説明

難黄変性軟質ポリウレタンフォーム及びそれを成形してなる成形品

【課題】窒素酸化物(NOX)に起因する黄変を低減させた軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオールと有機ポリイソシアネートとを発泡剤、整泡剤、触媒及び添加剤の存在下に反応させて得られるポリウレタンフォームであって、添加剤として、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイトを、ポリオール100質量部に対して0.5〜7.0質量部配合した難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。該難黄変性軟質ポリウレタンフォームを成形してなる衣料用、サニタリー用又は化粧用成形品。本発明の難黄変性軟質ポリウレタンフォームは、NOXに起因する黄変を経済的かつ有効に抑制したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難黄変性軟質ポリウレタンフォームに関する。詳細には、本発明は、窒素酸化物(NOX)に起因する黄変を低減させた軟質ポリウレタンフォーム及びそれを成形してなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームは、良好なクッション性、通気性、吸音性を有することから広範囲な分野で使用されている。特に、ブラジャーパッド、肩パッド等の衣料用フォーム、紙おむつ、ナプキン等のサニタリー用フォーム、パフ等の化粧用フォーム等の白色外観が要求されるものについては特に、またその他の雑貨用途においても黄変しない又は黄変し難い、無黄変又は難黄変性の軟質ポリウレタンフォームが求められている。
【0003】
従来、軟質ポリウレタンフォームは、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを発泡剤、整泡剤、触媒及び添加剤の存在下に反応させることによって製造されてきた。有機ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)のような芳香族系ポリイソシアネートが、相対的に反応し易いことから用いられるのが一般的である。しかし、TDIのような芳香族系ポリイソシアネートを用いて得られたウレタンフォームは、日光等の紫外線の影響を受け、時間の経過とともにフォームが黄色に変色するという問題があった。
【0004】
このような黄色に変色する問題を解決するために、TDIを用いた軟質ポリウレタンフォームにおいて、光(紫外線)を吸収することにより、光劣化を開始する活性種が励起され、ラジカルが生成するのを防止する役目を持つ紫外線吸収剤を多量に用いることによって黄変が生じ難い難黄変フォームが製造されている。しかし、紫外線吸収剤を多量に用いても、フォームの黄変は、完全には解決されず、依然問題として残されたままである。
【0005】
また、軟質ポリウレタンフォームは、その加工過程で高温に曝されるため熱等によって自動酸化を受け易い。このような酸化による黄変を防止するために、ポリウレタン原料中に亜リン酸エステルを酸化防止剤として用いること(例えば特許文献1を参照)や、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を他の添加剤と併用すること(例えば特許文献2を参照)が提案されている。しかし、ポリウレタンフォームの黄変に関しては、上記光(紫外線)や熱等以外にもNOXが原因になると考えられており、これらの特許文献のいずれもNOXに対する耐劣化性に関しては、満足を与えるものではない。
【0006】
さらに、製造時のポリオール原料等にフェノール系酸化防止剤としてのジブチルクレゾール(BHT)が含まれており、このBHTによるフォーム自体の変色(黄変)の問題もあった。即ち、ポリウレタン原料としてBHTを含む配合で発泡を行った場合に、発泡した後のフォーム中にもBHTが残存することとなり、このBHTが大気中に含有されるNOxと反応してポリウレタンフォーム自体を黄変させるのである。
【0007】
また、無黄変または難黄変性の軟質ポリウレタンフォームを得るために、ポリウレタン原料のポリイソシアネート成分として、脂環族ポリイソシアネートを使用することも提案されている(例えば特許文献3を参照)。脂環族ポリイソシアネートを用いることにより、確かに黄変の抑制効果は得られる。しかしながら、脂環族ポリイソシアネートは高価であることから、ポリウレタンフォームのコスト上昇を招くという問題があった。また、脂環族ポリイソシアネートを用いた場合に、反応性に劣り、発泡に至るまで時間を要することから、反応を促進するために強力な触媒を使用したり、条件を整える等しなければならず、反応を調整するのが困難であり、生産性に欠けるという問題もあった。
【特許文献1】特公昭36−20041号公報
【特許文献2】特開平2−22360号公報
【特許文献3】特開2003−261643号公報
【0008】
