雪崩防止柵およびそれを備えた雪崩防止構造
【課題】雪の重みを利用して柵の転倒を防止するとともに、しかも、施工が容易な雪崩防止柵、およびそれを用いた小段の拡張を容易にした雪崩防止構造を提供する。
【解決手段】雪崩防止柵1は、法面S1に設置可能な形状を有し、その山側端部2aが法面S1の山側に配置された台座部2と、台座部2から立ち上がっている複数の支柱3と、支柱3の間に架設され、支柱3の間で雪を受けることが可能な形状を有する雪受け部4とを備えている。支柱3は、台座部2の山側端部2aよりも谷側端部2bに近い位置に配置されており、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cは、雪を載せることが可能な形状を有する。
【解決手段】雪崩防止柵1は、法面S1に設置可能な形状を有し、その山側端部2aが法面S1の山側に配置された台座部2と、台座部2から立ち上がっている複数の支柱3と、支柱3の間に架設され、支柱3の間で雪を受けることが可能な形状を有する雪受け部4とを備えている。支柱3は、台座部2の山側端部2aよりも谷側端部2bに近い位置に配置されており、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cは、雪を載せることが可能な形状を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪崩の発生を防止する雪崩防止柵、およびその雪崩防止柵を用いて法面の途中に形成された小段における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、積雪地方の法面における雪崩を防止するために、雪崩防止柵が設けられている。
【0003】
従来から用いられる雪崩防止柵は、特許文献1に記載されているように、法面から立てて配置された複数の支柱と、当該支柱の間に架設された複数の横材と、支柱を谷側から斜めに支持する控え柱とを備えている。これら支柱および控え柱の下端は、法面の土中に埋設されたコンクリート製の基礎部分に固定されている。このように構成された雪崩防止柵は、支柱および横材で囲まれた面で法面上の雪を受け、その雪から受ける圧力を支柱および控え柱を介して法面の土中に埋設されたコンクリートの基礎部分で受け止めることにより、雪崩の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−180116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような雪崩防止柵は、支柱および控え柱を支持するために、コンクリートの基礎部分を設ける必要があり、施工に手間と時間がかかる。
【0006】
一方、コンクリートの基礎部分を用いないで施工を容易にした構造として、鋼板などからなる台座を用いた構造が考えられる。この構造では、鋼製の台座の山側端部付近に支柱が立設され、その支柱の谷側に控え柱が設けられ、控え柱の下端が当該台座に固定され、かかる台座がアンカーボルトを用いて法面に固定される。
【0007】
しかし、このような構造では、法面上の雪の重みを支柱および横材で囲まれた面でのみ受けるので、雪崩防止柵に対して谷側へ転倒させようとする大きなモーメントが働き、雪崩防止柵が台座を固定するアンカーボルトから根こそぎ転倒するおそれがある。そのため、このような雪崩防止柵の転倒を防止するためには、より多くのアンカーボルトで地面に固定するなどして転倒を抑える必要が生じてくるので、施工の手間が増大するおそれがある。
【0008】
また、雪崩防止のために法面の途中に小段を形成し、小段に積もる雪の抵抗により、その小段よりも山側の法面に積もる雪が落ちるのを防いでいることが従来より行われているが、小段の設置場所によっては、樹木や岩石などの障害物等により小段の幅を広げることが困難な場合がある。そのような場合に、小段の下方に雪崩防止柵を設置して、当該雪崩防止柵によって小段から谷側へはみ出た雪を受け止めることにより、小段の幅を実質的に拡張させることが考えられる。しかし、このような小段を拡張させるために雪崩防止柵を法面に設置する場合、雪崩防止柵には小段上の雪と連続して突出する雪の重みが付与することによって大きな転倒モーメントが雪崩防止柵に付与されるので、さらに転倒しやすくなる。
【0009】
そこで、本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、法面上の雪の重みを積極的に利用して、転倒モーメントを上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵の転倒を抑止させるモーメントが発生するように、当該法面上の雪によって台座部を積極的に押さえることができ、小段上の雪と連続して突出する雪を受け止めることが可能な本発明の雪崩防止柵を提案した。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、雪の重みを利用して柵の転倒を防止するとともに、しかも、施工が容易な雪崩防止柵、およびそれを用いた小段の拡張を容易にした雪崩防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の雪崩防止柵は、法面における雪崩の発生を防止する雪崩防止柵であって、法面に設置可能な形状を有し、かつ、山側端部および谷側端部を有し、当該山側端部が前記法面の山側に配置され、当該谷側端部が前記法面の谷側に配置される台座部と、前記台座部から立ち上がっている複数の支柱と、前記支柱の間に架設され、当該支柱の間で雪を受けることが可能な形状を有する雪受け部と、を備えており、前記支柱は、前記台座部の山側端部よりも谷側端部に近い位置に配置されており、前記台座部における前記支柱よりも山側の部分は、雪を載せることが可能な形状を有する、ことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、前記支柱が、前記台座部の山側端部よりも谷側端部に近い位置に配置されており、前記台座部における前記支柱よりも山側の部分が雪を載せることが可能な形状を有するので、法面上の雪を台座部における支柱よりも山側の部分に多く載せることができ、当該法面上の雪によって台座部における支柱よりも山側の部分を押さえることができる。それにより、法面上の雪の重みを積極的に利用して、雪崩防止柵を転倒させようとするモーメントを上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵の転倒を抑止させるモーメントが発生させることが可能になり、その結果、雪崩防止柵の転倒を効果的に防ぎ、その結果、雪崩を防止できる。
【0013】
また、法面上の雪の重みを利用して雪崩防止柵の転倒を防止するので、台座部を法面の地盤に固定するためのアンカーボルトなどの固定手段の数を減らし簡易かつ安価なものを採用できるので、施工が大幅に容易になる。
【0014】
前記雪受け部は、前記台座部の谷側端部から立ち上がっているのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、台座部における支柱よりも山側の部分が最も広くなるので、台座部の上に積もる雪の重みを十分生かして転倒防止効果を向上させることができる。
【0016】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において前記法面に向けて突出するように設けられ、前記法面の地盤に食い込むことが可能な形状を有する食い込み部をさらに備えているのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、台座部の支柱よりも山側の部分に設けられた食い込み部が法面に向けて突出し、法面の地盤に食い込むことによって、法面上の雪が支柱の間の雪受け部に力を付与した場合に、雪崩防止柵が法面の表面に沿って谷側へずれることを防止する。それとともに、食い込み部と法面の地盤との間の摩擦抵抗によって、雪崩防止柵の転倒を抑止するモーメントがさらに増大するので、雪崩防止柵の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0018】
前記食い込み部は、前記台座部の山側端部において前記法面に向けて突出するように設けられているのが好ましい。この場合、食い込み部が台座部の山側端部に設けられ、台座部において支柱から最も離れた位置に配置されるので、食い込み部によって発生する転倒を抑止するモーメントは最も大きくなる。
【0019】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において当該台座部の幅方向に沿って延び、前記雪受け部よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部をさらに備えているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、台座部の前記支柱よりも山側の部分に設けられた雪載せ部に法面上の雪が載ることにより、雪崩防止柵の転倒を抑止するモーメントがさらに増大するので、雪崩防止柵の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0021】
前記雪載せ部は、前記台座部の山側端部において当該台座部の幅方向に沿って延びるのが好ましい。この場合、雪載せ部が台座部の山側端部に設けられ、台座部において支柱から最も離れた位置に配置されるので、雪載せ部によって発生する転倒を抑止するモーメントは最も大きくなる。
【0022】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において前記法面に向けて突出するように設けられ、前記法面の地盤に食い込むことが可能な形状を有する食い込み部と、前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において当該台座部の幅方向に沿って延び、前記支柱よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部とをさらに備えており、前記食い込み部と前記雪載せ部とが一体に形成されている、のが好ましい。
【0023】
この構成によれば、食い込み部および雪載せ部を鋼材などで容易に一体成形でき、しかも当該食い込み部および雪載せ部を台座部へ取り付ける作業も容易になる。
【0024】
前記支柱の山側側面と前記台座部の当該支柱よりも山側の部分との間を連結する連結部をさらに備えているのが好ましい。
【0025】
この構成によれば、連結部が、支柱の山側側面と台座部の当該支柱よりも山側の部分との間を連結するので、支柱と台座部との間の連結がより強固になり、支柱が折れにくくなる。支柱には、山側から雪の圧力を受けて谷側へ向かう方向へ曲げ荷重がかかるが、連結部はこの支柱を山側から支持することにより、連結部には引張荷重がかかる。また、連結部には山側からの雪圧による曲げ荷重も作用する。したがって、連結部は、この曲げ荷重を考慮しつつ引張荷重を支えることが可能な引っ張り強度を有するように設計すればよい。
【0026】
