブル用被覆体を製造することが可能である限りにおいて如何なる制限を受けることはなく、公知の方法により製造することができ、例えば押出し成形、射出成形、圧縮成形等の溶融成形法により製造することができる。
【0055】
溶融成形法によりケーブル用被覆体を製造する際の成形温度としては、ケーブル用被覆体の製造が可能である限り如何なる温度でもよく、その中でも生産効率よく、外観にも優れるケーブル用被覆体が製造可能であることから150℃以上350℃以下であることが好ましく、特に200℃以上300℃以下であることが好ましい。
【0056】
また、本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるケーブル用被覆体は、耐熱性を向上させるために難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を、必要に応じて架橋しても良い。架橋する方法としては、例えば電子線、加速電子線、γ線、X線、α線、紫外線等を照射する方法が挙げられ、その中でも加速電子線を照射する方法が好ましい。また、例えば予め難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物に有機過酸化物等を配合し、成形後に加熱処理する化学架橋する方法も挙げられる。
【0057】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるケーブル用被覆体は、必要に応じて弾性回復性や熱収縮特性を向上させるため熱処理することができる。熱処理はケーブル用被覆体が融着しない温度範囲であれば特に制限はなく、温度は50℃以上180℃以下が好ましく、特に好ましくは70℃以上130℃以下である。熱処理時間は0.005時間以上10時間以下が好ましく、特に好ましくは1時間以上3時間以下である。
【0058】
そして、該ケーブル用被覆体とコア材を接合することによりケーブルとなり、その際の接合方法としては、ケーブル用被覆体とコア材を接合することが可能である限りにおいて如何なる制限を受けることはなく、例えばケーブル用被覆体を製造すると同時にコア材と接合しケーブルとする方法;ケーブル用被覆体を製造した後にコア材と接合しケーブルとする方法等が挙げられ、その中でもケーブルの生産性に優れることから、ケーブル用被覆体を製造すると同時にコア材と接合しケーブルとする方法が好ましく、その中でも特にケーブル被覆体とコア材を接合する際にクロスヘッドダイを用いた溶融押出し成形法が好ましい。
【0059】
クロスヘッドを用いた溶融押出し成形法によりケーブルとする際には、ケーブル用被覆体を製造する際と同様の条件下で行うことが可能であり、例えば成形温度は150℃以上350℃以下であることが好ましく、特に200℃以上300℃以下であることが好ましい。
【0060】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物によりなるケーブル用被覆体は、例えば絶縁電線、電子機器配線用電線、自動車用電線、機器用電線、フレキシブル電線、テープ電線、電源コード、屋内配線用絶縁電線、電力用電線、制御用電線、通信用電線、計装用電線、信号用電線、移動用電線、船用電線、車両用電線、航空機用電線、ヒーティング電線、消防用耐火・耐熱電線、原子力発電所用電線等の被覆体とし用いることができる。
【0061】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるシート・フィルムは、長さ、幅、厚さに特に制限はなく、平面状成形物であり、テープ類、リボン類も含む。シート、フィルムは高分子学会編集の高分子辞典(朝倉書店、1971年)によると200μm未満をフィルム、200μm以上をシートとしてシートとフィルムに区別されるが、本発明では両者をあわせてシート・フィルムとみなす。シート・フィルムの厚みは0.5μm〜10mmが好ましく、特に好ましくは10μm〜5mmである。
【0062】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるシート・フィルムの製造方法は、特に制限はなく、公知の方法により製造することができ、例えば溶融成形法、溶液流延法等を用いることができる。
【0063】
溶融成形法としては、例えばTダイを用いた方法やインフレーション法等の溶融押出し法;カレンダー法;熱プレス法;射出成形法等が挙げられ、中でも得られるシート・フィルムの厚さムラが小さくできるTダイを用いた溶融押出し法が好ましい。溶融成形法の条件は、成形方法に応じて適宜選択され、例えばTダイを用いる溶融押出し法では樹脂温度が結晶融点以上分解温度以下の範囲で成形することが好ましく、結晶融点よりも10〜50℃高い温度範囲で成形することが特に好ましい。
【0064】
溶融成形法により成形する際の温度は、150℃以上350℃以下が好ましく、特に200℃以上300℃以下が好ましい。
【0065】
また溶液流延法としては、例えば各成分を溶媒に溶解または分散させた液状物を適当なキャリアー(支持体)上に流延し、次いで溶剤を乾燥除去することで行うことができる。キャリアーとしては特に制限は無く、一般的な溶液流延法で用いられるものが使用され、例えばガラス板、金属ドラム、スチールベルト、フッ素樹脂ベルト、金属箔等の平板;ベルトまたはロール等を挙げることができる。また、該溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、四塩化炭素、二塩化エチレン、ヘキサフルオロイソプロパノール等のハロゲン化溶剤;ジメチルスルホキシド;ビニルピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン等を用いることができる。これらの溶剤はそれぞれ単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
