説明

雨水流出抑制施設

【課題】路線方向に勾配を持つ道路1に沿って貯留浸透槽20が道路勾配とほぼ同じ勾配を持って埋設されている形態の雨水流出抑制施設において、貯留浸透槽20の有効雨水貯水率を向上させる、かつ貯留浸透槽20の全域にわたってほぼ等しく雨水を貯留できるようにする。
【解決手段】貯留浸透槽20が路線方向に勾配を持つ道路1に沿って道路勾配とほぼ同じ勾配を持って埋設されており、雨水は勾配上部に設けた流入桝40から貯留浸透槽20に流入し、流入した雨水は貯留浸透槽20を勾配下部方向へ流下するようになっている雨水流出抑制施設において、貯留浸透槽20を雨水の流れ方向に非透水性の隔壁22で複数の分割槽20a〜20dに分割する。そして、各分割槽20a〜20d同士を隔壁22の下部に形成した開口23によって互いに連通した状態とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、地中に埋設した貯留浸透槽に雨水を一時的に流入させることで、大量の降雨があったときに、道路側溝から雨水が道路などに流出するのを抑制し、また、中小河川の排水能力を上回る規模の雨水が河川に流れ込むのを防止できるようにした雨水流出抑制施設に関する。
【0002】
上記のような雨水流出抑制施設において、貯留浸透槽の上流側には管理桝を兼ねた集水桝が配置され、道路側溝などからの雨水を集水桝に集水した後、貯留浸透槽内に流入させるようにしている。また、貯留浸透槽の下流位置には管理桝を兼ねた流出桝が配置される場合が多く、その場合、貯留浸透槽から排出される雨水は流出桝に流入し、そこに形成されたオリフィス開口の開口面積に規制された量の雨水が、河川に流れ出るようにされている。
【0003】
流入桝からの流入量と流出桝からの流出量の差分の雨水が、貯留浸透槽内に一時的に貯留されて、貯留浸透槽が貯留槽の場合には貯留された雨水が時間をかけて河川に流出していき、浸透槽あるいは貯留浸透槽の場合は長い時間をかけて地中にも浸透していく。そのような雨水流出抑制施設の一例が特許文献1に記載されている。
【0004】
現在、施工あるいは提案されている雨水流出抑制施設は、道路勾配を持たない道路すなわち地表面がほぼ水平である道路に沿って貯留浸透槽を地中に埋設する形態のものが普通であり、路線方向に勾配を持つ道路に沿って貯留浸透槽を埋設して雨水流出抑制施設を構築することまでは、十分な検討がなされていない。
【0005】
特許文献2には、容器状部材を縦横かつ上下に連結したブロック構造体を地中に埋設して表層部に浸透した水をブロック構造体に集めて貯留部となすようにした雨水流出抑制施設が記載されており、その一実施の形態として、貯留部をなすブロック構造体に遮水部材を上下にかつブロック構造体の延出方向に等間隔に配置するようにしたものが記載されている。この形態では、ブロック構造体に貯まった水が遮水部材の上端より高い水位となると遮水部材を乗り越えて隣接する区画室に流入し、以下、順次この乗り越えを繰り返すことで、水がブロック構造体の延出方向にある排水口へ向かって流れるようにされている。
【0006】
そして、この形態のブロック構造体では、ブロック構造体の下の地盤が傾斜しているような場合でも、上流側ではブロック構造体内の水が低部へ流れてしまい、上流側の下方の地盤に水が浸透しないなどの欠点が生じない旨の記載されている。
【0007】
また、地中に設置する貯留浸透槽として、樹脂材料からなる貯水空間形成部材を多段に積み上げ、その周囲を透水シートあるいは遮水シートで覆って貯留浸透槽とすることも知られている(例えば、特許文献3、4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−52304号公報
【特許文献2】特開2000−160667号公報
【特許文献3】特開2008−8075号公報
【特許文献4】特開2009−24447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記したように、これまでの雨水流出抑制施設では、路線方向に勾配を持つ道路に沿って貯留浸透槽を埋設するようにしたものについての検討は十分にはされていない。今後、都市部などにおいて雨水流出抑制施設に対する需要がますます高くなることが予測され、その場合、前記した路線方向に勾配を持つ道路に沿って貯留浸透槽を埋設する形態の雨水流出抑制施設を構築することが現実に起こり得る。