このように、現状では、ポリウレタンフォームにおいてNOxに起因する黄変に対し、経済的かつ有効な黄変防止技術が提供されておらず、NOxによる黄変が抑制された軟質ポリウレタンフォームが強く望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記事情に鑑み、NOXに起因する黄変を経済的かつ有効に抑制した軟質ポリウレタンフォーム及びそれを成形してなる成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、軟質ポリウレタンフォームの製造において、特定の亜リン酸エステル系添加剤を用いることにより、NOXに起因する黄変が極めて改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。また、当該特定の亜リン酸系添加剤と紫外線吸収剤とを併用することにより、NOXに対して有効な耐黄変性を有するばかりでなく、また、光(紫外線)・熱等に対しても有効な耐黄変性を有するポリウレタンフォームを得ることが可能であることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして本発明によれば、以下の1〜6の発明が提供される。
1.ポリオールと有機ポリイソシアネートとを発泡剤、整泡剤、触媒及び添加剤の存在下に反応させて得られるポリウレタンフォームであって、添加剤として、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイトを、ポリオール100質量部に対して0.5〜7.0質量部配合した難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
2.JIS L 0855に準じて、NOX濃度650質量ppm中で15分間暴露した後のイエローインデックス変化が40以下である上記1に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
3.更に、紫外線吸収剤を、ポリオール100質量部に対して0.1〜5.0質量部配合した上記1又は2に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
4.前記ポリオールが、ポリエーテルポリオールである上記1〜3のいずれか一に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
5.前記ポリオールが、ポリエステルエーテルポリオールを1〜20質量%含有する上記1〜4のいずれか一に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
6.上記1〜5のいずれか一に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォームを成形してなる衣料用、サニタリー用又は化粧用成形品。
【発明の効果】
【0012】
NOXに起因する黄変を経済的かつ有効に抑制した軟質ポリウレタンフォームを提供することができる。また、NOXに対して有効な難黄変性を有するばかりでなく、また、光(紫外線)・熱等に対しても有効な難黄変性を有する軟質ポリウレタンフォームを提供することができる。更に、成形時間の短縮・成形温度の低下等の熱成形性、熱的特性を向上させた軟質ポリウレタンフォームを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の難黄変性軟質ポリウレタンフォームは、発泡剤、整泡剤、触媒及び添加剤としてのテトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイトの存在下に、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させることによって得られる。
【0014】
本発明の難黄変性軟質ポリウレタンフォームの製造に用いるポリオールは、1分子中に2個以上の水酸基を有するもので、従来からポリウレタンフォームを製造するために使用されているものであればいずれのものでもよい。このようなポリオールとして、例えばポリエーテルポリオ−ル、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリマーポリオールを挙げることができる。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、1分子中に活性水素原子を少なくとも2個有する化合物を開始剤として、これにアルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。ここに使用する活性水素原子を少なくとも2個有する化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖等を挙げることができる。アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を挙げることができる。1分子中に活性水素原子を少なくとも2個有する化合物及びアルキレンオキサイドは、それぞれ一種以上を用いてよい。ポリエーテルポリオールは、グリセリン系ポリエーテルポリオールが好ましく、特にグリセリンを開始剤として、これにプロピレンオキサイドを付加重合させたものが好ましい。
