雨水貯留浸透槽およびそこで用いる側周面用のカバー材
【課題】雨水貯留浸透槽に上下方向の変形が生じても配置したカバー材に破損が生じるのを回避できるようにして遮水シートや透水性シートに損傷が生じるのを長期にわたって阻止できるようにする。
【解決手段】下端を開放した一定高さの空間形成部35の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部32から立ち上がっている形状の単位構成材31の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体と積層構造体を覆う遮水シートまたは透水シート40とで構成される雨水貯留浸透槽Bにおいて、単位構成材31の側周部に空間形成部35への係止部と側壁部12、22とを備える第1のカバー材10と第2のカバー材20とを取り付ける。各カバー材は側壁部にスリット17、27を有しており、積層構造体に上載荷重が作用したときに積層構造体に生じる上下方向の形状変化を該スリット17、27が吸収することで、カバー材の破損を回避する。
【解決手段】下端を開放した一定高さの空間形成部35の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部32から立ち上がっている形状の単位構成材31の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体と積層構造体を覆う遮水シートまたは透水シート40とで構成される雨水貯留浸透槽Bにおいて、単位構成材31の側周部に空間形成部35への係止部と側壁部12、22とを備える第1のカバー材10と第2のカバー材20とを取り付ける。各カバー材は側壁部にスリット17、27を有しており、積層構造体に上載荷重が作用したときに積層構造体に生じる上下方向の形状変化を該スリット17、27が吸収することで、カバー材の破損を回避する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水貯留浸透槽とそこで用いる側周面用のカバー材に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の降雨があったときに、道路側溝を越流して雨水が道路などに流出するのを抑制したり、また、中小河川あるいは下水管などにその排水能力を上回る規模の雨水が流れ込むのを防止する目的で、雨水貯留浸透槽を地中に埋設することが行われる。施工が容易であることと、雨水貯留用の大きな空間を確保し易いことから、雨水を一時的に貯留することのできる空間を備えた単位構造材を上下方向に積層した積層構造体を雨水貯留浸透槽として用いることが多く行われており、その例が特許文献1あるいは特許文献2に記載されている。一例として、図5に示すような、下端を開放した一定高さの空間形成部35の複数個が、Y方向に一定間隔をおいて底部32から立ち上がっている形状の単位構成材31の複数枚を、図11に示すように交互に直交した姿勢で上下に積層して積層構造体30とし、それを雨水貯留浸透槽Aとして地中に埋設することが行われており、その例が例えば特許文献3等に記載されている。図5に示す単位構成材31は特許文献2等に記載されるように知られたものであり、下端が開放した箱状部35aの複数個がほぼ接した状態でX方向に配列して空間形成部35とされ、それがX方向に直交するY方向に間隔を空けながら必要列数だけ配列した構成を基本的に備えている。図5に示すように、異なった大きさの複数個の単位構成材31を寄せ集めて積層構造体30とされることもある。そのようにして形成した雨水貯留浸透槽Aを、貯留槽として利用する場合には、槽全体が遮水シートで覆われ、浸透槽として利用する場合は、全体が透水性シートで覆われる。
【0003】
地中に埋設されたこの種の雨水貯留浸透槽Aにおいて、側周面を覆っている遮水シートや透水性シート40は、槽内部に貯水される雨水のレベルの変化や、地下水位の変動や、埋設深さの違いによる側圧の違いなどにより、横方向の荷重あるいは繰り返し荷重を受けるのを避けられない。また、地表面を通る自動車などによる変動する上載荷重によって、雨水貯留浸透槽全体に上下方向の反覆した変位が生じるのも避けられず、これによっても、側周面を覆っている遮水シートや透水性シート40は繰り返し荷重を受ける。
【0004】
このような繰り返し荷重の作用によって遮水シートや透水性シート40に損傷が生じないように、また、繰り返し荷重の変化に追従できるように、実際の施工に当たっては、図11に示すように、遮水シートや透水性シート40を張力をかけずにある程度弛ませた状態で積層構造体30の周側壁部に取り付けるようにしている。そのために、シート40の取り付け作業は容易でなく、熟練した作業者が必要となっている。また、緩く張りすぎると、図11に示すように、シート40が積層構造体30の空間内に深く入り込んでしまい、貯水時あるいは周囲に雨水が浸透していくときでのシート40の逆方向への移動量が大きくなり、この繰り返しによって、シート40に疲労が発生して寿命が低下する恐れがある。なお、図11において、50は雨水貯留浸透槽Aのための基礎材、60はコンクリート床版を示す。
【0005】
上記の不都合を回避するために、雨水貯留浸透槽の周囲部に受圧パネルを張り付け、シートが積層構造体の空間内に向けて移動するのを受圧パネルで受け止めるようにした雨水貯留槽が特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−16582号公報
【特許文献2】特開2009−24447号公報
【特許文献3】特開2010−229803号公報
【特許文献4】特開2008−31645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載されるように、雨水貯留浸透槽の周囲部に受圧パネルを張り付けることは、遮水シートや透水性シートの破損防止に有効となる。しかし、特許文献4に記載される受圧パネルは裏面に補強リブを備える形態であり、全体として剛性が高いものとなっている。そのために、地表面を通る車両などからの上載荷重によって雨水貯留浸透槽が上下方向の変形を受けると、受圧パネルはその変形に追従することができず破損が生じる恐れがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、遮水シートや透水性シートの破損を防止するために側周面にカバー材を配置するようにした雨水貯留浸透槽において、雨水貯留浸透槽に上下方向の変形が生じても、配置したカバー材に破損が生じるのを回避できるようにし、それにより遮水シートや透水性シートに損傷が生じるのを長期にわたって阻止できるようにした側周面用のカバー材、およびそれを取り付けた雨水貯留浸透槽を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材は、雨水を一時的に貯留することのできる空間を備えた単位構造材を上下方向に積み上げて構成される積層構造体と該積層構造体の少なくとも側周面を覆う遮水シートまたは透水シートとで構成される雨水貯留浸透槽の前記積層構造体の周側面に取り付けるカバー材であって、前記カバー材は前記積層構造体に生じる上下方向の形状変化に追従可能な構成とされていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による雨水貯留浸透槽は、上記のカバー材が、前記積層構造体の周側面に取り付けられており、該カバー材の外側に遮水シートまたは透水シートが位置していることを特徴とする。
【0011】
本発明による雨水貯留浸透槽では、土圧あるいは地下水圧によって、遮水シートまたは透水シートに外側側方から荷重が作用したときに、その荷重による前記シートの内側への移動は前記側周面用のカバー材によって規制されるので、その移動距離はごく少ない距離となる。そのために、格別の緩みを確保した状態でシートを積層構造体の周囲に張り付ける必要はなく、シートの取り付け作業は極めて容易となる。雨水貯留浸透槽に上載荷重による上下方向の変形が生じた場合でも、側周面用のカバー材はその変形に追従可能となっており、雨水貯留浸透槽の上下方向の変形に起因して側周面用のカバー材が破損することはない。それにより、側周面用のカバー材は長寿命化し、結果として遮水シートまたは透水シートの寿命も長くなる。
【0012】
本発明による側周面用のカバー材はいくつかの具体的な形態を含む。第1の形態の側周面用のカバー材は、特に、下端を開放した一定高さの空間形成部の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部から立ち上がっている形状の単位構成材の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体に取り付けられるものであり、前記カバー材は前記空間形成部への係止部と、該係止部に接続しており前記空間形成部と空間形成部との間の空間領域に位置する側壁部とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2の形態の側周面用のカバー材は、特に、下端を開放した一定高さの空間形成部の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部から立ち上がっており、該空間形成部の前記Y方向に直交するX方向の側面には適数の開口部が形成されている形状の単位構成材の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体に取り付けられるものであり、前記カバー材は前記空間形成部への係止部と、該係止部に接続しており前記空間形成部の前記X方向の側面側に位置する側壁部とを備えることを特徴とする。
