説明

雨滴検出装置

【課題】発光素子と受光素子を用いた雨滴検出装置において、その経年劣化を適切に識別してキャリブレーションを行えるようにする。
【解決手段】ウインドシールドの清浄状態における所期の目標受光レベルに対して、受光信号が当該レベル以下になると運転者にワイパの作動に違和感を持ち、経年劣化を認識させてしまうおそれのある下方正常レベルと、経年劣化では発生し得ないさらに低いCalib下限レベルとを設定して、下方正常レベルとCalib下限レベルの間を劣化判定ゾーンZとする。ワイパが駆動されないままで車両発進したときはイグニションオンから、あるいは、ワイパが駆動されたときには該ワイパの駆動終了から、それぞれ受光信号が所定時間T0継続して劣化判定ゾーン内にあるとき経年劣化であると判定して、受光信号が目標受光レベルになるように発光素子駆動電流値を増してキャリブレーションを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子から光をウインドシールドに出射しその反射光を受光素子で受光して、その受光信号に基づいてウインドシールド上の雨滴の状態を検出する雨滴検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子からパルス光をウインドシールドに照射し、その反射光を受光素子で受光して、信号処理することによりウインドシールドにおける雨滴の有無状態を検出し、その情報を車両のワイパ装置やライト装置等の制御に供する雨滴検出装置がある。すなわち、ウインドシールドでの反射光強度はウインドシールドに対する雨滴の付着によって変化するので、受光素子の出力信号のレベルも変化する。したがって、受光素子の出力信号のレベルを所定の閾値と比較することにより雨滴の有無状態を検出することができる。
【0003】
ところで、発光素子や受光素子の製造ばらつきや、ウインドシールドに対する取り付け状態等によって、受光素子の出力信号のレベルがそれぞれ異なることになるので、単純に閾値と比較するだけでは設計どおりの適正な雨滴情報を生成することができない。
この対策として、従来、工場における出荷調整時など最初の作動開始時、すなわちウインドシールドに雨滴の付着や汚れのない状態での、出力信号のレベルと基準信号とを比較して自動的に出力信号を所定の安定レベルに制御するキャリブレーションを行う技術が、例えば特許第3419452号公報に提案されている。
これにより、雨滴検出装置を車両に設置の際に、個々の構成部品のばらつきや取り付け誤差が広い範囲にわたって補償可能になり、製造および取り付けに依存することがほとんどない適正な雨滴検出が実現されることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3419452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の雨滴検出装置では、当該装置の最初の作動開始の際にキャリブレーションが行われて、設定通りの検出機能を実現するように構成部品のばらつきや取り付け誤差が補償されるのに加えて、さらに、継続的な車両の運行に伴って経年劣化が生じた場合にも受光素子の出力信号と基準信号との比較に基づいてキャリブレーションが実行されることとなる。
経年劣化には発光素子、受光素子の機能低下や、ウインドシールドの擦り傷などの損傷や変質等、光学系の劣化が主となるが、発光素子と受光素子にかかわる処理回路の劣化など、受光素子の出力信号レベルに影響を及ぼす種々の事象が含まれる。
【0006】
このような経年劣化に対するキャリブレーションは適正な雨滴検出機能の保持のため好ましいことであるが、従来の装置では、単に出力信号のレベルと基準信号との比較に基づくので、実際には経年劣化していない場合にもキャリブレーションが実行されるおそれがある。
例えば霧の微粒子によりウインドシールドが曇った場合などには、運転には差し支えなくワイパを作動させない状態でも、受光素子の出力信号レベルが低くなるため出力信号を安定レベルへ上昇させるキャリブレーションが自動的に行われる。この場合、ウインドシールドの曇りが晴れた通常時には出力信号レベルが高くなり過ぎてしまい、当該レベルから相当量低く変化しても雨滴付着と判定できず、適正な雨滴検出ができないという機能低下が生じる場合がある。
【0007】
また、このように環境の一時的変動の都度キャリブレーションが実行されると、キャリブレーション結果の記憶回数が膨大となり、メモリの記憶回数限度を越えてしまうという問題も招く。
しかしながら、上記従来装置では経年劣化を識別できず、無用なキャリブレーションを行わざるを得ないものとなっている。
【0008】
