雨水濾過器
【課題】濾材が浮上し難く、濾材の収容および取り出しが容易である雨水濾過器を提供する。
【解決手段】雨水濾過器1は、外筒30と、内筒40と、濾材が収容された濾材袋50と、濾材袋50に着脱自在に取り付けられた浮上防止部材60とを備える。浮上防止部材60は、複数の貫通孔63が形成された板状部材61と、板状部材61から上方に延びる持ち手62とを有している。持ち手62には、ガイド突起66aが設けられている。内筒40には、ガイド突起66aと係合する係合溝が形成されている。係合溝にガイド突起66aを係合させて浮上防止部材60を回転させることによって、浮上防止部材60が内筒40に固定されている。
【解決手段】雨水濾過器1は、外筒30と、内筒40と、濾材が収容された濾材袋50と、濾材袋50に着脱自在に取り付けられた浮上防止部材60とを備える。浮上防止部材60は、複数の貫通孔63が形成された板状部材61と、板状部材61から上方に延びる持ち手62とを有している。持ち手62には、ガイド突起66aが設けられている。内筒40には、ガイド突起66aと係合する係合溝が形成されている。係合溝にガイド突起66aを係合させて浮上防止部材60を回転させることによって、浮上防止部材60が内筒40に固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
地上に降り注いだ雨水は、例えば雨樋、側溝、雨水管等からなる雨水管路を通じて河川等に放流され、あるいは、いわゆる合流式の下水道の場合、雨水管路および下水管路を通じて下水処理施設に送られる。雨水には、大気中に浮遊する微粒子が含まれる場合がある。また、道路には、例えば自動車の排気ガスに含まれる微粒子やアスファルトの摩耗塵等が堆積している場合がある。それらの物質は、雨水によって流され、雨水と共に雨水管路に流れ込む。そのため、雨水管路に流れ込む雨水には、河川等の水質汚濁の原因となる物質(以下、汚濁物質という)が含まれる場合がある。
【0003】
雨水から汚濁物質を取り除くための装置として、雨水濾過器が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。雨水管路中に雨水濾過器を設けることにより、雨水に含まれる汚濁物質を除去することができ、河川等に対して、よりきれいな雨水を放流することができる。
【0004】
特許文献1には、雨水を濾過する排水処理装置が開示されている。この排水処理装置は、地中に埋設された桝ブロックと、桝ブロックに出し入れ可能な筒状濾過器とを備えている。この筒状濾過器は、円筒状の筒状体と、筒状体の上端および下端を塞ぐための円形状のメッシュ状の布と、筒状体の内部に収容される濾材とを備えている。上記布は筒状体の上端部および下端部に被せられ、ステンレス製の固定バンドで筒状体の外周面に押さえつけられることにより、筒状体に固定される。筒状体の外周面の上側部分および下側部分には、周方向に延びる溝が形成されている。これらの溝には、円環状のゴム製の固定部材が嵌め込まれている。固定部材には、斜め上方且つ筒状体の半径方向外向きに突出する止水突片が設けられている。筒状濾過器を桝ブロックに挿入すると、固定部材の止水突片が桝ブロックの内面に対して摺動し、止水突片が桝ブロックの内面と密着した状態で変形する。この止水突片により、筒状体の外周面と桝ブロックの内面との間がシールされる。
【0005】
特許文献2には、外筒と内筒とを備えた雨水濾過器が開示されている。この雨水濾過器は、内筒内に配置されたステンレス製ネットからなる上部フィルタ板および下部フィルタ板と、上部フィルタ板と下部フィルタ板との間に配置された袋体とを有している。袋体の内部には、濾材が収容されている。上部フィルタ板は、内筒に対して着脱自在に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3348078号公報
【特許文献2】実用新案登録第3148921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
濾材を有する雨水濾過器では、濾材が浮上して流出口を塞がないように、濾材の浮上を防止する必要がある。一方、雨水濾過器の組立時または濾材のメンテナンス(例えば、濾材の洗浄または交換)時に、濾材を収容する作業や取り出す作業が必要となる。
【0008】
特許文献1に開示された排水処理装置では、固定部材の止水突片と桝ブロックの内面との間の摩擦力によって、筒状体の浮上が防止され、ひいては濾材の浮上が防止される。しかし、上記摩擦力をある程度大きくする必要があるため、筒状体を桝ブロック内に挿入する際には、その摩擦力に打ち勝つような大きな力で筒状体を挿入しなければならない。そのため、筒状体を挿入する作業が面倒である。また、筒状体を桝ブロックから取り出す際にも、上記摩擦力に打ち勝つような大きな力で筒状体を引き上げなければならない。そのため、筒状体を取り出す作業も面倒である。したがって、特許文献1に開示された排水処理装置では、濾材を収容する作業および取り出す作業が面倒であった。
【0009】
特許文献2に開示された雨水濾過器では、濾材の浮上は上部フィルタ板によって防止される。上部フィルタ板は内筒に対して着脱自在に取り付けられている。しかし、雨水濾過器の外部から上部フィルタ板を取り付ける作業および取り外す作業は、必ずしも容易ではない。したがって、上記雨水濾過器は、濾材を収容する作業および取り出す作業に関して、未だ改善の余地があるものであった。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、濾材が浮上し難く、濾材の収容および取り出しが容易である雨水濾過器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る雨水濾過器は、雨水管路中に配設される雨水濾過器であって、流入口と前記流入口よりも低い位置に形成された流出口とが設けられ、その上部が蓋によって開閉自在に塞がれ、底板を有する外筒と、前記外筒の前記流出口につながる流出口が設けられ、その下部に内外を貫く連通部を有し、前記外筒の内部に配置された内筒と、少なくともその上部および下部が雨水の流通が可能に形成され、その内部に濾材が収容され、前記内筒の内部且つ前記内筒の流出口よりも低い位置に配置される変形可能な濾材袋と、前記濾材袋の上部に固定され且つ複数の貫通孔が形成された板状部材と、前記板状部材から上方に延びる持ち手とを有し、前記濾材の浮上を防止する浮上防止部材と、を備え、前記浮上防止部材および前記内筒のいずれか一方に係合溝が形成され、他方に前記係合溝に係合可能な係合突部が形成され、前記係合溝に前記係合突部を係合させて前記浮上防止部材を前記内筒に対して回転させることによって、前記浮上防止部材が前記内筒に固定されているものである。
【0012】
なお、ここでいう「回転」には、浮上防止部材が内筒の軸方向に移動せずに回転する場合の他、内筒の軸方向に移動しながら回転する場合も含まれる。
【0013】
上記雨水濾過器によれば、濾材は濾材袋に収容され、濾材袋は浮上防止部材に固定されている。濾材袋は変形可能であるので、濾材袋は内筒に容易に挿入される。作業者は、浮上防止部材の持ち手を掴み、係合突部を係合溝に係合させて浮上防止部材を内筒に対して回転させることによって、浮上防止部材を内筒に固定することができる。そのため、浮上防止部材を内筒に容易に取り付けることができ、濾材袋を内筒内に容易に収容することができる。したがって、濾材を内筒内に容易に収容することができる。また、作業者は、上述の動作と逆の動作を行うことにより、濾材を容易に取り出すことができる。
【0014】
濾材袋の上方に浮上防止部材が配置されるので、濾材袋の浮上は防止される。また、浮上防止部材は逆回転しないと内筒から外れないので、濾材に作用する浮力や雨水の流れによって浮上防止部材に上向きの力が作用しても、浮上防止部材が浮上してしまうことはない。したがって、濾材の浮上をより確実に防止することができる。
【0015】
前記貫通孔は、前記板状部材の全面にわたって形成され、前記貫通孔の開口面積の合計は、前記外筒の前記流入口の開口面積以上であり、前記板状部材の平面視における外側の輪郭の形状および寸法は、前記内筒の平面視における内側の輪郭の形状および寸法と略同一であってもよい。
【0016】
このように、貫通孔の開口面積の合計が外筒の流入口の開口面積以上であることにより、雨水の逆流が抑制される。また、貫通孔が板状部材の全面にわたって形成されているので、雨水は板状部材の全面にわたって比較的均等に流れ、濾材袋の一部が貫通孔内に食い込んでしまうことを抑制することができる。また、平面視において、板状部材が内筒内の全体を塞ぎ、板状部材の外周部と内筒の内周面との間には、実質的に隙間が生じない。そのため、濾材袋の一部が上記隙間に食い込んでしまうことを抑制することができる。その結果、濾材袋の変形が起こりにくく、濾材袋内において濾材の分布が不均一になることが少ないため、濾過機能を良好に保つことができる。
【0017】
前記持ち手は、前記板状部材の上面に固定された縦棒と、前記縦棒から前記内筒の半径方向外向きに突出し、前記係合突部を構成するガイド突起とを有し、前記係合溝は、前記内筒の上端から上下方向または斜め上下方向に延びる縦溝と、前記縦溝の下端から前記内筒の円周方向に延びる横溝とからなっていてもよい。
【0018】
このことにより、持ち手にガイド突起が設けられ、また、係合溝が内筒の上端から形成されているので、作業者はガイド突起と係合溝との間の係合状態を視認しやすくなる。そのため、浮上防止部材および濾材袋の取り付けおよび取り外しが容易となる。
【0019】
前記雨水濾過器は、前記浮上防止部材が前記内筒に固定されるときの回転方向と逆方向に回転することを防止するように、前記横溝に係合している前記ガイド突起が前記縦溝側に移動することを阻止する逆回転防止機構を備えていてもよい。
【0020】
このことにより、浮上防止部材の逆回転が防止されるので、濾材袋が浮上して流出口を塞いでしまうことを確実に防止することができる。
【0021】
前記横溝の奥側には、段差を介して上下方向に広がる幅広部が形成されており、前記幅広部が前記逆回転防止機構を構成していてもよい。
【0022】
このことにより、浮上防止部材が濾材または雨水の流れによって上向きの力を受けていないときには、ガイド突起は幅広部の下側に位置し、下側の段差によって、縦溝側への移動が阻止される。一方、浮上防止部材が上向きの力を受けているときには、ガイド突起は上方へ移動して幅広部の上側に位置するが、上側の段差によって、縦溝側への移動が阻止される。したがって、ガイド突起が縦溝側に移動することはなく、浮上防止部材の逆回転は防止される。このように、簡単な構成で浮上防止部材の逆回転を防止することができる。
【0023】
前記内筒は円筒形状に形成され、前記濾材袋は、前記内筒の内径以上の外径を有する円筒状の上部と、下方に向かって先細り状の下部とを有していてもよい。
【0024】
