説明

難燃性電線・ケーブル

【課題】ハロゲンフリーで、優れた難燃性と機械的特性を併せ持つ難燃性電線・ケーブルを提供する。
【解決手段】難燃性電線・ケーブルは、導体外周に被覆を有する。被覆は、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体および(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)平均粒径(D50)0.3〜0.7μmのハンタイトおよび(D)平均粒径(D50)3.0〜5.0μmのハイドロマグネサイトを合計量で30〜90質量部含有し、かつ(C)ハンタイトと(D)ハイドロマグネサイトの質量比が40:60〜60:40であるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフリーで難燃性および機械的特性に優れる電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電線・ケーブル分野においては、環境に配慮して、焼却時にハロゲン化水素などの有害なガスを発生するポリ塩化ビニル(PVC)やハロゲン系難燃剤を配合した組成物に代えて、ポリオレフィンに水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を添加して難燃化したハロゲンフリーの組成物を絶縁体やシースなどの材料として用いた電線・ケーブルが多用されてきている。
【0003】
しかしながら、このようなハロゲンフリーの難燃性組成物においては、難燃性と機械的特性(引張強さ、引張伸びなど)を両立させることが難しく、難燃性を高めるため金属水酸化物を多量に配合すると機械的特性が低下し、逆に、良好な機械的特性を得るため金属水酸化物の配合量を少なくすると難燃性が不十分となる問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するため、様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、特定の2種類のポリオレフィンに、ハンタイトおよびハイドロマグネサイトという特定の2種類の無機難燃剤を組み合わせた組成物を被覆した自動車用電線が開示されている。また、特許文献2には、オレフィン系ポリマーに、金属水酸化物に代えて、金属酸化物と、燃焼時に不燃ガスを放出する特定の金属塩とを配合した組成物を被覆した電線・ケーブルが開示されている。
【0005】
しかしながら、このような従来の技術においては、いくらかの改善は認められるものの、その効果は十分ではなく、未だ十分な難燃性と機械的特性を併せ持つ電線・ケーブルは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−200089号公報
【特許文献2】特開2010−111760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、ハロゲンフリーで、優れた難燃性と機械的特性を併せ持つ電線・ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様である難燃性電線・ケーブルは、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体および(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)平均粒径(D50)0.3〜0.7μmのハンタイトおよび(D)平均粒径(D50)3.0〜5.0μmのハイドロマグネサイトを合計量で30〜90質量部含有し、かつ前記(C)ハンタイトと前記(D)ハイドロマグネサイトの質量比が40:60〜60:40であるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を、導体外周に被覆したものである。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体と前記(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体の質量比が50:50〜70:30であるものである。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体と前記(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体の質量比が55:45〜65:35であるものである。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかの態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記ベースポリマー100質量部に対し、前記(C)ハンタイトおよび前記(D)ハイドロマグネサイトを合計量で40〜60質量部含有するものである。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれかの態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記(C)ハンタイトと前記(D)ハイドロマグネサイトの質量比が45:55〜55:45であるものである。
【0013】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様のいずれかの態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記ベースポリマー100質量部に対し、(E)シリコーンパウダーを2〜5質量部含有するものである。
【0014】
本発明の第7の態様は、第1の態様乃至第6の態様のいずれかの態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物からなる被覆が、10MPa以上の引張強さと、400%以上の引張伸びを有するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の難燃性電線・ケーブルによれば、ハロゲンフリーで、優れた難燃性と優れた機械的特性を併せ持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の難燃性電線・ケーブルの一実施形態を示す横断面図である。
【図2】本発明の難燃性電線・ケーブルの他の実施形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
まず、本発明の難燃性電線・ケーブルに使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物について説明する。
【0019】
本発明において使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体および(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体からなるベースポリマーに対し、(C)平均粒径(D50)0.3〜0.7μmのハンタイトと、(D)平均粒径(D50)3.0〜5.0μmのハイドロマグネサイトとを含有するものである。
