説明

雲の含水率を決定する方法

【課題】雲の含水率を決定する方法を提供する。
【解決手段】雲の含水率は、雲の水滴サイズ分布から導出される。雲の水滴のサイズ分布を決定する方法は、雲の深さを電磁放射ビームによりサンプリングすることと、雲から戻った電磁放射のエコー強度を検出器により測定することと、測定エコー強度から測定光減衰係数を決定することと、測定エコー強度から測定後方散乱係数を決定することと、測定光減衰係数及び測定後方散乱係数からライダー比を決定することと、ライダー比から水滴の形状パラメータ(μ)及びメジアン体積径(DMVD)を含む値ペアを決定することと、値ペア(μ,DMVD)を使用して水滴のサイズ分布を決定することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雲の含水率を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雲の含水率(liquid water content(LWC))は雲の種類に基づいて変化し、異なる雲形成及び天気事象につながり得る。また、異なるLWCを有する雲及び関連する水滴サイズ分布は、翼のような航空機の外部に氷が形成されるリスクも異なることを表し得る。したがって、雲のLWCを知ることは航空安全上重要である。雲のLWCは様々な方法で推定することができる。例えば、いくつかの既存の方法は単に、雲の水滴サイズ分布を調べる予備的リサーチに基づいて有効水滴径を仮定する。しかし、かかる仮定はLWCの推定に著しい誤差を導入し得る。より正確なLWCの推定は、LWCを推定するために必要なパラメータを与えるべく互いに組み合わせられて機能する複数の検出装置を使用することで達成できる。より正確である一方、複数のセンサの使用は、これに付随するシステム複雑性の増大により高価となることが多い。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、一側面において、雲のLWCを推定する方法が記載される。いくつかの実施例では、雲のLWCが、当該雲の水滴のサイズ分布から導出される。したがって、本明細書では、他側面において、雲の水滴のサイズ分布を決定する方法が記載される。
【0004】
いくつかの実施例では、雲の水滴のサイズ分布を決定する方法は、当該雲の深さを電磁放射ビームによりサンプリングすることと、当該雲から戻った電磁放射のエコー強度を検出器により測定することと、測定エコー強度から測定光減衰係数を決定することと、測定エコー強度から測定後方散乱係数を決定することと、当該測定光減衰係数及び当該測定後方散乱係数からライダー比を決定することとを含む。水滴の形状パラメータ(μ)及びメジアン体積径(DMVD)を含む値ペアがライダー比から決定され、水滴のサイズ分布(n(D))が値ペア(μ,DMVD)を使用して決定される。水滴のサイズ分布が有効水滴径(Deff)を決定するべく使用された後、当該Deffを使用して雲のLWCが決定される。
【0005】
いくつかの実施例では、ライダー比から複数の値ペア(μ,DMVD)が決定され、当該値ペアを使用して複数の水滴サイズ分布が決定される。
【0006】
複数の水滴サイズ分布が決定されるいくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、当該複数の水滴サイズ分布から複数の計算光減衰係数を与えることと、当該計算光減衰係数を当該測定光減衰係数と対比することとを含む。いくつかの実施例では、測定光減衰係数を最も厳密に近似する計算光減衰係数と関連付けられた水滴サイズ分布が選択されて、この選択された水滴サイズ分布から有効水滴径(Deff)が決定される。その後、当該Deffを使用して雲のLWCが決定される。
【0007】
複数の水滴サイズ分布が決定されるいくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、当該複数の水滴サイズ分布から計算後方散乱係数を与えることと、当該計算後方散乱係数を当該測定後方散乱係数と対比することとを含む。いくつかの実施例では、測定後方散乱係数を最も厳密に近似する計算後方散乱係数と関連付けられた水滴サイズ分布が選択されて、この選択された水滴サイズ分布から有効水滴径(Deff)が決定される。その後、当該Deffを使用して雲のLWCが決定される。
【0008】
これら及び他の実施例が、以下の詳細な説明にて一層詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本明細書に記載の方法のいくつかの実施例で有用なグラフを含むルックアップテーブルを示す。
【図2】本明細書に記載の方法のいくつかの実施例で有用なグラフを含むルックアップテーブルを示す。
【図3】本明細書に記載の方法の一実施例を示すフローチャートである。
【図4】本明細書に記載の方法の一実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明及び図面を参照することにより、本明細書に記載の実施例が容易に理解できる。しかし、本明細書に記載の要素、装置、及び方法は、詳細な説明及び図面に記載の具体的な実施例に限定されない。これらの実施例は、本発明の原理の単なる説明であると認識すべきである。当業者にとって、本発明の要旨及び範囲を逸脱することなく多くの修正及び適応が容易に想到される。
【0011】
一側面では、雲のLWCを推定する方法が本明細書に記載される。いくつかの実施例では、雲のLWCが、当該雲の水滴のサイズ分布から導出される。したがって、他側面では、雲の水滴のサイズ分布を決定する方法が本明細書に記載される。
【0012】
いくつかの実施例では、雲の水滴のサイズ分布を決定する方法は、当該雲の深さを電磁放射ビームによりサンプリングすることと、当該雲から戻った電磁放射のエコー強度を検出器により測定することと、測定エコー強度から測定光減衰係数を決定することと、測定エコー強度から測定後方散乱係数を決定することと、当該測定光減衰係数及び当該測定後方散乱係数からライダー比を決定することとを含む。水滴の形状パラメータ(μ)及びメジアン体積径(DMVD)を含む値ペアがライダー比から決定され、水滴のサイズ分布(n(D))が値ペア(μ,DMVD)を使用して決定される。水滴のサイズ分布が有効水滴径(Deff)を決定するべく使用された後、当該Deffを使用して雲のLWCが決定される。