【0010】
図7は、路線方向に勾配を持つ道路に沿って貯留浸透槽を埋設する場合での雨水流出抑制施設の一例を示している。図7において、道路1は水平面に対して角度αの勾配をもっており、この道路の路線方向に沿って、かつ道路勾配αとほぼ同じ勾配を持って貯留浸透槽2が埋設されている。貯留浸透槽2の勾配上部には流入桝3が配置され、貯留浸透槽2の勾配下部には流出桝4が配置されている。流出桝4は越流堰5を備えており、越流堰5の下部にはオリフィス6が形成されている。なお、図7で、7は流入桝3への雨水流入部であり、8は流出桝4での雨水流出部である。
【0011】
側溝などから流入桝3に流入した雨水は貯留浸透槽2に入り込み、そこから流出桝4に流入する。そして、流入する雨水の量が少ない場合には、越流堰5の下部に形成されたオリフィス6を通って流出桝4の外に排出される。雨水の流入量が大きくなると、貯留浸透槽2および流出桝4内での水位が次第に上がっていき、流出桝4内での雨水の水位が越流堰5の上端を超えると、超えた量の雨水すなわちオーバーフローした雨水が流出桝4の外に排出される。
【0012】
貯留浸透槽2が水平に埋設されている雨水流出抑制施設では、前記越流堰5の上端の高さを貯留浸透槽2の上端近傍の高さとしておくことにより、貯留浸透槽2のほぼすべての空間を貯水空間として利用することができる。しかし、図7に示すように、勾配αをもって貯留浸透槽2が埋設された雨水流出抑制施設では、流出桝4内の雨水の水位が越流堰5の上端の高さに達した時点で、貯留浸透槽2内には、多くの雨水が貯留されていない空間が存在することとなり、その雨水が貯留されない空間は、勾配αに比例して大きくなる。すなわち、勾配αで貯留浸透槽2が埋設された雨水流出抑制施設では、貯留浸透槽2の有効雨水貯水率が小さくなるのを避けられない。
【0013】
特許文献2に記載のように、貯留浸透槽2の勾配方向に遮水壁を設けて貯留浸透槽2内を勾配方向に複数の分割槽に分割し、上流側の分割槽の水位が前記遮水壁の上端より高い水位となったときに、遮水壁を乗り越えて隣接する下流側の分割槽内に流入させるように構成することにより、貯留浸透槽2内の無駄な空間、すなわち雨水が貯留されない空間を小さくすることができ、貯留浸透槽2の有効活用が図れる。しかし、単に遮水壁を設けて貯留浸透槽2内を複数の分割槽に分割した形態では、上流側の分割槽に遮水壁で規制される量の雨水が貯留された後でないと、下流側の分割槽に雨水が流れ込むことができないので、雨量が少ないときには、上流側の分割槽のみに雨水が貯留され、下流側の分割槽は空の状態となっていることが起こり、貯留浸透槽2内での雨水の貯留状態が均一にならないという不都合が生じるのを避けられない。
【0014】
また、貯留槽の場合、雨量が少ないときには、貯留槽内に留まることなく雨水の全量が流出桝4から河川などに流れ出ることが、必要時により多くの雨水を貯留できることから望ましいが、遮水壁を単に形成した貯留貯留槽では、最上流側の分割槽は常時雨水が貯留されている状態となりやすく、貯留浸透槽全体としての緊急時の有効貯水量が低減する。
【0015】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、路線方向に勾配を持つ道路に沿って貯留浸透槽が道路勾配とほぼ同じ勾配を持って埋設されている形態の雨水流出抑制施設において、貯留浸透槽の有効雨水貯水率を向上させることができ、かつ貯留浸透槽の全域にわたってほぼ等しく雨水を貯留できるようにした雨水流出抑制施設を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による地中に埋設された貯留浸透槽を持つ雨水流出抑制施設は、貯留浸透槽が路線方向に勾配を持つ道路に沿って道路勾配とほぼ同じ勾配を持って埋設されており、雨水は勾配上部に設けた流入桝から前記貯留浸透槽に流入し、流入した雨水は貯留浸透槽を勾配下部方向へ流下するようになっており、そこにおいて、貯留浸透槽は雨水の流れ方向に非透水性の隔壁で複数の分割槽に分割されており、各分割槽同士は隔壁下部に形成した開口によって互いに連通していることを特徴とする。
【0017】
本発明による雨水流出抑制施設では、非透水性の隔壁で分割された複数の分割槽は、隔壁下部に形成した開口によって互いに連通した状態となっており、流入桝から貯留浸透槽内に流入する雨水は、すべての分割槽内にほぼ均等に行き渡りやすくなる。そして、流入する雨水量が多くなると、各分割槽の水位はほぼ等しい速度で隔壁の上部まで上昇する。そのために、貯留浸透槽の使用領域が部分的に偏ることはなく、かつ、貯留浸透槽全体の有効貯水率も向上する。