このことにより、濾材袋の上部の外周部と内筒の内周面との間には隙間がなくなるので、雨水が上記隙間をすり抜け、十分に濾過されずに排出されることはない。また、濾材袋の下部は先細り状に形成されているので、内筒に対する濾材袋の挿入が容易となる。なお、濾材袋は変形可能であるので、濾材袋の上部の外径が内筒の内径よりも若干大きくても、濾材袋の一部が内側に変形することにより、濾材袋は内筒内に収容される。
【0025】
前記濾材袋は、通水性を有する密封袋からなり、前記板状部材に着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0026】
このことにより、濾材袋の取扱性が向上する。濾材を濾材袋ごと交換することとすれば、濾材の交換が容易となる。
【0027】
前記濾材袋には、少なくとも一対の紐状または帯状の結束部材が設けられ、前記濾材袋は、前記一対の結束部材が前記板状部材の貫通孔を貫通して互いに固定されることによって、前記板状部材に取り付けられていてもよい。
【0028】
このことにより、板状部材に対する濾材袋の着脱が容易となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、濾材が浮上し難く、濾材の収容および取り出しが容易である雨水濾過器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係る雨水濾過器が設けられた雨水管路の構成図である。
【図2】雨水濾過器の内部構成を示す斜視図である。
【図3】蓋を外した状態の雨水濾過器の平面図である。
【図4】雨水濾過器の縦断面図である。
【図5】内筒の上側部分の斜視図である。
【図6】互いに取り外された状態の浮上防止部材および濾材袋の側面図である。
【図7】互いに取り付けられた状態の浮上防止部材および濾材袋の斜視図である。
【図8】変形例に係る浮上防止部材および濾材袋の斜視図である。
【図9】他の変形例に係る内筒の上側部分の斜視図である。
【図10】他の変形例に係る内筒の上側部分の側面図である。
【図11】他の変形例に係る浮上防止部材および濾材袋の斜視図である。
【図12】変形例に係る雨水管路の構成図である。
【図13】他の変形例に係る雨水管路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る雨水濾過器1は、雨水管路2中に配設されており、地中に埋設されたものである。雨水濾過器1は、歩道3の下側に設置されている。雨水濾過器1は、車道4の側溝5と歩道3の側溝6との間に配置されている。雨水濾過器1の流入口21は流入管23を介して側溝5に接続され、雨水濾過器1の流出口22は流出管24を介して側溝6に接続されている。
【0032】
図2は雨水濾過器1の内部構成を示す斜視図、図3は雨水濾過器1の蓋25(図4参照)を外した状態の平面図、図4は雨水濾過器1の縦断面図である。雨水濾過器1は、外筒30と、内筒40と、濾材を収容した濾材袋50と、濾材袋50が浮上することを防止する浮上防止部材60とを備えている。
【0033】
図4に示すように、外筒30は、塩化ビニル製の円筒状の筒状体31と、筒状体31の下端を閉塞する塩化ビニル製の底板32とを備えている。底板32は筒状体31に接着されている。なお、筒状体31の形状は円筒状に限定されない。筒状体の断面形状は、楕円状であってもよい。また、筒状体31は、断面が矩形状の角筒であってもよく、断面が五角形以上の多角形状に形成されていてもよい。外筒30の材料は塩化ビニルに限られない。外筒30の材料は、その他の樹脂等であってもよい。
【0034】
外筒30の上端には、蓋25が着脱自在に嵌め込まれている。本実施形態では、蓋25は鋳鉄製であるが、蓋25の材料は特に限定される訳ではない。本実施形態に係る蓋25は、貫通孔が形成されていないいわゆる密閉蓋である。外筒30の上端は差口となり、蓋25は受口となっている。ただし、外筒30の上端が受口となり、蓋25が差口となっていてもよい。蓋25は着脱自在であるので、蓋25を取り外すことにより、外筒30の内部を開放することができる。外筒30の上端の開口は、地上からメンテナンス等を行う際に用いられる点検口を構成している。
【0035】
流入口21および流出口22は、外筒30の側面に形成されている。図3に示すように、平面視において、流出口22は流入口21の反対側に形成されている。ただし、流出口22は必ずしも流入口21の反対側に形成されていなくてもよい。図4に示すように、流出口22は流入口21よりも低い位置に設けられている。すなわち、流出口22の下端は流入口21の下端よりも低い位置にある。本実施形態では更に、流出口22の上端が流入口21の下端よりも低い位置にある。
【0036】
内筒40は外筒30の内部に配置されている。内筒40は、塩化ビニル製の円筒状の筒状体からなっている。ただし、内筒40の形状も円筒状に限定されず、他の形状であってもよい。内筒40は、外筒30の筒状体31と異なる形状を有していてもよい。内筒40の材料も塩化ビニルに限られず、例えば、その他の樹脂等であってもよい。内筒40の外径は外筒30の筒状体31の内径よりも小さく、内筒40の全長は筒状体31の全長よりも短い。内筒40は筒状体31と同心状に配置されていてもよいが、本実施形態では、内筒40は筒状体31に対して偏心した位置に配置されている。
【0037】
内筒40の下端は外筒30の底板32上に載っている。内筒40の下端部には、内外を貫く連通孔41が形成されている。内筒40における流出口22に対応する位置には、流出口42が形成されている。流出口42は流出口22と連続している。なお、流出口42は流出口22とつながっていればよく、例えば外筒30と内筒40とが同心状に配置されている場合には、内筒40の流出口42と外筒30の流出口22とを、管状部材等を介して連通すればよい。内筒40の流出口42よりも高い位置には、オーバーフロー口43が形成されている。オーバーフロー口43の下端は流入口21の下端と略等しい高さに位置している。内筒40において、流入口21と対向する位置には、開口は形成されていない。流入口21と対向する部分は、流入口21から流れ込んだ雨水を跳ね返す遮壁部40aとなっている。内筒40の上端は開放されている。
【0038】
図5に示すように、内筒40には、上端から鉛直下向きに延びる縦溝45と、縦溝45の下端から内筒40の円周方向に延びる横溝46とが形成されている。これら縦溝45および横溝46は、後述するガイド突起66a(図6参照)と係合する係合溝47を構成している。横溝46の奥側には、段差46a,46bを介して上下方向に広がる幅広部46cが形成されている。段差46aは下側に凹んだ段差であり、幅広部46cの手前部分の下側に形成されている。段差46bは上側に凹んだ段差であり、幅広部46cの手前部分の上側に形成されている。なお、「上下方向に広がる幅広部」とは、必ずしも横溝46から鉛直方向に延びる90度の段差を介して上下に広がるものに限らず、本実施形態のように、横溝46に対して90度よりも大きな角度をなす段差を介して上下に広がるものも含まれる。内筒40の上端面における幅広部46cの真上の位置には、目印48が設けられている。目印48の具体的構成は何ら限定されないが、本実施形態では目印48は、例えば黒色、赤色、黄色等の色が付された着色領域によって形成されている。
【0039】
濾材袋50は、微小な通水孔が形成された変形可能な袋からなっている。本実施形態では、濾材袋50はポリエステル製である。ただし、濾材袋50は通水性を有する他の材料からなっていてもよい。濾材袋50の内部には、複数の濾材が収容されている。濾材の材料は特に限定されず、例えば、多孔質の発泡ポリプロピレン粒子、活性炭、その他の公知の濾材等を好適に用いることができる。濾材袋50は、収容した濾材が漏れないように、密閉されている。濾材袋50は、開口を有しない完全密閉式の袋であってもよいが、開閉自在な開口を有し、その開口が塞がれることによって密閉される半密閉式の密封袋であってもよい。例えば、ファスナーによって塞がれる開口を有する袋であってもよい。また、開口の周囲を紐で締め付けることによって当該開口を塞ぐ袋であってもよい。
【0040】
図6に示すように、濾材袋50は、円筒状の上部51と、下方に向かって先細り状の下部52とを有している。上部51の外径は、内筒40の内径と略等しい。ただし、濾材袋50が内筒40に円滑に挿入できる限り、上部51の外径は内筒40の内径よりも大きくてもよい。濾材袋50の上部には、一対のベルト53が設けられている。ベルト53は濾材袋50に接着されていてもよく、濾材袋50に縫いつけられていてもよい。また、ベルト53は濾材袋50と一体的に形成されていてもよい。
【0041】
浮上防止部材60は、板状部材61と持ち手62とを備えている。板状部材61は、複数の貫通孔63が形成された塩化ビニル製の円板からなっている。ただし、板状部材61の材料は塩化ビニル以外の樹脂であってもよく、他の材料であってもよい。板状部材61の外径は、内筒40の内径と略同一である。図3に示すように、貫通孔63は板状部材61の全面にわたって設けられている。板状部材61には、多数の貫通孔63が分散して形成されている。本実施形態では、貫通孔63は細長い孔、言い換えるとスリット孔によって形成されている。貫通孔63は、板状部材61の中心の周りに、同心円状に周回するような態様で配設されている。ただし、貫通孔63の形状および配設態様は特に限定される訳ではない。貫通孔63は、例えば、板状部材61に一様に配設された円孔等であってもよい。板状部材61は、濾材袋50を上から押さえることにより、濾材袋50の浮上を防止する役割を果たす。また、板状部材61は、貫通孔63を通じて雨水を流通させる役割を果たす。図4に示すように、板状部材61は、板状部材61の上面の高さが流出口22の下端と同一またはそれ以下となるように配置される。
【0042】
図6に示すように、持ち手62は、一対の縦棒64と、T字型の連結部材66を介して両縦棒64に接続された横棒65とから構成されている。図7に示すように、板状部材61には孔67が形成されている。縦棒64の下端部が孔67に差し込まれることによって、持ち手62は板状部材61に固定されている。ここでは、縦棒64の下端部は孔67に差し込まれた状態で接着されている。本実施形態では、縦棒64および横棒65は真っ直ぐな棒であるが、縦棒64または横棒65は曲がった棒であってもよい。縦棒64および横棒65は、中実棒であってもよく、中空棒であってもよい。縦棒64および横棒65の断面形状は円形状でなくてもよく、例えば多角形状等であってもよい。縦棒64、横棒65、および連結部材66は、塩化ビニル製である。ただし、それらは塩化ビニル以外の樹脂で形成されていてもよい。また、それらは樹脂以外の材料で形成されていてもよい。
【0043】
連結部材66の外側部分、すなわち、内筒40の半径方向(図6の左右方向)の外側の部分は、外側に突出するガイド突起66aとなっている。このガイド突起66aは、内筒の係合溝47と係合する。ガイド突起66aは、内筒40の縦溝45と係合することにより、内筒40に対する浮上防止部材60の抜き差しを案内する。また、ガイド突起66aは、内筒40の横溝46と係合することにより、浮上防止部材60の回転を案内する。また、ガイド突起66aは横溝46と係合することによって上下動が規制され、浮上防止部材60の浮上を防止する。
