説明

難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物

芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、固体無機化合物(B)0.1〜200重量部、有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C)、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.001〜1重量部、及びフルオロポリマー(E)0.01〜1重量部を含み、(C)の量が、(B)と(C)との混合物のpH値が4〜8となる量であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。更に詳細には、本発明は、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)、固体無機化合物(B)、有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C)、有機酸アルカリ金属塩及び有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)、及びフルオロポリマー(E)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、該化合物(C)の量が、該固体無機化合物(B)と該化合物(C)との混合物のpH値が4〜8となる量である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤として、臭素系化合物あるいはリン系化合物を使用することなく高度な難燃性を有する(特に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造した薄肉成形体は、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造した薄肉成形体と比較して、極めて高度な難燃性を有する)のみならず、優れた溶融安定性、耐熱エージング性、耐湿熱性、剛性及び耐衝撃性を有する。そのため本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、射出成形体及び押出成形体などの各種成形体の製造に有利に用いることができる。
従来技術
芳香族ポリカーボネートは耐衝撃性などの機械的特性に優れ、しかも耐熱性にも優れた樹脂材料であることから、デスクトップパソコン及びノート型パソコンなどの各種コンピューター、プリンター、ワードプロセッサー、コピー機などのハウジング材料や部品材料などに広く利用されている。
近年、芳香族ポリカーボネートからなる成形体に関して、特にハウジングとして使用する場合に、軽量化を目的とした薄肉化が強く求められている。さらに、薄肉ハウジングとした場合、外部応力による変形や、内部部品の荷重による変形が起こりやすいため、芳香族ポリカーボネートに対して高い剛性と寸法精度が要求される。
芳香族ポリカーボネートの剛性や寸法精度を改良するために、ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、ワラストナイト等の無機化合物を、強化材及び/または充填材としてポリカーボネートに配合する方法が試みられている。
しかしながら、これらの無機化合物を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、成形加工時において、無機化合物により芳香族ポリカーボネートの分解劣化が促進されるという問題がある。特に、タルクやマイカなどの塩基性の無機化合物を使用した場合において、芳香族ポリカーボネートの溶融安定性が著しく低下し、材料の物性が大きく損なわれるという問題があった。
この問題に対して、日本国特開平2−283760号公報ではリン化合物を併用することにより、日本国特開平3−21664号公報では有機酸を併用することにより、また、日本国特開平10−60248号公報では、スルホン酸ホスホニウム塩を併用することによって、芳香族ポリカーボネートの分子量の低下を抑制する方法が提案されているが、これらの方法では溶融安定性、特に高温での溶融安定性が不十分であることから、成形加工温度範囲が制限されるという問題があった。
一方、OA機器や電気・電子機器用として使用される芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、高い剛性と寸法精度だけでなく、高度な難燃性も同時に求められおり、最近では、環境に対する配慮から、難燃剤として、臭素系化合物あるいはリン系化合物を使用しない難燃性の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が求められている。
日本国特開2002−80709号公報では、芳香族ポリカーボネートに対して無機充填材、有機リン化合物難燃剤、および有機酸アルカリ金属塩を配合した樹脂組成物において、0.8mm厚みの試験片においてUL94規格でV−0が達成されているが、リン系難燃剤を使用しており、また、同組成物は高温高湿環境下での物性の低下が著しいという欠点がある。
日本国特開2002−294063号公報では、芳香族ポリカーボネートに対して有機酸金属塩、アルコキシシラン化合物、含フッ素ポリマー、無機充填材、場合によりさらに、有機シロキサン化合物を配合した樹脂組成物が開示されている。同組成物は、有機シロキサン化合物を配合した場合において0.8mm厚みの試験片においてUL94規格でV−0が達成されているが、有機シロキサン化合物の熱安定性が不十分であるために、高い溶融樹脂温度では容易に変色する、揮発成分の発生量が多くなる等の欠点がある。
日本国特開2003−82218号公報、日本国特開2003−268226号公報では、芳香族ポリカーボネートに対してフッ素含有樹脂、及び珪酸塩化合物を配合した樹脂組成物が開示されているが、同組成物の難燃性、並びに溶融安定性は十分なものではない。
すなわち、従来技術では、無機化合物を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、難燃剤として、臭素系化合物あるいはリン系化合物を使用することなく、薄肉の成形体での高度難燃性(例えば、製品厚み1.2mm、あるいは1.0mmで、UL94規格でV−0または5VBを達成できるような高度な難燃性)を有し、且つ、成形材料としての溶融安定性や機械的強度に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、未だ得られておらず、その開発が望まれていた。
発明の概要
このような状況下において、本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した。その結果、驚くべきことに、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)、固体無機化合物(B)、有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C)、有機酸アルカリ金属塩及び有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)、及びフルオロポリマー(E)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、該化合物(C)の量が、該固体無機化合物(B)と該化合物(C)との混合物のpH値が4〜8となる量である芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、特に薄肉成形体とした際に、従来技術と比較して非常に高レベルの難燃性(例えば、製品厚み1.2mmあるいは1.0mmで、UL94規格でV−0または5VBを達成できるような高度な難燃性)を、難燃剤として、臭素系化合物あるいはリン系化合物を使用することなく達成できるだけでなく、飛躍的に向上した溶融安定性を有し、且つ耐熱エージング性、耐湿熱性、剛性及び耐衝撃性に優れるということを見出した。この新しい知見に基づき本発明を完成したものである。
