説明

難燃性軟質ポリウレタンフォームとその製造方法

【課題】ハロゲン元素などの環境に悪影響を与えるおそれのある物質を使用せず、しかも発煙性が低く、燃焼後も骨格の形状を保持できる高い難燃性を有する低密度の難燃性軟質ポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【解決手段】粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物及びバインダーを含む含浸液31を、軟質ポリウレタンフォーム21に含浸させ、乾燥させることによって、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物をバインダーで軟質ポリウレタンフォーム内に付着・固定させることにより、UL94 HF−1に合格し、燃焼後も形状保持性の高い低密度の難燃性軟質ポリウレタンフォームを得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性軟質ポリウレタンフォームとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームは、弾性、圧縮復元力、適度な通気性等を有しているため、例えば、家具、寝具、自動車部材等のクッション材や、電子機器部品のガスケット等に使用されている。また、これらの用途に使用される軟質ポリウレタンフォームには、難燃性が要求されることがある。
【0003】
従来、軟質ポリウレタンフォームを低燃焼化させる方法として、ポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリマー、リン酸エステルやハロゲン化リン酸エステル化合物、或いはメラミン樹脂やウレア樹脂などの有機系難燃剤、酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤をポリウレタンフォーム原料中に混合して発泡させる方法がある。また、これらの難燃剤の中でも、ハロゲン系難燃剤は、少量の使用量で難燃効果が得られるため、広く用いられてきた。
【0004】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤を含む軟質ポリウレタンフォームを焼却すると、ダイオキシンなどの毒性の高い化学物質を生成して人体や環境に悪影響を及ぼすおそれがあるため、近年ではハロゲン系難燃剤の使用が大幅に制限されるようになった。
このため、ハロゲンを含まない難燃剤をポリウレタンフォーム原料中にある程度多く配合して軟質ポリウレタンフォームを発泡する方法が主流となってきた(特許文献1、2)。
【0005】
ところが、空調機パネルの断熱材、ダクト等の貫通口周りの断熱材、掃除機等のモーター用防音材に使用される軟質ポリウレタンフォームには、炎が離れると直ちに消炎する高い難燃性と、燃焼後もフォームの多孔体骨格が残存する形状保持性が要求される。しかし、メラミンや有機系リン化合物からなる難燃剤をポリウレタンフォーム原料に配合して発泡させた難燃性軟質ポリウレタンフォームでは、難燃規格UL−94 HF−1試験に合格するものであっても、燃焼時に滴下または軟化して収縮等の態様を示すため、前記の高い難燃性及び燃焼後の多孔体骨格の残存要求(形状保持性)に応えることができなかった。
【0006】
また、クロロプレンゴムラテックスからなるバインダーと無機系難燃剤を軟質ポリウレタンフォームに含浸させ、乾燥させることによって、無機系難燃剤を軟質ポリウレタンフォーム内にバインダーで付着固定したもの(特許文献3)、ホウ酸化合物を含む水溶液を軟質ポリウレタンフォームに含浸・付着させた低燃焼性軟質ポリウレタンフォームがある(特許文献4)。
【0007】
しかしながら、クロロプレンゴムラテックスからなるバインダーと無機系難燃剤を含浸させた軟質ポリウレタンフォームは、クロロプレンゴムラテックスを使用しているため、燃焼時にダイオキシンなどの生成するおそれがある。また、ホウ酸化合物を含む水溶液を含浸・付着させた低燃焼性軟質ポリウレタンフォームは、PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)第1種に指定されているホウ酸化合物を使用するため、人体、環境への悪影響が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−131851号公報
【特許文献2】特開2007−002036号公報
【特許文献3】特開2009−173753号公報
【特許文献4】特開平09−272754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、ハロゲン化合物などの環境に悪影響を与えるおそれのある物質を使用せず、しかも発煙性が低く、燃焼後も骨格の形状を保持できる高い難燃性を有する低密度の難燃性軟質ポリウレタンフォームとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物とバインダーが軟質ポリウレタンフォームに含浸し、前記バインダーによって粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物が前記軟質ポリウレタンフォーム内に付着したことを特徴とする難燃性軟質ポリウレタンフォームに係る。
【0011】
請求項2の発明は、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物及びバインダーを含む含浸液を軟質ポリウレタンフォームに含浸させ、乾燥させることによって、前記粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物を前記軟質ポリウレタンフォーム内に付着させることを特徴とする難燃性軟質ポリウレタンフォームの製造方法に係る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軟質ポリウレタンフォーム内に付着した粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物によって、発煙性が低く、燃焼後も骨格の形状を保持できる高い難燃性を有する難燃性軟質ポリウレタンフォームが得られる。
