説明

雨水浸透管用排水フィルタ

【課題】 土砂だまりに停滞する雨水を排出することのできる排水フィルタを提供する。
【解決手段】 街渠ますの底部を開口し、この開口を貫通する浸透管WPを地中に配設してなる雨水浸透構造体に使用する排水フィルタである。排水フィルタは、浸透管の上端に装着され、側壁の複数個所に浸透孔4が穿設された筒状の本体部1と、本体部の内部に配置されるフィルタ材2と、フィルタ材を支持しつつ本体部に着脱可能に設けられるフィルタ支持部3と、フィルタ材を貫通する通気部材5とを備えたことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、街渠ます(集水ます)の底部を開口し、この開口を貫通する浸透管を地中に配設してなる雨水浸透管に使用される排水フィルタに関し、特に、雨水浸透管の上端に設置する排水フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる集中豪雨により、下水管の処理能力を超える量の降雨があった場合には、路面に雨水が溜まり、これが河川に流入するときには河川の氾濫を招き、また、標高の低い地域に流入するときには床上浸水などの被害を生じさせることとなっていた。そこで、街渠ますに流入する雨水を効果的に地中に浸透させることができる構造体が切望されているところであるが、本願の出願人らは、街渠ますの底部から浸透性を有する地盤に至る範囲に浸透管を設置するための掘削装置を提案し、また、市街地における街渠ますから雨水を地中に浸透させることのできる雨水浸透構造体をも提案した(特許文献1参照)。
【0003】
上記の雨水浸透構造体は、地中に配設した浸透管の内部にフィルタ材を充填する構成であり、街渠ますから流下する雨水が地中に浸透する際、雨水に含まれる油や金属類を除去することができるものであった。
【0004】
しかし、雨水が街渠ますに流入する際には、路面に存在する土砂等をも含むことから、一般的な街渠ますは、土砂だまり(泥溜め部ともいう)と称するトラップ構造が採用され、街渠ますに流入する上澄み水を排出するように構成されていた。さらに、上記トラップを超えて浸透管に流入する雨水には、砂やゴミなどが含まれていることから、浸透管の上端の開口部にフィルタが設けられていた(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4465029号公報
【特許文献2】特開2006−138197号公報(7ページ、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の特許文献2に開示されるフィルタは、網目状に形成されたフィルタ枠と、このフィルタ枠内に配置される細目フィルタとで構成され、フィルタ枠は大きなゴミの流入を防ぎ、細目フィルタは雨水に含まれる固形物(砂利や砂等)の流入を防ぐように構成されたものである。
【0007】
しかしながら、土砂だまりを有する街渠ますは、多量の雨水が流入して、水位が一定の高さ(浸透管開口部の高さ)を超えるとき、浸透管の上端開口部から雨水が流入するものであり、街渠ますに流入した雨水の水位が低い場合には街渠ます内に停滞することとなるものであった。そのため、土砂だまりに停滞する雨水が長期間溜まった状態となり、これが蚊の発生源となっていた。また、土砂だまりに土砂が堆積している場合には、堆積する土砂の内部に雨水が浸透し、この浸透水が蒸発できず、堆積土砂の表面付近は乾燥しているとしても、内部には浸透水が長期間停滞することとなっていた。このような状態においてもやはり蚊の発生源となっていた。
【0008】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、土砂だまりに停滞する雨水を排出することのできる排水フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、街渠ますの底部を開口し、この開口を貫通する浸透管を地中に配設してなる雨水浸透構造体において、上記浸透管の上端に装着され、側壁の複数個所に浸透孔が穿設された筒状の本体部と、この本体部の内部に配置されるフィルタ材と、このフィルタ材を支持しつつ上記本体部に着脱可能に設けられるフィルタ支持部と、上記フィルタ材を貫通する通気部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