従って、本発明の1つの目的は、難燃剤として、臭素系化合物あるいはリン系化合物を使用することなく高度な難燃性を有する(特に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造した薄肉成形体は、従来の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて製造した薄肉成形体と比較して、極めて高度な難燃性を有する)のみならず、優れた溶融安定性、耐熱エージング性、耐湿熱性、剛性及び耐衝撃性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することである。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
発明の詳細な説明
本発明の基本的な態様によれば、
芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)100重量部、
固体無機化合物(B)0.1〜200重量部、
有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C)、
有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.001〜1重量部、及び
フルオロポリマー(E)0.01〜1重量部
を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
該化合物(C)の量が、該固体無機化合物(B)と該化合物(C)との混合物のpH値が4〜8となる量であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
次に、本発明の理解を容易にするために、まず本発明の基本的特徴及び好ましい諸態様を列挙する。
1.芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂成分(A)100重量部、
固体無機化合物(B)0.1〜200重量部、
有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C)、
有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.001〜1重量部、及び
フルオロポリマー(E)0.01〜1重量部
を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
該化合物(C)の量が、該無機化合物(B)と該化合物(C)との混合物のpH値が4〜8となる量である、
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
2.該固体無機化合物(B)が、板状の珪酸塩化合物、針状の珪酸塩化合物及び繊維状の珪酸塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の珪酸塩化合物であることを特徴とする前項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
3.該珪酸塩化合物が、タルク、マイカ、ガラスフレーク及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前項2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
4.該珪酸塩化合物が、タルク及びマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前項3に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
5.該化合物(C)が、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル、有機スルホン酸ホスホニウム塩、有機スルホン酸アンモニウム塩、及び有機カルボン酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
6.該固体無機化合物(B)の量が、1〜20重量部あることを特徴とする前項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
7.前項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる射出成形体。
8.前項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる押出成形体。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において成分(A)は、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂である。
本発明において、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂とは、該樹脂の総量を100重量部とした場合に、該樹脂中の芳香族ポリカーボネートの量が50重量部を超えるものを意味する。成分(A)は芳香族ポリカーボネート単独でもよく、また、成分(A)は芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
本発明の成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカーボネートは、芳香族ジヒドロキシ化合物より誘導される芳香族ポリカーボネートであり、芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホキシド等のジヒドロキシアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン類などを挙げることができる。
これらの中で、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称、ビスフェノールA)が特に好ましい。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の成分(A)として好ましく用いられる芳香族ポリカーボネートとしては、公知の方法で製造したものを使用することができる。具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応せしめる公知の方法、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(例えばホスゲン)を水酸化ナトリウム水溶液及び塩化メチレン溶媒の存在下に反応させる界面重合法(例えばホスゲン法)、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル(例えばジフェニルカーボネート)などを反応させるエステル交換法(溶融法)、ホスゲン法または溶融法で得られた結晶化カーボネートプレポリマーを固相重合する方法(日本国特開平1−158033(米国特許第4,948,871号に対応)、日本国特開平1−271426、日本国特開平3−68627(米国特許第5,204,377号に対応))などの方法により製造されたものを用いることができる。
本発明の成分(A)として使用される芳香族ポリカーボネートとして特に好ましいものは、二価フェノール(芳香族ジヒドロキシ化合物)と炭酸ジエステルとからエステル交換法にて製造された実質的に塩素原子を含まない芳香族ポリカーボネートである。
上記芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、通常、5,000〜500,000であり、好ましくは10,000〜100,000であり、より好ましくは13,000〜50,000、更に好ましくは15,000〜30,000、特に好ましくは17,000〜25,000であり、最も好ましくは17,000〜20,000である。
本発明において、芳香族ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができ、テトラヒドロフランを溶媒として、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から下式による換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。