【0013】
本発明とは異なり、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物をポリウレタンフォーム原料に配合して軟質ポリウレタンフォームを発泡させる場合、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物は、本来のウレタン発泡反応に不要な成分であるため、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物の配合量によってはポリウレタンフォームの発泡性に悪影響を与えることになる。しかし、本発明においては、発泡後の軟質ポリウレタンフォームに粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物をバインダーと共に含浸・付着させているため、ポリウレタンフォームの発泡性に悪影響を受けることなく、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物の付着量を調節して良好な難燃性を得ることができる。
【0014】
さらに、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物をポリウレタンフォーム原料に配合してポリウレタンフォームを発泡させる場合には、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物がポリウレタンフォーム原料で包まれた状態で軟質ポリウレタンフォームが形成されるため、発泡後の軟質ポリウレタンフォームにおいては粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物がウレタンの膜で覆われた状態となって、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物による難燃効果を効率良く発揮できないが、本発明では、ポリウレタンフォームの骨格外面に粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物が露出して付着した状態となる。そのため、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物をポリウレタンフォーム原料に配合して発泡させる場合と比べて、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物の量が少量でも良好な難燃性が得られることになり、難燃性軟質ポリウレタンフォームを低密度にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の難燃性軟質ポリウレタンフォームを連続的に製造する設備の例を概略的に示す図である。
【図2】片持ち保持距離を測定する際の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の難燃性軟質ポリウレタンフォームは、粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物とバインダーが軟質ポリウレタンフォームに含浸し、前記バインダーによって粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物が前記軟質ポリウレタンフォーム内に付着したものである。
【0017】
本発明で使用する粘土鉱物としては、特に限定されるものではなく、層状粘土鉱物あるいは非層状粘土鉱物の何れであってもよい。例えば、層状粘土鉱物としては、モンモリロナイト、ベントナイト、タルク(滑石)、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、雲母、カオリナイト等を挙げることができる。一方、非層状粘土鉱物としては、ケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等を挙げることができる。粘土鉱物の大きさは、軟質ポリウレタンフォーム内に付着可能な大きさとする必要があり、例えば1〜20μm程度の大きさが好ましい。
【0018】
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。前記金属水酸化物の平均粒子径は、0.5〜10μmが好ましい。
リン化合物としては、リンを含む化合物であれば特に限定されず、例えばリン酸エステル、亜リン酸エステル、赤リンなどを挙げることができる。
【0019】
バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−スチレン共重合体樹脂、アクリル酸−酢酸ビニル共重合体樹脂等のアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。より好ましいものは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂である。前記バインダーは1種または2種以上の混合物で使用することができる。
【0020】
