説明

難燃性電線・ケーブル

【課題】ハロゲンフリーで、優れた難燃性と機械的特性を併せ持つ難燃性電線・ケーブルを提供する。
【解決手段】難燃性電線・ケーブルは、導体外周に被覆を有する。被覆は、ポリオレフィン100質量部に対し、酸化防止剤として0.1〜5.0質量部のビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドおよび0.1〜5.0質量部のテトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを含み、架橋剤として1.0〜4.0質量部のジクミルペルオキシドを含み、かつ架橋助剤として0.5〜5.0質量部のエチレングリコールジメタクリレートを含むハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフリーで難燃性および機械的特性に優れる電線・ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電線・ケーブル分野においては、環境に配慮して、焼却時にハロゲン化水素などの有害なガスを発生するポリ塩化ビニル(PVC)やハロゲン系難燃剤を配合した組成物に代えて、ポリオレフィンに水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を添加して難燃化したハロゲンフリーの組成物を絶縁体やシースなどの材料として用いた電線・ケーブルが多用されてきている。
【0003】
しかしながら、このようなハロゲンフリーの難燃性組成物においては、難燃性と機械的特性(引張強さ、引張伸びなど)を両立させることが難しく、難燃性を高めるため金属水酸化物を多量に配合すると機械的特性が低下し、逆に、良好な機械的特性を得るため金属水酸化物の配合量を少なくすると難燃性が不十分となる問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するため、様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、特定の2種類のポリオレフィンに、ハンタイトおよびハイドロマグネサイトという特定の2種類の無機難燃剤を組み合わせた組成物を被覆した自動車用電線が開示されている。また、特許文献2には、オレフィン系ポリマーに、金属水酸化物に代えて、金属酸化物と、燃焼時に不燃ガスを放出する特定の金属塩とを配合した組成物を被覆した電線・ケーブルが開示されている。
【0005】
しかしながら、このような従来の技術においては、いくらかの改善は認められるものの、その効果は十分ではなく、未だ十分な難燃性と機械的特性を併せ持つ電線・ケーブルは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−200089号公報
【特許文献2】特開2010−111760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、ハロゲンフリーで、優れた難燃性と機械的特性を併せ持つ電線・ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、ポリオレフィンに、特定の2種の酸化防止剤と、特定の架橋剤および架橋助剤とを組み合わせて添加することにより、難燃剤を多量に添加せずとも難燃性に著しく優れるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の態様である難燃性電線・ケーブルは、ポリオレフィン100質量部に対し、酸化防止剤として0.1〜5.0質量部のビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドおよび0.1〜5.0質量部のテトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを含み、架橋剤として1.0〜4.0質量部のジクミルペルオキシドを含み、かつ架橋助剤として0.5〜5.0質量部のエチレングリコールジメタクリレートを含むハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を被覆し架橋して成る被覆を備えるものである。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が、ポリオレフィン100質量部に対し、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドを1.0〜5.0質量部、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを2.0〜4.0質量部、ジクミルペルオキシドを2.0〜4.0質量部、エチレングリコールジメタクリレートを2.0〜4.0質量部含有するものである。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1の態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が、ポリオレフィン100質量部に対し、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドを2.0〜4.0質量部、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを3.0〜4.0質量部、ジクミルペルオキシドを2.5〜3.5質量部、エチレングリコールジメタクリレートを3.0〜4.0質量部含有するものである。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかの態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物が、ポリオレフィン100質量部に対し、50〜250質量部の金属水酸化物を含むものである。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれかの態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記金属水酸化物は、水酸化マグネシウムであるものである。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様のいずれかの態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記ポリオレフィンが、α−オレフィン共重合体を含むものである。
【0015】
本発明の第7の態様は、第1の態様乃至第6の態様のいずれかの態様の難燃性電線・ケーブルにおいて、前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物からなる被覆の酸素指数(JIS K 7201−2)が40以上であるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の難燃性電線・ケーブルによれば、ハロゲンフリーで、優れた難燃性と優れた機械的特性を併せ持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の難燃性電線・ケーブルの一実施形態を示す横断面図である。
【図2】本発明の難燃性電線・ケーブルの他の実施形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