【0013】
いくつかの実施例では、ライダー比から複数の値ペア(μ,DMVD)が決定され、当該値ペアを使用して複数の水滴サイズ分布が決定される。
【0014】
複数の水滴サイズ分布が決定されるいくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、当該複数の水滴サイズ分布から複数の計算光減衰係数を与えることと、当該計算光減衰係数を当該測定光減衰係数と対比することとを含む。いくつかの実施例では、測定光減衰係数を最も厳密に近似する計算光減衰係数と関連付けられた水滴サイズ分布が選択されて、この選択された水滴サイズ分布からDeffが決定される。その後、当該Deffを使用して雲のLWCが決定される。
【0015】
複数の水滴サイズ分布が決定されるいくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、当該複数の水滴サイズ分布から計算後方散乱係数を与えることと、当該計算後方散乱係数を当該測定後方散乱係数と対比することとを含む。いくつかの実施例では、測定後方散乱係数を最も厳密に近似する計算後方散乱係数と関連付けられた水滴サイズ分布が選択されて、この選択された水滴サイズ分布からDeffが決定される。その後、当該Deffを使用して雲のLWCが決定される。
【0016】
ここで、本明細書に記載の方法の具体的なステップに戻ると、本明細書に記載の方法は、雲の深さを電磁放射によりサンプリングすることを含む。雲は、本発明の目的に相反しない任意の深さまで電磁放射によりサンプリングすることができる。いくつかの実施例では、雲は、当該雲が均質又は実質的に均質である距離よりも大きくない深さまでサンプリングされる。いくつかの実施例では、雲は約30メートル(m)に至るまでの深さまでサンプリングされる。いくつかの実施例では、雲は約20mに至るまでの深さまでサンプリングされる。
【0017】
電磁放射ビームは、本発明の目的に相反しない任意のビームを含むことができる。いくつかの実施例では、電磁放射ビームは、レーザから放出されるビームを含む。いくつかの実施例では、レーザビームは偏光される。いくつかの実施例では、レーザビームは円偏光される。いくつかの実施例では、レーザビームは、パルスレーザビーム又は連続波レーザビームを含む。いくつかの実施例では、連続波レーザビームはチョッピングされる。さらに、いくつかの実施例では、電磁放射ビームは発光ダイオードから放出される。
【0018】
電磁放射ビームは、本発明の目的に相反しない任意の波長分布を含む。例えば、いくつかの実施例では、当該ビームは単色又は実質的に単色のビームである。いくつかの実施例では、電磁放射ビームは、電磁スペクトルの赤外(IR)領域の波長を有する。いくつかの実施例では、電磁放射ビームは、当該スペクトルの近赤外(NIR)領域の波長を有する。いくつかの実施例では、電磁放射ビームは、当該スペクトルの可視領域の波長を有する。いくつかの実施例では、電磁放射ビームは、当該スペクトルの紫外(UV)領域の波長を有する。電磁放射ビームは、いくつかの実施例では、水に吸収されること又は実質的に吸収されることがない波長を有する。いくつかの実施例では、電磁放射ビームは、水に吸収されない光窓に落ちる一以上の波長を有する。いくつかの実施例では、例えば、電磁放射ビームは約905nmの波長を有する。
【0019】
さらに、電磁放射ビームは、本発明の目的に相反しない任意のパワーを有することができる。いくつかの実施例では、電磁放射ビームは、mWから数十mWの強度を有する。
【0020】
いくつかの実施例では、電磁放射ビームは較正ビームを含む。較正ビームは、いくつかの実施例では、較正エコー強度の測定ができる程度に十分周知の及び/又は安定した特徴を有する。較正エコー強度は、いくつかの実施例では、W/cmのような放射測定単位で測定されたエコー強度を言及する。これは、(例えば他の測定と相対的な)無次元単位とは対照的である。電磁放射ビームの較正及び較正エコー強度の測定は、ビーム強度、(送信及び受信双方の)光学縦列全体の伝達効率、検出器感度、及び、ビーム源が配置されるハウジングの外部窓の伝達特性を含む一以上の考慮に依存し得る。
【0021】
本明細書に記載のとおり、雲から戻った電磁放射のエコー強度は、検出器によって測定される。エコー強度の測定には、本発明の目的に相反しない任意の検出器が使用される。いくつかの実施例では、検出器は半導体光検出器を含む。いくつかの実施例では、検出器は、光ダイオードアレイのような光ダイオードを含む。光ダイオードは、いくつかの実施例では、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、インジウムガリウム砒素(InGaAs1−x)、硫化鉛(II)(PbS)、及びこれらの組み合わせの一以上を含む。いくつかの実施例では、検出器は少なくとも一の感光性要素、及び当該少なくとも一の感光性要素の出力を処理する一以上の回路を含む。当該一以上の回路は、いくつかの実施例では、フィルタリング回路及び/又は増幅回路を含む。いくつかの実施例では、検出器は較正エコー強度の測定を目的として較正される。
【0022】
雲から戻った電磁放射のエコー強度を検出器により測定することは、本発明の目的に相反しない任意の態様で実行し得る。いくつかの実施例では、例えば、エコー強度はレンジ分解スライスに解析される。レンジ分解スライスは、本発明の目的に相反しない任意の厚さを有することができる。いくつかの実施例では、レンジ分解スライスは約5m以下の厚さを有する。いくつかの実施例では、レンジ分解スライスは1m以下の厚さを有する。
【0023】
いくつかの実施例では、レンジRから受信されたエコー強度は次式により記載することができる。
【数1】