上記構成によれば、街渠ますに流入した雨水は、浸透管に接続される本体部の上端を超える水位となるとき、本体部の上部開口部から本体部の内部に流入し、フィルタ材を経由して浸透管により排水されることとなる。このとき、本体部の上部開口部から大量の雨水が流入することとなるが、フィルタ材を貫通する通気部材によって、フィルタ材よりも下方の空気を上方に排出することが可能となる。特に、集中豪雨による排水時においては、本体部を流下する雨水の量が多く、フィルタ材を大量の雨水が通過する際、フィルタ材よりも下方の空気の逃げ場がなくなり、結果的に、大量の雨水が浸透管に流下できない可能性もあったが、フィルタ材よりも下位の空気が通気部材を経由して上方に排出できれば、浸透管への流下を円滑にすることができる。また、街渠ますに流入した雨水の水位が本体部の上端よりも下位である場合には、本体部の側壁に浸透孔からフィルタ材を経由して浸透管に雨水を流入させることができる。従って、本体部が浸透管に接続されることによって、街渠ますの底部にトラップ構造を形成して土砂だまりを設けることができるとともに、この土砂だまりに堆積する土砂に浸透する雨水を本体部から浸透管に排出させることができる。
【0011】
上記発明において、前記本体部は、所定の長さ寸法を有し、前記浸透管の上端縁から延出するように装着されるように構成することができる。
【0012】
上記構成によれば、浸透管の上端開口部の位置は、本体部の上端の位置が実質的な開口位置となり、街渠ますに流入した雨水の水位が上記開口位置に到達するとき、浸透管に雨水が流入することとなり、トラップ構造(土砂だまり)による土砂等の貯留量を本体部の長さによって調整することができる。なお、この場合、浸透管本体の上端開口部(現実の開口位置)は、街渠ますの底面付近に位置することとなる。
【0013】
上記各発明において、前記フィルタ支持部は、通水可能な底部および天板部を備え、該底部および該天板部の中間に前記フィルタ材を保持するフィルタ支持部であり、前記通気部材は、上記底部および天板部を連結しつつ上記フィルタ材を貫通する通気部材であるように構成することができる。
【0014】
上記構成によれば、フィルタ支持部によって支持されるフィルタ材は、底部と天板部の中間に保持されることから、フィルタ支持部のうち底部または天板部を取り外すことによってフィルタ材の着脱を可能にすることができる。また、通気部材は底部と天板部とを連結するように設けられていることから、通気部材がフィルタ支持部の支柱としての機能を有する構成となり、これらを一体として本体部に装着することができる。
【0015】
上記各発明において、前記本体部は、下部に浸透管連結部を有し、上部に天板部保持部を有する本体部とすることができる。
【0016】
上記構成によれば、筒状の本体部のうち、下部は専ら浸透管との連結のための構成部として機能し、上部は専ら天板部を保持するための構成部として機能させることができる。これにより、本体部は、下部の浸透管連結部が浸透管に連結して、当該浸透管によって支持される状態となり、また、上部においてフィルタ支持部の天板部が支持されることから、この天板部と通気部材とで連結される底部、および、天板部と底部とにより保持されるフィルタ材は、天板部とともに本体部の上部(天板部保持部)に支持されることとなる。従って、フィルタ材は、本体部の内部に保持され得ることとなる。
【0017】
