難発現性タンパク質の分泌のためのタンパク質融合因子(TFP)を明らかにする方法、タンパク質融合因子(TFP)ライブラリーを製造する方法、及び難発現性タンパク質の組み換え的生産方法
【課題】従来の組み換え生産方法で生産することが難しい難発現性タンパク質を発現及び分泌生産することが可能な適合型タンパク質融合因子(TFP)を多様な遺伝子源から超高速で選別する方法、及びこれから得られたタンパク質分泌誘導タンパク質融合因子を提供すること。
【解決手段】本発明の方法は、難発現性の目的タンパク質遺伝子(X)を自動選別用レポーター遺伝子(R)に結合してX−Rの難発現性融合タンパク質を製造し、X−Rの融合物に別の遺伝子の融合によってX−R難発現性融合タンパク質の分泌を細胞外に誘導するタンパク質融合因子(translational fusion partner、TFP)を遺伝子ライブラリーから選別する方法である。
【解決手段】本発明の方法は、難発現性の目的タンパク質遺伝子(X)を自動選別用レポーター遺伝子(R)に結合してX−Rの難発現性融合タンパク質を製造し、X−Rの融合物に別の遺伝子の融合によってX−R難発現性融合タンパク質の分泌を細胞外に誘導するタンパク質融合因子(translational fusion partner、TFP)を遺伝子ライブラリーから選別する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の組み換え生産方法で生産することが難しい難発現性タンパク質を発現または分泌生産することが可能な適合型タンパク質融合因子(translational fusion partner:TFP)を多様な遺伝資源から超高速で選別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ヒトゲノムプロジェクトで確保された遺伝体塩基配列の情報と遺伝体単位で確認される多様なタンパク質の機能を分析し、人体医薬学的に重要なタンパク質製品を生産するためには、組み換え微生物を用いる高効率タンパク質生産システムの開発が必要である。ヒトなどの高等生物由来の組み換えタンパク質を生産するために発現システムを選定するとき、多様な要因、例えば宿主細胞の成長特性、タンパク質の発現程度、細胞内外発現可能性、翻訳後修飾(post−translational modification)可能性、発現されたタンパク質の生物学的活性及び発現タンパク質の用途などが考慮されるべきである。代表的な微生物遺伝子発現システムとして大腸菌及び酵母システムが主に用いられているが、大腸菌は、多くの発現システムが開発されており、外来タンパク質の発現率が非常に高いという利点があるが、高等生物由来のタンパク質を組み換え生産しようとするときに翻訳後修飾過程が不可能であり、細胞の培養培地へのタンパク質の完全な分泌が難しく、ジスルフィド結合(disulfide bond)の多いタンパク質の折り畳みが不可能であり、封入体(inclusion body)などの不溶性タンパク質の形で発現するなどの欠点が指摘されている(Makrides, Microbial Rev., 1996, 60, 512)。また、ヒトタンパク質のうち、疾病と連関されて医薬学的に価値の高い大部分のタンパク質が糖タンパク質または膜タンパク質であるから、完全な活性を持つためにはグリコシル化(glycosylation)を必ず要求し或いはジスルフィド結合による完全な3次元構造を要求する場合、これらのタンパク質は、大腸菌では生産が不可能であり、酵母などの真核微生物発現システムを必ず必要とする。
【0003】
真核微生物である酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ(Saccharomyces cerevisiae)は、ヒトに対して安全性が立証されたGRAS(Generally Recognized As Safe)微生物であって、遺伝子操作が容易であり、様々な発現システムが開発されているうえ、大量培養が容易である。それだけでなく、ヒトタンパク質などの高等細胞由来タンパク質を組み換え生産するとき、タンパク質を細胞外に分泌することが可能な分泌機能と、グリコシル化などのタンパク質の翻訳後修飾機能を行うことができるという利点を提供する。タンパク質の分泌シグナルと目標タンパク質を人為的に融合(fusion)することにより細胞外分泌が可能であるが、タンパク質の分泌過程によってタンパク質の折り畳み、ジスルフィド結合の形成及びグリコシル化過程が行われ、よって、生物学的に完全な活性を有する組み換えタンパク質を生産することができるという利点を提供する。これは、また、生物学的活性を有する組み換えタンパク質を培地から直接得ることができるから、経済的に効率が低い細胞の粉砕またはリフォールディング段階を必要としないため、非常に経済的である(Eckart and Bussineau, Curr. Opin. Biotechnol., 1996, 7, 525)。
【0004】
ところが、上述した多くの利点にも拘わらず、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェを用いたヒトタンパク質分泌システムに関する現技術の問題点として指摘されているのは、ヒトタンパク質の種類によっては全く生産されないか、或いは数グラム/リットルまで生産されるなど、分泌率が数千倍以上の差異を示して分泌生産性を予測することが難しいことである。外来タンパク質が数グラム/リットルの水準まで分泌生産可能であると判断するとき、分泌生産性の側面から十分な経済性があると判断されるが、タンパク質の種類によっては分泌効率が低いという問題と、特に高付加価値の人体医薬用タンパク質を生産しようとするときに発現及び分泌が難しいという問題がよく発生する。かかる問題を解決するために、タンパク質の分泌に関与する分泌因子についての研究が盛んに行われている。小胞体で新しく合成されたタンパク質の折り畳みを助ける分泌因子BiP(KAR2)の過発現方法(Robinson et al., Biotechnol. prog., 1996, 271, 10017)とシステム結合の形成を助けるPDI(protein disulfide isomerase)の過発現方法(Robinson et al., Bio/Technology, 1994, 12, 381; Schultz et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 1994, 721, 148; Hayano et al., FEBS Lett., 1995, 377, 505)などのシャペロン(chaperone)についての研究、及び分泌を誘導する融合因子の製造と元々よく分泌されるタンパク質との融合によって分泌を増進させる研究が盛んに行われている(Gouka et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 1997, 47, 1)。このような方法は、現在まで外来タンパク質の分泌を増進させた非常に成功的な方法と認識されているが、このような融合技術の分子メカニズムについての研究は未だ微々である。実験的に、このような融合技術は、タンパク質の移動を容易にし、折り畳みを助けるなど、タンパク質の翻訳段階または翻訳後段階における限界点を改善するものと知られている。
【0005】
Kjeldsen等(Protein Expr. Purif., 1997, 9, 331)は、インシュリンまたはインシュリン前駆体(IP)を酵母で効率よく分泌生産するために、理論的根拠によって製作された合成リーダー(leader)をインシュリンに融合してインシュリンの分泌率を改善したが、このような合成リーダーにはグリコシル化部位とBiP認識部位を添加して小胞体に留まる時間を長くすることにより、タンパク質が正常的に折り畳まれるように誘導した。また、合成リーダーに追加的なグリコシル化部位を導入することにより、黒色アスペルギルスおよびサッカロマイセス・セレヴィシェにおけるインシュリンの分泌率が相当増加したと報告した(Kjeldsen et al., Protein Expr. Purif., 1998, 14, 309)。これと同様の結果が、アスペルギルスアワモリ(Ward et al., Bio/Technology, 1989, 8, 435)及び疎水性キュチナーゼ(cutinase)を酵母で発現した場合にも報告された(Sagt et al., Appl. Environ. Microbiol. 2000, 66, 4940)。これは、グリコシル化部位の導入により組み換えタンパク質の小胞体内における溶解性が増加し、タンパク質の折り畳みが誘導されることにより、結果として分泌が増加することに起因した。
【0006】
元々良く分泌されるタンパク質を融合因子として用いる研究によれば、黒色アスペルギスルのグルコアミラーゼと融合して発現し、牛由来のプロキモシン(Ward et al., Bio/Technology, 1989, 8, 435)、豚膵臓由来のホスホリパーゼA2(Roberts et al., Gene, 1992, 122, 155)、ヒトインターロイキン−6(Contreras et al., Bio/Technology 1991, 9, 378; Broekhuijsen et al., J. Biotechnol., 1993, 31, 135)、鶏由来のリゾチーム(Jeenes et al., FEMS Microbiol Lett, 1993, 107, 267)、及びヒトラクトフェリン(Ward et al., Bio/Technology, 1995, 13, 498)を効率よく分泌させた。分泌増加率は、タンパク質によって差異を見せて5倍〜1000倍であった。酵母においても、ヒトインターロイキン−1βのアミノ末端24個のアミノ酸を融合因子として用いてヒト成長因子及びコロニー刺激因子の分泌を増加させた(Lee et al., Biotechnol. Prog., 1999, 15, 884)。ヒトインターロイキン−1βは、特別な分泌シグナルなしに分泌されるものと知られており(Muesch et al., Trends Biochem. Sci., 1990, 15, 86)、酵母においても非常に効果的に組み換え分泌生産されるものと報告された(Baldari et al., Protein Eng., 1987, 1, 433)。タンパク質が正常的に折り畳まれるためにはタンパク質の元々保有した融合因子が必ず必要とされる場合も報告されたが(Takahashi et al., Appl Microbiol. Biotechnol., 2001, 55, 454)、リゾプスオリゼ由来のリパーゼ(Rhizopus oryzae lipase、ROL)を酵母サッカロマイセス・セレヴィシェで発現するために、サッカロマイセス由来の交配因子アルファ(mating factor alpha)のプレ−プロ−リーダー(pre−pro−leader)配列をROLの成熟タンパク質に該当する遺伝子と結合して発現した場合には、全くROLが分泌されなかったが、ROL自体のpro配列を結合した場合には、適切に分泌された。これは、ROL自体のpro配列が自己タンパク質の折り畳みに絶対的に必要であることを示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した研究結果から分かるように、組み換えタンパク質の分泌を誘導するために様々な分泌因子が開発された。ところが、開発された分泌因子が特定タンパク質の分泌増進には効果があるが、全てのタンパク質に一律的に適用できないという問題があった。Dorner等は、CHO細胞でBiPを過発現した結果、むしろタンパク質分泌率が減少し(Dorner et al., EMBO J., 1992, 11, 1563)、反面、BiPの発現を減少させたときにはタンパク質分泌が増加した(Dorner et al., Mol. cell. Biol., 1988, 8, 4063)と報告した。酵母においても、KAR2(BiP)の過発現が植物タウマチン(plant thaumatin)の場合には、分泌が向上しなかった(Harmsen et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 1996, 46, 365)。バキュロウィルスでBiPを過発現したとき、細胞抽出物で可溶性抗体の量が増加したが、抗体の分泌効率は増加しなかった(Hsu et al., Protein Expr. Purif., 1994, 5, 595)。別の分泌因子であるフォルダーゼ(PDI)を過発現する場合にも、黒色アスパルギルスでフォルダーゼを過発現したが、グルコアミラーゼの分泌が増加しなかった(Wang and Ward, Curr. Genet. 2000, 37, 57)。また、タンパク質融合因子を用いた分泌誘導の場合にも、特定のタンパク質に対してのみ分泌効率が増進されるという問題が報告されている。
【0008】
上述したように、分泌因子の効果に関する多くの研究があったが、タンパク質の種類によっては分泌に及ぼす影響が異なったため、開発された分泌因子が全てのタンパク質に適用できないという問題がある。したがって、目的する各タンパク質分泌増進の最大化のためには、目的のタンパク質に特異的に適用できる最適の分泌因子を選別する技術が必要である。このため、本発明者らは、組み換えタンパク質の種類によって最適の分泌融合因子を遺伝体単位で超高速で選別する技術を開発し、本発明を完成した。
【0009】
そこで、本発明の目的は、酵母における発現率が低くて経済的量産が不可能なタンパク質を対象としてタンパク質の生産を強力に誘導することができる適切なタンパク質融合因子(TFP)を、酵母を含んだ様々な遺伝子源から超高速で選別することが可能な方法、及びこれを用いて難発現性タンパク質の分泌生産を促進することが可能なタンパク質融合因子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一様態において、本発明は、難発現性の目的タンパク質遺伝子(X)を自動選別用レポーター遺伝子(R)に結合してX−Rの難発現性融合タンパク質を製造し、X−Rの融合物に別の遺伝子の融合によってX−R難発現性融合タンパク質の分泌を細胞外に誘導するタンパク質融合因子(translational fusion partner、TFP)を遺伝子ライブラリーから選別する方法に関する。
【0011】
本発明の前記および他の目的、特徴および他の利点は添付図面を参照する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インベルターゼ遺伝子の欠失過程及び選別標識のポップアウト過程を示す図である。
【図2】インベルターゼ活性を測定するためのザイモグラムである。(レイン1、2、3:野性型サッカロマイセス・セレヴィシェ(Saccharomyces cerevisiae)Y2805、レイン4、5、6:インベルターゼ欠失変異株(S.セレヴィシェY2805Δinv2))
【図3】炭素源による菌体の成長を示す写真である。(INV2:野性型S.セレヴィシェY2805、Δinv2:インベルターゼ欠失変異株(S.セレヴィシェY2805Δinv2))
【図4】インベルターゼ遺伝子の欠失を確認するためのサザンブロット結果である。(レイン1、2:S.セレヴィシェY2805ura3 INV2、レイン3、4:S.セレヴィシェY2805Δinv2U(URA3Δinv2)、レイン5、6:S.セレヴィシェY2805Δinv2(ura3Δinv2))
【図5】グルコース及びスクロース培地における菌体成長を確認した写真である。
【図6】プラスミドpYHTS−F0、F1及びF2の製造過程及び酵母遺伝子ライブラリーの製造過程を図式した図である。
【図7】4種のタンパク質融合因子を含む菌体の培養上澄液をSDS−PAGE及びウェスタンブロットした結果である。(レイン1:サイズマーカー(size marker)、レイン2:インターロイキン−2、レイン3:pYIL−TFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン4:pYIL−TFP2を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン5:pYIL−TFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン6:pYIL−TFP4を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図8】糖鎖分析のためにEndo−H処理前後のSDS−PAGE結果である。(レイン1、−:pYIL−TFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H非処理、レイン1、+:pYIL−TFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H処理、レイン2、−:pYIL−TFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H非処理、レイン2、+:pYIL−TFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H処理、レイン3、−:pYIL−TFP4を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H非処理、レイン3、+:pYIL−TFP4を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H処理)
【図9】Kex2pプロセッシングサイト有無による菌体培養上澄液のSDS−PAGE分析結果である。(レインM:サイズマーカー、レイン1:pYIL−TFP1を含有した菌体の培養上澄液、レイン2:pYIL−KRTFP1を含有した菌体の培養上澄液、レイン3:pYIL−TFP3を含有した菌体の培養上澄液、レイン4:pYIL−KRTFP3を含有した菌体の培養上澄液、レイン5:pYIL−TFP4を含有した菌体の培養上澄液、レイン6:pYIL−KRTFP4を含有した菌体の培養上澄液)
【図10】TFP1の特性分析のための遺伝子欠失の後に製造されたプラスミドを示す模式図である。
【図11】TFP1由来のタンパク質融合因子(TFP1−1、2、3および4)によるインターロイキン−2分泌能を確認したSDS−PAGE結果である。(レインM:サイズマーカー、レインS:インターロイキン−2、レイン1−1:pYIL−KRT1−1(「pYIL−KRTFP1−1」と命名する)を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン1−2:pYIL−KRT1−2(「pYIL−KRTFP1−2と命名する」を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン1−3:pYIL−KRT1−3(「pYIL−KRTFP1−3」と命名する)を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン1:pYIL−KRTFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン1−4:pYIL−KRT1−4(「pYIL−KRTFP1−4」と命名する)を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図12】pYIL−KRT1−4を含有した組み換え菌株の流加発酵培養プロフィル、及び培地に分泌されたタンパク質を発酵時間別にSDS−PAGE分析した結果である。
【図13】タンパク質融合因子TFP1、2、3及び4を用いた難分泌タンパク質ヒトコロニー刺激因子(G−CSF)の分泌を確認したSDS−PAGE及びウェスタンブロット結果である。(レインM:サイズマーカー、レイン1:pYGCSF−KRTFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン2:pYGCSF−KRTFP2を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン3:pYGCSF−KRTFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン4:pYGCSF−KRTFP4を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図14】pYGCSF−TFP3を含有した組み換え菌株の流加発酵培養プロフィル、及び培地に分泌されたタンパク質を発酵時間別にSDS−PAGE分析した結果である。
【図15】タンパク質融合因子TFP3が由来した遺伝子全体を確保し、G−CSFとの融合地点を変更してG−CSFの分泌率を向上させた結果である。((A)レインT3:pYGCSF−KRTFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−1:pYGCSF−KRTFP3−1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−2:pYGCSF−KRTFP3−2を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−3:pYGCSF−KRTFP3−3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−4:pYGCSF−KRTFP3−4を含有した菌体を培養した培養上澄液、(B)レインT3:pYGCSF−KRTFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−1:pYGCSF−KRTFP3−1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−1−1:pYGCSF−KRTFP3−1−1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−1−2:pYGCSF−KRTFP3−1−2を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−2:pYGCSF−KRTFP3−2を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図16】タンパク質融合因子TFP3を用いて産業酵素CalB14を分泌生産した発酵培地のSDS−PAGE結果である。(レインM:サイズマーカー、 レイン1、2:pYGA−CalB14を含有した菌体を20℃で低温培養した培養上澄液、レイン12−58:pYGT3−CalB14を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図17】タンパク質融合因子TFP1を含有したG−CSF発現ベクターpGAP−TFP1−GCSF及びpGAP−MFalpha−GCSFをそれぞれ含有した酵母ピキアパストリス(Pichia pastoris)を回分培養し、時間別に取った試料内に存在するタンパク質をSDS−PAGE分析した結果である。(レインSc:pYGCSF−KRTFP1を含有した酵母S.セレヴィシェ培養上澄液10μL、レイン6−24:pGAP−TFP1−GCSF及びpGAP−MFalpha−GCSFを含有したP.パストリスを培養した培養上澄液200μL濃縮液)
【図18】pYIL−KRTFP1のマップを示す。
【図19】pYIL−KRTFP2のマップを示す。
【図20】pYIL−KRTFP3のマップを示す。
【図21】pYIL−KRTFP4のマップを示す。
【図22】pYIL−KRT1−3(「pYIL−KRTFP1−3と命名する」)のマップを示す。
【図23】pYIL−KRT1−4(「pYIL−KRTFP1−4と命名する」)のマップを示す。
【図24】pYGT3−1−1−GCSFのマップを示す。
【図25】pYGT3−1−2−GCSFのマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一つの具体的な様態において、本発明は、
(1)難発現性目的タンパク質の遺伝子(X)とフレーム単位(in−frame)で連結された自動選別用レポーター遺伝子(R)の融合遺伝子(X−R)を含む自動選別ベクターを製造する段階と、
(2)難発現性融合タンパク質(X−R)の分泌を誘導するタンパク質融合因子を含んだ遺伝子ライブラリーを自動選別ベクターと連結してタンパク質融合因子ライブラリーを製造する段階と、
(3)タンパク質融合因子ライブラリーでレポーター遺伝子の活性がない細胞を形質転換させてレポータータンパク質の活性を検出する段階と、
(4)レポータータンパク質の活性を示す形質転換細胞から遺伝子を分離してタンパク質融合因子の特性を分析する段階とを含んで、難発現性タンパク質生産用適合型タンパク質融合因子を選別する方法に関する。
【0014】
本発明において、「タンパク質融合因子(translational fusion partner、TFP)」とは、難発現性タンパク質をコードする遺伝子と融合されて難発現性タンパク質の分泌生産を誘導する遺伝子を意味する。また、「タンパク質融合因子タンパク質」は、前述したようにタンパク質融合因子遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のタンパク質を意味する。
【0015】
本発明において、「難発現性タンパク質(non−producible protein)」とは、ヒトまたは多様な生命体由来のタンパク質を組み換え生産しようとするとき、タンパク質自体の特性によって大腸菌や酵母などの宿主細胞における組み換え発現生産が難しいタンパク質を意味する。特に、本発明の目的上、酵母などの宿主細胞における組み換え発現生産が難しいタンパク質を意味する。本発明の選別方法及びこれから得たタンパク質融合因子は、大腸菌などの原核細胞と酵母などの真核細胞における組み換え的生産が不可能なタンパク質だけでなく、大腸菌などの他の宿主における組み換え生産が可能であっても、酵母などの真核細胞では生産性が低いため経済性のない多数のタンパク質を組み換え的に生産するのに用いられる。本発明において、「発現」とは、特定のタンパク質をコードする遺伝子の転写及び翻訳産物が分泌されて最終目的物として得られることを含む意味である。
【0016】
本発明の自動選別用レポーター遺伝子は、必ずしもこれに限定されるものではないが、インベルターゼ、スクラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マルターゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ガラクトシダーゼなどから構成された、細胞外部への分泌が可能なタンパク質をコードする遺伝子群から選択される。
【0017】
前述した選別方法において、難発現性融合タンパク質の分泌を誘導するためのタンパク質融合因子を含む遺伝子ライブラリーは、多様な起源、例えば酵母またはヒトを含んだ多様な動植物及び微生物由来から得ることができ、酵母起源の遺伝子ライブラリーが好ましい。前記遺伝子ライブラリー用酵母は、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセスポンベエキス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、トリコデルマ(Trichoderma)などを含む。これらの遺伝子ライブラリーは、ゲノム性(染色体性)DNAまたはcDNAの形態でありうる。
【0018】
一つの具体的な例示として、組み換え生産が難しい難発現性タンパク質(X)とインベルターゼ(I)を融合して酵母で発現する場合、融合された難分泌タンパク質(X)によって正常的に分泌されたインベルターゼの分泌が抑制され、スクロースを単一炭素源として現有する培地で難発現の程度に応じて酵母が成長せず、または成長が非常に遅延する。しかし、X−Iの発現及び分泌を誘導することが可能な効率的なタンパク質融合因子を導入する場合、細胞はスクロース培地で速く成長するが、このような特徴を利用して、難発現タンパク質とインベルターゼが誘導されたタンパク質(X−I)に多様な起源から確保されるタンパク質融合因子ライブラリーをさらに融合して、TFP−X−IまたはX−I−TFPの形態に製造した後、酵母に導入、発現してスクロース培地で速く成長する細胞を選別すると、多様な起源のライブラリーから、難発現性タンパク質に最も適したTFPを超高速で選別することができる。
【0019】
したがって、より好ましい様態において、本発明は、
(1)酵母インベルターゼを用いた自動選別システムの開発のためのレポーター遺伝子として使用するために、酵母自体が有するインベルターゼ遺伝子INV2(I)を欠失させた酵母変異株を製造する段階と、
(2)酵母GAL10プロモータによって発現が調節され、インベルターゼ(I)遺伝子と難発現性遺伝子(X)がフレーム単位で融合された遺伝子(X−I)を含有する自動選別ベクターとしての酵母HTS(high throughput selection)ベクター(pYHTS−F0、pYHTS−F1及びpYHTS−F2)を製造する段階と、
(3)インベルターゼと難発現性タンパク質の融合遺伝子(X−I)を分泌させることが可能な酵母遺伝子からのタンパク質融合因子ライブラリーをpYHTSベクターに製造する段階と、
(4)製造されたライブラリーを段階(1)で製造された酵母に形質転換し、スクロースを単一炭素源として含んでいる培地で自動選別する段階と、
(5)スクロース培地で成長した酵母を培養し、培地に分泌されたタンパク質を確認する段階と、
(6)酵母から遺伝子を分離してタンパク質融合因子特性を分析する段階とを含む、難発現性タンパク質生産用適合型TFPを超高速で選別する方法に関する。