【0018】
さらに、各分割槽同士は隔壁下部に形成した開口によって互いに連通していることで、貯留浸透槽内にたまった土砂やごみ等の固形物を、逆噴射ノズルやバキュームノズルを用いて除去することも可能となり、貯留浸透槽全体のメンテナンスも容易となる。
【0019】
好ましい態様において、雨水流出抑制施設は、貯留浸透槽の勾配下部側に流出桝を備えており、前記流出桝は内部に越流堰を有しており、前記越流堰は下部にオリフィス開口を有していることを特徴とする。
【0020】
この態様では、雨量が少ないときには、貯留浸透槽に流入する雨水はすべて前記オリフィス開口を通って、河川等に流出することができ、貯留浸透槽内をほぼ空の状態としておくことができる。そのために、大量に降雨があったときの有効貯水量を大きく確保しておくことができる。
【0021】
好ましい態様において、雨水流出抑制施設は、流入桝に形成した貯留浸透槽への雨水流入口と各隔壁下部に形成した開口はほぼ一直線状に配列しており、すべての開口にわたるようにして開口内には樋部材は配置されていることを特徴とする。
【0022】
この態様では、雨量の少ないときには、すべての開口にわたるようにして配置した樋部材を利用して、雨水を円滑に貯留浸透槽の外へ送り出すことができ、また、樋部材を利用して、逆噴射ノズルやバキュームノズルをより容易に貯留浸透槽内に導入することができるので、貯留浸透槽全体のメンテナンスは一層容易となる。
【0023】
好ましい態様において、雨水流出抑制施設は、各隔壁下部に形成した開口は勾配上部から勾配下部に向けて次第に開口面積が小さくなっていることを特徴とする。
【0024】
この態様では、各分割槽内に雨水が貯水されるときの、各分割槽での水位の上昇速度を一層均一化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、貯留浸透槽を路線方向に勾配を持つ道路に沿ってかつ道路勾配とほぼ同じ勾配を持つようにして埋設している雨水流出抑制施設において、貯留浸透槽全体の有効貯水率を向上させることができ、かつ貯留浸透槽の全域にわたってほぼ等しく雨水を貯留できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による雨水流出抑制施設の一例を路線方向に沿って示す概略図。
【図2】(a)は図1のa−a線による断面図、(b)は図1のb−b線による断面図。
【図3】本発明による雨水流出抑制施設の他の例を説明するための図2(b)に相当する図。
【図4】本発明による雨水流出抑制施設のさらに他の例を路線方向に沿って示す概略図。
【図5】図1に示した雨水流出抑制施設が貯水状態にあるときを説明する図。
【図6】貯留浸透槽を形成する貯水空間形成部材の一例を説明する図。
【図7】路線方向に勾配を持つ道路に沿って貯留浸透槽を埋設する形態の雨水流出抑制施設が貯水状態にあるときの例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明による雨水流出抑制施設の一例を示す概略図であり、この例において、雨水流出抑制施設A1は、路線方向に勾配を持つ道路1に沿って道路勾配αとほぼ同じ勾配を持って埋設されている貯留浸透槽20と、貯留浸透槽20の勾配上部に配置された流入桝40と、貯留浸透槽20の勾配下部に配置された流出桝50とを備える。
【0029】
貯留浸透槽20は、雨水を貯留できる貯留槽であってもよく、貯留した雨水を地中に浸透させる浸透槽であってもよい。図1に示す例では、貯留浸透槽20は貯留槽としての機能を果たすようになっている。貯留浸透槽20は、前記した特許文献3または4に記載されるような、従来知られたものであってよい。
【0030】
図1に示す貯留浸透槽20は、図6に示す樹脂製の貯水空間形成部材31を、90度方向を変えながら多段に積み上げて形成されたものであり、図2(a)(b)に示すように断面形状は矩形であり、道路1の路線方向に所要の長さを有している。また、貯留浸透槽20の側面は遮水シート21によって覆われている。
【0031】