したがって、本発明は、発光素子と受光素子を用いた雨滴検出装置において、その経年劣化を適切に識別してキャリブレーションを行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、発光素子からウインドシールドに照射された光の反射光を受光素子で受光して、受光素子が出力する受光信号に基づいて雨滴の状態を検出する車両用の雨滴検出装置において、
受光信号が基準信号より下方に設定された所定の劣化判定ゾーン内に所定時間継続したとき、経年劣化と判定する判定手段と、
経年劣化と判定されたとき受光信号を基準信号のレベルに合わせるキャリブレーション手段とを有し、
上記の劣化判定ゾーンは、当該レベル以下では運転者が経年劣化による違和感をもつ第1の信号レベルと、該第1の信号レベルより低く、経年劣化では発生し得ない第2の信号レベルとで区画される信号レベル範囲であるものとした。
【0010】
上記の所定時間は、車両のイグニションオンから、ワイパが駆動されないままでの発進までの時間を含むものとし、あるいは、ワイパが駆動されたときには、該ワイパの駆動終了後からの時間とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、経年劣化に起因しないものを除外し、経年劣化は確実に検知して、経年劣化に対応して適切なキャリブレーションが行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】センサ部の配置構成を示す概念図である。
【図3】キャリブレーション制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【図4】受光信号のレベル区分を示す図である。
【図5】経年劣化時の受光信号とキャリブレーション要領を示す図である。
【図6】他の経年劣化時の受光信号とキャリブレーション要領を示す図である。
【図7】非経年劣化時の受光信号を示す図である。
【図8】他の非経年劣化時の受光信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を車両のワイパ制御用の雨滴検出装置に適用した実施の形態について説明する。
図1は実施の形態の構成を示すブロック図であり、図2はセンサ部の配置構成を示す概念図である。
まず、図2により雨滴検出装置1のセンサ部10の構成を説明する。
センサ部10は、互いに対向する前壁3と後壁4を有するケーシング2にユニット化されて、車両のウインドシールドWの内面に取り付けられる。
すなわち、前壁3に形成した窓にプリズム5が設けられ、後壁4には発光素子11と受光素子12が設置される。
【0014】
発光素子11と受光素子12はそれぞれの光軸をウインドシールドWの所定部位(検知面)Sに向けて配置され、発光素子11から照射された光がプリズム5を通してウインドシールドWの上記所定部位Sの外面側境界面で反射して受光素子12に受光されるようになっている。そして、プリズム5は発光素子11から受光素子12への光路上にレンズ部6a、6bを備えている。
センサ部10はプリズム5を発光素子11の発光波長において透明かつプリズム5またはウインドシールドWの屈折率と同等な屈折率をもつ透明接着剤などによりウインドシールドW内面に密着させて取り付けられている。
【0015】
つぎに、図1に基づいて、雨滴検出装置1全体の構成を説明する。
発光素子11は例えば発光ダイオード(LED)で、発光素子駆動部19に接続され、発光素子駆動部19はマイクロコンピュータからなる制御部14に接続されている。発光素子駆動部19は制御部14からの駆動信号を受けて発光素子11を駆動しパルス光を出力させる。
受光素子12は例えばフォトダイオード(PD)で、増幅回路13を経て制御部14に接続されている。
受光素子12が出力する受光電流は、増幅回路13で電圧変換されて増幅され、受光信号として発光素子11のパルス発光に対応するタイミングで、制御部14に入力される。
【0016】
制御部14は雨滴検出装置1内各部の制御を行なうとともに、A/D変換器(A/D)15、雨滴情報生成部16、およびキャリブレーション部17を備える。
A/D変換器15は増幅回路13からのアナログの受光信号をデジタル値(A/D値)に変換する。そして雨滴情報生成部16が受光信号のA/D値と所定の閾値との比較を基に雨滴の有無や付着状況の判定を行い雨滴情報を生成して、ワイパ21を制御するワイパ制御装置20へ出力する。
【0017】
キャリブレーション部17は、受光信号を基準信号としての目標受光レベルと比較して、受光信号のA/D値が目標受光レベルに一致する方向に発光素子を駆動する駆動電流値を所定単位で増大させ、発光素子駆動部19に駆動信号を送出する。そして、再び新たな受光信号を目標受光レベルと比較して駆動電流値を増大させることを繰り返して、受光信号のA/D値が目標受光レベルに一致したときの駆動電流値を外部メモリ18に記憶させる。