ここで、Kは(ビーム源のアパチャサイズ、ビーム強度、及び当該ビーム源の光学系の伝達効率のような)機器パラメータに依存する定数、G(R)は検出器の幾何学形状関数、βは後方散乱係数(単位m−1sr−1)、及びαは光減衰係数(単位m−1)である。
【0024】
いくつかの実施例では、雲の深さをサンプリングすること及びエコー強度を測定することが一の装置により行われる。いくつかの実施例では、雲の深さをサンプリングすること及びエコー強度を測定することを目的として使用される装置は航空機に接続される。いくつかの実施例では、雲の深さをサンプリングすること及びエコー強度を測定することは、当該航空機の飛行中に行われる。
【0025】
いくつかの実施例では、本明細書に記載される雲の深さをサンプリングすること及びエコー強度を測定することを目的とする適切な装置は、米国特許第7,986,408号明細書に記載され、その全体が本明細書に参照として組み入れられる。いくつかの実施例では、雲の深さをサンプリングすること及びエコー強度を測定することは、一を超える装置により行われる。雲の深さをサンプリングするべく及びエコー強度を測定するべく使用される一以上の装置は、いくつかの実施例では、雲の水滴サイズ分布及び/又はLWCを決定することに加え、雲についての他の情報を得るべく使用することができる。
【0026】
本明細書に記載の方法は、測定エコー強度から測定光減衰係数(α)を決定することを含む。測定光減衰係数を決定することは、本発明の目的に相反しない任意の態様で行うことができる。いくつかの実施例では、測定エコー強度は時間依存の減衰を表す。したがって、測定エコー強度から測定光減衰係数を決定することは、当該測定エコー強度を既知の減衰曲線にフィッティングすることを含み得る。減衰曲線は、いくつかの実施例では、指数減衰曲線である。
【0027】
さらに、本明細書に記載の方法は、測定エコー強度から測定後方散乱係数を決定することを含む。測定後方散乱係数を決定することは、本発明の目的に相反しない任意の態様で行うことができる。いくつかの実施例では、例えば、測定後方散乱係数は、正規化されたレンジ修正エコー強度から決定される。正規化されたレンジ修正エコー強度は、上記式(1)から導出される次式により記載することができる。
【数2】