【0014】
そして、本発明による雨水貯留浸透槽の一形態では、上記第1の形態の側周面用のカバー材および第2の形態の側周面用のカバー材の双方または少なくとも第1の形態の側周面用のカバー材が雨水を貯留できる空間を備えた積層構造体の周側面に取り付けられており、該カバー材の外側に遮水シートまたは透水シートが位置していることを特徴とする。
【0015】
前記第1およびまたは第2の形態の側周面用のカバー材の側壁部を、雨水貯留浸透槽の上下方向の変形に追従可能とするには、材料を選択することによってもよく、また、側周面用のカバー材の前記側壁部に水平方向または垂直方向のスリットを形成することによってもよい。その双方によってもよい。第1およびまたは第2の形態の側周面用のカバー材の前記側壁部を曲げ剛性の少ない材料で作ることも挙げられる。この場合でも、側周面用のカバー材の下端部を、単位構成材の底部に係止させておくことで、カバー材の側壁部が水平方向の荷重によって水平方向に移動するのを阻止することができる。
【0016】
第1の形態の側周面用のカバー材および第2の形態の側周面用のカバー材において、カバー材の前記側壁部には複数個の貫通孔が形成されていてもよい。複数個の貫通孔を形成することにより、雨水貯留浸透槽の上下方向の変形に対する追従性をカバー材に持たせることができると共に、カバー材を通しての雨水の流入流出を容易かつ確実に確保できるようになる。
【0017】
前記した第1および第2の形態の側周面用のカバー材は、積層構造体に上載荷重が作用したときに当該積層構造体に生じる上下方向の形状変化にその側壁部が追従可能であることと、作用する側圧に耐える強度を備えることを条件に適宜の材料で作ることができる。好ましい例として、ポリプロピレン系樹脂の成形体、発泡樹脂成形体、ゴム弾性体による成形体が挙げられる。
【0018】
本発明による雨水貯留浸透槽の一つの態様において、前記第1およびまたは第2の形態の側周面用のカバー材は発泡樹脂で作られており、その発泡倍率は、前記積層構造体の上位から下位に向けて次第に小さくなるようにされている。前記単位構成材の複数枚を上下に積層して構成された積層構造体は、地盤中に埋設されているときに、上位の単位構成材と比較して、下位の単位構成材にはより大きい側圧が作用する。発泡倍率をより小さくすることで、その側圧に耐えることのできるカバー材が得られる。しかし、発泡倍率が小さくなると上下方向の荷重に対しての変形が生じ難くなるので、施工現場に応じて、最適な発泡倍率を適宜設定することが必要となる。
【0019】
本発明による側周面用のカバー材の第3の形態では、前記カバー材は、前記単位構造材への係止部を有しており、該カバー材の上下方向の高さは、前記係止部により単位構造材に取り付けられた状態で、下位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材上縁と直上位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材下縁との間に隙間が形成される高さとされていることを特徴とする。
【0020】
第3の形態のカバー材を取り付けた雨水貯留浸透槽では、上載荷重等により雨水貯留浸透槽に上下方向の変形が生じたときに、その変形は上位のカバー材と下位のカバー材との間の隙間が狭まることで吸収され、カバー材に上下方向の圧縮荷重が作用するのを回避できる。すなわち、各カバー材は、その高さを前記した特定の高さとすることで、前記積層構造体に生じる上下方向の形状変化に追従可能な構成となっている。隙間をどの程度とするかは、地中に設置した雨水貯留浸透槽に生じると通常予測される上下方向の変形量に応じて設定されるが、経験的に、4〜6mm程度であれば所期の目的は達成可能である。4mm未満では、雨水貯留浸透槽の上下方向の変形を吸収できなくなりカバー材に破損が生じる可能性が高くなり、6mm以上では、隙間から貯水空間内に遮水シートまたは透水シートが入り込んでしまい、シートの劣化が起こりやすくなる。
【0021】
第3の形態のカバー材において、好ましくは、下位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材上縁には凸部または凹部が形成されており、直上位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材下縁には前記凸部または凹部と係合する凹部または凸部が形成されている。この態様では、雨水貯留浸透槽の周側壁に取り付けた状態で、カバー材に形成した凸部と凹部とが互いに係合した姿勢となることで、水平方向への移動が規制されるようになり、カバー材の取り付け姿勢が安定する。
【0022】
第3の形態のカバー材において、好ましくは、前記カバー材には複数個の貫通孔が形成される。この形態では、カバー材を通しての雨水の流入流出を容易かつ確実に確保できるようになる。
【0023】
なお、第3の形態のカバー材は、プロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂の非発泡体または発泡体からなる成形体で作られるのが好ましい。
【0024】
本発明において、前記単位構成材は所要の強度を備えることを条件に任意の材料で作ることができる。好ましくは、軽量でありながら所要の強度を備えることから、非発泡あるいは発泡の樹脂材料であるが、これに限らない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、遮水シートまたは透水シートで少なくとも側周面が覆われている雨水貯留浸透槽において、上載荷重および側方荷重(側圧)に起因して遮水シートまたは透水シートに疲労による損傷が生じるのを、より効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による雨水貯留浸透槽の一例を示す図。
【図2】本発明による第1および第2の形態の側周面用のカバー材の一例をその取り付け部位とともに示す図。
【図3】第1および第2の形態の側周面用のカバー材の一例を示す図。
【図4】第1および第2の形態の側周面用のカバー材の他の例を示す図。
【図5】雨水貯留浸透槽を構成する単位構成材の一例を示す図。
【図6】本発明による第3の形態の側周面用のカバー材の一例を示す正面図(a)と上面図(b)。
【図7】第3の形態の側周面用のカバー材の一例を示す前面側から見た斜視図(a)とb−b線での断面図(b)と側面図(c)。
【図8】第3の形態の側周面用のカバー材を直交した姿勢に組み付けた状態を示す斜視図。
【図9】第3の形態の側周面用のカバー材を取り付けた雨水貯留浸透槽の一部を断面で示す図。
【図10】第3の形態の側周面用のカバー材の変形例を示す正面図(a)と上面図(b)。
【図11】従来の雨水貯留浸透槽を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明による第1および第2の形態の側周面用のカバー材を取り付けた雨水貯留浸透槽Bを示す。
【0028】
雨水貯留浸透槽Bは、側周面が本発明による第1の形態の側周面用のカバー材10および第2の形態の側周面用のカバー材20で覆われていることを除き、図11に基づき説明した雨水貯留浸透槽Aと同じであってよく、下端を開放した一定高さの空間形成部35であって水平断面が矩形状でありかつ側面が下広がり状の斜面をなす空間形成部35の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部32から立ち上がっている形状の単位構成材31の複数枚が、交互に直交した姿勢で上下に積層して積層構造体30とされ、その全体が遮水シートまたは透水性シート40で覆われている。そして、図11に示した雨水貯留浸透槽Aと同様に、上面側にコンクリート床版60を配置した状態で地盤中に埋設されており、図示しないに導水部を介して、雨水が雨水貯留浸透槽Bに流入し一時的に貯水される。
【0029】
貯水された雨水は、雨水貯留浸透槽Bが浸透槽の場合には、時間とともに透水性シート40を通って地盤中に浸透していき、遮水シート40で覆われて雨水貯水槽とされる場合には、図示しないオリフィスを備えた排水管を通して下水管等に排水されるか、ポンプアップされて散水等に用いられる。
【0030】
図2に示すように、積層されている各段の単位構成材31におけるY方向に配列した空間形成部35、35の端面には第1の形態の側周面用のカバー材10が取り付けられ、両側辺に位置する空間形成部35には、その側面36に沿うようにして、X方向に第2の形態の側周面用のカバー材20が取り付けられる。なお、この例において、各空間形成部35のX方向に走る側面36には開口37が形成されており、該開口37からも雨水が貯水空間内に流入流出できるようにされている。
【0031】