【0018】
制御部14は、車両の運行ごとに、不図示のイグニションスイッチ(IGN)がオン(ON)されると外部メモリ18に記憶されている駆動電流値を読み出して、当該駆動電流値により発光素子11を駆動するよう、発光素子駆動部19に駆動信号を出力する。そして、受光素子12の出力に基づいて雨滴情報生成部16が雨滴の判定を行い雨滴情報を生成する。
キャリブレーション部17には、車速センサ22からの車速信号が入力され、また、ワイパ制御装置20からはワイパ21へ出力されるワイパ駆動信号が入力される。
【0019】
図3は、雨滴検出装置1における経年劣化に対するキャリブレーションにかかる制御処理の詳細を示すフローチャートである。
なお、受光信号はキャリブレーション要否判定のため、図4に示すような所定のレベルが設定されて区分けされている。
本処理は雨滴情報の生成と並行して、イグニションスイッチがオンされた車両運行当初に開始される。
先ずステップ100で、キャリブレーション部17は内蔵の第1タイマの計時を開始し、ステップ101において、受光素子12から制御部14に入力された受光信号(のA/D値)が、あらかじめ設定された劣化判定ゾーンZ内にあるか否かをチェックする。劣化判定ゾーンZは図4に示した下方正常レベルとキャリブレーション下限レベル(Calib下限レベル)とで区画されるレベル範囲である。
【0020】
ここで、目標受光レベルはウインドシールドが清浄な状態で想定される受光信号の所期レベルであり、受光素子の出力のレベル変化範囲の凡そ中間に設定されている。
下方正常レベルは、目標受光レベルよりも低く、受光信号のA/D値が当該レベル以下になると運転者にワイパの作動に違和感を持ち、経年劣化を認識させてしまうおそれのあるレベルである。
またキャリブレーション下限レベルは、下方正常レベルよりもさらに低く、経年劣化では発生し得ないレベルである。
下限張り付きレベルは受光レベルがこのレベル以下で一定時間以上経過した場合に物理的故障であると判定するレベルである。したがって、例えば、ワイパー払拭時のワイパーブレード通過による受光レベル変化により、一瞬下限張り付きレベル以下になっても故障とはしない。
上限張り付きレベルも同様に、受光レベルがこのレベル以上で一定時間以上経過した場合に物理的故障であると判定するレベルである。
【0021】
受光信号が劣化判定ゾーンZ内にあるときはステップ102へ進む。
受光信号が劣化判定ゾーンZ内にないときは、ステップ117で第1タイマをリセットしたあと、本処理を終了し、制御部14は外部メモリ18に記憶されている駆動電流値を用いて発光素子11を駆動させ、雨滴情報生成部16が雨滴の判定を継続する。
【0022】
ステップ102では、ワイパ駆動信号がオフ(OFF)であるか否かをチェックする。
ワイパ駆動信号がオフのときはステップ103へ進み、オンであるときはステップ106へ進む。
ステップ103では、車速の変化から車両が発進したか否かをチェックする。
車両が発進して走行しているときはステップ104へ進み、未発進の場合は発進までステップ103を繰り返す。
ステップ104において、第1タイマの計時した受光信号が継続して劣化判定ゾーンZ内にある時間taが所定時間T0以上になっているかどうかをチェックする。
劣化判定ゾーンZ内にある時間taが所定時間T0以上になっているときにはステップ105で第1タイマをリセットしてからステップ114へ進み、所定時間T0に達していないときはステップ101へ戻る。
【0023】
ステップ102のチェックでワイパ駆動信号がオンになっているときは、ステップ106で第1タイマをリセットする。そしてステップ107において、ワイパ駆動信号がオフ(OFF)になるのを待って、ステップ108へ進む。
ステップ108において、受光信号が劣化判定ゾーンZ内にあるか否かをチェックし、劣化判定ゾーンZ内にあるときはステップ109へ進み、劣化判定ゾーンZ内にないときは本処理を終了する。
【0024】
ステップ109では第2タイマの計時を開始し、ステップ110においてワイパ駆動信号がオフであるかどうかをチェックする。そしてワイパ駆動信号がオフのときは、ステップ111へ進み、ワイパ駆動信号がオンであるときはステップ113で第2タイマをリセットしてからステップ107へ戻る。
ステップ111では第2タイマが計時した時間tbが所定時間T0以上になったかどうかをチェックする。
第2タイマが計時した時間tbは、ワイパ駆動信号がオフになってからの受光信号が継続して劣化判定ゾーンZ内にある時間となる。
劣化判定ゾーンZ内にある時間tbが所定時間T0以上になったときにはステップ112で第2タイマをリセットし、ステップ114へ進み、所定時間T0に達していないときはステップ111からステップ110へ戻る。