また、本発明は、下水管が接続される街渠ますの底部を開口し、この開口を貫通する浸透管を地中に配設してなる雨水浸透構造体において、上記浸透管の上端に装着され、側壁の複数個所に浸透孔が穿設された筒状の本体部と、この本体部の内部に配置されるフィルタ材と、このフィルタ材を支持しつつ上記本体部に着脱可能に設けられるフィルタ支持部と、上記フィルタ材を貫通しつつフィルタ支持部によって支持される通気部材とを備え、上記フィルタ支持部は、通水可能な底部および天板部を備え、該底部および該天板部の中間に上記フィルタ材を保持するフィルタ支持部であり、上記通気部材は、上記底部から突出する下部突出領域と、上記天板部から突出する上部突出領域と、上記フィルタ材を貫通しつつ上記底部および上記天板部を連結する中間領域とに区分されてなる通気部材であることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、浸透管の上端に装着される本体部の内部には、フィルタ支持部によって支持されるフィルタ材が設置されることとなる。従って、本体部の上部開口部から流入する雨水も、本体部側壁の浸透孔から流入する雨水も、フィルタ材を通過した後に浸透管に流入させることができる。また、通気部材は、フィルタ材の下方から上方までを通気可能となるため、本体部の内部を雨水が通過する際、本体部下方の空気を街渠ますの内部に移動させることができ、いわゆる空気抜きによって、本体部内の雨水の流下を容易にするものである。
【0019】
上記発明において、前記通気部材は、前記上部突出領域の上端が前記街渠ますに接続される下水管の開口部よりも上位となる長さで構成されている構成とすることができる。
【0020】
上記構成によれば、街渠ますには下水管が接続され、街渠ますに流入した雨水の水位が下水管の開口部よりも上位となる場合に下水管に流入することとなるが、この水位が下水管の開口部よりも下位である場合は、街渠ますに貯留されることとなる。従って、通気部材の上端が下水管の開口部よりも下位である場合は、浸透管内の空気を十分に抜くことができないが、開口部よりも上位であれば、下水管に流入しない程度の雨水の流入の際には、これを迅速に浸透管に流入させることができる。
【0021】
上記各発明において、前記天板部は、前記浸透孔よりも大径の浸透用貫通孔が複数穿設されている構成とすることができる。
【0022】
上記構成によれば、天板部すなわち本体部の上部開口部から流入する雨水は、本体部側壁の浸透孔から流入する雨水よりも多量となり、土砂だまりを超える量の雨水が街渠ますに流入したとき、その雨水を迅速に排水させることが可能となる。また、このとき、フィルタ材を貫通する通気部材によってフィルタ材よりも下部の空気が本体部外方に排出されるため、その流入を促進することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、街渠ますに流入した雨水は、当該街渠ますの底面付近において、本体部に設けられた浸透孔を通過することから、トラップが形成されることによって土砂だまりを構成する街渠ますにおいても、当該土砂だまりに停滞する雨水は、この本体部の浸透孔から雨水浸透管に排出することができる。このとき、本体部の内部に配置するフィルタ材を雨水が通過することにより、当該雨水を濾過しつつ浸透管に排水することとなるのである。
【0024】
そして、土砂だまりに土砂が堆積している場合においても、当該土砂に浸透している雨水は、堆積土砂の下位に停滞することとなり、当該下位の堆積土砂の粒間を移動した雨水を浸透孔から排出できるのである。
【0025】
このように、街渠ますの土砂だまりに停滞する雨水を排出することにより、蚊の発生源を減少させることとなり、快適な生活環境を提供することができるという効果をも奏するものである。
【0026】
他方、通気部材がフィルタ材を貫通して設けられていることから、フィルタ材下部と本体部上方との間で通気可能となり、大量の雨水が本体部に流入した際であっても、フィルタ材下部に停滞する空気を外部に抜き取ることができ、雨水の流下を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態の各部材を一体化した状態の断面図である。
【図3】実施形態を雨水浸透管に設置した状態を示す断面図である。
【図4】実施形態の使用状態を示す説明図である。
【図5】実施形態の使用状態を示す説明図である。
【図6】他の実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態を示す分解斜視図である。この図に示すように、本実施形態は、雨水浸透管(以下、浸透管という)WPの上端に接続することができる本体部1と、この内部に配置されるフィルタ材2と、このフィルタ材2を支持するフィルタ支持部3とで構成されている。