また、本発明の雪崩防止構造は、法面の途中に形成された小段における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造であって、請求項1から8のいずれかに記載の雪崩防止柵と、前記台座部を前記法面の地盤に固定する法面固定手段とを備えており、前記雪崩防止柵は、前記法面のうち前記小段よりも谷側において、前記小段上の雪と連続して当該小段の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されている、ことを特徴とする。
【0027】
かかる構成によれば、雪崩防止柵が、法面のうち小段よりも谷側において、小段上の雪と連続して当該小段の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されているので、雪崩防止柵には、小段上の雪と連続して突出する雪の重みが支柱間の雪受け部だけでなく台座部にも分散して付与されるので、支柱および雪受け部に発生する転倒モーメントは、台座部に発生する転倒抑止モーメントによって大幅に相殺され、転倒しにくくなり、小段の幅を実質的に拡大することが可能になる。
【0028】
前記台座部は、当該台座部の山側端部が前記小段の表面沿って延長して延びる延長部分を有しており、前記延長部分を前記小段の地盤に固定する小段固定手段をさらに備えており、前記延長部分が、前記小段固定手段により、前記小段の地盤に固定されるのが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、前記台座部の山側に延びる延長部分が、小段表面まで延びて小段固定手段によって小段の地盤に固定されているので、容易かつ確実に小段の地盤に固定することができる。
【0030】
しかも、この延長部分の上には小段上の雪の重みがかかり、転倒抑止モーメントがさらに増大するので、雪崩防止柵はさらに転倒しにくくなる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明の雪崩防止柵によれば、法面上の雪の重みを積極的に利用して、転倒モーメントを上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵の転倒を抑止させるモーメントが発生することが可能となり、雪崩防止柵の転倒を効果的に防ぐことが可能となり、その結果、雪崩を効果的に防止できる。また、法面上の雪の重みを利用して雪崩防止柵の転倒を防止するので、台座部を法面の地盤に固定するためのアンカーボルトなどの固定手段の数を減らし簡易かつ安価なものを採用できるので、施工が大幅に容易になる。
【0032】
また、本発明の雪崩防止構造によれば、雪崩防止柵には、小段上の雪と連続して突出する雪の重みが支柱だけでなく台座部にも分散して付与されるので、支柱および雪受け部に発生する転倒モーメントは、台座部に発生する転倒抑止モーメントによって大幅に相殺され、雪崩防止柵は転倒しにくくなる。その結果、小段の幅を実質的に拡大することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の雪崩防止柵の実施形態に係わる一部切欠側面図である。
【図2】図1の雪崩防止柵の平面図である。
【図3】図1の雪崩防止柵の正面図である。
【図4】本発明の雪崩防止構造の一実施形態として、図1の雪崩防止柵を法面における小段の谷側に設置した雪崩防止構造を示す断面図である。
【図5】図4の雪崩防止柵の拡大断面図である。
【図6】本発明の雪崩防止構造の他の実施形態として、雪崩防止柵を法面における小段の谷側に設置するとともに台座部を小段まで延長した雪崩防止構造を示す断面図である。
【図7】本発明の雪崩防止柵の変形例であるワイヤロープと金網によって構成された雪受け部を備えた例を示す正面図である。
【図8】本発明の雪崩防止柵の他の変形例である複数の梯子状部材によって構成された雪受け部を備えた例を示す正面図である。
【図9】本発明の雪崩防止柵のさらに他の変形例である複数のグレーチングパネルによって構成された雪受け部を備えた例を示す正面図である。
【図10】本発明の雪崩防止柵のさらに他の変形例である複数のパンチングメタルによって構成された雪受け部を備えた例を示す正面図である。
【図11】本発明の雪崩防止構造の変形例として、2基の雪崩防止柵を法面における小段の谷側に法面の上下方向に並べて設置するとともに台座部を小段まで延長した雪崩防止構造を示す断面図である。
【図12】図11の雪崩防止構造の法面上の平面配置を示す図である。
【図13】本発明の雪崩防止構造の他の変形例として、2基の雪崩防止柵の台座部を連結材で連結した雪崩防止構造の法面上の平面配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の係る雪崩防止柵について説明する。
【0035】
図1に示される雪崩防止柵1は、法面S1における雪崩の発生を防止する雪崩防止柵である。
【0036】
図1〜3に示される雪崩防止柵1は、法面S1における雪崩の発生を防止する雪崩防止柵1である。雪崩防止柵1は、台座部2と、複数の支柱3と、雪受け部4と、L型の転倒抑止部材5と、連結部8とを備えている。
【0037】
台座部2は、一対のI型鋼または平らな鋼板などからなり、法面S1の表面に面接触して設置できるような形状を有している。この台座部2は、山側端部2aおよび谷側端部2bを有し、当該山側端部2aが法面S1の山側に配置され、当該谷側端部2bが法面S1の谷側に配置される。
【0038】
台座部2は、法面S1上の雪A1から受ける外力の大部分を法面アンカーボルトSB1、SB2に伝達する。アンカーボルトSB1、SB2に伝達された力は、アンカーボルトSB1、SB2と地面Gとの間の摩擦抵抗によって受け止められる。
【0039】
台座部2は、組立作業の軽減や雪の荷重などの諸条件を考慮して、軽量かつ高強度の鋼板やプレキャストコンクリート板などで製造されるのが好ましい。
【0040】
複数の支柱3は、H型鋼などからなる柱状体であり、台座部2から垂直に立ち上がっている。本実施形態では、台座部2を構成するI型鋼にそれぞれ1本ずつ支柱3が立設されている。
【0041】
支柱3は、台座部2の山側端部2aよりも谷側端部2bに近い位置に配置されており、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cは、雪を載せることが可能な形状を有する。
【0042】
雪受け部4は、支柱3の間に架設され、当該支柱3の間で雪を受けることが可能な形状を有する。本実施形態の雪受け部4は、支柱3の間に、丸鋼などからなる複数の梁材11、12が間隔をあけて水平方向に配置されたものである。
【0043】
最上部の梁材11およびその下方の位置にある梁材12には、図4〜5に示されるように、法面S1上の雪A1が法面S1に沿って谷側へ向かう方向の力F1が作用するが、さらに、最上部の梁材11には、梁材11よりも上方に位置する雪A1による荷重F2も作用する。したがって、最上部の梁材11は、その下方の位置にある梁材12よりも高強度になるように曲げ強度が強くなるようなに断面形状や寸法に設計する(例えば、口径を大きい丸鋼を採用するなど)必要がある。
【0044】
梁材11と梁材12との間または梁材12同士の間の設置間隔は、地域の雪質によるが、20cm前後を確保するのが好ましい。
【0045】
図1〜3に示される雪崩防止柵1では、支柱3が、台座部2の山側端部2aよりも谷側端部2bに近い位置に配置されており、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cが雪を載せることが可能な平らな形状を有するので、法面S1上の雪A1(図4参照)を台座部2における支柱3よりも山側の部分2cに多く載せることができ、当該法面S1上の雪A1によって台座部2における支柱3よりも山側の部分2cを押さえることができる。それにより、法面S1上の雪A1の重みを積極的に利用して、雪崩防止柵1を転倒させようとするモーメントM1を上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵1の転倒を抑止させるモーメントM2が発生させることが可能になり、雪崩防止柵1の転倒を効果的に防ぎ、その結果、雪崩を防止できる。
【0046】
L型の転倒抑止部材5は、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cにおいて法面S1に向けて突出するように設けられている。この転倒抑止部材5は、食い込み部6と雪載せ部7とを備えており、食い込み部6と雪載せ部7とがL型鋼などによって一体に形成されている。
【0047】
食い込み部6は、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cにおいて法面S1に向けて突出するように当該台座部2の幅方向D(図2参照)に沿って設けられ、法面S1の地盤Gに食い込むことが可能な形状を有する。台座部2の支柱3よりも山側の部分2cに設けられた食い込み部6が法面S1に向けて突出し、法面S1の地盤Gに食い込むことが可能である。
【0048】
雪載せ部7は、台座部2の支柱3よりも山側の部分2c、とくにに山側端部2aおいて当該台座部2の幅方向D(図2参照)に沿って延び、支柱3よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する。この雪載せ部7に法面S1上の雪A1が載ることにより、雪崩防止柵1の転倒を抑止するモーメントM2がさらに増大するので、雪崩防止柵1の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0049】
連結部8は、支柱3の山側側面と台座部2の当該支柱3よりも山側の部分2cとの間を連結する柱状の部材であり、引張荷重だけでなく山側からの雪圧による曲げ荷重に耐えられる強度を有する材料で製造され、例えば、角型鋼やH型鋼などによって製造される。連結部8が、支柱3の山側側面と台座部2の当該支柱3よりも山側の部分2cとの間を斜め方向に連結するので、支柱3と台座部2との間の連結がより強固になる。
【0050】
(雪崩防止柵1の転倒抑止モーメントの算出)
図5に示されるように、雪崩防止柵1の雪受け部4には、法面S1上の雪A1による力、すなわち、法面S1に沿って押す力F1と積雪重量によって下方へ作用する荷重F2とが作用し、それにより、雪崩防止部材1を谷側へ転倒させる転倒モーメントM1が雪受け部4に作用する。
【0051】
転倒モーメントM1を算出する場合、例えば、支柱3および雪受け部4を構成する梁材11、12のそれぞれの観測点に作用する法面S1上の雪A1から受ける力F1、F2における法面S1に平行な向きの成分と、台座部2の谷側端部2bから各観測点までの距離とによって、各観測点におけるモーメントを求め、それを支柱および梁材11、12の法面S1と平行に山側に面する部分の面全体についてモーメントの積分をすることにより、転倒モーメントM1を求めることができる。
【0052】
ここで、法面S1上の雪A1から受ける力の平行成分は、法面S1に沿って押す力F1だけでなく、積雪重量によって下方へ作用する荷重F2のうちの法面S1に平行な成分F21の合力となる。
【0053】