【0025】
ステップ105または112のあとのステップ114においては、キャリブレーション部17が、発光素子駆動部19に送出する駆動信号の駆動電流値を例えば1mA単位で増大方向に変化させる。そしてステップ115で新たな受光信号を目標受光レベルと比較して、受光信号のレベルが目標受光レベルに達しているかどうかをチェックする。
受光信号のレベルが目標受光レベルに達するまでの間は、ステップ114、115が繰り返される。
受光信号のレベルが目標受光レベルに達すると、ステップ116へ進み、外部メモリ18の駆動電流値を更新してキャリブレーションが完了する。すなわち、外部メモリ18には受光信号が目標受光レベルに一致したときの駆動電流値が記憶される。
このあとは、外部メモリ18に新たに記憶された駆動電流値に基づいて、発光素子11が駆動され、受光素子12の出力に基づいて雨滴情報の生成が継続される。
【0026】
以上の制御処理、とくにステップ100〜105、114〜116の流れにより、図5に示すように、イグニションスイッチオン(IGN ON)時から実線で示す受光信号が継続して劣化判定ゾーンZ内にある状態で、発進、すなわち車速が所定値vs(例えば10Km/h)を越えたときは、イグニションスイッチオンから所定時間T0(例えば1分間)経過時t2にキャリブレーションが行われ、受光信号が目標受光レベルへ上昇する。
【0027】
これは、受光信号のレベルは低くてもウインドシールドWが清浄で、ワイパ21を駆動しなくても運転視界に問題がないため走行が開始されたものと考えられるので、受光信号レベルの低さは経年劣化によるものと判定され、キャリブレーションが実行されたものである。
なお、キャリブレーションによる劣化判定ゾーンZ内から目標受光レベルへの上昇は所定単位での駆動電流値増大を繰り返して行われるが処理時間懸隔が短いため図では瞬間的に移行している。
また、車速が所定値vsを越えたとき、すでに所定時間T0が経過している場合には、車速が所定値vsを越えた時刻t1にキャリブレーションが行われる。
【0028】
また、ワイパ21が駆動されるとワイパブレードの往復により受光信号のレベルが劣化判定ゾーンZから外れる場合があるが、ステップ101、102、107〜112、114〜116の流れにより、図6に示すように、ワイパ駆動信号がオフとなった時刻t3から所定時間T0の間受光信号が継続して劣化判定ゾーンZ内にあるときも、当該所定時間T0経過時t4にキャリブレーションが行われ、受光信号が目標受光レベルへ上昇する。
【0029】
これは、走行開始と同様に、ワイパ21による払拭でウインドシールドWが清浄になっているはずであるにもかかわらず受光信号レベルが低いのは経年劣化によるものと判定され、キャリブレーションが実行されたものである。
なお、図5、図6のケースにおいて、所定時間T0を設定しているのは、ウインドシールドW面にワイパ払拭などによる外乱のない状態を確認して判定の信頼性を確実にするためである。また、図6には簡単化のためワイパ駆動信号はワイパブレードの1往復分だけ表している。
【0030】
これらに対して、図7に示すように、イグニションスイッチがオンされた当初の受光信号が劣化判定ゾーンZ外にあるときは、ステップ101、117を経て終了の流れにより、キャリブレーションは行われない。
すなわち、図7中実線で示される受光信号は当初目標受光レベルにあって、その後滑らかに低下しているので、霧などでウインドシールドWが曇ることによる現象と見られるから経年劣化とはされない。
また、下限張り付きレベル付近から劣化判定ゾーンZへ上昇する破線で示される受光信号は、例えば凍結しているウインドシールドWの氷がデフロスタで徐々に解凍され、部分的な視界を得て走行開始可能となった場合に生じるから、これも経年劣化とは関係がない。
【0031】
さらにまた、ステップ101、102、106〜108を経て終了の流れにより、図8に示すように、ワイパ21の駆動前に受光信号が劣化判定ゾーンZ内にあっても、ワイパ21が駆動されてそのワイパ駆動信号がオフとなった時刻t3直後のK部で受光信号が劣化判定ゾーンZ外になるときは、劣化判定ゾーンZ内の受光信号は霧などによるウインドシールドWの曇りに起因するもので、経年劣化とはされず、キャリブレーションは行われない。
【0032】
本実施の形態においては、目標受光レベルが発明における基準信号に該当するとともに、下方正常レベルが第1の信号レベルに、キャリブレーション下限レベルが第2の信号レベルにそれぞれ該当する。また、時間T0が所定時間に該当する。
そして、図3のフローチャートにおけるステップ100〜104の処理機能と、ステップ101、102、107〜111の処理機能とが判定手段を構成し、ステップ114〜116がキャリブレーション手段を構成している。
