説明

雪下ろし作業用落下防止システム

【課題】雪下ろし作業を行っているときにおける作業者の安全を確保することができる雪下ろし作業用落下防止システムを提供する。
【解決手段】屋根3に立て掛けられる本体梯子5と、長手方向の一端部が本体梯子5に一体的に設置され長手方向の他端部が屋根3の他方の端部に固定されて、屋根3に設置される縄梯子7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落下防止システムに係り、特に、屋根の雪下ろし作業を行っている作業者のための落下防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
屋根に積もった雪を下ろす雪下ろし作業は、冬季における重要な作業である。従来は、雪下ろし作業をする者(作業者)は、梯子をかけて屋根に上り雪下ろし作業を行っている。従来の梯子において、作業者が登りやすくするための工夫や、屋根に立て掛けたときに梯子が転倒しにくくするための工夫がなされているものが知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭56−20262号公報
【特許文献2】特開平11−247571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、梯子を工夫することによって、梯子を上るときの作業者の安全性等は向上するが、作業者が屋根に上り梯子から離れ雪下ろし作業をしているときの安全が確保されていないという問題がある。
【0004】
すなわち、梯子を上って屋根の上に到達し雪下ろし作業をしている際に、作業者が足を滑らせて屋根の上で転倒するおそれがあり、また、転倒したはずみで屋根から落下してしまうおそれがある。特に、雪や雪が溶けて生じた水やこの水が凍ってできた氷等の存在により、作業者の足元と屋根との間の摩擦係数が小さくなっているので、前記問題は一層顕著である。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、雪下ろし作業を行っているときにおける作業者の安全を確保することができる落下防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、屋根に立て掛けられる本体梯子と、長手方向の一端部が前記本体梯子に一体的に設置され長手方向の他端部が前記屋根の他方の端部に固定されて、前記屋根に設置される縄梯子とを有する雪下ろし作業用落下防止システムである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の雪下ろし作業用落下防止システムにおいて、前記本体梯子の他端部側で前記本体梯子に設けられ、前記本体梯子を前記屋根の端部に立て掛けた場合前記屋根の上側でほぼ水平に延びる水平梯子を、有する雪下ろし作業用落下防止システムである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の雪下ろし作業用落下防止システムにおいて、一端部が前記縄梯子に固定されたロープと、前記ロープに取り付けられ、前記ロープに対して移動を規制できる伸縮調整器とを有し、前記伸縮調整器は、作用者に係合され、前記ロープを張った状態で雪下ろしができるように構成されている雪下ろし作業用落下防止システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、雪下ろし作業を行っているときにおける作業者の安全を確保することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る雪下ろし作業用落下防止システム1の概略構成を示す斜視図であり、図2は、雪下ろし作業用落下防止システム1の概略構成を示す側面図であり図1におけるII矢視図である。
【0011】
雪下ろし作業用落下防止システム(以下単に「落下防止システム」という場合がある。)1は、たとえば、屋根3の雪下ろし作業を行っている作業者が屋根3から落下することを防止するためのものであり、屋根3の端部3Aと地面GLとの間に立て掛けられる本体梯子5と、長手方向の一端部が本体梯子5に一体的に設置され前記長手方向の他端部が屋根3の他方の端部3Bに固定され屋根3の上で屋根3に設置される縄梯子7とを備えている。屋根3は、側面視において山形(逆「V」字状)に形成されている。
【0012】
本体梯子5は、縦木(二本の長い材)9と、この縦木(縦材)9の間に足掛りとなる幾段もの横木(横材)11を取り付けて構成されており、縦材9および横材11は、たとえばアルミニウム等の剛性のある材料(抵抗性のある材料)で構成されている。
【0013】
