説明

雨水排出システムおよび雨水排出システムの施工方法

【課題】施工に要する手間と時間が抑えられ、既設の管路を利用して構築することが可能な雨水排出システムを提供する。
【解決手段】雨水排出システム1は、流入口21と流出口22とオーバーフロー口23とが形成されたます20と、流入口21に接続され、ます20に向かって雨水を導く流入管11と、流出口22に接続され、ます20から雨水本管に向かって雨水を流出させる流出管12と、オーバーフロー口23に接続され、オーバーフロー口23を通じてます20の外部に溢れ出した雨水を導くオーバーフロー管路30と、オーバーフロー管路30の下流端に接続された雨水浸透槽50と、を備えている。流入口21の下端21bの位置は、オーバーフロー口23の下端23bの位置よりも高く、オーバーフロー口23の下端23bの位置は、流出口22の下端22bの位置よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水排出システムおよび雨水排出システムの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、集中豪雨時等において、宅地等から雨水本管へ大量の雨水が流出してしまうことを抑制するために、雨水貯留槽または雨水浸透槽(以下、これらを単に「雨水槽」という)を備えた雨水排出システムが利用されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
ところで、既設の管路に雨水槽を増設することによって、上述のような雨水排出システムを構築したい場合がある。例えば、宅地内から宅地外の雨水本管に雨水を流出させる既設の管路として、図11(a)に示すような管路110がある。この管路110は、ます100に接続された流入管101と、雨水本管104に接続された流出管103と、落差調整ます102とから構成されている。流入管101の下流端は落差調整ます102の流入口に接続され、流出管103の上流端は落差調整ます102の流出口に接続されている。
【0004】
このような管路110に雨水槽を設ける場合、例えば以下のような方法が考えられる。すなわち、図11(b)に示すように、流入管101および流出管103の一部を切断し、それらの間に雨水槽105を設置する方法が考えられる。なお、符号106は、雨水槽105の上流側および下流側に配置されたますである。あるいは、図11(c)に示すように、既設の管路110は廃棄し、雨水槽105を備えた新たな管路115を施工し直す方法が考えられる。すなわち、ます100を新たなます100bに交換し、このます100bと雨水本管104との間に、流入管107と雨水槽105と流出管108とを備えた管路115を新たに施工する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−150512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、流入管101および流出管103の一部を切断してそれらの間に雨水槽105を設置する方法(図11(b)参照)では、施工に手間と時間がかかる。また、ます100と雨水本管104との間の距離が短いと、ます100と雨水本管104との間に雨水槽105を設置するスペースが確保できないという問題もある。
【0007】
既設の管路110に代えて新たな管路115を設置する方法(図11(c)参照)では、既設の管路110を除去する作業は不要であり、設置スペースの問題も生じにくいが、流入管107および流出管108を新たに設置しなければならない。そのため、この方法でも施工に手間と時間がかかってしまう。また、新たな流入管107および流出管108が必要になる分、部材のコストアップが避けられない。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工に要する手間と時間が抑えられ、既設の管路を利用して構築することが可能な雨水排出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る雨水排出システムは、流入口と流出口とオーバーフロー口とが形成された管路形成部材と、前記流入口に接続され、前記管路形成部材に向かって雨水を導く流入管路と、前記流出口に接続され、前記管路形成部材から雨水本管に向かって雨水を流出させる流出管路と、前記オーバーフロー口に接続され、前記オーバーフロー口を通じて前記管路形成部材の外部に溢れ出した雨水を導くオーバーフロー管路と、前記オーバーフロー管路の下流端に接続された雨水槽と、を備え、前記流入口の下端の位置は、前記オーバーフロー口の下端の位置よりも高く、前記オーバーフロー口の下端の位置は、前記流出口の下端の位置よりも高いものである。