一方、雪崩防止柵1の転倒を阻止する転倒阻止モーメントM2を算出する場合、雪崩防止柵1の台座部2およびL型の転倒防止部材5の雪載せ部7の表面の観測点に付与される法面S1上の雪A1から受ける力F1、F2のうち法面S1に向かって垂直下方へ向かう垂直下方成分と、台座部2の谷側端部2bから各観測点までの距離とによって、各観測点におけるモーメントを求め、それを台座部2および転倒防止部材5の法面S1と直交する向きに面する部分の面全体についてモーメントの積分をすることにより、転倒阻止モーメントM2を求めることができる。
【0054】
ここで、法面S1上の雪A1から受ける力F1、F2の下方成分は、積雪重量によって下方へ作用する荷重のうちの法面S1に向かって垂直下方へ向かう成分F22とほぼ等しい。
【0055】
なお、上記のように算出された転倒モーメントM1と転倒抑止モーメントM2との差分のモーメントは、法面アンカーボルトSB1、SB2、および転倒防止部材5の食い込み部6によって受け止められる。
【0056】
なお、台座部2のうち支柱3および雪受け部4よりも谷側の部分は、当該雪受け部4によって上方から隠されているので、雪が積もらないか、または少量しか雪が積もらないので、台座部2に対して転倒モーメントを付与するおそれがないと考えられる。
【0057】
また、実際に雪崩防止柵1を法面S1に設置する場合には、法面S1の山側から雪崩防止柵1の上部へ吊りロープが取り付けられることがあり、その場合、この吊りロープによる張力によって、さらに転倒抑止モーメントM2が増大する。
【0058】
(雪崩防止構造30についての説明)
図4に示されるように、上記のように構成された雪崩防止柵1を用いて、法面S1の途中に形成された小段S2における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造30を構成することができる。この雪崩防止構造30は、上記のように構成された雪崩防止柵1と、台座部2を法面S1の地盤Gに固定する法面アンカーボルトSB1、SB2とを備えている。
【0059】
法面アンカーボルトSB1の下部は、地面Gに埋め込まれ、かつ、当該法面アンカーボルトSB1の上部は、台座部2の中間位置を貫通している。そして、当該法面アンカーボルトSB1の上部にナットNが締結されることにより、台座部2は地面Gに固定されている。同様に、法面アンカーボルトSB2の下部は、地面Gに埋め込まれ、かつ、当該法面アンカーボルトSB2の上部が台座部2の山側端部2a付近の部分および転倒防止部材5を貫通している。そして、当該法面アンカーボルトSB2の上部にナットNが締結されることにより、台座部2および転倒防止部材5が地面Gに固定されている。その結果、法面アンカーボルトSB1、SB2によって、雪崩防止部材1が地面Gに強固に固定される。
【0060】
この構造では、雪崩防止柵1は、法面S1のうち小段S2よりも谷側において、小段S2上の雪A2と連続して当該小段S2の谷側へ突出する法面S1上の雪A1を受けることができるような位置に設置されている。そのため、雪崩防止柵1には、小段S2上の雪A2と連続して突出する雪の荷重が支柱3間の雪受け部4だけでなく台座部2にも分散して付与されるので、支柱3および雪受け部4に発生する転倒モーメントM1は、台座部2に発生する転倒抑止モーメントM2によって大幅に相殺され、それにより、法面アンカーボルトSB1、SB2へ作用する転倒モーメントM1を大幅に減らすことができる。その結果、雪崩防止柵1は、谷側へ転倒しにくくなり、小段S2の幅を実質的に拡大することが可能になる。
【0061】
また、本実施形態では、台座部2の中間位置を締結する法面アンカーボルトSB1の他に、法面アンカーボルトSB2が、台座部2の山側端部2a付近の部分とともに転倒防止部材5に貫通してナットNで台座部2および転倒防止部材5を地面Gに締結するので、支柱3から遠い位置で転倒抑止モーメントM2を増大させることができ、雪崩防止柵1の転倒をより確実に防止できる。
【0062】
(他の雪崩防止構造31についての説明)
なお、図4に示される雪崩防止構造30では、台座部2は、小段S2よりも下の法面S1に接触しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図6に示されるように、台座部2の山側の部分を小段S2の表面まで延長させてもよい。
【0063】
具体的には、図6に示される雪崩防止構造31では、台座部2は、当該台座部2の山側端部2aが小段S2の表面に沿って延長して延びる延長部分21を有している。また、この雪崩防止構造31は、延長部分21を小段S2の地盤Gに固定する小段アンカーボルトFBを備えており、延長部分21が、小段アンカーボルトFBにより、小段S2の地盤Gに固定されている。そのため、容易かつ確実に小段S2の地盤Gに固定することができる。
【0064】
しかも、この延長部分21の上には小段S2上の雪A2による荷重が作用するので、転倒抑止モーメントM2がさらに増大し、その結果、雪崩防止柵1はさらに転倒しにくくなる。
【0065】
また、図6に示される雪崩防止構造31では、L型の転倒防止部材5が小段S2の表面に配置されているので、転倒防止部材5の雪載せ部7の上に小段S2上の雪A2による荷重が作用し、その結果、転倒抑止モーメントM2がより一層増大する。
【0066】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の雪崩防止柵1では、支柱3が、台座部2の山側端部2aよりも谷側端部2bに近い位置に配置されており、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cが雪を載せることが可能な形状を有するので、法面S1上の雪A1を台座部2における支柱3よりも山側の部分2cに多く載せることができ、当該法面S1上の雪A1によって台座部2における支柱3よりも山側の部分2cを押さえることができる。それにより、法面S1上の雪A1の荷重を積極的に利用して、雪崩防止柵1を転倒させようとするモーメントM1を上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵1の転倒を抑止させるモーメントM2が発生させることが可能になり、雪崩防止柵1の転倒を効果的に防ぎ、その結果、雪崩を防止できる。
【0067】
また、法面S1上の雪A1の荷重を利用して雪崩防止柵1の転倒を防止するので、台座部2を法面S1の地盤Gに固定するためのアンカーボルトBなどの固定手段の数を減らし簡易かつ安価なものを採用できるので、施工が大幅に容易になる。
【0068】
(2)
この雪受け部4は、台座部2の谷側端部2bから立ち上がっているので、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cが最も広くなり、台座部2の上に積もる雪の荷重を十分生かして転倒防止効果を向上させることができる。
【0069】
(3)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cに設けられた食い込み部6が法面S1に向けて突出し、法面S1の地盤Gに食い込むことによって、法面S1上の雪A1が支柱3の間の雪受け部4に力を付与した場合に、雪崩防止柵1が法面S1の表面に沿って谷側へずれることを防止する。それとともに、食い込み部6と法面S1の地盤Gとの間の摩擦抵抗によって、雪崩防止柵1の転倒を抑止するモーメントM2がさらに増大するので、雪崩防止柵1の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0070】
(4)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、食い込み部6は、台座部2の山側端部2aにおいて法面S1に向けて突出するように設けられているので、台座部2において支柱3から最も離れた位置に配置され、食い込み部6によって発生する転倒抑止モーメントM2は最も大きくなり、その結果、転倒防止効果が向上する。
【0071】
(5)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cにおいて当該台座部2の幅方向に沿って延び、雪受け部4よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部7をさらに備えているので、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cに設けられた雪載せ部7に法面S1上の雪A1が載ることにより、雪崩防止柵1の転倒を抑止するモーメントM2がさらに増大するので、雪崩防止柵1の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0072】
(6)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、雪載せ部7が台座部2の山側端部2aに設けられ、台座部2において支柱3から最も離れた位置に配置されているので、雪載せ部7によって発生する転倒を抑止するモーメントM2は最も大きくなる。
【0073】
(7)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、L型の転倒抑止部材5が、食い込み部6と雪載せ部7とを一体に形成することにより構成されているので、この転倒抑止部材5をL型鋼などで容易に一体成形でき、しかも当該食い込み部6および雪載せ部7を台座部2へ取り付ける作業も容易になっている。
【0074】
(8)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、連結部8が、支柱3の山側側面と台座部2の当該支柱3よりも山側の部分2cとの間を連結しているので、支柱3と台座部2との間の連結がより強固になり、支柱3が折れたりしにくくなる。支柱3には、山側から雪の圧力を受けて谷側へ向かう方向へ曲げ荷重がかかるが、連結部8はこの支柱3を山側から支持することにより、連結部8には引張荷重がかかる。また、連結部8には山側からの雪圧による曲げ荷重も作用する。したがって、連結部8は、この曲げ荷重を考慮しつつ引張荷重を支えることが可能な引っ張り強度を有するように設計すればよい。
【0075】
(9)
また、本実施形態の雪崩防止構造30では、図4〜5に示されるように、法面S1の途中に形成された小段S2における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造30であって、上記のように構成された雪崩防止柵1と、台座部2を法面S1の地盤Gに固定する法面アンカーボルトSBとを備えており、雪崩防止柵1は、法面S1のうち小段S2よりも谷側において、小段S2上の雪A2と連続して当該小段S2の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されている。
【0076】
かかる構成によれば、雪崩防止柵1が、法面S1のうち小段S2よりも谷側において、小段S2上の雪A2と連続して当該小段S2の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されているので、雪崩防止柵1には、小段S2上の雪A2と連続して突出する雪の荷重が支柱3間の雪受け部4だけでなく台座部2にも分散して付与される。その結果、支柱3および雪受け部4に発生する転倒モーメントM1は、台座部2に発生する転倒抑止モーメントM2によって大幅に相殺され、転倒しにくくなり、小段S2の幅を実質的に拡大することが可能になる。
【0077】