【0044】
浮上防止部材60は、濾材袋50に着脱自在に取り付けられる。本実施形態では、浮上防止部材60は、ベルト53によって濾材袋50に取り付けられる。具体的には、図7に示すように、両ベルト53を板状部材61のいずれかの貫通孔63に下から上に通した後、両ベルト53を互いに固定する。本実施形態では、両ベルト53に面ファスナー(図示せず)が設けられており、それらの面ファスナー同士を接触させることにより、両ベルト53は互いに固定される。ただし、両ベルト53の固定方法は何ら限定されず、例えば、両ベルト53を結び合わせることによって固定することも可能である。このように、ベルト53により板状部材61と濾材袋50とを固定することによって、浮上防止部材60は濾材袋50に着脱自在に取り付けられる。
【0045】
次に、濾材袋50を内筒40内に収容する方法について説明する。濾材袋50は浮上防止部材60と共に、内筒40の内部に収容される。濾材袋50の収容にあたっては、予め濾材袋50に浮上防止部材60を取り付けておく。濾材袋50を収容する際には、まず、作業者は、外筒30の上端を塞いでいる蓋25(図4参照)を取り外す。次に、作業者は、浮上防止部材60の持ち手62を掴み、濾材袋50を内筒40内に挿入する。この際、濾材袋50の下部52は先細り状に形成されているので、作業者は濾材袋50を容易に挿入することができる。次に、作業者は、持ち手62のガイド突起66aを、内筒40の縦溝45に挿入する。ガイド突起66aが縦溝45の下端部に接触すると、ガイド突起66aが横溝46内を移動するように、持ち手62を回転させる。前述したように、内筒40の上端面には目印48が設けられている。作業者は、持ち手62の横棒65の両端が平面視において目印48の位置に至るまで、持ち手62を回転させる。これにより、ガイド突起66aは横溝46の奥部、すなわち、幅広部46c内に位置する。以上により、内筒40に対する浮上防止部材60および濾材袋50の取り付けが終了する。その後は、外筒30の上端部に蓋25を嵌め込む。なお、濾材のメンテナンス時には、上述の動作と逆の動作を行うことにより、浮上防止部材60と共に濾材袋50を外部に取り出すことができる。
【0046】
次に、雨水濾過器1の作用について説明する。車道4(図1参照)に降った雨水は、車道4上に堆積した汚濁物質と共に側溝5に流れ込む。側溝5に流れ込んだ雨水は、流入管23を通じて雨水濾過器1に流入する。図4に矢印で示すように、流入口21から流れ込んだ雨水は、外筒30と内筒40との間の空間71に流入する。空間71に流れ込んだ雨水は、内筒40の連通孔41を通じて、内筒40の内側且つ下側の空間72に流入する。次に、この雨水は、内筒40内を上向きに流れ、濾材袋50を上向きに通過する。この際、雨水は濾材袋50内の濾材によって濾過され、浄化される。浄化された雨水は、濾材袋50から流出し、板状部材61の貫通孔63を上向きに通過する。板状部材61の上側に流れ込んだ雨水は、内筒40の流出口42および外筒30の流出口22を通じて、流出管24に流れ出る。流出管24に流れ込んだ雨水は、側溝6(図1参照)に排出され、その後、河川等に放流等される。
【0047】
なお、集中豪雨時等のように降雨量が多いときには、雨水濾過器1内の水位が上昇する場合がある。外筒30内の水位が流入口21の下端よりも高くなると、雨水の一部はオーバーフロー口43を通じて内筒40内に流入する。また、水位が更に上昇すると、雨水の一部は内筒40の上端の開口を通じて内筒40内に流入する。そのため、雨水の逆流は防止され、側溝5から車道4に雨水が溢れ出すことを防止することができる。なお、降雨時の初期には、車道4上の汚濁物質が雨水と共に排出されるため、雨水の濾過が特に必要となるが、ある程度の量の雨が降った後では、車道4上には汚濁物質はほとんど残っていない。そのため、雨水濾過器1内の水位がオーバーフロー口43と同程度まで上昇した時には、雨水濾過器1には既に比較的きれいな雨水が流入していると考えられる。したがって、雨水濾過器1に流入した雨水が濾材を通過せずに流出したとしても、実用上問題はない。
【0048】
以上のように、雨水濾過器1によれば、内筒40に固定される浮上防止部材60によって、濾材袋50の浮上が防止される。したがって、濾材の浮上を確実に防止することができる。
【0049】
作業者は、持ち手62を掴みつつ、ガイド突起66aを内筒40の係合溝47に係合させながら浮上防止部材60を移動させることによって、浮上防止部材60を内筒40に容易に取り付けることができる。また、その逆の動作を行うことにより、浮上防止部材60を内筒40から容易に取り外すことができる。濾材袋50は浮上防止部材60に取り付けられており、浮上防止部材60と共に内筒40に出し入れされる。したがって、作業者は、浮上防止部材60を内筒40に取り付けるだけで、濾材袋50を所定の場所に容易に収容することができる。また、作業者は、浮上防止部材60を内筒40から取り外すだけで、濾材袋50を容易に取り出すことができる。さらに、濾材袋50は変形容易である。そのため、作業者は、大きな力を加えなくても、濾材袋50を内筒40に容易に挿入することができ、また、内筒40から容易に取り出すことができる。よって、雨水濾過器1によれば、濾材の収容および取り出しが容易である。
【0050】
内筒40の係合溝47は縦溝45および横溝46からなっており、作業者は、持ち手62を掴み、浮上防止部材60を下降および回転させることによって、浮上防止部材60を内筒40に取り付けることができる。また、持ち手62を掴み、浮上防止部材60を逆回転および上昇させることによって、浮上防止部材60を内筒40から取り外すことができる。したがって、外筒30の上方からの作業が容易である。
【0051】
雨水の濾過時に、雨水は濾材袋50内を上向きに流れ、濾材袋50は雨水から上向きの力を受ける。また、本実施形態では濾材は発泡ポリプロピレン製であり、濾材は水よりも比重が軽い。そのため、濾材には浮力も作用する。その結果、濾材袋50には上向きの力が加わる。しかし、浮上防止部材60を内筒40に対して逆回転させなければ、浮上防止部材60が内筒40から外れることはない。そのため、濾材袋50は上向きの力を受けるが、浮上防止部材60によって濾材袋50の浮上を確実に防止することができる。
【0052】
浮上防止部材60には、雨水を流通させるための通水孔として、多数の貫通孔63が形成されている。貫通孔63の開口面積の合計が小さすぎると、雨水の流通抵抗が大きくなり、集中豪雨時等の際に雨水が逆流しやすくなる。しかし、本実施形態では、浮上防止部材60の貫通孔63の開口面積の合計は、外筒30の流入口21の開口面積以上である。そのため、雨水の逆流は生じにくい。
【0053】
また、貫通孔63は板状部材61の全面にわたって形成されており、多数の貫通孔63が分散して配設されている。そのため、雨水は板状部材61の全体を満遍なく流れやすい。したがって、濾材袋50の一部が特定の貫通孔63内に食い込まれることを抑えることができ、濾材袋50の変形を抑制することができる。その結果、雨水が濾材袋50内で偏って流れることが抑制され、濾過性能を良好に保つことができる。
【0054】
また、板状部材61は、平面視において内筒40の内部の全体を覆っている(図3参照)。言い換えると、板状部材61の平面視における外側の輪郭の形状および寸法は、内筒40の平面視における内側の輪郭の形状および寸法と略同一である。したがって、板状部材61と内筒40との間の隙間はほとんどなく、濾材袋50の一部が板状部材61と内筒40との間の隙間に食い込まれることを抑えることができる。このことによっても、濾材袋50内における雨水の偏流を抑制することができ、濾過性能を良好に保つことができる。
【0055】
持ち手62は、縦棒64と、縦棒64から内筒40の半径方向外向きに突出するガイド突起66aとを有している。内筒40の係合溝47は、内筒40の上端から上下方向に延びる縦溝45と、縦溝45の下端から円周方向に延びる横溝46とからなっている。係合溝47は内筒40の上端から形成されており、また、縦棒64は上方から容易に視認することができるので、作業者は上方からガイド突起66aの位置を容易に把握することができる。したがって、浮上防止部材60および濾材袋50の取り付けおよび取り外しの作業を容易に行うことができる。
【0056】
横溝46の奥側には、上下の段差46a,46bを介して上下方向に広がる幅広部46cが形成されている。浮上防止部材60が浮いていないときには、ガイド突起66aは幅広部46cの下側に位置する。この場合、ガイド突起66aは下側の段差46aにより、逆回転方向の移動が阻止される。一方、浮上防止部材60が浮いているときには、ガイド突起66aは幅広部46cの上側に位置する。この場合、ガイド突起66aは上側の段差46bにより、逆回転方向の移動が阻止される。よって、いずれの場合であっても浮上防止部材60の逆回転は阻止され、浮上防止部材60が浮上して内筒40から外れてしまうことを防止することができる。
【0057】
濾材袋50は、内筒40の内径以上の外径を有する円筒状の上部51を有している。そのため、濾材袋50と内筒40の内周面との間に、隙間はほとんど形成されない。したがって、雨水が濾材袋50と内筒40の内周面との間の隙間を通過し、十分に濾過されずに排出されてしまうことを防止することができる。また、濾材袋50は、下方に向かって先細り状の下部52を有している。そのため、浮上防止部材60を下降させる際に、濾材袋50は内筒40内に円滑に挿入される。したがって、濾材袋50を内筒40内に容易に挿入することができる。
【0058】
濾材袋50は、通水性を有する密閉袋からなり、板状部材61に着脱自在に取り付けられている。そのため、浮上防止部材60および濾材袋50を外部に取り出した後、板状部材61から濾材袋50を取り外し、代わりに新しい濾材袋50を板状部材61に取り付けることによって、濾材を容易に交換することができる。したがって、濾材のメンテナンス作業が容易となる。
【0059】
濾材袋50は、一対のベルト53によって板状部材61に取り付けられる。両ベルト53は、板状部材61の貫通孔63に通され、板状部材61の上方にて互いに固定される。したがって、板状部材61に対して濾材袋50を容易に着脱することができる。
【0060】
図4に示すように、濾材袋50の下面は、外筒30の底面から上方に離隔している。そのため、雨水は、内筒40の連通孔41を通じて濾材袋50の下方の位置に流入し、その後、濾材袋50の下面から濾材袋50内に流入する。その結果、雨水は濾材袋50の下面の全体から流入し、濾材袋50内の全域を満遍なく流通する。したがって、濾過性能の向上を図ることができる。
【0061】
本実施形態では、内筒40は外筒30に対して偏心した位置に配置されており、内筒40の流出口42は外筒30の流出口22と連続している。これにより、内筒40と外筒30との間に形成される空間71を、外筒30の流入口21側において、大きく確保することができる。そのため、流入口21からの雨水を、上記空間71内に円滑に導くことができる。また、上記空間71は比較的大きいので、雨水濾過器1のメンテナンス時に上記空間71の清掃が容易となる。