その結果、後方散乱係数は次式により記載することができる。
【数3】

ここで、αは測定光減衰係数である。上述のいくつかの実施例では、雲は、当該雲の組成が均質とみなされる深さにわたってサンプリングされる。その結果、α及びβは、大規模な雲調査を行う宇宙ベースの及び地球のライダーの場合のようにRの関数とはならない。いくつかの実施例では、レンジ分解スライスのエコー強度から複数の測定後方散乱係数が決定されて平均化される。これにより、平均測定後方散乱係数及び対応する当該測定後方散乱係数の標準偏差が与えられる。いくつかの実施例では、式(3)から当該複数の測定後方散乱係数が決定される。ここで、N(R)は、レンジ分解スライスのエコー強度を表す。
【0028】
ひとたび測定光減衰係数及び測定後方散乱係数が決定されると、次式によりライダー比(S)が計算される。
【数4】

いくつかの実施例では、βは一の測定値又は平均測定値である。
【0029】
ライダー比により、水滴の形状パラメータ(μ)及びメジアン体積径(DMVD)を含む値ペアが決定される。値ペア(μ,DMVD)の決定は、本発明の目的に相反しない任意の態様で実行することができる。いくつかの実施例では、値ペアの決定は、ルックアップテーブルの使用を含む。いくつかの実施例では、ルックアップテーブルは、表及び/又はグラフを含む。当該表及び/又はグラフは、いくつかの実施例では、形状パラメータ(μ)の選択値を伴う水滴サイズのガンマ分布に対するメジアン体積径の関数として理論ライダー比の曲線を含む。かかるプロットは、例えば、O’Connor, H. J.; Illingworth, A. J.; and Hogan, R. J., “A technique for auto calibration of cloud lidar, “ Journal of Atmospheric and Oceanic Technology, 2004, 21 (5), pp. 777-786に記載され、その全体が本明細書に参照として組み入れられる。
【0030】
図1は、本明細書に記載のいくつかの実施例でルックアップテーブルとして有用なグラフを示す。式(4)から決定されたライダー比(S)において当該グラフを横切る水平線を引くことにより、当該ルックアップテーブルから値ペア(μ,DMVD)が決定される。当該水平線と、水滴メジアン体積径の関数としての理論ライダー比曲線との交点がDMVDを与える。μは、図1の曲線の生成を目的としてμに割り当てられる所定値により既知である。例えば、図1では、ライダー比(S)は式(4)により31と決定される。S=31における直線が図1のグラフを横切って引かれて、当該曲線と3.3μmにおいて交差する。したがって、値3.3μmがDMVDに割り当てられる。μには、当該曲線がμ=2により生成されたので値2が割り当てられる。したがって、値ペアは(2,3.3μm)となる。
【0031】
いくつかの実施例では、図1に示すグラフのようなグラフから非グラフ的なルックアップテーブルを導出することができる。ルックアップテーブルは、μの設定値から導出された曲線との一の又は複数の交点に基づいて、Sの各値に対する複数のDMVD値を含み得る。本明細書においてさらに記載するように、グラフは、複数の設定値μに基づく複数の曲線を含み得る。したがって、Sの値当たり一を超過するDMVDの値が可能となる。
【0032】
値ペア(μ,DMVD)の決定により、雲の水滴に対するサイズ分布n(D)の決定が可能となる。本明細書に記載の方法のいくつかの実施例では、水滴サイズ分布は次式により決定される。
【数5】

ここで、nは、単位水滴径当たりの水滴数濃度(m−3μm−1)である。いくつかの実施例では、nは測定される。いくつかの実施例では、nは次式により決定される。
【数6】

【0033】
いくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、n(D)を使用して有効水滴径(Deff)を決定することを含む。いくつかの実施例では、Deffは次式により決定される。
【数7】