また、図5に示されるように、小段S2と雪崩予防柵2とを組み合わせることにより、小段のない法面上に雪崩防止柵1を単独で設ける場合と比較して、雪崩防止柵1の高さを低くしても、支柱3および雪受け部4の上端部において谷側へ突出する雪、すなわち、雪庇が生じにくくなり、雪崩防止効果が大幅に向上する。
【0078】
(10)
また、本実施形態の雪崩防止構造31では、図6に示されるように、台座部2が、当該台座部2の山側端部2aが小段S2の表面沿って延長して延びる延長部分21を有しており、延長部分21を小段S2の地盤Gに固定する小段アンカーボルトFBをさらに備えており、延長部分21が、小段アンカーボルトFBにより、小段S2の地盤Gに固定されている。この構成では、台座部2の山側に延びる延長部分21が、小段S2表面まで延びて小段アンカーボルトFBによって小段S2の地盤Gに固定されているので、容易かつ確実に小段S2の地盤Gに固定することができる。
【0079】
しかも、この延長部分21の上には小段S2上の雪A2の荷重がかかり、転倒抑止モーメントM2がさらに増大するので、雪崩防止柵1はさらに転倒しにくくなる。
【0080】
(変形例)
なお、雪受け部4は、本実施形態では、図1〜3に示されるように、支柱3の間に、丸鋼などからなる複数の梁材11、12が間隔をあけて水平方向に配置されたものが採用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、法面S1上の雪A1を受け止めることができる構成であれば、他の構成の雪受け部を採用してもよい。
【0081】
例えば、図7に示される雪受け部40は、支柱3の間に、複数のワイヤロープ41が間隔をあけて水平方向に配置されるとともに当該支柱3にワイヤグリップなどで固定され、それらのワイヤロープ41に金網42が固定されることにより構成されている。このような構成の雪受け部40の場合、金網42によって小さな雪の塊も保持できる。また、雪崩防止柵の上端部には、法面S1に沿って山側から受ける雪圧だけでなく柵の上端部よりも上方に堆積する雪による荷重(図4の垂直荷重F2参照)も作用して大きな荷重がかかる。そこで、柵の上端部を補強するために、図7に示される雪崩防止柵では、補強用の梁材49が支柱3の上端部の間に設けられている。梁材49は、丸パイプ、H型鋼、角型鋼などの曲げ強度の高い部材で製造される。
【0082】
さらに、図8に示される雪受け部43は、支柱3の間に、鋼管などを縦横に組み合わせた梯子状部材44を複数台設け、各梯子状部材44の端部を支柱3に固定することにより構成されている。この梯子状部材44は、支柱3の間に橋渡しされる一対の梁材44aと、当該梁材44aの間を所定間隔で連結する縦材44bとを備えている。このような構成の雪受け部43の場合、水平方向に延びる梁材44a同士が、縦材44bによって結合されているので、雪受け部43全体の強度が向上する。また、梁材44aの間の隙間が縦材44bによって小さく分割されるので、小さな雪の塊も保持できる。この図8に示される雪崩防止柵についても、図7と同様に、柵の上端部を補強するために支柱3の上端部の間に補強用の梁材49を設けてもよい。なお、梯子状部材44によって雪崩防止柵全体の強度が十分ある場合は、梁材49を設けずに、支柱3の頭部を梯子上部材44の上端と同じ高さにしてもよい。
【0083】
また、図9に示される雪受け部45は、支柱3の間に、細かい目の格子状のグレーチングパネル46を複数枚設けることにより構成されている。グレーチングパネル46は、鋼材などで製造され、強度が強く、しかも水はけも良い。グレーチングパネル46を用いた場合、十分な強度が得られるとともに、隙間が小さいので小さな雪の塊も保持できる。この図9に示される雪崩防止柵についても、図7と同様に、柵の上端部を補強するために支柱3の上端部の間に補強用の梁材49を設けてもよい。なお、グレーチングパネル46によって雪崩防止柵全体の強度が十分ある場合は、梁材49を設けずに、支柱3の頭部を梯子上部材44の上端と同じ高さにしてもよい。
【0084】
また、上記グレーチングパネル46と同様に、図10に示される雪受け部47は、支柱3の間に、小さい穴が多数開けられた金属板からなるパンチングメタル48を複数枚設けることにより構成されている。パンチングメタル48は、鋼材などで製造され、強度が強く、しかも水はけも良い。パンチングメタル48を用いた場合、十分な強度が得られるとともに、隙間が小さいので小さな雪の塊も保持できる。この図10に示される雪崩防止柵についても、図7と同様に、柵の上端部を補強するために支柱3の上端部の間には、補強用の梁材49を設けてもよい。なお、パンチングメタル48によって雪崩防止柵全体の強度が十分ある場合は、梁材49を設けずに、支柱3の頭部を梯子上部材44の上端と同じ高さにしてもよい。
【0085】
また、図示されていないが、パンチングメタルの代わりにエキスパンドメタルを用いてもよい。エキスパンドメタルは、薄板鋼板に短いスリットを多数形成し、その鋼板を両端から引っ張ることによりスリットの開口を拡大させることによって、製造される。このようなエキスパンドメタルを用いても、十分な強度が得られるとともに、隙間が小さいので小さな雪の塊も保持できる。
【0086】
上記実施形態の図6に示される雪崩防止構造31では、1基の雪崩防止柵を固定する方法として、台座部2の延長部分21を小段S2上で小段アンカーボルトFBによって固定する例が示されているが、本発明は1基の雪崩防止柵に限定するものではなく、斜面の上下方向に沿って2基以上の雪崩防止柵を固定するようにしてもよい。
【0087】
例えば、本発明の変形例として、図11〜12に示される雪崩防止構造51のように、積雪深さが浅く、雪崩柵工の規模が小さく、かつ、法面S1が軟弱な現場では、法面S1の上下方向に沿って台座部2を延長して2基の雪崩防止柵1を連結してもよい。すなわち、法面S1の上下方向に沿って並べて設置される2基の雪崩防止柵1は、法面S1の上下方向に沿って延びる台座部2を共有している。台座部3の上の所定の位置には、それぞれの雪崩防止柵1の支柱3が立設され、さらに支柱3の間には雪受け部4が設けられている。台座部2は、法面アンカーボルトSB1によって法面S1に固定されている。法面アンカーボルトSB1は、支柱3よりも山側の位置にそれぞれ配置される。また、図11〜12の雪崩防止柵1においても、台座部2の山側端部が小段S2の表面に沿って延長して延びる延長部分21を有し、当該延長部分21がL型の転倒抑止部材5とともに小段アンカーボルトFBによって小段S2の地盤Gに固定されている。このような構造により、1つの小段S2に埋め込まれた小段アンカーボルトFBを利用して複数段の雪崩防止柵1を一括して法面上に固定することが可能になる。
【0088】
また、図13に示される本発明の他の変形例に係る雪崩防止構造52のように、複数段の雪崩防止柵1の台座部3を延長して共通化する代わりに各雪崩防止柵1の台座部3同士を法面S1の上下方向に沿って延びる連結材53によって連結するようにしてもよい。連結材53は、例えば、ワイヤロープや棒状の鋼材などからなる。また、最上段の雪崩防止柵1の台座部3は、小段S2上に埋め込まれたL型の転倒抑止部材5に対して、連結材54およびブラケット55を介して連結されている。連結材54は、連結材53と同様に、ワイヤロープや棒状の鋼材などからなる。L型の転倒抑止部材5および連結ブラケット55は、小段アンカーボルトFBによって小段S2の地盤Gに固定されている。このような図13に示される構造においても、1つの小段S2に埋め込まれた小段アンカーボルトFBを利用して複数段の雪崩防止柵1を一括して法面上に固定することが可能になる。しかも、図13に示される構造では、平板状の台座部3の長さが短くて済むので、法面S1の凹凸などに影響を受けにくい。すなわち、雪崩防止柵1の設置について法面S1の状態による制限が少なく、その分設置自由度が向上する。
【符号の説明】
【0089】
1 雪崩防止柵
2 台座部
2a 山側端部
2b 谷側端部
2c 山側の部分
2d 谷側の部分
3 支柱
4、43、45、47 雪受け部
5 転倒抑止部材
6 食い込み部
7 雪載せ部
8 連結部
21 延長部分
30、31、51、52 雪崩防止構造
S1 法面
S2 小段
A1 法面上の雪
A2 小段上の雪
F1 法面上の雪が法面に沿って雪崩防止柵を押す力
F2 法面上の雪の荷重
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪崩の発生を防止する雪崩防止柵、およびその雪崩防止柵を用いて法面の途中に形成された小段における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、積雪地方の法面における雪崩を防止するために、雪崩防止柵が設けられている。
【0003】
従来から用いられる雪崩防止柵は、特許文献1に記載されているように、法面から立てて配置された複数の支柱と、当該支柱の間に架設された複数の横材と、支柱を谷側から斜めに支持する控え柱とを備えている。これら支柱および控え柱の下端は、法面の土中に埋設されたコンクリート製の基礎部分に固定されている。このように構成された雪崩防止柵は、支柱および横材で囲まれた面で法面上の雪を受け、その雪から受ける圧力を支柱および控え柱を介して法面の土中に埋設されたコンクリートの基礎部分で受け止めることにより、雪崩の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−180116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような雪崩防止柵は、支柱および控え柱を支持するために、コンクリートの基礎部分を設ける必要があり、施工に手間と時間がかかる。
【0006】
一方、コンクリートの基礎部分を用いないで施工を容易にした構造として、鋼板などからなる台座を用いた構造が考えられる。この構造では、鋼製の台座の山側端部付近に支柱が立設され、その支柱の谷側に控え柱が設けられ、控え柱の下端が当該台座に固定され、かかる台座がアンカーボルトを用いて法面に固定される。
【0007】
しかし、このような構造では、法面上の雪の重みを支柱および横材で囲まれた面でのみ受けるので、雪崩防止柵に対して谷側へ転倒させようとする大きなモーメントが働き、雪崩防止柵が台座を固定するアンカーボルトから根こそぎ転倒するおそれがある。そのため、このような雪崩防止柵の転倒を防止するためには、より多くのアンカーボルトで地面に固定するなどして転倒を抑える必要が生じてくるので、施工の手間が増大するおそれがある。
【0008】
また、雪崩防止のために法面の途中に小段を形成し、小段に積もる雪の抵抗により、その小段よりも山側の法面に積もる雪が落ちるのを防いでいることが従来より行われているが、小段の設置場所によっては、樹木や岩石などの障害物等により小段の幅を広げることが困難な場合がある。そのような場合に、小段の下方に雪崩防止柵を設置して、当該雪崩防止柵によって小段から谷側へはみ出た雪を受け止めることにより、小段の幅を実質的に拡張させることが考えられる。しかし、このような小段を拡張させるために雪崩防止柵を法面に設置する場合、雪崩防止柵には小段上の雪と連続して突出する雪の重みが付与することによって大きな転倒モーメントが雪崩防止柵に付与されるので、さらに転倒しやすくなる。
【0009】