【0016】
ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸と、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物とを重縮合させることによって得られるものである。ポリカルボン酸としては、例えばアジピン酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸、フタル酸のごとく1分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物を挙げることができる。2個以上の水酸基を有する化合物としては、上記ポリエーテルポリオールの開始剤として使用される活性水素原子を少なくとも2個有する化合物と同じ化合物を使用することができる。ポリカルボン酸及び1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物は、それぞれ一種以上を用いてよい。ポリエステルポリオールは、公知の方法で製造することができる。ポリエステルポリオールは、フタル酸とプロピレングリコールとを重縮合させたものが好ましい。
【0017】
ポリエステルエーテルポリオールとしては、ポリエーテルポリオールに無水フタル酸等のジカルボン酸無水物を反応させて生じる半エステルを脱水縮合したり、かかる半エステルに塩基性触媒等の存在下に、エポキシドを付加して得られるもの等を挙げることができる。
【0018】
ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール中にビニル系ポリマー微粒子を均一に分散させた変成ポリオールである。ビニル系ポリマーとしては、例えばアクリロニトリル、スチレン等のビニル系モノマーを重合させて得られるポリマー、ビニル系モノマーとかかるモノマーと共重合可能なモノマーとを共重合させて得られコポリマーを挙げることができる。ポリマーポリオールを使用したフォームは、低密度高硬度、高硬度高弾性等ポリエーテルポリオールのみでは得られないフォーム物性を実現することができる。
【0019】
これらのポリオールは一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
衣料用、サニタリー用等の用途から考慮すれば、耐洗濯性の大きいものが望ましいことから、原料のポリオールとしては、加水分解性の低いものを用いるのが好ましく、ポリエーテルポリオールを用いるのが好ましい。また、衣料用のブラパッド材、肩パッド材及び化粧材用のパフ材など耐黄変性が要求される用途では、フォームの加工において、熱プレス成形を伴うことが非常に多い。従って、成形時間の短縮・成形温度の低下等の熱成形性、熱的特性を向上させるために、ポリエーテルポリオールにポリエステルエーテルポリオールを混合するのが好ましい。この場合に、ポリエーテルポリオールに対してポリエステルエーテルポリオールを1〜20質量%程度、好ましくは5〜15質量%程度混合する。
【0021】
本発明の難黄変性軟質ポリウレタンフォームの製造において、従来公知の架橋剤も使用することができる。架橋剤は、主に硬度調整剤として使用されており、例えばグリセリン、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類等を挙げることができる。架橋剤の添加量は、ポリオール100質量部に対して0.5〜10質量部程度である。
【0022】
本発明の難黄変性軟質ポリウレタンフォームの製造において用いるポリイソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する芳香族系イソシアネート化合物、脂肪族系イソシアネート化合物またはそれらの変成物を用いることができる。一般的には、ポリイソシアネートとして、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いるのが好ましい。
【0023】
本発明において、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させるに際し、発泡剤、整泡剤、触媒及び添加剤を用いる。
本発明の第一の態様では、添加剤として、テトラフェニレンジプロピレングリコールジフォスファイトを用いる。テトラフェニレンジプロピレングリコールジフォスファイトは、下記式を有するものである:
【化1】

【0024】