【0033】
実施の形態は以上のように構成され、目標受光レベルより下方に、当該レベル以下では運転者が経年劣化による違和感をもつ下方正常レベルと、これより低く、経年劣化では発生し得ないキャリブレーション下限レベルとで区画される信号レベル範囲を劣化判定ゾーンZとして設定し、受光信号がこの劣化判定ゾーンZ内に所定時間T0継続したとき、経年劣化であると判定して、キャリブレーション部17により受光信号を目標受光レベルに合わせるものとしたので、経年劣化に対応した適切なキャリブレーションが行われる。
【0034】
とくに、所定時間T0を、車両のイグニションオンから、ワイパ21が駆動されないままでの発進までの時間を含むものとすることにより、ワイパ21を駆動しなくても運転視界に問題がないにもかかわらず受光信号のレベルが低いことから経年劣化を確認することができ、受光信号が劣化判定ゾーンZ内に一時的に入るが経年劣化には起因しないものを除外することができる。
また、ワイパ21が駆動されたときには、所定時間T0を、該ワイパの駆動終了後からの時間とすることにより、ワイパブレードの往復により受光信号のレベルが劣化判定ゾーンZから外れる場合があっても、その後劣化判定ゾーンZ内の継続を確認することにより確実に経年劣化を検知することができる。
【0035】
キャリブレーションは、発光素子11の駆動電流値を変化させることにより受光素子12の出力を目標受光レベルに合わせるものとしたので、基準レベルを現実の受光信号レベルに合わせる処理などに比較して、雨滴情報生成部16での判定ロジック等の複雑な変更を要せず、構成が簡単である。
【0036】
なお、実施の形態では、図7のケースにおいて、ワイパ駆動信号がオフとなった直後のK部で受光信号が劣化判定ゾーンZ外になるときは、経年劣化ではないとしてキャリブレーションを行わないものとしたが、判断領域をK部に限定せず、ワイパ駆動信号がオンの間でも受光信号が劣化判定ゾーンZ外になる事象があれば経年劣化ではないとしてよい。
【0037】
実施の形態では、受光信号(A/D値)を目標受光レベルに合わせるキャリブレーションを発光素子11の駆動電流値の増大制御で行うものとしたが、これに限定されず、例えば増幅回路13の増幅率を増大制御するなど、任意の態様でキャリブレーションを行うことができる。
また、発光素子11の駆動電流値は外部メモリ18に記憶されるものとしたが、制御部14の内蔵メモリに記憶させてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 雨滴検出装置
2 ケーシング
3 前壁
4 後壁
5 プリズム
6a、6b レンズ部
10 センサ部
11 発光素子
12 受光素子
13 増幅回路
14 制御部
15 A/D変換器
16 雨滴情報生成部
17 キャリブレーション部
18 外部メモリ
19 発光素子駆動部
20 ワイパ制御装置
21 ワイパ
22 車速センサ
W ウインドシールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子からウインドシールドに照射された光の反射光を受光素子で受光して、受光素子が出力する受光信号に基づいて雨滴の状態を検出する車両用の雨滴検出装置において、
前記受光信号が基準信号より下方に設定された所定の劣化判定ゾーン内に所定時間継続したとき、経年劣化と判定する判定手段と、
経年劣化と判定されたとき前記受光信号を前記基準信号のレベルに合わせるキャリブレーション手段とを有し、
前記劣化判定ゾーンは、当該レベル以下では運転者が経年劣化による違和感をもつ第1の信号レベルと、該第1の信号レベルより低く、経年劣化では発生し得ない第2の信号レベルとで区画される信号レベル範囲であることを特徴とする雨滴検出装置。
【請求項2】
前記所定時間は、車両のイグニションオンから、ワイパが駆動されないままでの発進までの時間を含むことを特徴とする請求項1に記載の雨滴検出装置。
【請求項3】
前記所定時間は、ワイパが駆動されたとき、該ワイパの駆動終了後からの時間であることを特徴とする請求項1に記載の雨滴検出装置。
【請求項4】
前記キャリブレーション手段は、前記発光素子の駆動電流値を変化させて行うものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の雨滴検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−71518(P2013−71518A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210637(P2011−210637)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】