この例において、第1の形態のカバー材10および第2の形態のカバー材20は、ともにポリプロピレン系の樹脂による成形品である。第1の形態のカバー材10は、図3(a)に示すように、天板11と、天板11の前方端から垂下する側壁部12と、天板11と側壁部12の左右の端部を繋ぐ側端面部13、13と、天板11の後端側から後方に延出する係止部14とを備える。側端面部13、13の後縁16は、前記空間形成部35の短手方向の端面38の傾斜角度と同じ角度の斜面となっており、また、係止部14は隣接する空間形成部35、35の対向する側面36、36間に嵌り込む形状となっている。側壁部12の横幅はY方向に隣接する空間形成部35、35の中心間の距離とほぼ等しい。さらに、側壁部12には適宜長さと適宜高さの水平方向のスリット17が形成されており、底部には脚18が形成されている。図では省略しているが、天板11には、上位に位置する第1の形態のカバー材10の前記脚18が入り込むことのできる凹陥部が形成されている。
【0032】
第1の形態のカバー材10全体の高さは、空間形成部35と空間形成部35の間のY方向における空間領域の端部に第1の形態のカバー材10を取り付けたときに、空間形成部35の短手方向の端面38に形成された段差部39の上に前記天板11が乗り、その状態で側壁部12底部に形成した脚18が、単位構成材31の底部32にほぼ接することのできる高さとされている。なお、図示の都合から、図2には、前記第1の形態のカバー材10の脚18が接することとなる単位構成材31の底部32は示していない。
【0033】
したがって、第1の形態のカバー材10を空間形成部35、35のY方向における空間領域の端部に取り付けると、第1の形態のカバー材10は前記係止部14と天板11とが空間形成部35、35に接触することで上方側が支持され、脚18が単位構成材31の底部32接することで下方側が支持された姿勢となり、その姿勢で、側端面部13、13の後縁16は空間形成部35の短手方向の端面38にほぼ当接しており、かつ側壁部12はほぼ垂直位置となっている。
【0034】
必須ではないが、図2に示すように、この例では、単位構成材31のY向での端部に取り付けるためのカバー材10a、10bも用いるようにしている。カバー材10a、10bの形状はカバー材10を幅方向で2分割したものにほぼ等しく、分割面に側端面部13a、13bがさらに設けられている。
【0035】
第2の形態のカバー材20は、図3(b)に示すように、天板21と、天板21の前方端から垂下する側壁部22と、天板21と側壁部22の左右の端部を繋ぐ側端面部23、23と、天板21の後端側から後方に延出する複数個の係止部24とを備える。天板21および側壁部22の横幅は、空間形成部35のX方向の長さに等しい。側端面部23、23の後縁26は、前記空間形成部35の長手方向(X方向)の側面36の傾斜角度と同じ角度の斜面となっている。また、各係止部24は、下端が開放した箱状部35aと箱状部35aの間の空間に嵌り込む形状となっている。なお、幅方向の両端に形成される係止部24aは、前記係止部24を幅方向で2分割した形状である。さらに、側壁部22の前記係止部24に対向する位置には、適宜長さと適宜高さの水平方向のスリット27が適数形成されており、また、底部には脚28が適数形成されている。
【0036】
第2の形態のカバー材20全体の高さは、第1の形態のカバー材10高さと同じであり、最外側の空間形成部35の長手方向の側面36に沿うようにして第2の形態のカバー材20を取り付けたときに、係止部24、24aの底面が箱状部35aの短手方向の端面38に形成された段差部39の上に乗り、その状態で側壁部22底部に形成した脚28が、単位構成材31の底部32にほぼ接することのできる高さとされている。図では省略しているが、天板21には、上位に位置する第2の形態のカバー材20の前記脚28が入り込むことのできる凹陥部が形成されている。
【0037】
したがって、第2の形態のカバー材20を空間形成部35の長手方向(X方向)の斜面36に沿うようにして取り付けると、第2の形態のカバー材20は前記係止部24の底面が段差部39に接触することで上方側が支持され、脚28が単位構成材31の底部32に接することで下方側が支持された姿勢となり、その姿勢で、側端面部23、23の後縁26は空間形成部35の長手方向の側面36にほぼ当接しており、かつ側壁部22はほぼ垂直位置となっている。
【0038】
上記のようにして、単位構成材31の4辺に第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20とを取り付け、それを90度の角度で交互に向きを変えながら多段に積層して積層構造体30とし、その全体を透水性シートまたは遮水シート40で覆って形成された雨水貯留浸透槽Bが図1に示される。図示されるように、上下に位置する第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20は実質的に隙間のない状態で上下方向に積み上げられた状態となる。この雨水貯留浸透槽Bにコンクリート床版60を介して上からの荷重が作用すると、雨水貯留浸透槽B全体が上下方向にわずかに変形する。その変形は単位構成材31が変形することで吸収される。また、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20も樹脂材料で作られており、その変形を吸収することができる。さらに、それぞれの側壁部12、22に形成したスリット17、27によっても吸収される。また、上からの荷重がなくなると、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20は元の姿勢に復帰することができる。そのために、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20が上からの荷重によって破損することはほぼ確実に回避される。また、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20が存在することで、透水性シートまたは遮水シート40の横方向の変位量も小さくすることができるので、雨水貯留浸透槽Bを施工するときの透水性シートまたは遮水シート40の取り付け作業も容易となる。
【0039】
雨水貯留浸透槽Bが浸透槽の場合には、一時的に貯留された雨水は透水性シートを通って時間とともに周囲の地盤中に浸透することとなるが、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20同士の接合部および積層構造体30との接触部には隙間が存在すること、また、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20の側壁部12、22にはスリット17、27が形成されていることから、雨水の地盤への浸透が阻害されることはない。図示しないが、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20の接合部に適宜の開口部を形成する、または側壁部12、22に多数個の貫通孔を形成することで、雨水の流入流出をより円滑にすることもできる。多数個の貫通孔を形成することにより、側壁部12、22が変形しやすくなり、また、雨水貯留浸透槽B全体に生じる上下方向の変形も一層吸収しやすくなる。
【0040】
図示の例において、単位構成材31のX方向の側面はY方向の側面と比較して、透水性シートまたは遮水シート40が入り込む空間領域が狭い。したがって、図示の単位構成材31を用いる場合には、前記第2の形態のカバー材20の使用を省略しても、ほぼ所期の目的を達成することができる。
【0041】
図4は、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20の他の形態を示している。ここでは、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20のそれぞれの側壁部12、22に、水平方向ではなく、垂直方向のスリット17a、27aが形成されている点で、図3に示した第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20と相違している。したがって、同じ部材には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。スリットが垂直方向のスリット17a、27aであっても、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20がほぼ同じ機能を果たし得ることは、説明を要しない。
【0042】
次に、図6〜図10を参照して、本発明による第3の形態の側周面用のカバー材70を説明する。第3の形態の側周面用のカバー材70は好ましくはポリプロピレン系樹脂の非発泡体であり、全体として板状をなす横長の直方体である。カバー材70は、本体部71とその左右側部から水平方向に延出する係合翼72とを備え、本体部71には、厚み方向に貫通する貫通孔73がほぼ全領域に形成されている。なお、この貫通孔73は省略することもできる。
【0043】