なお、図6に示す貯水空間形成部材31は、前記した特許文献4に記載されるものであり、下端が開放された箱状部32aの複数個が間隔を空けながらX方向に配列した箱列32が、X方向に直交するY方向に間隔を空けながら必要列数だけ配列した構成を基本的に備えている。必要な場合には、異なった大きさの複数個の貯水空間形成部材31を箱列(凸部からなる列)32の方向が同じ方向となるように寄せ集めて貯水空間形成部材31とすることもできる。
【0032】
そして、貯水空間形成部材31の多数枚を、前記箱列(凸部からなる列)32の方向が交互に90度に交差した姿勢で上下方向に積み上げることにより、貯留浸透槽20とされる。図示の例で、貯留浸透槽20は、道路1の勾配と同じ勾配に掘削された溝の底部を砕石のような基礎材9を敷き詰めて均平化し、その上に配置されている。
【0033】
この例で、貯留浸透槽20は、最下位に配置した貯水空間形成部材31における前記した箱列(凸部からなる列)32、32の間のX方向に延びる空間領域の向きが、路線方向と同じ方向となるようにして、地中に埋設されている。また、貯留浸透槽20の路線方向の適所には、図2(b)に示すように、貯留浸透槽20の断面における一部の上部領域を除いた全領域を閉鎖するようにして、例えばポリオレフィンシート、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリウレタンシート、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)シート、合成ゴムシートのような材料である非透水性材料からなる隔壁22が、所要の間隔をおいて、所要の枚数だけ配置されている。なお、図示のものでは3枚の隔壁22が示されるが、これに限らない。そして、各隔壁22の下部における、前記した貯水空間形成部材31の箱列(凸部からなる列)32、32の間のX方向に延びる空間領域のいずれか1つと一致する位置には、オリフィスとして機能する開口23が形成されている。そして、各隔壁22の下部に形成した前記開口23は、ほぼ路線方向に一直線状に配列するようにされている。
【0034】
さらに、必須のものではないが、貯留浸透槽20の路線方向全長にわたるようにして、前記箱列(凸部からなる列)32、32の間のX方向に延びる空間領域と各隔壁22に形成した開口23内を連続的に通過するようにして樋部材24が配置されている。
【0035】
貯留浸透槽20は、所要枚数の隔壁22が配置されることによって、複数個(図示のものでは4個)の分割槽20a〜20dに分割され、分割した貯水空間となっている。ただし、各隔壁22は貯留浸透槽20の上端までは達していないので、隔壁22の上端より上方では、貯水空間は連続した貯水空間となっている。また、各分割槽20a〜20dの下端部は前記した隔壁22に形成した開口23によって互いに連通している。
【0036】
なお、貯留浸透槽20に取り付ける前記隔壁22は、後に記載するように、その数が多いほど貯留浸透槽20の有効貯水率は向上する。しかし、一方において、貯留浸透槽20の施工効率は低下する。貯留浸透槽20の路線方向の長さと求められる有効貯水率とを考慮して、適数の枚数を選択すればよい。
【0037】
流入桝40は、従来知られた流入桝であってよく、上面に管理用開口41を有し、また、上方領域には雨水の入口42を有しいている。雨水入口42には、図示しない道路側溝などからの雨水流入管が接続される。流入桝40は、図示されるように、その1つの側壁43を貯留浸透槽20の勾配上部側の端面に接するようにして配置されており、該側壁43の前記貯留浸透槽20の前記した樋部材24が位置する部分には、貯留浸透槽20への雨水流入口44が形成されている。図示の例において、前記雨水流入口44と各隔壁22の下部に形成した開口23は、ほぼ一直線状に配列した状態となっており、すべての開口にわたるようにして、該開口内には前記した樋部材24は配置されている。また、前記側壁43の貯留浸透槽20の上位部に対応する位置に通気開口45が形成されていて、該通気開口45を通して貯留浸透槽20の上方領域は大気に連通している。
【0038】
流出桝50も、従来知られた流出桝であってよい。図示のものでは、その1つの側壁51を貯留浸透槽20の勾配下部側の端面に接するようにして配置されており、該側壁51の、前記貯留浸透槽20に配置した前記した樋部材24が位置する部位には、貯留浸透槽20からの雨水が出るための雨水流出口52が形成されている。また、前記側壁51の貯留浸透槽20の上位部に対応する位置には、通気開口53が形成されており、該通気開口53を通して貯留浸透槽20の上方領域は大気に連通している。なお、54は上面に形成された管理用開口である。