【0020】
本発明者らは、酵母インベルターゼ欠如変異株を製造し、インベルターゼ遺伝子が欠失された酵母菌株でインベルターゼと融合されたタンパク質の発現によってインベルターゼを自動選別システムのマーカーとして使用することができることを確認した後、難発現性タンパク質であるヒトインターロイキン−2を用いたタンパク質融合因子自動選別ベクターであるpYHTS−F0、F1及びF2を製造し、ここに酵母起源の切断された染色体DNAを連結してタンパク質融合因子ライブラリーを製造し、これから難分泌性タンパク質ヒトインターロイキン−2に適したタンパク質融合因子タンパク質TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4を確認した。
【0021】
本発明において、「インベルターゼを用いた自動選別システム」とは、酵母がスクロースを単位炭素源として用いるためには酵母INV2遺伝子によってコードされるタンパク質であるインベルターゼという酵素を必要とするが、酵母の染色体上に存在するINV2遺伝子を欠失させ、ベクターにINV2遺伝子を導入してINV2遺伝子の発現如何に応じてスクロース培地で成長する菌株を選別するシステムを意味する。
【0022】
インベルターゼは、レポータータンパク質として用いられてきた。例えば、米国特許第6,228,590号及びEP第0907727B1では、インベルターゼ自体の分泌シグナルを除去して分泌されないようにした後、その分泌を誘導する融合因子を選別する方法について開示している。本発明は、これとは対照的に、インベルターゼを難発現性タンパク質と融合して難発現性融合タンパク質を形成し、これを難発現性融合タンパク質の発現を誘導することが可能なタンパク質融合因子の選別に利用する。その結果、インベルターゼが発現される形質転換体の数が著しく減少する弁別力を有し、難発現性タンパク質に特異的に適用されるタンパク質融合因子を高速で確保することができる。
【0023】
本発明で確保されたタンパク質融合因子TFP1、TFP2、TFP3、TFP4及びその誘導体の適用範囲は、多様な商業的用途として量産されるタンパク質を含む。このようなタンパク質は、これらに限定されるものではないが、サイトカイン(例えば、インターロイキン)、血清タンパク質(例えば、因子VII、VIII及びIXを含んだ血液因子)、免疫グロブリン、サイトカインレセプター、ラクトフェリン、インターフェロン(例えば、α−、β−及びγ−インターフェロン)、コロニー刺激因子(例えば、GM−CSF,G−CSF)、ホスホリパーゼ−活性化タンパク質(PLAP)、インシュリン、腫瘍怪死因子(TNF)、成長因子(例えば、TGFαまたはTFPβなどの組織成長因子及び内皮成長因子、表皮成長因子:EGF、血素板由来増殖因子:PDGF、線維芽細胞増幅因子:FGF)、ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、色素性ホルモン及び副甲状腺ホルモン、黄体ホルモン分泌ホルモン及びその類似体)、カルシトニン(calcitonin)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin Gene Related Peptide、CGPR)、エンケファリン(enkephalin)、ソマトメジン、エリスロポエチン、視床下部放出因子、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、組織プラスミノゲン活性因子、成長ホルモン放出ペプチド(growth hormone releasing peptide、GHPR)、胸腺体液性因子(thymic humoral factor、THF)、抗癌及び抗生ペプチドなどを含む。また、このようなタンパク質は、例えば炭水化物−特異的酵素、タンパク質分解酵素、リパーゼ、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素、リガーゼなどの酵素を含むことができる。具体的な酵素は、これらに限定されないが、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、過酸化物ジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、ウリカーゼ、アデノシンジホスファダーゼ、チロシナーゼ及びビリルビンオキシダーゼを挙げることができる。炭水化物−特異的酵素の例としては、グルコースオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼなどがある。
【0024】
難発現性タンパク質遺伝子は、人体医学的または産業的重要性があり、組み換え生産の必要性があるヒトを含んだ様々な動植物及び微生物由来の遺伝子から分離または化学合成されるものであって、前述したタンパク質をコードする遺伝子である。
【0025】
本発明の自動選別ベクターは、プロモータ遺伝子、翻訳開始及び終結コドンが除去された目的タンパク質をコードする遺伝子、およびこれにフレーム単位で融合されたレポーター遺伝子を含み、プロモータ遺伝子は、GAPDH、PGK、ADH、PHO5、GAL1及びGAL10よりなる群から選択される遺伝子であることが好ましい。
【0026】
本発明の自動選別方法において形質転換に使用した宿主細胞は、カンジダ(Candida)やデバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス (Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)及びサッカロマイセス(Saccharomyces)属などの酵母類、アスペルギルス(Aspergillus)やペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)及びトリコデルマ(Trichoderma)属などの菌類、またはエシェリキア(Escherichia)及びバシラス(Bacillus)属などの細菌類を使用することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
本発明の難発現性タンパク質生産用適合型TFPの超高速選別方法は、発現不可能であり或いは発現率が非常に低い難発現性タンパク質用に使用することが好ましいが、ある程度発現されるが発現率を高めることが可能なTFPを選別するためにも利用できる。本発明の具体例で実施しているように、インベルターゼをレポーターとして使用する場合、スクロース培地で成長が速い順序通りに区別してより効率的なTFPを選別することができる。
【0028】
別の様態において、本発明は、難発現性タンパク質インターロイキン−2の分泌生産促進のための適合型融合因子超高速選別ベクターpYHTS−F0、F1及びF2に関するものであり、このような選別ベクターは、難発現タンパク質ヒトインターロイキン−2とインベルターゼとが融合された遺伝子を含有しており、インターロイキン−2遺伝子のアミノ末端に3つの相異なるリーディングフレームで製造された制限酵素BamHI切断部位を含有している。
【0029】
本発明の具体的な実施では、ヒトインターロイキン−2を酵母で分泌生産促進する適合型融合因子を超高速で選別するために、選別ベクター3種(pYHTS−F0、F1及びF2)に酵母染色体DNAを無作為に切断し、挿入した後、インベルターゼが欠如された菌株に形質転換し、スクロース培地で成長する菌体を選別することにより、難発現性インターロイキン−2及びインベルターゼの融合タンパク質を培地に分泌することが可能な適合型融合因子を選別した。
【0030】
ヒトインターロイキン−2は、疎水性の強いタンパク質であって、酵母における発現が難しい理由は、強力なプロモータによって組み換え大量発現されたタンパク質が小胞体内で速く活性型に折り畳まれず、互いに凝集して小胞体機能を麻痺させる問題のためであると推定されている。よって、インターロイキン−2に融合されたインベルターゼも分泌できないため、細胞がスクロース培地で成長することができない。このような融合タンパク質を効率よく分泌させることが可能なタンパク質融合因子は、インターロイキン−2遺伝子の前部に酵母遺伝子ライブラリーを挿入し、酵母に形質転換した後、スクロース培地で成長する形質転換体を選択することにより確保される。
【0031】
具体的な実施において、本発明者らは、難発現タンパク質であるインターロイキン−2の分泌を誘導する融合因子を確保するために、スクロース培地で成長する形質転換体から遺伝子を分離し、大腸菌に再形質転換して相異なる4種のプラスミド(pYHTS−TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4)を回収した。それぞれのプラスミドに挿入された4種の相異なるタンパク質融合因子遺伝子TFP1(配列番号2)、TFP2(配列番号4)、TFP3(配列番号6)及びTFP4(配列番号8)を確保した。これらの遺伝子によってコードされるアミノ酸配列がそれぞれ配列番号1、3、5及び7に示されている。
【0032】
前記得られたベクターpYHTS−TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4からインベルターゼを除去し、インターロイキン−2遺伝子に翻訳終結コドンを挿入したpYIL−TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4を製作した。このようなベクターは、タンパク質融合因子と融合された形のインターロイキン−2を分泌するため、タンパク質融合因子を自動除去し得るように、タンパク分解酵素Kex2p認識部位を挿入したベクターpYIL−KRTFP1、KRTFP2、KRTFP3及びKRTFP4を製作した。ひいては、ヒトコロニー刺激因子(G−CSF)をタンパク質融合因子TFP1ないし4と融合したベクターpYGCSF−TFP1ないし4を製作し、TFPがヒトインターロイキン−2以外のタンパク質の分泌生産にも効果的であることを立証した。
【0033】
一方、産業用リパーゼ酵素として脚光を浴びているカンジダ・アンタークチカ由来のリパーゼB(CalB)を分子進化させて非活性が約6倍以上増加した変異株CalB14を組み換え酵母を用いて大量分泌生産するために、既存の発現分泌システム(AMY、アミラーゼ分泌シグナル)を利用する場合、酵母の培養適温である30℃ではタンパク質が正常的に分泌されず、22℃で低温培養する場合、分泌生産されるという特徴がある。したがって、大規模発酵培養の際に細胞培養が遅く、特に夏期にファーメンターの温度調節のための高費用問題が発生するので、培養適温で分泌生産が可能な分泌システムが求められる。本発明では、このような問題を、CalBとTFP3とが融合したベクターpYGT3−CalB4を製作して解決した。
【0034】
よって、別の様態において、本発明は、配列番号1で表されるタンパク質融合因子TFP1タンパク質またはその類似体に関する。また、本発明は、配列番号1で表されるタンパク質融合因子TFP1タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子に関する。本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列またはその相同性(homologous)、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP1タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号1で表されるタンパク質融合因子TFP1タンパク質をコードするDNAまたはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は、配列番号2の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターに関するものである。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号2の遺伝子である。組み換えベクターpYIL−TFP1、pYIL−KRTFP1、pYGCSF−TFP1、pYGCSF−KRTFP1、pGAP−TFP1−GCSFなどを例示することができる。また、本発明は、前述した組み換えベクターで形質転換された細胞に関するものである。pYIL−KRTFP1で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10544BPで寄託された。
【0035】
別の様態において、本発明は、配列番号3で表されるタンパク質融合因子TFP2タンパク質またはその類似体に関するものである。また、本発明は、配列番号3で表されるタンパク質融合因子TFP2タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子に関するものである。本発明は、配列番号3で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP2タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号3で表されるタンパク質融合因子TFP2タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号4の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターに関するものである。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号4の遺伝子である。組み換えベクターpYIL−TFP2、pYIL−KRTFP2、pYGCSF−TFP2、pYGCSF−KRTFP2などを例示することができる。また、本発明は、前述した組み換えベクターで形質転換された細胞に関するものである。pYIL−KRTFP2で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10545BPで寄託された。
【0036】
別の様態において、本発明は、配列番号5で表されるタンパク質融合因子TFP3タンパク質またはその類似体に関するものである。また、本発明は、配列番号5で表されるタンパク質融合因子TFP3タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子に関するものである。本発明は、配列番号5で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP3タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号5で表されるタンパク質融合因子TFP3タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号6の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターに関するものである。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号6の遺伝子である。組み換えベクターpYIL−TFP3、pYIL−KRTFP3、pYGCSF−TFP3、pYGCSF−KRTFP3、pYGT3−CalB14などを例示することができる。また、本発明は、前述した組み換えベクターで形質転換された細胞に関するものである。pYIL−KRTFP3で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10546BPで寄託された。
【0037】
別の様態において、本発明は、配列番号7で表されるタンパク質融合因子TFP4タンパク質またはその類似体片に関するものである。また、本発明は、配列番号7で表されるタンパク質融合因子TFP4タンパク質またはその類似体に関するものである。本発明は、配列番号7で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP4タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号7で表されるタンパク質融合因子TFP4タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号8の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターに関するものである。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号8の遺伝子である。組み換えベクターpYIL−TFP4、pYIL−KRTFP4、pYGCSF−TFP4、pYGCSF−KRTFP4などを例示することができる。また、本発明は、前述した組み換えベクターで形質転換された細胞に関するものである。pYIL−KRTFP4で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10547BPで寄託された。
【0038】
本発明において、タンパク質融合因子タンパク質または遺伝子に対して使用された用語「類似体」とは、タンパク質融合因子遺伝子を難発現性タンパク質の遺伝子と融合する場合、難発現性タンパク質の分泌生産を誘導してタンパク質融合因子の活性を示す作用的等価物を意味し、タンパク質融合因子タンパク質の場合、例えば同一の性質を有するアミノ酸同士の置換(例えば、疎水性アミノ酸から他の疎水性アミノ酸への置換、親水性アミノ酸から他の親水性アミノ酸への置換、塩基性アミノ酸から他の塩基性アミノ酸への置換、酸性アミノ酸から他の酸性アミノ酸への置換)、アミノ酸の欠失、挿入またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0039】
本発明のタンパク質融合因子タンパク質の置換類似体と関連して、分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸置換は、当該分野に公知になっており(H. Neurath, R. L. Hill, The Proteins, Academic Press, NewYork, 1979)、最も一般に発生する置換としては、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の置換を例示することができる。
【0040】
また、本発明のタンパク質融合因子タンパク質の欠失類似体と関連して、ゲノム性ライブラリー(染色体ライブラリー)またはcDNAライブラリーによって明らかになったタンパク質融合因子遺伝子の全体配列のうち一部配列を除去しても、難発現性タンパク質の分泌に影響を及ぼさず、ひいては分泌を促進させることができ、本発明者らは、タンパク質融合因子TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4の欠失類似体断片が難発現性タンパク質の分泌に及ぼす影響を調査した。TFP1の場合、セリン、アラニンリッチ配列、N−グルコシル化部位またはこれらの両者ともが除去された遺伝子を含むベクターの場合、難発現性タンパク質を分泌できなかったが、5’−UTR(5’−untranslated region)を除去する場合(pYIL−KRT1−4)、難発現性タンパク質の発現率が3倍以上増加し、追加の3’末端の追加配列を除去した場合(pYIL−KRT1−3)にも難発現性タンパク質の分泌を誘導した。したがって、本発明のタンパク質融合因子タンパク質は、難発現性タンパク質の分泌に否定的影響を及ぼさない限り、5’−UTR領域、3’−末端領域の欠失体を本発明の範囲に含む。
【0041】
具体的な様態において、本発明は、配列番号9で表されるタンパク質融合因子TFP1−3タンパク質またはその類似体を提供する。また、本発明は、タンパク質融合因子TFP1−3タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子を提供する。本発明は、配列番号9で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP1−3タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号9で表されるタンパク質融合因子TFP1−3タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターを提供する。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号9で表されるタンパク質融合因子TFP1−3をコードする遺伝子である。組み換えベクターpYIL−KRT1−3(「pYIL−KRT1−3」と命名する)を例示することができる。また、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。pYIL−KRT1−3で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10548BPで寄託された。
【0042】
別の具体的な様態において、本発明は、配列番号10で表される遺伝子によってコードされるタンパク質融合因子TFP1−4タンパク質またはその類似体を提供する。また、本発明は、タンパク質融合因子TFP1−4をコードする配列番号10で表される遺伝子またはその類似体を提供する。本発明は、配列番号10で表される遺伝子によってコードされるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP1−4タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号10で表されるDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号10で表されるタンパク質融合因子TFP1−4をコードする遺伝子またはその類似体を含む組み換えベクターを提供する。また、本発明は、配列番号10で表されるタンパク質融合因子TFP1−4をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を含む組み換えベクターを提供する。組み換えベクターpYIL−KRT1−4(「pYIL−KRT1−4」と命名する)を例示することができる。また、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。pYIL−KRT1−4で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10549BPで寄託された。
【0043】
また、本発明のタンパク質融合因子タンパク質の挿入類似体と関連して、ゲノム性ライブラリーまたはcDNAライブラリーによって明らかになったタンパク質融合因子遺伝子の全体配列または活性を示す部分配列に一部配列を追加しても、難発現性タンパク質の分泌に影響を及ぼさず、ひいては分泌を促進させることができ、本発明者らは、タンパク質融合因子の挿入類似体が難発現性タンパク質の分泌に及ぼす影響を調査した。TFP3(104aa)の場合、TFP3−3(189aa)及びTFP3−4(222aa)挿入類似体は、分泌効率が減少したが、TFP3に比べて26個のアミノ酸を追加したTFP3−1の場合、追加的なN−グルコシル化部位が含まれてG−CSF分泌率がTFP3に比べて約3倍程度増加した。ひいては、TFP3−1にさらに4個のアミノ酸が追加されたTFP3−1−1(134個のアミノ酸を含む)及び13個のアミノ酸が追加されたTFP3−1−2(143個のアミノ酸を含む)は、G−CSFの分泌量の減少なしに分泌過程中にKex2pによってプロセスされていない融合タンパク質の量も大幅減少した。したがって、本発明のタンパク質融合因子タンパク質は、難発現性タンパク質の分泌に否定的影響を及ぼさない限り、N−グルコシル化領域、融合部位を切断するための切断酵素Kex2pの接近を可能にする領域が追加された挿入類似体を本発明の範囲に含む。
【0044】
具体的な様態において、本発明は、配列番号40で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−1タンパク質またはその類似体を提供する。また、本発明は、配列番号40で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−1タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子を提供する。本発明は、配列番号40で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP3−1−1タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号40で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−1タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号41の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えペクターを提供する。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は、配列番号41の遺伝子である。組み換えベクターpYGT3−1−1−GCSFを例示することができる。また、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。pYGT3−1−1−GCSFで形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2004年12月21日付で寄託番号KCTC 10753BPで寄託された。
【0045】
別の具体的な様態において、本発明は、配列番号42で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−2タンパク質またはその類似体を提供する。また、本発明は、配列番号42で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−2タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子を提供する。本発明は、配列番号40で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP3−1−2タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号42で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−2タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号43の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターを提供する。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は、配列番号43の遺伝子である。組み換えベクターpYGT3−1−2−GCSFを例示することができる。また、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。pYGT3−1−2−GCSFで形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2004年12月21日付で寄託番号KCTC 10754BPで寄託された。
【0046】
本発明において、タンパク質融合因子タンパク質または遺伝子に対して使用された用語「相同性」とは、野性型アミノ酸配列及び野性型核酸配列との類似程度を示すためのもので、タンパク質の場合、本発明のTFPタンパク質のアミノ酸配列と、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上同一でありうるアミノ酸配列を含む。一般に、タンパク質相同物は、目的のタンパク質と同一な活性部位を含む。遺伝子の場合、本発明のTFPタンパク質をコードするDNA配列と、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上同一でありうるDNA配列を含む。このような相同性の比較は、肉眼、または購入し易い比較プログラムを用いて行うことができる。市販のコンピュータプログラムは2つ以上の配列間の相同性を百分率(%)で計算することができ、相同性(%)は隣接した配列に対して計算できる。
【0047】
難発現性タンパク質の分泌生産のために、本発明によって明らかになったタンパク質融合因子は、難発現性タンパク質の遺伝子と融合して使用され、難発現性タンパク質の分泌生産のためにベクターに挿入される。本発明において、「ベクター」は、適当な宿主細胞においてタンパク質の発現を調節することが可能な調節配列(regulatory sequences)に作動可能に連結されたDNA配列及びその他の遺伝子操作を容易にし、或いはタンパク質の発現を最適化するために導入される配列を含有するDNA作製物を意味する。そのような調節配列には、転写を調節するためのプロモータ(promoter)、転写を調節するために選択的に付加されたオペレーター(operator)、適切なmRNAリボソーム結合部位及び転写/翻訳の終了を調節する配列が含まれる。外来遺伝子を挿入するためのベクターとしては、プラスミド、ウィルス、コスミッドなど様々な形のベクターを使用することができる。ベクターはクローニングベクター及び発現ベクターを含み、クローニングベクターは外来DNAが挿入されて複製できるプラスミドであって、形質転換の際に宿主細胞へ外来のDNAを伝達させる。発現ベクターは、通常、外来DNAの断片が挿入されたキャリアであって、一般に二本鎖のDNAの断片を意味する。ここで、外来DNAは、宿主細胞で天然的に発見されないDNAである異種DNAを意味する。発現ベクターは、一応宿主細胞内にあると、宿主染色体DNAと関係なく複製することができ、挿入された外来DNAが生成できる。当業界に広く知られているように、トランスフェクションされた遺伝子の発現水準を宿主細胞において高めるためには、当該遺伝子が、選択された発現宿主内で機能を発揮する転写及び翻訳発現調節配列に作動可能に連結されなければならない。