【0062】
前記実施形態では、浮上防止部材60の持ち手62は、2本の縦棒64と、連結部材66と、1本の横棒65とから構成されていたが、持ち手62の構成は何ら限定される訳ではない。例えば、図8に示すように、持ち手62は、3本の縦棒64と、各縦棒64の上端から内筒40の半径方向外向きに突出するガイド突起66aとから構成されていてもよい。図8に示す持ち手62には、横棒は設けられていない。作業者は、1本または2本以上の縦棒64を掴んで、内筒40に対し浮上防止部材60を出し入れすることになる。なお、本変形例に係る持ち手62には、合計3つのガイド突起66aが設けられている。そのため、内筒40には、合計3つの係合溝が設けられる。
【0063】
図5に示すように前記実施形態では、内筒40の係合溝47は、上下方向に延びる縦溝45と、円周方向に延びる横溝46とによって構成されていた。しかし、係合溝47の形状は前記実施形態のものに限定される訳ではない。例えば図9に示すように、縦溝45は斜め上下方向に延びていてもよい。
【0064】
前記実施形態では、浮上防止部材60の逆回転を防止する逆回転防止機構は、横溝46の奥側に設けられた幅広部46cによって形成されていた(図5参照)。しかし、逆回転防止機構の構成は何ら限定されない。例えば、図10に示すように、横溝46の上部および下部に、段差46aおよび46bを形成する突起46dを設けるようにしてもよい。本変形例では、ガイド突起66aが横溝46の奥側(図10の右側)に移動しやすいように、突起46dは、縦溝45側に斜面を有する略三角形状に形成されている。ただし、突起46dの形状は特に限定されない。
【0065】
前記実施形態では、内筒40の係合溝47に係合する係合突部は、持ち手62に設けられたガイド突起66aであった。しかし、係合突部は、板状部材61に設けられていてもよい。図11に示す変形例では、板状部材61の外周部に、係合突部としてのガイド突起61aが設けられている。本変形例では、合計3つのガイド突起61aが、円周方向に等間隔に並んでいる。図示は省略するが、内筒40には、ガイド突起61aの円周方向長さに等しい幅の縦溝と、縦溝の下端から円周方向に延びる横溝とが形成されている。本変形例では、持ち手62は、1本の縦棒64と、縦棒64の上端部に設けられたT字型の把持部68とから構成されている。ただし、持ち手62の構成は特に限定される訳ではない。
【0066】
雨水管路における雨水濾過器1の配置態様は、前記実施形態のものに限定されない。例えば図12に示すように、雨水濾過器1は、側溝5と雨水浸透槽9との間に配置されていてもよい。図12に示す雨水管路は、配管8を介して側溝5に接続された雨水本管7と、雨水を貯留しつつ地中に浸透させる雨水浸透槽9とを備えている。雨水濾過器1の流入口21は流入管23を介して側溝5に接続され、流出口22は流出管24を介して雨水浸透槽9に接続されている。側溝5に流れ込んだ雨水の一部は、雨水本管7に流入する。側溝5に流れ込んだ雨水の残部は、雨水濾過器1で濾過された後、雨水浸透槽9に流入する。そのため、雨水浸透槽9では、雨水濾過器1で浄化された雨水を地中に浸透させることができる。
【0067】
図13に示す雨水管路は、雨水を貯留する雨水貯留槽10を備えている。雨水貯留槽10に貯留された雨水は、再利用水として各種用途に利用することができる。雨水濾過器1の流入口21は、流入管23および他の配管を介して、家屋等の雨樋11等に接続されている。雨水濾過器1の流出口22は、流出管24を介して雨水貯留槽10に接続されている。雨水貯留槽10は、配管13、ます12、および配管14を介して、側溝6に接続されている。雨樋11等に回収された雨水は、雨水濾過器1で濾過された後、雨水貯留槽10に供給される。したがって、雨水貯留槽10には、雨水濾過器1で浄化された雨水が貯留される。雨水貯留槽10内の雨水が所定量を超え、水位が上昇すると、余剰の雨水は配管13、ます12、および配管14を通じて、側溝6に排出される。
【0068】
雨水管路において、雨水濾過器1の上流側にフィルタますを設けてもよい。これにより、雨水に含まれる異物(例えば、枯葉等)はフィルタますで除去され、雨水濾過器1には異物を含まない雨水が流入することになる。したがって、雨水濾過器1の内部で異物が詰まったりすることが防止され、例えば、雨水濾過器1の長寿命化等を図ることができる。
【0069】
前記実施形態では、濾材袋50の全体が、通水性を有する材料で形成されていた。しかし、濾材袋50は、雨水がその内部を通過するものであれば足り、その一部のみが通水性を有するものであってもよい。例えば、濾材袋50は、その上面部および下面部のみが通水性を有し、その側面部が通水性を有さないものであってもよい。また、濾材袋50は、その上面部と、側面の下部とが通水性を有し、その他の部分が通水性を有さないものであってもよい。
【0070】
濾材袋50は、上方および下方が開放されたものであってもよい。例えば、濾材袋50は円筒状に形成されていてもよい。このような場合であっても、濾材袋50の上部および下部に通水可能な部材(例えば、貫通孔が形成された円板等)を取り付けることにより、結果として、上部および下部が雨水の流通可能な濾材袋を形成することができる。
【0071】
前記実施形態では、濾材袋50の下部は先細り状に形成されていた。しかし、濾材袋50の下部は、必ずしも先細り状でなくてもよく、外径が一定の円筒状に形成されていてもよい。内筒40に対する挿入が容易であることが好ましいが、濾材袋50の形状は特に限定される訳ではない。
【0072】
前記実施形態では、濾材袋50の下面から雨水を導入するため、濾材袋50の下面と外筒30の底面との間には間隔が設けられていた。しかし、上記間隔は必ずしも必要ではなく、濾材袋50の下面と外筒30の底面とは接触していてもよい。
【0073】
前記実施形態では、浮上防止部材60は濾材袋50にベルト53で固定されていた。しかし、浮上防止部材60と濾材袋50とは、他の手段で固定されてもよい。前記実施形態では、板状部材61は濾材袋50の外部に配置されていた。しかし、濾材袋50は、板状部材61を内部に収容した状態で密封されてもよい。板状部材61は濾材袋50の内部に配置されてもよい。また、濾材のメンテナンスを容易にする観点等から、濾材袋50は浮上防止部材60に対し着脱自在であることが好ましいが、濾材袋50は必ずしも浮上防止部材60に対して着脱自在でなくてもよい。例えば、濾材袋50は浮上防止部材60に接着されていてもよい。
【0074】
前記実施形態および変形例では、浮上防止部材60に係合突部(ガイド突起66a、ガイド突起61a)が設けられ、内筒40に係合溝47が設けられていた。しかし、内筒40に係合突部が設けられ、浮上防止部材60に係合溝が設けられていてもよい。
【0075】
前記実施形態では、浮上防止部材60の板状部材61は、複数の貫通孔63が形成された樹脂製の円板によって形成されていた。しかし、板状部材61は、雨水を通過させることができ、濾材袋50を上方から押さえることができるものであれば足り、具体的な構成は特に限定されるものではない。板状部材61として、例えば、樹脂製または金属製のメッシュを用いることも可能である。
【0076】
前記実施形態では、蓋25は孔が空いていない密閉蓋であった。しかし、内筒40の上端開口を閉塞し、蓋25に貫通孔を形成してもよい。この場合、流入口21から流入する雨水に加え、蓋25の貫通孔からも雨水が流入する。雨水濾過器1は、いわゆる集水ますとしても機能することになる。
【0077】
前記実施形態では、内筒40は外筒30に対して偏心した位置に配置されていた。しかし、内筒40を外筒30に対して同心状に配置することも可能である。前記実施形態では、内筒40の全長は外筒30の全長よりも短かった。しかし、内筒40の全長と外筒30の全長とは、略同一であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 雨水濾過器
2 雨水管路
21 流入口
22 流出口
25 蓋
30 外筒
32 底板
40 内筒
41 連通孔(連通部)
42 流出口
47 係合溝
50 濾材袋
60 浮上防止部材
61 板状部材
62 持ち手
63 貫通孔
66a ガイド突起(係合突部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
地上に降り注いだ雨水は、例えば雨樋、側溝、雨水管等からなる雨水管路を通じて河川等に放流され、あるいは、いわゆる合流式の下水道の場合、雨水管路および下水管路を通じて下水処理施設に送られる。雨水には、大気中に浮遊する微粒子が含まれる場合がある。また、道路には、例えば自動車の排気ガスに含まれる微粒子やアスファルトの摩耗塵等が堆積している場合がある。それらの物質は、雨水によって流され、雨水と共に雨水管路に流れ込む。そのため、雨水管路に流れ込む雨水には、河川等の水質汚濁の原因となる物質(以下、汚濁物質という)が含まれる場合がある。
【0003】
雨水から汚濁物質を取り除くための装置として、雨水濾過器が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。雨水管路中に雨水濾過器を設けることにより、雨水に含まれる汚濁物質を除去することができ、河川等に対して、よりきれいな雨水を放流することができる。
【0004】
特許文献1には、雨水を濾過する排水処理装置が開示されている。この排水処理装置は、地中に埋設された桝ブロックと、桝ブロックに出し入れ可能な筒状濾過器とを備えている。この筒状濾過器は、円筒状の筒状体と、筒状体の上端および下端を塞ぐための円形状のメッシュ状の布と、筒状体の内部に収容される濾材とを備えている。上記布は筒状体の上端部および下端部に被せられ、ステンレス製の固定バンドで筒状体の外周面に押さえつけられることにより、筒状体に固定される。筒状体の外周面の上側部分および下側部分には、周方向に延びる溝が形成されている。これらの溝には、円環状のゴム製の固定部材が嵌め込まれている。固定部材には、斜め上方且つ筒状体の半径方向外向きに突出する止水突片が設けられている。筒状濾過器を桝ブロックに挿入すると、固定部材の止水突片が桝ブロックの内面に対して摺動し、止水突片が桝ブロックの内面と密着した状態で変形する。この止水突片により、筒状体の外周面と桝ブロックの内面との間がシールされる。
【0005】
特許文献2には、外筒と内筒とを備えた雨水濾過器が開示されている。この雨水濾過器は、内筒内に配置されたステンレス製ネットからなる上部フィルタ板および下部フィルタ板と、上部フィルタ板と下部フィルタ板との間に配置された袋体とを有している。袋体の内部には、濾材が収容されている。上部フィルタ板は、内筒に対して着脱自在に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3348078号公報