溶液流延法で成形する際の溶液の濃度は0.1〜60重量%が好ましく、特に好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは10〜50重量%の範囲である。
【0067】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるシート・フィルムは、単独またはいくつかの他の重合体からなるシート・フィルム、面上の支持体、多孔質のフィルムや不織布、紙状物、織編物等を積層しても良く、積層方法としては特に制限は無く、例えば押出しラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、無溶剤ラミネート法、ドライラミネート法、共押出しラミネート法等が挙げられる。また、シート・フィルムは未延伸で用いることができ、所望により一軸または二軸方向に延伸したシート・フィルムとして用いることができる。またかかる延伸加工後コロナ放電処理等の表面処理を行うこともできる。
【0068】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるシート・フィルムは必要に応じて弾性回復性や熱収縮特性を向上させるため熱処理することができる。熱処理はシート・フィルムが融着しない温度範囲であれば特に制限はなく、100℃以上180℃以下が好ましく、特に好ましくは100℃以上130℃以下である。熱処理時間は0.005時間以上10時間以下が好ましく、特に好ましくは1時間以上3時間以下である。
【0069】
また、本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるシート・フィルムは、例えばフリードローイング;リッジフォーミング;プラグアンドリング成形;スリップ成形;圧空成形;マッチドモールド成形;直接法、ドレイプ成形法、エア・スリップ法、スナップバック法、プラグ・アシスト法、エア・クッション法等の真空成形;ヒートシール等の二次加工を行うことができる。
【0070】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるシート・フィルムは、例えば救急絆創こう、サージカルテープ、リハビリテープ等の医療補助用テープの基材;消炎、鎮痛、血行促進等の疾患治療用テープの基材;手術用手袋;紙おむつ、ナプキン等の衛生用品固定用テープの基材;スポーツ衣料用途;コンベヤベルト、樹脂コンベヤベルト、急傾斜コンベヤ、円筒コンベヤベルト等の搬送用コンベヤベルト類;Vベルト、歯付きベルト等の動力伝達ベルト類;自動車用、鉄道用、産業機械用、建築土木用等の防振ゴム;防舷材、金属をはじめとする各種素材のライニング;化粧板、静電防止シート、ルーフィング用シート等のシート;携帯電話、電化製品、リモコン等のパッキン;シーリング材、防水材、オイルシール、メカニカルシール、成形パッキン、グランドパッキン等の運動用シール;Oリング、ガスケット等の固定用シール;シリンジ用ガスケット;マスク;サック;手袋;コンドーム;水枕;哺乳器用乳首;キャップ容器;レインウェア;エアバック;ダイヤフラム;ラバーダム;ガスのう膜;オイルフェンス;フレキシブルコンテナ;ゴルフボール、サッカーボール等のボール類;スポーツ床;フェンス用緩衝ゴム;チェーン;舗装用ブロック;自動車用ブーツ;ウェザーストリップ;建築用ガスケット;免震ゴム;手すり;滑り止め;エアータイト;スペーサー;合わせガラス;止水板;伸縮可とう継ぎ手;糸ゴム;ゴムひも;ハンドレール;グロメット;インシュレーター;ストッパー;ワイパーブレード;ジョイント;制振ゴム;ゴムスイッチ;玩具;靴;足ゴム;ゴルフクラブ、テニスラケット、スキーポール等のグリップ部分;シーラント;電気部品;電子部品;半導電フィルム、帯電防止フィルム、医薬フィルム等のフィルム;タイヤ;精密機器、精密加工機類の振動吸収材;スポーツ用品;日用雑貨;座席シート等に使用できる。
【0071】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる中空成形体は、中空状に成形したものであり、形状、長さ、外径、内径に特に制限はない。
【0072】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる中空成形体の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法により製造することができ、例えば単軸押出し機、二軸押出し機又は特殊ミキシング型押出し機等の押出し機を用いた溶融押出し法;熱プレス法;射出成形法;ブロー成形法等により製造する方法が挙げられる。ここで成形条件は成形方法に応じて適宜選択され、樹脂温度が結晶融点以上分解温度以下の範囲で成形することが好ましく、特に結晶融点よりも10〜50℃高い温度範囲で成形することが好ましい。例えば溶融押出し法の場合には、150℃以上350℃以下が好ましく、特に好ましくは200℃以上300℃以下である。
【0073】
また、中空成形体に寸法精度が要求される場合にはマンドレルを使用しても良い。