【0020】
(A)成分のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、特に限定されるものではないが、酢酸ビニル(VA)含有量が32〜34質量%、密度(JIS K 7112)が0.950〜0.970g/cm、MFR(JIS K 7210;230℃、2.16kg荷重)が0.2〜0.4g/10分、ショアA硬さ(JIS K 7215)が66〜70、融点(JIS K 7121)が59〜63℃のものが好ましい。このような物性を有する市販品を具体的に例示すると、例えば、エバフレックスEV150(三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名)などが挙げられる。
【0021】
(B)成分のエチレン・アクリル酸エチル共重合体は、特に限定されるものではないが、アクリル酸エチル(EA)含有量が14〜16質量%、MFR(JIS K 6922−2;230℃、2.16kg荷重)が0.7〜0.9g/10分、融点(JIS K 7121)が80〜120℃のものが好ましい。このような物性を有する市販品を具体的に例示すると、例えば、レクスパールEEA A1150(日本ポリエチレン(株)製 商品名)などが挙げられる。
【0022】
本発明で使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物のベースポリマーにおける上記(A)成分と(B)成分の配合比(A):(B)は、機械的特性および加工性の点から、質量比で50:50〜70:30であることが好ましい。より好ましくは55:45〜65:35であり、さらに好ましくは58:42〜63:37である。
【0023】
(C)成分のハンタイトと(D)成分のハイドロマグネサイトはいずれも難燃剤として配合されるものである。ハンタイトは、組成式MgCa(COで表わされる白色の結晶体であり、ハイドロマグネサイトは、組成式Mg(CO(OH)・HOまたはMg(CO(OH)・3HOで表わされる白色の結晶体である。難燃剤として汎用されている水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が、主に脱水による吸熱反応によって難燃効果を発現するものであるのに対し、ハンタイトは、下記に示すように火災時などの熱で分解して二酸化炭素(CO)を放出する結果、酸素が遮断もしくは希釈されて難燃効果を発現するものである。また、ハイドロマグネサイトは、それらの複合効果、すなわち、二酸化炭素(CO)の放出による酸素の遮断もしくは希釈と、脱水による吸熱反応の両効果によって難燃効果を発現するものである。
MgCa(CO → 3MgO + CaO + 4CO
Mg(CO(OH)・3HO → 4MgO + 3CO + 4H
【0024】
本発明において使用される(C)成分のハンタイトは、平均粒径(D50)が0.3〜0.7μmであり、好ましくは0.4〜0.6μmである。ハンタイトの平均粒径(D50)が0.3μm未満では、機械的特性が低下し、0.7μmを超えると、難燃性が低下する。また、(D)成分のハイドロマグネサイトは、平均粒径(D50)が3.0〜5.0μmであり、好ましくは2.0〜4.0μmである。ハイドロマグネサイトの平均粒径(D50)が3.0μm未満では、機械的特性が低下し、5.0μmを超えると、難燃性が低下する。
【0025】
なお、本明細書におけるハンタイトおよびハイドロマグネサイトの平均粒径(D50)は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定して得られる粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブが50%となる点の粒子径をいう。
【0026】
これらの(C)成分と(D)成分の配合比(C):(D)は質量比で40:60〜60:40である。(C)成分の割合が前記範囲未満では、難燃性が低下し、また、(C)成分の割合が前記範囲を超えると加工性が低下する。配合比(C):(D)は、好ましくは45:55〜55:45であり、より好ましくは47:53〜53:47である。
【0027】
なお、天然には、ハンタイトおよびハイドロマグネサイトは、これらの混合物として産出される。そして、そのような天然に産出された混合物が、例えば、ウルトラカーブ(ULTRACARB)という商品名でMINELCO社から市販されている。本発明においては、このような天然に産出された混合物を用いることもできる。ちなみに、上記ウルトラカーブは、原石を粉砕し、マグネサイトなどの不純物を除去した後、分級して製造されたもので、例えば、ハンタイトとハイドロマグネサイトの質量比50:50、ハンタイト平均粒径(D50)0.5μm、ハイドロマグネサイト平均粒径(D50)4.0μm(商品名 ULTRACARB LH2)などがある。
【0028】
(C)成分のハンタイトおよび(D)成分のハイドロマグネサイトは、ステアリン酸などの高級脂肪酸、シランカップリング剤、モリブデン酸塩などによる表面処理が施されていてもよい。このような表面処理された粉末を使用することにより、ポリマー成分と混練する際の分散性を高めることができる。
【0029】
本発明において、(C)成分のハンタイトおよび(D)成分のハイドロマグネサイトの配合量は、前述したべースポリマー成分の合計量100質量部に対して、合計量で30〜90質量部であり、好ましくは40〜60質量部であり、より好ましくは45〜55質量部である。配合量が30質量部未満では、難燃性が低下し、逆に、90質量部を超えると、ハンタイトまたはハイドロマグネサイトが表面にブルームするおそれがある。
【0030】
本発明で使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物には、難燃性および機械的特性をより高めるため、(E)シリコーンパウダーを配合することができる。この(E)シリコーンパウダーは、難燃助剤として知られるものである。本発明においては、難燃性向上の点から、粒子径が10〜200μmのものを使用することが好ましい。(E)成分として好適な市販品を具体的に例示すると、例えば、DC4−7081(東レ・ダウコーニング(株)製 商品名;粒子径10〜200μm)などが挙げられる。
【0031】
この(E)成分のシリコーンパウダーの配合量は、前述したべースポリマー成分の合計量100質量部に対して、好ましくは2〜5質量部である。配合量が2質量部未満では、添加による効果が十分に得られないおそれがあり、また、5質量部を超えると、シリコーンパウダーが表面にブルームするおそれがある。
【0032】
また、本発明で使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物には、上述した(C)成分〜(E)成分以外の他のノンハロゲン系の難燃剤および難燃助剤も、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。そのようなノンハロゲン系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどの金属水酸化物、グアニジン系、メラミン系などの窒素系難燃剤、リン酸アンモニウム、赤燐などのリン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、ホウ酸亜鉛などのホウ酸化合物、炭酸カルシウムなどが例示される。