まず、本発明の難燃性電線・ケーブルに使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物について説明する。
【0020】
本発明において使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィンをベースポリマーとし、ノンハロゲン系難燃剤を含有するとともに、酸化防止剤、架橋剤、および架橋助剤を含有するものである。
【0021】
ベースポリマーのポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン;ポリプロピレン(PP);ポリイソブチレン;エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンの2種以上を共重合させたα−オレフィン共重合体;エチレンに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのビニルエステルを共重合させたエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレンに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルを共重合させたエチレン・アクリル酸エステル共重合体;イソブチレン・イソプレン共重合体などが挙げられる。なお、α−オレフィン共重合体には、非共役ポリエンがさらに共重合されていてもよい。非共役ポリエンとしては、例えばジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネンなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
ポリオレフィンとしては、なかでも、α−オレフィン共重合体の使用が柔軟性の面から好ましく、他のポリオレフィンは、α−オレフィン共重合体の併用成分として使用することが好ましい。ポリオレフィンとして好適なα−オレフィン共重合体の市販品を具体的に例示すると、例えば、タフマーA1085、タフマーA1085S(以上、三井化学(株)製 商品名)などが挙げられる。
【0023】
また、ノンハロゲン系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、グアニジン系、メラミン系などの窒素系難燃剤、リン酸アンモニウム、赤燐などのリン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、ホウ酸亜鉛などのホウ酸化合物、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
ノンハロゲン系難燃剤としては、なかでも、金属水酸化物が好ましく、水酸化マグネシウム、または水酸化マグネシウムと他の金属水酸化物との組み合わせがより好ましく、水酸化マグネシウムの単独使用がより一層好ましい。水酸化物を単独で使用する場合、その配合量は、ベースポリマーのポリオレフィン100質量部に対し、50〜250質量部の範囲が好ましい。本発明においては、後述する特定の酸化防止剤、架橋剤、および架橋助剤を使用することにより、難燃剤の配合量を少なくしても高い難燃性を有することができる。
【0025】
本発明で使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物には、酸化防止剤として、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、およびテトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが併用され、さらに、架橋剤および架橋助剤として、ジクミルペルオキシド(DCP)およびエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)がそれぞれ使用される。
【0026】
酸化防止剤として使用される2種のうち、一方のビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドは、チオエーテル系酸化防止剤として知られるもので、市販品としては、例えば、ADEKA製のアデカスタブAO−23(商品名)などが挙げられる。このビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドは、ベースポリマーのポリオレフィン100質量部に対し、0.1〜5.0質量部配合される。配合量が0.1質量部未満では、添加による効果が小さく、難燃性を向上させることができない。また、配合量が5.0質量部を超えると、効果はさほど変わらず、導体外周に被覆した際に表面にブルームしてくるおそれがある。本成分は、ポリオレフィン100質量部に対し、1.0〜5.0質量部配合することが好ましく、2.0〜4.0質量部配合することがより好ましい。
【0027】
酸化防止剤として使用される他方のテトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤として知られるもので、市販品としては、例えば、ADEKA製のアデカスタブAO−60(商品名)などが挙げられる。このテトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンは、ベースポリマーのポリオレフィン100質量部に対し、0.1〜5.0質量部配合される。配合量が0.1質量部未満では、添加による効果が小さく、難燃性を向上させることができない。また、配合量が5.0質量部を超えると、効果はさほど変わらず、導体外周に被覆した際に表面にブルームしてくるおそれがある。この化合物は、ポリオレフィン100質量部に対し、2.0〜4.0質量部配合することが好ましく、3.0〜4.0質量部配合することがより好ましい。
【0028】
また、架橋剤および架橋助剤として使用されるジクミルペルオキシド(DCP)、およびエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)は、それぞれ有機過酸化物系架橋剤とその架橋助剤として一般に知られるものである。本発明においては、数多く知られる有機過酸化物系架橋剤とその架橋助剤のなかから特にこれらの2種を使用することが必要であり、他の架橋剤、架橋助剤を使用しても本発明の効果は得られない。
【0029】
また、これらの配合量は、ベースポリマーのポリオレフィン100質量部に対し、ジクミルペルオキシドは1.0〜4.0質量部であり、エチレングリコールジメタクリレートは0.5〜5.0質量部である。ジクミルペルオキシドおよびエチレングリコールジメタクリレートのいずれか一方でも、その配合量が前記範囲より少ないと、架橋が十分に行われず、難燃性も低下する。また、配合量が前記範囲を超えると、効果はさほど変わらず、いずれの成分も、導体外周に被覆した際に表面にブルームしてくるおそれがある。ジクミルペルオキシドは、ポリオレフィン100質量部に対し、2.0〜4.0質量部配合することが好ましく、2.5〜3.5質量部配合することがより好ましく、エチレングリコールジメタクリレートは、ポリオレフィン100質量部に対し、2.0〜4.0質量部配合することが好ましく、3.0〜4.0質量部配合することがより好ましい。
【0030】