【0074】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる中空成形体は、強度を向上させるために、例えばポリエステル繊維、芳香族アミド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維等により補強を行うことができる。また硬鋼線による補強を行うこともできる。
【0075】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる中空成形体は、例えば空圧チューブ、油圧チューブ、熱収縮チューブ等のチューブ類;空圧ホース、油圧ホース、熱収縮ホース、酸素ホース、蒸気用ホース、送吸油ホース、ガス用ホース、編み上げホース、布巻きホース、高圧ホース、サクションホース、ダクトホース、スプレーホース、送排水用ホース、耐圧補強ホース、静電気防止ホース等のホース類;印刷用ロール、製紙用ロール、紡績用ロール、製鉄用ロール、染色化繊用ロール等の工業用ロール;事務機器用ロール;帯電ロール、転写ロール、給紙ロール、定着ロール等のOA機器用ロール;自動化機器用ロール等の各種機器用ロール;もみすり機等の農業機械用ロール;ラック&ピニオンブーツ、等速ジョイントブーツ、ステアリングブーツ、ダストブーツ、サスペンションブーツ等のブーツ類;エアーダクト等に使用できる。
【0076】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる糸は、紡糸したものであれば如何なるものでもよく、太さ、形状に特に制限はない。
【0077】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる糸の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を溶融させ紡糸ノズルから押出して巻き取る溶融紡糸法;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ビニルピロリドン等の溶剤に難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を溶解させた原液を紡糸ノズルから押出して巻き取る湿式紡糸法、乾式紡糸法等が挙げられる。
【0078】
溶融紡糸法により製造する際の温度は、150℃以上350℃以下が好ましく、特に好ましくは200℃以上300℃以下である。
【0079】
湿式紡糸法、乾式紡糸法により製造する際の溶液の濃度は、25重量%以上80重量%以下の範囲が好ましく、特に30重量%以上60重量%以下の範囲が好ましい。
【0080】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる糸は必要に応じて弾性回復性や熱収縮特性を向上させるため熱処理することができる。熱処理は糸が融着しない温度範囲であれば特に制限はなく、100℃以上180℃以下が好ましく、特に好ましくは100℃以上130℃以下である。熱処理時間は0.005時間以上10時間以下が好ましく、特に好ましくは1時間以上3時間以下である。
【0081】
また、本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる糸はストレッチ感の温度依存性が小さく、0℃の弾性率(E0)と100℃の弾性率(E100)の比(E0/E100)が1以上5以下であることが好ましく、特に1以上2以下であることが好ましい。
【0082】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる糸はそのまま裸糸として使用されたり、他繊維で被覆して被覆糸として使用される。他繊維としては、例えばポリアミド繊維、ウール、ポリエステル繊維、綿、アクリル繊維等公知の繊維を挙げることができる。
【0083】
本発明の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる糸は、例えば水着、スキーウェアー、サイクリングウェアー、レオタード、ランジェリー、ファンデーション、肌着等の衣料;パンティストッキング、靴下、サポーター、帽子、手袋、パワーネット、包帯等の雑品;紙おむつ、ナプキン等の衛生用品固定用テープ;テニスラケットのガット;カーシート地糸、ロボットアーム用金属被覆糸、不織布等に使用できる。
【発明の効果】
【0084】
本発明は、新規な難燃性、耐熱性、耐寒性、柔軟性に優れる難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物及びそれよりなる成形体を提供することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0086】
評価・分析に用いた機器及び方法を以下に示す。
【0087】
〜難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体の数平均分子量の測定〜
カラム(東ソー(株)製、商品名TSK−GEL GMHHR−H)を装着したGPC装置(東ソー(株)製、商品名HLC−8020)により、カラム温度40℃、流量0.4ml/分の条件下で、溶離液に20mmol/lの塩化リチウム−N−メチル−2−ピロリドン溶液を用いて測定し、標準ポリスチレン換算で算出した。
【0088】
〜難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成するポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量の測定〜
ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は、核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX270型)を用い、重水素化ジメチルスルホキシド中、室温の条件でH−NMRを測定し、芳香族基とラクトン単位のメチレン基のピーク強度比より、ε−カブロラクトンの平均重合単位(重合度)を求め、その重合度にε−カブロラクトンの分子量を掛けることにより算出した。
【0089】
〜難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体の融点測定〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/分、−100〜300℃の範囲で測定した。
【0090】
〜難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を構成する芳香族アミドブロック共重合体のタイプAデュロメータ硬さ〜
芳香族アミドブロック共重合体を圧縮成形した厚さ2mmのシートを用いて、タイプAデュロメータ硬さ(JIS K6253:1997年)を測定した。
【0091】
〜耐熱性〜
難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなるシート・フィルム、中空成形体、糸及びケーブル用被覆体で被覆されたケーブルを、所定の温度に設定したギアオーブン中に1時間放置し外観を目視観察した。
【0092】
〜酸素指数〜
難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物の酸素指数はJIS K7201−2(1999年)に準拠して測定した。
【0093】
合成例1(ジヒドロキシ芳香族アミド化合物の合成)
窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10Lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でp−アミノフェノール763g(7.0モル)及びN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)2.1L、トルエン1.4Lを加え50℃に昇温し溶解させた。別途、窒素導入管を備えた3L滴下ロートに、テレフタル酸ジクロライド710g(3.5モル)、NMP0.3L、トルエン1.4Lを加え、撹拌し均一溶液とし、この溶液を先の溶液中に80℃を保ちながら30分かけて滴下した。さらに80℃で2時間反応を行った。
【0094】
得られたスラリーの固形分を吸引濾過により回収し、メタノール7Lで2回攪拌洗浄し、N,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミドを得た。
【0095】
続いて、窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10Lの4つ口フラスコに、窒素雰囲気下でN,N’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テレフタルアミド1045g(3.0モル)、炭酸エチレン555g(6.3モル)、触媒としてカリウムt−ブトキシド1.51g(13.5ミリモル)、NMP6.0Lを加え、180℃に昇温して完全に溶解させ、さらに180℃で2時間攪拌した。室温まで冷却後、得られたスラリーをメタノール23Lに注ぎ、析出した固形分を吸引濾過により回収した。メタノール7.5Lで2回攪拌洗浄した後、得られた固体をNMPにより再結晶し、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−1,4−ベンゼンジカルボキサミド1028g(収率79%)を得た。その構造式を下記に示す。この化合物を(a)と記す。
【0096】
【化2】

合成例2(ジヒドロキシ芳香族アミド化合物の合成)
窒素導入管、温度計および攪拌翼を備えた10Lの4つ口フラスコに、4−アミノ−N−(2−ヒドロキシエチル)ベンズアミド1600g(8.9モル)、NMP4.0Lを加え均一溶液を得た。別途に、窒素導入管を備えた3L滴下ロートに、イソフタル酸ジクロライド901g(4.4モル)、NMP2.0Lを加え、撹拌し均一溶液とし、この溶液を先の溶液中に1時間かけて滴下した。さらに50℃で2時間反応させた後、得られたスラリーをアセトン25Lに投入し、吸引ろ過により白色固体を回収した。得られた固体をNMPにより再結晶を行い、N,N’−ビス(4−(2−ヒドロキシエチルカルバモイル)フェニル)イソフタルアミド3745g(収率86%)を得た。その構造式を下記に示す。この化合物を(b)と示す。
【0097】
【化3】

合成例3(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(a)896g(2.1モル)、ε−カプロラクトン2342g(20.5モル)、NMP5380gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.4g(4.1ミリモル)を加え、180℃で2時間開環重合を行った。引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)731g(2.1モル)を添加し、180℃で5時間反応させた。その後、内温を250℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去した。更に、同温で1時間反応させた。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット3100gを得た。