【0048】
タンパク質融合因子を含む組み換えベクターへの形質転換と関連して本願明細書に使用された用語「形質転換」とは、DNAを宿主に導入してDNAが染色体外要素として或いは染色体統合完成によって複製可能になることを意味する。本発明に係る形質転換に使用できる宿主細胞は、原核または真核細胞のいずれも含むことができる。DNAの導入効率が高く、導入されたDNAの発現効率が高い宿主が通常用いられる。細菌、例えば大腸菌、シュードモナス、バチルス、ストレプトマイセス、真菌、酵母などの周知の真核及び原核宿主、SF9(Spodoptera frugiperda)などの昆虫細胞、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10などの動物細胞などが使用できる宿主細胞の例である。本発明によって難発現性タンパク質を量産するための宿主細胞は、カンジダ(Candida)やデバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセスポンベエキス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)及びサッカロマイセス(Saccharomyces)属などの酵母類が好ましく使用できる。
【0049】
別の様態において、本発明は、前記タンパク質融合因子がTFPタンパク質を用いて難発現性タンパク質を組み換え方法で生産する方法に関するものである。
【0050】
このような難発現性タンパク質の組み換え的生産方法は、前記タンパク質融合因子TFPタンパク質をコードする遺伝子と融合された難発現性タンパク質コード遺伝子が挿入された発現ベクターを製作する段階と、組み換え発現ベクターで形質転換された形質転換体を培養する段階とを含む。具体的に、本発明は、配列番号1、3、5、7、9、40または42で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質、または配列番号10で表される遺伝子によってコードされるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質を用いて、難発現性タンパク質を組み換え方法で生産する方法に関するものである。好ましくは、配列番号1で表されるタンパク質は配列番号2で表される遺伝子によってコードされ、配列番号3で表されるタンパク質は配列番号4で表される遺伝子によってコードされ、配列番号5で表されるタンパク質は配列番号6で表される遺伝子によってコードされ、配列番号7で表されるタンパク質は配列番号8で表される遺伝子によってコードされ、配列番号40で表されるタンパク質は配列番号41で表される遺伝子によってコードされ、配列番号42で表されるタンパク質は配列番号43で表される遺伝子によってコードされる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0052】
<実施例1>酵母インベルターゼ欠如変異株の製造
難発現性タンパク質に対するタンパク質融合因子を超高速で選別するために、酵母インベルターゼをレポーターとして用いて、スクロース培地における細胞成長の評価を利用した自動選別システムを製造した。
【0053】
ベクターに含まれたインベルターゼ遺伝子を形質転換後の選別レポーター遺伝子として使用するために、インベルターゼ活性が欠如された酵母が必要であり、このために染色体のINV2遺伝子を欠失させた。遺伝子欠失誘導用カセットを製造するために、プラスミドpRB58(Carlson et al., Cell, 1982, 20, 145)を制限酵素EcoRIとXhoIで処理してINV2コード遺伝子を回収し、pBluescript KS+(Stratagene社製、米国)のEcoRI/XhoI部位に導入してpBIΔBXを製造した。図1に示すように、pBIΔBXに含まれたINV2遺伝子のHindIII−XbaI部位に190bpの繰り返し配列(Tc190)を両末端に含むURA3遺伝子を挿入してpBIUを製造した。pBIUを制限酵素EcoRI−XhoIで処理した後、サッカロマイセス・セレヴィシェY2805Δgal1(Mat a ura3 INV2 pep4::HIS3 gal1 can1)菌株(SK Rhee, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)に形質転換してウラシルのない選択培地で形質転換体Y2805Δgal1Δinv2U(Mat a inv2::URA3 pep4::HIS3 gal1 can1)を選別した。
【0054】
選別された形質転換体のインベルターゼ活性が消滅されたか否かを確認するために、単一コロニーを、グルコースとスクロースを単位炭素源として供給したそれぞれの培地で培養した結果、グルコースでは正常的に成長し、スクロースでも対照区に比べて成長が非常に遅かったが成長することができた。ところが、培養途中で培地に分泌されるインベルターゼの量を調査するために、INV2+菌株とΔinv2菌株を培養し、培養上澄液に存在するタンパク質をSDS−PAGEで分離した後、ゲルをスクロース溶液で30分間反応し、その後TTC(2,3,5−triphenyl−tetrazolium chloride)で発色したザイモグラム分析を行った結果(図2)、Δinv2菌株の場合、大部分のインベルターゼ活性が消失されたことが分かった。ところが、スクロース培地で非常に遅いが成長する問題があるが、これはミトコンドリアの機能によるグルコース新生(gluconeogenesis)によって細胞が部分的に成長するものと推定された。したがって、このような問題を除去するために、ミトコンドリア電子伝達系作用抑制物質であるアンチマイシンAを添加した後、インベルターゼの発現がない菌株の成長を確認した結果、菌株の成長を完全に抑制することができた(図3)。
【0055】
選別されたY2805Δgal1Δinv2U(Mat a inv2::URA3 pep4::HIS3 gal1 can1)菌株にヒトcDNAライブラリーを含有するURA3ベクターを再形質転換するためには、INV2遺伝子欠失用として使用したURA3遺伝子を除去する必要があるが、このために、培養細胞を5−フッ化オロチン酸(5−FOA)培地で培養してURA3遺伝子がポップアウト(pop−out)された菌株Y2805Δgal1Δinv2(Mat a ura3 inv2::Tc190 pep4::HIS3 gal1 can1)を選別した(図1)。染色体上のINV2遺伝子が予想したように欠失され、URA3遺伝子がさらにポップアウトされたか否かをサザンブロット(Southern blotting)法によって確認した(図4)。Y2805菌株の染色体をEcoRIで処理し、INV2遺伝子をプローブとして使用する場合、約4.3kbの切片が確認されるが、URA3遺伝子が挿入された後(Y2805Δgal1Δinv2U)、約5.0kbに増加されてからURA3遺伝子がポップアウトされると(Y2805Δgal1Δinv2)、約3.7bkbに減少する。図4の結果から分かるように、INV2遺伝子が予想したように正確に欠失され、URA3遺伝子がポップアウトされたことを確認した。
【0056】
<実施例2>インベルターゼとの融合による自動選別システムの確認
インベルターゼ遺伝子が欠失された菌株でインベルターゼと融合されたタンパク質の発現によってスクロース培地における自動選別を確認するために、酵母でよく発現されるヒトタンパク質である血清アルブミン(HSA)と難発現タンパク質であるヒトインターロイキン−2(IL−2)を利用した。
【0057】
アルブミンとインベルターゼが融合されたベクターpGHSA−INV2を作るための過程として、まずヒト血清アルブミン遺伝子の両末端にSfiI認識配列を挿入するために、SfiI認識配列を有する重合酵素連鎖反応用センスプライマーJH97(Sfi−HSA−forward primer)(配列番号11)とアンチセンスプライマーJH119(Sfi−HSA−reverse primer)(配列番号12)を使用し、pYHSA5(Kang et al., J. Microbiol. Biotechnol., 1998, 8, 42)を鋳型とし、Pfu重合酵素(Stratagene社製、米国)を用いて重合酵素連鎖反応(94℃で5分間1回;94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間反応を25回;72℃で7分間1回)してアルブミン遺伝子約1.8kbの切片を得た。また、プライマーJH99(Sfi−INV−forward)(配列番号13)及びJH100(SalI−INV−reverse primer)(配列番号14)を用いてpRB58を鋳型としてインベルターゼ遺伝子を同一の方法で重合酵素連鎖反応して回収した後、制限酵素SfiI/SalIで処理し、PstI/SfiIで処理されたアルブミン遺伝子と共にPstI/SalIで処理されたpBluescript(Stratagene社製、米国)に挿入した。pYHSA5を制限酵素SacI/PstIで処理してGALプロモータ及びアルブミン遺伝子の一部を含む切片と、以前に製造されたアルブミン遺伝子の一部及びインベルターゼ遺伝子を含有するPstI/SalI切片とを、さらにSacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクター(Choi et al., Appl Microbiol Biotechnol., 1994, 42, 587)に同時に挿入してpGHSA−INV2を製造した。
【0058】
インターロイキン−2とインベルターゼの融合発現ベクターを製造するために、プライマーJH106(Sfi−IL2−forward primer)(配列番号15)及びJH107(Sfi−IL2−reverse primer)(配列番号16)を用いてpT7−hIL−2(JK Jung, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)を鋳型として重合酵素連鎖反応し、回収されたインターロイキン遺伝子をpBluescript(Stratagene社製、米国)のEcoRV部位に挿入してpBKS−IL2を製造した。pBKS−IL2をSfiIで処理した切片と、pGHSA−IVN2をSacI−SfiIで処理して得たGALプロモータ及びINV分泌シグナルを含有する切片とを、SacI/SfiIで処理されたpGHSA−INV2に同時に挿入してpGIL2−INV2を製造した。
【0059】
アルブミンとインベルターゼの融合タンパク質を発現するベクターpGHSA−INV2、インターロイキン−2とインベルターゼの融合タンパク質を発現するPGIL2−INV2、及びインベルターゼのみを発現するpRB58を、インベルターゼ遺伝子が欠失されてスクロース培地で成長することができない菌株(Y2805Δinv2)にそれぞれ形質転換し、グルコースを炭素源として添加した培地(UD)とスクロースを炭素源として添加した培地(YPSA)に塗抹して細胞の成長有無を観察した(図5)。インベルターゼを正常的に発現するベクターpRB58の場合には、2つの炭素源で全て正常的に成長し、また、インベルターゼが酵母でよく発現されるタンパク質であるアルブミンと融合された場合(pGHSA−INV2)にも、やはり2つの炭素源を全て良く利用して成長した。ところが、酵母で発現され難いタンパク質であるインターロイキン−2の場合(pGIL2−INV2)には、グルコース培地では正常的に成長するが、スクロース培地では全く成長しなかった。これは、予想したように、インターロイキン−2の細胞内における発現が不可能であって、これに融合されたインベルターゼも発現できないためであると判断された。したがって、インベルターゼ遺伝子が欠失されてスクロース培地で成長することができない菌株(Y2805Δinv2)に形質転換したインベルターゼ遺伝子の発現如何を用いて自動選別が可能であることが分かった。
【0060】
<実施例3>難発現タンパク質ヒトインターロイキン−2を用いたタンパク質融合因子選別ベクターの製造
インターロイキン−2とインベルターゼとが融合されたベクターpGIL2−INV2を用いて融合タンパク質の分泌を誘導することが可能な適正のタンパク質融合因子を確保するために、3つのリーディングフレームを有するライブラリー製造ベクターpYHTS−F0、F1及びF2を製造した(図6)。
【0061】
3つのリーディングフレームとBamHI認識配列を有する重合酵素連鎖反応用センスプライマーJH120(BamHI−IL2−1−forward primer)(配列番号17)、JH121(BamHI−IL2−2−forward primer)(配列番号18)およびJH122(BamHI−IL2−3−forward primer)(配列番号19)とアンチセンスプライマーJH123(INV−1−reverse primer)(配列番号20)を使用しpGIL2−INV2を鋳型として用いて、Pfu重合酵素(Stratagene社製、米国)を用いた重合酵素連鎖反応(94℃で3分間1回;94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間反応を25回;72℃で7分間1回)してインターロイキン−2と一部のインベルターゼ遺伝子を含む約1.2kbの切片をそれぞれ得た。さらにJH124(INV−forward primer)(配列番号21)とJH95(INV−2−reverse primer)(配列番号22)をプライマーとして使用しPGIL2−INV2を鋳型として用いて同一の条件で重合酵素連鎖反応して、一部のインベルターゼ遺伝子を含む約0.9kbの切片をそれぞれ得た。それぞれの遺伝子をアガロースゲルから回収した後、3つのリーディングフレームを有する1.2kb切片3種類と0.9kb切片をそれぞれ混合してセンスプライマーJH120(配列番号17)、JH121(配列番号18)及びJH122(配列番号19)とアンチセンスプライマーJH95(配列番号22)を用いて2次重合酵素連鎖反応を行い、アガロースゲル電気泳動によってそれぞれ2.1kb切片3種類を回収した。回収された3種の2.1kb切片を制限酵素BamHIとSalIで処理し、BamHIとSalIで処理されたpGIL2−INV2にそれぞれ結合してpYHTS−F0、F1及びF2を製造した。
【0062】
<実施例4>酵母遺伝体からの適合型タンパク質融合因子ライブラリーの製造
タンパク質融合因子ライブラリーを製造するために、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェY2805(SK Rhee, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)及びハンゼヌラポリモルファDL−1(ATCC26012)由来の染色体DNAを用いた。それぞれの染色体を制限酵素Sau3AIで部分切断した後、アガロースゲルから0.5〜1.0kbサイズのDNAを回収し、その後BamHIで切断し、子牛腸由来のホスファターゼで処理したpYHTS−F0、F1及びF2混合ベクターに連結した(図6)。連結されたDNAを大腸菌DH5αに形質転換し、アンピシリン含有LB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵素抽出物、1%NaCl)に塗抹した後、37℃で一日中培養した。それぞれの染色体から製造されたライブラリーDNAを用いて約5×104細胞の形質転換体ライブラリーを確保した。全ての形質転換体を滅菌蒸留水を用いて回収し、回収された菌体からライブラリーDNAをプラスミド抽出キット(Bioneer社製、韓国)を用いて分離した。
【0063】
<実施例5>難分泌性タンパク質ヒトインターロイキン−2に適した適合型タンパク質融合因子の自動選別
前述した方法で製造されたライブラリーDNAを酵母サッカロマイセス・セレヴィシェY2805Δgal1Δinv2(Mat a ura3 inv2::Tc190 pep4::HIS3 gal1 can1)に酢酸リチウム方法(Hills et al., Nucleic Acids Res. 1991, 19, 5791)で形質転換した後、ウラシルが欠乏されたUD最小培地(0.67%アミノ酸が欠乏された酵母窒素基質、適正濃度の各種アミノ酸混合体、2%グルコース)、及びスクロースとアンチマイシンAを含む複合培地YPGSA(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%スクロース、0.3%ガラクトース、1μg/mLアンチマイシンA)にそれぞれ塗抹して30℃で5日間培養した。培養後、各培地で形成された菌体の数は、表1(タンパク質融合因子導入前後の形質転換体数の比較)に表示したとおりである。ライブラリーの製作のために使用したベクター(pYHTS−F0、F1及びF2)のみを形質転換した場合には、グルコース培地では約1×104程度の菌体が形成されたが、炭素源としてスクロースを使用した培地では予想したように全く成長しなかった。ところが、酵母遺伝体ライブラリーを挿入した場合には、約11個の形質転換体が成長して、挿入されたタンパク質融合因子の助けによりインベルターゼが分泌されたことを予想することができた。
【0064】
【表1】
【0065】
<実施例6>タンパク質融合因子の分析
スクロース培地で成長した各菌体をYPD(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース)培地で24時間培養した後、回収された細胞を破砕し、その後導入されたプラスミドを分離し、大腸菌に再形質転換した。形質転換された大腸菌からプラスミドを分離した後、制限酵素処理して挿入された遺伝子の有無を確認し、塩基配列分析によって4種の相異なる配列を有する遺伝子が挿入されてタンパク質融合因子の役割をすることが分かった(表2:スクロース培地で成長した菌体から分離されたプラスミドに挿入された新規のタンパク質融合因子)。
【0066】
【表2】
【0067】
6−1.タンパク質融合因子1(TFP1)
本発明者らは、インターロイキン−2とインベルターゼとの融合タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることが可能なタンパク質融合因子1(TFP1)(配列番号2)を選別した。TFP1遺伝子は、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ遺伝子Yar066wの部分配列と同一である。Yar066w遺伝子は、α1,4−グルカングルコシダーゼ(STA1)遺伝子と類似であり、これによりコードされるタンパク質はグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−アンカー(glycosyl−phosphatidylinositol (GPI) anchor)を含有したタンパク質である。Yar066w遺伝子は、未だ機能が知られていない遺伝子であり、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェの機能が知られていない遺伝子であるYol155c、Yil169cとそれぞれ70.3%、72.7%の配列類似性を示す。Yar066w遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のうち、インターロイキンと融合されたアミノ酸の数は、全体203個中の105個であり、タンパク質分泌のためのシグナルとして23個のアミノ酸の分泌シグナルを含有しており、N−グルコシル化部位とセリン、アラニンリッチ(serine−rich)配列を含有している。
【0068】
6−2.タンパク質融合因子2(TFP2)
本発明者らは、インターロイキン−2とインベルターゼとの融合タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることが可能なタンパク質融合因子2(TFP2)(配列番号4)を選別した。TFP2遺伝子は、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ遺伝子Yar026cの部分配列と同一である。Yar026c遺伝子は、未だ機能が知られていない遺伝子である。Yar026c遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のうち、インターロイキン−2と融合されたアミノ酸の数は、全体169個中の117個であり、タンパク質分泌のためシグナルとして19個のアミノ酸の分泌シグナルを含有しており、3個のN−グルコシル化部位を含有している。
【0069】
6−3.タンパク質融合因子3(TFP3)
本発明者らは、インターロイキン−2とインベルターゼとの融合タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることが可能なタンパク質融合因子3(TFP3)(配列番号6)を選別した。TFP3遺伝子は、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ遺伝子Yjl158c(PIR4/CIS3)の部分配列と同一である。Yjl158c遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞壁に共有結合されたO−マンノシル化されたタンパク質である。Yjl158c遺伝子は、細胞分裂に関与するCik1欠如変異株に対するマルチコピーサプレッサ(multicopy suppressor)として知られている遺伝子である。Yjl158c遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のうち、インターロイキン−2と融合されたアミノ酸の数は、全体227個中の104個であり、タンパク質分泌のためのシグナルとして23個のアミノ酸のプレ(pre)分泌シグナルと41個のプロ(pro)分泌シグナルを含有しており、Lys−ArgからなるKex2p切断配列を含有しており、PIR繰り返し配列を持っている。
【0070】
6−4.タンパク質融合因子4(TFP4)
本発明者らは、インターロイキン−2とインベルターゼとの融合タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることが可能なタンパク質融合因子4(TFP4)(配列番号8)を選別した。TFP4は、酵母ハンゼヌラポリモルファ由来の遺伝子であり、機能は知られていないが、インターロイキン−2と融合されたアミノ酸の数は50個であり、この中の18個のアミノ酸からなるタンパク質分泌シグナルを含んでいる。
【0071】
<実施例7>培地に分泌された融合タンパク質の分析
スクロース培地で成長した菌体が分泌するタンパク質を分析するために、前述した4つのタンパク質融合因子を含有する菌体をYPDG培地(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース、0.3%ガラクトース)で40時間培養した後、細胞を除去し、残った培養上澄液に溶解されている全体タンパク質をアセトン(最終濃度40%)に沈澱させた後、SDS−PAGEを行ったが、インベルターゼが融合された状態では、インベルターゼ部分の過多なグルコシル化により単一タンパク質バンドを確認し難いという問題があったため、各ベクター(pYHTS−TFP1、2、3及び4)からインベルターゼを除去し、インターロイキン−2遺伝子に翻訳終結コドンを挿入した。このために、プライマーJH132(SacI−GAL−forward primer)(配列番号23)及びJH137(IL2−Term−reverse primer)(配列番号24)を用いてそれぞれのベクターからGALプロモータ、各TFP及び翻訳終結コドンを含有したインターロイキン−2遺伝子を含む切片を得るために、各ベクター(pYHTS−TFP1、2、3及び4)を重合酵素連鎖反応した後、回収された遺伝子切片をSacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−TFP1、2、3及び4を製造した。製造された4種のIL−2発現ベクターを酵母に形質転換した後、単一コロニーを確保し、前述したような方法で培養し、培養上澄液に分泌されたタンパク質をSDS−PAGEして分析した(図7)。図7の結果から分かるように、pYIL−TFP2を除いたそれぞれのベクターを含有した菌体の培養上澄液から、タンパク質のサイズが相異なる強いバンドが観察された。これらは、IL−2抗体を用いたウェスタンブロット法(図7)でバンドと確認され、それぞれの分泌誘導融合タンパク質とIL−2とが融合された状態であることを確認することができた。ところが、SDS−PAGE上で現れた実際サイズは、それぞれのタンパク質融合因子及びIL−2遺伝子のサイズから類推されるタンパク質のサイズとは相当な差異を示した。これはグルコシル化による差異であると推定されるので、N−グルコシル化によってタンパク質に付加された糖を除去するために、各タンパク質にEndo−H酵素を処理した後、さらにSDS−PAGE分析した(図8)。タンパク質配列上、TFP1には1つのN−グルコシル化誘発配列(28〜30番目のアミノ酸)があり、TFP3はO−グルコシル化誘導配列を含有しており、TFP4にはグルコシル化誘導配列がなかった。予想したように、pYIL−TFP1の場合には、Endo−H処理の後、分子量が相当減少することが分かった。したがって、pYIL−TFP1の場合には、発現されたタンパク質がN−グルコシル化されていることを確認することができたが、pYIL−TFP3の場合にはO−グルコシル化によるグルコシル化なので、Endo−H処理を施しても分子量の変化がなく、pYIL−TFP4の場合にも、何の変化がなかった。
【0072】
<実施例8>細胞内におけるKex2p切断によるオーセンティック(authentic)なタンパク質の生産
本発明者らは、実施例7で使用したベクターが各タンパク質融合因子とIL−2とが融合された状態で培地に分泌されるので、ヒトインターロイキン−2と同一な状態のオーセンティックなタンパク質を生産するために、細胞内でタンパク質融合因子を自動的に除去することができるよう、融合因子とIL−2との間に、酵母が自体的に生産する蛋白分解酵素Kex2pが認識し得る切断部位(Leu−Asp−Lys−Arg)をそれぞれ挿入した。pYIL−TFP1にKex2p切断配列を組み込むために、pYIL−TFP1を鋳型とし、プライマーJH132(配列番号23)及びHY22(TFP1−LDKR−reverse primer)(配列番号25)、HY23(TFP1−LDKR−forward primer)(配列番号26)及びJH137(配列番号24)を用いてそれぞれ重合酵素連鎖反応し、電気泳動の後、ゲルから回収されたGALプロモータ及びTFP1を含有する切片とインターロイキン−2遺伝子を含有する切片とを鋳型とし、JH132(配列番号23)及びJH137(配列番号24)を用いて2次重合酵素連鎖反応した。得られたGALプロモータ−TFP1−IL2切片を制限酵素SacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−KRTFP1を製造した。また、pYIL−TFP2にKex2p切断配列を組み込むために、pYIL−TFP2を鋳型とし、前述の方法と同様の方法でプライマーJH132(配列番号23)及びHY20(TFP2−LDKR−reverse primer)(配列番号27)、HY21(TFP2−LDKR−forward primer)(配列番号28)及びJH137(配列番号24)を用いてそれぞれ重合酵素連鎖反応し、回収された2つの遺伝子切片を鋳型とし、JH132(配列番号23)及びJH137(配列番号24)を用いて2次重合酵素連鎖反応した後、得られた切片を制限酵素SacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−KRTFP2を製造した。また、pYIL−TFP3にKex2p切断配列を組み込むために、pYIL−TFP3を鋳型とし、前述の方法と同様の方法でプライマーJH132(配列番号23)及びHY17(TFP3−LDKR−reverse primer)(配列番号38)、HY18(TFP3−LDKR−Forward primer)(配列番号39)及びJH137(配列番号24)を用いてそれぞれ重合酵素連鎖反応し、回収された2つの遺伝子切片を鋳型とし、JH132(配列番号23)及びJH137(配列番号24)を用いて2次重合酵素連鎖反応した後、得られた切片を制限酵素SacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−KRTFP3を製造した。また、pYIL−TFP4にKex2p切断配列を組み込むために、pYIL−TFP4を鋳型とし、前述の方法と同様の方法でプライマーJH132(配列番号23)及びHY24(TFP4−LDKR−reverse primer)(配列番号29)、HY25(TFP4−LDKR−Forward primer)(配列番号30)及びJH137(配列番号24)を用いてそれぞれ重合酵素連鎖反応し、回収された2つの遺伝子切片を鋳型とし、JH132(配列番号23)及びJH137(配列番号24)を用いて2次重合酵素連鎖反応した後、得られた切片を制限酵素SacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−KRTFP4を製造した。