【0039】
流出桝50は、貯留浸透槽20に接する側壁51と反対側の側壁55に流出管56を接続しており、流出桝50内の雨水はそこを通して河川等に排出される。2つの側壁51、55の間には越流堰57が立設されており、その上端は貯留浸透槽20の上端近傍位置に達しており、流出桝50の天板と越流堰57の上端との間は、雨水越流空間とされている。また、越流堰57の下方部にはオリフィスとして機能する開口58が形成されている。
【0040】
上記の雨水流出抑制施設A1での雨水貯留状態を説明する。流入桝40には、図示しない道路側溝などからの雨水が雨水入口42から流入する。流入した雨水は、流入桝40に形成した雨水流入口44のレベルに達すると、そこから、貯留浸透槽20内に入り込んでいく。図示のものでは、雨水流入口44には、前記のように樋部材24の先端が位置しており、該樋部材24は各隔壁22の開口23を通過するようにして配置されていて、その後端は流出桝50の雨水流出口52に達しているので、雨水の量が樋部材24を越流しないで流下できる量の場合には、雨水は、そのまま流出桝50まで流下する。
【0041】
流出桝50内に流入した雨水は、側壁51と越流堰57との間の空間に貯留され、越流堰57の下方部に形成したオリフィス開口58のレベルに達すると、そこを通って越流堰57と側壁55の間の空間に流下し、流出管56から流出桝50の外に排出される。
【0042】
雨水の量が次第に大きくなると、雨水は樋部材24を越流するようになり、越流した雨水は貯留浸透槽20内に一時的に貯留されるとともに、貯留浸透槽20内での水位は次第に上昇する。水位の上昇とともに、貯留浸透槽20内の空気は通気開口45あるいは通気開口53を通して外部に排出される。
【0043】
水位が上昇する間も、側壁51に形成した雨水流出口52からは、開口面積に規制された量の雨水が、側壁51と越流堰57との間の空間に流入し、該空間内での水位も次第に上昇していく。そして、側壁51と越流堰57との間の空間での水位が、越流堰57の上端のレベルに達すると、そこを越流した雨水は、流出桝50の天板と越流堰57の上端との間の雨水越流空間を通って、越流堰57と側壁55の間の空間に流下し、流出管56から流出桝50の外に排出される。なお、上記の雨水流出抑制施設A1では、前記樋部材24を貯留浸透槽20内に配置したことで、逆噴射ノズルやバキュームノズルをより容易に貯留浸透槽20内に導入することができるようになり、貯留浸透槽20全体のメンテナンスも容易となる。
【0044】
本発明による雨水流出抑制施設A1では、貯留浸透槽20は路線方向に勾配を持つ道路に沿って道路勾配とほぼ同じ勾配を持って埋設されており、かつ、貯留浸透槽20は雨水の流れ方向に非透水性の隔壁22で複数の分割槽20a〜20dに分割されている。したがって、雨水の流入量が大きくなったときの貯留浸透槽20での雨水貯留状態は、次のようにして進行する。
【0045】
すなわち、各分割槽20a〜20dは、隔壁22の下部に形成したオリフィス開口23によって互いに連通した状態にあるので、各隔壁22の開口23の断面積に応じた量の雨水は、常に、当該隔壁22の下流側の分割槽に流入するようになる。そして、各分割槽20a〜20d内では、下流側に位置する隔壁22に形成された開口23を流下する量以上の雨水が流入すると、その差分の雨水が当該分割槽に貯留されるようになる。したがって、流入桝40に形成した雨水流入口44の開口面積、各隔壁22に形成した開口23の開口面積、および、流出桝50の側壁51に形成した雨水流出口52の開口面積、を適宜設定することにより、図5に示すように、それぞれの分割槽20a〜20d内に、同時に雨水は貯留されることとなり、各分割槽での雨水の最大貯水量は、下流側に位置する隔壁22の上端高さによって規制される。なお、最下流側の分割槽である分割槽20dでは、最大貯水量は、流出桝50の側壁51に形成した通気開口53の高さ位置の規制を受ける。
【0046】
特に好ましい態様は、各隔壁22の下部に形成した開口23の面積が、勾配上部から勾配下部に向けて次第に小さくなるように設定される。それにより、各分割槽20a〜20dでの雨水の貯水状態をほぼ一定速度とすることができ、貯留浸透槽20全体での雨水貯留効率を一層改善することができる。