本体梯子5は、地面GLとの交差角度θがたとえば75°程度の状態で屋根3に立て掛けられる。このように立て掛けられた状態では、各横材11のうちの最も上に位置している横材11Aが、屋根3の端部3Aの近く(たとえば、下30cmから上20cmの間、好ましくは、下15cmから上10cmの間;図1や図2では、屋根3の端部3Aより僅かに上)に位置しており、縦材9は、屋根3の端部3Aよりも上方に所定の長さ(作業者が最上段の横材11Aに足を掛けて起立している際に、前記作業者が手を添えて安定した状態で起立することができる高さ;たとえば、50cm〜200cm;好ましくは、80cm〜150cm)だけ突出している。
【0014】
したがって、本体梯子5の長手方向(縦材9の延伸方向)の一端部(立て掛けたときに下になる部位)側には、前記一端部の近くにまで横材11が設けられているが、本体梯子5の長手方向の他端部(立て掛けたときに上になる部位)からこの近くにかけては、横材11が設けられておらず、手すり13を備えた縦材9が延伸しているのである。手すり13は、縦材9等と同様に、アルミニウム等の剛性のある材料で構成されており、本体梯子5の各縦材9のほぼ全長にわたって設けられている。
【0015】
本体梯子5の一端部(立て掛けたときに下になる部位)側には、補助部材(アルミニウム等の剛性のある材料で構成された補助部材)15が設けられており、この補助部材15によって、本体梯子5の一端部側に逆「V」字状の脚立17が形成されるようになっている。そして、本体梯子5を安定した状態で屋根3に立て掛けることができるようになっている。
【0016】
より詳しく説明すると、縦材9の一端部側には、所定の長さの補助部材15が回動自在に設けられており、補助部材15が回動して補助部材15の先端部(図1の下側の端部)が縦材9の一端部(下部)から所定の距離だけ離れたときに、逆「V」字状の脚立17が形成されるようになっている。縦材9と補助部材15との間には止め具19が設けられており、脚立17の逆「V」字状の形状を維持することができるようになっている。なお、補助部材15は、各縦材9に設けられているので2本存在しており、2本の各補助部材15は、互いが連結部材21で連結されており、同期して回動するようになっている。
【0017】
本体梯子5には、この本体梯子5を屋根3に立て掛けた際、本体梯子5の縦材9と協働して屋根3の端部3Aを把持する把持部材(アルミニウム等の剛性のある材料で構成された把持部材)23が設けられている。把持部材23は、棒状の第1の部位25とこの第1の部位25の長手方向の一端部から延伸している棒状の第2の部位27とを備えて略「L」字状に形成されている。なお、第1の部位25の延伸方向と第2の部位27の延伸方向との交差角度は、鈍角でありたとえば135°程度になっている。また、第1の部位25の長手方向の中間部には、縦材9と回動自在に係合することができる係合孔が複数設けられている。
【0018】
把持部材23は、第1の部位25の長手方向の前記係合孔で縦材9に回動自在に係合しており、把持部材23の係合部は、屋根3の形状にあわせて前記係合孔を移動させて(変えて)把持部材23の回動位置(縦材9に対する把持部材23の位置)を調節することが可能になっている。
【0019】
把持部材23が係合している縦材9の部位は、本体梯子5を屋根に立て掛けた際、屋根3の端部3Aから所定の距離だけ下側に離れたところに位置しており、第2の部位27は、屋根3側に(上方に)向かうような角度で第1の部位25に設けられている。
【0020】
第1の部位25の他端部には、ロープ29の一端部が一体的に設けられており、ロープ29の他端部側は、ロープ緊張器31に連結されている。ロープ緊張器31は、把持部材23が係合している本体梯子5の部位よりも下側(縦材9の一端部側)に設けられている。第2の部位27の先端部には、屋根3の庇の下面に当接する平面を備えた当接部材33が回動自在に設けられている。当接部材33を備えた把持部材23は、各縦材9に設けられているので2本存在しており、2本の各把持部材23は、互いが連結部材34で連結されており、同期して回動するようになっている。
【0021】
そして、本体梯子5を屋根3に立て掛けたときに、把持部材23を適宜回動し、当接部材33の平面を屋根3の庇の下面に当接させ、さらにロープ緊張器31でロープ29を所定の力で引いたまま固定すれば、縦材9と把持部材23(当接部材33)とで、屋根3を挟み込むことができ、本体梯子5を屋根3にしっかりと固定することができるようになっている。
【0022】