【0073】
製造された4つのベクターのうち、pYIL−KRTFP1、pYIL−KRTFP3及びpYIL−KRTFP4をそれぞれ酵母2805Δgal1Δinv2菌株に導入して単一コロニーを選別してYPDG培地(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース、0.3%ガラクトース)で40時間培養した後、細胞を除去し、残った培養上澄液をSDS−PAGEした結果、図9に示すように、ヒトインターロイキン−2と同じサイズのタンパク質が分泌生産されることを確認した。ヒトインターロイキン−2を分泌生産する3つのタンパク質融合因子のうちTFP1が最も効率よくオーセンティックなインターロイキン−2を分泌生産することができることを確認した。
【0074】
前記ベクターpYIL−KRTFP1、pYIL−KRTFP2、pYIL−KRTFP3及びpYIL−KRTFP4は、国際寄託機関である韓国大田市儒城區魚隠洞52番地所在のKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付でそれぞれ受託番号KCTC 10544BP、10545BP、10546BP及び10546BPで寄託した。
【0075】
<実施例9>タンパク質融合因子1(TFP1)の特性分析
IL−2を最も効率よく分泌生産するタンパク質融合因子としてTFP1を選別し、TFP1配列に存在する分泌シグナル(a)、N−グルコシル化部位(b)、及びセリン、アラニンリッチ配列(c)、追加配列(d)及び5’−UTR(5’−非翻訳配列)配列(e)の中のどの配列が、難分泌タンパク質であるインターロイキン−2の分泌に絶対的な影響を与えるかを確認するために、図10に示すように、TFP1の各特徴配列を一つずつ除去した欠如遺伝子を製造した。まず、TFP1から配列上別に特徴がない追加配列dを除去するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーJH143(XbaI−TFP1−d−reverse primer)(配列番号31)及びJH132(配列番号23)を用いて重合酵素連鎖反応した。得られたDNA切片は、GALプロモータとTFP1から配列dが除去された切片TFP1−1を含んでいる。TFP1から追加配列(d)及びセリン、アラニンリッチ配列(c)を除去するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーJH142(XbaI−TFP1−c−reverse primer)(配列番号32)及びJH132(配列番号23)を用いて重合酵素連鎖反応し、得られた切片はGALプロモータと配列c及びdが除去された切片TFP1−2を含んでいる。また、TFP1からd、c及びN−グルコシル化部位(b)を除去するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーJH141(XbaI−TFP1−b−reverse primer)(配列番号33)及びJH132(配列番号23)を用いて重合酵素連鎖反応し、得られた切片にはGALプロモータ及び配列c、d及びbが除去された切片をTFP1−3を含んでいる。Kex2p切断部位を含むIL−2遺伝子を製造するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーJH140(SpeI−XbaI−LDKR−forward primer)(配列番号34)及びJH137(配列番号24)を用いて重合酵素連鎖反応した。回収されたIL−2切片を制限酵素SpeI及びSalIで処理した切片と、以前に得られた3つの切片(TFP1−1、2及び3)をそれぞれ制限酵素SacI及びXbaIで処理し、SacI及びSalIで処理されたYEGα−HIR525にそれぞれ挿入して、図10に示すように、pYIL−KRT1−1、pYIL−KRT1−2、及びpYIL−KRT1−3を製造した。TFP1の5’−UTRを除去するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーHY38(TFP1−UTR−forward primer)(配列番号35)及びJH137(配列番号24)を用いて重合酵素連鎖反応し、回収された遺伝子をBamHI/SalIで処理した後、SacI/BamHIで処理されたGAL10プロモータと共に、SacI/SacIで処理されたYEGα−HIR525に挿入してpYIL−KRT1−4を製造した(図10)。
【0076】
製造された4種のプラスミドpYIL−KRT1−1、pYIL−KRT1−2、pYIL−KRT1−3及びpYIL−KRT1−4を酵母に形質転換し、単一コロニーを培養して培養上澄液をSDS−PAGE分析した結果、図11に示すように、分泌シグナル、N−グルコシル化及びセリン、アラニンリッチ配列を全て含んでいるpYIL−KRT1−3の場合にのみIL−2バンドが確認され、セリン、アラニンリッチ配列が除去されたpYIL−KRT1−2及びセリン、アラニンリッチ配列及びN−グルコシル化配列が除去されたpYIL−TFP1−1の場合には全くバンドが確認されなかった。したがって、IL−2分泌を効果的に誘導するためには、TFP1に存在する3つの特徴的な配列(分泌シグナル、N−グルコシル化及びセリン/アラニンリッチ配列)が全て必要であることが分かった。また、TFP1の5’−UTRを除去した場合、発現率が約3倍以上増加することを確認した。
【0077】
前記ベクターpYIL−KRT1−3及びpYIL−KRT1−4は、国際寄託機関である韓国大田市儒城區魚隠洞52番地所在のKCTCに2003年11月11日付でそれぞれ受託番号KCTC 10548BP及び10549BPで寄託した。
【0078】
<実施例10>タンパク質融合因子TFP1−4を用いたヒトインターロイキン2の発酵生産
前記ベクターpYIL−KRT1−4を形質転換した組み換え酵母菌株を5Lのジャーファーメンター(jar fermentor)で流加発酵培養によってインターロイキン−2の分泌生産性を調査した。ファーメンターに接種するためのシード培養は、フラスコでシード培地(酵母窒素ベース(アミノ酸不在)6.7%、カザミノ酸0.5%及びブドウ糖2%)を用いて培養し、初期発酵培地としては、発酵培養培地(酵母抽出物4%、ペプトン1%、ブドウ糖2%)を用いて約15OD600まで培養した後、流加培地(酵母抽出物15%、ブドウ糖30%、ガラクトース30%)を細胞の成長速度に応じて異なる供給量で供給して培養した。約64時間培養の後、細胞は約200OD600まで成長し、各時間別に培地試料5μLを取って分泌タンパク質をSDS−PAGE分析した(図12)。結果的に約500mg/Lのインターロイキン−2が培地に分泌生産されたことを標準試料の量と比較して確認した。酵母発酵によって分泌生産されたインターロイキン−2は、アミノ酸末端の分析によってAla−Pro−Thr−Ser−Ser−Serから構成されたことを確認し、ヒトから分泌されるインターロイキン−2と同一であることを確認した。
【0079】
<実施例11>タンパク質融合因子TFP1ないし4を用いたヒトコロニー刺激因子(G−CSF)の分泌能の比較
難分泌タンパク質であるヒトインターロイキン−2を用いて確保された4種のタンパク質融合因子(TFP1、2、3及び4)が別の難分泌ヒトタンパク質の分泌にも効果があるか否かを確認するために、難分泌タンパク質であるヒトコロニー刺激因子(G−CSF)を4種のTFPに融合して酵母における発現及び分泌を確認した。ヒトコロニー刺激因子遺伝子は、ヒトcDNAライブラリーからプライマーJH144(GCSF−forward primer)(配列番号36)及びJH145(GCSF−reverse primer)(配列番号37)を用いて重合酵素連鎖反応によって確保し、確保された遺伝子を制限酵素XbaI/SalIで処理し、pYIL−KRTFP1、2、3及び4のXbaI/SalI部位に挿入してpYGCSF−TFP1、2、3及び4を製造した。
【0080】
ヒトコロニー刺激因子を発現するために製造されたベクターpYGCSF−TFP1、2、3及び4を酵母に形質転換し、単一コロニーを分離して培養した後、培養上澄液をSDS−PAGEし、G−CSF抗体を用いたウェスタンブロット結果は、図13に示したとおりである。それぞれのTFPによってG−CSFが分泌生産され、TFP1及びTFP3によって効率よくG−CSFが分泌生産されることが分かった。特にTFP3の場合、最も効率よくG−CSFを分泌生産することが可能であることを、G−CSFに対する抗体(Chemicon社製、米国)を用いたウェスタンブロットによって確認することができた。したがって、タンパク質の種類によって互いに異なるTFPが最大の分泌効率を示すということが立証されるため、本発明で得た4種のTFPは、IL−2またはG−CSF以外の多様な難分泌性タンパク質の分泌を促進することが可能なタンパク質融合因子として非常に有用であろうと判断された。
【0081】
<実施例12>タンパク質融合因子TFP3を用いたヒトコロニー成長因子(G−CSF)の発酵生産
実施例11で記述されたベクターpYGCSF−TFP3で形質転換された組み換え酵母菌株を5Lのジャーファーメンターで流加発酵培養によってヒトコロニー成長因子の分泌生産性を調査した。ファーメンターに接種するためのシード培養は、フラスコでシード培地(酵母窒素ベース(アミノ酸不在)6.7%、カザミノ酸0.5%、及びブドウ糖2%)を用いて培養し、初期発酵培地としては、発酵培養培地(酵母抽出物4%、ペプトン1%、ブドウ糖2%)を用いて約15OD600まで培養した後、流加培地(酵母抽出物15%、ブドウ糖30%、ガラクトース30%)を細胞の成長速度に応じて異なる供給量で供給して培養した。約64時間培養の後、細胞は約200OD600まで成長し、各時間別に培地試料5μLを取って分泌タンパク質をSDS−PAGE分析した(図14)。結果的に約300mg/Lのヒトコロニー成長因子が培地に分泌生産されたことを標準試料の量と比較して確認した。酵母発酵によって分泌生産されたヒトコロニー成長因子は、アミノ酸末端の分析によってThr−Pro−Leu−Gly−Proから構成されたことを確認して、ヒトから分泌されるコロニー成長因子と同一であることを確認した。
【0082】
<実施例13>タンパク質融合因子TFP3誘導体を用いたヒトコロニー刺激因子(G−CSF)の分泌効率分析
前記実施例11でG−CSFの最適分泌のためにTFP3が最も優れることを確認することにより、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ遺伝体からPCRを用いて、TFP3が由来した遺伝子Yjl158c(CIS3)全体を確保し、図15に示すように、TFP3の長さを漸次変化させたTFP3の誘導体を6種(TFP3−1、2、3、4及びTFP3−1−1(配列番号40)、TFP3−1−2(配列番号42))製造した。最初得られたTFP3は、Yjl158c(CIS3)から得られる227個のアミノ酸中の104個を含有しているが、これを漸次長く作った各TFP3−1(130個のアミノ酸を含む)、TFP3−2(157個のアミノ酸を含む)、TFP3−3(189個のアミノ酸を含む)及びTFP3−4(222個のアミノ酸を含む)を製造し、それぞれをG−CSF遺伝子に連結し、融合部位にKex2p認識部位を挿入した。図15の(A)結果から分かるように、TFP3に比べて26個のアミノ酸を追加したTFP3−1の場合、追加的なN−グルコシル化部位が含まれてG−CSF分泌率がTFP3に比べて約3倍程度増加した。ところが、TFP3の長さをさらに長くした場合には別に効果がなく、むしろTFP3−3及びTFP3−4の場合には分泌効率が低くなる結果を示した。
【0083】
また、図15の(A)に示すように、発現及び分泌効率が増進されるにつれて、Kex2pによって完全に切断されていないTFP3−1−GCSFの融合タンパク質が培地に分泌されることが観察された。これは、2つの遺伝子の融合部位に存在する多数のO−グルコシル化部位に付加された糖により酵素接近が難しいためであると判断され、TFP3にさらに4個のアミノ酸が追加されたTFP3−1−1(134個のアミノ酸を含む)及び13個のアミノ酸が追加されたTFP−1−2(143個のアミノ酸を含む)を製造してG−CSF分泌能及び融合タンパク質減少有無を調査したところ、図15の(B)に示すように、TFP3−1−1及びTFP3−1−2においてG−CSFの分泌量の減少なしに融合タンパク質の量が大幅減少した。したがって、確保されたTFPと目的タンパク質の融合部位の精巧な操作によって目的タンパク質の分泌率をさらに向上させることができることを確認した。
【0084】
本発明において、タンパク質融合因子TFP3−1−1を含有するG−CSF発現ベクターpYGT3−1−1−GCSF及びTFP3−1−2を含有するG−CSF発現ベクターpYGT3−1−2−GCSFは、国際寄託機関である 韓国大田市儒城區魚隠洞52番地所在のKCTCに2004年12月21日付でそれぞれ受託番号KCTC 10753BP及びKCTC 10754BPで寄託した。
【0085】
<実施例14>タンパク質融合因子TFP3を用いた産業酵素リパーゼの分泌生産
タンパク質分泌融合因子TFP3を含有したG−CSF発現ベクターpYGCSF−KRTFP3のXbaI−SalI部位に、pYGA−CAlB14(ES Choi, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)をXbaI−SalIで処理して得たCalB遺伝子を挿入し、pYGT3−CalB14を製造した。各発現ベクターを用いて培養温度によるCalB14の分泌率を比較した。TFP3を用いたCalB14分泌生産の場合、培養適温である30℃でも既存の発現システムに比べて2倍以上の高い分泌率を示した(表3:各発現ベクターを含有した菌株の培養温度によるCalB活性)。
【0086】
【表3】
【0087】
pTGT3−CalB14を含有した組み換え酵母を5Lのジャーファーメンターで流加培養及び適温培養(30℃)してCalB14の分泌程度を分析した。使用培地としては、発酵培養培地(酵母抽出物4%、ペプトン1%、ブドウ糖2%)を使用して約15OD600まで培養した後、流加培地(酵母抽出物15%、ブドウ糖30%、ガラクトース30%)を細胞の成長速度に応じて異なる供給量で供給して培養した。組み換え菌株は、30℃で非常に速く成長することができ、培養温度のシフトなしにも高効率でCalB14を培地に分泌生産することができた。タンパク質の活性及び濃度の分析結果、約1.5〜2.0g/LのCalB14が培地に分泌され、CalB14の経済的な量産が可能であった(図16)。
【0088】
<実施例15>タンパク質融合因子TFP1の活性をピキアパストリスで確認
本発明で開発されたTFPが異なる酵母P.パストリスでも作動するかを確認するために、P.パストリスベクターpPIC9(Invitrogen社製、米国)をBalII−EcoRIで処理してAOXプロモータを除去し、ここにP.パストリス染色体からプライマー[Bg1II−GAP−forward primer(配列番号44)及びGAP−EcoRI−reverse primer(配列番号45)]を用いて確保されたGAP(glyceraldehyde 3−phosphate dehydrogenase)由来のプロモータを挿入してpPIC9−GAPを製作した。このベクターをEcoRI−NotIで処理し、ここにEcoRI−NotIで処理されたMFalpha(mating factor alpha)−GCSF及びTFP1−GCSF遺伝子をそれぞれ挿入して、pGAP−MF−GCSF及びpGAP−TFP1−GCSFを製作した。それぞれのベクターをSalIで処理した後、P.パストリスGS115(Invitrogen社製、米国)に形質転換した。確保された形質転換体をフラスコ培養し、培地に分泌されたG−CSFをSDS−PAGE分析によって最終菌株を選別した。それぞれのベクターが導入された選別菌株をファーメンターで発酵培地(酵母抽出物4%、バクトペプトン1%、グリセロール4%)を用いて回分培養し、時間別に試料を取って、培地に分泌されたG−CSFをSDS−PAGE分析によって確認した(図17)。図17に示すように、TFP1の場合、MFalphaより高い分泌率を示して酵母S.セレヴィシェ由来のTFPがP.パストリスでも非常に効果的に利用できることを確認した。
【0089】
本発明は以下の態様であり得る。
[1]細胞から分泌されない難発現性タンパク質の分泌のためのタンパク質融合因子(TFP)を選別する方法であって、
a)レポータータンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドがインフレームで連結された上記難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを含む自動選別ベクターを製造する段階と、
b)上記自動選別ベクターに第3のポリヌクレオチドを連結して、ライブラリーを製造する段階と、
c)上記ライブラリーで上記レポータータンパク質の活性がない上記細胞を形質転換する段階と、
d)上記細胞を培養する段階と、
e)一個以上の上記細胞から分泌されたレポータータンパク質の活性を検出することでタンパク質融合因子(TFP)を選別する段階とを含み、
上記レポータータンパク質が、インベルターゼ、スクラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マルターゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、及びガラクトシダーゼから成る群から選択される、方法。
[2]さらに、選別されたタンパク質融合因子(TFP)を分離する段階を含む1に記載の方法。
[3]上記難発現性タンパク質が、サイトカイン、血清タンパク質、免疫グロブリン、サイトカインレセプター、ラクトフェリン、インターフェロン、コロニー刺激因子、幹細胞刺激因子、ホスホリパーゼ活性化タンパク質、インスリン、腫瘍怪死因子、成長因子、ホルモン、酵素、抗癌ペプチド、及び抗菌ペプチドから成る群から選択される、1に記載の方法。
[4]上記難発現性タンパク質がヒトインターロイキン−2、ヒトコロニー刺激因子、又はCalB14である1に記載の方法。
[5]上記第3のポリヌクレオチドが、ゲノム性DNAに由来する1に記載の方法。
[6]上記第3のポリヌクレオチドが、cDNAに由来する1に記載の方法。
[7]上記第3のポリヌクレオチドが、動物、植物、又は微生物のDNAに由来する1に記載の方法。
[8]上記第3のポリヌクレオチドが、酵母DNAに由来する7に記載の方法。
[9]上記第3のポリヌクレオチドが、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)のDNAに由来する7に記載の方法。
[10]上記細胞が真核細胞、又は細菌細胞である1に記載の方法。
[11]上記細胞が、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシラス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)の細胞である10に記載の方法。
[12]上記レポータータンパク質が細胞外部に分泌されるタンパク質である1に記載の方法。
[13]上記レポータータンパク質がインベルターゼであり、上記細胞が単一炭素源としてスクロースを含む培地で培養される1に記載の方法。
[14]上記自動選別ベクターに、さらにプロモータ遺伝子が含まれる1に記載の方法。
[15]上記プロモータ遺伝子がGAPDH、PGK、ADH、PHO5、GAL1及びGAL10より成る群から選択される遺伝子に由来する14に記載の方法。
[16]上記自動選別ベクターに、さらに切断認識部位が含まれる1に記載の方法。
[17]上記切断認識部位がKex2pによって認識される16に記載の方法。
[18]上記自動選別ベクターは、プロモータ遺伝子と、翻訳開始及び終結コドンが除去された難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドと、上記難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドにインフレームで連結されたレポータータンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む1に記載の方法。
[19]酵母の細胞から分泌されない難発現性タンパク質の分泌のためのタンパク質融合因子(TFP)を選抜する方法であって、
a)インベルターゼをコードする第2のポリヌクレオチドがインフレームで連結された上記難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを含む自動選別ベクターを製造する段階と、
b)上記自動選別ベクターに第3のポリヌクレオチドを連結して、ライブラリーを製造する段階と、
c)上記ライブラリーで内在性インベルターゼ遺伝子が欠失している酵母変異株を形質転換する段階と、
d)上記形質転換された酵母を単一炭素源としてスクロースを含む培地で培養する段階と、
e)一個以上の上記形質転換された酵母から分泌されたインベルターゼの活性を検出することで上記タンパク質融合因子(TFP)を選別する段階とを含む方法。
[20]タンパク質融合因子(TFP)ライブラリーを製造する方法であって、
a)インベルターゼをコードする第2のポリヌクレオチドがインフレームで連結されたインターロイキン−2をコードする第1のポリヌクレオチドを含む自動選別ベクターを製造する段階と、
b)上記自動選別ベクターに切断した酵母遺伝体断片を連結して、ライブラリーを製造する段階と、
c)上記ライブラリーで上記インベルターゼの活性がない細胞を形質転換する段階と、
d)上記細胞を培養する段階と、
e)インベルターゼの活性を分泌する細胞を選別する段階と、
f)インベルターゼの活性を分泌する上記細胞を回収する段階とを含み、これによって、タンパク質融合因子(TFP)ライブラリーを製造する方法。
[21]さらに回収された各細胞から上記タンパク質融合因子(TFP)をコードするポリヌクレオチドを分離する段階を含む20に記載の方法。
[22]上記切断した酵母遺伝体断片が、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)のDNAに由来する20に記載の方法。
[23]上記インベルターゼが細胞外部に分泌されるタンパク質である20に記載の方法。
[24]上記細胞が単一炭素源としてスクロースを含む培地で培養される20に記載の方法。
[25]上記自動選別ベクターに、さらにプロモータ遺伝子が含まれる20に記載の方法。
[26]上記プロモータ遺伝子がGAPDH、PGK、ADH、PHO5、GAL1及びGAL10より成る群から選択されるポリヌクレオチドに由来する25に記載の方法。
[27]上記自動選別ベクターに、さらに切断認識部位が含まれる20に記載の方法。
[28]上記切断認識部位がKex2pによって認識される27に記載の方法。
[29]上記自動選別ベクターは、プロモータ遺伝子と、翻訳開始及び終結コドンが除去されたインターロイキン−2をコードする第1のポリヌクレオチドと、上記第1のポリヌクレオチドにインフレームで連結されたインベルターゼをコードする第2のポリヌクレオチドとを含む20に記載の方法。
[30]難発現性タンパク質とタンパク質融合因子(TFP)タンパク質とを含む融合タンパク質であって、
該難発現性タンパク質が、細胞から分泌されないものであり、
該タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号40又は配列番号42で表されるアミノ酸配列の一つを含み、該難発現性タンパク質の該細胞からの分泌を誘導するものである、融合タンパク質。
[31]30に記載の融合タンパク質をコードする遺伝子。
[32]上記遺伝子が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号41、又は配列番号43で表されるヌクレオチド配列の一つを有する、タンパク質融合因子(TFP)タンパク質のためのポリヌクレオチドを含む、31に記載の遺伝子。
[33]31に記載の遺伝子を含むベクター。
[34]上記ベクターが、pYIL−KRTEP1(KCTC 10544BP)、pYIL−KRTEP2(KCTC 10545BP)、pYIL−KRTEP3(KCTC 10546BP)、pYIL−KRTEP4(KCTC 10547BP)、pYIL−KRT1−3(KCTC 10548BP)、pYIL−KRT1−4(KCTC 10549BP)、pYGT3−1−1−GCSF(KCTC 10753BP)、及びpYGT3−1−2−GCSF(KCTC 10754BP)から成る群から選択される33に記載のベクター。
[35]33に記載のベクターで形質転換された細胞。
[36]上記細胞が、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシラス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)から成る群から選択される35に記載の細胞。
[37]難発現性タンパク質の組み換え的生産方法であって、
a)1に記載の方法によって選別されたタンパク質融合因子(TFP)タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドと連結された、上記難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを製作する段階と、
b)上記発現ベクターで細胞を形質転換する段階と、
c)上記細胞を培養する段階とを含み、上記難発現性タンパク質が生産される組み換え的生産方法。
[38]上記タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号40又は配列番号42で表されるアミノ酸配列の一つを含み、難発現性タンパク質の分泌を誘導するタンパク質である、37に記載の組み換え的生産方法。
[39]上記タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号41、又は配列番号43で表されるヌクレオチド配列の一つを含む遺伝子によってコードされている37に記載の組み換え的生産方法。
【0090】
〔産業上の利用可能性〕
本発明は、現在まで組み換え生産が不可能であり或いは発現率が低かった多様なタンパク質を適合型TFP超高速選別及び利用によって経済的に量産可能にするのに寄与する。
【0091】
〔受託証〕
【0092】
【化1】
【0093】
【化2】
【0094】
【化3】
【0095】
【化4】
【0096】
【化5】
【0097】
【化6】
【0098】
【化7】
【0099】
【化8】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の組み換え生産方法で生産することが難しい難発現性タンパク質を発現または分泌生産することが可能な適合型タンパク質融合因子(translational fusion partner:TFP)を多様な遺伝資源から超高速で選別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ヒトゲノムプロジェクトで確保された遺伝体塩基配列の情報と遺伝体単位で確認される多様なタンパク質の機能を分析し、人体医薬学的に重要なタンパク質製品を生産するためには、組み換え微生物を用いる高効率タンパク質生産システムの開発が必要である。ヒトなどの高等生物由来の組み換えタンパク質を生産するために発現システムを選定するとき、多様な要因、例えば宿主細胞の成長特性、タンパク質の発現程度、細胞内外発現可能性、翻訳後修飾(post−translational modification)可能性、発現されたタンパク質の生物学的活性及び発現タンパク質の用途などが考慮されるべきである。代表的な微生物遺伝子発現システムとして大腸菌及び酵母システムが主に用いられているが、大腸菌は、多くの発現システムが開発されており、外来タンパク質の発現率が非常に高いという利点があるが、高等生物由来のタンパク質を組み換え生産しようとするときに翻訳後修飾過程が不可能であり、細胞の培養培地へのタンパク質の完全な分泌が難しく、ジスルフィド結合(disulfide bond)の多いタンパク質の折り畳みが不可能であり、封入体(inclusion body)などの不溶性タンパク質の形で発現するなどの欠点が指摘されている(Makrides, Microbial Rev., 1996, 60, 512)。また、ヒトタンパク質のうち、疾病と連関されて医薬学的に価値の高い大部分のタンパク質が糖タンパク質または膜タンパク質であるから、完全な活性を持つためにはグリコシル化(glycosylation)を必ず要求し或いはジスルフィド結合による完全な3次元構造を要求する場合、これらのタンパク質は、大腸菌では生産が不可能であり、酵母などの真核微生物発現システムを必ず必要とする。
【0003】