本体部71の横幅は、取り付けようとする積層構造体30の横幅とほぼ等しい。係合翼72は一定間隔をおいて多段に形成されており、図で右側の係合翼72aと左側の係合翼72bは同じ形状である。ただし、左側の係合翼72bは、右側の係合翼72aに対して、その翼一枚分の厚さにほぼ等しい距離だけ下方に変位した位置に形成されている。本体部71の上縁には凸条74が形成されており、下縁には前記凸条74が係合可能な凹溝75(図7参照)が形成されている。また、本体部71の裏面側には適数(図示のものでは2個)の係止用フック76が同じ高さ位置で水平方向に分散して形成されている。
【0044】
図8は、2つのカバー材70、70を、互いの係合翼72同士を係合させた姿勢で、直交状に配置した状態を示している。前記したように、各カバー材70、70において、左側の係合翼72bは、右側の係合翼72aに対して、その翼一枚分の厚さだけ下方に変位して形成されているので、双方のカバー材70、70は、その上縁の高さは同じレベルとした状態で、一方のカバー材70の右側の係合翼72aの直下に、他方のカバー材70の左側の係合翼72bを位置させた直交姿勢を取ることができる。
【0045】
次に、カバー材70の高さおよび単位構成材31への取り付け状態について、図9を参照して説明する。図9は、図5に基づき説明した単位構成材31を、90度方向を変えながら、段積みした状態を示している。ただし、カバー材70を使用する場合には、その底部32の周囲に、図示のように、係止溝80を一体形成した単位構成材31が用いられる。カバー材70を積層構造体30の側周面に取り付けるに際しては、その裏面に形成した係止用フック76を単位構成材31の前記した係止溝80に係合させた状態とする。それにより、カバー材70は単位構成材31の周側壁に立ち上がった姿勢で留め付けられる。
【0046】
下段の単位構成材31の周側壁にカバー材70を取り付けた後、その上に90度回転させて同じ単位構成材31を段積みし、該上位の単位構成材31の周側壁にもカバー材70を取り付けた状態が、図9に示す状態である。図9には示されないが、各単位構成材31での直交する周側壁に取り付けられたカバー材70、70同士の姿勢は、図8に示した姿勢となっている。
【0047】
図9に示すように、カバー材70の上下方向の高さは、係止用フック76を用いて単位構造材31に取り付けた状態で、下位に位置する単位構造材31に取り付けられたカバー材70の上縁と直上位に位置する単位構造材31に取り付けられたカバー材70の下縁との間に隙間pが形成される高さとされている。また、図示のものでは、下位に位置する単位構造材31に取り付けたカバー材70の上縁に形成した凸条74の高さは、直上位に位置する単位構造材31に取り付けたカバー材70の下縁には凹溝75内に入り込むことのできる高さとされており、上下に位置するカバー材70、70は、凸条74が凹溝75内に入り込んだ姿勢にあることで、水平方向の自由移動が抑制されており、取り付け姿勢は一層安定する。
【0048】
第3の形態のカバー材70を取り付けた雨水貯留浸透槽Bでは、上載荷重等により雨水貯留浸透槽Bに上下方向の変形が生じたときに、その変形は上位のカバー材70と下位のカバー材70との間に形成される前記隙間pが狭まることで吸収される。そのために、カバー材70に上下方向の圧縮荷重が作用するのは回避される。言い換えれば、各カバー材70は、単位構造材31を段積みしたときに前記隙間pが形成される高さとすることで、積層構造体30に生じる上下方向の形状変化に追従可能な構成となっている。隙間pをどの程度とするかは、地中に設置した雨水貯留浸透槽に生じると通常予測される上下方向の変形量に応じて設定されるが、経験的に、4〜6mm程度であれば十分である。また、第3の形態のカバー材70が存在することで、前記した第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20の場合と同様、透水性シートまたは遮水シート40の横方向の変位量も小さくすることができ、シートの劣化も防止できる。
【0049】
なお、図示のものでは、凸条74と凹溝75を本体部71の横幅方向の全長にわたる長さとして示したが、凸条74を部分的に形成するあるいは単なる凸部として形成してもよい。その場合に、凹溝75は、全長に形成されていてもよいが、少なくとも部分的に形成された凸条74あるいは凸部が係合できる位置に形成されていればよい。
【0050】
図9において、上位の単位構造材31が最上位の単位構造材31と仮定したときに、その単位構造材31の上方領域は、カバー材70の高さの関係で、カバー材70によって周側壁が覆われていない。このままであっても、カバー材70の外側に遮水シートまたは透水シートで覆うことで、所期の目的を達成できる雨水貯留浸透槽Bが得られるが、最上位に位置する単位構造材31の周側壁における上方の領域を覆うことのできるカバー材を用いることで、より安定した雨水貯留浸透槽Bが得られる。図10に示すカバー材70aは、そのためのカバー材70aであり、本来のカバー材70よりも高さが低くされている。
【0051】
カバー材70aでは、下縁には前記凹溝75に形成されている。しかし、上縁には前記凸条74が形成されていてもよく、図示のもののように、形成されていなくてもよい。また、係止用フック76も必要もしない。その他の構成は、カバー材70と同様である。
【符号の説明】
【0052】
B…雨水貯留浸透槽、
10…第1の形態の側周面用のカバー材、
20…第2の形態の側周面用のカバー材、
11、21…天板、
12、22…側壁部
13、23…側端面部、
14、24…係止部、
16、26…側端面部の後縁、
17、27…側壁部に形成したスリット、
18、28…脚
70…第3の形態の側周面用のカバー材、
71…本体部、
72…係合翼、
73…貫通孔、
74…本体部上縁の凸条(凸部)、
75…本体部下縁の凹溝(凹部)、
76…係止用フック、
30…積層構造体、
31…単位構成材、
32…単位構成材の底部、
35…一定高さの空間形成部、
35a…箱状部、
36…空間形成部の長手方向の側面、
38…空間形成部の短手方向の端面、
40…遮水シートまたは透水性シート、
60…コンクリート床版、
80…単位構成材の底部周囲に形成した係止溝。
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水貯留浸透槽とそこで用いる側周面用のカバー材に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の降雨があったときに、道路側溝を越流して雨水が道路などに流出するのを抑制したり、また、中小河川あるいは下水管などにその排水能力を上回る規模の雨水が流れ込むのを防止する目的で、雨水貯留浸透槽を地中に埋設することが行われる。施工が容易であることと、雨水貯留用の大きな空間を確保し易いことから、雨水を一時的に貯留することのできる空間を備えた単位構造材を上下方向に積層した積層構造体を雨水貯留浸透槽として用いることが多く行われており、その例が特許文献1あるいは特許文献2に記載されている。一例として、図5に示すような、下端を開放した一定高さの空間形成部35の複数個が、Y方向に一定間隔をおいて底部32から立ち上がっている形状の単位構成材31の複数枚を、図11に示すように交互に直交した姿勢で上下に積層して積層構造体30とし、それを雨水貯留浸透槽Aとして地中に埋設することが行われており、その例が例えば特許文献3等に記載されている。図5に示す単位構成材31は特許文献2等に記載されるように知られたものであり、下端が開放した箱状部35aの複数個がほぼ接した状態でX方向に配列して空間形成部35とされ、それがX方向に直交するY方向に間隔を空けながら必要列数だけ配列した構成を基本的に備えている。図5に示すように、異なった大きさの複数個の単位構成材31を寄せ集めて積層構造体30とされることもある。そのようにして形成した雨水貯留浸透槽Aを、貯留槽として利用する場合には、槽全体が遮水シートで覆われ、浸透槽として利用する場合は、全体が透水性シートで覆われる。
【0003】
地中に埋設されたこの種の雨水貯留浸透槽Aにおいて、側周面を覆っている遮水シートや透水性シート40は、槽内部に貯水される雨水のレベルの変化や、地下水位の変動や、埋設深さの違いによる側圧の違いなどにより、横方向の荷重あるいは繰り返し荷重を受けるのを避けられない。また、地表面を通る自動車などによる変動する上載荷重によって、雨水貯留浸透槽全体に上下方向の反覆した変位が生じるのも避けられず、これによっても、側周面を覆っている遮水シートや透水性シート40は繰り返し荷重を受ける。
【0004】
このような繰り返し荷重の作用によって遮水シートや透水性シート40に損傷が生じないように、また、繰り返し荷重の変化に追従できるように、実際の施工に当たっては、図11に示すように、遮水シートや透水性シート40を張力をかけずにある程度弛ませた状態で積層構造体30の周側壁部に取り付けるようにしている。そのために、シート40の取り付け作業は容易でなく、熟練した作業者が必要となっている。また、緩く張りすぎると、図11に示すように、シート40が積層構造体30の空間内に深く入り込んでしまい、貯水時あるいは周囲に雨水が浸透していくときでのシート40の逆方向への移動量が大きくなり、この繰り返しによって、シート40に疲労が発生して寿命が低下する恐れがある。なお、図11において、50は雨水貯留浸透槽Aのための基礎材、60はコンクリート床版を示す。
【0005】