また、把持部材23の係合部は、第1の部位25の長手方向の中間部で複数の前記係合孔のいずれか1つを選択して縦材9に回動自在に係合するようになっているので、屋根3の庇の形状にあわせて前記係合孔を変えて把持部材23の回動位置を調節することができ、縦材9と把持部材23(当接部材33)とで、屋根3を確実に挟み込み、本体梯子5を屋根3に更にしっかりと固定することができるようになっている。
【0023】
縄梯子7は、縄(ロープ)35でできた2本の長い材と、縄35の間に足掛りとなる幾段もの横木(横材)37を取り付けて構成されており、横材37は、たとえばアルミニウムや樹脂等の剛性のある材料で構成されている。縄梯子7の長手方向(縄35の長手方向)の一端部にはフック39が設けられており、このフック39を介して、縄梯子7の一端部が本体梯子5の横材11(たとえば、屋根3の端部3Aの最も近くに存在している横材11A)に一体的に取り付けられるようになっている。フック39は、常態では環状に形成されており、横材11に取り付けられた後には横材11から容易には外れないようになっているが、環状部分の一部が他の部位に対して揺動等することにより「C」字状等の形状になり、横材11への取り付けや横材11からの取り外しができるようになっている。なお、フック39は、2本の縄35のそれぞれに設けられている。
【0024】
なお、縄(ロープ)35は平成14年2月25日厚生労働省告示第38の「安全帯の規格」にあるランヤードとして記載されたいわゆるロープを用いてよいが、同様にランヤードとして記載られているストラップ(帯状のもの、または、ベルト状のもの)としてもよい。さらに、フック39も同規格中のフック(鉤形の器具)もしくはカラビナ(環状の器具)を使用できる。
【0025】
縄梯子7の長手方向の他端部は、2本の縄35に跨って板状の保持部材(たとえばアルミニウムや樹脂等で構成された保持部材)41が一体的に設けられており、この保持部材41をたとえば、ボルト等の締結具により、屋根3の端部3Bの庇の下側に固定することで、縄梯子7の長手方向の他端部が屋根3に固定されるようになっている。横材37の形状は、たとえば、長い四角柱状に形成されており、各側面には、たとえば、微小な凹凸が形成されている等の滑り止め加工がなされている。
【0026】
また、屋根3の頂上3C付近に存在している横材(縄梯子7の横材)37Aに、ロープ43の一端部をたとえばフックを介してもしくは結びつけることによって固定し、また、一端部が横材37Aに係合しているロープ43の他端部を、伸縮調節器40(実用新案登録第3000178号記載のロープ伸縮調整器と同機能を持つもの)やフック42を介して、作業者Pが装着している安全ベルト44や図示しないハーネスに係合させることにより、屋根3に上っている作業者Pの落下を一層確実に防止するようにしてもよい。
【0027】
なお、伸縮調節器40は実用新案登録第3000178号などにあるようにロープ挿通保持体(前記実用新案登録公報中の符号1)にロープ(前記実用新案登録公報中の符号16)を挿通した後に、何らかの理由でフック(前記実用新案登録公報中の符号3)に荷重をかけたときにフックから力を受けた四節回動リンク機構を構成する軸着した二節三連リンク(前記実用新案登録公報中の符号4、5、6)によりロープ止爪(前記実用新案登録公報中の符号9)がロープを確実に押圧しロープに対して伸縮調節器40の移動を規制するものである。また、この規制状態を解除するには、ロープ挿通保持体と遊動リンク(前記実用新案登録公報中の符号5)を握ることでロープ止爪のロープ押圧を解除しロープに対して伸縮調節器40の移動ができるようにするものである。
【0028】
この伸縮調節器40は高所作業時の墜落防止装置として使用されているが、本発明者らは新たな発想で以下のように本願発明の一部に使用することで(図3参照)傾斜した屋根3の上で雪を下ろすときに、雪により重くなったスコップまたはスノーダンプで雪を下ろす(投げ出す)際により安全に安心して作業できることを見出した。
【0029】
まず、ロープ43を伸縮調節器40に挿通してその状態で作業者Pが雪下ろし作業できる位置に行けるようにロープ43に対する伸縮調節器40の位置を調節し、伸縮調節器40のフックに荷重をかけてロック状態として伸縮調節器40が移動しないように固定する。次にロープ43が張った状態でスコップやスノーダンプで屋根3の上の雪をかきとり、傾斜した屋根3の下方向に向かって投げ出すように雪下ろし作業を行う。雪下ろし時にスコップ等を放り出すように振り出した勢いで、つられて作業者Pが屋根3から落下する事故が多いが、前述のようにロープに対して伸縮調節器40の移動を規制しロープ43が張った状態となるようにし伸縮調節器40のフック42を作業者Pが装着している安全ベルト44や図示しないハーネスに係合させて作業をすると、作業者Pは屋根3の頂上3C方向に引っ張られるような力を受けながら雪下ろしを行うことになるので、屋根3から転落することなく、また転落しそうになる不安を感ずることもなく作業ができる(図3参照)。