真核微生物である酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ(Saccharomyces cerevisiae)は、ヒトに対して安全性が立証されたGRAS(Generally Recognized As Safe)微生物であって、遺伝子操作が容易であり、様々な発現システムが開発されているうえ、大量培養が容易である。それだけでなく、ヒトタンパク質などの高等細胞由来タンパク質を組み換え生産するとき、タンパク質を細胞外に分泌することが可能な分泌機能と、グリコシル化などのタンパク質の翻訳後修飾機能を行うことができるという利点を提供する。タンパク質の分泌シグナルと目標タンパク質を人為的に融合(fusion)することにより細胞外分泌が可能であるが、タンパク質の分泌過程によってタンパク質の折り畳み、ジスルフィド結合の形成及びグリコシル化過程が行われ、よって、生物学的に完全な活性を有する組み換えタンパク質を生産することができるという利点を提供する。これは、また、生物学的活性を有する組み換えタンパク質を培地から直接得ることができるから、経済的に効率が低い細胞の粉砕またはリフォールディング段階を必要としないため、非常に経済的である(Eckart and Bussineau, Curr. Opin. Biotechnol., 1996, 7, 525)。
【0004】
ところが、上述した多くの利点にも拘わらず、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェを用いたヒトタンパク質分泌システムに関する現技術の問題点として指摘されているのは、ヒトタンパク質の種類によっては全く生産されないか、或いは数グラム/リットルまで生産されるなど、分泌率が数千倍以上の差異を示して分泌生産性を予測することが難しいことである。外来タンパク質が数グラム/リットルの水準まで分泌生産可能であると判断するとき、分泌生産性の側面から十分な経済性があると判断されるが、タンパク質の種類によっては分泌効率が低いという問題と、特に高付加価値の人体医薬用タンパク質を生産しようとするときに発現及び分泌が難しいという問題がよく発生する。かかる問題を解決するために、タンパク質の分泌に関与する分泌因子についての研究が盛んに行われている。小胞体で新しく合成されたタンパク質の折り畳みを助ける分泌因子BiP(KAR2)の過発現方法(Robinson et al., Biotechnol. prog., 1996, 271, 10017)とシステム結合の形成を助けるPDI(protein disulfide isomerase)の過発現方法(Robinson et al., Bio/Technology, 1994, 12, 381; Schultz et al., Ann. N. Y. Acad. Sci., 1994, 721, 148; Hayano et al., FEBS Lett., 1995, 377, 505)などのシャペロン(chaperone)についての研究、及び分泌を誘導する融合因子の製造と元々よく分泌されるタンパク質との融合によって分泌を増進させる研究が盛んに行われている(Gouka et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 1997, 47, 1)。このような方法は、現在まで外来タンパク質の分泌を増進させた非常に成功的な方法と認識されているが、このような融合技術の分子メカニズムについての研究は未だ微々である。実験的に、このような融合技術は、タンパク質の移動を容易にし、折り畳みを助けるなど、タンパク質の翻訳段階または翻訳後段階における限界点を改善するものと知られている。
【0005】
Kjeldsen等(Protein Expr. Purif., 1997, 9, 331)は、インシュリンまたはインシュリン前駆体(IP)を酵母で効率よく分泌生産するために、理論的根拠によって製作された合成リーダー(leader)をインシュリンに融合してインシュリンの分泌率を改善したが、このような合成リーダーにはグリコシル化部位とBiP認識部位を添加して小胞体に留まる時間を長くすることにより、タンパク質が正常的に折り畳まれるように誘導した。また、合成リーダーに追加的なグリコシル化部位を導入することにより、黒色アスペルギルスおよびサッカロマイセス・セレヴィシェにおけるインシュリンの分泌率が相当増加したと報告した(Kjeldsen et al., Protein Expr. Purif., 1998, 14, 309)。これと同様の結果が、アスペルギルスアワモリ(Ward et al., Bio/Technology, 1989, 8, 435)及び疎水性キュチナーゼ(cutinase)を酵母で発現した場合にも報告された(Sagt et al., Appl. Environ. Microbiol. 2000, 66, 4940)。これは、グリコシル化部位の導入により組み換えタンパク質の小胞体内における溶解性が増加し、タンパク質の折り畳みが誘導されることにより、結果として分泌が増加することに起因した。
【0006】
元々良く分泌されるタンパク質を融合因子として用いる研究によれば、黒色アスペルギスルのグルコアミラーゼと融合して発現し、牛由来のプロキモシン(Ward et al., Bio/Technology, 1989, 8, 435)、豚膵臓由来のホスホリパーゼA2(Roberts et al., Gene, 1992, 122, 155)、ヒトインターロイキン−6(Contreras et al., Bio/Technology 1991, 9, 378; Broekhuijsen et al., J. Biotechnol., 1993, 31, 135)、鶏由来のリゾチーム(Jeenes et al., FEMS Microbiol Lett, 1993, 107, 267)、及びヒトラクトフェリン(Ward et al., Bio/Technology, 1995, 13, 498)を効率よく分泌させた。分泌増加率は、タンパク質によって差異を見せて5倍〜1000倍であった。酵母においても、ヒトインターロイキン−1βのアミノ末端24個のアミノ酸を融合因子として用いてヒト成長因子及びコロニー刺激因子の分泌を増加させた(Lee et al., Biotechnol. Prog., 1999, 15, 884)。ヒトインターロイキン−1βは、特別な分泌シグナルなしに分泌されるものと知られており(Muesch et al., Trends Biochem. Sci., 1990, 15, 86)、酵母においても非常に効果的に組み換え分泌生産されるものと報告された(Baldari et al., Protein Eng., 1987, 1, 433)。タンパク質が正常的に折り畳まれるためにはタンパク質の元々保有した融合因子が必ず必要とされる場合も報告されたが(Takahashi et al., Appl Microbiol. Biotechnol., 2001, 55, 454)、リゾプスオリゼ由来のリパーゼ(Rhizopus oryzae lipase、ROL)を酵母サッカロマイセス・セレヴィシェで発現するために、サッカロマイセス由来の交配因子アルファ(mating factor alpha)のプレ−プロ−リーダー(pre−pro−leader)配列をROLの成熟タンパク質に該当する遺伝子と結合して発現した場合には、全くROLが分泌されなかったが、ROL自体のpro配列を結合した場合には、適切に分泌された。これは、ROL自体のpro配列が自己タンパク質の折り畳みに絶対的に必要であることを示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した研究結果から分かるように、組み換えタンパク質の分泌を誘導するために様々な分泌因子が開発された。ところが、開発された分泌因子が特定タンパク質の分泌増進には効果があるが、全てのタンパク質に一律的に適用できないという問題があった。Dorner等は、CHO細胞でBiPを過発現した結果、むしろタンパク質分泌率が減少し(Dorner et al., EMBO J., 1992, 11, 1563)、反面、BiPの発現を減少させたときにはタンパク質分泌が増加した(Dorner et al., Mol. cell. Biol., 1988, 8, 4063)と報告した。酵母においても、KAR2(BiP)の過発現が植物タウマチン(plant thaumatin)の場合には、分泌が向上しなかった(Harmsen et al., Appl. Microbiol. Biotechnol., 1996, 46, 365)。バキュロウィルスでBiPを過発現したとき、細胞抽出物で可溶性抗体の量が増加したが、抗体の分泌効率は増加しなかった(Hsu et al., Protein Expr. Purif., 1994, 5, 595)。別の分泌因子であるフォルダーゼ(PDI)を過発現する場合にも、黒色アスパルギルスでフォルダーゼを過発現したが、グルコアミラーゼの分泌が増加しなかった(Wang and Ward, Curr. Genet. 2000, 37, 57)。また、タンパク質融合因子を用いた分泌誘導の場合にも、特定のタンパク質に対してのみ分泌効率が増進されるという問題が報告されている。
【0008】
上述したように、分泌因子の効果に関する多くの研究があったが、タンパク質の種類によっては分泌に及ぼす影響が異なったため、開発された分泌因子が全てのタンパク質に適用できないという問題がある。したがって、目的する各タンパク質分泌増進の最大化のためには、目的のタンパク質に特異的に適用できる最適の分泌因子を選別する技術が必要である。このため、本発明者らは、組み換えタンパク質の種類によって最適の分泌融合因子を遺伝体単位で超高速で選別する技術を開発し、本発明を完成した。
【0009】
そこで、本発明の目的は、酵母における発現率が低くて経済的量産が不可能なタンパク質を対象としてタンパク質の生産を強力に誘導することができる適切なタンパク質融合因子(TFP)を、酵母を含んだ様々な遺伝子源から超高速で選別することが可能な方法、及びこれを用いて難発現性タンパク質の分泌生産を促進することが可能なタンパク質融合因子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一様態において、本発明は、難発現性の目的タンパク質遺伝子(X)を自動選別用レポーター遺伝子(R)に結合してX−Rの難発現性融合タンパク質を製造し、X−Rの融合物に別の遺伝子の融合によってX−R難発現性融合タンパク質の分泌を細胞外に誘導するタンパク質融合因子(translational fusion partner、TFP)を遺伝子ライブラリーから選別する方法に関する。
【0011】
本発明の前記および他の目的、特徴および他の利点は添付図面を参照する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インベルターゼ遺伝子の欠失過程及び選別標識のポップアウト過程を示す図である。
【図2】インベルターゼ活性を測定するためのザイモグラムである。(レイン1、2、3:野性型サッカロマイセス・セレヴィシェ(Saccharomyces cerevisiae)Y2805、レイン4、5、6:インベルターゼ欠失変異株(S.セレヴィシェY2805Δinv2))
【図3】炭素源による菌体の成長を示す写真である。(INV2:野性型S.セレヴィシェY2805、Δinv2:インベルターゼ欠失変異株(S.セレヴィシェY2805Δinv2))
【図4】インベルターゼ遺伝子の欠失を確認するためのサザンブロット結果である。(レイン1、2:S.セレヴィシェY2805ura3 INV2、レイン3、4:S.セレヴィシェY2805Δinv2U(URA3Δinv2)、レイン5、6:S.セレヴィシェY2805Δinv2(ura3Δinv2))
【図5】グルコース及びスクロース培地における菌体成長を確認した写真である。
【図6】プラスミドpYHTS−F0、F1及びF2の製造過程及び酵母遺伝子ライブラリーの製造過程を図式した図である。
【図7】4種のタンパク質融合因子を含む菌体の培養上澄液をSDS−PAGE及びウェスタンブロットした結果である。(レイン1:サイズマーカー(size marker)、レイン2:インターロイキン−2、レイン3:pYIL−TFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン4:pYIL−TFP2を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン5:pYIL−TFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン6:pYIL−TFP4を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図8】糖鎖分析のためにEndo−H処理前後のSDS−PAGE結果である。(レイン1、−:pYIL−TFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H非処理、レイン1、+:pYIL−TFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H処理、レイン2、−:pYIL−TFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H非処理、レイン2、+:pYIL−TFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H処理、レイン3、−:pYIL−TFP4を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H非処理、レイン3、+:pYIL−TFP4を含有した菌体を培養した培養上澄液、Endo−H処理)
【図9】Kex2pプロセッシングサイト有無による菌体培養上澄液のSDS−PAGE分析結果である。(レインM:サイズマーカー、レイン1:pYIL−TFP1を含有した菌体の培養上澄液、レイン2:pYIL−KRTFP1を含有した菌体の培養上澄液、レイン3:pYIL−TFP3を含有した菌体の培養上澄液、レイン4:pYIL−KRTFP3を含有した菌体の培養上澄液、レイン5:pYIL−TFP4を含有した菌体の培養上澄液、レイン6:pYIL−KRTFP4を含有した菌体の培養上澄液)
【図10】TFP1の特性分析のための遺伝子欠失の後に製造されたプラスミドを示す模式図である。
【図11】TFP1由来のタンパク質融合因子(TFP1−1、2、3および4)によるインターロイキン−2分泌能を確認したSDS−PAGE結果である。(レインM:サイズマーカー、レインS:インターロイキン−2、レイン1−1:pYIL−KRT1−1(「pYIL−KRTFP1−1」と命名する)を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン1−2:pYIL−KRT1−2(「pYIL−KRTFP1−2と命名する」を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン1−3:pYIL−KRT1−3(「pYIL−KRTFP1−3」と命名する)を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン1:pYIL−KRTFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン1−4:pYIL−KRT1−4(「pYIL−KRTFP1−4」と命名する)を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図12】pYIL−KRT1−4を含有した組み換え菌株の流加発酵培養プロフィル、及び培地に分泌されたタンパク質を発酵時間別にSDS−PAGE分析した結果である。
【図13】タンパク質融合因子TFP1、2、3及び4を用いた難分泌タンパク質ヒトコロニー刺激因子(G−CSF)の分泌を確認したSDS−PAGE及びウェスタンブロット結果である。(レインM:サイズマーカー、レイン1:pYGCSF−KRTFP1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン2:pYGCSF−KRTFP2を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン3:pYGCSF−KRTFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レイン4:pYGCSF−KRTFP4を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図14】pYGCSF−TFP3を含有した組み換え菌株の流加発酵培養プロフィル、及び培地に分泌されたタンパク質を発酵時間別にSDS−PAGE分析した結果である。
【図15】タンパク質融合因子TFP3が由来した遺伝子全体を確保し、G−CSFとの融合地点を変更してG−CSFの分泌率を向上させた結果である。((A)レインT3:pYGCSF−KRTFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−1:pYGCSF−KRTFP3−1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−2:pYGCSF−KRTFP3−2を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−3:pYGCSF−KRTFP3−3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−4:pYGCSF−KRTFP3−4を含有した菌体を培養した培養上澄液、(B)レインT3:pYGCSF−KRTFP3を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−1:pYGCSF−KRTFP3−1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−1−1:pYGCSF−KRTFP3−1−1を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−1−2:pYGCSF−KRTFP3−1−2を含有した菌体を培養した培養上澄液、レインT3−2:pYGCSF−KRTFP3−2を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図16】タンパク質融合因子TFP3を用いて産業酵素CalB14を分泌生産した発酵培地のSDS−PAGE結果である。(レインM:サイズマーカー、 レイン1、2:pYGA−CalB14を含有した菌体を20℃で低温培養した培養上澄液、レイン12−58:pYGT3−CalB14を含有した菌体を培養した培養上澄液)
【図17】タンパク質融合因子TFP1を含有したG−CSF発現ベクターpGAP−TFP1−GCSF及びpGAP−MFalpha−GCSFをそれぞれ含有した酵母ピキアパストリス(Pichia pastoris)を回分培養し、時間別に取った試料内に存在するタンパク質をSDS−PAGE分析した結果である。(レインSc:pYGCSF−KRTFP1を含有した酵母S.セレヴィシェ培養上澄液10μL、レイン6−24:pGAP−TFP1−GCSF及びpGAP−MFalpha−GCSFを含有したP.パストリスを培養した培養上澄液200μL濃縮液)
【図18】pYIL−KRTFP1のマップを示す。
【図19】pYIL−KRTFP2のマップを示す。
【図20】pYIL−KRTFP3のマップを示す。
【図21】pYIL−KRTFP4のマップを示す。
【図22】pYIL−KRT1−3(「pYIL−KRTFP1−3と命名する」)のマップを示す。
【図23】pYIL−KRT1−4(「pYIL−KRTFP1−4と命名する」)のマップを示す。
【図24】pYGT3−1−1−GCSFのマップを示す。
【図25】pYGT3−1−2−GCSFのマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一つの具体的な様態において、本発明は、
(1)難発現性目的タンパク質の遺伝子(X)とフレーム単位(in−frame)で連結された自動選別用レポーター遺伝子(R)の融合遺伝子(X−R)を含む自動選別ベクターを製造する段階と、
(2)難発現性融合タンパク質(X−R)の分泌を誘導するタンパク質融合因子を含んだ遺伝子ライブラリーを自動選別ベクターと連結してタンパク質融合因子ライブラリーを製造する段階と、
(3)タンパク質融合因子ライブラリーでレポーター遺伝子の活性がない細胞を形質転換させてレポータータンパク質の活性を検出する段階と、
(4)レポータータンパク質の活性を示す形質転換細胞から遺伝子を分離してタンパク質融合因子の特性を分析する段階とを含んで、難発現性タンパク質生産用適合型タンパク質融合因子を選別する方法に関する。
【0014】
本発明において、「タンパク質融合因子(translational fusion partner、TFP)」とは、難発現性タンパク質をコードする遺伝子と融合されて難発現性タンパク質の分泌生産を誘導する遺伝子を意味する。また、「タンパク質融合因子タンパク質」は、前述したようにタンパク質融合因子遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のタンパク質を意味する。
【0015】
本発明において、「難発現性タンパク質(non−producible protein)」とは、ヒトまたは多様な生命体由来のタンパク質を組み換え生産しようとするとき、タンパク質自体の特性によって大腸菌や酵母などの宿主細胞における組み換え発現生産が難しいタンパク質を意味する。特に、本発明の目的上、酵母などの宿主細胞における組み換え発現生産が難しいタンパク質を意味する。本発明の選別方法及びこれから得たタンパク質融合因子は、大腸菌などの原核細胞と酵母などの真核細胞における組み換え的生産が不可能なタンパク質だけでなく、大腸菌などの他の宿主における組み換え生産が可能であっても、酵母などの真核細胞では生産性が低いため経済性のない多数のタンパク質を組み換え的に生産するのに用いられる。本発明において、「発現」とは、特定のタンパク質をコードする遺伝子の転写及び翻訳産物が分泌されて最終目的物として得られることを含む意味である。
【0016】
本発明の自動選別用レポーター遺伝子は、必ずしもこれに限定されるものではないが、インベルターゼ、スクラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マルターゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ガラクトシダーゼなどから構成された、細胞外部への分泌が可能なタンパク質をコードする遺伝子群から選択される。
【0017】
前述した選別方法において、難発現性融合タンパク質の分泌を誘導するためのタンパク質融合因子を含む遺伝子ライブラリーは、多様な起源、例えば酵母またはヒトを含んだ多様な動植物及び微生物由来から得ることができ、酵母起源の遺伝子ライブラリーが好ましい。前記遺伝子ライブラリー用酵母は、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセスポンベエキス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、トリコデルマ(Trichoderma)などを含む。これらの遺伝子ライブラリーは、ゲノム性(染色体性)DNAまたはcDNAの形態でありうる。
【0018】
一つの具体的な例示として、組み換え生産が難しい難発現性タンパク質(X)とインベルターゼ(I)を融合して酵母で発現する場合、融合された難分泌タンパク質(X)によって正常的に分泌されたインベルターゼの分泌が抑制され、スクロースを単一炭素源として現有する培地で難発現の程度に応じて酵母が成長せず、または成長が非常に遅延する。しかし、X−Iの発現及び分泌を誘導することが可能な効率的なタンパク質融合因子を導入する場合、細胞はスクロース培地で速く成長するが、このような特徴を利用して、難発現タンパク質とインベルターゼが誘導されたタンパク質(X−I)に多様な起源から確保されるタンパク質融合因子ライブラリーをさらに融合して、TFP−X−IまたはX−I−TFPの形態に製造した後、酵母に導入、発現してスクロース培地で速く成長する細胞を選別すると、多様な起源のライブラリーから、難発現性タンパク質に最も適したTFPを超高速で選別することができる。
【0019】
したがって、より好ましい様態において、本発明は、
(1)酵母インベルターゼを用いた自動選別システムの開発のためのレポーター遺伝子として使用するために、酵母自体が有するインベルターゼ遺伝子INV2(I)を欠失させた酵母変異株を製造する段階と、
(2)酵母GAL10プロモータによって発現が調節され、インベルターゼ(I)遺伝子と難発現性遺伝子(X)がフレーム単位で融合された遺伝子(X−I)を含有する自動選別ベクターとしての酵母HTS(high throughput selection)ベクター(pYHTS−F0、pYHTS−F1及びpYHTS−F2)を製造する段階と、
(3)インベルターゼと難発現性タンパク質の融合遺伝子(X−I)を分泌させることが可能な酵母遺伝子からのタンパク質融合因子ライブラリーをpYHTSベクターに製造する段階と、
(4)製造されたライブラリーを段階(1)で製造された酵母に形質転換し、スクロースを単一炭素源として含んでいる培地で自動選別する段階と、
(5)スクロース培地で成長した酵母を培養し、培地に分泌されたタンパク質を確認する段階と、
(6)酵母から遺伝子を分離してタンパク質融合因子特性を分析する段階とを含む、難発現性タンパク質生産用適合型TFPを超高速で選別する方法に関する。
【0020】
本発明者らは、酵母インベルターゼ欠如変異株を製造し、インベルターゼ遺伝子が欠失された酵母菌株でインベルターゼと融合されたタンパク質の発現によってインベルターゼを自動選別システムのマーカーとして使用することができることを確認した後、難発現性タンパク質であるヒトインターロイキン−2を用いたタンパク質融合因子自動選別ベクターであるpYHTS−F0、F1及びF2を製造し、ここに酵母起源の切断された染色体DNAを連結してタンパク質融合因子ライブラリーを製造し、これから難分泌性タンパク質ヒトインターロイキン−2に適したタンパク質融合因子タンパク質TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4を確認した。
【0021】
本発明において、「インベルターゼを用いた自動選別システム」とは、酵母がスクロースを単位炭素源として用いるためには酵母INV2遺伝子によってコードされるタンパク質であるインベルターゼという酵素を必要とするが、酵母の染色体上に存在するINV2遺伝子を欠失させ、ベクターにINV2遺伝子を導入してINV2遺伝子の発現如何に応じてスクロース培地で成長する菌株を選別するシステムを意味する。
【0022】
インベルターゼは、レポータータンパク質として用いられてきた。例えば、米国特許第6,228,590号及びEP第0907727B1では、インベルターゼ自体の分泌シグナルを除去して分泌されないようにした後、その分泌を誘導する融合因子を選別する方法について開示している。本発明は、これとは対照的に、インベルターゼを難発現性タンパク質と融合して難発現性融合タンパク質を形成し、これを難発現性融合タンパク質の発現を誘導することが可能なタンパク質融合因子の選別に利用する。その結果、インベルターゼが発現される形質転換体の数が著しく減少する弁別力を有し、難発現性タンパク質に特異的に適用されるタンパク質融合因子を高速で確保することができる。
【0023】
本発明で確保されたタンパク質融合因子TFP1、TFP2、TFP3、TFP4及びその誘導体の適用範囲は、多様な商業的用途として量産されるタンパク質を含む。このようなタンパク質は、これらに限定されるものではないが、サイトカイン(例えば、インターロイキン)、血清タンパク質(例えば、因子VII、VIII及びIXを含んだ血液因子)、免疫グロブリン、サイトカインレセプター、ラクトフェリン、インターフェロン(例えば、α−、β−及びγ−インターフェロン)、コロニー刺激因子(例えば、GM−CSF,G−CSF)、ホスホリパーゼ−活性化タンパク質(PLAP)、インシュリン、腫瘍怪死因子(TNF)、成長因子(例えば、TGFαまたはTFPβなどの組織成長因子及び内皮成長因子、表皮成長因子:EGF、血素板由来増殖因子:PDGF、線維芽細胞増幅因子:FGF)、ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、色素性ホルモン及び副甲状腺ホルモン、黄体ホルモン分泌ホルモン及びその類似体)、カルシトニン(calcitonin)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(Calcitonin Gene Related Peptide、CGPR)、エンケファリン(enkephalin)、ソマトメジン、エリスロポエチン、視床下部放出因子、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、組織プラスミノゲン活性因子、成長ホルモン放出ペプチド(growth hormone releasing peptide、GHPR)、胸腺体液性因子(thymic humoral factor、THF)、抗癌及び抗生ペプチドなどを含む。また、このようなタンパク質は、例えば炭水化物−特異的酵素、タンパク質分解酵素、リパーゼ、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、異性化酵素、リガーゼなどの酵素を含むことができる。具体的な酵素は、これらに限定されないが、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、過酸化物ジスムターゼ、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、キモトリプシン、ウリカーゼ、アデノシンジホスファダーゼ、チロシナーゼ及びビリルビンオキシダーゼを挙げることができる。炭水化物−特異的酵素の例としては、グルコースオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼなどがある。
