説明

難着雪電線

【課題】架空送電線1に流れる電流が小さく、架空送電線1の外周に巻き付けた低キュリー点磁性線材2の発熱量が少ない時でも、着雪を抑制できる難着雪電線を提供する。
【解決手段】架空送電線1の外周に低キュリー点磁性線材2を巻き付け、さらに架空送電線1及び磁性線材2の表面にグリース3を塗布する。グリース3は磁性線材2の間の谷間を埋めるように塗布する。グリース3としてはポリマー系グリースを用いる。磁性線材2の発熱量が少ない時でも、グリース3が効率よく温められ、着雪を抑制できる。グリースの代わりにパラフィンを用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線の外周に巻き付けた低キュリー点磁性線材の発熱により架空送電線に付着した雪を融かすタイプの難着雪電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の難着雪電線は、図2に示すように、架空送電線1の外周に低キュリー点磁性線材2を比較的小さいピッチでらせん状に巻き付けたものである。磁性線材1としては、例えばキュリー点が20℃以下の鉄・ニッケル系合金線にアルミを被覆したもの等が使用される。このような構成にすると、冬季の低温時には、磁性線材2が強磁性を示し、架空送電線1に流れる電流による交番磁界で発熱するので、架空送電線1に付着した雪を融かすことができる。このため着雪が大きく成長するのを防止できる。また夏季の高温時には磁性線材2が常磁性を示し、発熱が抑制される(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−23520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の難着雪電線は、架空送電線に流れる電流が大きい時(電力需要が多い時)は、磁性線材の発熱量も大きく、十分な融雪効果を得ることができる。しかし、架空送電線に流れる電流が小さい時(深夜等の電力需要が少ない時)は、磁性線材の発熱量が少なくなるので、十分な融雪効果が得られず、着雪が発生する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、磁性線材の発熱量が少ない時でも、着雪を抑制できる難着雪電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る難着雪電線は、架空送電線の外周に低キュリー点磁性線材を巻き付け、さらに架空送電線及び磁性線材の表面にグリース又はパラフィンを塗布したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の難着雪電線において、グリース又はパラフィンは磁性線材の間の谷間を埋めるように塗布されていることが好ましい。
【0008】
また本発明の難着雪電線において、グリースとしてはポリマー系グリース、シリコン系グリース、フッ素系グリースを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、架空送電線及び磁性線材の表面にグリース又はパラフィンが塗布されているので、グリース又はパラフィンの撥水性により雪が滑りやすくなると共に、磁性線材の発熱量が少ない時でもグリース又はパラフィンが温められているため、雪が凍り付き難くなる。このため、雪が滑落しやすく、大きな着雪に成長するのを防止できる。
【0010】
特に、グリース又はパラフィンを磁性線材の間の谷間を埋めるように塗布しておくと、難着雪電線の表面積が小さくなり、熱が逃げにくくなるので、磁性線材の発熱量が少ない時でも、磁性線材の発生熱でグリース又はパラフィンを効率よく温めることができ、融雪効果、凍結防止効果を向上させることができる。
【0011】
また、ポリマー系グリースを用いると、グリースが剥がれ落ち難いので、長期にわたって難着雪効果を維持することができる。またポリマー系グリースは無害であることから万一、雪と一緒に剥がれ落ちたとしても環境を汚染するおそれがない。
【0012】
また、シリコン系グリースやフッ素系グリースを用いると、特に撥水性が高いので、より確実に難着雪効果を得ることができる。また、シリコン系グリースやフッ素系グリースは、耐熱温度が高いため、夏場、磁性線材の発熱により電線が高温になっても、グリースが垂れ落ちるおそれがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施形態を示す。この難着雪電線は、架空送電線1の外周に低キュリー点磁性線材2を巻き付けると共に、架空送電線1及び磁性線材2の表面を覆うようにグリース3を塗布したものである。グリース3は、らせん状に巻き付けられた磁性線材2の間の谷間を埋めるように塗布されている。グリース3は塗布装置で塗布することもできるが、作業員が手塗りで塗布することもできる。また既設の難着雪電線に塗布することも可能である。
【0014】
上記のようにグリース3を塗布すると、難着雪電線の表面積が小さくなり、熱が逃げにくくなるので、磁性線材2の発熱量が少ないときでも、グリース3が効率よく温められ、雪が凍り付くのを防止できると共に、グリース3の撥水性により雪を滑落させることができる。したがって着雪を抑制できる。
【0015】
グリース3としては、ベースオイルに例えばポリブデン含有液状ポリマーを用いたポリマー系グリースを使用するとよい。ポリマー系グリースは剥がれ落ち難いというメリットがある。またポリマー系グリースは鉱油系グリースと異なり、無害であるので、万一、雪と共に剥がれ落ちたとしても環境を汚染するおそれがなく、特に好適である。
【0016】
また、グリース3としては、シリコン系グリースやフッ素系グリースを用いることもできる。
【0017】
また、グリースの代わりに、グリースと似た性状を示す材料であるパラフィンを用いることも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る難着雪電線の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】従来の難着雪電線の側面図。
【符号の説明】
【0019】
1:架空送電線
2:低キュリー点磁性線材
3:グリース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空送電線の外周に低キュリー点磁性線材を巻き付け、さらに架空送電線及び磁性線材の表面にグリース又はパラフィンを塗布したことを特徴とする難着雪電線。
【請求項2】
グリース又はパラフィンが磁性線材の間の谷間を埋めるように塗布されていることを特徴とする請求項1記載の難着雪電線。
【請求項3】
グリースとしてポリマー系グリース、シリコン系グリース又はフッ素系グリースを用いたことを特徴とする請求項1又は2記載の難着雪電線。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−147017(P2008−147017A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332848(P2006−332848)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】