【0029】
本体部1は、大別すると下部11と、胴部12と、上端部13とに区分されている。下部11は、円筒状の浸透管WPとの連結を可能にするために、概略円筒状に形成され、その内径は、浸透管WPの外径とほぼ同径にされている。この下部11が浸透管WPの先端付近を包囲するように、浸透管WPの外側表面に下部11の内側表面を密着させることによって、下部11が浸透管WPに連結することとなる。そこで、以下において、この下部11を浸透管連結部と称する。
【0030】
胴部12は、浸透管連結部11よりも径を大きくする円筒状に形成され、軸線方向に所定の長さ寸法を有するように構成されている。さらに、胴部12の側壁には、当該胴部12の軸線方向に沿って整列させた複数の貫通孔(これを浸透孔という)4が穿設されている。このように整列させた浸透孔4の集合体(浸透孔群)40は、胴部12の全周にわたって設けられており、各浸透孔群40は周方向に所定間隔を有している。このように、浸透孔群40が胴部12の軸線方向に整列される複数の浸透孔4によって構成されることにより、胴部12の軸線方向の下位から上位に至る範囲で雨水を浸透させることができるようになっている。なお、胴部12は、浸透管連結部11と同径で構成してもよいが、内部にフィルタ材2が配置されることから、流量を大きくするために径を大きくしている。そのため、浸透管連結部11との境界部分をテーパ状とし、異なる径の筒状部材が連続するように構成している。
【0031】
本体部1の上端部13は、胴部12に連続して開口部が形成され、この開口部にフィルタ支持部3を装着できるようになっている。フィルタ保持部3を構成する天板部31が、上端部13の開口を閉塞する蓋のように装着できるようになっており、上端部13を天板部保持部として機能させているのである。そして、この上端部(天板部保持部)13によって保持される天板部31が、底部32と接続することによって、両者がともに当該上端部13によって支持されるものである。
【0032】
フィルタ材2は、繊維質または多孔質材料などを成形することによって構成され、本体部1の内部に配置できる形状に成形されている。ここで使用される材料は、街渠ます内の土砂が混入しない程度に濾過できればよく、そのために、粗目の濾過材が使用される。なお、フィルタ材2の中央には、貫通孔21が設けられており、後述の通気部材5が挿通できるように構成されている。
【0033】
フィルタ支持部3は、上述のとおり、天板部31および底部32で構成されるものであって、この両者間にフィルタ材2が保持されるものである。天板部31と底部32のそれぞれには、中央付近に貫通孔33,34が穿設されており、この貫通孔33,34に挿通される通気部材5によって、両者を一体的に形成されている。すなわち、天板部31と底部32とは独立した個別の部材で構成され、これを通気部材5が連結しているのである。
【0034】
ここで、通気部材5は、専ら直線状のパイプ51によって構成され、天板部31、フィルタ材2および底部32を同時に貫通するものである。このパイプ51の適宜位置には、大径の管体(第一の管体)52が装着され、天板部31の装着位置を決定させる位置決め部材として機能させている。また、上記パイプ51の下部先端にも大径の管体(第二の管体)53を接続可能になっており、底部32の下降防止のためのストッパとして機能させている。従って、フィルタ支持部3を構成する天板部31および底部32は、上記第一の管体52と第二の管体53との間で所定の間隔を有して配置されることとなり、この両者の中間にフィルタ材2を配置することにより、当該フィルタ材2が天板部31と底部32とで挟持されるように構成しているのである。
【0035】
なお、上記パイプ51に装着される第一および第二の管体52,53は、接着剤等によって貼着してもよいが、少なくとも第二の管体53を例えば螺着することにより、着脱可能に設けることができ、これによって、底部32およびフィルタ材2を通気部材5から取り外すことが可能となる。この取り外し可能な構成とすることによって、フィルタ材2を交換することができるものとなる。