【0098】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量78000、融点225℃、タイプAデュロメータ硬さ95であった。また、ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は524であった。
【0099】
合成例4(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(a)1309g(3.0モル)、ε−カプロラクトン1710g(15.0モル)、NMP5380gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.4g(4.1ミリモル)を加え、180℃で2時間開環重合を行った。引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)1068g(3.0モル)を添加し、180℃で5時間反応させた。その後、内温を260℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去した。更に、同温で1時間反応させた。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット3000gを得た。
【0100】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量72000、融点230℃、タイプAデュロメータ硬さ98であった。また、ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は265であった。
【0101】
合成例5(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(a)934g(2.1モル)、ε−カプロラクトン2442g(21.4モル)、NMP5611gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート1.5g(4.3ミリモル)を加え、180℃で2時間開環重合を行った。その後、リン酸1.7g(17.1ミリモル)を添加して180℃で30分攪拌した。引き続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート360g(2.1モル)を30分かけて滴下し、180℃で4時間反応させた。その後、内温を250℃まで昇温しながら、NMPを減圧下で2時間かけて留去した。更に、同温で1時間反応させた。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット3300gを得た。
【0102】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量84000、融点226℃、タイプAデュロメータ硬さ95であった。また、ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は536であった。
【0103】
合成例6(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管を備えた15Lのオートクレーブに、窒素雰囲気下で化合物(b)979g(2.0モル)、ε−カプロラクトン3991g(35.0モル)、NMP3668gを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート2.4g(7.0ミリモル)を加え、180℃で8時間開環重合を行った。引き続いて、テレフタロイルビス(ε−カプロラクタム)711g(2.0モル)を添加し、180℃で5時間反応させた。その後、内温を230℃まで昇温しながら、NMP及び副生成物のε−カプロラクタムを減圧下で2時間かけて留去した。更に、同温で1時間反応させた。続いて、系内を加圧にした後、オートクレーブ下部から溶融状態のポリマーをストランドとして抜き出し、カッティングして芳香族アミドブロック共重合体のペレット4700gを得た。
【0104】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量75000、融点188℃、タイプAデュロメータ硬さ80であった。また、ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は804であった。
【0105】
合成例7(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管、温度計、攪拌翼を備えた3Lの4ツ口フラスコに、窒素雰囲気下で化合物(a)87.3g(0.2モル)、ε−カプロラクトン456.6g(4モル)、NMP500mLを仕込み、180℃に昇温した後、テトラブチルチタネート0.14g(0.4ミリモル)を加え、180℃で1時間開環重合を行った。室温まで冷却し、ピリジン32g(0.4モル)とアジピン酸ジクロライド36.6g(0.2モル)をNMP1060mLに溶解した溶液を加え、さらに室温で15時間反応させた。反応終了後の溶液に、NMP1000mLを加えて希釈溶解し、メタノール15Lに投入した。得られた固形分をメタノール5Lで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥し芳香族アミドブロック共重合体を得た。