PC=0.3591MPS1.0388
PC=0.3591MPS
(MPCは芳香族ポリカーボネートの分子量、MPSはポリスチレンの分子量)
また、本発明の(A)として、分子量が異なる2種以上の芳香族ポリカーボネートを組み合わせて使用してもよい。例えば、Mwが通常14,000〜16,000の範囲にある光学ディスク用材料の芳香族ポリカーボネートと、Mwが通常20,000〜50,000の範囲にある射出成形用あるいは押出成形用の芳香族ポリカーボネートを組み合わせて使用することができる。
上記芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)において、好ましく使用することができる芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・スチレン樹脂(BAAS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂(MBS樹脂)、ブチルアクリレート・アクリロニトリル・スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアリレート、コア/シェル型の耐衝撃性改良エラストマー、シリコーンエラストマーなどの熱可塑性樹脂を挙げることができる。特にAS樹脂、BAAS樹脂は流動性を向上させるのに好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるのに好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるのに好ましい。
上記ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)において、芳香族ポリカーボネート以外の熱可塑性樹脂の使用量は、成分(A)の総量100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部である。
本発明において成分(B)は、固体無機化合物である。
本発明において、成分(B)の使用により、樹脂組成物の高度な難燃性を獲得できると共に、組成物の剛性や強度の向上(強化材としての機能)や、寸法精度の向上(充填材としての機能)を図ることもできる。
本発明において成分(B)はその形状として、繊維状、針状、板状、球状など、様々な形状のものを使用することができ、針状または板状のものが好ましい。
繊維状あるいは針状の成分(B)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ロックウール、窒化ケイ素ウィスカー、ボロン繊維、テトラポット状酸化亜鉛ウィスカー、ワラストナイトなどを挙げることができる。
板状の成分(B)としては、例えば、タルク、マイカ、パールマイカ、ガラスフレーク、カオリンなどを挙げることができる。
球状(もしくは擬球状)の成分(B)としては、例えば、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カーボンブラック、ガラスパウダー、シリカ(天然シリカ及び合成シリカ)等を挙げることができる。
本発明で使用される成分(B)としては、本発明の樹脂組成物における芳香族ポリカーボネートマトリックスとの界面親和性を向上させるために表面改質されているものを使用することもできる。ここでいう表面改質は、あらかじめ親油性の有機化合物を吸着させる方法や、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤で処理する方法によって行なうことができる。
本発明では、成分(B)として、炭素繊維、またはタルク、マイカ、パールマイカ、ワラストナイト、カオリン、ガラス繊維、ガラスフレーク等の珪酸塩化合物が好ましく、珪酸塩化合物がより好ましい。
本発明の成分(B)としてより好ましく使用することができる上記珪酸塩化合物の中でも特に好ましい珪酸塩化合物は、金属酸化物成分とSiO成分とからなる珪酸塩化合物である。成分(B)として使用することができる珪酸塩化合物中に存在する珪酸イオンの形態としては、オルトシリケート、ジシリケート、環状シリケート、鎖状シリケート、層状シリケート等のいずれの形態であってもよい。
上記珪酸塩化合物は、複合酸化物、酸素酸塩、固溶体のいずれの化合物でもよく、更に複合酸化物は2種以上の異なる単一酸化物の組合せ、及び単一酸化物と酸素酸塩との組合せのいずれであってもよく、更に固溶体は2種以上の異なる金属酸化物の固溶体、及び2種以上の異なる酸素酸塩の固溶体のいずれであってもよい。
また、上記珪酸塩化合物は水和物であってもよい。水和物における結晶水の形態は、Si−OHの形で水素珪酸イオンとして含まれるもの、金属陽イオンに対して水酸イオン(OH)として含まれるもの、構造の隙間に水分子として含まれるものなどのいずれであってもよい。
また、上記珪酸塩化合物は、天然物及び人工合成物のいずれも使用することができる。人工合成物としては、従来公知の各種の方法、例えば固体反応、水熱反応、及び超高圧反応などを利用した各種の合成法から得られた珪酸塩化合物が利用できる。
本発明の成分(B)として特に好ましく使用される珪酸塩化合物は、好ましくはその組成が実質的に下記式(1)で示されるものである。
xMO・ySiO・zHO (1)
(ここでxおよびyは自然数を表し、zは0以上の整数を表し、MOは金属酸化物成分を表し、複数の異なる金属酸化物成分であってもよい。)
上記金属酸化物MOにおける金属Mの例としては、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、鉄、コバルト、マグネシウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタンなどを挙げることができる。
上記式(1)の珪酸塩化合物は、金属酸化物MOとして、CaO及び/又はMgOを含むことが好ましく、実質的にCaO及び/又はMgOのみを含むことが更に好ましく、実質的にMgOのみを含むことが特に好ましい。
本発明の成分(B)として好ましく使用される珪酸塩化合物の具体例としては、タルク、マイカ、ワラストナイト、ゾノトライト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ローソナイト、スメクタイト等を挙げることができる。
また、上記したように珪酸塩化合物は、任意の形状(板状、針状、球状、繊維状等)のものが使用できるが、板状、針状および繊維状のものが好ましく、中でも特に、板状の粒子であるものが本発明の成分(B)として最も好ましく使用できる。
ここで板状の粒子とは、下記の方法で求めた、板状の成分(B)のメディアン径として求められる平均粒子径を(a)とし、厚みを(c)とした場合に、(a)/(c)比が5〜500、好ましくは10〜300、更に好ましくは20〜200である形状のものである。
本発明において、成分(B)の上記の平均粒子径(a)は、0.001〜500μmが好ましく、0.01〜100μmがより好ましく、0.1〜50μmが更に好ましく、1〜30μmが特に好ましい。
尚、上記の平均粒子径は、成分(B)の粒子径のおよその分布範囲により、以下の2つの方法のいずれかを用いて測定する。
成分(B)の粒子径がおよそ0.001〜0.1μmの範囲に分布する場合は、透過型電子顕微鏡の観察写真を撮影し、得られた顕微鏡写真から、樹脂組成物中における100個以上の個々の無機化合物粒子に対して、写真上での各粒子の面積をそれぞれ計測し、S(上記写真上での面積を顕微鏡の倍率で除した値)を用いて(4S/π)0.5を各粒子の粒子径として求め、数平均粒子径を平均粒子径(a)とする。
成分(B)の粒子径がおよそ0.1〜300μmの範囲に分布する場合は、レーザー回折法により(例えば、日本国島津製作所製SALD−2000を使用して)粒子径を計測し、メディアン径を平均粒子径とする。
本発明において、板状の成分(B)の厚み(c)は、0.01〜100μmが好ましく、0.03〜10μmがより好ましく、0.05〜5μmが更に好ましく、0.1〜3μmが特に好ましい。
成分(B)として用いる板状粒子の厚み(c)は、例えば透過型電子顕微鏡の観察写真を撮影し、得られた顕微鏡写真から、樹脂組成物中における10個以上の個々の粒子に対して、写真上での各粒子の厚みをそれぞれ計測し、上記写真上での厚みを顕微鏡の倍率で除した値を各粒子の厚みとして求め、その平均値を厚み(c)とする。
