説明

難着雪電線

【課題】優れた融雪効果、難着雪効果を有し、速やかに軟雪状態で落下させることができる難着雪電線を提供する。
【解決手段】電線1の撚り方向と同一方向に超撥水性テープ3を巻付け、更にその外周に、電線1の撚り方向とは反対方向にスパイラルロッド5を巻回した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に着雪があった場合でも、着雪重量を増加させることなく速やかに軟雪状態にして落下させることができる難着雪電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空電線の着雪による被害を防止するために、着雪を融かして早期に落雪させるようにした融雪電線がある。
【0003】
図6に、従来の融雪電線の一例を示す。この融雪電線80は、電線81に、磁性金属テープの表面に撥水層を形成した発熱・撥水金属テープ82を巻付け、巻付け端部をクランプ85で固定したものである(特許文献1参照)。
【0004】
この融雪電線では、電線81に流れる電流により発熱・撥水金属テープ82の磁性金属テープの部分が鉄損等により発熱して電線の着雪を融かし早期に落雪させて着雪事故を防止する。
【0005】
一方、電線81に流れる電流値が小さく、発熱・撥水金属テープ82の磁性金属テープの部分が融雪に必要な温度に上昇させ得るほどに発熱しない場合は、発熱・撥水金属テープ82の表面に形成された撥水層の作用により、この表面に対する着雪の付着力が低減され、落雪させる。
【特許文献1】特開平6−86436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図6に示す融雪電線80では、以下のような問題があった。
(1)冬期の電線81に流れる電流値が例えば100A未満と小さい低潮流時の温度上昇は、気温(0℃付近)に対して3〜5℃であり、そもそも発熱・撥水金属テープ82の磁性金属テープの部分が融雪に必要な温度に上昇させ得るほどに発熱せず、十分な融雪効果が得られない。
(2)融雪した箇所があっても、氷柱となって電線81に付着してしまうケースがある。
(3)発熱・撥水金属テープ82が形成されていても、新たな雪が電線に付着することで、雪が回転しつつ連続的に成長し、最終的に筒状にまで発達する場合がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記課題を解決し、優れた融雪効果、難着雪効果を有し、速やかに軟雪状態にして落下させることができる難着雪電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の難着雪電線は、電線の撚り方向と同一方向又は逆方向に超撥水性テープを巻付け、更にその外周に、前記電線の撚り方向とは反対方向にスパイラルロッドを巻回したことを特徴とする。
【0009】
前記スパイラルロッドは、Fe、Fe−Ni、Fe−Al、又はFe−Siからなるロッドの上にアルミニウム(以下アルミという)を被覆したスパイラルロッドとすることができる。
【0010】
前記超撥水性テープに代えて、超撥水・導電性テープを用いることもできる。
【0011】
前記スパイラルロッドの断面形状を楕円状、長方形状、角状、又は偏平状にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の難着雪電線によれば、超撥水性テープの超撥水性効果とスパイラルロッドの着雪回転阻止効果の相乗効果により、電線上に付着した雪を軟雪状態にして速やかに落下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
[第1の実施の形態]
【0015】
図1に、本発明に係る難着雪電線の第1の実施の形態を示す。
この難着雪電線10は、アルミ被覆鋼撚線の周囲にアルミ線を撚合わせた電線(ACSR)1に、電線1の撚り方向と同一方向に、テフロン(R)(米国デュポン社の登録商標)等のふっ素樹脂からなる超撥水性テープ3を所定の間隔で巻付け、更に、電線1の撚り方向とは反対方向になるように、スパイラルロッド5をZ巻き(左巻き)に取り付けたものである。なお、電線の撚り方向がZ方向の場合は、S巻きにスパイラルロッドを装着する。
【0016】
スパイラルロッド5の巻き方向は、撚り方向の雪の移動を阻止し、難着雪効果をより一層高めるため、電線の撚り方向に応じてS巻き(右巻き)またはZ巻き(左巻き)としている。
【0017】
この難着雪電線10では、テフロン(R)からなる超撥水性テープ3を電線1に巻き付けることで素線間の溝をなくすと共に、超撥水性機能を有しているので、電線1に付着した雪は、超撥水性テープ3表面で即座に水滴状になり、超撥水性テープ3表面上を撚り方向に沿って回転する。回転した雪はスパイラルロッド5で確実にブロックされることで、軟雪状態になり地上に落下する。
この動作が繰り返して行われるため、電線1表面に付着した雪が成長せず、筒状まで発達することがない。
【0018】
難着雪電線10によれば、以下の優れた効果を奏する。
(1)超撥水性テープ3の超撥水性効果とスパイラルロッド5の着雪回転阻止効果の相乗効果により、電線1上に付着した雪を軟雪状態にして速やかに落下させることができる。
(2)落雪する雪は軟雪状態でしかも少量であるため、電線1の真下あるいはその周辺にある構造物に全く被害を与えることがなく、落雪被害を大幅に低減することが可能となる。
(3)電線1に超撥水性テープ3とスパイラルロッド5を巻き付けて装着する簡易な構成であるため、既設電線に装着する場合の作業を極めて短時間で行える。なお、電線張り替えの場合は、電線製造時に、超撥水性テープ3およびスパイラルロッド5を巻き付けた電線を適用することで対応可能である。
(4)超撥水性テープ3が軽量であり、かつスパイラルロッド5の巻き付けピッチが疎であるため、電線1の弛度が増加しない。
(5)電線1に雪が着雪しないから、電線1の保守管理を削減でき、コストダウンにも寄与することができる。