上記の不都合を回避するために、雨水貯留浸透槽の周囲部に受圧パネルを張り付け、シートが積層構造体の空間内に向けて移動するのを受圧パネルで受け止めるようにした雨水貯留槽が特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−16582号公報
【特許文献2】特開2009−24447号公報
【特許文献3】特開2010−229803号公報
【特許文献4】特開2008−31645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載されるように、雨水貯留浸透槽の周囲部に受圧パネルを張り付けることは、遮水シートや透水性シートの破損防止に有効となる。しかし、特許文献4に記載される受圧パネルは裏面に補強リブを備える形態であり、全体として剛性が高いものとなっている。そのために、地表面を通る車両などからの上載荷重によって雨水貯留浸透槽が上下方向の変形を受けると、受圧パネルはその変形に追従することができず破損が生じる恐れがある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、遮水シートや透水性シートの破損を防止するために側周面にカバー材を配置するようにした雨水貯留浸透槽において、雨水貯留浸透槽に上下方向の変形が生じても、配置したカバー材に破損が生じるのを回避できるようにし、それにより遮水シートや透水性シートに損傷が生じるのを長期にわたって阻止できるようにした側周面用のカバー材、およびそれを取り付けた雨水貯留浸透槽を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材は、雨水を一時的に貯留することのできる空間を備えた単位構造材を上下方向に積み上げて構成される積層構造体と該積層構造体の少なくとも側周面を覆う遮水シートまたは透水シートとで構成される雨水貯留浸透槽の前記積層構造体の周側面に取り付けるカバー材であって、前記カバー材は前記積層構造体に生じる上下方向の形状変化に追従可能な構成とされていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による雨水貯留浸透槽は、上記のカバー材が、前記積層構造体の周側面に取り付けられており、該カバー材の外側に遮水シートまたは透水シートが位置していることを特徴とする。
【0011】
本発明による雨水貯留浸透槽では、土圧あるいは地下水圧によって、遮水シートまたは透水シートに外側側方から荷重が作用したときに、その荷重による前記シートの内側への移動は前記側周面用のカバー材によって規制されるので、その移動距離はごく少ない距離となる。そのために、格別の緩みを確保した状態でシートを積層構造体の周囲に張り付ける必要はなく、シートの取り付け作業は極めて容易となる。雨水貯留浸透槽に上載荷重による上下方向の変形が生じた場合でも、側周面用のカバー材はその変形に追従可能となっており、雨水貯留浸透槽の上下方向の変形に起因して側周面用のカバー材が破損することはない。それにより、側周面用のカバー材は長寿命化し、結果として遮水シートまたは透水シートの寿命も長くなる。
【0012】
本発明による側周面用のカバー材はいくつかの具体的な形態を含む。第1の形態の側周面用のカバー材は、特に、下端を開放した一定高さの空間形成部の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部から立ち上がっている形状の単位構成材の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体に取り付けられるものであり、前記カバー材は前記空間形成部への係止部と、該係止部に接続しており前記空間形成部と空間形成部との間の空間領域に位置する側壁部とを備えることを特徴とする。
【0013】
第2の形態の側周面用のカバー材は、特に、下端を開放した一定高さの空間形成部の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部から立ち上がっており、該空間形成部の前記Y方向に直交するX方向の側面には適数の開口部が形成されている形状の単位構成材の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体に取り付けられるものであり、前記カバー材は前記空間形成部への係止部と、該係止部に接続しており前記空間形成部の前記X方向の側面側に位置する側壁部とを備えることを特徴とする。
【0014】
そして、本発明による雨水貯留浸透槽の一形態では、上記第1の形態の側周面用のカバー材および第2の形態の側周面用のカバー材の双方または少なくとも第1の形態の側周面用のカバー材が雨水を貯留できる空間を備えた積層構造体の周側面に取り付けられており、該カバー材の外側に遮水シートまたは透水シートが位置していることを特徴とする。
【0015】
前記第1およびまたは第2の形態の側周面用のカバー材の側壁部を、雨水貯留浸透槽の上下方向の変形に追従可能とするには、材料を選択することによってもよく、また、側周面用のカバー材の前記側壁部に水平方向または垂直方向のスリットを形成することによってもよい。その双方によってもよい。第1およびまたは第2の形態の側周面用のカバー材の前記側壁部を曲げ剛性の少ない材料で作ることも挙げられる。この場合でも、側周面用のカバー材の下端部を、単位構成材の底部に係止させておくことで、カバー材の側壁部が水平方向の荷重によって水平方向に移動するのを阻止することができる。
【0016】
第1の形態の側周面用のカバー材および第2の形態の側周面用のカバー材において、カバー材の前記側壁部には複数個の貫通孔が形成されていてもよい。複数個の貫通孔を形成することにより、雨水貯留浸透槽の上下方向の変形に対する追従性をカバー材に持たせることができると共に、カバー材を通しての雨水の流入流出を容易かつ確実に確保できるようになる。
【0017】
前記した第1および第2の形態の側周面用のカバー材は、積層構造体に上載荷重が作用したときに当該積層構造体に生じる上下方向の形状変化にその側壁部が追従可能であることと、作用する側圧に耐える強度を備えることを条件に適宜の材料で作ることができる。好ましい例として、ポリプロピレン系樹脂の成形体、発泡樹脂成形体、ゴム弾性体による成形体が挙げられる。
【0018】
本発明による雨水貯留浸透槽の一つの態様において、前記第1およびまたは第2の形態の側周面用のカバー材は発泡樹脂で作られており、その発泡倍率は、前記積層構造体の上位から下位に向けて次第に小さくなるようにされている。前記単位構成材の複数枚を上下に積層して構成された積層構造体は、地盤中に埋設されているときに、上位の単位構成材と比較して、下位の単位構成材にはより大きい側圧が作用する。発泡倍率をより小さくすることで、その側圧に耐えることのできるカバー材が得られる。しかし、発泡倍率が小さくなると上下方向の荷重に対しての変形が生じ難くなるので、施工現場に応じて、最適な発泡倍率を適宜設定することが必要となる。
【0019】
本発明による側周面用のカバー材の第3の形態では、前記カバー材は、前記単位構造材への係止部を有しており、該カバー材の上下方向の高さは、前記係止部により単位構造材に取り付けられた状態で、下位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材上縁と直上位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材下縁との間に隙間が形成される高さとされていることを特徴とする。
【0020】
第3の形態のカバー材を取り付けた雨水貯留浸透槽では、上載荷重等により雨水貯留浸透槽に上下方向の変形が生じたときに、その変形は上位のカバー材と下位のカバー材との間の隙間が狭まることで吸収され、カバー材に上下方向の圧縮荷重が作用するのを回避できる。すなわち、各カバー材は、その高さを前記した特定の高さとすることで、前記積層構造体に生じる上下方向の形状変化に追従可能な構成となっている。隙間をどの程度とするかは、地中に設置した雨水貯留浸透槽に生じると通常予測される上下方向の変形量に応じて設定されるが、経験的に、4〜6mm程度であれば所期の目的は達成可能である。4mm未満では、雨水貯留浸透槽の上下方向の変形を吸収できなくなりカバー材に破損が生じる可能性が高くなり、6mm以上では、隙間から貯水空間内に遮水シートまたは透水シートが入り込んでしまい、シートの劣化が起こりやすくなる。
【0021】
第3の形態のカバー材において、好ましくは、下位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材上縁には凸部または凹部が形成されており、直上位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材下縁には前記凸部または凹部と係合する凹部または凸部が形成されている。この態様では、雨水貯留浸透槽の周側壁に取り付けた状態で、カバー材に形成した凸部と凹部とが互いに係合した姿勢となることで、水平方向への移動が規制されるようになり、カバー材の取り付け姿勢が安定する。
【0022】
第3の形態のカバー材において、好ましくは、前記カバー材には複数個の貫通孔が形成される。この形態では、カバー材を通しての雨水の流入流出を容易かつ確実に確保できるようになる。