本発明の成分(B)として使用することができる板状の珪酸塩化合物の中でも、特に好ましいものは、タルク、及びマイカである。
本発明の成分(B)として、特に好ましく使用できるタルクとは、層状構造を持つ含水ケイ酸マグネシウムであり、化学式4SiO・3MgO・HOで表され、通常、SiO約63重量%、MgO約32重量%、HO約5重量%、その他Fe、CaO、Alなどを含有しており、比重は約2.7である。
また、本発明の成分(B)として、焼成タルクや、塩酸や硫酸等の酸で洗浄して不純物を除いたタルクなども好ましく使用することができる。さらに、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等で表面疎水性処理を行ったタルクも使用することができる。
一方、本発明の成分(B)として、特に好ましく使用できるマイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄などを含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには白雲母(マスコバイト、化学式:
K(AlSi10)(OH)Al(OH)(AlSi10)K)、金雲母(フロゴパイト、化学式:K(AlSi10)(OH)Mg(OH)(AlSi10)K)、黒雲母(バイオタイト、化学式:
K(AlSi10)(OH)(Mg,Fe)(OH)(AlSi10)K)、人造雲母(フッ素金雲母、化学式:K(AlSi10)(OH)Mg(AlSi10)K)などがあり、本発明においてはいずれのマイカも使用できるが、好ましくは白雲母である。
また、かかるマイカはシランカップリング剤やチタネートカップリング剤等で表面疎水性処理されていてもよい。
本発明において成分(B)の使用量は、成分(A)100重量部に対して0.1〜200重量部であり、0.3〜100重量部が好ましく、0.5〜50重量部がより好ましく、0.8〜30重量部が更に好ましく、1〜20重量部が特に好ましい。成分(B)が200重量部を超える場合、溶融安定性の低下が顕著となり、樹脂組成物の機械的物性の低下が大きい。また、成分(B)が0.1重量部未満の場合、樹脂組成物の難燃性が低下する傾向があり、本発明の目的とする高い難燃性が達成できない。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形用材料として使用する場合は、成分(B)の使用量が、成分(A)100重量部に対して1〜20重量部である場合が、難燃性、溶融安定性、耐熱エージング性、耐湿熱性に卓越した性能を発揮すると共に、成形体とした場合のウエルド強度、表面外観にも優れ、特に好ましい。
また、本発明において成分(B)として、板状の形態であるもの、例えば、タルクおよびマイカを使用する場合は、薄肉の成形体であってもとりわけ優れた難燃性を達成できると共に、樹脂組成物の耐衝撃性、寸法安定性、絶縁性や耐トラッキング性(絶縁材料を、ある電位差の電極間に配置した際に、絶縁材料の表面に沿って炭化した導電路が形成されることに対する耐性)等の電気的特性も向上させることができるので本発明の実施態様として最も好ましい。
本発明で用いられる成分(C)は、有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩、有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。本発明では成分(C)を成分(B)と組み合わせて使用し、成分(C)の使用量を、成分(B)と成分(C)との混合物のpH値が4〜8の範囲となるように調節することにより、樹脂組成物の難燃性や溶融安定性を飛躍的に向上させることができる。
本発明の成分(C)として用いられる有機酸とは、−SOH基、−COOH基、及び−POH基からなる群から選ばれる基を分子構造中に少なくとも1つ含む有機化合物即ち有機スルホン酸、有機カルボン酸、有機リン酸である。本発明ではこれらの中でも有機スルホン酸、有機カルボン酸が好ましく、特に、有機スルホン酸が好ましい。
また、本発明の成分(C)として用いられる有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩とは、上記有機酸の誘導体である。上記有機酸誘導体は、樹脂組成物を成形する際に分解し、酸として機能すると考えられる。従って、例えば成分(B)として、塩基性を示す無機化合物を用いた場合、成分(C)はこれを中和する機能を発揮するものと考えられる。即ち、本発明の組成物において、成分(C)はpH調節機能を発揮するものである。
上記化合物(C)は、単量体などの低分子化合物のみならず、オリゴマー状あるいはポリマー状のものを使用することができる。
本発明において、成分(C)は二種以上を併用することもできる。
本発明の成分(C)として、特に、有機スルホン酸及び/または有機スルホン酸エステル、有機スルホン酸ホスホニウム塩、有機スルホン酸アンモニウム塩から選ばれる有機スルホン酸誘導体、有機カルボン酸を好ましく使用することができる。
中でも、成分(C)として有機スルホン酸及び/または有機スルホン酸エステルを使用する場合は、樹脂組成物の溶融安定性が特に優れており、揮発成分の発生も低レベルに抑えることができるために、広い温度範囲で成形加工が行えると共に、成形品の外観にも極めて優れる。
本発明の成分(C)として、好ましく使用することができる有機スルホン酸として、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸、ジイソブチルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの芳香族スルホン酸、炭素数8〜18の脂肪族スルホン酸、スルホン化ポリスチレン、アクリル酸メチル・スルホン化スチレン共重合体等のポリマーまたはオリゴマー状の有機スルホン酸などを挙げることができる。
また、本発明の成分(C)として使用することができる有機スルホン酸エステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸プロピル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸プロピル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニル、ナフタレンスルホン酸メチル、ナフタレンスルホン酸エチル、ナフタレンスルホン酸プロピル、ナフタレンスルホン酸ブチル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−プロピル、ドデシルベンゼンスルホン酸−2−フェニル−2−ブチルなどを挙げることができる。
また、本発明の成分(C)として使用することができる有機スルホン酸ホスホニウム塩として、オクチルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、デシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラヘキシルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩などを挙げることができる。
また、本発明の成分(C)として使用することができる有機スルホン酸アンモニウム塩として、デシルアンモニウムブチルサルフェート、デシルアンモニウムデシルサルフェート、ドデシルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルアンモニウムエチルサルフェート、ドデシルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ドデシルジメチルアンモニウムテトラデシルサルフェート、テトラデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラメチルアンモニウムヘキシルサルフェート、デシルトリメチルアンモニウムヘキサデシルサルフェート、テトラブチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート、テトラメチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどを挙げることができる。
