説明

雨水ます用のバケットおよびこのバケットを備えた雨水ます

【課題】殺虫剤を用いなくても蚊が発生しにくく、泥が溜まっても蚊の発生を抑制する機能が低下しにくく、さらに、溜まった泥を外部に排出する作業が容易な雨水ますを提供する。
【解決手段】雨水ますに着脱自在に装着されるバケット20である。バケット20は、上側に開口22aが形成された略有底円筒状のバケット本体22と、開口22aを跨ぐようにバケット本体22に取り付けられた持ち手21と、銅製の防蚊部材1とを備えている。防蚊部材1は、バケット本体22の開口22aの縁部22bに引っ掛けられる係止部2と、係止部2からバケット本体22の内側に延びる本体部3とを有している。防蚊部材1は、係止部2が縁部22bに引っ掛けられることによって、バケット本体22に着脱自在に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水ます用のバケットおよびこのバケットを備えた雨水ますに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、雨水を排出するための管路の途中には、雨水ますが設けられている。雨水に混じった泥が下流側に流出してしまうことを抑制するため、雨水ますの底部は、雨水ますに接続された流入管および流出管よりも低い位置に配置されている。そのため、雨水ますの底部には常に雨水が滞留する。ところが、常に雨水が滞留することにより、雨水ますが蚊の幼虫すなわちボウフラの格好の生息場所となってしまうという課題がある。
【0003】
従来より、蚊の発生防止のために、殺虫剤を散布することが行われている。しかし、殺虫剤の散布は環境汚染の観点から好ましくない。そこで、下記特許文献1に記載されているように、銅の抗菌作用を利用して雨水ますにおける蚊の発生を防止する技術が提案されている。特許文献1に記載された雨水ますでは、銅部材を取り付けるためのガイド等を雨水ますの内部側壁に設け、銅部材を雨水ますの内部側壁に取り付けることとしている。また、特に、銅部材が雨水に常に触れるように、銅部材を雨水ますの底面上に設けることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−154589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された雨水ますでは、以下のような課題があった。すなわち、上記雨水ますでは、底部に泥が溜まってくると、銅部材が泥の中に埋まり、本来の抗菌作用を発揮できないという課題があった。一方、底部に溜まった泥を除去しようとすると、銅部材を傷つけないように雨水ますの内部側壁からいったん取り外し、そのうえで底部に溜まった泥を外部に掻き出さなければならない。そのため、溜まった泥を外部に排出する作業が面倒であった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、殺虫剤を用いなくても蚊が発生しにくい雨水ますであって、泥が溜まっても蚊の発生を抑制する機能が低下しにくく、また、溜まった泥を外部に排出する作業が容易な雨水ますを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る雨水ます用のバケットは、雨水ますに着脱自在に装着されるバケットであって、上側に開口が形成された略有底円筒状のバケット本体と、前記開口を跨ぐように前記バケット本体に取り付けられた持ち手と、前記バケット本体の前記開口の縁部に引っ掛けられる係止部と、前記係止部から前記バケット本体の内側に延びる本体部とを有し、少なくとも前記本体部が銅を含み、前記係止部が前記開口の縁部に引っ掛けられることによって前記バケット本体に着脱自在に取り付けられた防蚊部材と、を備えているものである。
【0008】
上記バケットによれば、防蚊部材の本体部が銅を含んでいるので、バケットに雨水が溜まることによって上記本体部が雨水に触れ、銅の抗菌作用によりボウフラの発生が抑制される。したがって、殺虫剤を用いなくても、蚊の発生を抑制することができる。また、上記本体部は、バケット本体の開口の縁部に引っ掛けられる係止部から、バケット本体の内側に延びるように構成されている。そのため、本体部の少なくとも一部はバケット本体の開口付近に位置することになる。したがって、バケットの底部に泥が溜まっても、蚊の発生を抑制することができる。また、上記バケットは、作業者が持ち手を掴んで上げ下げすることにより、雨水ますに着脱自在である。そのため、泥が溜まった場合には、バケット本体から防蚊部材を取り外さなくても、バケットの全体を雨水ますから取り外すことにより、溜まった泥を外部に排出することができる。したがって、溜まった泥を外部に排出する作業が容易である。
【0009】
前記本体部の下端は前記バケット本体の底面から上方に離れていてもよい。
【0010】
このことにより、バケットの底部に泥が溜まった場合でも、本体部は泥の中に隠れにくくなる。そのため、バケットの底部に泥が溜まった場合に、本体部が防蚊作用を十分に発揮できなくなることを防止することができる。
【0011】
前記本体部は、前記バケット本体の内周面に沿った筒状に形成されていてもよい。
【0012】
このことにより、本体部の表面積を大きく確保することができ、防蚊作用を高めることができる