【0036】
また、パイプ51は、天板部31から上方に所定の長さで突出するように(すなわち、第一の管体52から所定長さを有して)設けられており、天板部31の上部と底部32の下部との間で空気を移動させることができるようになっている。なお、パイプ51の上端は、通気のために開口されるものであるが、直線状のパイプ51をそのまま開口させる態様のほか、図示のように、二股状に分岐させることができるT型管(いわゆるチーズ)54を設ける構成としてもよい。このように、チーズ54を設ける構成の場合には、パイプ51の上端からゴミ等の混入を抑制することができる。また、本実施形態では、パイプ51は連続した1本で構成しているが、第一の管体52を管継ぎ手によって構成することにより、内部空間を連続させつつ二本のパイプによって形成させることも可能となる。この場合、使用される街渠ますの大きさ等に応じて、天板部31から上方に突出する長さを適宜変更することも可能となる。
【0037】
このように、フィルタ支持部3は通気部材5によって連結され、一体化されるものであるが、このフィルタ支持部3は、雨水を流下させるために通水可能でなければならない。そこで、上述の天板部31および底部32は、図示のように、天板部31には大きい貫通孔35を複数穿設し、他方、底部32は、中央から4枚の板状部材36,37,38,39を突出させ、十字状に形成するように設ける形態としてもよい。なお、天板部31および底部32は通水可能となっていれば、その形状・構造はいかなるものであってもよい。
【0038】
また、天板部31は、本体部1に装着できる構成であればよく、例えば、図示のように、天板部31の側壁部は、本体部1の上端部13と同径部分30Aと、上端部13の内部に嵌入できる小径部分30Bとで構成することができる。このような構成により、小径部分30Bを本体部1の内部に挿入しつつ、同径部分30Aを上端部13の端縁に当接させることで、本体部1に装着させることができる。なお、このような装着方法のほかに、上端部13よりも大径となる部分を設け、当該上端部13を被覆できるように構成してもよい。
【0039】
上記構成の本実施形態について、各部材を連結した状態を図2に示す。この図に示すように、フィルタ支持部3を構成する天板部31は、本体部1の上端に装着され、フィルタ材2は、天板部31と底部32の中間に配置され、底部32は、パイプ51の先端の管体53によって下降を制限されつつ支持された状態となっている。この状態により、フィルタ材2は、フィルタ支持部3(天板部31および底部32)によって支持され、このフィルタ材2を含むフィルタ支持部3は、本体部1の上端に支持されることとなる。
【0040】
従って、フィルタ支持部3を構成する天板部31および底部32と、これに支持されるフィルタ材2を、本体部1から下向きに落下することなく、当該本体部1の内部に装着させることができるのである。
【0041】
さらに、パイプ51は、フィルタ材2を貫通しつつ、フィルタ材2の上方に突出するように配置され、その上端が開口されている。従って、フィルタ材2の下方と、フィルタ材2の上方との間で通気可能になっている。これにより、本体部1の内部を(フィルタ材2を通過して)雨水が流下する際、フィルタ材2の下部に存在する空気を本体部1の外部に排出することができる。
【0042】
そこで、図3に示すように、パイプ51の下端の位置を本体部1の内部とすることにより、浸透管WPの上端付近に配置させることができる。これにより、本体部1および浸透管WPの内部から空気を抜き取ることができるのである。つまり、筒状の本体部1または浸透管WPに空気が存在する状態において、雨水が流入する際には、雨水と入れ替わりに空気が水の間隙から排出されるが、大量の水が流入する場合には水に間隙が生じず、空気が抜けないことによって水が流入しないことがある。また、フィルタ材2の全体に水が浸透し、空気が移動できない場合も同様に、空気が抜けずに水が流下しないことがある。そこで、上記空気が最も溜まりやすいフィルタ材2の直下に開口するパイプ51を配置させることによって、本体部1または浸透管WPの内部の空気を外方に排出させることが可能となるのである。
【0043】