さらに、本発明において、成分(C)として好ましく使用される有機スルホン酸は、分子構造中に−SOH基の他に、−OH基、−NH基、−COOH基、ハロゲン基などを含む有機スルホン酸化合物であってもよく、例えば、ナフトールスルホン酸、スルファミル酸、ナフチルアミンスルホン酸、スルホ安息香酸、クロル基により全置換もしくは部分置換された有機スルホン酸(クロル基含有有機スルホン酸)、フルオロ基により全置換もしくは部分置換された有機スルホン酸(フルオロ基含有有機スルホン酸)などを挙げることができる。
本発明において用いられる成分(C)として、芳香族スルホン酸化合物が特に好ましく、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などは最も好ましい例として挙げることができる。
本発明において、成分(B)に対する成分(C)の使用量も極めて重要である。成分(B)に対して成分(C)が少なすぎても過剰であっても、本発明の優れた効果、すなわち、高度な難燃性、優れた溶融安定性、優れた耐熱エージング性、優れた耐湿熱性を同時に達成することができなくなる。具体的には、本発明の組成物における成分(C)の使用量は、成分(B)と成分(C)との混合物のpH値が、4〜8の範囲となる量である。本発明においてpH値は、JIS K5101に基づいて測定することができる。
JIS K5101のpH値の測定では、操作方法として煮沸法と常温法があるが、本発明では煮沸法を用いる。
また、本発明における成分(B)と成分(C)の混合物のpH値の測定では、成分(C)の水に対する溶解度が低い場合は、エタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール類を懸濁液の分散媒として使用する。
従って、本発明における成分(C)の使用量は、成分(B)の種類や形状や量、あるいは成分(C)の種類に応じて変化する。
成分(C)の使用量は、成分(B)と成分(C)の混合物のpH値が4.2〜7.8の範囲となる量であることが好ましく、4.3〜7.6の範囲となる量であることがより好ましく、4.4〜7.4の範囲となる量であることが更に好ましく、4.5〜7.2の範囲となる量であることが特に好ましい。
成分(B)と成分(C)の混合物のpH値が本発明の範囲外となる場合、すなわち成分(B)と成分(C)の混合物のpH値が4未満あるいは8を超える場合は、樹脂組成物の高度な難燃性、溶融安定性、耐熱エージング性、耐湿熱性のいずれもが低下し、本発明の組成物の優れた特性を発揮することができなくなると共に、成形体とした場合にシルバーストリーク等の発生が顕著となり、製品外観が著しく低下してしまう。
本発明において、成分(D)は有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩である。成分(D)は、芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂(A)に対して、燃焼時に芳香族ポリカーボネートの脱炭酸反応を促進する作用がある。
本発明の成分(D)として好ましく用いられる有機酸金属塩は、有機スルホン酸の金属塩及び/または硫酸エステルの金属塩であり、これらは単独の使用だけでなく2種以上を混合して使用することも可能である。
本発明の成分(D)に含まれるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。本発明において、特に好ましいアルカリ金属はリチウム、ナトリウム、カリウムであり、最も好ましくはナトリウム、カリウムである。
本発明で好ましく使用することができる上記有機スルホン酸の金属塩としては、脂肪族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩などが挙げられる。尚、本明細書中で「アルカリ/アルカリ土類金属塩」は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する。
脂肪族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、炭素数1〜8のアルカンスルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩、またはかかるアルカンスルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩のアルキル基の一部がフッ素原子で置換されたスルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩、さらには炭素数1〜8のパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩を好ましく使用することができ、特に好ましい具体例として、パーフルオロエタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、を挙げることができる。
また、芳香族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、芳香族スルホン酸として、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボン酸およびそのエステルのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸、芳香族スルホネートのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、芳香族スルホン酸のメチレン型結合による縮合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を芳香族スルホン酸とする芳香族スルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
上記、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4’−ジスルホン酸ジカリウムを挙げることができる。
また、上記芳香族カルボン酸およびそのエステルのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウムを挙げることができる。
また、上記モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウムを挙げることができる。
また、上記芳香族スルホネートのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、ベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウムを挙げることができる。
また、上記モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸カリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3’−ジスルホン酸カルシウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸カリウム、キシレンスルホン酸カリウムを挙げることができる。
また、上記モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4’−ジスルホン酸ジカリウムを挙げることができる。
上記芳香族ケトンのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、α,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウムを挙げることができる。
上記複素環式スルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウムを挙げることができる。
上記芳香族スルホキサイドのスルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩は、その好ましい例として、ジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウムを挙げることができる。