そこで、本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、法面上の雪の重みを積極的に利用して、転倒モーメントを上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵の転倒を抑止させるモーメントが発生するように、当該法面上の雪によって台座部を積極的に押さえることができ、小段上の雪と連続して突出する雪を受け止めることが可能な本発明の雪崩防止柵を提案した。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、雪の重みを利用して柵の転倒を防止するとともに、しかも、施工が容易な雪崩防止柵、およびそれを用いた小段の拡張を容易にした雪崩防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためのものとして、本発明の雪崩防止柵は、法面における雪崩の発生を防止する雪崩防止柵であって、法面に設置可能な形状を有し、かつ、山側端部および谷側端部を有し、当該山側端部が前記法面の山側に配置され、当該谷側端部が前記法面の谷側に配置される台座部と、前記台座部から立ち上がっている複数の支柱と、前記支柱の間に架設され、当該支柱の間で雪を受けることが可能な形状を有する雪受け部と、を備えており、前記支柱は、前記台座部の山側端部よりも谷側端部に近い位置に配置されており、前記台座部における前記支柱よりも山側の部分は、雪を載せることが可能な形状を有する、ことを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、前記支柱が、前記台座部の山側端部よりも谷側端部に近い位置に配置されており、前記台座部における前記支柱よりも山側の部分が雪を載せることが可能な形状を有するので、法面上の雪を台座部における支柱よりも山側の部分に多く載せることができ、当該法面上の雪によって台座部における支柱よりも山側の部分を押さえることができる。それにより、法面上の雪の重みを積極的に利用して、雪崩防止柵を転倒させようとするモーメントを上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵の転倒を抑止させるモーメントが発生させることが可能になり、その結果、雪崩防止柵の転倒を効果的に防ぎ、その結果、雪崩を防止できる。
【0013】
また、法面上の雪の重みを利用して雪崩防止柵の転倒を防止するので、台座部を法面の地盤に固定するためのアンカーボルトなどの固定手段の数を減らし簡易かつ安価なものを採用できるので、施工が大幅に容易になる。
【0014】
前記雪受け部は、前記台座部の谷側端部から立ち上がっているのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、台座部における支柱よりも山側の部分が最も広くなるので、台座部の上に積もる雪の重みを十分生かして転倒防止効果を向上させることができる。
【0016】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において前記法面に向けて突出するように設けられ、前記法面の地盤に食い込むことが可能な形状を有する食い込み部をさらに備えているのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、台座部の支柱よりも山側の部分に設けられた食い込み部が法面に向けて突出し、法面の地盤に食い込むことによって、法面上の雪が支柱の間の雪受け部に力を付与した場合に、雪崩防止柵が法面の表面に沿って谷側へずれることを防止する。それとともに、食い込み部と法面の地盤との間の摩擦抵抗によって、雪崩防止柵の転倒を抑止するモーメントがさらに増大するので、雪崩防止柵の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0018】
前記食い込み部は、前記台座部の山側端部において前記法面に向けて突出するように設けられているのが好ましい。この場合、食い込み部が台座部の山側端部に設けられ、台座部において支柱から最も離れた位置に配置されるので、食い込み部によって発生する転倒を抑止するモーメントは最も大きくなる。
【0019】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において当該台座部の幅方向に沿って延び、前記雪受け部よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部をさらに備えているのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、台座部の前記支柱よりも山側の部分に設けられた雪載せ部に法面上の雪が載ることにより、雪崩防止柵の転倒を抑止するモーメントがさらに増大するので、雪崩防止柵の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0021】
前記雪載せ部は、前記台座部の山側端部において当該台座部の幅方向に沿って延びるのが好ましい。この場合、雪載せ部が台座部の山側端部に設けられ、台座部において支柱から最も離れた位置に配置されるので、雪載せ部によって発生する転倒を抑止するモーメントは最も大きくなる。
【0022】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において前記法面に向けて突出するように設けられ、前記法面の地盤に食い込むことが可能な形状を有する食い込み部と、前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において当該台座部の幅方向に沿って延び、前記支柱よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部とをさらに備えており、前記食い込み部と前記雪載せ部とが一体に形成されている、のが好ましい。
【0023】
この構成によれば、食い込み部および雪載せ部を鋼材などで容易に一体成形でき、しかも当該食い込み部および雪載せ部を台座部へ取り付ける作業も容易になる。
【0024】
前記支柱の山側側面と前記台座部の当該支柱よりも山側の部分との間を連結する連結部をさらに備えているのが好ましい。
【0025】
この構成によれば、連結部が、支柱の山側側面と台座部の当該支柱よりも山側の部分との間を連結するので、支柱と台座部との間の連結がより強固になり、支柱が折れにくくなる。支柱には、山側から雪の圧力を受けて谷側へ向かう方向へ曲げ荷重がかかるが、連結部はこの支柱を山側から支持することにより、連結部には引張荷重がかかる。また、連結部には山側からの雪圧による曲げ荷重も作用する。したがって、連結部は、この曲げ荷重を考慮しつつ引張荷重を支えることが可能な引っ張り強度を有するように設計すればよい。
【0026】
また、本発明の雪崩防止構造は、法面の途中に形成された小段における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造であって、請求項1から8のいずれかに記載の雪崩防止柵と、前記台座部を前記法面の地盤に固定する法面固定手段とを備えており、前記雪崩防止柵は、前記法面のうち前記小段よりも谷側において、前記小段上の雪と連続して当該小段の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されている、ことを特徴とする。
【0027】
かかる構成によれば、雪崩防止柵が、法面のうち小段よりも谷側において、小段上の雪と連続して当該小段の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されているので、雪崩防止柵には、小段上の雪と連続して突出する雪の重みが支柱間の雪受け部だけでなく台座部にも分散して付与されるので、支柱および雪受け部に発生する転倒モーメントは、台座部に発生する転倒抑止モーメントによって大幅に相殺され、転倒しにくくなり、小段の幅を実質的に拡大することが可能になる。
【0028】
前記台座部は、当該台座部の山側端部が前記小段の表面沿って延長して延びる延長部分を有しており、前記延長部分を前記小段の地盤に固定する小段固定手段をさらに備えており、前記延長部分が、前記小段固定手段により、前記小段の地盤に固定されるのが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、前記台座部の山側に延びる延長部分が、小段表面まで延びて小段固定手段によって小段の地盤に固定されているので、容易かつ確実に小段の地盤に固定することができる。
【0030】
しかも、この延長部分の上には小段上の雪の重みがかかり、転倒抑止モーメントがさらに増大するので、雪崩防止柵はさらに転倒しにくくなる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明の雪崩防止柵によれば、法面上の雪の重みを積極的に利用して、転倒モーメントを上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵の転倒を抑止させるモーメントが発生することが可能となり、雪崩防止柵の転倒を効果的に防ぐことが可能となり、その結果、雪崩を効果的に防止できる。また、法面上の雪の重みを利用して雪崩防止柵の転倒を防止するので、台座部を法面の地盤に固定するためのアンカーボルトなどの固定手段の数を減らし簡易かつ安価なものを採用できるので、施工が大幅に容易になる。
【0032】
また、本発明の雪崩防止構造によれば、雪崩防止柵には、小段上の雪と連続して突出する雪の重みが支柱だけでなく台座部にも分散して付与されるので、支柱および雪受け部に発生する転倒モーメントは、台座部に発生する転倒抑止モーメントによって大幅に相殺され、雪崩防止柵は転倒しにくくなる。その結果、小段の幅を実質的に拡大することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の雪崩防止柵の実施形態に係わる一部切欠側面図である。
【図2】図1の雪崩防止柵の平面図である。
【図3】図1の雪崩防止柵の正面図である。
【図4】本発明の雪崩防止構造の一実施形態として、図1の雪崩防止柵を法面における小段の谷側に設置した雪崩防止構造を示す断面図である。
【図5】図4の雪崩防止柵の拡大断面図である。
【図6】本発明の雪崩防止構造の他の実施形態として、雪崩防止柵を法面における小段の谷側に設置するとともに台座部を小段まで延長した雪崩防止構造を示す断面図である。
【図7】本発明の雪崩防止柵の変形例であるワイヤロープと金網によって構成された雪受け部を備えた例を示す正面図である。
【図8】本発明の雪崩防止柵の他の変形例である複数の梯子状部材によって構成された雪受け部を備えた例を示す正面図である。
【図9】本発明の雪崩防止柵のさらに他の変形例である複数のグレーチングパネルによって構成された雪受け部を備えた例を示す正面図である。
【図10】本発明の雪崩防止柵のさらに他の変形例である複数のパンチングメタルによって構成された雪受け部を備えた例を示す正面図である。
【図11】本発明の雪崩防止構造の変形例として、2基の雪崩防止柵を法面における小段の谷側に法面の上下方向に並べて設置するとともに台座部を小段まで延長した雪崩防止構造を示す断面図である。