【特許文献2】実用新案登録第3148921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
濾材を有する雨水濾過器では、濾材が浮上して流出口を塞がないように、濾材の浮上を防止する必要がある。一方、雨水濾過器の組立時または濾材のメンテナンス(例えば、濾材の洗浄または交換)時に、濾材を収容する作業や取り出す作業が必要となる。
【0008】
特許文献1に開示された排水処理装置では、固定部材の止水突片と桝ブロックの内面との間の摩擦力によって、筒状体の浮上が防止され、ひいては濾材の浮上が防止される。しかし、上記摩擦力をある程度大きくする必要があるため、筒状体を桝ブロック内に挿入する際には、その摩擦力に打ち勝つような大きな力で筒状体を挿入しなければならない。そのため、筒状体を挿入する作業が面倒である。また、筒状体を桝ブロックから取り出す際にも、上記摩擦力に打ち勝つような大きな力で筒状体を引き上げなければならない。そのため、筒状体を取り出す作業も面倒である。したがって、特許文献1に開示された排水処理装置では、濾材を収容する作業および取り出す作業が面倒であった。
【0009】
特許文献2に開示された雨水濾過器では、濾材の浮上は上部フィルタ板によって防止される。上部フィルタ板は内筒に対して着脱自在に取り付けられている。しかし、雨水濾過器の外部から上部フィルタ板を取り付ける作業および取り外す作業は、必ずしも容易ではない。したがって、上記雨水濾過器は、濾材を収容する作業および取り出す作業に関して、未だ改善の余地があるものであった。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、濾材が浮上し難く、濾材の収容および取り出しが容易である雨水濾過器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る雨水濾過器は、雨水管路中に配設される雨水濾過器であって、流入口と前記流入口よりも低い位置に形成された流出口とが設けられ、その上部が蓋によって開閉自在に塞がれ、底板を有する外筒と、前記外筒の前記流出口につながる流出口が設けられ、その下部に内外を貫く連通部を有し、前記外筒の内部に配置された内筒と、少なくともその上部および下部が雨水の流通が可能に形成され、その内部に濾材が収容され、前記内筒の内部且つ前記内筒の流出口よりも低い位置に配置される変形可能な濾材袋と、前記濾材袋の上部に固定され且つ複数の貫通孔が形成された板状部材と、前記板状部材から上方に延びる持ち手とを有し、前記濾材の浮上を防止する浮上防止部材と、を備え、前記浮上防止部材および前記内筒のいずれか一方に係合溝が形成され、他方に前記係合溝に係合可能な係合突部が形成され、前記係合溝に前記係合突部を係合させて前記浮上防止部材を前記内筒に対して回転させることによって、前記浮上防止部材が前記内筒に固定されているものである。
【0012】
なお、ここでいう「回転」には、浮上防止部材が内筒の軸方向に移動せずに回転する場合の他、内筒の軸方向に移動しながら回転する場合も含まれる。
【0013】
上記雨水濾過器によれば、濾材は濾材袋に収容され、濾材袋は浮上防止部材に固定されている。濾材袋は変形可能であるので、濾材袋は内筒に容易に挿入される。作業者は、浮上防止部材の持ち手を掴み、係合突部を係合溝に係合させて浮上防止部材を内筒に対して回転させることによって、浮上防止部材を内筒に固定することができる。そのため、浮上防止部材を内筒に容易に取り付けることができ、濾材袋を内筒内に容易に収容することができる。したがって、濾材を内筒内に容易に収容することができる。また、作業者は、上述の動作と逆の動作を行うことにより、濾材を容易に取り出すことができる。
【0014】
濾材袋の上方に浮上防止部材が配置されるので、濾材袋の浮上は防止される。また、浮上防止部材は逆回転しないと内筒から外れないので、濾材に作用する浮力や雨水の流れによって浮上防止部材に上向きの力が作用しても、浮上防止部材が浮上してしまうことはない。したがって、濾材の浮上をより確実に防止することができる。
【0015】
前記貫通孔は、前記板状部材の全面にわたって形成され、前記貫通孔の開口面積の合計は、前記外筒の前記流入口の開口面積以上であり、前記板状部材の平面視における外側の輪郭の形状および寸法は、前記内筒の平面視における内側の輪郭の形状および寸法と略同一であってもよい。
【0016】
このように、貫通孔の開口面積の合計が外筒の流入口の開口面積以上であることにより、雨水の逆流が抑制される。また、貫通孔が板状部材の全面にわたって形成されているので、雨水は板状部材の全面にわたって比較的均等に流れ、濾材袋の一部が貫通孔内に食い込んでしまうことを抑制することができる。また、平面視において、板状部材が内筒内の全体を塞ぎ、板状部材の外周部と内筒の内周面との間には、実質的に隙間が生じない。そのため、濾材袋の一部が上記隙間に食い込んでしまうことを抑制することができる。その結果、濾材袋の変形が起こりにくく、濾材袋内において濾材の分布が不均一になることが少ないため、濾過機能を良好に保つことができる。
【0017】
前記持ち手は、前記板状部材の上面に固定された縦棒と、前記縦棒から前記内筒の半径方向外向きに突出し、前記係合突部を構成するガイド突起とを有し、前記係合溝は、前記内筒の上端から上下方向または斜め上下方向に延びる縦溝と、前記縦溝の下端から前記内筒の円周方向に延びる横溝とからなっていてもよい。
【0018】
このことにより、持ち手にガイド突起が設けられ、また、係合溝が内筒の上端から形成されているので、作業者はガイド突起と係合溝との間の係合状態を視認しやすくなる。そのため、浮上防止部材および濾材袋の取り付けおよび取り外しが容易となる。
【0019】
前記雨水濾過器は、前記浮上防止部材が前記内筒に固定されるときの回転方向と逆方向に回転することを防止するように、前記横溝に係合している前記ガイド突起が前記縦溝側に移動することを阻止する逆回転防止機構を備えていてもよい。
【0020】
このことにより、浮上防止部材の逆回転が防止されるので、濾材袋が浮上して流出口を塞いでしまうことを確実に防止することができる。
【0021】
前記横溝の奥側には、段差を介して上下方向に広がる幅広部が形成されており、前記幅広部が前記逆回転防止機構を構成していてもよい。
【0022】
このことにより、浮上防止部材が濾材または雨水の流れによって上向きの力を受けていないときには、ガイド突起は幅広部の下側に位置し、下側の段差によって、縦溝側への移動が阻止される。一方、浮上防止部材が上向きの力を受けているときには、ガイド突起は上方へ移動して幅広部の上側に位置するが、上側の段差によって、縦溝側への移動が阻止される。したがって、ガイド突起が縦溝側に移動することはなく、浮上防止部材の逆回転は防止される。このように、簡単な構成で浮上防止部材の逆回転を防止することができる。
【0023】
前記内筒は円筒形状に形成され、前記濾材袋は、前記内筒の内径以上の外径を有する円筒状の上部と、下方に向かって先細り状の下部とを有していてもよい。
【0024】
このことにより、濾材袋の上部の外周部と内筒の内周面との間には隙間がなくなるので、雨水が上記隙間をすり抜け、十分に濾過されずに排出されることはない。また、濾材袋の下部は先細り状に形成されているので、内筒に対する濾材袋の挿入が容易となる。なお、濾材袋は変形可能であるので、濾材袋の上部の外径が内筒の内径よりも若干大きくても、濾材袋の一部が内側に変形することにより、濾材袋は内筒内に収容される。
【0025】
前記濾材袋は、通水性を有する密封袋からなり、前記板状部材に着脱自在に取り付けられていてもよい。
【0026】
このことにより、濾材袋の取扱性が向上する。濾材を濾材袋ごと交換することとすれば、濾材の交換が容易となる。
【0027】
前記濾材袋には、少なくとも一対の紐状または帯状の結束部材が設けられ、前記濾材袋は、前記一対の結束部材が前記板状部材の貫通孔を貫通して互いに固定されることによって、前記板状部材に取り付けられていてもよい。
【0028】
このことにより、板状部材に対する濾材袋の着脱が容易となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、濾材が浮上し難く、濾材の収容および取り出しが容易である雨水濾過器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係る雨水濾過器が設けられた雨水管路の構成図である。
【図2】雨水濾過器の内部構成を示す斜視図である。
【図3】蓋を外した状態の雨水濾過器の平面図である。
【図4】雨水濾過器の縦断面図である。
【図5】内筒の上側部分の斜視図である。
【図6】互いに取り外された状態の浮上防止部材および濾材袋の側面図である。
【図7】互いに取り付けられた状態の浮上防止部材および濾材袋の斜視図である。
【図8】変形例に係る浮上防止部材および濾材袋の斜視図である。
【図9】他の変形例に係る内筒の上側部分の斜視図である。
【図10】他の変形例に係る内筒の上側部分の側面図である。
【図11】他の変形例に係る浮上防止部材および濾材袋の斜視図である。
【図12】変形例に係る雨水管路の構成図である。
【図13】他の変形例に係る雨水管路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る雨水濾過器1は、雨水管路2中に配設されており、地中に埋設されたものである。雨水濾過器1は、歩道3の下側に設置されている。雨水濾過器1は、車道4の側溝5と歩道3の側溝6との間に配置されている。雨水濾過器1の流入口21は流入管23を介して側溝5に接続され、雨水濾過器1の流出口22は流出管24を介して側溝6に接続されている。
【0032】
図2は雨水濾過器1の内部構成を示す斜視図、図3は雨水濾過器1の蓋25(図4参照)を外した状態の平面図、図4は雨水濾過器1の縦断面図である。雨水濾過器1は、外筒30と、内筒40と、濾材を収容した濾材袋50と、濾材袋50が浮上することを防止する浮上防止部材60とを備えている。
【0033】
図4に示すように、外筒30は、塩化ビニル製の円筒状の筒状体31と、筒状体31の下端を閉塞する塩化ビニル製の底板32とを備えている。底板32は筒状体31に接着されている。なお、筒状体31の形状は円筒状に限定されない。筒状体の断面形状は、楕円状であってもよい。また、筒状体31は、断面が矩形状の角筒であってもよく、断面が五角形以上の多角形状に形成されていてもよい。外筒30の材料は塩化ビニルに限られない。外筒30の材料は、その他の樹脂等であってもよい。
【0034】
外筒30の上端には、蓋25が着脱自在に嵌め込まれている。本実施形態では、蓋25は鋳鉄製であるが、蓋25の材料は特に限定される訳ではない。本実施形態に係る蓋25は、貫通孔が形成されていないいわゆる密閉蓋である。外筒30の上端は差口となり、蓋25は受口となっている。ただし、外筒30の上端が受口となり、蓋25が差口となっていてもよい。蓋25は着脱自在であるので、蓋25を取り外すことにより、外筒30の内部を開放することができる。外筒30の上端の開口は、地上からメンテナンス等を行う際に用いられる点検口を構成している。