上記芳香族スルホン酸アルカリ/アルカリ土類金属塩のメチレン型結合による縮合体は、その好ましい例として、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物を挙げることができる。
一方、硫酸エステルのアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、本発明では一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ/アルカリ土類金属塩を好ましく使用することができ、かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、ステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ/アルカリ土類金属塩として、特に好ましいものとして、ラウリル硫酸エステルのアルカリ/アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
また、その他のアルカリ/アルカリ土類金属塩としては、芳香族スルホンアミドのアルカリ/アルカリ土類金属塩を挙げることができ、例えばサッカリン、N−(p−トリルスルホニル)−p−トルエンスルホイミド、N−(N’−ベンジルアミノカルボニル)スルファニルイミド、およびN−(フェニルカルボキシル)スルファニルイミドのアルカリ/アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
上に挙げた成分(D)の中で、より好ましいアルカリ/アルカリ土類金属塩として、芳香族スルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩およびパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ/アルカリ土類金属塩を挙げることができる。
本発明において成分(D)の使用量は、成分(A)100重量部に対して0.001〜1重量部であり、0.005〜0.8重量部が好ましく、0.01〜0.7重量部がより好ましく、0.03〜0.5重量部が更に好ましく、0.05〜0.3重量部が特に好ましく、0.06〜0.2重量部が最も好ましい。成分(D)が1重量部を超える場合、溶融安定性の低下が顕著であり、樹脂組成物の機械的物性の低下が大きい。また、成分(D)が0.001重量部未満の場合、樹脂組成物の難燃性が低下する傾向にあり、本発明の目的とする高い難燃性を達成できない。
本発明で用いられる成分(E)はフルオロポリマーであり、燃焼物の滴下を防止する目的で使用される。本発明で好ましく使用することができる成分(E)は、フィブリル形成能力を有するフルオロポリマーであり、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・プロピレン共重合体等のテトラフルオロエチレンポリマーを好ましく使用することができ、特に好ましくはポリテトラフルオロエチレンである。
成分(E)は、ファインパウダー状のフルオロポリマー、フルオロポリマーの水性ディスパージョン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)やポリメチルメタクリレート(PMMA)等の第2の樹脂との粉体状混合物等、様々な形態のフルオロポリマーを使用することができる。
本発明で好ましく使用できるフルオロポリマーの水性ディスパージョンとして、日本国三井デュポンフロロケミカル(株)製「テフロン30J(登録商標)」、日本国ダイキン工業(株)製「ポリフロンD−1(登録商標)」、「ポリフロンD−2(登録商標)」、「ポリフロンD−2C(登録商標)」、「ポリフロンD−2CE(登録商標)」を例示することができる。
また、本発明では成分(E)として、ASやPMMA等の第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーも好適に使用することができるが、これら第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーに関する技術は、日本国特開平9−95583号公報(米国特許第5,804,654号に対応)、日本国特開平11−49912号公報(米国特許第6,040,370号に対応)、日本国特開2000−143966号公報、日本国特開2000−297189号公報等に開示されている。本発明において好ましく使用できる、これら第2の樹脂との粉体状混合物としたフルオロポリマーとして、米国GEスペシャリティケミカルズ社製「Blendex 449(登録商標)」、日本国三菱レーヨン(株)製「メタブレンA−3800(登録商標)」を例示することができる。
本発明における成分(E)の配合量は、成分(A)100重量部に対して0.01〜1重量部であり、好ましくは0.05〜0.8重量部、より好ましくは0.08〜0.6重量部、さらに好ましくは0.1〜0.4重量部である。成分(E)が1重量部を超える場合、樹脂組成物の機械的物性が低下する傾向にある。また、成分(E)が0.01重量部未満の場合、燃焼物の滴下が生じやすく、難燃性が低下する傾向にある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物では、必要に応じて、さらに、着色剤、滑剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などを添加することもできる。
上記添加剤の使用量は、樹脂組成物の総量100重量部に対して通常5重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物は上記の各成分(A)〜(E)、必要に応じてその他の成分を上記の組成割合で配合し、押出機等の溶融混練装置を用いて溶融混練することにより得ることが出来る。このときの各構成成分の配合、及び溶融混練は一般に使用されている装置、例えば、タンブラー、リボンブレンダー等の予備混合装置、単軸押出機や二軸押出機、コニーダー等の溶融混練装置を使用することが出来る。また、溶融混練装置への原材料の供給は、予め各成分を混合した後に供給することも可能であるが、それぞれの成分を独立して溶融混練装置に供給することも可能である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造にあたり、成分(A)の形状に関しては特に制限は無いが、例えば、ペレット状、パウダー状、フレーク状などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物を製造するにあたり、成分(B)は、予めその表面及び内部を、成分(C)によって、共有結合、イオン結合、分子間力、水素結合を介して、化学的または物理的に表面処理した後に、溶融混練装置に供給されることが、より好ましい。
成分(B)を成分(C)により、予め表面処理する方法としては、例えば以下の方法を示すことができる。成分(B)に対して、成分(C)を所定量配合し、必要により成分(C)は、溶融状態、溶液状態、あるいはガス状態として、噴霧、滴下、湿潤、浸漬などの方法により成分(B)に接触させ、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、Vブレンダー、タンブラー等の機械的混合装置を用いて混合攪拌処理を行い、しかる後に過剰成分の脱揮及び乾燥処理を行う方法を例示することができる。該混合攪拌処理は、成分(C)の融点以下の温度で行ってもよいが、成分(C)の融点以上の温度まで加熱昇温して行うことがより効果的である。該混合攪拌処理に要する時間は混合装置の種類にもよるが、通常1分〜3時間、好ましくは2分〜1時間、より好ましくは3分〜40分、更に好ましくは5分〜30分である。混合装置としては加熱装置付きのヘンシェルミキサー、ナウターミキサーを特に好ましく使用することができる。また、混合攪拌処理の後に過剰の(C)成分を減圧及び/または加熱により脱揮除去し、十分に乾燥させることが好ましい。