【図12】図11の雪崩防止構造の法面上の平面配置を示す図である。
【図13】本発明の雪崩防止構造の他の変形例として、2基の雪崩防止柵の台座部を連結材で連結した雪崩防止構造の法面上の平面配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の係る雪崩防止柵について説明する。
【0035】
図1に示される雪崩防止柵1は、法面S1における雪崩の発生を防止する雪崩防止柵である。
【0036】
図1〜3に示される雪崩防止柵1は、法面S1における雪崩の発生を防止する雪崩防止柵1である。雪崩防止柵1は、台座部2と、複数の支柱3と、雪受け部4と、L型の転倒抑止部材5と、連結部8とを備えている。
【0037】
台座部2は、一対のI型鋼または平らな鋼板などからなり、法面S1の表面に面接触して設置できるような形状を有している。この台座部2は、山側端部2aおよび谷側端部2bを有し、当該山側端部2aが法面S1の山側に配置され、当該谷側端部2bが法面S1の谷側に配置される。
【0038】
台座部2は、法面S1上の雪A1から受ける外力の大部分を法面アンカーボルトSB1、SB2に伝達する。アンカーボルトSB1、SB2に伝達された力は、アンカーボルトSB1、SB2と地面Gとの間の摩擦抵抗によって受け止められる。
【0039】
台座部2は、組立作業の軽減や雪の荷重などの諸条件を考慮して、軽量かつ高強度の鋼板やプレキャストコンクリート板などで製造されるのが好ましい。
【0040】
複数の支柱3は、H型鋼などからなる柱状体であり、台座部2から垂直に立ち上がっている。本実施形態では、台座部2を構成するI型鋼にそれぞれ1本ずつ支柱3が立設されている。
【0041】
支柱3は、台座部2の山側端部2aよりも谷側端部2bに近い位置に配置されており、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cは、雪を載せることが可能な形状を有する。
【0042】
雪受け部4は、支柱3の間に架設され、当該支柱3の間で雪を受けることが可能な形状を有する。本実施形態の雪受け部4は、支柱3の間に、丸鋼などからなる複数の梁材11、12が間隔をあけて水平方向に配置されたものである。
【0043】
最上部の梁材11およびその下方の位置にある梁材12には、図4〜5に示されるように、法面S1上の雪A1が法面S1に沿って谷側へ向かう方向の力F1が作用するが、さらに、最上部の梁材11には、梁材11よりも上方に位置する雪A1による荷重F2も作用する。したがって、最上部の梁材11は、その下方の位置にある梁材12よりも高強度になるように曲げ強度が強くなるようなに断面形状や寸法に設計する(例えば、口径を大きい丸鋼を採用するなど)必要がある。
【0044】
梁材11と梁材12との間または梁材12同士の間の設置間隔は、地域の雪質によるが、20cm前後を確保するのが好ましい。
【0045】
図1〜3に示される雪崩防止柵1では、支柱3が、台座部2の山側端部2aよりも谷側端部2bに近い位置に配置されており、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cが雪を載せることが可能な平らな形状を有するので、法面S1上の雪A1(図4参照)を台座部2における支柱3よりも山側の部分2cに多く載せることができ、当該法面S1上の雪A1によって台座部2における支柱3よりも山側の部分2cを押さえることができる。それにより、法面S1上の雪A1の重みを積極的に利用して、雪崩防止柵1を転倒させようとするモーメントM1を上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵1の転倒を抑止させるモーメントM2が発生させることが可能になり、雪崩防止柵1の転倒を効果的に防ぎ、その結果、雪崩を防止できる。
【0046】
L型の転倒抑止部材5は、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cにおいて法面S1に向けて突出するように設けられている。この転倒抑止部材5は、食い込み部6と雪載せ部7とを備えており、食い込み部6と雪載せ部7とがL型鋼などによって一体に形成されている。
【0047】
食い込み部6は、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cにおいて法面S1に向けて突出するように当該台座部2の幅方向D(図2参照)に沿って設けられ、法面S1の地盤Gに食い込むことが可能な形状を有する。台座部2の支柱3よりも山側の部分2cに設けられた食い込み部6が法面S1に向けて突出し、法面S1の地盤Gに食い込むことが可能である。
【0048】
雪載せ部7は、台座部2の支柱3よりも山側の部分2c、とくにに山側端部2aおいて当該台座部2の幅方向D(図2参照)に沿って延び、支柱3よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する。この雪載せ部7に法面S1上の雪A1が載ることにより、雪崩防止柵1の転倒を抑止するモーメントM2がさらに増大するので、雪崩防止柵1の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0049】
連結部8は、支柱3の山側側面と台座部2の当該支柱3よりも山側の部分2cとの間を連結する柱状の部材であり、引張荷重だけでなく山側からの雪圧による曲げ荷重に耐えられる強度を有する材料で製造され、例えば、角型鋼やH型鋼などによって製造される。連結部8が、支柱3の山側側面と台座部2の当該支柱3よりも山側の部分2cとの間を斜め方向に連結するので、支柱3と台座部2との間の連結がより強固になる。
【0050】
(雪崩防止柵1の転倒抑止モーメントの算出)
図5に示されるように、雪崩防止柵1の雪受け部4には、法面S1上の雪A1による力、すなわち、法面S1に沿って押す力F1と積雪重量によって下方へ作用する荷重F2とが作用し、それにより、雪崩防止部材1を谷側へ転倒させる転倒モーメントM1が雪受け部4に作用する。
【0051】
転倒モーメントM1を算出する場合、例えば、支柱3および雪受け部4を構成する梁材11、12のそれぞれの観測点に作用する法面S1上の雪A1から受ける力F1、F2における法面S1に平行な向きの成分と、台座部2の谷側端部2bから各観測点までの距離とによって、各観測点におけるモーメントを求め、それを支柱および梁材11、12の法面S1と平行に山側に面する部分の面全体についてモーメントの積分をすることにより、転倒モーメントM1を求めることができる。
【0052】
ここで、法面S1上の雪A1から受ける力の平行成分は、法面S1に沿って押す力F1だけでなく、積雪重量によって下方へ作用する荷重F2のうちの法面S1に平行な成分F21の合力となる。
【0053】
一方、雪崩防止柵1の転倒を阻止する転倒阻止モーメントM2を算出する場合、雪崩防止柵1の台座部2およびL型の転倒防止部材5の雪載せ部7の表面の観測点に付与される法面S1上の雪A1から受ける力F1、F2のうち法面S1に向かって垂直下方へ向かう垂直下方成分と、台座部2の谷側端部2bから各観測点までの距離とによって、各観測点におけるモーメントを求め、それを台座部2および転倒防止部材5の法面S1と直交する向きに面する部分の面全体についてモーメントの積分をすることにより、転倒阻止モーメントM2を求めることができる。
【0054】
ここで、法面S1上の雪A1から受ける力F1、F2の下方成分は、積雪重量によって下方へ作用する荷重のうちの法面S1に向かって垂直下方へ向かう成分F22とほぼ等しい。
【0055】
なお、上記のように算出された転倒モーメントM1と転倒抑止モーメントM2との差分のモーメントは、法面アンカーボルトSB1、SB2、および転倒防止部材5の食い込み部6によって受け止められる。
【0056】
なお、台座部2のうち支柱3および雪受け部4よりも谷側の部分は、当該雪受け部4によって上方から隠されているので、雪が積もらないか、または少量しか雪が積もらないので、台座部2に対して転倒モーメントを付与するおそれがないと考えられる。
【0057】
また、実際に雪崩防止柵1を法面S1に設置する場合には、法面S1の山側から雪崩防止柵1の上部へ吊りロープが取り付けられることがあり、その場合、この吊りロープによる張力によって、さらに転倒抑止モーメントM2が増大する。
【0058】
(雪崩防止構造30についての説明)
図4に示されるように、上記のように構成された雪崩防止柵1を用いて、法面S1の途中に形成された小段S2における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造30を構成することができる。この雪崩防止構造30は、上記のように構成された雪崩防止柵1と、台座部2を法面S1の地盤Gに固定する法面アンカーボルトSB1、SB2とを備えている。
【0059】
法面アンカーボルトSB1の下部は、地面Gに埋め込まれ、かつ、当該法面アンカーボルトSB1の上部は、台座部2の中間位置を貫通している。そして、当該法面アンカーボルトSB1の上部にナットNが締結されることにより、台座部2は地面Gに固定されている。同様に、法面アンカーボルトSB2の下部は、地面Gに埋め込まれ、かつ、当該法面アンカーボルトSB2の上部が台座部2の山側端部2a付近の部分および転倒防止部材5を貫通している。そして、当該法面アンカーボルトSB2の上部にナットNが締結されることにより、台座部2および転倒防止部材5が地面Gに固定されている。その結果、法面アンカーボルトSB1、SB2によって、雪崩防止部材1が地面Gに強固に固定される。
【0060】
この構造では、雪崩防止柵1は、法面S1のうち小段S2よりも谷側において、小段S2上の雪A2と連続して当該小段S2の谷側へ突出する法面S1上の雪A1を受けることができるような位置に設置されている。そのため、雪崩防止柵1には、小段S2上の雪A2と連続して突出する雪の荷重が支柱3間の雪受け部4だけでなく台座部2にも分散して付与されるので、支柱3および雪受け部4に発生する転倒モーメントM1は、台座部2に発生する転倒抑止モーメントM2によって大幅に相殺され、それにより、法面アンカーボルトSB1、SB2へ作用する転倒モーメントM1を大幅に減らすことができる。その結果、雪崩防止柵1は、谷側へ転倒しにくくなり、小段S2の幅を実質的に拡大することが可能になる。
【0061】
また、本実施形態では、台座部2の中間位置を締結する法面アンカーボルトSB1の他に、法面アンカーボルトSB2が、台座部2の山側端部2a付近の部分とともに転倒防止部材5に貫通してナットNで台座部2および転倒防止部材5を地面Gに締結するので、支柱3から遠い位置で転倒抑止モーメントM2を増大させることができ、雪崩防止柵1の転倒をより確実に防止できる。
【0062】
(他の雪崩防止構造31についての説明)
なお、図4に示される雪崩防止構造30では、台座部2は、小段S2よりも下の法面S1に接触しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図6に示されるように、台座部2の山側の部分を小段S2の表面まで延長させてもよい。
【0063】