ここで、n(D)は水滴サイズ分布である。
【0034】
本明細書に記載の方法はさらに、雲の含水率(LWC)を決定することを含む。いくつかの実施例では、雲のLWCはDeffを使用して決定される。いくつかの実施例では、LWCは次式により決定される。
【数8】

ここで、ρは水の密度であり、αは光減衰係数である。
【0035】
雲の水滴サイズ分布を決定する本明細書に記載の方法は、一の値ペア又は一のサイズ分布を決定することに限定されない。いくつかの実施例では、本明細書に記載の方法は、複数の値ペア(μ,DMVD)をライダー比から決定することと、複数の水滴サイズ分布を値ペア(μ,DMVD)を使用して決定することとを含む。複数の値ペアは、表及び/又はグラフを含むルックアップテーブルを使用する一の値ペアを目的として本明細書に記載されたものに合致する態様で決定することができる。
【0036】
図2は、本明細書に記載のいくつかの実施例でルックアップテーブルとして有用なグラフを示す。図2に示すようにグラフは、2つの異なるμの値により決定された2つの曲線を含む。実線の曲線はμ=2により決定され、点線の曲線はμ=10により決定される。一実施例では、Sは式4により値31が割り当てられる。図1と同様に、S=31においてグラフを横切って水平線が引かれる。水平線(S=31)は、実線の曲線(μ=2)と3.3μmにおいて交差し、(2,3.3μm)の値ペア(μ,DMVD)が与えられる。水平線(S=31)はまた、点線の曲線(μ=10)と1.7μmにおいて交差し、値ペア(10,1.7μm)が与えられる。いくつかの実施例では、ルックアップテーブルのグラフは、複数の値ペアを与えるべくS値との交差が可能な任意の所望数の曲線を含むことができる。
【0037】
さらに、いくつかの実施例では、複数の値ペアには、グラフの一の曲線を与えることができる。図2はさらに、Sが式(4)により値20を割り当てられて水平線が当該グラフを横切って引かれる一実施例を示す。水平線(S=20)は、実線の曲線(μ=2)と当該曲線の平坦領域に沿って交差し、一の曲線(μ=2)に対して複数の値ペア(2,DMVD)をもたらす複数の値が与えられる。水平線(S=20)はまた、点線(μ=10)と当該曲線の平坦領域に沿って交差し、一の曲線(μ=10)に対して複数の値ペア(10,DMVD)をもたらす複数のDMVD値が与えられる。
【0038】
いくつかの実施例では、図2に示すグラフのようなグラフから非グラフ的なルックアップテーブルを導出することができる。ルックアップテーブルは、μの設定値から導出された曲線との交点に基づいてSの各値に対する複数のDMVD値を含み得る。ルックアップテーブルは、本明細書における図1及び2に示す曲線に限られない。本明細書に記載の方法による操作を目的としてルックアップテーブルの所望パラメータを与えることは当業者にとって明らかである。いくつかの実施例では、ルックアップテーブルは、コンピュータ又はプロセッサに基づくシステムによる使用を目的とした電子フォーマットで与えられる。
【0039】
本発明の目的に相反しない任意の態様で当該値ペアを使用して、複数の水滴サイズ分布n(D)を決定することができる。いくつかの実施例では、水滴サイズ分布n(D)は式(5)により決定される。いくつかの実施例では、式(5)のnは測定される。いくつかの実施例では、nは式(6)により決定される。
【0040】
いくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、当該値ペアを使用して決定された複数の水滴サイズ分布n(D)から複数の計算光減衰係数を与えることを含む。計算光減衰係数は、本発明の目的に相反しない任意の態様で与えることができる。いくつかの実施例では、光減衰係数(α)は次式により与えられる。
【数9】