【0010】
なお、本明細書において「管路」とは、水を導く通路を意味する。管路は単一の管から構成されていてもよいが、複数の管が継手やます等を介して接続されることによって構成されていてもよい。「管路形成部材」とは、管路の一部をなす部材をいう。管路形成部材には、例えば、ます、継手等が含まれる。「雨水槽」には、例えば雨水貯留槽、雨水浸透槽等が含まれる。
【0011】
上記雨水排出システムでは、通常の降雨時等には、流入管路から管路形成部材に流れ込む雨水の量がそれほど多くないため、雨水はオーバーフロー管路には流れ込まず、専ら流出管路に流出し、雨水本管に放出される。一方、大雨等の際には、流入管路から管路形成部材に大量の雨水が流れ込むが、その一部はオーバーフロー管路を通じて雨水槽に導かれる。そのため、大量の雨水が雨水本管に放出されることが抑制される。また、仮に雨水本管から管路形成部材に雨水が逆流したとしても、その雨水はオーバーフロー管路を通じて雨水槽に導かれる。そのため、雨水が流入管路に逆流することは防止される。
【0012】
また、上記雨水排出システムは、既設の流入管路、管路形成部材、および流出管路に対し、例えば、管路形成部材にオーバーフロー口を形成し、あるいは管路形成部材を交換したうえで、オーバーフロー管路および雨水槽を施工することによって、比較的手間と時間をかけずに構築することができる。そのため、施工に要する手間と時間を抑えつつ、既設の管路を利用して構築することが可能である。
【0013】
前記雨水排出システムにおいて、前記流入口の下端の位置は、前記オーバーフロー口の上端の位置よりも高く、前記オーバーフロー口の下端の位置は、前記流出口の上端の位置よりも高くてもよい。
【0014】
これにより、大量の雨水が雨水本管に放出されること、および流入管路に対する雨水の逆流が、より確実に防止される。
【0015】
前記管路形成部材は、略鉛直方向に延びる略筒状体のますであり、前記流入口は、前記ますの上面または側面に形成され、前記オーバーフロー口は、前記マスの側面に形成され、前記流出口は、前記ますの側面または下面に形成されていてもよい。
【0016】
このことにより、大量の雨水が雨水本管に放出されること、および流入管路に対する雨水の逆流が、より一層確実に防止される。
【0017】
前記オーバーフロー管路は、フィルターを備えたますを含んでいてもよい。
【0018】
このことにより、オーバーフロー管路を流れる雨水に異物が混入している場合、その異物はフィルターに捕捉される。そのため、雨水槽に異物が流入することが回避される。したがって、雨水槽の本来の性能を長期にわたって維持することができる。
【0019】
本発明に係る雨水排出システムの施工方法は、雨水を流入させる流入管路が接続された流入口と、雨水を雨水本管に向かって流出させる流出管路が接続された流出口とが形成され、前記流入口の下端の位置が前記流出口の下端の位置よりも高い既設のますに対して、その下端の位置が前記流入口の下端の位置よりも低く且つ前記流出口の下端の位置よりも高いオーバーフロー口を形成する工程と、雨水槽を設ける工程と、前記ますの前記オーバーフロー口と前記雨水槽とを接続する管路を形成する工程と、を備えた方法である。
【0020】
なお、前記管路を接続する工程は前記オーバーフロー口を形成する工程よりも後に行われるが、その他については、前記各工程の順序は特に限定されない。例えば、前記雨水槽を設ける工程は、前記管路を形成する工程よりも前に行われてもよく、後に行われてもよい。
【0021】
上記施工方法によれば、既設の流入管路、流出管路、およびますを利用して、前述の雨水排出システムを施工することができる。したがって、施工に要する手間と時間を抑えつつ、また、部材コストを抑えつつ、前記雨水排出システムを構築することが可能となる。
【0022】
前記施工方法において、フィルターを備えたますを介して第1の管と第2の管とを接続することによって、前記管路の少なくとも一部を構成する工程をさらに備えていてもよい。
【0023】