具体的には、図6に示される雪崩防止構造31では、台座部2は、当該台座部2の山側端部2aが小段S2の表面に沿って延長して延びる延長部分21を有している。また、この雪崩防止構造31は、延長部分21を小段S2の地盤Gに固定する小段アンカーボルトFBを備えており、延長部分21が、小段アンカーボルトFBにより、小段S2の地盤Gに固定されている。そのため、容易かつ確実に小段S2の地盤Gに固定することができる。
【0064】
しかも、この延長部分21の上には小段S2上の雪A2による荷重が作用するので、転倒抑止モーメントM2がさらに増大し、その結果、雪崩防止柵1はさらに転倒しにくくなる。
【0065】
また、図6に示される雪崩防止構造31では、L型の転倒防止部材5が小段S2の表面に配置されているので、転倒防止部材5の雪載せ部7の上に小段S2上の雪A2による荷重が作用し、その結果、転倒抑止モーメントM2がより一層増大する。
【0066】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の雪崩防止柵1では、支柱3が、台座部2の山側端部2aよりも谷側端部2bに近い位置に配置されており、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cが雪を載せることが可能な形状を有するので、法面S1上の雪A1を台座部2における支柱3よりも山側の部分2cに多く載せることができ、当該法面S1上の雪A1によって台座部2における支柱3よりも山側の部分2cを押さえることができる。それにより、法面S1上の雪A1の荷重を積極的に利用して、雪崩防止柵1を転倒させようとするモーメントM1を上回るまたは大幅に減殺させるような雪崩防止柵1の転倒を抑止させるモーメントM2が発生させることが可能になり、雪崩防止柵1の転倒を効果的に防ぎ、その結果、雪崩を防止できる。
【0067】
また、法面S1上の雪A1の荷重を利用して雪崩防止柵1の転倒を防止するので、台座部2を法面S1の地盤Gに固定するためのアンカーボルトBなどの固定手段の数を減らし簡易かつ安価なものを採用できるので、施工が大幅に容易になる。
【0068】
(2)
この雪受け部4は、台座部2の谷側端部2bから立ち上がっているので、台座部2における支柱3よりも山側の部分2cが最も広くなり、台座部2の上に積もる雪の荷重を十分生かして転倒防止効果を向上させることができる。
【0069】
(3)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cに設けられた食い込み部6が法面S1に向けて突出し、法面S1の地盤Gに食い込むことによって、法面S1上の雪A1が支柱3の間の雪受け部4に力を付与した場合に、雪崩防止柵1が法面S1の表面に沿って谷側へずれることを防止する。それとともに、食い込み部6と法面S1の地盤Gとの間の摩擦抵抗によって、雪崩防止柵1の転倒を抑止するモーメントM2がさらに増大するので、雪崩防止柵1の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0070】
(4)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、食い込み部6は、台座部2の山側端部2aにおいて法面S1に向けて突出するように設けられているので、台座部2において支柱3から最も離れた位置に配置され、食い込み部6によって発生する転倒抑止モーメントM2は最も大きくなり、その結果、転倒防止効果が向上する。
【0071】
(5)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cにおいて当該台座部2の幅方向に沿って延び、雪受け部4よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部7をさらに備えているので、台座部2の支柱3よりも山側の部分2cに設けられた雪載せ部7に法面S1上の雪A1が載ることにより、雪崩防止柵1の転倒を抑止するモーメントM2がさらに増大するので、雪崩防止柵1の転倒をより効果的に防止することが可能になる。
【0072】
(6)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、雪載せ部7が台座部2の山側端部2aに設けられ、台座部2において支柱3から最も離れた位置に配置されているので、雪載せ部7によって発生する転倒を抑止するモーメントM2は最も大きくなる。
【0073】
(7)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、L型の転倒抑止部材5が、食い込み部6と雪載せ部7とを一体に形成することにより構成されているので、この転倒抑止部材5をL型鋼などで容易に一体成形でき、しかも当該食い込み部6および雪載せ部7を台座部2へ取り付ける作業も容易になっている。
【0074】
(8)
また、本実施形態の雪崩防止柵1では、連結部8が、支柱3の山側側面と台座部2の当該支柱3よりも山側の部分2cとの間を連結しているので、支柱3と台座部2との間の連結がより強固になり、支柱3が折れたりしにくくなる。支柱3には、山側から雪の圧力を受けて谷側へ向かう方向へ曲げ荷重がかかるが、連結部8はこの支柱3を山側から支持することにより、連結部8には引張荷重がかかる。また、連結部8には山側からの雪圧による曲げ荷重も作用する。したがって、連結部8は、この曲げ荷重を考慮しつつ引張荷重を支えることが可能な引っ張り強度を有するように設計すればよい。
【0075】
(9)
また、本実施形態の雪崩防止構造30では、図4〜5に示されるように、法面S1の途中に形成された小段S2における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造30であって、上記のように構成された雪崩防止柵1と、台座部2を法面S1の地盤Gに固定する法面アンカーボルトSBとを備えており、雪崩防止柵1は、法面S1のうち小段S2よりも谷側において、小段S2上の雪A2と連続して当該小段S2の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されている。
【0076】
かかる構成によれば、雪崩防止柵1が、法面S1のうち小段S2よりも谷側において、小段S2上の雪A2と連続して当該小段S2の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されているので、雪崩防止柵1には、小段S2上の雪A2と連続して突出する雪の荷重が支柱3間の雪受け部4だけでなく台座部2にも分散して付与される。その結果、支柱3および雪受け部4に発生する転倒モーメントM1は、台座部2に発生する転倒抑止モーメントM2によって大幅に相殺され、転倒しにくくなり、小段S2の幅を実質的に拡大することが可能になる。
【0077】
また、図5に示されるように、小段S2と雪崩予防柵2とを組み合わせることにより、小段のない法面上に雪崩防止柵1を単独で設ける場合と比較して、雪崩防止柵1の高さを低くしても、支柱3および雪受け部4の上端部において谷側へ突出する雪、すなわち、雪庇が生じにくくなり、雪崩防止効果が大幅に向上する。
【0078】
(10)
また、本実施形態の雪崩防止構造31では、図6に示されるように、台座部2が、当該台座部2の山側端部2aが小段S2の表面沿って延長して延びる延長部分21を有しており、延長部分21を小段S2の地盤Gに固定する小段アンカーボルトFBをさらに備えており、延長部分21が、小段アンカーボルトFBにより、小段S2の地盤Gに固定されている。この構成では、台座部2の山側に延びる延長部分21が、小段S2表面まで延びて小段アンカーボルトFBによって小段S2の地盤Gに固定されているので、容易かつ確実に小段S2の地盤Gに固定することができる。
【0079】
しかも、この延長部分21の上には小段S2上の雪A2の荷重がかかり、転倒抑止モーメントM2がさらに増大するので、雪崩防止柵1はさらに転倒しにくくなる。
【0080】
(変形例)
なお、雪受け部4は、本実施形態では、図1〜3に示されるように、支柱3の間に、丸鋼などからなる複数の梁材11、12が間隔をあけて水平方向に配置されたものが採用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、法面S1上の雪A1を受け止めることができる構成であれば、他の構成の雪受け部を採用してもよい。
【0081】
例えば、図7に示される雪受け部40は、支柱3の間に、複数のワイヤロープ41が間隔をあけて水平方向に配置されるとともに当該支柱3にワイヤグリップなどで固定され、それらのワイヤロープ41に金網42が固定されることにより構成されている。このような構成の雪受け部40の場合、金網42によって小さな雪の塊も保持できる。また、雪崩防止柵の上端部には、法面S1に沿って山側から受ける雪圧だけでなく柵の上端部よりも上方に堆積する雪による荷重(図4の垂直荷重F2参照)も作用して大きな荷重がかかる。そこで、柵の上端部を補強するために、図7に示される雪崩防止柵では、補強用の梁材49が支柱3の上端部の間に設けられている。梁材49は、丸パイプ、H型鋼、角型鋼などの曲げ強度の高い部材で製造される。
【0082】
さらに、図8に示される雪受け部43は、支柱3の間に、鋼管などを縦横に組み合わせた梯子状部材44を複数台設け、各梯子状部材44の端部を支柱3に固定することにより構成されている。この梯子状部材44は、支柱3の間に橋渡しされる一対の梁材44aと、当該梁材44aの間を所定間隔で連結する縦材44bとを備えている。このような構成の雪受け部43の場合、水平方向に延びる梁材44a同士が、縦材44bによって結合されているので、雪受け部43全体の強度が向上する。また、梁材44aの間の隙間が縦材44bによって小さく分割されるので、小さな雪の塊も保持できる。この図8に示される雪崩防止柵についても、図7と同様に、柵の上端部を補強するために支柱3の上端部の間に補強用の梁材49を設けてもよい。なお、梯子状部材44によって雪崩防止柵全体の強度が十分ある場合は、梁材49を設けずに、支柱3の頭部を梯子上部材44の上端と同じ高さにしてもよい。
【0083】
また、図9に示される雪受け部45は、支柱3の間に、細かい目の格子状のグレーチングパネル46を複数枚設けることにより構成されている。グレーチングパネル46は、鋼材などで製造され、強度が強く、しかも水はけも良い。グレーチングパネル46を用いた場合、十分な強度が得られるとともに、隙間が小さいので小さな雪の塊も保持できる。この図9に示される雪崩防止柵についても、図7と同様に、柵の上端部を補強するために支柱3の上端部の間に補強用の梁材49を設けてもよい。なお、グレーチングパネル46によって雪崩防止柵全体の強度が十分ある場合は、梁材49を設けずに、支柱3の頭部を梯子上部材44の上端と同じ高さにしてもよい。
【0084】
また、上記グレーチングパネル46と同様に、図10に示される雪受け部47は、支柱3の間に、小さい穴が多数開けられた金属板からなるパンチングメタル48を複数枚設けることにより構成されている。パンチングメタル48は、鋼材などで製造され、強度が強く、しかも水はけも良い。パンチングメタル48を用いた場合、十分な強度が得られるとともに、隙間が小さいので小さな雪の塊も保持できる。この図10に示される雪崩防止柵についても、図7と同様に、柵の上端部を補強するために支柱3の上端部の間には、補強用の梁材49を設けてもよい。なお、パンチングメタル48によって雪崩防止柵全体の強度が十分ある場合は、梁材49を設けずに、支柱3の頭部を梯子上部材44の上端と同じ高さにしてもよい。