前記粘土鉱物、金属水酸化物、リン化合物の割合は、特に限定されるものではなく、使用する粘土鉱物、金属水酸化物、リン化合物によって適宜決定される。例として、バインダーの固形分100重量部に対して、粘土鉱物が10〜300重量部、金属水酸化物が300〜1000重量部、リン化合物が10〜50重量部を挙げる。前記粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物とバインダーは、含浸液とされて軟質ポリウレタンフォームに含浸され、その後の乾燥によって粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物が、前記バインダーによって軟質ポイウレタンフォーム内に付着固定される。前記含浸液には、水等の溶媒が添加されて軟質ポリウレタンフォームに含浸可能な粘度にされる。含浸液の粘度は、50〜2000mPa・s(25℃、JIS K7117−2)程度が好ましい。その他、前記含浸液には、顔料や分散剤、消泡剤等を適宜添加してもよい。顔料は、難燃性軟質ポリウレタンフォームの用途等に応じて適宜の色のものが使用される。また、分散剤は前記粘土鉱物、金属水酸化物、リン化合物を含浸液に安定して分散させるためのものであり、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤等を挙げることができる。分散剤は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。前記分散剤を添加する場合、前記分散剤の量は含浸液100重量部中に0.1〜3重量部程度含まれるようにするのが好ましい。また、消泡剤は、シリカ系である。
【0021】
軟質ポリウレタンフォームは、特に限定されるものではないが、加水分解を抑えるため、エーテル系ポリウレタンフォームが好ましい。また、セル数(JIS K6400−1:2004付属書1(参考)(軟質ウレタンフォーム試験法))は10〜80個/25mm、密度(JIS K7222)は10〜80kg/mが好ましい。セル数が10個/25mm未満の場合にはウレタンフォーム自体の製造が困難となり、一方、80個/25mmを超える場合にはセルの目詰まりが難燃スラリー含浸時に起きやすい。密度は10kg/m未満の場合にはウレタンフォームの強度が低く、連続含浸工程に通せない。一方、80kg/mを超える場合には得られる難燃性軟質ウレタンフォームの通気性が低くなりすぎてしまう。前記軟質ポリウレタンフォームにおける前記粘土鉱物、金属水酸化物、リン化合物の付着量は、軟質ポリウレタンフォーム1mに対して、粘土鉱物が9〜20,000g、金属水酸化物は9,000〜80,000g、リン化合物は100〜12,000gが好ましい。
【0022】
前記難燃性軟質ポリウレタンフォームは、前記粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物及びバインダーを含む前記含浸液を、前記軟質ポリウレタンフォームに含浸させ、乾燥させることによって製造される。
【0023】
図1は、前記難燃性軟質ポリウレタンフォームを連続的に製造するための設備である。
前記設備を用いる難燃性軟質ポリウレタンフォームの製造について説明する。所定厚みのシート状にした軟質ポリウレタンフォーム21が巻かれた供給ロール11から前記軟質ポリウレタンフォーム21を引き出し、前記含浸液31が収容されている含浸槽13内に導いて含浸液31に漬け、次に絞りロール13、13で軟質ポリウレタンフォーム21を挟んで余剰の含浸液を軟質ポリウレタンフォームから絞り出し、次に乾燥炉や加熱ヒータ等からなる乾燥装置15によって軟質ポリウレタンフォーム中の含浸液を乾燥させる。これにより、前記粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物を軟質ポリウレタンフォーム内にバインダーで付着・固定した難燃性軟質ポリウレタンフォーム23を得る。前記余剰の含浸液の絞り出しは、前記絞りロール13、13間の距離を調節することによって行う。また、前記乾燥時の温度は、60〜200℃が好ましい。このようにして得られた難燃性軟質ポリウレタンフォーム23は、使用場所、用途等に応じて適宜の寸法に裁断される。
【0024】
なお、難燃性軟質ポリウレタンフォームの製造は、前記のような連続的な製造に限定されるものではなく、非連続的な方法、例えば、予め所定寸法とした前記軟質ポリウレタンフォームを、前記含浸液が入った含浸槽に漬けて含浸させ、その後、含浸槽から取り出して余剰の含浸液を圧縮等によって絞り出し、乾燥装置で乾燥させる方法によって行うこともできる。
【実施例】
【0025】
表1及び表2に示す配合で含浸液を作成した。含浸液のバインダーとしてアクリル酸エマルジョン:製品名;LX852、日本ゼオン社製、固形分45%、消泡剤として製品名;SNデフォーマ777、サンノプコ社製、顔料として製品名;サンダイスーパーブラック C−E、山陽色素社製、固形分30%、分散剤としてヘキサメタリン酸ソーダ、製品名;燐化学工業社製、金属水酸化物として水酸化アルミニウム:製品名;ハイジライトH−42M、昭和電工社製、水酸化マグネシウム:製品名;#200、神島化学工業社製、リン化合物として赤リン:セラミック被覆し、ステアリン酸亜鉛をコーティングしたもの、製品名;ノーバエクセル140F、燐化学工業社製、ポリリン酸アンモニウム:メラミン被覆タイプ、製品名;テラージュC−30、CBC社製、リン酸アンモニウム(発泡性リン酸アルミニウム):製品名;APA100、太平化学産業社製、粘土鉱物としてベントナイト1:製品名;クニピアF、クニミネ工業社製、タルク:製品名;D−1000、ベントナイト2:製品名;クニゲルU300、クニミネ工業社製、タルク:製品名;D−1000、日本タルク工業社製、雲母:製品名;A21S、ヤマグチマイカ社製、粘土化合物ではないケイ酸化合物としてケイ酸ナトリウム:製品名;3号珪酸ソーダ、富士化学社製、固形分40%、コロイダルシリカ:製品名;スノーテックス20、日産化学工業社製、固形分20%、フュームドシリカ:製品名;アエロジル90、日本アエロジル社製を用いた。
【0026】
含浸液は、表1の成分を固形分が50%となるように水(300〜600重量部)を添加し、10分間300rpmラボミキサーで撹拌して得た。
軟質ポリウレタンフォームは、実施例1〜9及び比較例1〜6については、密度22kg/m、セル数35個/25mm、エーテルタイプ、製品名;ECS、イノアックコーポレーション社製を用い、実施例10については密度16kg/m、セル数30個/25mm、エーテルタイプ、製品名;ECZ、イノアックコーポレーション社製を用いた。