【0030】
発明者らの実験によれば、ロープ43を弛ませた若しくは無い状態で雪下ろしをすると大多数の被験者が転落か転落しそうになる不安を強く感じたが、ロープ43を張った状態で雪下ろしをした被験者のほとんどは転落しそうな不安をほとんど感じることがないという結果が得られている。なお、ロープ43の長さが張った状態で無くなる若しくは足らなくなるように雪下ろし作業が進んだときは、前述の方法で伸縮調節器40の固定を解除し、伸縮調節器40をロープ43に対して移動させて再度伸縮調節器40のフックに荷重をかけてロック状態として伸縮調節器40が移動しないように固定することで対応する。
【0031】
さらにロープ43固定位置からロープ43上の伸縮調節器40の移動可能位置を、頂上3Cから屋根の端までの直線長さより30〜50cm程度短く規定しておくと、万が一作業者Pが足を滑らせるなどしても屋根3から転落することはない。
【0032】
また、落下防止システム1の縄梯子7や本体梯子5は、たとえば、雪の降る季節が到来する前に設置しておき、雪の季節が終わったら撤去するようにする。
【0033】
ところで、縄梯子7を複数、屋根3の長手方向(図1参照;屋根3の頂上3Cの稜線の延伸方向)に並べて設置しておいてもよい。この場合、本体梯子5に係合していない縄梯子の端部を、図2で示す場合と同様に、保持部材41と同様の部材を用いて、屋根3の端部3Aの庇の下に固定してあることが望ましい。さらには、本体梯子5に係合している縄梯子7においても、保持部材41と同様の部材を用いて、屋根3の端部3Aの庇の下に固定し、本体梯子5と係合しないようにしてもよい。
【0034】
ところで、図1や図2に示す落下防止システム1では、本体梯子5と縄梯子7との幅がほぼ同じ程度であるが、図4に示すように、縄梯子7の幅を本体梯子5の幅よりも広く形成してもよい。このように縄梯子7の幅を広く形成することにより、屋根3の上での安全な作業範囲を拡大することができる。
【0035】
さらには、縄梯子7の幅(横材37の長さ)を、図4に示す状態よりも更に広くしても(延ばしても)よい。すなわち、たとえば、屋根3のほぼ全体を覆う程度まで延ばしてもよい。このように横材37を延ばした場合においては、縄梯子7の強度を高めるために、縄の本数を3本以上の複数本にしてもよい。
【0036】
なお、縄の本数を3本以上の複数本にした場合において、1本の横材37を縄梯子7のほぼ全幅にわたって延ばして設ける必要はなく、図6に示すように、少なくとも2本の隣接した縄35の間で延びた短い横材37を、縄35の延伸方向で位置をずらして設けた構成であってもよい。
【0037】
また、縄梯子7の横材37の形状を、長い四角柱状(図5(a)参照)にする代わりに、長い正三角柱状に形成してもよい(図5(b)参照)。なお、図2や図5から明らかなように、縄梯子7が屋根3に取り付けられた状態では、縄35は屋根3の上面に沿って逆「V」字状に延びている。横材37が正三角柱状に形成されている場合には、横材37の3つの側面のうちの1つの面は、屋根3の上面に接触し、他の1つの面には、作業者の足が掛けられるようになっている。横材37の各側面(3つの側面)には、前述したように滑り止め加工がなされている。
【0038】
なお、図5(a)、(b)では、横材37を縄35が貫通するような構成にしてあるが、横材37が回転するような動きをして安定性が不足していると思われる場合は、図7(a)のように縄35で横材37を捲くように構成した縄梯子7を用いるとよい。この場合縄35は前述のロープ35を用いることができるが、横材37が屋根3と密着して安定性が向上するように、帯状のストラップ46を縄35の代わりに用いるのが好適である(図7(b)参照)。
【0039】
さらに、図7(a)や図7(b)に示すものでは、四角柱状の横材37の3つの側面(屋根3に接触する面以外の側面)に、ロープ35やストラップ46が密着している構成であるが、図7(c)(図7(a)、(b)におけるVII矢視図)で示すように、四角柱状の横材37の屋根3の対向する面にのみ、ロープ35やストラップ46を密着させて設け、四角柱状の横材37の3つの側面(屋根3に対向する面以外の面)に、他の短いロープ36やストラップを接触させ、このロープ36やストラップの長手方向の両端部をロープ35やストラップ46に固定し、ロープ35やストラップ46と短いロープ36やストラップとで、横材37を挟み込んで、横材37をロープ35やストラップ46に固定してもよい。
【0040】
また、短いロープ36や短いストラップを用いることなく、四角柱状の横材37の屋根3に対向する側面にのみ、ロープ35やストラップ46を固定した構成であってもよい。
