説明

雨水利用システムにおける初期雨水排出装置

【課題】雨が降ったり止んだりしても、効率的に良質の雨水を貯蔵できるようにした。
【解決手段】雨水タンクと、前記雨水タンクの底部に近接して設けられ、電磁弁により開閉制御される初期雨水排出部と、前記雨水タンクの上部に設けられた利用水排出部と、前記雨水タンクに雨水を取り込む取り込口と、前記取り込口に設けられ、水力により回転する水車と、前記水車の回転開始によりリセットされ、前記水車の回転停止により計測をスタートするタイマーと、前記タイマーが所定時間を計測したとき、前記電磁弁を制御して初期雨水を放出する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、雨水利用システムにおける初期雨水排出装置に関するものであり、災害時などに利用されるタンクに対して雨水を取り込む場合、不純物の混入を防止する装置である。
【背景技術】
【0002】
地震、洪水などの災害が発生したときの備えとして、常日頃から水を確保しておくことは重要である。
【0003】
飲み水などは、特別に水筒、ボトル、家庭用タンクなどで確保されているが、生活用水、洗濯、風呂水、トイレ用水などは不足しがちである。このために、被災地の避難所、例えば学校、体育館などで体調を崩す人が発生することが多い。
【0004】
このような状況に利用できる装置として、特許文献1、2に記載された雨水利用装置がある。
【特許文献1】特開2001−47030号公報
【特許文献2】特開平10−008508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の装置は、タンクに雨水を蓄えて利用する。しかし、初期雨水は、空気中の埃、屋根の泥などが混入しているために、排除するか、別途の利用水としている。または、排除するために雨水の水路の途中に排水装置を設けている。
【0006】
しかし、従来の装置であると、雨が降ったり止んだりしても、初期雨水を排除している。雨が短い周期で降ったり止んだりしたときは、雨水は利用できるものもある。長期間雨が降らなくて、最初に降った初期雨水は、排除する必要があるが、雨が止んだあと、短期間で降り始める場合(例えば30分以内、あるいは4時間以内程度)では、初期雨水は排除しなくてもよい場合がある。
【0007】
そこでこの発明は、雨が降ったり止んだりしても、効率的に良質の雨水を貯蔵できるようにした雨水利用システムにおける初期雨水排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するためにこの発明の一面では、雨水タンクと、前記雨水タンクの底部に近接して設けられ、電磁弁により開閉制御される初期雨水排出部と、前記雨水タンクの上部に設けられた利用水排出部と、前記雨水タンクに雨水を取り込む取り込口と、前記取り込口に設けられ、水力により回転する水車と、前記水車の回転開始によりリセットされ、前記水車の回転停止により計測をスタートするタイマーと、前記タイマーが所定時間を計測したとき、前記電磁弁を制御して初期雨水を放出する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の手段によると、水車とタイマー及び制御部を設けたことにより、雨が降ったり止んだりしても、効率的に良質の雨水を貯水タンクに貯蔵できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態を説明する。図1には、この発明が適用された雨水利用システムを示している。100は、学校、病院、体育館、避難場所などの建物である。101は中水高架水槽であり、建物100の屋上に設置されている。
【0011】
200は発電機であり、発電した電源により、ポンプ300が運転される。ポンプ300は、メイン貯水タンク400から水をくみ上げて、先の中水高架水槽101に水を供給する。メイン貯水タンク400には、井戸500からの井戸水を供給することもできるし、また、雨水タンク600からの雨水を供給することもできる。井戸水は、発電機200の電源により駆動されるポンプ(図示せず)によりくみ上げられる。
【0012】
中水高架水槽の水量が減ると発電機が起動し、ポンプが作動する。
【0013】
発電機200を利用する理由は、以下の通りである。この発電機200は、例えば小型の10KW程度であり、間断運転されるものであり、燃費も比較的少なくて済む。また非常時のみ運転するのではなく、間断運転することで、運転可、運転不能のチェックを行なえることになる。さらに、発電機を運転しないと、デマンドが上がり、契約電力が上がることも考えられるが、このように常時運転可能状態にすると、契約電力を下げることにも貢献できる。
【0014】
また、災害時には緊急電源(電灯用、動力用)として利用できることは勿論のことである。
【0015】
上記の雨水利用システムは、平常時は、井戸水、雨水を利用することにより、水道料金の削減が得られる。
【0016】
ここで、上記した雨水タンク600から取水しているが、ここでは、本発明の要部である初期雨水排出装置が採用されている。
【0017】
図2を参照して、初期雨水排出装置を説明する。図2(A)は、初期雨水排出装置の正面図、図2(B)は初期雨水排出装置の側面図である。
【0018】
雨水タンク600の側部には電気系室700が設けられ、ここにバッテリー701、回路基板702などが収納されている。雨水タンク600の底部に近接して、電磁弁601により開閉制御される初期雨水排出部602が設けられている。ここから排出された初期雨水は、たとえば下水管、あるいは別途容易されている補助タンクなどに供給される。
【0019】
雨水タンク600の上部には、利用水排出部611が設けられている。ここから排出された雨水が、先のメイン貯水タンク400に供給される。利用水排出部611には、メッシュ611aが取り付けられており、ごみなどがメイン貯水タンク400へ混入しないように図られている。
【0020】
さらに、雨水タンク600には、雨水を取り込む取り込口612が設けられている。この取り込口612には、ここを通過する水の水力により回転する水車615が設けられている。
【0021】
取り込口612には、スクリーン613が取り付けられており、縦雨どい614からの雨水が、スクリーン613を介して流れ込む。