【0033】
さらに、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱老化防止剤、充填剤、加工助剤、滑剤、着色剤などの添加剤を配合することができる。
【0034】
酸化防止剤および熱老化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、ジステアリル−ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレン−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイトなどのリン系酸化防止剤、ジラウリル−3,3′−チオジプロピオネート、4,4′−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3′−チオジプロピオネートなどのイオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
【0035】
紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−4′−n−オクトキシフェニル)べゾトリアゾール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0036】
充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコニア、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミなどが例示される。
【0037】
加工助剤としては、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸や、これらの塩またはエステル類などが挙げられる。
【0038】
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系などが挙げられる。
【0039】
上記各添加剤は、いずれも1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
本発明で使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、上記したような(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体、(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体、(C)ハンタイト、(D)ハイドロマグネサイト、(E)シリコーンパウダー、および必要に応じて配合される前述した各種成分を、バンバリーミキサ、タンブラー、加圧ニーダ、混練押出機、ミキシングローラなどの通常の混練機を用いて均一に混合することにより容易に製造することができる。
【0041】
ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、被覆後にポリマー成分を架橋させることができる。架橋方法は特に限定されるものではなく、予め難燃性樹脂組成物に架橋剤を添加しておき、被覆後に架橋させる化学架橋法や、電子線などの放射線の照射による架橋法など、任意の方法を用いることができる。化学架橋法を行う場合に用いる架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルー2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0042】
架橋の度合いは、ゲル分率で50%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。ゲル分率が50%未満であると、機械的特性を十分に向上させることができない。このゲル分率は、JIS C 3005に規定の架橋度試験方法に基づき測定される。
【0043】
本発明の難燃性電線・ケーブルは、上述したハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を、導体上に直接もしくは他の被覆を介して押出被覆し、必要に応じて架橋することにより製造される。導体の材質や外径、撚り合せの有無などは特に限定されるものではなく、用途によって適宜選択される。
【0044】
図1は、本発明の一実施形態に係る難燃性電線・ケーブルを示す横断面図である。
【0045】
図1に示すように、本実施形態の難燃性電線・ケーブル10は、1本乃至複数本のすずめっき軟銅線などからなる導体11を示している。この導体11上には、常法により架橋ポリエチレンからなる絶縁体12が設けられている。そして、この絶縁体12上には、さらに、前述したハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を押出被覆することによってシース13が形成されている。
【0046】
本実施形態の難燃性電線・ケーブル10は、以下の要件を満足するように構成されていることが好ましい。
(1)電線全体として、JIS C 3005の60度傾斜燃焼試験に合格する難燃性を有する。
(2)シース12の引張強さおよび引張伸び(JIS C 3005に準拠して測定)が、それぞれ10MPa以上および400%以上である。
【0047】
本実施形態の難燃性電線・ケーブル10においては、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体と(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体を特定の割合で混合してベースポリマーとするとともに、このベースポリマーに、特定の平均粒径を有する(C)ハンタイトおよび(D)ハイドロマグネサイトと、特定の粒径を有するシリコーンパウダーを特定の割合で配合したハロゲンフリー難燃性樹脂からなる被覆を備えている。この被覆は、従来の金属水酸化物を用いた組成物からなる被覆に比べ、難燃剤の使用量が少ないにも拘らず、良好な難燃性を有することができる。このため、ハロゲンフリーの優れた難燃性と機械的特性を併せ持つことができる。
【0048】
図2は、本発明の他の実施形態に係る難燃性電線・ケーブルを示す横断面図である。
【0049】
本実施形態の難燃性電線・ケーブル20は、導体11上に架橋ポリエチレンからなる絶縁体12を被覆した絶縁線心21を3本、介在14とともに撚り合せ、その外周に、押え巻きテープ15を介して、シース13を被覆した構造を有する。そして、シース13は、前述したハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を押出被覆することによって形成されている。
【0050】
本実施形態の難燃性電線・ケーブル20においても、第1の実施形態の難燃性電線・ケーブル10と同様、前述したハロゲンフリー難燃性樹脂組成物からなるシース13を備えるので、ハロゲンフリーの優れた難燃性と機械的特性を併せ持つことができる。