【0041】
また、四角柱状の横材37だけでなく、図5(b)に示す三角柱状の横材37の場合にも、図7(c)や図7(d)に示すような構成を採用することができる。
【0042】
落下防止システム1によれば、縄梯子7が屋根3の上に設置され、作業者がこの縄梯子7の横材37に足をかけて作業をすることができるので、足を滑らすことがなくなり、雪下ろし作業を行っているときにおける作業者の安全を確保することができる。
【0043】
また、屋根3の上に設置するものが縄梯子7であるので、落下防止システム1の構成が簡素であり安価であると共に、総てがアルミニウム等で構成された梯子を屋根3の上に設置する場合に比べて屋根3の上への設置が容易になっている。
【0044】
また、縄梯子7の横材37がアルミニウム等の抵抗性のある材料で構成されているので、横材37が縄で構成されている場合に比べて、作業者がふらつくことなく安定した状態で足を掛けることができ、作業の安全性が一層向上する。
【0045】
さらに、横材37を正三角形柱状に形成した場合において、屋根3の勾配が60°以下であるならば、作業者が足をかける面が屋根3の傾斜とは逆方向に傾斜することになり、作業者の足が一層滑りにくくなる。また、横材37が正三角形柱状なので、横材37が屋根のいずれの傾斜面(屋根3の頂上3Cを境にした一方の傾斜面または他方の傾斜面)の上に存在していても、作業者が足をかける面が屋根3の傾斜とは逆方向に傾斜することになり、縄梯子7の汎用性が高まっている。
【0046】
また、本体梯子5においては、本体梯子5の縦材9が屋根3の端部3Aよりも上方に所定の長さ延びているので、作業者が本体梯子5から屋根3にうつるとき、または、屋根3から本体梯子5にうつるとき、前記上方に延びている縦材9の部位に手を掛けてうつることができ、作業者のふらつきを防止することができ安全性が向上している。特に、たとえば、雪下ろし作業を終えて屋根3から本体梯子5にうつるとき、作業者は体の向きを変えなければならないが、前記上方に延びている縦材9の部位に手を掛けて体の向きを変えることができ、作業者の安全性が向上することになる。
【0047】
また、本体梯子5に脚立17が形成されるようになっているので、作業者が屋根3の一方の側(図2の左側の斜面)に移った際の作業者の体重によって、縄梯子7が本体梯子5を引っ張ることになっても、または、作業者が屋根3から本体梯子5にうつるとき等、本体梯子5の上方に延びている縦材9の部位に作業者が手を掛けて本体梯子5にモーメントが発生しても、脚立17(補助部材15)がつっかえ棒の役目を果たし、本体梯子5が倒れるおそれを回避することができる。
【0048】
また、本体梯子5が縄梯子7に係合しているので、屋根3に立て掛けた本体梯子5が屋根3から離れる方向に倒れにくくなっているが、把持部材23によって本体梯子5が屋根3に一体的に設けられていることになるので、屋根3に立て掛けた本体梯子5が転倒するおそれを一層回避することができるようになっている。
【0049】
なお、本体梯子5の下端にアンカー設置部を設け、本体梯子5を屋根3に立て掛けた際に前記アンカー設置部をアンカー部材を用いて地面GL固定するようにしてもよい。
【0050】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に係る雪下ろし作業用落下防止システム1aの概略構成を示す斜視図である。
【0051】
本発明の第2の実施形態に係る雪下ろし作業用落下防止システム1aは、水平梯子51を備えた点が、第1の実施形態に係る落下防止システム1とは異なり、その他の点は、第1の実施形態に係る落下防止システム1とほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0052】
すなわち、第2の実施形態に係る落下防止システム1aは、本体梯子5と縄梯子7と水平梯子51とを備えて構成されている。水平梯子51は、本体梯子5の他端部側(上側)で本体梯子5に設けられ、本体梯子5を屋根3の端部3Aに立て掛けた場合、屋根3の上側でほぼ水平に延びるようになっている。
【0053】
水平梯子51は、本体梯子5と同様に、縦材(屋根に設置した際に水平方向に延びる縦木)53とこの縦材53の間に足掛りとなる幾段もの横材55を取り付けて構成されており、縦材53および横材55は、たとえばアルミニウム等の剛性のある材料で構成されている。また、水平梯子51の縦材53は、たとえば、本体梯子5の縦材9よりも短く形成されている。
【0054】