【0035】
流入口21および流出口22は、外筒30の側面に形成されている。図3に示すように、平面視において、流出口22は流入口21の反対側に形成されている。ただし、流出口22は必ずしも流入口21の反対側に形成されていなくてもよい。図4に示すように、流出口22は流入口21よりも低い位置に設けられている。すなわち、流出口22の下端は流入口21の下端よりも低い位置にある。本実施形態では更に、流出口22の上端が流入口21の下端よりも低い位置にある。
【0036】
内筒40は外筒30の内部に配置されている。内筒40は、塩化ビニル製の円筒状の筒状体からなっている。ただし、内筒40の形状も円筒状に限定されず、他の形状であってもよい。内筒40は、外筒30の筒状体31と異なる形状を有していてもよい。内筒40の材料も塩化ビニルに限られず、例えば、その他の樹脂等であってもよい。内筒40の外径は外筒30の筒状体31の内径よりも小さく、内筒40の全長は筒状体31の全長よりも短い。内筒40は筒状体31と同心状に配置されていてもよいが、本実施形態では、内筒40は筒状体31に対して偏心した位置に配置されている。
【0037】
内筒40の下端は外筒30の底板32上に載っている。内筒40の下端部には、内外を貫く連通孔41が形成されている。内筒40における流出口22に対応する位置には、流出口42が形成されている。流出口42は流出口22と連続している。なお、流出口42は流出口22とつながっていればよく、例えば外筒30と内筒40とが同心状に配置されている場合には、内筒40の流出口42と外筒30の流出口22とを、管状部材等を介して連通すればよい。内筒40の流出口42よりも高い位置には、オーバーフロー口43が形成されている。オーバーフロー口43の下端は流入口21の下端と略等しい高さに位置している。内筒40において、流入口21と対向する位置には、開口は形成されていない。流入口21と対向する部分は、流入口21から流れ込んだ雨水を跳ね返す遮壁部40aとなっている。内筒40の上端は開放されている。
【0038】
図5に示すように、内筒40には、上端から鉛直下向きに延びる縦溝45と、縦溝45の下端から内筒40の円周方向に延びる横溝46とが形成されている。これら縦溝45および横溝46は、後述するガイド突起66a(図6参照)と係合する係合溝47を構成している。横溝46の奥側には、段差46a,46bを介して上下方向に広がる幅広部46cが形成されている。段差46aは下側に凹んだ段差であり、幅広部46cの手前部分の下側に形成されている。段差46bは上側に凹んだ段差であり、幅広部46cの手前部分の上側に形成されている。なお、「上下方向に広がる幅広部」とは、必ずしも横溝46から鉛直方向に延びる90度の段差を介して上下に広がるものに限らず、本実施形態のように、横溝46に対して90度よりも大きな角度をなす段差を介して上下に広がるものも含まれる。内筒40の上端面における幅広部46cの真上の位置には、目印48が設けられている。目印48の具体的構成は何ら限定されないが、本実施形態では目印48は、例えば黒色、赤色、黄色等の色が付された着色領域によって形成されている。
【0039】
濾材袋50は、微小な通水孔が形成された変形可能な袋からなっている。本実施形態では、濾材袋50はポリエステル製である。ただし、濾材袋50は通水性を有する他の材料からなっていてもよい。濾材袋50の内部には、複数の濾材が収容されている。濾材の材料は特に限定されず、例えば、多孔質の発泡ポリプロピレン粒子、活性炭、その他の公知の濾材等を好適に用いることができる。濾材袋50は、収容した濾材が漏れないように、密閉されている。濾材袋50は、開口を有しない完全密閉式の袋であってもよいが、開閉自在な開口を有し、その開口が塞がれることによって密閉される半密閉式の密封袋であってもよい。例えば、ファスナーによって塞がれる開口を有する袋であってもよい。また、開口の周囲を紐で締め付けることによって当該開口を塞ぐ袋であってもよい。
【0040】
図6に示すように、濾材袋50は、円筒状の上部51と、下方に向かって先細り状の下部52とを有している。上部51の外径は、内筒40の内径と略等しい。ただし、濾材袋50が内筒40に円滑に挿入できる限り、上部51の外径は内筒40の内径よりも大きくてもよい。濾材袋50の上部には、一対のベルト53が設けられている。ベルト53は濾材袋50に接着されていてもよく、濾材袋50に縫いつけられていてもよい。また、ベルト53は濾材袋50と一体的に形成されていてもよい。
【0041】
浮上防止部材60は、板状部材61と持ち手62とを備えている。板状部材61は、複数の貫通孔63が形成された塩化ビニル製の円板からなっている。ただし、板状部材61の材料は塩化ビニル以外の樹脂であってもよく、他の材料であってもよい。板状部材61の外径は、内筒40の内径と略同一である。図3に示すように、貫通孔63は板状部材61の全面にわたって設けられている。板状部材61には、多数の貫通孔63が分散して形成されている。本実施形態では、貫通孔63は細長い孔、言い換えるとスリット孔によって形成されている。貫通孔63は、板状部材61の中心の周りに、同心円状に周回するような態様で配設されている。ただし、貫通孔63の形状および配設態様は特に限定される訳ではない。貫通孔63は、例えば、板状部材61に一様に配設された円孔等であってもよい。板状部材61は、濾材袋50を上から押さえることにより、濾材袋50の浮上を防止する役割を果たす。また、板状部材61は、貫通孔63を通じて雨水を流通させる役割を果たす。図4に示すように、板状部材61は、板状部材61の上面の高さが流出口22の下端と同一またはそれ以下となるように配置される。
【0042】
図6に示すように、持ち手62は、一対の縦棒64と、T字型の連結部材66を介して両縦棒64に接続された横棒65とから構成されている。図7に示すように、板状部材61には孔67が形成されている。縦棒64の下端部が孔67に差し込まれることによって、持ち手62は板状部材61に固定されている。ここでは、縦棒64の下端部は孔67に差し込まれた状態で接着されている。本実施形態では、縦棒64および横棒65は真っ直ぐな棒であるが、縦棒64または横棒65は曲がった棒であってもよい。縦棒64および横棒65は、中実棒であってもよく、中空棒であってもよい。縦棒64および横棒65の断面形状は円形状でなくてもよく、例えば多角形状等であってもよい。縦棒64、横棒65、および連結部材66は、塩化ビニル製である。ただし、それらは塩化ビニル以外の樹脂で形成されていてもよい。また、それらは樹脂以外の材料で形成されていてもよい。
【0043】
連結部材66の外側部分、すなわち、内筒40の半径方向(図6の左右方向)の外側の部分は、外側に突出するガイド突起66aとなっている。このガイド突起66aは、内筒の係合溝47と係合する。ガイド突起66aは、内筒40の縦溝45と係合することにより、内筒40に対する浮上防止部材60の抜き差しを案内する。また、ガイド突起66aは、内筒40の横溝46と係合することにより、浮上防止部材60の回転を案内する。また、ガイド突起66aは横溝46と係合することによって上下動が規制され、浮上防止部材60の浮上を防止する。
【0044】
浮上防止部材60は、濾材袋50に着脱自在に取り付けられる。本実施形態では、浮上防止部材60は、ベルト53によって濾材袋50に取り付けられる。具体的には、図7に示すように、両ベルト53を板状部材61のいずれかの貫通孔63に下から上に通した後、両ベルト53を互いに固定する。本実施形態では、両ベルト53に面ファスナー(図示せず)が設けられており、それらの面ファスナー同士を接触させることにより、両ベルト53は互いに固定される。ただし、両ベルト53の固定方法は何ら限定されず、例えば、両ベルト53を結び合わせることによって固定することも可能である。このように、ベルト53により板状部材61と濾材袋50とを固定することによって、浮上防止部材60は濾材袋50に着脱自在に取り付けられる。
【0045】
次に、濾材袋50を内筒40内に収容する方法について説明する。濾材袋50は浮上防止部材60と共に、内筒40の内部に収容される。濾材袋50の収容にあたっては、予め濾材袋50に浮上防止部材60を取り付けておく。濾材袋50を収容する際には、まず、作業者は、外筒30の上端を塞いでいる蓋25(図4参照)を取り外す。次に、作業者は、浮上防止部材60の持ち手62を掴み、濾材袋50を内筒40内に挿入する。この際、濾材袋50の下部52は先細り状に形成されているので、作業者は濾材袋50を容易に挿入することができる。次に、作業者は、持ち手62のガイド突起66aを、内筒40の縦溝45に挿入する。ガイド突起66aが縦溝45の下端部に接触すると、ガイド突起66aが横溝46内を移動するように、持ち手62を回転させる。前述したように、内筒40の上端面には目印48が設けられている。作業者は、持ち手62の横棒65の両端が平面視において目印48の位置に至るまで、持ち手62を回転させる。これにより、ガイド突起66aは横溝46の奥部、すなわち、幅広部46c内に位置する。以上により、内筒40に対する浮上防止部材60および濾材袋50の取り付けが終了する。その後は、外筒30の上端部に蓋25を嵌め込む。なお、濾材のメンテナンス時には、上述の動作と逆の動作を行うことにより、浮上防止部材60と共に濾材袋50を外部に取り出すことができる。
【0046】
次に、雨水濾過器1の作用について説明する。車道4(図1参照)に降った雨水は、車道4上に堆積した汚濁物質と共に側溝5に流れ込む。側溝5に流れ込んだ雨水は、流入管23を通じて雨水濾過器1に流入する。図4に矢印で示すように、流入口21から流れ込んだ雨水は、外筒30と内筒40との間の空間71に流入する。空間71に流れ込んだ雨水は、内筒40の連通孔41を通じて、内筒40の内側且つ下側の空間72に流入する。次に、この雨水は、内筒40内を上向きに流れ、濾材袋50を上向きに通過する。この際、雨水は濾材袋50内の濾材によって濾過され、浄化される。浄化された雨水は、濾材袋50から流出し、板状部材61の貫通孔63を上向きに通過する。板状部材61の上側に流れ込んだ雨水は、内筒40の流出口42および外筒30の流出口22を通じて、流出管24に流れ出る。流出管24に流れ込んだ雨水は、側溝6(図1参照)に排出され、その後、河川等に放流等される。
【0047】
なお、集中豪雨時等のように降雨量が多いときには、雨水濾過器1内の水位が上昇する場合がある。外筒30内の水位が流入口21の下端よりも高くなると、雨水の一部はオーバーフロー口43を通じて内筒40内に流入する。また、水位が更に上昇すると、雨水の一部は内筒40の上端の開口を通じて内筒40内に流入する。そのため、雨水の逆流は防止され、側溝5から車道4に雨水が溢れ出すことを防止することができる。なお、降雨時の初期には、車道4上の汚濁物質が雨水と共に排出されるため、雨水の濾過が特に必要となるが、ある程度の量の雨が降った後では、車道4上には汚濁物質はほとんど残っていない。そのため、雨水濾過器1内の水位がオーバーフロー口43と同程度まで上昇した時には、雨水濾過器1には既に比較的きれいな雨水が流入していると考えられる。したがって、雨水濾過器1に流入した雨水が濾材を通過せずに流出したとしても、実用上問題はない。