テトラフェニレンジプロピレングリコールジフォスファイトを添加することにより、得られる軟質ポリウレタンフォームは、NOXに対する耐黄変性が改善される。本発明におけるNOXに対する耐黄変性は、下記の通りに評価する:まず、白色度計を用い、ASTM D 1925規格に準じて、サンプル表面の初期イエローインデックス(YI)値を測定する。次いで、サンプルを、JIS L 0855に準じて、NOX濃度650ppmの容器内に入れ、15分間暴露する。暴露した後のサンプルの表面を、初期YI値の測定と同様にしてYI値を測定し、初期YI値との差を、イエローインデックス変化(ΔYI)値として求める。すなわち、ΔYI値は、色の変化具合を数字化したものであり、値が小さい方が、色の変化(黄変)が少ないことを示す。本発明の難黄変性軟質ポリウレタンフォームは、JIS L 0855に準じて、NOX濃度650質量ppm中で15分間暴露した後のΔYI値が40以下である。
【0025】
テトラフェニレンジプロピレングリコールジフォスファイトは、ポリオール100質量部に対して0.5〜7.0質量部、好ましくは0.8〜6質量部添加する。テトラフェニレンジプロピレングリコールジフォスファイトの添加量は、0.5質量部より少ないと耐黄変性の効果が低く、他方7.0質量部より多くしても、更なる耐黄変性の効果の向上はみられず、逆に熱による黄変性が大きくなる。特に好ましくは、1.0〜5.0質量部である。
【0026】
テトラフェニレンジプロピレングリコールジフォスファイトを添加することにより、得られる軟質ポリウレタンフォームは、耐NOX黄変性については、極めて優れた効果がみられる。しかし、テトラフェニレンジプロピレングリコールジフォスファイトを添加しても、熱に起因する黄変性、光に起因する黄変性については効果がさほどみられず、逆にテトラフェニレンジプロピレングリコールジフォスファイトの添加量が多くなる程、熱・光に対する耐黄変性が低下する場合も生じる。
【0027】
これより、本発明の第二の態様では、光・熱も含めたポリウレタンフォーム自体の耐黄変性を向上させるために、ポリウレタンフォームの製造において、紫外線吸収剤を配合することにより、耐NOX劣化性、耐光劣化性及び耐熱劣化性のバランスの良好な軟質ポリウレタンフォームを提供するものである。紫外線吸収剤とは、光(紫外線)を吸収し、吸収した光を自己消費し無害なエネルギー(輻射熱)として放出する機構を持ち合わせている紫外線吸収能をもった安定剤である。紫外線吸収剤は、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、及びニッケルないしコバルト錯塩系紫外線吸収剤等を挙げることができる。紫外線吸収剤は、耐NOX劣化性、耐光劣化性及び耐熱劣化性の所望のバランスに応じて選定することができる。
【0028】
本発明における光に対する劣化性は、下記の通りに評価する:フェードメーターにサンプルを設置した後に、ブラックパネル温度63℃(雨なし)、相対湿度(RH)45%にて、40時間UV(紫外線)照射を行う。照射した後のサンプルの表面を、初期YI値の測定と同様にしてYI値を測定し、初期YI値との差を、ΔYI値として求める。
【0029】
本発明における熱に対する劣化性は、下記の通りに評価する:100℃に設定したオーブンの中にサンプルを設置し、48時間経過した後に、サンプルを取り出し、その表面を初期YI値の測定と同様にしてYI値を測定し、初期YI値との差を、ΔYI値として求める。
【0030】
紫外線吸収剤は、ポリオール100質量部に対して、0.1〜5.0質量部、好ましくは1.0〜3.0質量部配合する。紫外線吸収剤は、ポリオール100質量部に対して、0.1質量部より少ないと、光劣化性の向上があまり見られず、また、5.0質量部より多く配合しても、光劣化性のさらなる向上は望めず、コスト上昇等のデメリットが生じる。
【0031】
発泡剤としては、水のみを発泡剤として用いるのが環境的には好ましい。水はポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生することにより化学発泡剤として使用される。通常使用される発泡剤の量は、ポリオール総量100質量部に対して、1〜7質量部が好ましく、2.5〜6質量部がより好ましい。また、発泡剤として適宜物理発泡剤を使用することができる。物理発泡剤として、メチレンクロライドや地球環境保護の目的で開発されたクロロフルオロカーボン類や、ヒドロキシクロロフルオロカーボン類(HCFC−134a等)、炭化水素類(シクロペンタン等)、炭酸ガス、液化炭酸ガス、その他の発泡剤が発泡助剤として水と併用して使用される。物理発泡剤の使用量は、ポリオール100質量部に対して、20質量部以下であるのが発泡の安定上好ましい。
【0032】
触媒は、特に制限はなく、本発明ではポリウレタンフォームの製造に通常使用されている、アミン系触媒、金属触媒、ジアザビシクロアルケン類またはその塩類が使用することができる。アミン系触媒としては、例えばトリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ビス−(2−アミノエチル)エーテル、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン等を例示することができる。金属触媒としては、例えばスタナスオクテート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、等を例示することができる。ジアザビシクロアルカン類としては、例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以降、DBUとも略記する)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等を例示することができる。その他、弱酸のアルカリ金属塩、三量化触媒等も使用することができる。