【0106】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量96000、融点160℃、タイプAデュロメータ硬さ85であった。また、ポリ(ε−カプロラクトン)重合単位の数平均分子量は1106であった。
【0107】
合成例8(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管、温度計、攪拌翼を備えた300mLの4ツ口フラスコに、窒素雰囲気下、アジピン酸ジクロライド5.8mL(40ミリモル)、NMP20mLを加え均一溶液を得た。別途に、窒素導入管を備えた200mL滴下ロートに、ポリ(オキシテトラメチレン)ポリオール[保土谷化学工業製、商品名PTG−1000SN;数平均分子量=1038)]20.76g(20ミリモル)、ピリジン3.2mL(40ミリモル)、NMP80mLを加え、撹拌し均一溶液とし、この溶液を先の溶液中に15分かけて滴下した。さらに室温で3時間反応させた後、ピリジン3.2mL(40ミリモル)、化合物(a)8.73g(20ミリモル)、NMP30mLを加え、さらに120℃で2時間反応させた。室温まで冷却した後、得られた均一溶液をメタノール1.5Lに投入し、吸引ろ過により芳香族アミドブロック共重合体を得た。
【0108】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量14800、融点270℃、タイプAデュロメータ硬さ94であった。
【0109】
合成例9(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
合成例8で用いたポリ(オキシテトラメチレン)ポリオールを、ポリ(ジメチルシロキサン)ポリオール[信越化学製、商品名X−22−160AS;数平均分子量=959]19.18g(20ミリモル)に変更した以外は同様の操作を行い、芳香族アミドブロック共重合体を得た。
【0110】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量23700、融点258℃、タイプAデュロメータ硬さ96であった。
【0111】
合成例10(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
合成例8で用いたポリ(オキシテトラメチレン)ポリオールを、ダイマー酸ポリエステルポリオール[ユニケマ製、商品名PRIPLAST3192;数平均分子量=1931]38.62g(20ミリモル)に変更した以外は同様の操作を行い、芳香族アミドブロック共重合体を得た。
【0112】
得られた芳香族アミドブロック共重合体は、数平均分子量14000、融点224℃、タイプAデュロメータ硬さ86であった。
【0113】
合成例11(芳香族アミドブロック共重合体の合成)
窒素導入管、温度センサー、攪拌翼、留出管を備えた500mLの4ツ口フラスコに、化合物(b)18.6g(38ミリモル)、両末端カルボン酸水素添加ブタジエン(日本曹達(株)製:商品名NISSO−PB CI−1000,数平均分子量=1400)81.4g(38ミリモル)、及びヒンダードフェノール系老化防止剤として1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(チバガイギ製:商品名イルガノックス1330)0.10gを仕込んだ。100℃で1時間、減圧乾燥を行った後、NMP103.2gとチタニウム(IV)ブトキシド0.16gを添加した。窒素気流下、210℃まで0.5時間かけて昇温し、5.5時間反応させた。その後、NMPを減圧留去しながら250℃まで昇温し、1mmHgの減圧下で1時間溶融重縮合を行い、芳香族アミドブロック共重合体を93.6g得た。
【0114】
得られた芳香族アミドブロック共重合体、は数平均分子量20000、融点は215℃、タイプAデュロメータ硬さ50であった。
【0115】
実施例1〜6
表1に示す合成例で得られた芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、表1に示す添加量の難燃剤を配合したものを250℃に設定した20mm二軸押出成形機を用いて溶融混合し造粒した。得られたペレットを250℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ1mmのシートに圧縮成形し、酸素指数を測定した。測定結果を表1に示す。いずれも酸素指数が高く、難燃性に優れるものであった。
【0116】
実施例7〜10
表2に示す合成例で得られた芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、表2に示す添加量の難燃剤を配合したものを250℃に設定した30ccミキサーを用いて溶融混合した後に、250℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ1mmのシートに圧縮成形し、酸素指数を測定した。測定結果を表2に示す。いずれも酸素指数が高く、難燃性に優れるものであった。
【0117】
実施例11