ここで、Qextは、同じ屈折率を有する球状水滴に対するMie理論から決定される。
【0041】
いくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、計算光減衰係数を測定光減衰係数と対比することと、測定光減衰係数を最も厳密に近似する計算光減衰係数と関連付けられた水滴サイズ分布n(D)を選択することとを含む。選択されたn(D)は、引き続き、Deff及び雲のLWCを決定するべく使用される。いくつかの実施例では、Deff及びLWCは本明細書の式(7)及び(8)により決定される。
【0042】
図3は、複数の値ペアが決定される本明細書に記載の一実施例に係る方法のフローチャートである。図3について、レーザビームを使用して雲の深さがサンプリングされる。雲から戻った電磁放射のエコー強度(P(R))が測定される。レンジRから受信されたレーザエコーの強度は本明細書の式(1)により与えられる。
【0043】
測定エコー強度P(R)から測定光減衰係数(α)が決定された後、正規化されたレンジ修正信号N(R)が式(2)によってP(R)から得られる。式(3)によって測定光減衰係数(α)及びN(R)を使用して測定後方散乱係数(β)が得られる。いくつかの実施例では、レンジ分解スライスの各々に対して測定後方散乱係数が決定され、当該後方散乱係数が平均化される。これにより、本方法のその後のステップで使用するための平均測定後方散乱係数及び関連する標準偏差が得られる。
【0044】
測定光減衰係数及び測定後方散乱係数(それぞれα及びβ)の値を決定した後、ライダー比(S)が式(4)により決定される。この決定されたライダー比(S)は後に、本明細書に記載の値ペア(μ,DMVD)を特定するべくルックアップテーブルと組み合わせて使用される。値ペア(μ,DMVD)の特定に際し、対応する水滴数濃度nが式(6)により各値ペアに対して決定されて値トリプレット(μ,DMVD,n)が与えられる。その後、式(5)により各値トリプレットに対して計算水滴サイズ分布n(D)が決定される。各計算水滴サイズ分布n(D)から、一の式(9)により計算光減衰係数(α)が決定される。
【0045】
計算光減衰係数は測定光減衰係数と対比され、測定光減衰係数を最も厳密に近似する計算光減衰係数が特定される。測定光減衰係数を最も厳密に近似する計算光減衰係数と関連付けられた水滴サイズ分布n(D)が選択されて、式(7)によりDeffを計算するべく使用される。その後、雲のLWCが式(8)により決定される。
【0046】
いくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、値ペア(μ,DMVD)を使用して決定された複数の水滴サイズ分布n(D)から複数の計算後方散乱係数を与えることを含む。計算後方散乱係数は、本発明の目的に相反しない任意の態様で与えることができる。いくつかの実施例では、計算後方散乱係数(β)は次式により与えられる。
【数10】