【0024】
難発現性タンパク質遺伝子は、人体医学的または産業的重要性があり、組み換え生産の必要性があるヒトを含んだ様々な動植物及び微生物由来の遺伝子から分離または化学合成されるものであって、前述したタンパク質をコードする遺伝子である。
【0025】
本発明の自動選別ベクターは、プロモータ遺伝子、翻訳開始及び終結コドンが除去された目的タンパク質をコードする遺伝子、およびこれにフレーム単位で融合されたレポーター遺伝子を含み、プロモータ遺伝子は、GAPDH、PGK、ADH、PHO5、GAL1及びGAL10よりなる群から選択される遺伝子であることが好ましい。
【0026】
本発明の自動選別方法において形質転換に使用した宿主細胞は、カンジダ(Candida)やデバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス (Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)及びサッカロマイセス(Saccharomyces)属などの酵母類、アスペルギルス(Aspergillus)やペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)及びトリコデルマ(Trichoderma)属などの菌類、またはエシェリキア(Escherichia)及びバシラス(Bacillus)属などの細菌類を使用することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
本発明の難発現性タンパク質生産用適合型TFPの超高速選別方法は、発現不可能であり或いは発現率が非常に低い難発現性タンパク質用に使用することが好ましいが、ある程度発現されるが発現率を高めることが可能なTFPを選別するためにも利用できる。本発明の具体例で実施しているように、インベルターゼをレポーターとして使用する場合、スクロース培地で成長が速い順序通りに区別してより効率的なTFPを選別することができる。
【0028】
別の様態において、本発明は、難発現性タンパク質インターロイキン−2の分泌生産促進のための適合型融合因子超高速選別ベクターpYHTS−F0、F1及びF2に関するものであり、このような選別ベクターは、難発現タンパク質ヒトインターロイキン−2とインベルターゼとが融合された遺伝子を含有しており、インターロイキン−2遺伝子のアミノ末端に3つの相異なるリーディングフレームで製造された制限酵素BamHI切断部位を含有している。
【0029】
本発明の具体的な実施では、ヒトインターロイキン−2を酵母で分泌生産促進する適合型融合因子を超高速で選別するために、選別ベクター3種(pYHTS−F0、F1及びF2)に酵母染色体DNAを無作為に切断し、挿入した後、インベルターゼが欠如された菌株に形質転換し、スクロース培地で成長する菌体を選別することにより、難発現性インターロイキン−2及びインベルターゼの融合タンパク質を培地に分泌することが可能な適合型融合因子を選別した。
【0030】
ヒトインターロイキン−2は、疎水性の強いタンパク質であって、酵母における発現が難しい理由は、強力なプロモータによって組み換え大量発現されたタンパク質が小胞体内で速く活性型に折り畳まれず、互いに凝集して小胞体機能を麻痺させる問題のためであると推定されている。よって、インターロイキン−2に融合されたインベルターゼも分泌できないため、細胞がスクロース培地で成長することができない。このような融合タンパク質を効率よく分泌させることが可能なタンパク質融合因子は、インターロイキン−2遺伝子の前部に酵母遺伝子ライブラリーを挿入し、酵母に形質転換した後、スクロース培地で成長する形質転換体を選択することにより確保される。
【0031】
具体的な実施において、本発明者らは、難発現タンパク質であるインターロイキン−2の分泌を誘導する融合因子を確保するために、スクロース培地で成長する形質転換体から遺伝子を分離し、大腸菌に再形質転換して相異なる4種のプラスミド(pYHTS−TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4)を回収した。それぞれのプラスミドに挿入された4種の相異なるタンパク質融合因子遺伝子TFP1(配列番号2)、TFP2(配列番号4)、TFP3(配列番号6)及びTFP4(配列番号8)を確保した。これらの遺伝子によってコードされるアミノ酸配列がそれぞれ配列番号1、3、5及び7に示されている。
【0032】
前記得られたベクターpYHTS−TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4からインベルターゼを除去し、インターロイキン−2遺伝子に翻訳終結コドンを挿入したpYIL−TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4を製作した。このようなベクターは、タンパク質融合因子と融合された形のインターロイキン−2を分泌するため、タンパク質融合因子を自動除去し得るように、タンパク分解酵素Kex2p認識部位を挿入したベクターpYIL−KRTFP1、KRTFP2、KRTFP3及びKRTFP4を製作した。ひいては、ヒトコロニー刺激因子(G−CSF)をタンパク質融合因子TFP1ないし4と融合したベクターpYGCSF−TFP1ないし4を製作し、TFPがヒトインターロイキン−2以外のタンパク質の分泌生産にも効果的であることを立証した。
【0033】
一方、産業用リパーゼ酵素として脚光を浴びているカンジダ・アンタークチカ由来のリパーゼB(CalB)を分子進化させて非活性が約6倍以上増加した変異株CalB14を組み換え酵母を用いて大量分泌生産するために、既存の発現分泌システム(AMY、アミラーゼ分泌シグナル)を利用する場合、酵母の培養適温である30℃ではタンパク質が正常的に分泌されず、22℃で低温培養する場合、分泌生産されるという特徴がある。したがって、大規模発酵培養の際に細胞培養が遅く、特に夏期にファーメンターの温度調節のための高費用問題が発生するので、培養適温で分泌生産が可能な分泌システムが求められる。本発明では、このような問題を、CalBとTFP3とが融合したベクターpYGT3−CalB4を製作して解決した。
【0034】
よって、別の様態において、本発明は、配列番号1で表されるタンパク質融合因子TFP1タンパク質またはその類似体に関する。また、本発明は、配列番号1で表されるタンパク質融合因子TFP1タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子に関する。本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列またはその相同性(homologous)、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP1タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号1で表されるタンパク質融合因子TFP1タンパク質をコードするDNAまたはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は、配列番号2の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターに関するものである。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号2の遺伝子である。組み換えベクターpYIL−TFP1、pYIL−KRTFP1、pYGCSF−TFP1、pYGCSF−KRTFP1、pGAP−TFP1−GCSFなどを例示することができる。また、本発明は、前述した組み換えベクターで形質転換された細胞に関するものである。pYIL−KRTFP1で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10544BPで寄託された。
【0035】
別の様態において、本発明は、配列番号3で表されるタンパク質融合因子TFP2タンパク質またはその類似体に関するものである。また、本発明は、配列番号3で表されるタンパク質融合因子TFP2タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子に関するものである。本発明は、配列番号3で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP2タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号3で表されるタンパク質融合因子TFP2タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号4の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターに関するものである。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号4の遺伝子である。組み換えベクターpYIL−TFP2、pYIL−KRTFP2、pYGCSF−TFP2、pYGCSF−KRTFP2などを例示することができる。また、本発明は、前述した組み換えベクターで形質転換された細胞に関するものである。pYIL−KRTFP2で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10545BPで寄託された。
【0036】
別の様態において、本発明は、配列番号5で表されるタンパク質融合因子TFP3タンパク質またはその類似体に関するものである。また、本発明は、配列番号5で表されるタンパク質融合因子TFP3タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子に関するものである。本発明は、配列番号5で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP3タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号5で表されるタンパク質融合因子TFP3タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号6の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターに関するものである。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号6の遺伝子である。組み換えベクターpYIL−TFP3、pYIL−KRTFP3、pYGCSF−TFP3、pYGCSF−KRTFP3、pYGT3−CalB14などを例示することができる。また、本発明は、前述した組み換えベクターで形質転換された細胞に関するものである。pYIL−KRTFP3で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10546BPで寄託された。
【0037】
別の様態において、本発明は、配列番号7で表されるタンパク質融合因子TFP4タンパク質またはその類似体片に関するものである。また、本発明は、配列番号7で表されるタンパク質融合因子TFP4タンパク質またはその類似体に関するものである。本発明は、配列番号7で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP4タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号7で表されるタンパク質融合因子TFP4タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号8の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターに関するものである。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号8の遺伝子である。組み換えベクターpYIL−TFP4、pYIL−KRTFP4、pYGCSF−TFP4、pYGCSF−KRTFP4などを例示することができる。また、本発明は、前述した組み換えベクターで形質転換された細胞に関するものである。pYIL−KRTFP4で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10547BPで寄託された。
【0038】
本発明において、タンパク質融合因子タンパク質または遺伝子に対して使用された用語「類似体」とは、タンパク質融合因子遺伝子を難発現性タンパク質の遺伝子と融合する場合、難発現性タンパク質の分泌生産を誘導してタンパク質融合因子の活性を示す作用的等価物を意味し、タンパク質融合因子タンパク質の場合、例えば同一の性質を有するアミノ酸同士の置換(例えば、疎水性アミノ酸から他の疎水性アミノ酸への置換、親水性アミノ酸から他の親水性アミノ酸への置換、塩基性アミノ酸から他の塩基性アミノ酸への置換、酸性アミノ酸から他の酸性アミノ酸への置換)、アミノ酸の欠失、挿入またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0039】
本発明のタンパク質融合因子タンパク質の置換類似体と関連して、分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸置換は、当該分野に公知になっており(H. Neurath, R. L. Hill, The Proteins, Academic Press, NewYork, 1979)、最も一般に発生する置換としては、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の置換を例示することができる。
【0040】
また、本発明のタンパク質融合因子タンパク質の欠失類似体と関連して、ゲノム性ライブラリー(染色体ライブラリー)またはcDNAライブラリーによって明らかになったタンパク質融合因子遺伝子の全体配列のうち一部配列を除去しても、難発現性タンパク質の分泌に影響を及ぼさず、ひいては分泌を促進させることができ、本発明者らは、タンパク質融合因子TFP1、TFP2、TFP3及びTFP4の欠失類似体断片が難発現性タンパク質の分泌に及ぼす影響を調査した。TFP1の場合、セリン、アラニンリッチ配列、N−グルコシル化部位またはこれらの両者ともが除去された遺伝子を含むベクターの場合、難発現性タンパク質を分泌できなかったが、5’−UTR(5’−untranslated region)を除去する場合(pYIL−KRT1−4)、難発現性タンパク質の発現率が3倍以上増加し、追加の3’末端の追加配列を除去した場合(pYIL−KRT1−3)にも難発現性タンパク質の分泌を誘導した。したがって、本発明のタンパク質融合因子タンパク質は、難発現性タンパク質の分泌に否定的影響を及ぼさない限り、5’−UTR領域、3’−末端領域の欠失体を本発明の範囲に含む。
【0041】
具体的な様態において、本発明は、配列番号9で表されるタンパク質融合因子TFP1−3タンパク質またはその類似体を提供する。また、本発明は、タンパク質融合因子TFP1−3タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子を提供する。本発明は、配列番号9で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP1−3タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号9で表されるタンパク質融合因子TFP1−3タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターを提供する。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は配列番号9で表されるタンパク質融合因子TFP1−3をコードする遺伝子である。組み換えベクターpYIL−KRT1−3(「pYIL−KRT1−3」と命名する)を例示することができる。また、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。pYIL−KRT1−3で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10548BPで寄託された。
【0042】
別の具体的な様態において、本発明は、配列番号10で表される遺伝子によってコードされるタンパク質融合因子TFP1−4タンパク質またはその類似体を提供する。また、本発明は、タンパク質融合因子TFP1−4をコードする配列番号10で表される遺伝子またはその類似体を提供する。本発明は、配列番号10で表される遺伝子によってコードされるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP1−4タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号10で表されるDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号10で表されるタンパク質融合因子TFP1−4をコードする遺伝子またはその類似体を含む組み換えベクターを提供する。また、本発明は、配列番号10で表されるタンパク質融合因子TFP1−4をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を含む組み換えベクターを提供する。組み換えベクターpYIL−KRT1−4(「pYIL−KRT1−4」と命名する)を例示することができる。また、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。pYIL−KRT1−4で形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付で寄託番号KCTC 10549BPで寄託された。
【0043】
また、本発明のタンパク質融合因子タンパク質の挿入類似体と関連して、ゲノム性ライブラリーまたはcDNAライブラリーによって明らかになったタンパク質融合因子遺伝子の全体配列または活性を示す部分配列に一部配列を追加しても、難発現性タンパク質の分泌に影響を及ぼさず、ひいては分泌を促進させることができ、本発明者らは、タンパク質融合因子の挿入類似体が難発現性タンパク質の分泌に及ぼす影響を調査した。TFP3(104aa)の場合、TFP3−3(189aa)及びTFP3−4(222aa)挿入類似体は、分泌効率が減少したが、TFP3に比べて26個のアミノ酸を追加したTFP3−1の場合、追加的なN−グルコシル化部位が含まれてG−CSF分泌率がTFP3に比べて約3倍程度増加した。ひいては、TFP3−1にさらに4個のアミノ酸が追加されたTFP3−1−1(134個のアミノ酸を含む)及び13個のアミノ酸が追加されたTFP3−1−2(143個のアミノ酸を含む)は、G−CSFの分泌量の減少なしに分泌過程中にKex2pによってプロセスされていない融合タンパク質の量も大幅減少した。したがって、本発明のタンパク質融合因子タンパク質は、難発現性タンパク質の分泌に否定的影響を及ぼさない限り、N−グルコシル化領域、融合部位を切断するための切断酵素Kex2pの接近を可能にする領域が追加された挿入類似体を本発明の範囲に含む。
【0044】
具体的な様態において、本発明は、配列番号40で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−1タンパク質またはその類似体を提供する。また、本発明は、配列番号40で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−1タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子を提供する。本発明は、配列番号40で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP3−1−1タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号40で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−1タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号41の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えペクターを提供する。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は、配列番号41の遺伝子である。組み換えベクターpYGT3−1−1−GCSFを例示することができる。また、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。pYGT3−1−1−GCSFで形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2004年12月21日付で寄託番号KCTC 10753BPで寄託された。
【0045】
別の具体的な様態において、本発明は、配列番号42で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−2タンパク質またはその類似体を提供する。また、本発明は、配列番号42で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−2タンパク質またはその類似体をコードする遺伝子を提供する。本発明は、配列番号40で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質融合因子TFP3−1−2タンパク質を本発明の範囲に含む。また、本発明は、配列番号42で表されるタンパク質融合因子TFP3−1−2タンパク質をコードするDNA配列またはその相同性、好ましくは75%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性を持つDNA配列を有する遺伝子を本発明の範囲に含む。好ましくは、前記遺伝子は配列番号43の遺伝子である。また、本発明は、前記遺伝子を含む組み換えベクターを提供する。好ましくは、組み換えベクターに含まれる遺伝子は、配列番号43の遺伝子である。組み換えベクターpYGT3−1−2−GCSFを例示することができる。また、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された細胞を提供する。pYGT3−1−2−GCSFで形質転換された大腸菌がKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2004年12月21日付で寄託番号KCTC 10754BPで寄託された。
【0046】
本発明において、タンパク質融合因子タンパク質または遺伝子に対して使用された用語「相同性」とは、野性型アミノ酸配列及び野性型核酸配列との類似程度を示すためのもので、タンパク質の場合、本発明のTFPタンパク質のアミノ酸配列と、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上同一でありうるアミノ酸配列を含む。一般に、タンパク質相同物は、目的のタンパク質と同一な活性部位を含む。遺伝子の場合、本発明のTFPタンパク質をコードするDNA配列と、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上同一でありうるDNA配列を含む。このような相同性の比較は、肉眼、または購入し易い比較プログラムを用いて行うことができる。市販のコンピュータプログラムは2つ以上の配列間の相同性を百分率(%)で計算することができ、相同性(%)は隣接した配列に対して計算できる。
【0047】
難発現性タンパク質の分泌生産のために、本発明によって明らかになったタンパク質融合因子は、難発現性タンパク質の遺伝子と融合して使用され、難発現性タンパク質の分泌生産のためにベクターに挿入される。本発明において、「ベクター」は、適当な宿主細胞においてタンパク質の発現を調節することが可能な調節配列(regulatory sequences)に作動可能に連結されたDNA配列及びその他の遺伝子操作を容易にし、或いはタンパク質の発現を最適化するために導入される配列を含有するDNA作製物を意味する。そのような調節配列には、転写を調節するためのプロモータ(promoter)、転写を調節するために選択的に付加されたオペレーター(operator)、適切なmRNAリボソーム結合部位及び転写/翻訳の終了を調節する配列が含まれる。外来遺伝子を挿入するためのベクターとしては、プラスミド、ウィルス、コスミッドなど様々な形のベクターを使用することができる。ベクターはクローニングベクター及び発現ベクターを含み、クローニングベクターは外来DNAが挿入されて複製できるプラスミドであって、形質転換の際に宿主細胞へ外来のDNAを伝達させる。発現ベクターは、通常、外来DNAの断片が挿入されたキャリアであって、一般に二本鎖のDNAの断片を意味する。ここで、外来DNAは、宿主細胞で天然的に発見されないDNAである異種DNAを意味する。発現ベクターは、一応宿主細胞内にあると、宿主染色体DNAと関係なく複製することができ、挿入された外来DNAが生成できる。当業界に広く知られているように、トランスフェクションされた遺伝子の発現水準を宿主細胞において高めるためには、当該遺伝子が、選択された発現宿主内で機能を発揮する転写及び翻訳発現調節配列に作動可能に連結されなければならない。
【0048】
タンパク質融合因子を含む組み換えベクターへの形質転換と関連して本願明細書に使用された用語「形質転換」とは、DNAを宿主に導入してDNAが染色体外要素として或いは染色体統合完成によって複製可能になることを意味する。本発明に係る形質転換に使用できる宿主細胞は、原核または真核細胞のいずれも含むことができる。DNAの導入効率が高く、導入されたDNAの発現効率が高い宿主が通常用いられる。細菌、例えば大腸菌、シュードモナス、バチルス、ストレプトマイセス、真菌、酵母などの周知の真核及び原核宿主、SF9(Spodoptera frugiperda)などの昆虫細胞、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10などの動物細胞などが使用できる宿主細胞の例である。本発明によって難発現性タンパク質を量産するための宿主細胞は、カンジダ(Candida)やデバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセスポンベエキス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)及びサッカロマイセス(Saccharomyces)属などの酵母類が好ましく使用できる。
【0049】
別の様態において、本発明は、前記タンパク質融合因子がTFPタンパク質を用いて難発現性タンパク質を組み換え方法で生産する方法に関するものである。
【0050】
このような難発現性タンパク質の組み換え的生産方法は、前記タンパク質融合因子TFPタンパク質をコードする遺伝子と融合された難発現性タンパク質コード遺伝子が挿入された発現ベクターを製作する段階と、組み換え発現ベクターで形質転換された形質転換体を培養する段階とを含む。具体的に、本発明は、配列番号1、3、5、7、9、40または42で表されるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質、または配列番号10で表される遺伝子によってコードされるアミノ酸配列またはその相同性、好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を持つアミノ酸配列を有するタンパク質を用いて、難発現性タンパク質を組み換え方法で生産する方法に関するものである。好ましくは、配列番号1で表されるタンパク質は配列番号2で表される遺伝子によってコードされ、配列番号3で表されるタンパク質は配列番号4で表される遺伝子によってコードされ、配列番号5で表されるタンパク質は配列番号6で表される遺伝子によってコードされ、配列番号7で表されるタンパク質は配列番号8で表される遺伝子によってコードされ、配列番号40で表されるタンパク質は配列番号41で表される遺伝子によってコードされ、配列番号42で表されるタンパク質は配列番号43で表される遺伝子によってコードされる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0052】
<実施例1>酵母インベルターゼ欠如変異株の製造
難発現性タンパク質に対するタンパク質融合因子を超高速で選別するために、酵母インベルターゼをレポーターとして用いて、スクロース培地における細胞成長の評価を利用した自動選別システムを製造した。
【0053】