【0048】
以上のように、雨水濾過器1によれば、内筒40に固定される浮上防止部材60によって、濾材袋50の浮上が防止される。したがって、濾材の浮上を確実に防止することができる。
【0049】
作業者は、持ち手62を掴みつつ、ガイド突起66aを内筒40の係合溝47に係合させながら浮上防止部材60を移動させることによって、浮上防止部材60を内筒40に容易に取り付けることができる。また、その逆の動作を行うことにより、浮上防止部材60を内筒40から容易に取り外すことができる。濾材袋50は浮上防止部材60に取り付けられており、浮上防止部材60と共に内筒40に出し入れされる。したがって、作業者は、浮上防止部材60を内筒40に取り付けるだけで、濾材袋50を所定の場所に容易に収容することができる。また、作業者は、浮上防止部材60を内筒40から取り外すだけで、濾材袋50を容易に取り出すことができる。さらに、濾材袋50は変形容易である。そのため、作業者は、大きな力を加えなくても、濾材袋50を内筒40に容易に挿入することができ、また、内筒40から容易に取り出すことができる。よって、雨水濾過器1によれば、濾材の収容および取り出しが容易である。
【0050】
内筒40の係合溝47は縦溝45および横溝46からなっており、作業者は、持ち手62を掴み、浮上防止部材60を下降および回転させることによって、浮上防止部材60を内筒40に取り付けることができる。また、持ち手62を掴み、浮上防止部材60を逆回転および上昇させることによって、浮上防止部材60を内筒40から取り外すことができる。したがって、外筒30の上方からの作業が容易である。
【0051】
雨水の濾過時に、雨水は濾材袋50内を上向きに流れ、濾材袋50は雨水から上向きの力を受ける。また、本実施形態では濾材は発泡ポリプロピレン製であり、濾材は水よりも比重が軽い。そのため、濾材には浮力も作用する。その結果、濾材袋50には上向きの力が加わる。しかし、浮上防止部材60を内筒40に対して逆回転させなければ、浮上防止部材60が内筒40から外れることはない。そのため、濾材袋50は上向きの力を受けるが、浮上防止部材60によって濾材袋50の浮上を確実に防止することができる。
【0052】
浮上防止部材60には、雨水を流通させるための通水孔として、多数の貫通孔63が形成されている。貫通孔63の開口面積の合計が小さすぎると、雨水の流通抵抗が大きくなり、集中豪雨時等の際に雨水が逆流しやすくなる。しかし、本実施形態では、浮上防止部材60の貫通孔63の開口面積の合計は、外筒30の流入口21の開口面積以上である。そのため、雨水の逆流は生じにくい。
【0053】
また、貫通孔63は板状部材61の全面にわたって形成されており、多数の貫通孔63が分散して配設されている。そのため、雨水は板状部材61の全体を満遍なく流れやすい。したがって、濾材袋50の一部が特定の貫通孔63内に食い込まれることを抑えることができ、濾材袋50の変形を抑制することができる。その結果、雨水が濾材袋50内で偏って流れることが抑制され、濾過性能を良好に保つことができる。
【0054】
また、板状部材61は、平面視において内筒40の内部の全体を覆っている(図3参照)。言い換えると、板状部材61の平面視における外側の輪郭の形状および寸法は、内筒40の平面視における内側の輪郭の形状および寸法と略同一である。したがって、板状部材61と内筒40との間の隙間はほとんどなく、濾材袋50の一部が板状部材61と内筒40との間の隙間に食い込まれることを抑えることができる。このことによっても、濾材袋50内における雨水の偏流を抑制することができ、濾過性能を良好に保つことができる。
【0055】
持ち手62は、縦棒64と、縦棒64から内筒40の半径方向外向きに突出するガイド突起66aとを有している。内筒40の係合溝47は、内筒40の上端から上下方向に延びる縦溝45と、縦溝45の下端から円周方向に延びる横溝46とからなっている。係合溝47は内筒40の上端から形成されており、また、縦棒64は上方から容易に視認することができるので、作業者は上方からガイド突起66aの位置を容易に把握することができる。したがって、浮上防止部材60および濾材袋50の取り付けおよび取り外しの作業を容易に行うことができる。
【0056】
横溝46の奥側には、上下の段差46a,46bを介して上下方向に広がる幅広部46cが形成されている。浮上防止部材60が浮いていないときには、ガイド突起66aは幅広部46cの下側に位置する。この場合、ガイド突起66aは下側の段差46aにより、逆回転方向の移動が阻止される。一方、浮上防止部材60が浮いているときには、ガイド突起66aは幅広部46cの上側に位置する。この場合、ガイド突起66aは上側の段差46bにより、逆回転方向の移動が阻止される。よって、いずれの場合であっても浮上防止部材60の逆回転は阻止され、浮上防止部材60が浮上して内筒40から外れてしまうことを防止することができる。
【0057】
濾材袋50は、内筒40の内径以上の外径を有する円筒状の上部51を有している。そのため、濾材袋50と内筒40の内周面との間に、隙間はほとんど形成されない。したがって、雨水が濾材袋50と内筒40の内周面との間の隙間を通過し、十分に濾過されずに排出されてしまうことを防止することができる。また、濾材袋50は、下方に向かって先細り状の下部52を有している。そのため、浮上防止部材60を下降させる際に、濾材袋50は内筒40内に円滑に挿入される。したがって、濾材袋50を内筒40内に容易に挿入することができる。
【0058】
濾材袋50は、通水性を有する密閉袋からなり、板状部材61に着脱自在に取り付けられている。そのため、浮上防止部材60および濾材袋50を外部に取り出した後、板状部材61から濾材袋50を取り外し、代わりに新しい濾材袋50を板状部材61に取り付けることによって、濾材を容易に交換することができる。したがって、濾材のメンテナンス作業が容易となる。
【0059】
濾材袋50は、一対のベルト53によって板状部材61に取り付けられる。両ベルト53は、板状部材61の貫通孔63に通され、板状部材61の上方にて互いに固定される。したがって、板状部材61に対して濾材袋50を容易に着脱することができる。
【0060】
図4に示すように、濾材袋50の下面は、外筒30の底面から上方に離隔している。そのため、雨水は、内筒40の連通孔41を通じて濾材袋50の下方の位置に流入し、その後、濾材袋50の下面から濾材袋50内に流入する。その結果、雨水は濾材袋50の下面の全体から流入し、濾材袋50内の全域を満遍なく流通する。したがって、濾過性能の向上を図ることができる。
【0061】
本実施形態では、内筒40は外筒30に対して偏心した位置に配置されており、内筒40の流出口42は外筒30の流出口22と連続している。これにより、内筒40と外筒30との間に形成される空間71を、外筒30の流入口21側において、大きく確保することができる。そのため、流入口21からの雨水を、上記空間71内に円滑に導くことができる。また、上記空間71は比較的大きいので、雨水濾過器1のメンテナンス時に上記空間71の清掃が容易となる。
【0062】
前記実施形態では、浮上防止部材60の持ち手62は、2本の縦棒64と、連結部材66と、1本の横棒65とから構成されていたが、持ち手62の構成は何ら限定される訳ではない。例えば、図8に示すように、持ち手62は、3本の縦棒64と、各縦棒64の上端から内筒40の半径方向外向きに突出するガイド突起66aとから構成されていてもよい。図8に示す持ち手62には、横棒は設けられていない。作業者は、1本または2本以上の縦棒64を掴んで、内筒40に対し浮上防止部材60を出し入れすることになる。なお、本変形例に係る持ち手62には、合計3つのガイド突起66aが設けられている。そのため、内筒40には、合計3つの係合溝が設けられる。
【0063】
図5に示すように前記実施形態では、内筒40の係合溝47は、上下方向に延びる縦溝45と、円周方向に延びる横溝46とによって構成されていた。しかし、係合溝47の形状は前記実施形態のものに限定される訳ではない。例えば図9に示すように、縦溝45は斜め上下方向に延びていてもよい。
【0064】
前記実施形態では、浮上防止部材60の逆回転を防止する逆回転防止機構は、横溝46の奥側に設けられた幅広部46cによって形成されていた(図5参照)。しかし、逆回転防止機構の構成は何ら限定されない。例えば、図10に示すように、横溝46の上部および下部に、段差46aおよび46bを形成する突起46dを設けるようにしてもよい。本変形例では、ガイド突起66aが横溝46の奥側(図10の右側)に移動しやすいように、突起46dは、縦溝45側に斜面を有する略三角形状に形成されている。ただし、突起46dの形状は特に限定されない。
【0065】
前記実施形態では、内筒40の係合溝47に係合する係合突部は、持ち手62に設けられたガイド突起66aであった。しかし、係合突部は、板状部材61に設けられていてもよい。図11に示す変形例では、板状部材61の外周部に、係合突部としてのガイド突起61aが設けられている。本変形例では、合計3つのガイド突起61aが、円周方向に等間隔に並んでいる。図示は省略するが、内筒40には、ガイド突起61aの円周方向長さに等しい幅の縦溝と、縦溝の下端から円周方向に延びる横溝とが形成されている。本変形例では、持ち手62は、1本の縦棒64と、縦棒64の上端部に設けられたT字型の把持部68とから構成されている。ただし、持ち手62の構成は特に限定される訳ではない。
【0066】
雨水管路における雨水濾過器1の配置態様は、前記実施形態のものに限定されない。例えば図12に示すように、雨水濾過器1は、側溝5と雨水浸透槽9との間に配置されていてもよい。図12に示す雨水管路は、配管8を介して側溝5に接続された雨水本管7と、雨水を貯留しつつ地中に浸透させる雨水浸透槽9とを備えている。雨水濾過器1の流入口21は流入管23を介して側溝5に接続され、流出口22は流出管24を介して雨水浸透槽9に接続されている。側溝5に流れ込んだ雨水の一部は、雨水本管7に流入する。側溝5に流れ込んだ雨水の残部は、雨水濾過器1で濾過された後、雨水浸透槽9に流入する。そのため、雨水浸透槽9では、雨水濾過器1で浄化された雨水を地中に浸透させることができる。
【0067】
図13に示す雨水管路は、雨水を貯留する雨水貯留槽10を備えている。雨水貯留槽10に貯留された雨水は、再利用水として各種用途に利用することができる。雨水濾過器1の流入口21は、流入管23および他の配管を介して、家屋等の雨樋11等に接続されている。雨水濾過器1の流出口22は、流出管24を介して雨水貯留槽10に接続されている。雨水貯留槽10は、配管13、ます12、および配管14を介して、側溝6に接続されている。雨樋11等に回収された雨水は、雨水濾過器1で濾過された後、雨水貯留槽10に供給される。したがって、雨水貯留槽10には、雨水濾過器1で浄化された雨水が貯留される。雨水貯留槽10内の雨水が所定量を超え、水位が上昇すると、余剰の雨水は配管13、ます12、および配管14を通じて、側溝6に排出される。