【0013】
本発明に係る雨水ますは、前記バケットと、前記バケットが着脱自在に装着される略有底円筒状のます本体と、前記ます本体に形成され、雨水を流入させる流入管が接続される流入側接続口と、前記ます本体に形成され、雨水を流出させる流出管が接続される流出側接続口と、を備えたものである。
【0014】
このことにより、殺虫剤を用いなくても蚊の発生を抑制することができ、泥が溜まっても蚊の発生を抑制する機能が低下しにくく、また、溜まった泥を外部に排出する作業が容易な雨水ますを得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、殺虫剤を用いなくても蚊の発生を抑制することができ、泥が溜まっても蚊の発生を抑制する機能が低下しにくく、また、溜まった泥を外部に排出する作業が容易な雨水ますを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る雨水ます用のバケットの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る雨水ます用のバケットの分解斜視図である。
【図3】バケットを雨水ますに装着する際の動作を説明する斜視図である。
【図4】雨水ますの断面図である。
【図5】他の実施形態に係る防蚊部材の斜視図である。
【図6】他の実施形態に係る防蚊部材の斜視図である。
【図7】他の実施形態に係る防蚊部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る雨水ます用のバケット20は、略有底円筒状の樹脂製のバケット本体22と、ステンレス製の持ち手21と、防蚊部材1とを備えている。バケット本体22の上側には開口22aが形成され、持ち手21は開口22aを跨ぐように配置されている。
【0018】
図2に示すように、バケット本体22は、開口22aの周囲を取り囲む縁部22bを有している。防蚊部材1は、縁部22bに引っ掛けられる係止部2と、係止部2からバケット本体22の内側に延びる本体部3とを有している。なお、図2では、防蚊部材1の断面形状が分かりやすいように、便宜上、防蚊部材1の一部を破断した状態で示している。係止部2の具体的形状は特に限定されないが、本実施形態では係止部2は、断面がコ字状に形成されている。また、係止部2には、持ち手21を挿通させるための孔4が形成されている。本体部3の形状も何ら限定されないが、本実施形態では本体部3は、係止部2の下端から下方に延びるように形成されている。本体部3の下端3a(図4参照)は、バケット本体22の底面22cから上方に離れている。本実施形態では、本体部3の下端3aは、バケット本体22の上下方向の中間位置よりも上方に位置している。係止部2は略環状に形成されている。本体部3は、バケット本体22の開口22a付近の内周面に沿った筒状に形成されている。しかし、係止部2および本体部3の形状は上記形状に限定されず、係止部2または本体部3は、例えば周方向の一部が切り欠かれたものであってもよい。
【0019】
本実施形態では、係止部2と本体部3とは、銅により一体的に形成されている。ただし、本体部3が銅を含んでいれば足り、係止部2は銅を含んでいなくてもよい。また、係止部2と本体部3とは別体であってもよい。なお、本体部3の材料は銅自体に限らず、銅を含んだ合金等であってもよい。本体部3は、銅を80重量パーセント以上含む材料によって形成されていることが好ましい。
【0020】
図2に示すように、防蚊部材1は、係止部2がバケット本体22の縁部22bに引っ掛けられることによって、バケット本体22に着脱自在に取り付けられる。防蚊部材1はバケット本体22に取り付けられているので、図3に示すように、バケット20をます本体31に装着することによって、防蚊部材1はます本体31内の所定の位置に自動的に配置されることになる。
【0021】
図4は雨水ます30の断面図である。雨水ます30は、略有底円筒状のます本体31を備えている。ます本体31の上部には、点検筒34が接続されている。点検筒34の上部には、蓋35が嵌め込まれている。ます本体31の側壁には、流入側接続口としての受口32と、流出側接続口としての受口33が設けられている。ただし、流入側接続口または流出側接続口は差口であってもよい。受口32には流入管41が接続され、受口33には流出管42が接続されている。バケット20は、ます本体31の底部に装着されている。防蚊部材1の上端は、流入管41および流出管42の底部と略同一の高さに位置している。ただし、防蚊部材1の上端の位置は、上記位置に限定される訳ではない。
【0022】
本実施形態に係る雨水ます30によれば、バケット20に雨水が溜まった場合には、銅製の防蚊部材1が雨水に触れることになる。そのため、銅の抗菌作用により、ボウフラの発生が抑制される。したがって、殺虫剤を用いなくても、雨水ます30における蚊の発生を抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態に係る雨水ます30によれば、防蚊部材1はバケット本体22の開口22aの付近に配置されている。そのため、バケット本体22に泥が堆積した場合であっても、防蚊部材1の全体が泥の中に埋まってしまうことはない。特に本実施形態によれば、防蚊部材1の下端3aはバケット本体22の底面22cから上方に離れている(図4参照)。そのため、バケット本体22に泥が堆積した場合であっても、防蚊部材1のほぼ全体が泥よりも上方に位置することになる。したがって、防蚊部材1の本来の防蚊作用を十分に維持することができる。