本発明の樹脂組成物を製造するための溶融混練装置として、通常は押出機、好ましくは2軸押出機が使用される。成分(B)は押出機の途中からサイドフィードすることもできる。溶融混練は通常、押出機のシリンダー設定温度を200〜300℃、好ましくは220〜270℃とし、押出機スクリュー回転数100〜700rpm、好ましくは200〜500rpmの範囲で適宜選択して行うことができるが、溶融混練に際し、過剰の発熱を与えないように配慮する。さらに、押出機の後段部分に開口部を設けて、開放脱揮、必要に応じて減圧脱揮を行うことも有効である。また、原料樹脂の押出機内滞留時間は通常、10〜60秒の範囲で適宜選択される。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品を得るための成形方法は特に限定されないが、例えば、射出成形、ガスアシスト成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、回転成形等が挙げられるが、中でも射出成形と押出成形が好ましく用いられ、射出成形が特に好ましく用いられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いた成形品の例としては、デスクトップパソコン及びノート型パソコンなどのコンピューター、複写機、プリンター、液晶プロジェクター、電気・電子機器、携帯電話、携帯情報端末、電池パック、家電製品などのハウジング材料、液晶バックライト用のフレーム用部材、複写機内部部品などの部品材料、抵抗器、端子、テレビ用偏向ヨーク等の電気・電子部品材料、照明用部品材料、電子・情報機器用の難燃性シート(絶縁シート)などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例あるいは比較例においては、以下の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及びその他の成分を使用し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造した。
1.成分(A):芳香族ポリカーボネート
(A−1)
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートから、溶融エステル交換法により製造された、ビスフェノールA系ポリカーボネートであり、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを300ppm含むもの。
重量平均分子量(Mw)=21,800
フェノール性末端基比率(フェノール性末端基が全末端基数に占める割合)=35モル%
フェノール性末端基比率は核磁気共鳴法(NMR法)で測定した。
(A−2)
ホスゲン法によって得られたビスフェノールA系ポリカーボネート。(日本国帝人化成(株)製、商品名「パンライトAD5503」)
重量平均分子量(Mw)=15,300
2.成分(B):固体無機化合物
(B−1)
以下の特性を有するタルク。
平均粒子径=5μm
白色度=96%
嵩比容積=2.3ml/g
比表面積=8.5m/g
水分=0.2%
吸油量=51ml/100g
pH=8.9
平均粒子径測定方法は日本国島津製作所社製SALD−2000分析装置を使用し、レーザー回析法により各粒子に対する粒子径を測定し、タルクの平均粒子径はメディアン径とした。
白色度はJIS P8123に準拠した測定方法で実施し、日本国東洋精機製作所社製デジタルハンターSTにより測定した。
比表面積は気相吸着法によるBET法で測定し、日本国島津製作所社製フローソープ2300を使用して測定した。
水分はJIS K5101に準拠した測定方法で実施し、日本国島津製作所社製STAC−5100を使用して測定した。
吸油量、及び嵩比容積はJIS K5101に準拠した測定方法で実施した。
pHは、JIS K5101規格に準拠したpH測定法(煮沸法)で実施した。
(B−2)
平均粒子径が90μm、平均アスペクト比が50、嵩比重が0.27g/cmのマイカ(日本国株式会社クラレ製、商品名「クラライト・マイカ 200−D」)
(B−3)
平均直径が13μmであり、繊維長が3mmのガラスファイバー(日本国日本電気硝子(株)製、商品名「T−571」
(B−4)
平均厚みが5μmであり、平均粒子径が160μmであるフレーク状ガラス(日本国日本板硝子(株)製、商品名「REF−160」
(B−5)
気相法により製造された一次粒子径12nmのヒュームドシリカをポリジメチルシロキサンにより表面処理した疎水性ヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、商品名「アエロジルRY200」)
3.成分(C):有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
(C−1)
p−トルエンスルホン酸(特級試薬、日本国和光純薬工業株式会社製)
(C−2)
ジフェニルメチルフォスフェート(DPMP)(特級試薬、日本国和光純薬工業株式会社製)
(C−3)
p−トルエンスルホン酸メチル(特級試薬、日本国和光純薬工業株式会社製)
(C−4)
イソフタル酸(特級試薬、日本国和光純薬工業株式会社製)
(C−5)
無水マレイン酸(特級試薬、日本国和光純薬工業株式会社製)
4.成分(D):有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D−1)
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(日本国大日本インキ工業(株)製、商品名「メガファックF114」)
5.成分(E):フルロポリマー
(E−1)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)の50/50(重量比)粉体状混合物(米国GEスペシャリティケミカルズ社製、商品名「Blendex449」)
6.その他の成分:
(離型剤)
ペンタエリスリトールテトラステアレート(日本国日本油脂(株)製、商品名「ユニスターH476」)
実施例1〜12、及び比較例1〜7
成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び、その他の成分を表1に示す量(単位は重量部)で二軸押出機を用いて溶融混練してポリカーボネート難燃樹脂組成物を得た。具体的な製造方法及び製造条件は以下の通りである。
表1に表す組成比の成分(B)と成分(C)との混合物のpH値をJIS K5101に準拠して測定した結果、表1に記載する値となった。
溶融混練装置は2軸押出機(ZSK−25、L/D=37、ドイツ国Werner & Pfleiderer社製)を使用して、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数250rpm、混練樹脂の吐出速度15kg/hrの条件で溶融混練を行った。
溶融混練中に、押出機ダイ部で熱電対により測定した溶融樹脂の温度は260〜270℃であった。
また、押出機の後段部分にベント口を設けて減圧脱揮(0.005MPa)を行った。
2軸押出機への原材料の投入は、実施例1〜3、実施例7〜12及び比較例1〜7については、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及びその他の成分を、予め10分間タンブラーを用いて一括して予備ブレンドしたものをフィーダーにより投入した。
実施例4、5及び6については、成分(B)と成分(C)は、溶融混練を行う前に、表1に示す配合比率で、ジャケット温度200℃に設定した10リットルのヘンシェルミキサーに投入し、スクリュー軸回転数1,450rpmで10分間攪拌処理の予備混合処理を行ったものを使用した。尚、該予備混合処理品のpH値をJIS K5101に準拠して測定したところ、表1に示す結果となった。
得られた樹脂組成物のペレットを120℃で5時間乾燥し、射出成形機で成形し、以下の各試験を実施した。
(1)難燃性
燃焼試験用の短冊形状成形体(厚さ1.2mm、0.75mm)を射出成形機(日本国ファナック社製 オートショット100D)により、シリンダー設定温度300℃、金型設定温度80℃の条件で成形し、温度23℃、湿度50%の環境下に2日保持した後、UL94規格に準じて50W(20mm)垂直燃焼試験を行い、V−0、V−1、V−2、NC(NCはnon−classification(分類不能))に分類した。
(難燃性の程度:V−0>V−1>V−2)
さらに一部の組成物に対しては、厚さ1.0mmの短冊形状成形体を用い、UL94規格に準じて500W(125mm)垂直燃焼試験を行い、5VBの判定を行った。