ベクターに含まれたインベルターゼ遺伝子を形質転換後の選別レポーター遺伝子として使用するために、インベルターゼ活性が欠如された酵母が必要であり、このために染色体のINV2遺伝子を欠失させた。遺伝子欠失誘導用カセットを製造するために、プラスミドpRB58(Carlson et al., Cell, 1982, 20, 145)を制限酵素EcoRIとXhoIで処理してINV2コード遺伝子を回収し、pBluescript KS+(Stratagene社製、米国)のEcoRI/XhoI部位に導入してpBIΔBXを製造した。図1に示すように、pBIΔBXに含まれたINV2遺伝子のHindIII−XbaI部位に190bpの繰り返し配列(Tc190)を両末端に含むURA3遺伝子を挿入してpBIUを製造した。pBIUを制限酵素EcoRI−XhoIで処理した後、サッカロマイセス・セレヴィシェY2805Δgal1(Mat a ura3 INV2 pep4::HIS3 gal1 can1)菌株(SK Rhee, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)に形質転換してウラシルのない選択培地で形質転換体Y2805Δgal1Δinv2U(Mat a inv2::URA3 pep4::HIS3 gal1 can1)を選別した。
【0054】
選別された形質転換体のインベルターゼ活性が消滅されたか否かを確認するために、単一コロニーを、グルコースとスクロースを単位炭素源として供給したそれぞれの培地で培養した結果、グルコースでは正常的に成長し、スクロースでも対照区に比べて成長が非常に遅かったが成長することができた。ところが、培養途中で培地に分泌されるインベルターゼの量を調査するために、INV2+菌株とΔinv2菌株を培養し、培養上澄液に存在するタンパク質をSDS−PAGEで分離した後、ゲルをスクロース溶液で30分間反応し、その後TTC(2,3,5−triphenyl−tetrazolium chloride)で発色したザイモグラム分析を行った結果(図2)、Δinv2菌株の場合、大部分のインベルターゼ活性が消失されたことが分かった。ところが、スクロース培地で非常に遅いが成長する問題があるが、これはミトコンドリアの機能によるグルコース新生(gluconeogenesis)によって細胞が部分的に成長するものと推定された。したがって、このような問題を除去するために、ミトコンドリア電子伝達系作用抑制物質であるアンチマイシンAを添加した後、インベルターゼの発現がない菌株の成長を確認した結果、菌株の成長を完全に抑制することができた(図3)。
【0055】
選別されたY2805Δgal1Δinv2U(Mat a inv2::URA3 pep4::HIS3 gal1 can1)菌株にヒトcDNAライブラリーを含有するURA3ベクターを再形質転換するためには、INV2遺伝子欠失用として使用したURA3遺伝子を除去する必要があるが、このために、培養細胞を5−フッ化オロチン酸(5−FOA)培地で培養してURA3遺伝子がポップアウト(pop−out)された菌株Y2805Δgal1Δinv2(Mat a ura3 inv2::Tc190 pep4::HIS3 gal1 can1)を選別した(図1)。染色体上のINV2遺伝子が予想したように欠失され、URA3遺伝子がさらにポップアウトされたか否かをサザンブロット(Southern blotting)法によって確認した(図4)。Y2805菌株の染色体をEcoRIで処理し、INV2遺伝子をプローブとして使用する場合、約4.3kbの切片が確認されるが、URA3遺伝子が挿入された後(Y2805Δgal1Δinv2U)、約5.0kbに増加されてからURA3遺伝子がポップアウトされると(Y2805Δgal1Δinv2)、約3.7bkbに減少する。図4の結果から分かるように、INV2遺伝子が予想したように正確に欠失され、URA3遺伝子がポップアウトされたことを確認した。
【0056】
<実施例2>インベルターゼとの融合による自動選別システムの確認
インベルターゼ遺伝子が欠失された菌株でインベルターゼと融合されたタンパク質の発現によってスクロース培地における自動選別を確認するために、酵母でよく発現されるヒトタンパク質である血清アルブミン(HSA)と難発現タンパク質であるヒトインターロイキン−2(IL−2)を利用した。
【0057】
アルブミンとインベルターゼが融合されたベクターpGHSA−INV2を作るための過程として、まずヒト血清アルブミン遺伝子の両末端にSfiI認識配列を挿入するために、SfiI認識配列を有する重合酵素連鎖反応用センスプライマーJH97(Sfi−HSA−forward primer)(配列番号11)とアンチセンスプライマーJH119(Sfi−HSA−reverse primer)(配列番号12)を使用し、pYHSA5(Kang et al., J. Microbiol. Biotechnol., 1998, 8, 42)を鋳型とし、Pfu重合酵素(Stratagene社製、米国)を用いて重合酵素連鎖反応(94℃で5分間1回;94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で2分間反応を25回;72℃で7分間1回)してアルブミン遺伝子約1.8kbの切片を得た。また、プライマーJH99(Sfi−INV−forward)(配列番号13)及びJH100(SalI−INV−reverse primer)(配列番号14)を用いてpRB58を鋳型としてインベルターゼ遺伝子を同一の方法で重合酵素連鎖反応して回収した後、制限酵素SfiI/SalIで処理し、PstI/SfiIで処理されたアルブミン遺伝子と共にPstI/SalIで処理されたpBluescript(Stratagene社製、米国)に挿入した。pYHSA5を制限酵素SacI/PstIで処理してGALプロモータ及びアルブミン遺伝子の一部を含む切片と、以前に製造されたアルブミン遺伝子の一部及びインベルターゼ遺伝子を含有するPstI/SalI切片とを、さらにSacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクター(Choi et al., Appl Microbiol Biotechnol., 1994, 42, 587)に同時に挿入してpGHSA−INV2を製造した。
【0058】
インターロイキン−2とインベルターゼの融合発現ベクターを製造するために、プライマーJH106(Sfi−IL2−forward primer)(配列番号15)及びJH107(Sfi−IL2−reverse primer)(配列番号16)を用いてpT7−hIL−2(JK Jung, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)を鋳型として重合酵素連鎖反応し、回収されたインターロイキン遺伝子をpBluescript(Stratagene社製、米国)のEcoRV部位に挿入してpBKS−IL2を製造した。pBKS−IL2をSfiIで処理した切片と、pGHSA−IVN2をSacI−SfiIで処理して得たGALプロモータ及びINV分泌シグナルを含有する切片とを、SacI/SfiIで処理されたpGHSA−INV2に同時に挿入してpGIL2−INV2を製造した。
【0059】
アルブミンとインベルターゼの融合タンパク質を発現するベクターpGHSA−INV2、インターロイキン−2とインベルターゼの融合タンパク質を発現するPGIL2−INV2、及びインベルターゼのみを発現するpRB58を、インベルターゼ遺伝子が欠失されてスクロース培地で成長することができない菌株(Y2805Δinv2)にそれぞれ形質転換し、グルコースを炭素源として添加した培地(UD)とスクロースを炭素源として添加した培地(YPSA)に塗抹して細胞の成長有無を観察した(図5)。インベルターゼを正常的に発現するベクターpRB58の場合には、2つの炭素源で全て正常的に成長し、また、インベルターゼが酵母でよく発現されるタンパク質であるアルブミンと融合された場合(pGHSA−INV2)にも、やはり2つの炭素源を全て良く利用して成長した。ところが、酵母で発現され難いタンパク質であるインターロイキン−2の場合(pGIL2−INV2)には、グルコース培地では正常的に成長するが、スクロース培地では全く成長しなかった。これは、予想したように、インターロイキン−2の細胞内における発現が不可能であって、これに融合されたインベルターゼも発現できないためであると判断された。したがって、インベルターゼ遺伝子が欠失されてスクロース培地で成長することができない菌株(Y2805Δinv2)に形質転換したインベルターゼ遺伝子の発現如何を用いて自動選別が可能であることが分かった。
【0060】
<実施例3>難発現タンパク質ヒトインターロイキン−2を用いたタンパク質融合因子選別ベクターの製造
インターロイキン−2とインベルターゼとが融合されたベクターpGIL2−INV2を用いて融合タンパク質の分泌を誘導することが可能な適正のタンパク質融合因子を確保するために、3つのリーディングフレームを有するライブラリー製造ベクターpYHTS−F0、F1及びF2を製造した(図6)。
【0061】
3つのリーディングフレームとBamHI認識配列を有する重合酵素連鎖反応用センスプライマーJH120(BamHI−IL2−1−forward primer)(配列番号17)、JH121(BamHI−IL2−2−forward primer)(配列番号18)およびJH122(BamHI−IL2−3−forward primer)(配列番号19)とアンチセンスプライマーJH123(INV−1−reverse primer)(配列番号20)を使用しpGIL2−INV2を鋳型として用いて、Pfu重合酵素(Stratagene社製、米国)を用いた重合酵素連鎖反応(94℃で3分間1回;94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間反応を25回;72℃で7分間1回)してインターロイキン−2と一部のインベルターゼ遺伝子を含む約1.2kbの切片をそれぞれ得た。さらにJH124(INV−forward primer)(配列番号21)とJH95(INV−2−reverse primer)(配列番号22)をプライマーとして使用しPGIL2−INV2を鋳型として用いて同一の条件で重合酵素連鎖反応して、一部のインベルターゼ遺伝子を含む約0.9kbの切片をそれぞれ得た。それぞれの遺伝子をアガロースゲルから回収した後、3つのリーディングフレームを有する1.2kb切片3種類と0.9kb切片をそれぞれ混合してセンスプライマーJH120(配列番号17)、JH121(配列番号18)及びJH122(配列番号19)とアンチセンスプライマーJH95(配列番号22)を用いて2次重合酵素連鎖反応を行い、アガロースゲル電気泳動によってそれぞれ2.1kb切片3種類を回収した。回収された3種の2.1kb切片を制限酵素BamHIとSalIで処理し、BamHIとSalIで処理されたpGIL2−INV2にそれぞれ結合してpYHTS−F0、F1及びF2を製造した。
【0062】
<実施例4>酵母遺伝体からの適合型タンパク質融合因子ライブラリーの製造
タンパク質融合因子ライブラリーを製造するために、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェY2805(SK Rhee, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)及びハンゼヌラポリモルファDL−1(ATCC26012)由来の染色体DNAを用いた。それぞれの染色体を制限酵素Sau3AIで部分切断した後、アガロースゲルから0.5〜1.0kbサイズのDNAを回収し、その後BamHIで切断し、子牛腸由来のホスファターゼで処理したpYHTS−F0、F1及びF2混合ベクターに連結した(図6)。連結されたDNAを大腸菌DH5αに形質転換し、アンピシリン含有LB培地(1%バクトトリプトン、0.5%酵素抽出物、1%NaCl)に塗抹した後、37℃で一日中培養した。それぞれの染色体から製造されたライブラリーDNAを用いて約5×104細胞の形質転換体ライブラリーを確保した。全ての形質転換体を滅菌蒸留水を用いて回収し、回収された菌体からライブラリーDNAをプラスミド抽出キット(Bioneer社製、韓国)を用いて分離した。
【0063】
<実施例5>難分泌性タンパク質ヒトインターロイキン−2に適した適合型タンパク質融合因子の自動選別
前述した方法で製造されたライブラリーDNAを酵母サッカロマイセス・セレヴィシェY2805Δgal1Δinv2(Mat a ura3 inv2::Tc190 pep4::HIS3 gal1 can1)に酢酸リチウム方法(Hills et al., Nucleic Acids Res. 1991, 19, 5791)で形質転換した後、ウラシルが欠乏されたUD最小培地(0.67%アミノ酸が欠乏された酵母窒素基質、適正濃度の各種アミノ酸混合体、2%グルコース)、及びスクロースとアンチマイシンAを含む複合培地YPGSA(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%スクロース、0.3%ガラクトース、1μg/mLアンチマイシンA)にそれぞれ塗抹して30℃で5日間培養した。培養後、各培地で形成された菌体の数は、表1(タンパク質融合因子導入前後の形質転換体数の比較)に表示したとおりである。ライブラリーの製作のために使用したベクター(pYHTS−F0、F1及びF2)のみを形質転換した場合には、グルコース培地では約1×104程度の菌体が形成されたが、炭素源としてスクロースを使用した培地では予想したように全く成長しなかった。ところが、酵母遺伝体ライブラリーを挿入した場合には、約11個の形質転換体が成長して、挿入されたタンパク質融合因子の助けによりインベルターゼが分泌されたことを予想することができた。
【0064】
【表1】
【0065】
<実施例6>タンパク質融合因子の分析
スクロース培地で成長した各菌体をYPD(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース)培地で24時間培養した後、回収された細胞を破砕し、その後導入されたプラスミドを分離し、大腸菌に再形質転換した。形質転換された大腸菌からプラスミドを分離した後、制限酵素処理して挿入された遺伝子の有無を確認し、塩基配列分析によって4種の相異なる配列を有する遺伝子が挿入されてタンパク質融合因子の役割をすることが分かった(表2:スクロース培地で成長した菌体から分離されたプラスミドに挿入された新規のタンパク質融合因子)。
【0066】
【表2】
【0067】
6−1.タンパク質融合因子1(TFP1)
本発明者らは、インターロイキン−2とインベルターゼとの融合タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることが可能なタンパク質融合因子1(TFP1)(配列番号2)を選別した。TFP1遺伝子は、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ遺伝子Yar066wの部分配列と同一である。Yar066w遺伝子は、α1,4−グルカングルコシダーゼ(STA1)遺伝子と類似であり、これによりコードされるタンパク質はグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−アンカー(glycosyl−phosphatidylinositol (GPI) anchor)を含有したタンパク質である。Yar066w遺伝子は、未だ機能が知られていない遺伝子であり、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェの機能が知られていない遺伝子であるYol155c、Yil169cとそれぞれ70.3%、72.7%の配列類似性を示す。Yar066w遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のうち、インターロイキンと融合されたアミノ酸の数は、全体203個中の105個であり、タンパク質分泌のためのシグナルとして23個のアミノ酸の分泌シグナルを含有しており、N−グルコシル化部位とセリン、アラニンリッチ(serine−rich)配列を含有している。
【0068】
6−2.タンパク質融合因子2(TFP2)
本発明者らは、インターロイキン−2とインベルターゼとの融合タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることが可能なタンパク質融合因子2(TFP2)(配列番号4)を選別した。TFP2遺伝子は、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ遺伝子Yar026cの部分配列と同一である。Yar026c遺伝子は、未だ機能が知られていない遺伝子である。Yar026c遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のうち、インターロイキン−2と融合されたアミノ酸の数は、全体169個中の117個であり、タンパク質分泌のためシグナルとして19個のアミノ酸の分泌シグナルを含有しており、3個のN−グルコシル化部位を含有している。
【0069】
6−3.タンパク質融合因子3(TFP3)
本発明者らは、インターロイキン−2とインベルターゼとの融合タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることが可能なタンパク質融合因子3(TFP3)(配列番号6)を選別した。TFP3遺伝子は、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ遺伝子Yjl158c(PIR4/CIS3)の部分配列と同一である。Yjl158c遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞壁に共有結合されたO−マンノシル化されたタンパク質である。Yjl158c遺伝子は、細胞分裂に関与するCik1欠如変異株に対するマルチコピーサプレッサ(multicopy suppressor)として知られている遺伝子である。Yjl158c遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のうち、インターロイキン−2と融合されたアミノ酸の数は、全体227個中の104個であり、タンパク質分泌のためのシグナルとして23個のアミノ酸のプレ(pre)分泌シグナルと41個のプロ(pro)分泌シグナルを含有しており、Lys−ArgからなるKex2p切断配列を含有しており、PIR繰り返し配列を持っている。
【0070】
6−4.タンパク質融合因子4(TFP4)
本発明者らは、インターロイキン−2とインベルターゼとの融合タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることが可能なタンパク質融合因子4(TFP4)(配列番号8)を選別した。TFP4は、酵母ハンゼヌラポリモルファ由来の遺伝子であり、機能は知られていないが、インターロイキン−2と融合されたアミノ酸の数は50個であり、この中の18個のアミノ酸からなるタンパク質分泌シグナルを含んでいる。
【0071】
<実施例7>培地に分泌された融合タンパク質の分析
スクロース培地で成長した菌体が分泌するタンパク質を分析するために、前述した4つのタンパク質融合因子を含有する菌体をYPDG培地(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース、0.3%ガラクトース)で40時間培養した後、細胞を除去し、残った培養上澄液に溶解されている全体タンパク質をアセトン(最終濃度40%)に沈澱させた後、SDS−PAGEを行ったが、インベルターゼが融合された状態では、インベルターゼ部分の過多なグルコシル化により単一タンパク質バンドを確認し難いという問題があったため、各ベクター(pYHTS−TFP1、2、3及び4)からインベルターゼを除去し、インターロイキン−2遺伝子に翻訳終結コドンを挿入した。このために、プライマーJH132(SacI−GAL−forward primer)(配列番号23)及びJH137(IL2−Term−reverse primer)(配列番号24)を用いてそれぞれのベクターからGALプロモータ、各TFP及び翻訳終結コドンを含有したインターロイキン−2遺伝子を含む切片を得るために、各ベクター(pYHTS−TFP1、2、3及び4)を重合酵素連鎖反応した後、回収された遺伝子切片をSacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−TFP1、2、3及び4を製造した。製造された4種のIL−2発現ベクターを酵母に形質転換した後、単一コロニーを確保し、前述したような方法で培養し、培養上澄液に分泌されたタンパク質をSDS−PAGEして分析した(図7)。図7の結果から分かるように、pYIL−TFP2を除いたそれぞれのベクターを含有した菌体の培養上澄液から、タンパク質のサイズが相異なる強いバンドが観察された。これらは、IL−2抗体を用いたウェスタンブロット法(図7)でバンドと確認され、それぞれの分泌誘導融合タンパク質とIL−2とが融合された状態であることを確認することができた。ところが、SDS−PAGE上で現れた実際サイズは、それぞれのタンパク質融合因子及びIL−2遺伝子のサイズから類推されるタンパク質のサイズとは相当な差異を示した。これはグルコシル化による差異であると推定されるので、N−グルコシル化によってタンパク質に付加された糖を除去するために、各タンパク質にEndo−H酵素を処理した後、さらにSDS−PAGE分析した(図8)。タンパク質配列上、TFP1には1つのN−グルコシル化誘発配列(28〜30番目のアミノ酸)があり、TFP3はO−グルコシル化誘導配列を含有しており、TFP4にはグルコシル化誘導配列がなかった。予想したように、pYIL−TFP1の場合には、Endo−H処理の後、分子量が相当減少することが分かった。したがって、pYIL−TFP1の場合には、発現されたタンパク質がN−グルコシル化されていることを確認することができたが、pYIL−TFP3の場合にはO−グルコシル化によるグルコシル化なので、Endo−H処理を施しても分子量の変化がなく、pYIL−TFP4の場合にも、何の変化がなかった。
【0072】
<実施例8>細胞内におけるKex2p切断によるオーセンティック(authentic)なタンパク質の生産
本発明者らは、実施例7で使用したベクターが各タンパク質融合因子とIL−2とが融合された状態で培地に分泌されるので、ヒトインターロイキン−2と同一な状態のオーセンティックなタンパク質を生産するために、細胞内でタンパク質融合因子を自動的に除去することができるよう、融合因子とIL−2との間に、酵母が自体的に生産する蛋白分解酵素Kex2pが認識し得る切断部位(Leu−Asp−Lys−Arg)をそれぞれ挿入した。pYIL−TFP1にKex2p切断配列を組み込むために、pYIL−TFP1を鋳型とし、プライマーJH132(配列番号23)及びHY22(TFP1−LDKR−reverse primer)(配列番号25)、HY23(TFP1−LDKR−forward primer)(配列番号26)及びJH137(配列番号24)を用いてそれぞれ重合酵素連鎖反応し、電気泳動の後、ゲルから回収されたGALプロモータ及びTFP1を含有する切片とインターロイキン−2遺伝子を含有する切片とを鋳型とし、JH132(配列番号23)及びJH137(配列番号24)を用いて2次重合酵素連鎖反応した。得られたGALプロモータ−TFP1−IL2切片を制限酵素SacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−KRTFP1を製造した。また、pYIL−TFP2にKex2p切断配列を組み込むために、pYIL−TFP2を鋳型とし、前述の方法と同様の方法でプライマーJH132(配列番号23)及びHY20(TFP2−LDKR−reverse primer)(配列番号27)、HY21(TFP2−LDKR−forward primer)(配列番号28)及びJH137(配列番号24)を用いてそれぞれ重合酵素連鎖反応し、回収された2つの遺伝子切片を鋳型とし、JH132(配列番号23)及びJH137(配列番号24)を用いて2次重合酵素連鎖反応した後、得られた切片を制限酵素SacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−KRTFP2を製造した。また、pYIL−TFP3にKex2p切断配列を組み込むために、pYIL−TFP3を鋳型とし、前述の方法と同様の方法でプライマーJH132(配列番号23)及びHY17(TFP3−LDKR−reverse primer)(配列番号38)、HY18(TFP3−LDKR−Forward primer)(配列番号39)及びJH137(配列番号24)を用いてそれぞれ重合酵素連鎖反応し、回収された2つの遺伝子切片を鋳型とし、JH132(配列番号23)及びJH137(配列番号24)を用いて2次重合酵素連鎖反応した後、得られた切片を制限酵素SacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−KRTFP3を製造した。また、pYIL−TFP4にKex2p切断配列を組み込むために、pYIL−TFP4を鋳型とし、前述の方法と同様の方法でプライマーJH132(配列番号23)及びHY24(TFP4−LDKR−reverse primer)(配列番号29)、HY25(TFP4−LDKR−Forward primer)(配列番号30)及びJH137(配列番号24)を用いてそれぞれ重合酵素連鎖反応し、回収された2つの遺伝子切片を鋳型とし、JH132(配列番号23)及びJH137(配列番号24)を用いて2次重合酵素連鎖反応した後、得られた切片を制限酵素SacI/SalIで処理し、SacI/SalIで処理されたYEGα−HIR525ベクターに挿入してpYIL−KRTFP4を製造した。
【0073】
製造された4つのベクターのうち、pYIL−KRTFP1、pYIL−KRTFP3及びpYIL−KRTFP4をそれぞれ酵母2805Δgal1Δinv2菌株に導入して単一コロニーを選別してYPDG培地(1%酵母抽出物、2%ペプトン、2%グルコース、0.3%ガラクトース)で40時間培養した後、細胞を除去し、残った培養上澄液をSDS−PAGEした結果、図9に示すように、ヒトインターロイキン−2と同じサイズのタンパク質が分泌生産されることを確認した。ヒトインターロイキン−2を分泌生産する3つのタンパク質融合因子のうちTFP1が最も効率よくオーセンティックなインターロイキン−2を分泌生産することができることを確認した。
【0074】
前記ベクターpYIL−KRTFP1、pYIL−KRTFP2、pYIL−KRTFP3及びpYIL−KRTFP4は、国際寄託機関である韓国大田市儒城區魚隠洞52番地所在のKCTC(Korean Collection for Type Cultures)に2003年11月11日付でそれぞれ受託番号KCTC 10544BP、10545BP、10546BP及び10546BPで寄託した。
【0075】
<実施例9>タンパク質融合因子1(TFP1)の特性分析
IL−2を最も効率よく分泌生産するタンパク質融合因子としてTFP1を選別し、TFP1配列に存在する分泌シグナル(a)、N−グルコシル化部位(b)、及びセリン、アラニンリッチ配列(c)、追加配列(d)及び5’−UTR(5’−非翻訳配列)配列(e)の中のどの配列が、難分泌タンパク質であるインターロイキン−2の分泌に絶対的な影響を与えるかを確認するために、図10に示すように、TFP1の各特徴配列を一つずつ除去した欠如遺伝子を製造した。まず、TFP1から配列上別に特徴がない追加配列dを除去するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーJH143(XbaI−TFP1−d−reverse primer)(配列番号31)及びJH132(配列番号23)を用いて重合酵素連鎖反応した。得られたDNA切片は、GALプロモータとTFP1から配列dが除去された切片TFP1−1を含んでいる。TFP1から追加配列(d)及びセリン、アラニンリッチ配列(c)を除去するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーJH142(XbaI−TFP1−c−reverse primer)(配列番号32)及びJH132(配列番号23)を用いて重合酵素連鎖反応し、得られた切片はGALプロモータと配列c及びdが除去された切片TFP1−2を含んでいる。また、TFP1からd、c及びN−グルコシル化部位(b)を除去するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーJH141(XbaI−TFP1−b−reverse primer)(配列番号33)及びJH132(配列番号23)を用いて重合酵素連鎖反応し、得られた切片にはGALプロモータ及び配列c、d及びbが除去された切片をTFP1−3を含んでいる。Kex2p切断部位を含むIL−2遺伝子を製造するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーJH140(SpeI−XbaI−LDKR−forward primer)(配列番号34)及びJH137(配列番号24)を用いて重合酵素連鎖反応した。回収されたIL−2切片を制限酵素SpeI及びSalIで処理した切片と、以前に得られた3つの切片(TFP1−1、2及び3)をそれぞれ制限酵素SacI及びXbaIで処理し、SacI及びSalIで処理されたYEGα−HIR525にそれぞれ挿入して、図10に示すように、pYIL−KRT1−1、pYIL−KRT1−2、及びpYIL−KRT1−3を製造した。TFP1の5’−UTRを除去するために、pYIL−KRTFP1を鋳型とし、プライマーHY38(TFP1−UTR−forward primer)(配列番号35)及びJH137(配列番号24)を用いて重合酵素連鎖反応し、回収された遺伝子をBamHI/SalIで処理した後、SacI/BamHIで処理されたGAL10プロモータと共に、SacI/SacIで処理されたYEGα−HIR525に挿入してpYIL−KRT1−4を製造した(図10)。