このことにより、雨水槽に異物が流入することを抑制することができ、雨水槽の本来の性能を長期にわたって維持することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、施工に要する手間と時間が抑えられ、既設の管路を利用して構築することが可能な雨水排出システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】雨水排出システムの平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】流入口と流出口とオーバーフロー口との位置関係を説明する図である。
【図4】流入口と流出口とオーバーフロー口との位置関係を説明する図である。
【図5】通常の降雨時における雨水の流れを説明する図である。
【図6】大雨時における雨水の流れを説明する図である。
【図7】雨水本管から雨水が逆流してきたときの流れを説明する図である。
【図8】変形例に係る流入口と流出口とオーバーフロー口との位置関係を説明する図である。
【図9】変形例に係るますの斜視図である。
【図10】分岐継手の斜視図である。
【図11】(a)は既設の管路の説明図、(b)および(c)は既設の管路を利用して雨水排出システムを構築する従来の方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係る雨水排出システム1の平面図、図2は雨水排出システム1の鉛直方向に沿った断面図である。図1に示すように、雨水排出システム1は、流入管11および流出管12に接続されたます20に、管路30を介して雨水浸透槽50を設けたものである。
【0027】
図2に示すように、ます20には、流入口21および流出口22が形成されている。流入口21には流入管11の下流端が接続され、流出口22には流出管12の上流端が接続されている。流出管12の下流端は、雨水本管13(図5参照)に接続されている。雨水排出システム1は、流出管12の一部(すなわち、雨水本管13との接続部分)を除き、宅地内に埋設されている。雨水本管13は、宅地外に埋設されている。流入管11は、宅地内で集めた雨水をます20に向かって導く配管である。流出管12は、ます20から雨水本管13に向かって雨水を排出する配管である。
【0028】
図2に示すように、ます20は、いわゆる落差調整ますである。流出口22は流入口21よりも低い位置に形成されている。ます20には更に、流入口21よりも低く且つ流出口22よりも高い位置に、オーバーフロー口23が形成されている。本実施形態では図1に示すように、平面視において、流入口21と流出口22とは対向する位置に形成されている。オーバーフロー口23は、流入口21から時計回り方向に90度、流出口22から反時計回り方向に90度の位置に形成されている。
【0029】
管路30は、流入管11からます20に大量の雨水が流入してきた場合の雨水の一部、または流出管12からます20に逆流してきた雨水を雨水浸透槽50に導くものである。管路30は、管31、ます33、管32、エルボ35、および継手36によって構成されている。管31の上流端は、ます20のオーバーフロー口23に接続されている。管31の下流端は、ます33の流入口33aに接続されている。管32の上流端は、ます33の流出口33bに接続されている。管32の下流端は、エルボ35および継手36を介して、雨水浸透槽50に接続されている。
【0030】
図2に示すように、ます33の内部には、フィルター34が設けられている。本実施形態では、フィルター34は着脱可能に取り付けられており、流出口33bを覆うように配置されている。ただし、フィルター34の取付位置や形状等は、何ら限定されない。管31からます33に流入する雨水に異物が含まれている場合、その異物はフィルター34によって捕捉される。そのため、雨水浸透槽50に異物が流入することが防止される。
【0031】
図3は、流入口21と流出口22とオーバーフロー口23との高さの関係を示す図である。図3に示すように、本実施形態では、流入口21とオーバーフロー口23と流出口22とは、上下方向に関して互いに重ならない位置に形成されている。詳しくは、流入口21の下端21bの位置は、オーバーフロー口23の上端23tの位置よりも高くなっている。また、オーバーフロー口23の下端23bの位置は、流出口22の上端22tの位置よりも高くなっている。ただし、流入口21とオーバーフロー口23との位置関係、およびオーバーフロー口23と流出口22との位置関係は、上述の位置関係に限定される訳ではない。例えば図4に示すように、流入口21の下端21bの位置が、オーバーフロー口23の上端23tの位置よりも低くてもよい。また、オーバーフロー口23の下端23bの位置が、流出口22の上端22tの位置よりも低くてもよい。