より詳しく説明すると、水平梯子51の各縦材53は、これらの各縦材53の基端部側で本体梯子5の縦材9に回動自在に係合している。水平梯子51の縦材53が係合している縦材9の部位は、本体梯子5を屋根3に立て掛けた際、屋根3の端部3Aから所定の距離だけ上側に離れたところに位置している。なお、水平梯子51の縦材53が係合している縦材9の部位の位置を、水平梯子51が屋根3の上で水平方向に延びるようにすべく、屋根3の形態に合わせて変更しまた調整可能なように構成してもよい。
【0055】
水平梯子51の各縦材53には、この縦材53のほぼ全長にわたり手すり(アルミニウム等の剛性のある材料で構成された手すり)57が設けられている。また、水平梯子51の各縦材53には、水平梯子51に人が載った際にこの重量を支持するための支持部材57が設けられている。支持部材57には、ジャッキボルト等の長さ調整部材が設けられている。
【0056】
さらに、水平梯子51の先端部側には、たとえば門型に形成されたフレーム59が一体的に設けられている。本体梯子5を屋根3に立て掛けて、水平梯子51を水平に設置した場合、このフレーム59は、水平梯子51の先端部側でほぼ直立しているものであり、このフレーム59の内側を、人が起立して通過することができるようになっている。
【0057】
そして、フレーム59のビーム(フレーム59の上側に位置している部位)に、ロープの一端部をたとえばフックを介して係合させ、一端部がフレーム59に係合している前記ロープの他端部を、伸縮調節器を介して人が装着している安全ベルトやハーネスに係合させ、屋根に上っている人の落下を一層確実に防止するようにしてもよい。なお、図8に示すように、縄梯子7を削除した構成であってもよい。
【0058】
落下防止システム1aによれば、水平梯子51が設けられているので、作業者が本体梯子5から屋根3にうつるとき、または、屋根3から本体梯子5にうつるとき、水平な水平梯子51上で一旦停止することができ、そして、作業者が気持ちを切りかえることができ、作業者の安全性を向上させることができる。
【0059】
なお、落下防止システム1aにおいて、縦材9の他端部側で屋根3の上方に延伸している部位を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る雪下ろし作業用落下防止システムの概略構成を示す斜視図である。
【図2】雪下ろし作業用落下防止システムの概略構成を示す側面図であり、図1におけるII矢視図である。
【図3】雪下ろし作業用落下防止システムの使用状態の一例を示す図である。
【図4】雪下ろし作業用落下防止システムの変形例を示す図である。
【図5】雪下ろし作業用落下防止システムの変形を示す図である。
【図6】雪下ろし作業用落下防止システムの変形を示す図である。
【図7】雪下ろし作業用落下防止システムの変形を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る雪下ろし作業用落下防止システムの概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1、 1a 落下防止システム
3 屋根
5 本体梯子
7 縄梯子
51 水平梯子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根に立て掛けられる本体梯子と;
長手方向の一端部が前記本体梯子に一体的に設置され長手方向の他端部が前記屋根の他方の端部に固定されて、前記屋根に設置される縄梯子と;
を有することを特徴とする雪下ろし作業用落下防止システム。
【請求項2】
請求項1に記載の雪下ろし作業用落下防止システムにおいて、
前記本体梯子の他端部側で前記本体梯子に設けられ、前記本体梯子を前記屋根の端部に立て掛けた場合前記屋根の上側でほぼ水平に延びる水平梯子、を有することを特徴とする雪下ろし作業用落下防止システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の雪下ろし作業用落下防止システムにおいて、
一端部が前記縄梯子に固定されたロープと;
前記ロープに取り付けられ、前記ロープに対して移動を規制できる伸縮調整器と;
を有し、前記伸縮調整器は、作業者に係合され、前記ロープを張った状態で雪下ろしができるように構成されていることを特徴とする雪下ろし作業用落下防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−69592(P2008−69592A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250661(P2006−250661)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【Fターム(参考)】