【0033】
触媒の使用量は、特に制限はなく、ポリオール100質量部に対して、通常0.01〜8質量部である。
【0034】
整泡剤としては、一般に軟質スラブ、軟質モールド用として用いられる、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサン・ポリアルキレン共重合体、ポリアルキレン側鎖を有するポリアルケニルシロキサン等のシリコーン系界面活性剤を使用するのが好ましい。
【0035】
整泡剤の使用量は、ポリオール100質量部に対して、通常0.2〜6質量部である。
【0036】
さらに必要に応じて、難燃剤、減粘剤、酸化防止剤、酸化チタン等の顔料、帯電防止剤等を本発明の効果を損なわない範囲で用いることができる。
【0037】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、前述した通りのポリオール、有機ポリイソシアネート、発泡剤、整泡剤、触媒、添加剤及び必要に応じてその他の成分を用いて発泡、硬化させることによって製造することができる。その製造方法は、従来の方法を用いればよく、特に制限されるものではない。
【実施例】
【0038】
以下に実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0039】
実施例1
表中に記載する通りの成分を表中に記載する所定質量部数で配合した後に、混合物をミキサーで数秒間攪拌し、速やかに上部が開放された30cm角の方形の箱内に注入して自由発泡させ、それぞれポリウレタンフォームを発泡形成した。得られた軟質ポリウレタンフォームの密度及びNOX劣化性(ΔYI)を測定し、得られた結果を表中に示す。
【0040】
また、熱成形性を評価するために、下記の通りに熱プレス成形を実施した:上述した通りにして得られた軟質ウレタンフォームを、300mm×300mm×10mmにカットし、厚みが2mmになるように熱プレス成形を行った。このときの成形条件は、190℃×90秒であった。
【0041】
比較例1
添加剤を配合しなかった他は、実施例1と同様にしてポリウレタンフォームを発泡形成した。得られた軟質ポリウレタンフォームの密度及びNOX劣化性(ΔYI)を測定し、得られた結果を表中に示す。
【0042】
比較例2〜5
添加剤Aを、添加剤B(比較例2)、添加剤C(比較例3)、添加剤D(比較例4)及び添加剤E(比較例5)に代えて配合した他は、実施例1と同様にしてポリウレタンフォームを発泡形成した。得られた軟質ポリウレタンフォームの密度及びNOX劣化性(ΔYI)を測定し、得られた結果を表中に示す。
【0043】
実施例2
ポリオールとして、ポリオールAに加えてポリオールBを配合し、添加剤Aの配合量を5.0質量部に代えて1.7質量部を配合した他は、実施例1と同様にしてポリウレタンフォームを発泡形成した。得られた軟質ポリウレタンフォームの密度、NOX劣化性(ΔYI)、光劣化性(ΔYI)及び熱劣化性(ΔYI)を測定し、得られた結果を表中に示す。
【0044】
また、熱成形性を評価するために、得られた軟質ウレタンフォームを実施例1と同じ同サイズにカットし、同じく2mm厚みになるよう熱プレス成形を行った。このときは、190℃×80秒にて成形可能であった。
【0045】
実施例3〜5
添加剤Aの配合量を1.7質量部に代えて2.5質量部(実施例3)、3.4質量部(実施例4)及び5.0質量部(実施例5)を配合した他は、実施例2と同様にしてポリウレタンフォームを発泡形成した。得られた軟質ポリウレタンフォームの密度、NOX劣化性(ΔYI)、光劣化性(ΔYI)及び熱劣化性(ΔYI)を測定し、得られた結果を表中に示す。
【0046】
実施例6
紫外線吸収剤の配合量を2.0質量部に代えて3.0質量部を配合した他は、実施例3と同様にしてポリウレタンフォームを発泡形成した。得られた軟質ポリウレタンフォームの密度、NOX劣化性(ΔYI)、光劣化性(ΔYI)及び熱劣化性(ΔYI)を測定し、得られた結果を表中に示す。
【0047】
比較例6
添加剤を加えなかった他は、比較例6と同様にしてポリウレタンフォームを発泡形成した。得られた軟質ポリウレタンフォームの密度、NOX劣化性(ΔYI)、光劣化性(ΔYI)及び熱劣化性(ΔYI)を測定し、得られた結果を表中に示す。
【0048】
評価方法
評価サンプルとして、縦50mm×横50mm×厚み10mmのサンプルを作成した。
1.初期イエローインデックス(YI)値の測定
まず、白色度計(コニカミノルタ社製「COLOR READER CR−14」)を用い、ASTM D 1925 規格に準じて、サンプル表面の初期YI値を測定する。