【0032】
図2に示すように、雨水浸透槽50は、複数の貯留材51と、それら貯留材51の周囲を覆う透水シート52とを備えている。貯留材51は、多数の孔51aが形成された中空体によって構成されている。貯留材51は、前後方向、左右方向、および上下方向に複数配置されている。ただし、貯留材51の種類は何ら限定されず、また、貯留材51の配置方法も何ら限定されない。このように、中空体からなる複数の貯留材51が透水シート52に覆われていることにより、貯留材51の内部および隣り合う貯留材51の間の空間に雨水を貯留することができると共に、透水シート52を通じて雨水を地中に浸透させることができる。
【0033】
以上が雨水排出システム1の構成である。次に、図5および図6を参照しながら、雨水排出システム1の機能を説明する。
【0034】
前述したように、オーバーフロー口23は流出口22よりも高い位置に形成されている(図2参照)。そのため、通常の降雨時のように、流入管11からます20に流入する雨水の量が少ない場合には、ます20内の水位は、オーバーフロー口23の下端23bよりも低くなる。その結果、図5に示すように、ます20内の雨水は、管31には流れ込まず、専ら流出管12を通じて雨水本管13に排出されることになる。
【0035】
一方、大雨時には、流入管11からます20に大量の雨水が流れ込み、ます20内の水位は、オーバーフロー口23の下端23bよりも高くなる。その結果、図6に示すように、ます20内の雨水は、流出管12だけでなく、管31にも流れ込む。そのため、一部の雨水は雨水本管13に排出され、残りの雨水は雨水浸透槽50に排出されることになる。したがって、過剰な量の雨水が雨水本管13に排出されることを抑制することができる。
【0036】
また、図7に示すように、大雨時には、雨水本管13の雨水がます20に向かって逆流してくる場合がある。しかし、そのような場合、ます20に流入した雨水は、管31を通じて雨水浸透槽50に排出される。そのため、雨水がます20に逆流してきたとしても、その雨水が流入管11に向かって逆流することは抑えられる。
【0037】
次に、雨水排出システム1の施工方法について説明する。本実施形態に係る雨水排出システム1は、配管等が設置されていない場所に新たに設置することができるのは勿論、既設の管路を利用して構築することも可能である。以下では、既設の管路として、流入管11、ます20(ただし、オーバーフロー口23は形成されていないものとする)、および流出管12が既に設置されている場所に、これら流入管11、ます20、および流出管12を利用して雨水排出システム1を施工する方法を説明する。ただし、以下に説明する方法は、雨水排出システム1の施工方法の一例に過ぎず、雨水排出システム1を他の方法で施工してもよいことは勿論である。また、以下に説明する工程の順序は何ら限定されず、適宜変更してもよい。
【0038】
まず、ます20にオーバーフロー口23を形成する。ます20が樹脂製である場合、オーバーフロー口20は容易に形成することができる。次に、雨水浸透槽50を設置する。詳しくは、地面を掘って孔を形成し、その孔に透水シート52を敷いたうえで、透水シート52上に複数の貯留材51を配置する。そして、透水シート52でそれら貯留材51を覆う。これにより、雨水浸透槽50が完成する。次に、管路30を設置する。例えば、継手36(図2参照)の一端を雨水浸透槽50に接続し、継手36の他端にエルボ35を接続する。また、ます20と雨水浸透槽50との間に、ます33を設置する。そして、管31の一端をます20のオーバーフロー口23に接続し、管31の他端をます33の流入口33aに接続する。また、管32の一端をます33の流出口33bに接続し、管32の他端をエルボ35に接続する。これにより、雨水排出システム1の施工が完了する。
【0039】
以上のように、雨水排出システム1によれば、大雨時には、ます20内に流入した雨水のすべてを雨水本管13に排出するのではなく、雨水の一部を雨水浸透槽50に排出する。そのため、雨水本管13への雨水の排出量を抑制することができる。また、雨水本管13からます20に雨水が逆流してきた場合、その雨水を雨水浸透槽50に排出することができる。そのため、雨水が流入管11に逆流することを防止することができる。したがって、流入管11の上流側に位置する排水設備(図示せず)から雨水が溢れ出すことを防止することができる。