【0051】
なお、この難燃性電線・ケーブル20においても、上記(1)および(2)の要件を満足するように構成されていることが好ましい。
【実施例】
【0052】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
【0053】
EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体):
三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名 エバフレックスEV150;
密度=0.960g/mm、MFR=3.0g/分、VA含有量=33質量%
ショアA硬さ=68、融点=61℃
EEA(エチレン・アクリル酸エチル共重合体):
日本ポリエチレン(株)製 商品名 レクスパールEEA A1150;
MFR=0.8g/分、EA含有量=15質量%、
硬さ(デュロメータD)=41、引張弾性率=46MPa、
曲げ弾性率=54MPa、融点=100℃
ハンタイト/ハイドロマグネサイト:
MINELCO社製 商品名 ULTRACARB LH2
水酸化マグネシウム:
神島化学工業社製 商品名 マグシーズST
シリコーンパウダー:
東レ・ダウコーニング(株)製 商品名 DC4−7081
酸化防止剤:
BASF社製 商品名 IRGANOX 1010
滑剤:ステアリン酸マグネシウム
【0054】
(実施例1)
EVA15質量部、EEA85質量部、ハンタイト/ハイドロマグネサイト35質量部、シリコーンパウダー3質量部、酸化防止剤0.5質量部、および滑剤1質量部をミキシングロールにより均一に混練して難燃性樹脂組成物を得た。
【0055】
次いで、断面積38mmの銅撚線導体上に常法により架橋ポリエチレンからなる1.2mm厚の絶縁体を被覆した後、その上に上記難燃性樹脂組成物を1.5mm厚に押出被覆して、外径約12.5mmの難燃性電線・ケーブルを製造した。
【0056】
(実施例2〜7、比較例1〜5)
難燃性樹脂組成物の組成を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、難燃性樹脂組成物を調製し、また、これらの組成物を用いて難燃性電線・ケーブルを製造した。
【0057】
上記各実施例および各比較例で得られた難燃性樹脂組成物および難燃性電線・ケーブルルについて、下記に示す方法で各種特性を評価した。
[引張強さおよび引張伸び]
ケーブルとは別に難燃性樹脂組成物からなる試験用シートを作製し、JIS C 3005に基づく引張試験(引張速度200mm/分)を行い、測定した。
[酸素指数]
ケーブルとは別に難燃性樹脂組成物からなる試験用シートを作製し、JIS K 7201−2に準拠して測定した。
[難燃性]
難燃性電線・ケーブルから切り出したケーブル試料について、JIS C 3005に規定する60度傾斜燃焼試験を行い、60秒以内に自然消火した場合を「合格」、60秒を超えた場合を「不合格」とした。
【0058】
これらの結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、実施例1〜7はいずれも引張強さ、引張伸び、酸素指数、難燃性において、良好な結果が得られた。また、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)とEEA(エチレン・アクリル酸エチル共重合体)の質量比を50:50〜70:30とすることにより、引張強さおよび引張伸びにおいてさらに良好な結果が得られた(実施例3〜5)。さらに、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)とEEA(エチレン・アクリル酸エチル共重合体)質量比を55:45〜65:35、ハンタイトおよびハイドロマグネサイトの合計量を40〜60質量部とすることにより、引張強さ、引張伸び、酸素指数においてさらに良好な結果が得られた。
【符号の説明】
【0061】
10、20…難燃性電線・ケーブル、11…導体、12…絶縁体、13…シース、14…介在、15…押えテープ、21…絶縁線心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体および(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)平均粒径(D50)0.3〜0.7μmのハンタイトおよび(D)平均粒径(D50)3.0〜5.0μmのハイドロマグネサイトを合計量で30〜90質量部含有し、かつ前記(C)ハンタイトと前記(D)ハイドロマグネサイトの質量比が40:60〜60:40であるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を、導体外周に被覆したことを特徴とする難燃性電線・ケーブル。
【請求項2】
前記(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体と前記(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体の質量比が50:50〜70:30であることを特徴とする請求項1記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項3】
前記(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体と前記(B)エチレン・アクリル酸エチル共重合体の質量比が55:45〜65:35であることを特徴とする請求項1または2記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項4】
前記ベースポリマー100質量部に対し、前記(C)ハンタイトおよび前記(D)ハイドロマグネサイトを合計量で40〜60質量部含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項5】
前記(C)ハンタイトと前記(D)ハイドロマグネサイトの質量比が45:55〜55:45であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項6】
前記ベースポリマー100質量部に対し、(E)シリコーンパウダーを2〜5質量部含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項7】
前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物からなる被覆が、10MPa以上の引張強さと、400%以上の引張伸びを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の難燃性電線・ケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−124061(P2012−124061A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274784(P2010−274784)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】