【0019】
[第2の実施の形態]
図2に、本発明に係る難着雪電線の第2の実施の形態を示す。
この難着雪電線20は、図1に示す難着雪電線10のスパイラルロッド5に代えて、複合スパイラルロッド15を用いている。
【0020】
この複合スパイラルロッド15には、鋼線の上にアルミを被覆したアルミ被覆鋼線(AC線)を用いている。これにより、複合スパイラルロッド15の発熱による融雪効果を発揮させることができる。
また、鋼線の代わりに、Fe(純鉄)、Fe−Ni、Fe−Al、又はFe−Si系合金を使用してもよい。Fe(純鉄)、Fe−Ni、Fe−Al、又はFe−Si系合金を使用することにより、交番磁界をより多く発生させ、一層融雪効果を発揮させることができる。
【0021】
[第3の実施の形態]
図3に、本発明に係る難着雪電線の第3の実施の形態を示す。
この難着雪電線30は、図1に示す難着雪電線10の超撥水性テープ3に代えて、超撥水・導電性テープ23を用いている。
【0022】
超撥水・導電性テープ23は、超撥水性のテフロンテープに金属等を分散させて導電性を付与することにより形成する。また、金属テープの表面にテフロン粉末を分散させることにより形成してもよい。
【0023】
超撥水・導電性テープ23を用いることによって、高電界中でも使用することができるようになる。
【0024】
[第4の実施の形態]
図4に、本発明に係る難着雪電線の第4の実施の形態を示す。
第4の実施の形態の難着雪電線では、図1に示す難着雪電線10の断面が円型形状を有するスパイラルロッド5の断面形状を変更したものである。
即ち、図4(a)の難着雪電線40では、アルミ被覆鋼撚線1bの周囲にアルミ線1aを撚合わせた電線1に、テフロン(R)等のふっ素樹脂からなる超撥水性テープ3を巻付け、更に、断面形状が楕円状のスパイラルロッド30を取り付けている。
【0025】
また、図4(b)の難着雪電線42のようにスパイラルロッドとして長方形状スパイラルロッド32を、図4(c)の難着雪電線45のように角状スパイラルロッド35を、図4(d)の難着雪電線47のように偏平状スパイラルロッド37を用いてもよい。
【0026】
このように第4の実施の形態の難着雪電線では、図1に示す難着雪電線10のスパイラルロッド5の円形状断面形状を他の形状に変形させることにより、より一層落雪に効果的である。
【実施例】
【0027】
縦0.5m、横1.5m、の着雪風洞内で入口から約1.5m離れた箇所に電線サンプルを設置し、その両端にロードセルを配置して、ハイブリッド記録計により着雪量データを収集した。着雪方法としては、自然降雪をベルトコンベアで風洞の風路中に混入させ、風速最大20m/sで電線に吹き付ける方式を用い、室温のコントロールにより雪の含水率を制御した。用いた電線サンプルを表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
各サンプルの着雪成長時間と着雪量との関係を表2及び図5に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2及び図5の結果より、実施例の電線サンプルでは比較例1〜3の電線サンプルと比べて着雪量が極めて小さいことが判明した。これは、実施例のサンプルでは超撥水性テープ3の超撥水性効果とスパイラルロッド5の着雪回転阻止効果の相乗効果により、電線1上に付着した雪を軟雪状態にして速やかに落下させることができるためと考えられる。これより、本発明の効果が実証された。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る難着雪電線の第1の実施の形態を示す側面図である。
【図2】本発明に係る難着雪電線の第2の実施の形態を示す側面図である。
【図3】本発明に係る難着雪電線の第3の実施の形態を示す側面図である。
【図4】本発明に係る難着雪電線の第4の実施の形態を示す断面図であり、(a)は楕円状スパイラルロッド、(b)は長方形状スパイラルロッド、(c)は角状スパイラルロッド、(d)は偏平状スパイラルロッドを用いたものである。
【図5】着雪成長時間と着雪重量との関係を示すグラフである。
【図6】従来の融雪電線の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 電線
3 超撥水性テープ
5 スパイラルロッド
10,20,30,40,42 難着雪電線
45,47,50,60,70 難着雪電線
15 複合スパイラルロッド
23 超撥水・導電性テープ
30 楕円状スパイラルロッド
32 長方形状スパイラルロッド
35 角状スパイラルロッド
37 偏平状スパイラルロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の撚り方向と同一方向又は逆方向に超撥水性テープを巻付け、更にその外周に、前記電線の撚り方向とは反対方向にスパイラルロッドを巻回したことを特徴とする難着雪電線。
【請求項2】
前記スパイラルロッドは、Fe、Fe−Ni、Fe−Al、又はFe−Siからなるロッドの上にアルミニウムを被覆したスパイラルロッドであることを特徴とする請求項1記載の難着雪電線。
【請求項3】
前記超撥水性テープに代えて、超撥水・導電性テープを用いたことを特徴とする請求項1記載の難着雪電線。
【請求項4】
前記スパイラルロッドの断面形状を楕円状、長方形状、角状、又は偏平状にしたことを特徴とする請求項1記載の難着雪電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−101665(P2006−101665A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287222(P2004−287222)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(501304803)株式会社ジェイ・パワーシステムズ (89)
【Fターム(参考)】