【0068】
雨水管路において、雨水濾過器1の上流側にフィルタますを設けてもよい。これにより、雨水に含まれる異物(例えば、枯葉等)はフィルタますで除去され、雨水濾過器1には異物を含まない雨水が流入することになる。したがって、雨水濾過器1の内部で異物が詰まったりすることが防止され、例えば、雨水濾過器1の長寿命化等を図ることができる。
【0069】
前記実施形態では、濾材袋50の全体が、通水性を有する材料で形成されていた。しかし、濾材袋50は、雨水がその内部を通過するものであれば足り、その一部のみが通水性を有するものであってもよい。例えば、濾材袋50は、その上面部および下面部のみが通水性を有し、その側面部が通水性を有さないものであってもよい。また、濾材袋50は、その上面部と、側面の下部とが通水性を有し、その他の部分が通水性を有さないものであってもよい。
【0070】
濾材袋50は、上方および下方が開放されたものであってもよい。例えば、濾材袋50は円筒状に形成されていてもよい。このような場合であっても、濾材袋50の上部および下部に通水可能な部材(例えば、貫通孔が形成された円板等)を取り付けることにより、結果として、上部および下部が雨水の流通可能な濾材袋を形成することができる。
【0071】
前記実施形態では、濾材袋50の下部は先細り状に形成されていた。しかし、濾材袋50の下部は、必ずしも先細り状でなくてもよく、外径が一定の円筒状に形成されていてもよい。内筒40に対する挿入が容易であることが好ましいが、濾材袋50の形状は特に限定される訳ではない。
【0072】
前記実施形態では、濾材袋50の下面から雨水を導入するため、濾材袋50の下面と外筒30の底面との間には間隔が設けられていた。しかし、上記間隔は必ずしも必要ではなく、濾材袋50の下面と外筒30の底面とは接触していてもよい。
【0073】
前記実施形態では、浮上防止部材60は濾材袋50にベルト53で固定されていた。しかし、浮上防止部材60と濾材袋50とは、他の手段で固定されてもよい。前記実施形態では、板状部材61は濾材袋50の外部に配置されていた。しかし、濾材袋50は、板状部材61を内部に収容した状態で密封されてもよい。板状部材61は濾材袋50の内部に配置されてもよい。また、濾材のメンテナンスを容易にする観点等から、濾材袋50は浮上防止部材60に対し着脱自在であることが好ましいが、濾材袋50は必ずしも浮上防止部材60に対して着脱自在でなくてもよい。例えば、濾材袋50は浮上防止部材60に接着されていてもよい。
【0074】
前記実施形態および変形例では、浮上防止部材60に係合突部(ガイド突起66a、ガイド突起61a)が設けられ、内筒40に係合溝47が設けられていた。しかし、内筒40に係合突部が設けられ、浮上防止部材60に係合溝が設けられていてもよい。
【0075】
前記実施形態では、浮上防止部材60の板状部材61は、複数の貫通孔63が形成された樹脂製の円板によって形成されていた。しかし、板状部材61は、雨水を通過させることができ、濾材袋50を上方から押さえることができるものであれば足り、具体的な構成は特に限定されるものではない。板状部材61として、例えば、樹脂製または金属製のメッシュを用いることも可能である。
【0076】
前記実施形態では、蓋25は孔が空いていない密閉蓋であった。しかし、内筒40の上端開口を閉塞し、蓋25に貫通孔を形成してもよい。この場合、流入口21から流入する雨水に加え、蓋25の貫通孔からも雨水が流入する。雨水濾過器1は、いわゆる集水ますとしても機能することになる。
【0077】
前記実施形態では、内筒40は外筒30に対して偏心した位置に配置されていた。しかし、内筒40を外筒30に対して同心状に配置することも可能である。前記実施形態では、内筒40の全長は外筒30の全長よりも短かった。しかし、内筒40の全長と外筒30の全長とは、略同一であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 雨水濾過器
2 雨水管路
21 流入口
22 流出口
25 蓋
30 外筒
32 底板
40 内筒
41 連通孔(連通部)
42 流出口
47 係合溝
50 濾材袋
60 浮上防止部材
61 板状部材
62 持ち手
63 貫通孔
66a ガイド突起(係合突部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水管路中に配設される雨水濾過器であって、
流入口と前記流入口よりも低い位置に形成された流出口とが設けられ、その上部が蓋によって開閉自在に塞がれ、底板を有する外筒と、
前記外筒の前記流出口につながる流出口が設けられ、その下部に内外を貫く連通部を有し、前記外筒の内部に配置された内筒と、
少なくともその上部および下部が雨水の流通が可能に形成され、その内部に濾材が収容され、前記内筒の内部且つ前記内筒の流出口よりも低い位置に配置される変形可能な濾材袋と、
前記濾材袋の上部に固定され且つ複数の貫通孔が形成された板状部材と、前記板状部材から上方に延びる持ち手とを有し、前記濾材の浮上を防止する浮上防止部材と、を備え、
前記浮上防止部材および前記内筒のいずれか一方に係合溝が形成され、他方に前記係合溝に係合可能な係合突部が形成され、
前記係合溝に前記係合突部を係合させて前記浮上防止部材を前記内筒に対して回転させることによって、前記浮上防止部材が前記内筒に固定されている、雨水濾過器。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記板状部材の全面にわたって形成され、
前記貫通孔の開口面積の合計は、前記外筒の前記流入口の開口面積以上であり、
前記板状部材の平面視における外側の輪郭の形状および寸法は、前記内筒の平面視における内側の輪郭の形状および寸法と略同一である、請求項1に記載の雨水濾過器。
【請求項3】
前記持ち手は、前記板状部材の上面に固定された縦棒と、前記縦棒から前記内筒の半径方向外向きに突出し、前記係合突部を構成するガイド突起とを有し、
前記係合溝は、前記内筒の上端から上下方向または斜め上下方向に延びる縦溝と、前記縦溝の下端から前記内筒の円周方向に延びる横溝とからなっている、請求項1または2に記載の雨水濾過器。
【請求項4】
前記浮上防止部材が前記内筒に固定されるときの回転方向と逆方向に回転することを防止するように、前記横溝に係合している前記ガイド突起が前記縦溝側に移動することを阻止する逆回転防止機構を備えている、請求項3に記載の雨水濾過器。
【請求項5】
前記横溝の奥側には、段差を介して上下方向に広がる幅広部が形成されており、
前記幅広部が前記逆回転防止機構を構成している、請求項4に記載の雨水濾過器。
【請求項6】
前記内筒は円筒形状に形成され、
前記濾材袋は、前記内筒の内径以上の外径を有する円筒状の上部と、下方に向かって先細り状の下部とを有している、請求項1〜5のいずれか一つに記載の雨水濾過器。
【請求項7】
前記濾材袋は、通水性を有する密封袋からなり、前記板状部材に着脱自在に取り付けられている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の雨水濾過器。
【請求項8】
前記濾材袋には、少なくとも一対の紐状または帯状の結束部材が設けられ、
前記濾材袋は、前記一対の結束部材が前記板状部材の貫通孔を貫通して互いに固定されることによって、前記板状部材に取り付けられている、請求項7に記載の雨水濾過器。
【請求項1】
雨水管路中に配設される雨水濾過器であって、
流入口と前記流入口よりも低い位置に形成された流出口とが設けられ、その上部が蓋によって開閉自在に塞がれ、底板を有する外筒と、
前記外筒の前記流出口につながる流出口が設けられ、その下部に内外を貫く連通部を有し、前記外筒の内部に配置された内筒と、
少なくともその上部および下部が雨水の流通が可能に形成され、その内部に濾材が収容され、前記内筒の内部且つ前記内筒の流出口よりも低い位置に配置される変形可能な濾材袋と、
前記濾材袋の上部に固定され且つ複数の貫通孔が形成された板状部材と、前記板状部材から上方に延びる持ち手とを有し、前記濾材の浮上を防止する浮上防止部材と、を備え、
前記浮上防止部材および前記内筒のいずれか一方に係合溝が形成され、他方に前記係合溝に係合可能な係合突部が形成され、
前記係合溝に前記係合突部を係合させて前記浮上防止部材を前記内筒に対して回転させることによって、前記浮上防止部材が前記内筒に固定されている、雨水濾過器。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記板状部材の全面にわたって形成され、
前記貫通孔の開口面積の合計は、前記外筒の前記流入口の開口面積以上であり、
前記板状部材の平面視における外側の輪郭の形状および寸法は、前記内筒の平面視における内側の輪郭の形状および寸法と略同一である、請求項1に記載の雨水濾過器。
【請求項3】
前記持ち手は、前記板状部材の上面に固定された縦棒と、前記縦棒から前記内筒の半径方向外向きに突出し、前記係合突部を構成するガイド突起とを有し、
前記係合溝は、前記内筒の上端から上下方向または斜め上下方向に延びる縦溝と、前記縦溝の下端から前記内筒の円周方向に延びる横溝とからなっている、請求項1または2に記載の雨水濾過器。
【請求項4】
前記浮上防止部材が前記内筒に固定されるときの回転方向と逆方向に回転することを防止するように、前記横溝に係合している前記ガイド突起が前記縦溝側に移動することを阻止する逆回転防止機構を備えている、請求項3に記載の雨水濾過器。
【請求項5】
前記横溝の奥側には、段差を介して上下方向に広がる幅広部が形成されており、
前記幅広部が前記逆回転防止機構を構成している、請求項4に記載の雨水濾過器。
【請求項6】
前記内筒は円筒形状に形成され、
前記濾材袋は、前記内筒の内径以上の外径を有する円筒状の上部と、下方に向かって先細り状の下部とを有している、請求項1〜5のいずれか一つに記載の雨水濾過器。
【請求項7】
前記濾材袋は、通水性を有する密封袋からなり、前記板状部材に着脱自在に取り付けられている、請求項1〜6のいずれか一つに記載の雨水濾過器。
【請求項8】
前記濾材袋には、少なくとも一対の紐状または帯状の結束部材が設けられ、
前記濾材袋は、前記一対の結束部材が前記板状部材の貫通孔を貫通して互いに固定されることによって、前記板状部材に取り付けられている、請求項7に記載の雨水濾過器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−26080(P2012−26080A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162478(P2010−162478)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【Fターム(参考)】
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