本実施形態は、上記のような構成であるから、図4に示すように、浸透管WPに装着された本体部1は、当該浸透管WPを延長するような状態となり、管体(浸透管WPと本体部1とが一体化した全体)の開口の位置が浸透管WPの上端よりも上方に位置することとなる。なお、浸透管WPと本体部1との装着は、本体部1の浸透管連結部11の内側に浸透管WPを挿入することによって可能であるが、本体部1を強固に装着するためには、両者の当接面を接着剤等により接着すればよい。
【0044】
そして、本体部1を街渠ますXに設けられる浸透管WPの上端に設置した場合、土砂だまりを有する街渠ます構造とすることができる。すなわち、図示のように、街渠ますXの底面を開口し、そこに設置される浸透管WPの上端は、当該街渠ますXの底面付近に位置しているが、その街渠ますXの上端縁に上記実施形態(排水フィルタF)を接続することにより、当該浸透管WPは上方に延長された状態となり、その開口端は、街渠ますXの底面から所定の高さH1に位置することとなる。従って、街渠ますXに流入する雨水の水位が所定高さH1を超えるとき、排水フィルタFの上端開口部(天板部31に設けた貫通孔)から浸透管WPに排水されることとなるのである。これとは逆に、雨水の水位が所定高さH1よりも低い場合には、排水フィルタFの上端開口部から排水されることがない(浸透孔4からの流入はあり得るが、ここでは考慮しないものとする)。このように、排水フィルタFが装着されることによってトラップが形成されるのであり、このトラップ構造によって、土砂だまりが構成されるのである。
【0045】
ところで、一般的な街渠ますXには、下水道管UPが接続されており、街渠ますXに流入した雨水を下水に合流させる構造となっている。この下水道管UPは、街渠ますXの底面から所定の高さH2の位置で開口するように接続されており、この高さによっても土砂だまりが構成されるものである。従って、浸透管WPを設置しない場合であっても、一般的な街渠ますXには、土砂だまりが構成されているのであり、この土砂だまりは、下水道管UPに土砂が流入することを抑制しているのである。このように、街渠ますXには土砂だまりを構成することが一般的であり、浸透管WPを設置する場合においても、土砂だまりを構成して土砂の流出を抑制することが要求されているのである。
【0046】
ここで、図5に示すような使用形態では、排水フィルタFの上端の高さH1よりも下水道管UPの開口が上位に設けられている。これは、いわゆるベースカット方式とするものであり、排水フィルタFの上端の高さを超える水位において、先に浸透管WPに排水されるが、浸透管WPへの排水量よりも多量の雨水が街渠ますXに流入し、その水位が上昇するとき、下水道管UPにも排水される構成である。この図に示す形態のほかに、いわゆるピークカット方式とする場合には、排水フィルタFの開口高さH1よりも下水道管UPの開口高さH2を低くするように調整するのである。そのための高さ調整は、本体部1の胴部12の長さを変更することによって容易に対応させることが可能である。
【0047】
なお、このように、両者の高さH1,H2のうち一方を他方と異ならせることにより、浸透管WPまたは下水道管UPのいずれか一方からの排水を優先させることができるので、豪雨等による多量の雨水を排出する際の流量予測を可能としている。
【0048】
また、通気部材5の上端位置は適当な高さに設置することが好ましい。すなわち、図5において示しているように、通気部材5の上部開口部(チーズ54による開口部)55,56の高さを下水道管UPの開口位置よりも高く設けることにより、下水道管UPに流入する程度の雨水が街渠ますXに流入したとしても、排水フィルタFおよび浸透管WPの内部の空気を外部に排出させることができるのである。
【0049】
なお、一般的には、管内の空気が全て管外に排出されれば、空気抜きは不要となるが、本実施形態は、浸透管WPにおいて、雨水を地中に浸透させることを予定していることから、その地中への浸透の際に、地中に含まれる空気が管内に侵入する可能性もあるため、下水道管UPの開口から十分な高さH3をもって開口させている。
【0050】