【0085】
また、図示されていないが、パンチングメタルの代わりにエキスパンドメタルを用いてもよい。エキスパンドメタルは、薄板鋼板に短いスリットを多数形成し、その鋼板を両端から引っ張ることによりスリットの開口を拡大させることによって、製造される。このようなエキスパンドメタルを用いても、十分な強度が得られるとともに、隙間が小さいので小さな雪の塊も保持できる。
【0086】
上記実施形態の図6に示される雪崩防止構造31では、1基の雪崩防止柵を固定する方法として、台座部2の延長部分21を小段S2上で小段アンカーボルトFBによって固定する例が示されているが、本発明は1基の雪崩防止柵に限定するものではなく、斜面の上下方向に沿って2基以上の雪崩防止柵を固定するようにしてもよい。
【0087】
例えば、本発明の変形例として、図11〜12に示される雪崩防止構造51のように、積雪深さが浅く、雪崩柵工の規模が小さく、かつ、法面S1が軟弱な現場では、法面S1の上下方向に沿って台座部2を延長して2基の雪崩防止柵1を連結してもよい。すなわち、法面S1の上下方向に沿って並べて設置される2基の雪崩防止柵1は、法面S1の上下方向に沿って延びる台座部2を共有している。台座部3の上の所定の位置には、それぞれの雪崩防止柵1の支柱3が立設され、さらに支柱3の間には雪受け部4が設けられている。台座部2は、法面アンカーボルトSB1によって法面S1に固定されている。法面アンカーボルトSB1は、支柱3よりも山側の位置にそれぞれ配置される。また、図11〜12の雪崩防止柵1においても、台座部2の山側端部が小段S2の表面に沿って延長して延びる延長部分21を有し、当該延長部分21がL型の転倒抑止部材5とともに小段アンカーボルトFBによって小段S2の地盤Gに固定されている。このような構造により、1つの小段S2に埋め込まれた小段アンカーボルトFBを利用して複数段の雪崩防止柵1を一括して法面上に固定することが可能になる。
【0088】
また、図13に示される本発明の他の変形例に係る雪崩防止構造52のように、複数段の雪崩防止柵1の台座部3を延長して共通化する代わりに各雪崩防止柵1の台座部3同士を法面S1の上下方向に沿って延びる連結材53によって連結するようにしてもよい。連結材53は、例えば、ワイヤロープや棒状の鋼材などからなる。また、最上段の雪崩防止柵1の台座部3は、小段S2上に埋め込まれたL型の転倒抑止部材5に対して、連結材54およびブラケット55を介して連結されている。連結材54は、連結材53と同様に、ワイヤロープや棒状の鋼材などからなる。L型の転倒抑止部材5および連結ブラケット55は、小段アンカーボルトFBによって小段S2の地盤Gに固定されている。このような図13に示される構造においても、1つの小段S2に埋め込まれた小段アンカーボルトFBを利用して複数段の雪崩防止柵1を一括して法面上に固定することが可能になる。しかも、図13に示される構造では、平板状の台座部3の長さが短くて済むので、法面S1の凹凸などに影響を受けにくい。すなわち、雪崩防止柵1の設置について法面S1の状態による制限が少なく、その分設置自由度が向上する。
【符号の説明】
【0089】
1 雪崩防止柵
2 台座部
2a 山側端部
2b 谷側端部
2c 山側の部分
2d 谷側の部分
3 支柱
4、43、45、47 雪受け部
5 転倒抑止部材
6 食い込み部
7 雪載せ部
8 連結部
21 延長部分
30、31、51、52 雪崩防止構造
S1 法面
S2 小段
A1 法面上の雪
A2 小段上の雪
F1 法面上の雪が法面に沿って雪崩防止柵を押す力
F2 法面上の雪の荷重
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面における雪崩の発生を防止する雪崩防止柵であって、
法面に設置可能な形状を有し、かつ、山側端部および谷側端部を有し、当該山側端部が前記法面の山側に配置され、当該谷側端部が前記法面の谷側に配置される台座部と、
前記台座部から立ち上がっている複数の支柱と、
前記支柱の間に架設され、当該支柱の間で雪を受けることが可能な形状を有する雪受け部と、
を備えており、
前記支柱は、前記台座部の山側端部よりも谷側端部に近い位置に配置されており、
前記台座部における前記支柱よりも山側の部分は、雪を載せることが可能な形状を有する、
ことを特徴とする雪崩防止柵。
【請求項2】
前記支柱は、前記台座の谷側端部から立ち上がっている、
請求項1に記載の雪崩防止柵。
【請求項3】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において前記法面に向けて突出するように設けられ、前記法面の地盤に食い込むことが可能な形状を有する食い込み部をさらに備えている、
請求項1または2に記載の雪崩防止柵。
【請求項4】
前記食い込み部は、前記台座部の山側端部において前記法面に向けて突出するように設けられている、
請求項3に記載の雪崩防止柵。
【請求項5】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において当該台座部の幅方向に沿って延び、前記支柱よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部をさらに備えている、
請求項1から4のいずれかに記載の雪崩防止柵。
【請求項6】
前記雪載せ部は、前記台座部の山側端部において当該台座部の幅方向に沿って延びる、
請求項5に記載の雪崩防止柵。
【請求項7】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において前記法面に向けて突出するように設けられ、前記法面の地盤に食い込むことが可能な形状を有する食い込み部と、
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において当該台座部の幅方向に沿って延び、前記支柱よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部と
をさらに備えており、
前記食い込み部と前記雪載せ部とが一体に形成されている、
請求項1または2に記載の雪崩防止柵。
【請求項8】
前記支柱の山側側面と前記台座部の当該支柱よりも山側の部分との間を連結する連結部をさらに備えている、
請求項1から7のいずれかに記載の雪崩防止柵。
【請求項9】
法面の途中に形成された小段における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造であって、
請求項1から8のいずれかに記載の雪崩防止柵と、
前記台座部を前記法面の地盤に固定する法面固定手段と
を備えており、
前記雪崩防止柵は、前記法面のうち前記小段よりも谷側において、前記小段上の雪と連続して当該小段の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されている、
ことを特徴とする雪崩防止構造。
【請求項10】
前記台座部は、当該台座部の山側端部が前記小段の表面沿って延長して延びる延長部分を有しており、
前記延長部分を前記小段の地盤に固定する小段固定手段をさらに備えており、
前記延長部分が、前記小段固定手段により、前記小段の地盤に固定される、
請求項9記載の雪崩防止構造。
【請求項1】
法面における雪崩の発生を防止する雪崩防止柵であって、
法面に設置可能な形状を有し、かつ、山側端部および谷側端部を有し、当該山側端部が前記法面の山側に配置され、当該谷側端部が前記法面の谷側に配置される台座部と、
前記台座部から立ち上がっている複数の支柱と、
前記支柱の間に架設され、当該支柱の間で雪を受けることが可能な形状を有する雪受け部と、
を備えており、
前記支柱は、前記台座部の山側端部よりも谷側端部に近い位置に配置されており、
前記台座部における前記支柱よりも山側の部分は、雪を載せることが可能な形状を有する、
ことを特徴とする雪崩防止柵。
【請求項2】
前記支柱は、前記台座の谷側端部から立ち上がっている、
請求項1に記載の雪崩防止柵。
【請求項3】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において前記法面に向けて突出するように設けられ、前記法面の地盤に食い込むことが可能な形状を有する食い込み部をさらに備えている、
請求項1または2に記載の雪崩防止柵。
【請求項4】
前記食い込み部は、前記台座部の山側端部において前記法面に向けて突出するように設けられている、
請求項3に記載の雪崩防止柵。
【請求項5】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において当該台座部の幅方向に沿って延び、前記支柱よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部をさらに備えている、
請求項1から4のいずれかに記載の雪崩防止柵。
【請求項6】
前記雪載せ部は、前記台座部の山側端部において当該台座部の幅方向に沿って延びる、
請求項5に記載の雪崩防止柵。
【請求項7】
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において前記法面に向けて突出するように設けられ、前記法面の地盤に食い込むことが可能な形状を有する食い込み部と、
前記台座部の前記支柱よりも山側の部分において当該台座部の幅方向に沿って延び、前記支柱よりも山側に積もる雪を載せることが可能な形状を有する雪載せ部と
をさらに備えており、
前記食い込み部と前記雪載せ部とが一体に形成されている、
請求項1または2に記載の雪崩防止柵。
【請求項8】
前記支柱の山側側面と前記台座部の当該支柱よりも山側の部分との間を連結する連結部をさらに備えている、
請求項1から7のいずれかに記載の雪崩防止柵。
【請求項9】
法面の途中に形成された小段における雪崩の発生を防止する雪崩防止構造であって、
請求項1から8のいずれかに記載の雪崩防止柵と、
前記台座部を前記法面の地盤に固定する法面固定手段と
を備えており、
前記雪崩防止柵は、前記法面のうち前記小段よりも谷側において、前記小段上の雪と連続して当該小段の谷側へ突出する雪を受けることができるような位置に設置されている、
ことを特徴とする雪崩防止構造。
【請求項10】
前記台座部は、当該台座部の山側端部が前記小段の表面沿って延長して延びる延長部分を有しており、
前記延長部分を前記小段の地盤に固定する小段固定手段をさらに備えており、
前記延長部分が、前記小段固定手段により、前記小段の地盤に固定される、
請求項9記載の雪崩防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−184593(P2012−184593A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48650(P2011−48650)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(506044627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(506044627)
【Fターム(参考)】
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