実施例2で得られた難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を250℃に設定した20mm単軸押出成形機を用いてケーブル被覆体の製造を行う際に、同時にコア材である素線径0.26mmの銅線の7本撚り導線上に被覆厚0.5mmで押出し被覆することにより、難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成よりなる被覆体で被覆されたケーブルを得た。
【0118】
得られた難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成よりなる被覆体で被覆されたケーブルの耐熱性を評価したところ、200℃でも被覆体には融着は見られず、耐熱性に優れたものであった。
【0119】
実施例12
実施例5で得られた難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を230℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ200μmのフィルムに成形した。
【0120】
得られたフィルムの耐熱性を評価したところ、150℃でも融着は見られず、耐熱性の高いフィルムであった。
【0121】
実施例13
実施例4で得られた厚さ1mmのシートの耐熱性を評価したところ、180℃でも融着は見られず、耐熱性の高いシートであった。
【0122】
実施例14
実施例1で得られた難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を250℃に設定した20mm単軸押出成形機を用いて、外径10mm、内径8mmの中空成形体を押出し成形した。
【0123】
得られた中空成形体の耐熱性を評価したところ、200℃でも融着は見られず、耐熱性の高い中空成形体であった。
【0124】
実施例15
実施例3で得られた難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物を250℃に設定したキャピラリー型粘度計に投入し、0.36cm/分で押出した。押出されたストランドを空冷しながら50m/分の速度で引き取り溶融紡糸を行った。得られた糸は92デニールであった。
【0125】
得られた糸の耐熱性を評価したところ、200℃でも融着は見られず、耐熱性の高い糸であった。
【0126】
比較例1〜9
表1,2に示す合成例で得られた芳香族アミドブロック共重合体を、難燃剤を添加せず、250℃に設定した圧縮成形機を用いて厚さ1mmのシートに圧縮成形し、酸素指数を測定した。その結果を、表1,2に示す。いずれも酸素指数が低く、難燃性に劣るものであった。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステル、脂肪族ポリ(オキシアルキレン)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン、ポリジエンまたはこれらの共重合体よりなる群から選ばれる1種以上の単位からなる芳香族アミドブロック共重合体100重量部に対し、難燃剤0.1〜500重量部よりなることを特徴とする難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物。
【化1】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の二価のオキシアルキレン基、アルキレンカルバモイル基、またはアリーレンカルバモイル基を示す。)
【請求項2】
芳香族アミドブロック共重合体が、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリエステルからなることを特徴とする請求項1に記載の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物。
【請求項3】
芳香族アミドブロック共重合体が、上記一般式(1)で示される芳香族アミド単位と、ポリ(ε−カプロラクトン)からなることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物。
【請求項4】
難燃剤が、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、フッ素系難燃剤よりなる群から選ばれる1種以上の難燃剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物。
【請求項5】
難燃剤が、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、デカブロモジフェニルエーテル、縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル、塩素化ポリエチレン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、ポリテトラフルオロエチレン、シリコンパウダーよりなる群から選ばれる1種以上の難燃剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性芳香族アミドブロック共重合体樹脂組成物よりなる成形体。

【公開番号】特開2006−70087(P2006−70087A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252321(P2004−252321)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】