【0047】
図5と図7とを比較すればわかるように、本発明による雨水流出抑制施設A1では、貯留浸透槽20が路線方向に勾配を持つ道路に沿って道路勾配とほぼ同じ勾配を持って埋設されていながら、貯留浸透槽20を雨水の流れ方向に非透水性の隔壁22で複数の分割槽20a〜20dに分割したことで、貯留浸透槽20全体での有効貯水率を大きく改善することが可能となる。
【0048】
なお、貯留浸透槽20は、非透水性の隔壁22を介在させることで、複数に分割されるが、図1,2に示す例では、隔壁22は貯留浸透槽20の上端にまでは達していない。隔壁22が存在しない領域では、図6に基づき説明した樹脂製の貯水空間形成部材31を位置をずらしながら積層することで、連続した状態とすることができるので、貯留浸透槽20全体の構成を安定化することができる。
【0049】
なお、図3に貯留浸透槽20の断面図を示すように、隔壁22として、貯留浸透槽20の断面全体を覆う大きさのものを用いることもできる。ただし、その場合には、当該隔壁22の上端に空気抜き孔25を形成することが必要となる。
【0050】
図4は、本発明による雨水流出抑制施設の他の例示す概略図であり、この雨水流出抑制施設A2は、流出桝50を備えない点、および貯留浸透槽20が遮水シート21でなく透水性シート26で覆われている点の2点で、上記した雨水流出抑制施設A1と相違する。他の構成は雨水流出抑制施設A1と同じであり、同じ符号を付すことで説明は省略する。
【0051】
この雨水流出抑制施設A2での貯留浸透槽20における雨水の貯留態様は、雨水流出抑制施設A1の場合と同じであり、貯留された雨水が河川に放出されるのではなく、透水性シート26を通して徐々に地中に浸透していく点で相違するだけである。
【符号の説明】
【0052】
A1,A2…雨水流出抑制施設、
1…路線方向に勾配を持つ道路、
20…貯留浸透槽、
20a〜20d…各分割槽、
21…遮水シート、
22…非透水性材料からなる隔壁、
23…オリフィスとして機能する開口、
24…樋部材、
25…空気抜き孔、
26…透水性シート、
31…樹脂製の貯水空間形成部材、
40…流入桝、
41…管理用開口、
42…雨水入口、
43…側壁、
44…雨水流入口、
45…通気開口、
50…流出桝、
51、55…側壁、
52…雨水流出口、
53…通気開口、
54…管理用開口、
56…流出管、
57…越流堰、
58…オリフィスとして機能する開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された貯留浸透槽を持つ雨水流出抑制施設であって、
前記貯留浸透槽は路線方向に勾配を持つ道路に沿って道路勾配とほぼ同じ勾配を持って埋設されており、
雨水は勾配上部に設けた流入桝から前記貯留浸透槽に流入し、流入した雨水は貯留浸透槽を勾配下部方向へ流下するようになっており、
そこにおいて、前記貯留浸透槽は雨水の流れ方向に非透水性の隔壁で複数の分割槽に分割されており、各分割槽同士は隔壁下部に形成した開口によって互いに連通していることを特徴とする雨水流出抑制施設。
【請求項2】
貯留浸透槽の勾配下部側には流出桝が備えられており、前記流出桝は内部に越流堰を有しており、前記越流堰は下部にオリフィス開口を有していることを特徴とする請求項1に記載の雨水流出抑制施設。
【請求項3】
流入桝に形成した貯留浸透槽への雨水流入口と各隔壁下部に形成した開口はほぼ一直線状に配列しており、すべての開口にわたるようにして開口内には樋部材は配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の雨水流出抑制施設。
【請求項4】
各隔壁下部に形成した開口は勾配上部から勾配下部に向けて次第に開口面積が小さくなっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の雨水流出抑制施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−247014(P2011−247014A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122635(P2010−122635)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】