他方、上述のような使用形態において、街渠ますXの土砂だまりに土砂が流入する場合には、これらの土砂が浸透管WPおよび下水道管UPのいずれからも排出されないこととなり、その結果として、排水フィルタFの周辺に土砂が堆積することとなる。その状態を図6に示す。
【0051】
この図に示すように、堆積土砂TRは、土砂だまりに堆積しているが、土砂だまりには、排水されない雨水も停滞している。そして、一般的な街渠ますに停滞する雨水は、さらに雨水が流入して水位が上昇しない限り、外部に排水されることはなく、降雨がない期間中の蒸発により水量が減少していた。これに対し、本実施形態では、排水フィルタFの本体部1に浸透孔群40が穿設されていることから、土砂だまりに堆積する土砂TRに浸透した雨水を徐々に浸透管WPに排出することができるのである。
【0052】
つまり、一度に多量の雨水を排出することはできないものの、土砂とともに停滞する雨水は、石や砂などの粒間を通過して街渠ますXの底部に溜まることとなるから、この街渠ますXの底部付近において、開口する浸透孔群40に到達した雨水が当該浸透孔群40を通過して、浸透管WPに流入するのである。当然のことながら、浸透孔群40は、土砂が通過できるような大きさでは開口しておらず、石や砂の粒間を通過した雨水のみが排出されるのである。この排出時には、内部のフィルタ材2を経由することとなるから、異物が排水に混入することを回避することができるのである。
【0053】
上記のような土砂だまりの停滞水の排出は、豪雨の後の残余水についてのみならず、にわか雨などの少量の降雨によって、少量の雨水が街渠ますXに流入する場合も同様である。すなわち、土砂だまりに堆積している土砂TRが乾燥している状態であっても、降雨により少量の雨水が街渠ますXに流入した場合、当該雨水が、土砂だまりの堆積土砂TRを湿潤させ程度を超えて流入するとき、堆積土砂TRの石や砂の粒間を通過して街渠ますXの底面に移動することとなるから、このように移動した雨水は、はやり排水フィルタFの本体部1に設けられる浸透孔群40から排出されることとなるのである。
【0054】
なお、上記浸透管WPは、街渠ますXの下方において、雨水が通過できる程度の孔(図示せず)が設けられ、その周辺を粒径の大きい埋め戻し砂Sは配置され、浸透管WPに流入した雨水を地中に浸透させるように構成されている。特に雨水委浸透管の下端付近では、多量の雨水を地中に浸透させるための構成がなされている。この浸透管WPの構成は本発明には直接的な関連がないので説明は割愛する。
【0055】
本実施形態は上記のとおりであるから、街渠ますXに流入した雨水を浸透管WPに排出する際、排水フィルタFによって当該雨水を濾過させることができるものである。また、街渠ますXの内部にトラップを形成して土砂だまりを構成することができる。これらの効果を有するうえに、土砂だまりに停滞する雨水を徐々に浸透管WPに排出することができる。従って、街渠ますXに長期間雨水が停滞することがなく、蚊等の発生源となることを抑制することができるものである。
【0056】
なお、上記実施形態は、本発明の一例であって、このような構成に限定されるものではない。従って、種々の態様とすることができるものである。その一例として、上記実施形態においては、フィルタ支持部3が天板部31と底部32とで構成され、この中間にフィルタ材2を支持する構成のみについて説明したが、本体部1の下部(浸透管連結部)11と胴部12の境界部分をテーパ状とすることによって、このテーパ部によってフィルタ材2を支持させる構成としてもよい。この場合、本体部1の構成中にフィルタ支持部が形成されることとなるが、本発明はこのような構成を排除するものではない。そして、このようなフィルタ材2に通気部材5を直接挿通させることにより、フィルタ材2が適度な重量を有することとなるから、本体部から容易に離脱することがない。そして、このような構成の場合には、本体部1の上端は開口端となり、大量の雨水を流入させることも可能となる。
【0057】
さらに、上記実施形態の浸透孔群40は、微細な貫通孔4を整列して設けた構成であるが、これに代えて、長孔によって構成してもよい。この場合の長孔は、浸透孔群40の各貫通孔4が極端に接近して設けられ、その結果として本体部1の軸線方向に連続した状態と考えれば、やはり貫通孔群の一種であるということができる。