【0024】
また、本実施形態に係る雨水ます30によれば、雨水ます30に泥が溜まった場合、防蚊部材1をバケット本体22に取り付けた状態のまま、バケット20をます本体31から取り外すだけの簡単な作業により、その泥を外部に排出することができる。したがって、溜まった泥を外部に排出する作業は容易である。なお、防蚊部材1はバケット本体22に対し着脱自在であるので、バケット20をます本体31から取り外した後、バケット本体22内の泥を排出する際に、防蚊部材1をバケット本体22から適宜取り外すようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態によれば、防蚊部材1はバケット本体22の開口22a付近にのみ設けられているので、バケット本体22の内周面の全体に銅部材を配置する場合に比べて、銅の使用量を低減させることができる。したがって、大幅なコストアップを招くことなく、蚊の発生を抑制することができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、防蚊部材1の本体部3は、バケット本体22の内周面に沿った筒状に形成されている。そのため、本体部3の上下方向の長さを長くしなくても、表面積を十分に確保することができ、十分な防蚊作用を発揮することができる。
【0027】
前記実施形態では、防蚊部材1は板状体によって構成されていた。しかし、図5に示すように、防蚊部材1は、網状体によって構成されていてもよい。例えば、防蚊部材1は、銅製のメッシュ等によって構成されていてもよい。これにより、銅(すなわち本体部3)の単位体積当たりの表面積を増やすことができる一方、銅の使用量を減らすことができ、防蚊作用の向上またはコストの低減を図ることができる。
【0028】
また、図6に示すように、前記実施形態の防蚊部材1において、本体部3の内周面にエンボス加工を施してもよい。これにより、銅の表面積を増やすことができ、防蚊作用の向上を図ることができる。
【0029】
また、図7に示すように、本体部3の一部を上方に延長し、本体部3の上端が係止部2よりも上方に位置するようにしてもよい。この実施形態によれば、防蚊部材1の一部がバケット本体22の開口22aよりも上方に位置することになる。そのため、万が一、雨水ます30内において、バケット本体22が泥で満杯になった場合であっても、防蚊部材1の上記一部は泥の中に埋まらず、雨水に触れることになる。したがって、そのような場合であっても、蚊の発生を抑制することができる。
【0030】
前述の通り、防蚊部材1は、バケット本体22に対して着脱自在である。そのため、防蚊部材1をバケット本体22から取り外すことにより、容易に清掃することができる。すなわち、防蚊部材1はメンテナンスが容易である。また、防蚊部材1を適宜交換するようにしてもよい。すなわち、古い防蚊部材1を廃棄し、代わりに新品の防蚊部材1を取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 防蚊部材
2 係止部
3 本体部
20 バケット
21 持ち手
22 バケット本体
22a 開口
22b 縁部
30 雨水ます
31 ます本体
32 受口(流入側接続口)
33 受口(流出側接続口)
41 流入管
42 流出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水ますに着脱自在に装着されるバケットであって、
上側に開口が形成された略有底円筒状のバケット本体と、
前記開口を跨ぐように前記バケット本体に取り付けられた持ち手と、
前記バケット本体の前記開口の縁部に引っ掛けられる係止部と、前記係止部から前記バケット本体の内側に延びる本体部とを有し、少なくとも前記本体部が銅を含み、前記係止部が前記開口の縁部に引っ掛けられることによって前記バケット本体に着脱自在に取り付けられた防蚊部材と、を備えている雨水ます用のバケット。
【請求項2】
前記本体部の下端は前記バケット本体の底面から上方に離れている、請求項1に記載の雨水ます用のバケット。
【請求項3】
前記本体部は、前記バケット本体の内周面に沿った筒状に形成されている、請求項1または2に記載の雨水ます用のバケット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の雨水ます用のバケットと、
前記バケットが着脱自在に装着される略有底円筒状のます本体と、
前記ます本体に形成され、雨水を流入させる流入管が接続される流入側接続口と、
前記ます本体に形成され、雨水を流出させる流出管が接続される流出側接続口と、
を備えた雨水ます。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−208427(P2011−208427A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77159(P2010−77159)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】