ここで、
【数11】

は、同じ屈折率を有する球状水滴に対するMie理論から決定される。
【0047】
いくつかの実施例では、本明細書に記載の方法はさらに、計算後方散乱係数を測定後方散乱係数と対比することと、測定後方散乱係数を最も厳密に近似する計算後方散乱係数と関連付けられた水滴サイズ分布n(D)を選択することとを含む。選択されたn(D)は引き続き、Deff及び雲のLWCを決定するべく使用される。いくつかの実施例では、Deff及びLWCは本明細書の式(7)及び(8)により決定される。
【0048】
図4は、本明細書に記載の一実施例に係る方法のフローチャートを示す。図4について、レーザビームを使用して雲の深さがサンプリングされる。雲から戻った電磁放射のエコー強度(P(R))が測定される。レンジRから受信されたレーザエコーの強度は本明細書の式(1)により与えられる。
【0049】
測定エコー強度P(R)から測定光減衰係数(α)が決定された後、正規化されたレンジ修正信号N(R)が式(2)によってP(R)から得られる。式(3)によって測定光減衰係数(α)及びN(R)を使用して測定後方散乱係数(β)が得られる。いくつかの実施例では、レンジ分解スライスの各々に対して測定後方散乱係数が決定され、当該後方散乱係数が平均化される。これにより、本方法のその後のステップで使用するための平均測定後方散乱係数及び関連する標準偏差が得られる。
【0050】
測定光減衰係数及び測定後方散乱係数(それぞれα及びβ)の値を決定した後、ライダー比(S)が式(4)により決定される。この決定されたライダー比(S)は後に、本明細書に記載の値ペア(μ,DMVD)を特定するべくルックアップテーブルと組み合わせて使用される。値ペア(μ,DMVD)の特定に際し、対応する水滴数濃度nが式(6)により各値ペアに対して決定されて値トリプレット(μ,DMVD,n)が与えられる。その後、式(5)により各値トリプレットに対して計算水滴サイズ分布n(D)が決定される。各計算水滴サイズ分布n(D)から、一の式(10)により計算後方散乱係数(β)が決定される。
【0051】
計算後方散乱係数は測定後方散乱係数と対比され、測定後方散乱係数を最も厳密に近似する計算後方散乱係数が特定される。測定後方散乱係数を最も厳密に近似する計算後方散乱係数と関連付けられた水滴サイズ分布n(D)が選択されて、式(7)により有効水滴径(Deff)を計算するべく使用される。その後、雲のLWCが式(8)により決定される。
【0052】
本明細書に記載の方法が、少なくとも部分的には、コンピュータ又はプロセッサに基づくシステムにおいて実行及び/又は実装され得ることが意図される。いくつかの実施例では、コンピュータ又はプロセッサに基づくシステムは航空機操作システムの一部である。
【0053】
本発明の様々な目的を達成する様々な実施例が記載されてきた。これらの実施例は、本発明の原理の単なる説明であると認識すべきである。当業者にとって、本発明の要旨及び範囲を逸脱することなく多くの修正及び適応が容易に想到される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雲の水滴のサイズ分布を決定する方法であって、
電磁放射ビームにより雲の深さをサンプリングすることと、
前記雲から戻った電磁放射のエコー強度を検出器により測定することと、
測定された前記エコー強度から測定光減衰係数を決定することと、
測定された前記エコー強度から測定後方散乱係数を決定することと、
前記測定光減衰係数及び前記測定後方散乱係数からライダー比を決定することと、
前記ライダー比から、前記水滴の形状パラメータ(μ)及びメジアン体積径(DMVD)を含む値ペアを決定することと、
前記値ペア(μ,DMVD)を使用して前記水滴のサイズ分布を決定することと
を含む方法。
【請求項2】
前記雲は、約30mに至るまでの深さまでサンプリングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エコー強度を測定することは、前記エコー強度をレンジ分解スライスに解析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レンジ分解スライスは約1m以下の厚さを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記後方散乱係数は、正規化されたレンジ修正エコー強度から決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の後方散乱係数が前記レンジ分解スライスの前記エコー強度から決定されて平均化され、これにより、平均測定後方散乱係数及び対応する当該測定後方散乱係数の標準偏差が与えられる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記水滴のサイズ分布は、関数:
【数1】

により決定され、nは、単位水滴径当たりの水滴数濃度(m−3μm−1)である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
は、式:
【数2】

により決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記水滴のサイズ分布を使用して有効水滴径(Deff)を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記Deffを使用して前記雲の含水率を決定することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ライダー比から複数の値ペア(μ,DMVD)を決定することと、
前記値ペア(μ,DMVD)を使用して前記水滴の複数のサイズ分布を決定することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水滴の複数のサイズ分布は関数:
【数3】

により決定され、nは、単位水滴径当たりの水滴数濃度(m−3μm−1)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
は、式:
【数4】

により決定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のサイズ分布から複数の計算光減衰係数を与えることと、
前記計算光減衰係数を前記測定光減衰係数と対比することと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記計算光減衰係数は式:
【数5】

により与えられ、Qextは、同じ屈折率を有する球状水滴に対するMie理論から決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記測定光減衰係数を最も厳密に近似する計算光減衰係数と関連付けられたサイズ分布を選択することと、
選択された前記サイズ分布を使用して有効水滴径(Deff)を決定することと
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記Deffを使用して前記雲の含水率を決定することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のサイズ分布から複数の計算後方散乱係数を与えることと、
前記計算後方散乱係数を前記測定後方散乱係数と対比することと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記計算光減衰係数は式:
【数6】

により与えられ、
【数7】

は、同じ屈折率を有する球状水滴に対するMie理論から決定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記測定後方散乱係数を最も厳密に近似する計算後方散乱係数と関連付けられたサイズ分布を選択することと、
選択された前記サイズ分布から有効水滴径(Deff)を決定することと
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項21】
前記Deffを使用して前記雲の含水率を決定することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
測定された前記エコー強度は較正された強度である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記電磁放射ビームはレーザビームを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記雲の深さをサンプリングすることと前記エコー強度を測定することとは、航空機に接続された装置により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記航空機は飛行中である、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92518(P2013−92518A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−156469(P2012−156469)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(506283927)ローズマウント・エアロスペース・インコーポレーテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】ROSEMOUNT AEROSPACE INC.
【Fターム(参考)】