【0023】
なお、第3の形態のカバー材は、プロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂の非発泡体または発泡体からなる成形体で作られるのが好ましい。
【0024】
本発明において、前記単位構成材は所要の強度を備えることを条件に任意の材料で作ることができる。好ましくは、軽量でありながら所要の強度を備えることから、非発泡あるいは発泡の樹脂材料であるが、これに限らない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、遮水シートまたは透水シートで少なくとも側周面が覆われている雨水貯留浸透槽において、上載荷重および側方荷重(側圧)に起因して遮水シートまたは透水シートに疲労による損傷が生じるのを、より効果的に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による雨水貯留浸透槽の一例を示す図。
【図2】本発明による第1および第2の形態の側周面用のカバー材の一例をその取り付け部位とともに示す図。
【図3】第1および第2の形態の側周面用のカバー材の一例を示す図。
【図4】第1および第2の形態の側周面用のカバー材の他の例を示す図。
【図5】雨水貯留浸透槽を構成する単位構成材の一例を示す図。
【図6】本発明による第3の形態の側周面用のカバー材の一例を示す正面図(a)と上面図(b)。
【図7】第3の形態の側周面用のカバー材の一例を示す前面側から見た斜視図(a)とb−b線での断面図(b)と側面図(c)。
【図8】第3の形態の側周面用のカバー材を直交した姿勢に組み付けた状態を示す斜視図。
【図9】第3の形態の側周面用のカバー材を取り付けた雨水貯留浸透槽の一部を断面で示す図。
【図10】第3の形態の側周面用のカバー材の変形例を示す正面図(a)と上面図(b)。
【図11】従来の雨水貯留浸透槽を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明による第1および第2の形態の側周面用のカバー材を取り付けた雨水貯留浸透槽Bを示す。
【0028】
雨水貯留浸透槽Bは、側周面が本発明による第1の形態の側周面用のカバー材10および第2の形態の側周面用のカバー材20で覆われていることを除き、図11に基づき説明した雨水貯留浸透槽Aと同じであってよく、下端を開放した一定高さの空間形成部35であって水平断面が矩形状でありかつ側面が下広がり状の斜面をなす空間形成部35の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部32から立ち上がっている形状の単位構成材31の複数枚が、交互に直交した姿勢で上下に積層して積層構造体30とされ、その全体が遮水シートまたは透水性シート40で覆われている。そして、図11に示した雨水貯留浸透槽Aと同様に、上面側にコンクリート床版60を配置した状態で地盤中に埋設されており、図示しないに導水部を介して、雨水が雨水貯留浸透槽Bに流入し一時的に貯水される。
【0029】
貯水された雨水は、雨水貯留浸透槽Bが浸透槽の場合には、時間とともに透水性シート40を通って地盤中に浸透していき、遮水シート40で覆われて雨水貯水槽とされる場合には、図示しないオリフィスを備えた排水管を通して下水管等に排水されるか、ポンプアップされて散水等に用いられる。
【0030】
図2に示すように、積層されている各段の単位構成材31におけるY方向に配列した空間形成部35、35の端面には第1の形態の側周面用のカバー材10が取り付けられ、両側辺に位置する空間形成部35には、その側面36に沿うようにして、X方向に第2の形態の側周面用のカバー材20が取り付けられる。なお、この例において、各空間形成部35のX方向に走る側面36には開口37が形成されており、該開口37からも雨水が貯水空間内に流入流出できるようにされている。
【0031】
この例において、第1の形態のカバー材10および第2の形態のカバー材20は、ともにポリプロピレン系の樹脂による成形品である。第1の形態のカバー材10は、図3(a)に示すように、天板11と、天板11の前方端から垂下する側壁部12と、天板11と側壁部12の左右の端部を繋ぐ側端面部13、13と、天板11の後端側から後方に延出する係止部14とを備える。側端面部13、13の後縁16は、前記空間形成部35の短手方向の端面38の傾斜角度と同じ角度の斜面となっており、また、係止部14は隣接する空間形成部35、35の対向する側面36、36間に嵌り込む形状となっている。側壁部12の横幅はY方向に隣接する空間形成部35、35の中心間の距離とほぼ等しい。さらに、側壁部12には適宜長さと適宜高さの水平方向のスリット17が形成されており、底部には脚18が形成されている。図では省略しているが、天板11には、上位に位置する第1の形態のカバー材10の前記脚18が入り込むことのできる凹陥部が形成されている。
【0032】
第1の形態のカバー材10全体の高さは、空間形成部35と空間形成部35の間のY方向における空間領域の端部に第1の形態のカバー材10を取り付けたときに、空間形成部35の短手方向の端面38に形成された段差部39の上に前記天板11が乗り、その状態で側壁部12底部に形成した脚18が、単位構成材31の底部32にほぼ接することのできる高さとされている。なお、図示の都合から、図2には、前記第1の形態のカバー材10の脚18が接することとなる単位構成材31の底部32は示していない。
【0033】
したがって、第1の形態のカバー材10を空間形成部35、35のY方向における空間領域の端部に取り付けると、第1の形態のカバー材10は前記係止部14と天板11とが空間形成部35、35に接触することで上方側が支持され、脚18が単位構成材31の底部32接することで下方側が支持された姿勢となり、その姿勢で、側端面部13、13の後縁16は空間形成部35の短手方向の端面38にほぼ当接しており、かつ側壁部12はほぼ垂直位置となっている。
【0034】
必須ではないが、図2に示すように、この例では、単位構成材31のY向での端部に取り付けるためのカバー材10a、10bも用いるようにしている。カバー材10a、10bの形状はカバー材10を幅方向で2分割したものにほぼ等しく、分割面に側端面部13a、13bがさらに設けられている。
【0035】
第2の形態のカバー材20は、図3(b)に示すように、天板21と、天板21の前方端から垂下する側壁部22と、天板21と側壁部22の左右の端部を繋ぐ側端面部23、23と、天板21の後端側から後方に延出する複数個の係止部24とを備える。天板21および側壁部22の横幅は、空間形成部35のX方向の長さに等しい。側端面部23、23の後縁26は、前記空間形成部35の長手方向(X方向)の側面36の傾斜角度と同じ角度の斜面となっている。また、各係止部24は、下端が開放した箱状部35aと箱状部35aの間の空間に嵌り込む形状となっている。なお、幅方向の両端に形成される係止部24aは、前記係止部24を幅方向で2分割した形状である。さらに、側壁部22の前記係止部24に対向する位置には、適宜長さと適宜高さの水平方向のスリット27が適数形成されており、また、底部には脚28が適数形成されている。
【0036】
第2の形態のカバー材20全体の高さは、第1の形態のカバー材10高さと同じであり、最外側の空間形成部35の長手方向の側面36に沿うようにして第2の形態のカバー材20を取り付けたときに、係止部24、24aの底面が箱状部35aの短手方向の端面38に形成された段差部39の上に乗り、その状態で側壁部22底部に形成した脚28が、単位構成材31の底部32にほぼ接することのできる高さとされている。図では省略しているが、天板21には、上位に位置する第2の形態のカバー材20の前記脚28が入り込むことのできる凹陥部が形成されている。
【0037】
したがって、第2の形態のカバー材20を空間形成部35の長手方向(X方向)の斜面36に沿うようにして取り付けると、第2の形態のカバー材20は前記係止部24の底面が段差部39に接触することで上方側が支持され、脚28が単位構成材31の底部32に接することで下方側が支持された姿勢となり、その姿勢で、側端面部23、23の後縁26は空間形成部35の長手方向の側面36にほぼ当接しており、かつ側壁部22はほぼ垂直位置となっている。
【0038】
上記のようにして、単位構成材31の4辺に第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20とを取り付け、それを90度の角度で交互に向きを変えながら多段に積層して積層構造体30とし、その全体を透水性シートまたは遮水シート40で覆って形成された雨水貯留浸透槽Bが図1に示される。図示されるように、上下に位置する第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20は実質的に隙間のない状態で上下方向に積み上げられた状態となる。この雨水貯留浸透槽Bにコンクリート床版60を介して上からの荷重が作用すると、雨水貯留浸透槽B全体が上下方向にわずかに変形する。その変形は単位構成材31が変形することで吸収される。また、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20も樹脂材料で作られており、その変形を吸収することができる。さらに、それぞれの側壁部12、22に形成したスリット17、27によっても吸収される。また、上からの荷重がなくなると、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20は元の姿勢に復帰することができる。そのために、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20が上からの荷重によって破損することはほぼ確実に回避される。また、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20が存在することで、透水性シートまたは遮水シート40の横方向の変位量も小さくすることができるので、雨水貯留浸透槽Bを施工するときの透水性シートまたは遮水シート40の取り付け作業も容易となる。