(2)曲げ弾性率測定
シリンダー温度300℃、金型温度80℃に設定した射出成形機(日本国ファナック社製 オートショット50D)で1/8インチ厚短冊片を成形し、ASTM D790に準じて、曲げ弾性率を測定した。測定温度は23℃である。(単位:MPa)
(3)メルトインデックス(MI)測定
JIS K7210に準じて、炉体温度300℃、荷重1.2kgにてMI値を測定した。(単位:g/10min)
(4)成形機内滞留後のメルトインデックス(MI)測定
シリンダー温度300℃に設定した射出成形機(日本国ファナック社製 オートショット50D)のシリンダー内部で樹脂組成物を20分滞留させた後、1/8インチ厚短冊片を成形し、得られた短冊片を切り出してJIS K7210に準じて、炉体温度300℃、荷重1.2kgにてMI値を測定した。(単位:g/10min)
(5)耐熱エージング性測定
射出成形機(日本国ファナック社製 オートショット50D)により、シリンダー設定温度300℃、金型温度80℃で1/8インチ厚ダンベル形状成形体成形し、温度120℃の熱風循環型オーブン中に2,000時間保存した後、5本の試験片に対してASTM D638試験法に準じて引張り測定を実施し、下記の基準で評価した。
○:サンプルが5本とも全て、引張強度が降伏した後に破断する。
△:サンプルの1〜4本が、引張強度が降伏した後に破断する。
×:サンプルが5本とも全て、引張強度が降伏せずに破断する。
(6)耐湿熱性測定
射出成形機(日本国ファナック社製 オートショット50D)により、シリンダー設定温度300℃、金型温度80℃で1/8インチ厚ダンベル形状成形体成形し、温度80℃、相対湿度95%雰囲気中に2,000時間保存した後、5本の試験片に対してASTM D638試験法に準じて引張り測定を実施し、下記の基準で評価した。
○:サンプルが5本とも全て、引張強度が降伏した後に破断する。
△:サンプルの1〜4本が、引張強度が降伏した後に破断する。
×:サンプルが5本とも全て、引張強度が降伏せずに破断する。
(7)落錘衝撃強度測定
150mm×150mm×2mm(厚み)の平板状成形体を射出成形機(日本国ファナック社製 オートショット100D)により、シリンダー設定温度300℃、金型設定温度80℃の条件で成形し、温度23℃、湿度50%の環境下に2日保持した後、試験片とした。該試験片に対して、球状の先端(直径3/4インチ(19mm))を有するスチール製の落錘(重量200g)に重りを取り付け、落下高さ150cmの条件で、荷重を変えて落錘衝撃試験を行い、試験片を落錘が貫通するエネルギー値(荷重×高さ)を測定した。
(単位:kgf.cm)
また、落錘が平板状成形体(試験片)を貫通した時の破壊状態(延性及び脆性)を観察した。落錘が試験片を貫通しない場合は「非貫通」とした。
結果を表1〜表3に示す。
【実施例13】
実施例4で用いた樹脂組成物を使用して、Tダイを装着した50mm単軸シート押出機(日本国株式会社プラ技研製PG50−32V、L/D=32)により、シリンダー設定温度290℃、スクリュー回転数50rpm、吐出量30〜35kg/hr、オープンベント付きの条件で、厚さ0.7mmのシートを成形した。
Tダイは、スリット幅1mm、スリット長さ300mmとした。
Tダイより押出されたシートは、ロールにより、ロール回転数2〜4m/minの範囲で調整し、吐出量とのバランスをとりながら0.7mm厚みのシートとした。ロールの設定温度は140℃とした。
成形したシートを、幅12.7mm、長さ127mm(但し、シート押出方向を長さ方向とした)を切り出し、UL94規格に準じて20mm垂直燃焼試験を行った結果、5本の試験片に対するトータル燃焼時間が32秒であり、燃焼物の滴下本数が零であり、V−0判定結果を得た。
実施例14、15
表4の実施例14、15に示す組成に変更した以外は実施例1と同様に溶融混練を行ってポリカーボネート難燃樹脂組成物を得た。
実施例14、及び実施例15でそれぞれ使用したアクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)及びメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂(MBS)は、以下の通りである。
(AS)
アクリロニトリル単位27wt%、スチレン単位73wt%からなり、重量平均分子量(Mw)が100,000であるアクリロニトリル・スチレン樹脂(AS)
(MBS)
メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン樹脂(日本国鐘淵化学工業(株)製 カネエース M−511)
得られた樹脂組成物のペレットを120℃で5時間乾燥し、射出成形機で成形し、実施例1と同様に各種の評価を行った。
結果を表4に示す。




【産業上の利用可能性】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、難燃剤として、臭素系化合物あるいはリン系化合物を使用することなく、薄肉の成形体においても卓越した難燃性を発現すると同時に、溶融安定性に優れるので加工温度範囲を広げることができる。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱エージング性、耐湿熱性に優れるので、広い範囲の用途において樹脂成形用材料として極めて有利に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネートを主体とする樹脂成分(A)100重量部、
固体無機化合物(B)0.1〜200重量部、
有機酸、有機酸エステル、有機酸無水物、有機酸ホスホニウム塩及び有機酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(C)、
有機酸アルカリ金属塩及び有機酸アルカリ土類金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機酸金属塩(D)0.001〜1重量部、及び
フルオロポリマー(E)0.01〜1重量部
を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
該化合物(C)の量が、該固体無機化合物(B)と該化合物(C)との混合物のpH値が4〜8となる量である、
ことを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
該固体無機化合物(B)が、板状の珪酸塩化合物、針状の珪酸塩化合物及び繊維状の珪酸塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の珪酸塩化合物であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
該珪酸塩化合物が、タルク、マイカ、ガラスフレーク及びガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
該珪酸塩化合物が、タルク及びマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
該化合物(C)が、有機スルホン酸、有機スルホン酸エステル、有機スルホン酸ホスホニウム塩、有機スルホン酸アンモニウム塩、及び有機カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
該固体無機化合物(B)の量が、1〜20重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる射出成形体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる押出成形体。

【国際公開番号】WO2004/058894
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【発行日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562959(P2004−562959)
【国際出願番号】PCT/JP2003/017009
【国際出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】