【0076】
製造された4種のプラスミドpYIL−KRT1−1、pYIL−KRT1−2、pYIL−KRT1−3及びpYIL−KRT1−4を酵母に形質転換し、単一コロニーを培養して培養上澄液をSDS−PAGE分析した結果、図11に示すように、分泌シグナル、N−グルコシル化及びセリン、アラニンリッチ配列を全て含んでいるpYIL−KRT1−3の場合にのみIL−2バンドが確認され、セリン、アラニンリッチ配列が除去されたpYIL−KRT1−2及びセリン、アラニンリッチ配列及びN−グルコシル化配列が除去されたpYIL−TFP1−1の場合には全くバンドが確認されなかった。したがって、IL−2分泌を効果的に誘導するためには、TFP1に存在する3つの特徴的な配列(分泌シグナル、N−グルコシル化及びセリン/アラニンリッチ配列)が全て必要であることが分かった。また、TFP1の5’−UTRを除去した場合、発現率が約3倍以上増加することを確認した。
【0077】
前記ベクターpYIL−KRT1−3及びpYIL−KRT1−4は、国際寄託機関である韓国大田市儒城區魚隠洞52番地所在のKCTCに2003年11月11日付でそれぞれ受託番号KCTC 10548BP及び10549BPで寄託した。
【0078】
<実施例10>タンパク質融合因子TFP1−4を用いたヒトインターロイキン2の発酵生産
前記ベクターpYIL−KRT1−4を形質転換した組み換え酵母菌株を5Lのジャーファーメンター(jar fermentor)で流加発酵培養によってインターロイキン−2の分泌生産性を調査した。ファーメンターに接種するためのシード培養は、フラスコでシード培地(酵母窒素ベース(アミノ酸不在)6.7%、カザミノ酸0.5%及びブドウ糖2%)を用いて培養し、初期発酵培地としては、発酵培養培地(酵母抽出物4%、ペプトン1%、ブドウ糖2%)を用いて約15OD600まで培養した後、流加培地(酵母抽出物15%、ブドウ糖30%、ガラクトース30%)を細胞の成長速度に応じて異なる供給量で供給して培養した。約64時間培養の後、細胞は約200OD600まで成長し、各時間別に培地試料5μLを取って分泌タンパク質をSDS−PAGE分析した(図12)。結果的に約500mg/Lのインターロイキン−2が培地に分泌生産されたことを標準試料の量と比較して確認した。酵母発酵によって分泌生産されたインターロイキン−2は、アミノ酸末端の分析によってAla−Pro−Thr−Ser−Ser−Serから構成されたことを確認し、ヒトから分泌されるインターロイキン−2と同一であることを確認した。
【0079】
<実施例11>タンパク質融合因子TFP1ないし4を用いたヒトコロニー刺激因子(G−CSF)の分泌能の比較
難分泌タンパク質であるヒトインターロイキン−2を用いて確保された4種のタンパク質融合因子(TFP1、2、3及び4)が別の難分泌ヒトタンパク質の分泌にも効果があるか否かを確認するために、難分泌タンパク質であるヒトコロニー刺激因子(G−CSF)を4種のTFPに融合して酵母における発現及び分泌を確認した。ヒトコロニー刺激因子遺伝子は、ヒトcDNAライブラリーからプライマーJH144(GCSF−forward primer)(配列番号36)及びJH145(GCSF−reverse primer)(配列番号37)を用いて重合酵素連鎖反応によって確保し、確保された遺伝子を制限酵素XbaI/SalIで処理し、pYIL−KRTFP1、2、3及び4のXbaI/SalI部位に挿入してpYGCSF−TFP1、2、3及び4を製造した。
【0080】
ヒトコロニー刺激因子を発現するために製造されたベクターpYGCSF−TFP1、2、3及び4を酵母に形質転換し、単一コロニーを分離して培養した後、培養上澄液をSDS−PAGEし、G−CSF抗体を用いたウェスタンブロット結果は、図13に示したとおりである。それぞれのTFPによってG−CSFが分泌生産され、TFP1及びTFP3によって効率よくG−CSFが分泌生産されることが分かった。特にTFP3の場合、最も効率よくG−CSFを分泌生産することが可能であることを、G−CSFに対する抗体(Chemicon社製、米国)を用いたウェスタンブロットによって確認することができた。したがって、タンパク質の種類によって互いに異なるTFPが最大の分泌効率を示すということが立証されるため、本発明で得た4種のTFPは、IL−2またはG−CSF以外の多様な難分泌性タンパク質の分泌を促進することが可能なタンパク質融合因子として非常に有用であろうと判断された。
【0081】
<実施例12>タンパク質融合因子TFP3を用いたヒトコロニー成長因子(G−CSF)の発酵生産
実施例11で記述されたベクターpYGCSF−TFP3で形質転換された組み換え酵母菌株を5Lのジャーファーメンターで流加発酵培養によってヒトコロニー成長因子の分泌生産性を調査した。ファーメンターに接種するためのシード培養は、フラスコでシード培地(酵母窒素ベース(アミノ酸不在)6.7%、カザミノ酸0.5%、及びブドウ糖2%)を用いて培養し、初期発酵培地としては、発酵培養培地(酵母抽出物4%、ペプトン1%、ブドウ糖2%)を用いて約15OD600まで培養した後、流加培地(酵母抽出物15%、ブドウ糖30%、ガラクトース30%)を細胞の成長速度に応じて異なる供給量で供給して培養した。約64時間培養の後、細胞は約200OD600まで成長し、各時間別に培地試料5μLを取って分泌タンパク質をSDS−PAGE分析した(図14)。結果的に約300mg/Lのヒトコロニー成長因子が培地に分泌生産されたことを標準試料の量と比較して確認した。酵母発酵によって分泌生産されたヒトコロニー成長因子は、アミノ酸末端の分析によってThr−Pro−Leu−Gly−Proから構成されたことを確認して、ヒトから分泌されるコロニー成長因子と同一であることを確認した。
【0082】
<実施例13>タンパク質融合因子TFP3誘導体を用いたヒトコロニー刺激因子(G−CSF)の分泌効率分析
前記実施例11でG−CSFの最適分泌のためにTFP3が最も優れることを確認することにより、酵母サッカロマイセス・セレヴィシェ遺伝体からPCRを用いて、TFP3が由来した遺伝子Yjl158c(CIS3)全体を確保し、図15に示すように、TFP3の長さを漸次変化させたTFP3の誘導体を6種(TFP3−1、2、3、4及びTFP3−1−1(配列番号40)、TFP3−1−2(配列番号42))製造した。最初得られたTFP3は、Yjl158c(CIS3)から得られる227個のアミノ酸中の104個を含有しているが、これを漸次長く作った各TFP3−1(130個のアミノ酸を含む)、TFP3−2(157個のアミノ酸を含む)、TFP3−3(189個のアミノ酸を含む)及びTFP3−4(222個のアミノ酸を含む)を製造し、それぞれをG−CSF遺伝子に連結し、融合部位にKex2p認識部位を挿入した。図15の(A)結果から分かるように、TFP3に比べて26個のアミノ酸を追加したTFP3−1の場合、追加的なN−グルコシル化部位が含まれてG−CSF分泌率がTFP3に比べて約3倍程度増加した。ところが、TFP3の長さをさらに長くした場合には別に効果がなく、むしろTFP3−3及びTFP3−4の場合には分泌効率が低くなる結果を示した。
【0083】
また、図15の(A)に示すように、発現及び分泌効率が増進されるにつれて、Kex2pによって完全に切断されていないTFP3−1−GCSFの融合タンパク質が培地に分泌されることが観察された。これは、2つの遺伝子の融合部位に存在する多数のO−グルコシル化部位に付加された糖により酵素接近が難しいためであると判断され、TFP3にさらに4個のアミノ酸が追加されたTFP3−1−1(134個のアミノ酸を含む)及び13個のアミノ酸が追加されたTFP−1−2(143個のアミノ酸を含む)を製造してG−CSF分泌能及び融合タンパク質減少有無を調査したところ、図15の(B)に示すように、TFP3−1−1及びTFP3−1−2においてG−CSFの分泌量の減少なしに融合タンパク質の量が大幅減少した。したがって、確保されたTFPと目的タンパク質の融合部位の精巧な操作によって目的タンパク質の分泌率をさらに向上させることができることを確認した。
【0084】
本発明において、タンパク質融合因子TFP3−1−1を含有するG−CSF発現ベクターpYGT3−1−1−GCSF及びTFP3−1−2を含有するG−CSF発現ベクターpYGT3−1−2−GCSFは、国際寄託機関である 韓国大田市儒城區魚隠洞52番地所在のKCTCに2004年12月21日付でそれぞれ受託番号KCTC 10753BP及びKCTC 10754BPで寄託した。
【0085】
<実施例14>タンパク質融合因子TFP3を用いた産業酵素リパーゼの分泌生産
タンパク質分泌融合因子TFP3を含有したG−CSF発現ベクターpYGCSF−KRTFP3のXbaI−SalI部位に、pYGA−CAlB14(ES Choi, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)をXbaI−SalIで処理して得たCalB遺伝子を挿入し、pYGT3−CalB14を製造した。各発現ベクターを用いて培養温度によるCalB14の分泌率を比較した。TFP3を用いたCalB14分泌生産の場合、培養適温である30℃でも既存の発現システムに比べて2倍以上の高い分泌率を示した(表3:各発現ベクターを含有した菌株の培養温度によるCalB活性)。
【0086】
【表3】
【0087】
pTGT3−CalB14を含有した組み換え酵母を5Lのジャーファーメンターで流加培養及び適温培養(30℃)してCalB14の分泌程度を分析した。使用培地としては、発酵培養培地(酵母抽出物4%、ペプトン1%、ブドウ糖2%)を使用して約15OD600まで培養した後、流加培地(酵母抽出物15%、ブドウ糖30%、ガラクトース30%)を細胞の成長速度に応じて異なる供給量で供給して培養した。組み換え菌株は、30℃で非常に速く成長することができ、培養温度のシフトなしにも高効率でCalB14を培地に分泌生産することができた。タンパク質の活性及び濃度の分析結果、約1.5〜2.0g/LのCalB14が培地に分泌され、CalB14の経済的な量産が可能であった(図16)。
【0088】
<実施例15>タンパク質融合因子TFP1の活性をピキアパストリスで確認
本発明で開発されたTFPが異なる酵母P.パストリスでも作動するかを確認するために、P.パストリスベクターpPIC9(Invitrogen社製、米国)をBalII−EcoRIで処理してAOXプロモータを除去し、ここにP.パストリス染色体からプライマー[Bg1II−GAP−forward primer(配列番号44)及びGAP−EcoRI−reverse primer(配列番号45)]を用いて確保されたGAP(glyceraldehyde 3−phosphate dehydrogenase)由来のプロモータを挿入してpPIC9−GAPを製作した。このベクターをEcoRI−NotIで処理し、ここにEcoRI−NotIで処理されたMFalpha(mating factor alpha)−GCSF及びTFP1−GCSF遺伝子をそれぞれ挿入して、pGAP−MF−GCSF及びpGAP−TFP1−GCSFを製作した。それぞれのベクターをSalIで処理した後、P.パストリスGS115(Invitrogen社製、米国)に形質転換した。確保された形質転換体をフラスコ培養し、培地に分泌されたG−CSFをSDS−PAGE分析によって最終菌株を選別した。それぞれのベクターが導入された選別菌株をファーメンターで発酵培地(酵母抽出物4%、バクトペプトン1%、グリセロール4%)を用いて回分培養し、時間別に試料を取って、培地に分泌されたG−CSFをSDS−PAGE分析によって確認した(図17)。図17に示すように、TFP1の場合、MFalphaより高い分泌率を示して酵母S.セレヴィシェ由来のTFPがP.パストリスでも非常に効果的に利用できることを確認した。
【0089】
本発明は以下の態様であり得る。
[1]細胞から分泌されない難発現性タンパク質の分泌のためのタンパク質融合因子(TFP)を選別する方法であって、
a)レポータータンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドがインフレームで連結された上記難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを含む自動選別ベクターを製造する段階と、
b)上記自動選別ベクターに第3のポリヌクレオチドを連結して、ライブラリーを製造する段階と、
c)上記ライブラリーで上記レポータータンパク質の活性がない上記細胞を形質転換する段階と、
d)上記細胞を培養する段階と、
e)一個以上の上記細胞から分泌されたレポータータンパク質の活性を検出することでタンパク質融合因子(TFP)を選別する段階とを含み、
上記レポータータンパク質が、インベルターゼ、スクラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マルターゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、及びガラクトシダーゼから成る群から選択される、方法。
[2]さらに、選別されたタンパク質融合因子(TFP)を分離する段階を含む1に記載の方法。
[3]上記難発現性タンパク質が、サイトカイン、血清タンパク質、免疫グロブリン、サイトカインレセプター、ラクトフェリン、インターフェロン、コロニー刺激因子、幹細胞刺激因子、ホスホリパーゼ活性化タンパク質、インスリン、腫瘍怪死因子、成長因子、ホルモン、酵素、抗癌ペプチド、及び抗菌ペプチドから成る群から選択される、1に記載の方法。
[4]上記難発現性タンパク質がヒトインターロイキン−2、ヒトコロニー刺激因子、又はCalB14である1に記載の方法。
[5]上記第3のポリヌクレオチドが、ゲノム性DNAに由来する1に記載の方法。
[6]上記第3のポリヌクレオチドが、cDNAに由来する1に記載の方法。
[7]上記第3のポリヌクレオチドが、動物、植物、又は微生物のDNAに由来する1に記載の方法。
[8]上記第3のポリヌクレオチドが、酵母DNAに由来する7に記載の方法。
[9]上記第3のポリヌクレオチドが、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)のDNAに由来する7に記載の方法。
[10]上記細胞が真核細胞、又は細菌細胞である1に記載の方法。
[11]上記細胞が、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシラス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)の細胞である10に記載の方法。
[12]上記レポータータンパク質が細胞外部に分泌されるタンパク質である1に記載の方法。
[13]上記レポータータンパク質がインベルターゼであり、上記細胞が単一炭素源としてスクロースを含む培地で培養される1に記載の方法。
[14]上記自動選別ベクターに、さらにプロモータ遺伝子が含まれる1に記載の方法。
[15]上記プロモータ遺伝子がGAPDH、PGK、ADH、PHO5、GAL1及びGAL10より成る群から選択される遺伝子に由来する14に記載の方法。
[16]上記自動選別ベクターに、さらに切断認識部位が含まれる1に記載の方法。
[17]上記切断認識部位がKex2pによって認識される16に記載の方法。
[18]上記自動選別ベクターは、プロモータ遺伝子と、翻訳開始及び終結コドンが除去された難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドと、上記難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドにインフレームで連結されたレポータータンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む1に記載の方法。
[19]酵母の細胞から分泌されない難発現性タンパク質の分泌のためのタンパク質融合因子(TFP)を選抜する方法であって、
a)インベルターゼをコードする第2のポリヌクレオチドがインフレームで連結された上記難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを含む自動選別ベクターを製造する段階と、
b)上記自動選別ベクターに第3のポリヌクレオチドを連結して、ライブラリーを製造する段階と、
c)上記ライブラリーで内在性インベルターゼ遺伝子が欠失している酵母変異株を形質転換する段階と、
d)上記形質転換された酵母を単一炭素源としてスクロースを含む培地で培養する段階と、
e)一個以上の上記形質転換された酵母から分泌されたインベルターゼの活性を検出することで上記タンパク質融合因子(TFP)を選別する段階とを含む方法。
[20]タンパク質融合因子(TFP)ライブラリーを製造する方法であって、
a)インベルターゼをコードする第2のポリヌクレオチドがインフレームで連結されたインターロイキン−2をコードする第1のポリヌクレオチドを含む自動選別ベクターを製造する段階と、
b)上記自動選別ベクターに切断した酵母遺伝体断片を連結して、ライブラリーを製造する段階と、
c)上記ライブラリーで上記インベルターゼの活性がない細胞を形質転換する段階と、
d)上記細胞を培養する段階と、
e)インベルターゼの活性を分泌する細胞を選別する段階と、
f)インベルターゼの活性を分泌する上記細胞を回収する段階とを含み、これによって、タンパク質融合因子(TFP)ライブラリーを製造する方法。
[21]さらに回収された各細胞から上記タンパク質融合因子(TFP)をコードするポリヌクレオチドを分離する段階を含む20に記載の方法。
[22]上記切断した酵母遺伝体断片が、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)のDNAに由来する20に記載の方法。
[23]上記インベルターゼが細胞外部に分泌されるタンパク質である20に記載の方法。
[24]上記細胞が単一炭素源としてスクロースを含む培地で培養される20に記載の方法。
[25]上記自動選別ベクターに、さらにプロモータ遺伝子が含まれる20に記載の方法。
[26]上記プロモータ遺伝子がGAPDH、PGK、ADH、PHO5、GAL1及びGAL10より成る群から選択されるポリヌクレオチドに由来する25に記載の方法。
[27]上記自動選別ベクターに、さらに切断認識部位が含まれる20に記載の方法。
[28]上記切断認識部位がKex2pによって認識される27に記載の方法。
[29]上記自動選別ベクターは、プロモータ遺伝子と、翻訳開始及び終結コドンが除去されたインターロイキン−2をコードする第1のポリヌクレオチドと、上記第1のポリヌクレオチドにインフレームで連結されたインベルターゼをコードする第2のポリヌクレオチドとを含む20に記載の方法。
[30]難発現性タンパク質とタンパク質融合因子(TFP)タンパク質とを含む融合タンパク質であって、
該難発現性タンパク質が、細胞から分泌されないものであり、
該タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号40又は配列番号42で表されるアミノ酸配列の一つを含み、該難発現性タンパク質の該細胞からの分泌を誘導するものである、融合タンパク質。
[31]30に記載の融合タンパク質をコードする遺伝子。
[32]上記遺伝子が配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号41、又は配列番号43で表されるヌクレオチド配列の一つを有する、タンパク質融合因子(TFP)タンパク質のためのポリヌクレオチドを含む、31に記載の遺伝子。
[33]31に記載の遺伝子を含むベクター。
[34]上記ベクターが、pYIL−KRTEP1(KCTC 10544BP)、pYIL−KRTEP2(KCTC 10545BP)、pYIL−KRTEP3(KCTC 10546BP)、pYIL−KRTEP4(KCTC 10547BP)、pYIL−KRT1−3(KCTC 10548BP)、pYIL−KRT1−4(KCTC 10549BP)、pYGT3−1−1−GCSF(KCTC 10753BP)、及びpYGT3−1−2−GCSF(KCTC 10754BP)から成る群から選択される33に記載のベクター。
[35]33に記載のベクターで形質転換された細胞。
[36]上記細胞が、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシラス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)から成る群から選択される35に記載の細胞。
[37]難発現性タンパク質の組み換え的生産方法であって、
a)1に記載の方法によって選別されたタンパク質融合因子(TFP)タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドと連結された、上記難発現性タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを製作する段階と、
b)上記発現ベクターで細胞を形質転換する段階と、
c)上記細胞を培養する段階とを含み、上記難発現性タンパク質が生産される組み換え的生産方法。
[38]上記タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号40又は配列番号42で表されるアミノ酸配列の一つを含み、難発現性タンパク質の分泌を誘導するタンパク質である、37に記載の組み換え的生産方法。
[39]上記タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号41、又は配列番号43で表されるヌクレオチド配列の一つを含む遺伝子によってコードされている37に記載の組み換え的生産方法。
【0090】
〔産業上の利用可能性〕
本発明は、現在まで組み換え生産が不可能であり或いは発現率が低かった多様なタンパク質を適合型TFP超高速選別及び利用によって経済的に量産可能にするのに寄与する。
【0091】
〔受託証〕
【0092】
【化1】
【0093】
【化2】
【0094】
【化3】
【0095】
【化4】
【0096】
【化5】
【0097】
【化6】
【0098】
【化7】
【0099】
【化8】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難発現性タンパク質とタンパク質融合因子(TFP)タンパク質とを含む融合タンパク質であって、
該難発現性タンパク質が、細胞から分泌されないものであり、
該タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、配列番号5、配列番号40又は配列番号42で表されるアミノ酸配列の一つを含み、該難発現性タンパク質の該細胞からの分泌を誘導するものである、融合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードする遺伝子。
【請求項3】
上記遺伝子が配列番号6、配列番号41、又は配列番号43で表されるヌクレオチド配列の一つを有する、タンパク質融合因子(TFP)タンパク質のためのポリヌクレオチドを含む、請求項2に記載の遺伝子。
【請求項4】
請求項2に記載の遺伝子を含むベクター。
【請求項5】
上記ベクターが、pYIL−KRTEP3(KCTC 10546BP)、pYGT3−1−1−GCSF(KCTC 10753BP)、及びpYGT3−1−2−GCSF(KCTC 10754BP)から成る群から選択される請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のベクターで形質転換された細胞。
【請求項7】
上記細胞が、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシラス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)から成る群から選択される請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
難発現性タンパク質の組み換え的生産方法であって、
a)(ii) 配列番号5、配列番号40又は配列番号42で表されるアミノ酸配列の一つを含むタンパク質融合因子(TFP)タンパク質をコードするポリヌクレオチドと連結された、(i) 上記難発現性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを製作する段階と、
b)上記発現ベクターで細胞を形質転換する段階と、
c)上記細胞を培養する段階とを含み、上記難発現性タンパク質が生産される組み換え的生産方法。
【請求項9】
上記タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、配列番号6、配列番号41、又は配列番号43で表されるヌクレオチド配列の一つを含む遺伝子によってコードされている請求項8に記載の組み換え的生産方法。
【請求項1】
難発現性タンパク質とタンパク質融合因子(TFP)タンパク質とを含む融合タンパク質であって、
該難発現性タンパク質が、細胞から分泌されないものであり、
該タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、配列番号5、配列番号40又は配列番号42で表されるアミノ酸配列の一つを含み、該難発現性タンパク質の該細胞からの分泌を誘導するものである、融合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードする遺伝子。
【請求項3】
上記遺伝子が配列番号6、配列番号41、又は配列番号43で表されるヌクレオチド配列の一つを有する、タンパク質融合因子(TFP)タンパク質のためのポリヌクレオチドを含む、請求項2に記載の遺伝子。
【請求項4】
請求項2に記載の遺伝子を含むベクター。
【請求項5】
上記ベクターが、pYIL−KRTEP3(KCTC 10546BP)、pYGT3−1−1−GCSF(KCTC 10753BP)、及びpYGT3−1−2−GCSF(KCTC 10754BP)から成る群から選択される請求項4に記載のベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のベクターで形質転換された細胞。
【請求項7】
上記細胞が、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、バシラス(Bacillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、CHO、COS1、COS7、BSC1、BSC40、BMT10、カンジダ(Candida)、デバリオミセス(Debaryomyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリュイベロミセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウィア(Yarrowia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、ペニシリウム(Penicillium)、クモノスカビ(Rhizopus)、又はトリコデルマ(Trichoderma)から成る群から選択される請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
難発現性タンパク質の組み換え的生産方法であって、
a)(ii) 配列番号5、配列番号40又は配列番号42で表されるアミノ酸配列の一つを含むタンパク質融合因子(TFP)タンパク質をコードするポリヌクレオチドと連結された、(i) 上記難発現性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを製作する段階と、
b)上記発現ベクターで細胞を形質転換する段階と、
c)上記細胞を培養する段階とを含み、上記難発現性タンパク質が生産される組み換え的生産方法。
【請求項9】
上記タンパク質融合因子(TFP)タンパク質が、配列番号6、配列番号41、又は配列番号43で表されるヌクレオチド配列の一つを含む遺伝子によってコードされている請求項8に記載の組み換え的生産方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−105675(P2012−105675A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45852(P2012−45852)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2006−549111(P2006−549111)の分割
【原出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【出願人】(505093367)コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2006−549111(P2006−549111)の分割
【原出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【出願人】(505093367)コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (13)
【Fターム(参考)】
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