【0039】
雨水貯留浸透槽Bが浸透槽の場合には、一時的に貯留された雨水は透水性シートを通って時間とともに周囲の地盤中に浸透することとなるが、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20同士の接合部および積層構造体30との接触部には隙間が存在すること、また、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20の側壁部12、22にはスリット17、27が形成されていることから、雨水の地盤への浸透が阻害されることはない。図示しないが、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20の接合部に適宜の開口部を形成する、または側壁部12、22に多数個の貫通孔を形成することで、雨水の流入流出をより円滑にすることもできる。多数個の貫通孔を形成することにより、側壁部12、22が変形しやすくなり、また、雨水貯留浸透槽B全体に生じる上下方向の変形も一層吸収しやすくなる。
【0040】
図示の例において、単位構成材31のX方向の側面はY方向の側面と比較して、透水性シートまたは遮水シート40が入り込む空間領域が狭い。したがって、図示の単位構成材31を用いる場合には、前記第2の形態のカバー材20の使用を省略しても、ほぼ所期の目的を達成することができる。
【0041】
図4は、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20の他の形態を示している。ここでは、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20のそれぞれの側壁部12、22に、水平方向ではなく、垂直方向のスリット17a、27aが形成されている点で、図3に示した第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20と相違している。したがって、同じ部材には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。スリットが垂直方向のスリット17a、27aであっても、第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20がほぼ同じ機能を果たし得ることは、説明を要しない。
【0042】
次に、図6〜図10を参照して、本発明による第3の形態の側周面用のカバー材70を説明する。第3の形態の側周面用のカバー材70は好ましくはポリプロピレン系樹脂の非発泡体であり、全体として板状をなす横長の直方体である。カバー材70は、本体部71とその左右側部から水平方向に延出する係合翼72とを備え、本体部71には、厚み方向に貫通する貫通孔73がほぼ全領域に形成されている。なお、この貫通孔73は省略することもできる。
【0043】
本体部71の横幅は、取り付けようとする積層構造体30の横幅とほぼ等しい。係合翼72は一定間隔をおいて多段に形成されており、図で右側の係合翼72aと左側の係合翼72bは同じ形状である。ただし、左側の係合翼72bは、右側の係合翼72aに対して、その翼一枚分の厚さにほぼ等しい距離だけ下方に変位した位置に形成されている。本体部71の上縁には凸条74が形成されており、下縁には前記凸条74が係合可能な凹溝75(図7参照)が形成されている。また、本体部71の裏面側には適数(図示のものでは2個)の係止用フック76が同じ高さ位置で水平方向に分散して形成されている。
【0044】
図8は、2つのカバー材70、70を、互いの係合翼72同士を係合させた姿勢で、直交状に配置した状態を示している。前記したように、各カバー材70、70において、左側の係合翼72bは、右側の係合翼72aに対して、その翼一枚分の厚さだけ下方に変位して形成されているので、双方のカバー材70、70は、その上縁の高さは同じレベルとした状態で、一方のカバー材70の右側の係合翼72aの直下に、他方のカバー材70の左側の係合翼72bを位置させた直交姿勢を取ることができる。
【0045】
次に、カバー材70の高さおよび単位構成材31への取り付け状態について、図9を参照して説明する。図9は、図5に基づき説明した単位構成材31を、90度方向を変えながら、段積みした状態を示している。ただし、カバー材70を使用する場合には、その底部32の周囲に、図示のように、係止溝80を一体形成した単位構成材31が用いられる。カバー材70を積層構造体30の側周面に取り付けるに際しては、その裏面に形成した係止用フック76を単位構成材31の前記した係止溝80に係合させた状態とする。それにより、カバー材70は単位構成材31の周側壁に立ち上がった姿勢で留め付けられる。
【0046】
下段の単位構成材31の周側壁にカバー材70を取り付けた後、その上に90度回転させて同じ単位構成材31を段積みし、該上位の単位構成材31の周側壁にもカバー材70を取り付けた状態が、図9に示す状態である。図9には示されないが、各単位構成材31での直交する周側壁に取り付けられたカバー材70、70同士の姿勢は、図8に示した姿勢となっている。
【0047】
図9に示すように、カバー材70の上下方向の高さは、係止用フック76を用いて単位構造材31に取り付けた状態で、下位に位置する単位構造材31に取り付けられたカバー材70の上縁と直上位に位置する単位構造材31に取り付けられたカバー材70の下縁との間に隙間pが形成される高さとされている。また、図示のものでは、下位に位置する単位構造材31に取り付けたカバー材70の上縁に形成した凸条74の高さは、直上位に位置する単位構造材31に取り付けたカバー材70の下縁には凹溝75内に入り込むことのできる高さとされており、上下に位置するカバー材70、70は、凸条74が凹溝75内に入り込んだ姿勢にあることで、水平方向の自由移動が抑制されており、取り付け姿勢は一層安定する。
【0048】
第3の形態のカバー材70を取り付けた雨水貯留浸透槽Bでは、上載荷重等により雨水貯留浸透槽Bに上下方向の変形が生じたときに、その変形は上位のカバー材70と下位のカバー材70との間に形成される前記隙間pが狭まることで吸収される。そのために、カバー材70に上下方向の圧縮荷重が作用するのは回避される。言い換えれば、各カバー材70は、単位構造材31を段積みしたときに前記隙間pが形成される高さとすることで、積層構造体30に生じる上下方向の形状変化に追従可能な構成となっている。隙間pをどの程度とするかは、地中に設置した雨水貯留浸透槽に生じると通常予測される上下方向の変形量に応じて設定されるが、経験的に、4〜6mm程度であれば十分である。また、第3の形態のカバー材70が存在することで、前記した第1の形態のカバー材10と第2の形態のカバー材20の場合と同様、透水性シートまたは遮水シート40の横方向の変位量も小さくすることができ、シートの劣化も防止できる。
【0049】
なお、図示のものでは、凸条74と凹溝75を本体部71の横幅方向の全長にわたる長さとして示したが、凸条74を部分的に形成するあるいは単なる凸部として形成してもよい。その場合に、凹溝75は、全長に形成されていてもよいが、少なくとも部分的に形成された凸条74あるいは凸部が係合できる位置に形成されていればよい。
【0050】
図9において、上位の単位構造材31が最上位の単位構造材31と仮定したときに、その単位構造材31の上方領域は、カバー材70の高さの関係で、カバー材70によって周側壁が覆われていない。このままであっても、カバー材70の外側に遮水シートまたは透水シートで覆うことで、所期の目的を達成できる雨水貯留浸透槽Bが得られるが、最上位に位置する単位構造材31の周側壁における上方の領域を覆うことのできるカバー材を用いることで、より安定した雨水貯留浸透槽Bが得られる。図10に示すカバー材70aは、そのためのカバー材70aであり、本来のカバー材70よりも高さが低くされている。
【0051】
カバー材70aでは、下縁には前記凹溝75に形成されている。しかし、上縁には前記凸条74が形成されていてもよく、図示のもののように、形成されていなくてもよい。また、係止用フック76も必要もしない。その他の構成は、カバー材70と同様である。
【符号の説明】
【0052】
B…雨水貯留浸透槽、
10…第1の形態の側周面用のカバー材、
20…第2の形態の側周面用のカバー材、
11、21…天板、
12、22…側壁部