【0049】
2.NOX劣化性
サンプルを、JIS L 0855に準じて、NOX濃度650ppmの容器内に入れ、15分間暴露する。暴露した後のサンプルの表面を、初期と同様にYI値を測定し、初期YI値との差を、ΔYI値として求める。すなわち、ΔYI値は、色の変化具合を数字化したものであり、値が小さい方が、色の変化(黄変)が少ないことを示す。
【0050】
3.光劣化性
フェードメーター(スガ試験機社製「紫外線オートフェードメータ U48AU」)にサンプルを設置した後に、ブラックパネル温度63℃(雨なし)、湿度45%RHにて、40時間UV照射を行う。照射した後のサンプルの表面を、初期YI値の測定と同様にしてYI値を測定し、初期YI値との差を、ΔYI値として求める。
【0051】
4.熱劣化性
100℃に設定したオーブンの中にサンプルを設置し、48時間経過した後に、サンプルを取出し、その表面を初期YI値の測定と同様にしてYI値を測定し、初期YI値との差を、ΔYI値として求める。
【0052】
【表1】

【0053】
上記の実施例1と比較例1〜5との対比から明らかな通りに、添加剤A(テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイト)を配合しない場合には、NOX劣化性(ΔYI)が大きな値を示す。
また、実施例2〜5から明らかな通りに、添加剤Aの配合量を増大させるにつれて、NOX劣化性(ΔYI)が低下するが、光劣化性(ΔYI)及び熱劣化性(ΔYI)が増大する。
更に、実施例3と実施例6との対比から明らかな通りに、紫外線吸収剤の配合量を増大すると、NOX劣化性(ΔYI)及び光劣化性(ΔYI)が向上する。
【0054】
なお更に、実施例6と比較例6との対比から明らかな通りに、紫外線吸収剤の配合量を同じにし、添加剤Aを配合しないと、NOX劣化性(ΔYI)及び光劣化性(ΔYI)が大きく増大する。これより、NOX劣化性(ΔYI)及び光劣化性(ΔYI)の向上が、添加剤Aを配合しないで、単に紫外線吸収剤の配合量を増大することによって達成されるものでないことが分かる。
更にまた、実施例1と実施例2との熱成形性の評価に関する対比から明らかな通りに、ポリエーテルポリオールにポリエステルエーテルポリオールを混合した場合に、ポリエーテルポリオール単独の場合に比べて、同じ成形温度において熱プレス成形を行い、10秒の成形時間の短縮が可能であった。
【0055】
実施例1〜6から明らかな通りに、本発明の難黄変性軟質ポリウレタンフォームは、JIS L 0855に準じて、NOX濃度質量650ppm中で15分間暴露した後のイエローインデックス変化が40以下である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、一般的に軟質ポリウレタンフォームが使用されている広範囲な分野で使用することができる。特に、白色外観が要求されるブラジャーパッド、肩パッド等の衣料用フォーム、紙おむつ、ナプキン等のサニタリー用フォーム、パフ等の化粧用フォーム等、またその他の雑貨用途において好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを発泡剤、整泡剤、触媒及び添加剤の存在下に反応させて得られるポリウレタンフォームであって、添加剤として、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイトを、ポリオール100質量部に対して0.5〜7.0質量部配合した難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
JIS L 0855に準じて、NOX濃度650質量ppm中で15分間暴露した後のイエローインデックス変化が40以下である請求項1に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
更に、紫外線吸収剤を、ポリオール100質量部に対して0.1〜5.0質量部配合した請求項1又は2に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記ポリオールが、ポリエーテルポリオールである請求項1〜3のいずれか一に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記ポリオールが、ポリエステルエーテルポリオールを1〜20質量%含有する請求項1〜4のいずれか一に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一に記載の難黄変性軟質ポリウレタンフォームを成形してなる衣料用、サニタリー用又は化粧用成形品。

【公開番号】特開2006−89562(P2006−89562A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275209(P2004−275209)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】