【0040】
また、雨水排出システム1は、既設の管路を利用して施工することができる。そのため、施工に要する手間と時間を抑えつつ雨水排出システム1を構築することができる。また、雨水排出システム1によれば、既設の管路上(すなわち、図5におけるます15、流入管11、ます20、および流出管12を結んだ線上)に雨水浸透槽50を設置する必要がない。そのため、既設の管路上に雨水浸透槽50の設置スペースを確保できなくても、雨水排出システム1を施工することが可能である。
【0041】
また、雨水排出システム1によれば、宅地内で集めた雨水を雨水浸透槽50に常に排出する訳ではないので、雨水浸透槽50の利用頻度を抑えることができる。そのため、雨水浸透槽50のメンテナンス回数を減らすことができる。
【0042】
本実施形態では、ます20の流入口21の下端21bの位置がオーバーフロー口23の上端23tの位置よりも高く、オーバーフロー口23の下端23bの位置が流出口22の上端22tの位置よりも高い。そのため、大量の雨水が雨水本管13に放出されること、および雨水が流入管11に逆流することを、より確実に防止することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ます20と雨水浸透槽50との間に、フィルター34を備えたます40が設置されている。そのため、雨水に含まれる異物が雨水浸透槽50に流入することを防止することができる。したがって、雨水浸透槽50の性能の劣化が抑制され、雨水浸透槽50の本来の性能を長期にわたって維持することが可能となる。
【0044】
なお、前述したように、ます20における流入口21と流出口22とオーバーフロー口23との位置関係は、前記実施形態のもの(図3参照)に限定される訳ではない。流入口21の下端21bの位置がオーバーフロー口23の下端23bの位置よりも高く、オーバーフロー口23の下端23bの位置が流出口22の下端22bの位置よりも高ければよい。流入口21の下端21bとオーバーフロー口23の上端23tとの位置の差h1は、オーバーフロー口23の下端23bと流出口22の上端22tとの位置の差h2と等しくてもよいが、図8に示すように、h1がh2よりも大きくてもよい。このように、流入口21と流出口23との中間の位置よりも下方にオーバーフロー口23を設けることとすれば、中間の位置にオーバーフロー口23を設けた場合と比較して、ます20内の水位がより低いときから、ます20内の雨水を雨水浸透槽50に排出することができる。すなわち、雨水浸透槽50に対して、より積極的に排水を排出することができる。ただし、オーバーフロー口23の位置は、大雨時等における雨水本管13に対する排水量と雨水浸透槽50に対する排水量とのバランスを考慮して、適宜に設定することができる。オーバーフロー口23の位置は何ら限定される訳ではない。
【0045】
流入口21、流出口22、およびオーバーフロー口23の形状および寸法も、何ら限定されない。例えば、オーバーフロー口23の寸法は、流入口21および流出口22の各寸法と同じであってもよいが、それらよりも小さくてもよく、大きくてもよい。なお、オーバーフロー口23の寸法を大きくすると、ます20内の雨水を雨水浸透槽50に対してより積極的に排出することができる。ただし、オーバーフロー口23の寸法も、雨水本管13に対する排水量と雨水浸透槽50に対する排水量とのバランスを考慮して、適宜に設定することができる。
【0046】
前記実施形態では、流入口21、流出口22、およびオーバーフロー口23は、いずれもます20の側面に形成されていた。しかし、図9に示すように、流入口21は、ます20の上面20aに形成されていてもよい。また、流出口22は、ます20の下面に形成されていてもよい。図9に示す例では、ます20は底部が開口したいわゆるドロップますであり、流出口22は、ます20の下面の全体に形成されている。
【0047】
前記実施形態では、流入口21と流出口22とオーバーフロー口23とが形成された管路形成部材は、ます20であった。しかし、本発明に係る管路形成部材は、ます20に限定される訳ではない。例えば、図10に示すように、流入口21と流出口22とオーバーフロー口23とが形成された管路形成部材として、T型の分岐継手40を用いてもよい。また、管路形成部材として、他の形状の分岐継手等を用いることも可能である。