13、23…側端面部、
14、24…係止部、
16、26…側端面部の後縁、
17、27…側壁部に形成したスリット、
18、28…脚
70…第3の形態の側周面用のカバー材、
71…本体部、
72…係合翼、
73…貫通孔、
74…本体部上縁の凸条(凸部)、
75…本体部下縁の凹溝(凹部)、
76…係止用フック、
30…積層構造体、
31…単位構成材、
32…単位構成材の底部、
35…一定高さの空間形成部、
35a…箱状部、
36…空間形成部の長手方向の側面、
38…空間形成部の短手方向の端面、
40…遮水シートまたは透水性シート、
60…コンクリート床版、
80…単位構成材の底部周囲に形成した係止溝。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水を一時的に貯留することのできる空間を備えた単位構造材を上下方向に積み上げて構成される積層構造体と該積層構造体の少なくとも側周面を覆う遮水シートまたは透水シートとで構成される雨水貯留浸透槽の前記積層構造体の周側面に取り付けるカバー材であって、
前記カバー材は前記積層構造体に生じる上下方向の形状変化に追従可能な構成とされていることを特徴とする雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項2】
前記積層構造体は下端を開放した一定高さの空間形成部の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部から立ち上がっている形状の単位構成材の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体であり、
前記カバー材は前記空間形成部への係止部と、該係止部に接続しており前記空間形成部と空間形成部との間の空間領域に位置する側壁部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項3】
前記積層構造体は下端を開放した一定高さの空間形成部の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部から立ち上がっており、該空間形成部の前記Y方向に直交するX方向の側面には適数の開口部が形成されている形状の単位構成材の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体であり、
前記カバー材は前記空間形成部への係止部と、該係止部に接続しており前記空間形成部の前記X方向の側面側に位置する側壁部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項4】
前記カバー材の前記側壁部には水平方向または垂直方向のスリットが形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項5】
前記カバー材の前記側壁部には複数個の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項6】
請求項2に記載のカバー材および請求項3に記載のカバー材の双方または少なくとも請求項2に記載のカバー材が、前記積層構造体の周側面に取り付けられており、該カバー材の外側に遮水シートまたは透水シートが位置していることを特徴とする雨水貯留浸透槽。
【請求項7】
前記カバー材は前記単位構造材への係止部を有しており、該カバー材の上下方向の高さは、前記係止部により単位構造材に取り付けられた状態で、下位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材上縁と直上位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材下縁との間に隙間が形成される高さとされていることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項8】
下位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材上縁には凸部または凹部が形成されており、直上位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材下縁には前記凸部または凹部と係合する凹部または凸部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項9】
前記カバー材は複数個の貫通孔を有することを特徴とする請求項1、7または8のいずれか一項に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項10】
請求項1、7、8または9のいずれか一項に記載のカバー材が、前記積層構造体の周側面に取り付けられており、該カバー材の外側に遮水シートまたは透水シートが位置していることを特徴とする雨水貯留浸透槽。
【請求項1】
雨水を一時的に貯留することのできる空間を備えた単位構造材を上下方向に積み上げて構成される積層構造体と該積層構造体の少なくとも側周面を覆う遮水シートまたは透水シートとで構成される雨水貯留浸透槽の前記積層構造体の周側面に取り付けるカバー材であって、
前記カバー材は前記積層構造体に生じる上下方向の形状変化に追従可能な構成とされていることを特徴とする雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項2】
前記積層構造体は下端を開放した一定高さの空間形成部の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部から立ち上がっている形状の単位構成材の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体であり、
前記カバー材は前記空間形成部への係止部と、該係止部に接続しており前記空間形成部と空間形成部との間の空間領域に位置する側壁部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項3】
前記積層構造体は下端を開放した一定高さの空間形成部の複数個がY方向に一定間隔をおいて底部から立ち上がっており、該空間形成部の前記Y方向に直交するX方向の側面には適数の開口部が形成されている形状の単位構成材の複数枚が交互に直交した姿勢で上下に積層されて構成される積層構造体であり、
前記カバー材は前記空間形成部への係止部と、該係止部に接続しており前記空間形成部の前記X方向の側面側に位置する側壁部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項4】
前記カバー材の前記側壁部には水平方向または垂直方向のスリットが形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項5】
前記カバー材の前記側壁部には複数個の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項6】
請求項2に記載のカバー材および請求項3に記載のカバー材の双方または少なくとも請求項2に記載のカバー材が、前記積層構造体の周側面に取り付けられており、該カバー材の外側に遮水シートまたは透水シートが位置していることを特徴とする雨水貯留浸透槽。
【請求項7】
前記カバー材は前記単位構造材への係止部を有しており、該カバー材の上下方向の高さは、前記係止部により単位構造材に取り付けられた状態で、下位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材上縁と直上位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材下縁との間に隙間が形成される高さとされていることを特徴とする請求項1に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項8】
下位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材上縁には凸部または凹部が形成されており、直上位に位置する単位構造材に取り付けられたカバー材下縁には前記凸部または凹部と係合する凹部または凸部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項9】
前記カバー材は複数個の貫通孔を有することを特徴とする請求項1、7または8のいずれか一項に記載の雨水貯留浸透槽の側周面用のカバー材。
【請求項10】
請求項1、7、8または9のいずれか一項に記載のカバー材が、前記積層構造体の周側面に取り付けられており、該カバー材の外側に遮水シートまたは透水シートが位置していることを特徴とする雨水貯留浸透槽。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−83138(P2013−83138A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−40565(P2012−40565)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
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