【符号の説明】
【0058】
1 本体部
2 フィルタ材
3 フィルタ支持部
4 浸透孔
5 通気部材
11 浸透管連結部(本体部の下部)
12 本体部の胴部
13 本体部の上端部
21 フィルタの貫通孔
31 天板部
32 底部
F 排水フィルタ
TR 堆積土砂
UP 下水道管
WP 浸透管
X 街渠ます

【特許請求の範囲】
【請求項1】
街渠ますの底部を開口し、この開口を貫通する浸透管を地中に配設してなる雨水浸透構造体において、
上記浸透管の上端に装着され、側壁の複数個所に浸透孔が穿設された筒状の本体部と、この本体部の内部に配置されるフィルタ材と、このフィルタ材を支持しつつ上記本体部に着脱可能に設けられるフィルタ支持部と、上記フィルタ材を貫通する通気部材とを備えたことを特徴とする雨水浸透管用排水フィルタ。
【請求項2】
前記本体部は、所定の長さ寸法を有し、前記浸透管の上端縁から延出するように装着される本体部であることを特徴とする請求項1に記載の雨水浸透管用排水フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタ支持部は、通水可能な底部および天板部を備え、該底部および該天板部の中間に前記フィルタ材を保持するフィルタ支持部であり、前記通気部材は、上記底部および天板部を連結しつつ上記フィルタ材を貫通する通気部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の雨水浸透管用排水フィルタ。
【請求項4】
前記本体部は、下部に浸透管連結部を有し、上部に天板部保持部を有する本体部である請求項3に記載の雨水浸透管用排水フィルタ。
【請求項5】
下水管が接続される街渠ますの底部を開口し、この開口を貫通する浸透管を地中に配設してなる雨水浸透構造体において、
上記浸透管の上端に装着され、側壁の複数個所に浸透孔が穿設された筒状の本体部と、この本体部の内部に配置されるフィルタ材と、このフィルタ材を支持しつつ上記本体部に着脱可能に設けられるフィルタ支持部と、上記フィルタ材を貫通しつつフィルタ支持部によって支持される通気部材とを備え、
上記フィルタ支持部は、通水可能な底部および天板部を備え、該底部および該天板部の中間に上記フィルタ材を保持するフィルタ支持部であり、
上記通気部材は、上記底部から突出する下部突出領域と、上記天板部から突出する上部突出領域と、上記フィルタ材を貫通しつつ上記底部および上記天板部を連結する中間領域とに区分されてなる通気部材であることを特徴とする雨水浸透管用排水フィルタ。
【請求項6】
前記通気部材は、前記上部突出領域の上端が前記街渠ますに接続される下水管の開口部よりも上位となる長さで構成されている通気部材であることを特徴とする請求項5に記載の雨水浸透管用排水フィルタ。
【請求項7】
前記天板部は、前記浸透孔よりも大径の浸透用貫通孔が複数穿設されている天板部であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の雨水浸透管用排水フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−49998(P2013−49998A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189085(P2011−189085)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【特許番号】特許第4926291号(P4926291)
【特許公報発行日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(504231243)株式会社ホウショウEG (11)
【出願人】(509199100)有限会社モグラ研究所 (7)
【出願人】(509199111)スピーダーレンタル株式会社 (7)
【出願人】(509198907)株式会社ノアテック (9)
【出願人】(509199122)有限会社向陽 (6)
【Fターム(参考)】