なお、ベースポリマーのポリオレフィン100質量部に対し、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドを1.0〜5.0質量部、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを2.0〜4.0質量部、ジクミルペルオキシドを2.0〜4.0質量部で、かつエチレングリコールジメタクリレートは2.0〜4.0質量部配合することが好ましい。ベースポリマーのポリオレフィン100質量部に対し、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドを2.0〜4.0質量部、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを3.0〜4.0質量部、ジクミルペルオキシドを2.5〜3.5質量部で、かつエチレングリコールジメタクリレートを3.0〜4.0質量部配合することがより好ましい。
【0031】
本発明で使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の樹脂組成物に一般に配合されている、紫外線吸収剤、充填剤、加工助剤、滑剤、着色剤などの添加剤を配合することができる。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−4′−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0033】
充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコニア、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化珪素、窒化アルミなどが例示される。
【0034】
加工助剤としては、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸や、これらの塩またはエステル類などが挙げられる。
【0035】
滑剤としては、例えば、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系などが挙げられる。
【0036】
上記各添加剤は、いずれも1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
本発明で使用されるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、上記したようなポリオレフィン、酸化防止剤、架橋剤、および架橋助剤、並びに、必要に応じて配合される上述した各種成分を、バンバリーミキサ、タンブラー、加圧ニーダ、混練押出機、ミキシングローラなどの通常の混練機を用いて均一に混合することにより容易に調製することができる。
【0038】
本発明の難燃性電線・ケーブルは、上記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を、導体上に直接もしくは他の被覆を介して押出被覆し、加熱架橋することにより製造される。導体の材質や外径、撚り合せの有無等は特に限定されるものではなく、用途によって適宜選択される。また、ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を架橋させる際の温度条件は、通常、170〜250℃であり、好ましくは180〜220℃である。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態に係る難燃性電線・ケーブルを示す横断面図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の難燃性電線・ケーブル10は、1本乃至複数本のすずめっき軟銅線などからなる導体11を示している。この導体11上には、常法により架橋ポリエチレンからなる絶縁体12が設けられている。そして、この絶縁体12上には、さらに、前述したハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を押出被覆した後、加熱架橋することによってシース13が形成されている。
【0041】
本実施形態の難燃性電線・ケーブル10は、以下の要件を満足するように構成されていることが好ましい。
(1)シース12の酸素指数(JIS K 7201−2に準拠して測定)が、40以上である。
(2)シース12の引張強さおよび引張伸び(JIS C 3005に準拠して測定)が、それぞれ10MPa以上および400%以上である。
【0042】
本実施形態の難燃性電線・ケーブル10においては、ポリオレフィンに、特定の2種の酸化防止剤と、特定の架橋剤および架橋助剤とを特定の割合で配合したハロゲンフリー難燃性樹脂の架橋体からなる被覆を備えている。この被覆は、従来のハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を用いた組成物からなる被覆に比べ、難燃剤の使用量が少ないにも拘らず、良好な難燃性を有することができる。このため、ハロゲンフリーの優れた難燃性と機械的特性を併せ持つことができる。
【0043】
図2は、本発明の他の実施形態に係る難燃性電線・ケーブルを示す横断面図である。
【0044】
本実施形態の難燃性電線・ケーブル20は、導体11上に架橋ポリエチレンからなる絶縁体12を被覆した絶縁線心21を3本、介在14とともに撚り合せ、その外周に、押え巻きテープ15を介して、シース13を被覆した構造を有する。そして、シース13は、前述したハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を押出被覆した後、加熱架橋することによって形成されている。
【0045】
本実施形態の難燃性電線・ケーブル20においても、第1の実施形態の難燃性電線・ケーブル10と同様、前述したハロゲンフリー難燃性樹脂組成物からなるシース13を備えるので、ハロゲンフリーの優れた難燃性と機械的特性を併せ持つことができる。
【0046】
なお、この難燃性電線・ケーブル20においても、上記(1)および(2)の要件を満足するように構成されていることが好ましい。
【実施例】
【0047】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
【0048】
α−オレフィン共重合体:
三井化学(株)製 商品名 タフマーA1085S
水酸化マグネシウム:
協和化学工業社製 商品名 キスマ5A
酸化防止剤(a):
ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−
tert−ブチルフェニル]スルフィド;
ADEKA社製 商品名 アデカスタブAO−23
酸化防止剤(b):
テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−
ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;
ADEKA社製 商品名 アデカスタブAO−60
酸化防止剤(c):
2−メルカプトベンツイミダゾール;
大内新興化学工業(株)製 商品名 ノクラックMB
酸化防止剤(d):
ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート];
BASF社製 商品名 Irganox 1035
酸化防止剤(e):
テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン;
ADEKA社製 商品名 アデカスタブAO−412S
【0049】
(実施例1)
α−オレフィン共重合体100.0質量部、水酸化マグネシウム150.0質量部、酸化防止剤(a)0.5質量部、酸化防止剤(b)0.5質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)1.0質量部、およびジクミルペルオキシド(DCP)1.5質量部をミキシングロールにより均一に混練して難燃性樹脂組成物を得た。
【0050】
次いで、断面積38mmの銅撚線導体上に常法により架橋ポリエチレンからなる1.2mm厚の絶縁体を被覆した後、その上に上記難燃性樹脂組成物を1.5mm厚に押出被覆し、200℃で3分間加熱し架橋させて、外径約12.5mmの難燃性電線・ケーブルを製造した。
【0051】
(実施例2〜8、比較例1〜11)
難燃性樹脂組成物の組成を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、難燃性樹脂組成物を調製し、また、これらの組成物を用いて難燃性電線・ケーブルを製造した。
【0052】
上記各実施例および各比較例で得られた難燃性樹脂組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。
[引張強さおよび引張伸び]
ケーブルとは別に難燃性樹脂組成物から試験用シート(1mm厚)をプレス成型し(170℃、5MPaで20分間加熱加圧)、この試験用シートからJIS K 6251に規定する3号形ダンベル試験片を打ち抜き、JIS C 3005に基づく引張試験(標線間隔20mm、引張速度200mm/分)を行い、破断時の引張強さおよび引張伸びを測定した。
[酸素指数]
上記と同様にして、ケーブルとは別に難燃性樹脂組成物からなる試験用シート(3mm厚)を作製し、この試験用シートから幅6.5mm×長さ150mmの試験片を打ち抜き、JIS K 7201−2に準拠して測定した。
【0053】
これらの結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から明らかなように、実施例1〜8はいずれも引張強さ、引張伸び、酸素指数において、良好な結果が得られた。
また、ポリオレフィン100質量部に対し、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドを1.0〜5.0質量部、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを2.0〜4.0質量部、ジクミルペルオキシドを2.0〜4.0質量部、エチレングリコールジメタクリレートを2.0〜4.0質量部とすることで、引張強さ、引張伸びにおいてさらに良好な結果が得られた(実施例4、5、7)。
また、ポリオレフィン100質量部に対し、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドを2.0〜4.0質量部、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを3.0〜4.0質量部、ジクミルペルオキシドを2.5〜3.5質量部、エチレングリコールジメタクリレートを3.0〜4.0質量部とすることで、酸素指数においてさらに良好な結果が得られた(実施例6)。
【符号の説明】
【0056】
10、20…難燃性電線・ケーブル、11…導体、12…絶縁体、13…シース、14…介在、15…押え巻きテープ、21…絶縁線心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体外周に、ポリオレフィン100質量部に対し、酸化防止剤として0.1〜5.0質量部のビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドおよび0.1〜5.0質量部のテトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを含み、架橋剤として1.0〜4.0質量部のジクミルペルオキシドを含み、かつ架橋助剤として0.5〜5.0質量部のエチレングリコールジメタクリレートを含むハロゲンフリー難燃性樹脂組成物の架橋体からなる被覆を備えることを特徴とする難燃性電線・ケーブル。
【請求項2】
前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン100質量部に対し、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドを1.0〜5.0質量部、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを2.0〜4.0質量部、ジクミルペルオキシドを2.0〜4.0質量部、エチレングリコールジメタクリレートを2.0〜4.0質量部含有することを特徴とする請求項1記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項3】
前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン100質量部に対し、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィドを2.0〜4.0質量部、テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを3.0〜4.0質量部、ジクミルペルオキシドを2.5〜3.5質量部、エチレングリコールジメタクリレートを3.0〜4.0質量部含有することを特徴とする請求項1記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項4】
前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物は、ポリオレフィン100質量部に対し、50〜250質量部の金属水酸化物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項5】
前記金属水酸化物は、水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項4記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項6】
前記ポリオレフィンは、α−オレフィン共重合体を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の難燃性電線・ケーブル。
【請求項7】
前記ハロゲンフリー難燃性樹脂組成物からなる被覆の酸素指数(JIS K 7201−2)が40以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の難燃性電線・ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−4266(P2013−4266A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133228(P2011−133228)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】