【0027】
前記軟質ポリウレタンフォームを厚み5mm、250×300mmのシートとし、前記含浸液を収容した含浸槽に漬け、その後、表1及び2の含浸乾燥密度となるようにロール絞りを行って余剰の含浸液を絞り出した。含浸乾燥密度は、ポリウレタンフォームの重量と含浸液の水分を除いた重量の和をポリウレタンフォームの体積で除して得た値である。その後、120℃の熱風循環オーブン中で1時間乾燥し、前記含浸乾燥密度の難燃性軟質ポリウレタンフォームのシートを得た。その後、前記難燃性軟質ポリウレタンフォームのシートの端を切り取り、180×230×5mmの難燃性軟質ポリウレタンフォームからなる実施例1〜10及び比較例1〜6のサンプルを得た。
【0028】
実施例1〜3は、金属水酸化物として水酸化アルミニウム、リン化合物として赤リン、粘土鉱物としてベントナイト1を用い、ベントナイト1の量を変化させた例である。実施例4は、実施例2における水酸化アルミニウムに代えて水酸化マグネシウムを用いた例である。実施例5は、実施例2における赤リンに代えてポリリン酸アンモニウムを用いた例である。実施例6は、実施例2における赤リンに代えてポリリン酸アルミニウムを用いた例である。実施例7は、実施例2におけるベントナイト1に代えてベントナイト2を用いた例である。実施例8は、実施例2におけるベントナイト1に代えてタルクを用いた例である。実施例9は、実施例2におけるベントナイト1に代えて雲母を用いた例である。実施例10は、実施例2における軟質ポリウレタンフォームを密度16kg/mのものに代えた例である。
【0029】
比較例1は、実施例2における水酸化アルミニウムの量を500重量部とし、金属水酸化物、リン化合物及び粘土鉱物を含まない例である。比較例2は、実施例2における金属水酸化物及びリン化合物を含まず、粘土鉱物のみを含む例である。比較例3は、実施例2における金属水酸化物及び粘土鉱物を含まず、リン化合物のみを含む例である。比較例4は、実施例2における金属水酸化物及び粘土鉱物を含まず、リン化合物と粘土鉱物ではないケイ酸化合物としてのケイ酸ナトリウムを含む例である。比較例5は、実施例2における金属水酸化物及び粘土鉱物を含まず、リン化合物と粘土鉱物ではないケイ酸化合物としてのコロイダルシリカを含む例である。比較例6は、実施例2における金属水酸化物及び粘土鉱物を含まず、リン化合物と粘土鉱物ではないケイ酸化合物としてのフュームドシリカを含む例である。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
実施例1〜10及び比較例1〜6に対し、JIS K6400−6に従って水平燃焼試験を行い、難燃規格UL−94 HF1に合格するか否かを判断した。また、片持ち保持距離については、実施例1〜10及び比較例1〜6のサンプルを図2に示すようにして試験を行った。片持ち保持距離の試験では、サンプル55を金網51上に載置して金網51の先端からサンプル55を距離dだけ突き出させ、突出させた部分に2分間にわたり5cm程度の炎をまんべんなく当てて炭化させても、崩れずに形状を保持しており、次いでd+5(mm)のばして突き出させて置いて同様に炎を当てた場合に崩れた時に、dを片持ち保持距離とする。なお、50mmを超える場合には2分間で炎をまんべんなく当てることが難しいため、50mm以下で試験を行った。50mmの突き出し距離で試験を行って崩れない場合、dは50mm以上とした。測定結果を表1と表2の下部に示す。
【0033】
表1及び表2に示すように、実施例1〜10は何れもUL94 HF−1に合格し、しかも片持ち保持距離は30mm以上であり、燃焼後の形状保持性が高いものであった。
一方、比較例1〜6は、比較例3を除いて何れもUL94 HF−1が不合格であった。また、片持ち保持距離は比較例1が5mm、比較例3が5mm、比較例5が10mm、比較例5が5mmと短く、燃焼後の形状保持性が低かった。比較例4は燃焼によって骨格が残らなかった。また、粘土鉱物としてベントナイト1を含み、金属水酸化物及びリン化合物を含まない比較例2についてはUL94 HF−1が不合格であったが、片持ち保持距離が30mmであり、形状保持性が高かった。また、リン化合物として赤リンを含み、金属水酸化物及び粘土鉱物を含まない比較例3は、UL94 HF−1については合格したが、片持ち保持距離が5mmであり、形状保持性が低かった。
【0034】
このように本発明によれば、ハロゲン化合物などの環境に悪影響を与えるおそれのある物質を使用せず、しかも発煙性が低く、燃焼後も骨格の形状を保持できる高い難燃性を有する低密度の難燃性軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
15 乾燥装置
21 軟質ポリウレタンフォーム
31 含浸液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物とバインダーが軟質ポリウレタンフォームに含浸し、前記バインダーによって粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物が前記軟質ポリウレタンフォーム内に付着したことを特徴とする難燃性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物及びバインダーを含む含浸液を軟質ポリウレタンフォームに含浸させ、乾燥させることによって、前記粘土鉱物と金属水酸化物とリン化合物を前記軟質ポリウレタンフォーム内に付着させることを特徴とする難燃性軟質ポリウレタンフォームの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−111826(P2012−111826A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261106(P2010−261106)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】