【0048】
前記実施形態では、雨水排出システム1の施工に際して、既設の流入管11、流出管12、およびます20を流用することとした。しかし、流入管11および流出管12を流用しつつ、既設のますを他のますと交換することも可能である。例えば、流入口と流出口とが形成された既設のますを、流入口21と流出口22とオーバーフロー口23とが形成された新しいます20と交換するようにしてもよい。なお、この新しいます20においても、流入口21の下端21bの位置は、オーバーフロー口23の下端23bの位置よりも高く、オーバーフロー口23の下端23bの位置は、流出口22の下端22bの位置よりも高い。この場合、ますの交換作業が必要となるが、既設のますにオーバーフロー口23を形成する作業が不要となる。施工現場の状況により、オーバーフロー口23を形成する作業よりもますを交換する作業の方が容易な場合には、このようにますを交換するようにしてもよい。
【0049】
前記実施形態では、雨水槽として、複数の単位部材(すなわち、貯留材51)と透水シート52とから構成される雨水浸透槽50を用いていた。しかし、雨水槽は、他の構造を有する雨水浸透槽であってもよい。また、本発明に係る雨水槽は、貯留した雨水を地中に浸透させる機能を有する雨水槽、すなわち雨水浸透槽に限られない。雨水槽として、雨水を地中に浸透させない雨水貯留槽を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 雨水排出システム
11 流入管(流入管路)
12 流出管(流出管路)
20 ます(管路形成部材)
21 流入口
22 流出口
23 オーバーフロー口
30 管路(オーバーフロー管路)
31 管(第1の管)
32 管(第2の管)
33 ます
34 フィルター
50 雨水浸透槽(雨水槽)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と流出口とオーバーフロー口とが形成された管路形成部材と、
前記流入口に接続され、前記管路形成部材に向かって雨水を導く流入管路と、
前記流出口に接続され、前記管路形成部材から雨水本管に向かって雨水を流出させる流出管路と、
前記オーバーフロー口に接続され、前記オーバーフロー口を通じて前記管路形成部材の外部に溢れ出した雨水を導くオーバーフロー管路と、
前記オーバーフロー管路の下流端に接続された雨水槽と、を備え、
前記流入口の下端の位置は、前記オーバーフロー口の下端の位置よりも高く、
前記オーバーフロー口の下端の位置は、前記流出口の下端の位置よりも高い、雨水排出システム。
【請求項2】
前記流入口の下端の位置は、前記オーバーフロー口の上端の位置よりも高く、
前記オーバーフロー口の下端の位置は、前記流出口の上端の位置よりも高い、請求項1に記載の雨水排出システム。
【請求項3】
前記管路形成部材は、略鉛直方向に延びる略筒状体のますであり、
前記流入口は、前記ますの上面または側面に形成され、
前記オーバーフロー口は、前記ますの側面に形成され、
前記流出口は、前記ますの側面または下面に形成されている、請求項1または2に記載の雨水排出システム。
【請求項4】
前記オーバーフロー管路は、フィルターを備えたますを含んでいる、請求項1〜3のいずれか一つに記載の雨水排出システム。
【請求項5】
雨水を流入させる流入管路が接続された流入口と、雨水を雨水本管に向かって流出させる流出管路が接続された流出口とが形成され、前記流入口の下端の位置が前記流出口の下端の位置よりも高い既設のますに対して、その下端の位置が前記流入口の下端の位置よりも低く且つ前記流出口の下端の位置よりも高いオーバーフロー口を形成する工程と、
雨水槽を設ける工程と、
前記ますの前記オーバーフロー口と前記雨水槽とを接続する管路を形成する工程と、
を備えた雨水排出システムの施工方法。
【請求項6】
フィルターを備えたますを介して第1の管と第2の管とを接続することによって、前記管路の少なくとも一部を構成する工程をさらに備えた、請求項5に記載の雨水排出システムの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−184933(P2011−184933A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50716(P2010−50716)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】