【0022】
電気系室700には、バッテリー701、回路基板702などが収納されており、電磁弁601などを制御することができる。
【0023】
雨水タンク600は、軒下設置を想定しているので形状は、奥行きが薄く横に長い形である。初期雨水量の決め方(タンク容量の決め方)としては、
例えば、屋根面積×5mm×1.2
がある。
【0024】
上記の実施形態において雨水タンク600は、薄箱状に示したが、このような形状に限るものではなく、複数本の長さの同じパイプを起立させて壁に沿って並べてパイプ間を連結したタイプ、或いはパイプオルガンの如く起立した長さの異なるパイプ間を連結したタイプなど軒下に設置可能であり、かつ意匠的にも良好なタイプを選定してもよい。このような形状でも奥行きを薄い状態で構成することができる。
【0025】
図3には、前記水車615と、バッテリー701などとの関係を示している。水車615は、発電機711を駆動する。発電機711の発電出力電力は、充電器712を介してバッテリー701に蓄積される。バッテリー701は、タイマー回路713を駆動する。
【0026】
このタイマー回路713は、水車615の回転停止により計測をスタートする。そして、タイマー回路713が所定時間(例えば5時間)を計測したとき計測信号を出力し、電磁弁601を制御して初期雨水を放出するために制御部714(具体的にはスイッチ)を駆動する。タイマー回路713は、水車615が回転している限りは、リセットされ、一定時間計測信号を得ることができない。
【0027】
図4は、上記した初期雨水排出装置の動作例を示す説明図である。図4(A)は、発電機711の発電が行われている様子を示し、期間T1が降雨している期間である。図4(B)は、タイマー回路713の動作であり、水車615が回転して発電が行われている間は、リセットされ、水車615が停止すると計測が開始される(時点t1)。今、降雨が止み、5時間が経過したとすると(時点t2)、タイマー動作により、電磁弁601が駆動され、雨水タンク600内の水が排水される。図4(C)は、電磁弁601の開放期間であり、例えば任意に設定可能であり、この場合は、30分としてある。この時間は、雨水タンク600が空になる程度に設定される。
【0028】
これにより、雨水タンク600は、降雨が止んで、5時間経過した後は、空にされる。このために、5時間経過後に降雨が開始されたときは、タンク600は完全に空であり、初期雨水がタンク600内に溜まる。その後、良質の雨水が取得できるようになった時点で、利用水排出部611から利用水を取得できる。
【0029】
図5には、降雨が止んで、5時間以内に降雨が開始された場合の例を示している。図5(A)の期間T11,T12,T13が降雨の期間である。図5(B)に示すように降雨期間T11とT12との間が2時間25分であったとする。すると、タイマー回路713がスタートしてから5時間経過しないうちに、リセットが係るために電磁弁601の制御は行なわれない。また降雨期間T12とT13との間が4時間20分であったとしても、タイマー回路713がスタートしてから5時間経過しないうちに、リセットが係るために電磁弁601の制御は行なわれない。
【0030】
降雨期間T13が経過して5時間が経過すると、先の図4の説明と同様に、雨水タンク600の初期雨水が排出される。
【0031】
上記のように動作するために次のような効果がある。今、雨水タンク600が時点T11で満タンになったとすると、降雨期間T12の後半の雨水を無駄にすることなく、利用水として取得することができる。
【0032】
尚、上記の5時間、及び30分は任意に設定可能であり、設定ボタンが回路基板702に設けられている。例えば、短時間で屋根が汚れるような環境にあれば、5時間を短くして、3時間あるいは2時間としてもよい。
【0033】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明が適用された雨水利用システムの全体構成の概略を示す説明図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る初期雨水排出装置の構成説明図である。
【図3】図2の水車、回路基板及びバッテリーなどの電気系を示す図である。
【図4】図2の装置の動作例を示すために示したタイミングチャートである。
【図5】降雨が止んで、5時間以内に降雨が開始された場合の装置の動作例を示すために示したタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0035】
600…雨水タンク、601…電磁弁、602…初期雨水排出部、611…利用水排出部、612…取り込口、615…水車、700…電気系室、701…バッテリー、702…回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水タンクと、
前記雨水タンクの底部に近接して設けられ、電磁弁により開閉制御される初期雨水排出部と、
前記雨水タンクの上部に設けられた利用水排出部と、
前記雨水タンクに雨水を取り込む取り込口と、
前記取り込口に設けられ、水力により回転する水車と、
前記水車の回転開始によりリセットされ、前記水車の回転停止により計測をスタートするタイマーと、
前記タイマーが所定時間を計測したとき、前記電磁弁を制御して初期雨水を放出する制御部と、
を有することを特徴とする初期雨水排出装置。
【請求項2】
前記雨水タンクは、厚みの薄い箱型であることを特徴とする請求項1記載の初期雨水排出装置。
【請求項3】
前記雨水タンクは、起立した複数本のパイプを並べて構成されていることを特徴とする請求項1記載の初期雨水排出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−19430(P2009−19430A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183584(P2007−183584)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(501344614)株式会社日本ギャラクシーエンジニアリング (6)
【Fターム(参考)】