説明

零相電圧監視装置、零相電圧監視機能付きの試験端子具及び零相電圧監視システム

【課題】零相電圧を監視する回路を工夫して、過電圧継電器等の動作不能時間等にも警報を鳴動できるようにすると共に、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようにする。
【解決手段】簡易OVG警報装置10は、計器用変圧器に接続される試験端子具の1対の試験端子1a,2aに取り付け可能な取り付け部材36,47と、取り付け部材36,47に接続された零相電圧監視回路10’とを備え、零相電圧監視回路10’は、計器用変圧器接続時、試験端子1a,2a間に現れる零相電圧を検出し、地絡事故発生時の検出電圧に基づき警報動作を実行するものである。警報動作時、例えば、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって、地絡事故発生時の試験端子1a,2a間に零相電圧が現れたことを確認できるので、常に、零相電圧計を注視する必要が無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電及び配電系統において、地絡事故発生時の零相電圧を監視し、当該零相電圧が整定値以上になったことを検知すると、回路遮断器等を順次遮断する送配電線保護システムに適用可能な零相電圧監視装置、零相電圧監視機能付きの試験端子具及び零相電圧監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、連系変電所の二次側(66kV回路等)の母線の地絡保護システムによれば、地絡順序遮断装置(以下BGF装置という)が備えられ、BGF装置は、一線地絡事故等により発生した地絡電圧(以下でVoという)と、連系変圧器の中性点に接続された中性点接地抵抗器(以下でNGR機器という)に流れる零相電流io(電流値)とに基づいて動作(働き)する。
【0003】
例えば、BGF装置内には過電圧継電器(OVG)と地絡過電流継電器(51G)が設けられ、零相電圧Voと零相電流i0が整定値以上になったことを検知すると、回路遮断器(CB)等を順次遮断(トリップ;順序遮断)させ、送電線や、連系変圧器、NRG機器等を保護している。しかしながら、BGF装置の点検や、取り替え、NGR機器の点検などでは、送電線保護継電器をOGVの整定値のみで動作するように変更し、零相電圧Voが整定値以上になったことを検知すると、CBをトリップして送配電線を保護しているが、連系変圧器はトリップしないため手切りで対応し、連系変圧器、NGR機器等を保護している。
【0004】
また、6kV配電線の地絡方向継電器の一次試験においては、試験対象の地絡方向継電器(67F)及び地絡後備保護継電器(10G)の両方を共にロックし、試験時間、1.5時間乃至2.0時間を要して実施される。試験実施中の線路の保護は、運転要員により、零相電圧Voの監視の下で、CBを動作させて、配電用変圧器から線路を切り離す手切り操作で対応している。
【0005】
一線地絡等の事故時に発生する零相電圧Voは、零相変圧器(GPT)等の計器用変圧器を介して測定される。零相電圧計は、配電盤等のソケット電極に嵌合可能な試験端子具(PTTテストプラグ)の試験端子に接続される。
【0006】
図11A及び図11Bは、従来例に係るPTTテストプラグ50の構成例を示す正面及びその断面図である。図11Aに示すPTTテストプラグ50は、端子本体部25、4極の試験端子1a,2a,3a,4a及び、図11Bに示す8極の接触端子1b,2b,3b,4b,1c,2c,3c,4cを有して構成される。端子本体部25は端子台部位26と板状部位27とを有している。
【0007】
図11Bに示す試験端子1a,2a,3a,4aは、端子本体部25の端子台部位26に設けられ、零相電圧計等の計器が接続可能となされている。試験端子1aは接触端子1b,1cに接続され、試験端子2aは接触端子2b,2cに接続され、試験端子3aは接触端子3b,3cに接続され、試験端子4aは接触端子4b,4cに各々接続される。
【0008】
図11Bに示す接触端子1b,2b,3b,4bは、端子本体部25の板状部位27の下面に設けられ、接触端子1c,2c,3c,4cは板状部位27の上面に設けられる。
【0009】
板状部位27は、配電盤のソケット電極に対して挿抜接続可能となされている。配電盤のソケット電極は計器用変圧器(PT)等の出力端子(二次側や三次側;Vmax=110V)に接続される。図中、11,12,13,14,21,22,23,24は電極番号である。
【0010】
ここで、図12を参照して、PTTテストプラグ50の接続例について説明する。図12は、PTTテストプラグ50と配電盤のソケット電極とを接続した部分を展開した回路図を示している。図12に示すPTTテストプラグ50によれば、電極番号11,12,21,22のターミナル及び、PTTテストプラグ50が嵌合される配電盤のソケット電極(以下でPTTソケット60という)の電極番号11,12,21,22の摺動電極を抽出している。
【0011】
図12に示す零相電圧計29は、電極番号11,21のターミナルが短絡バー5を介して短絡された試験端子1aと、電極番号12,22のターミナルが短絡バー8を介して短絡された試験端子2aとを有するPTTテストプラグ50に接続される。零相電圧計29が接続されたPTTテストプラグ50は、配電盤のPTTソケット60に嵌合(挿入)される。
【0012】
零相電圧計29の外部接続例によれば、PTTテストプラグ50を介して引き込み線in1及び送り出し線out1と、引き込み線in2及び送り出し線out2とに接続される。引き込み線in1,in2は、計器用変圧器(PT)の三次巻線に接続される。送り出し線out1、out2には、例えば、配電盤に備え付けの電圧計29’が接続される。
【0013】
この例で、引き込み線in1は、PTTソケット60の電極番号11の摺動電極に接続される。引き込み線in2は、その電極番号12の摺動電極に接続される。送り出し線out1は、PTTソケット60の電極番号21の摺動電極に接続される。送り出し線out2は、その電極番号22の摺動電極に接続される。
【0014】
PTTテストプラグ50がPTTソケット60に嵌合(挿入)されることで、電極番号11−11、電極番号12−12、電極番号21−21及び電極番号22−22のように同一の電極番号同士が接続される。電極番号11,21のターミナルを有する試験端子1aと、電極番号11の摺動電極を有する引き込み線in1と、電極番号21の摺動電極を有する送り出し線out1とが接続される。
【0015】
同様にして、電極番号12,22のターミナルを有する試験端子2aと、電極番号12の摺動電極を有する引き込み線in2と、電極番号22の摺動電極を有する送り出し線out2とが接続される。これらにより、零相電圧計29を接続したPTTテストプラグ50が計器用変圧器(PT)の三次巻線に接続されたPTTソケット60に接続される。運転要員は、零相電圧計29を監視し、零相電圧Voが検知されるか否かを監視している。
【0016】
この種の送配電システムの後備保護に関連して、特許文献1には地絡順序遮断装置(BGF装置)が開示されている。地絡順序遮断装置は、複数の回線が母線に線路開閉器を介して接続された連系変電所に備えられる。地絡順序遮断装置は、地絡事故が発生した場合、回線を順次的に遮断し、地絡事故が解消されるか否かに基づいて地絡事故の発生回線を特定する。
【0017】
地絡順序遮断装置は、線路開閉器の接続状況を示す信号を読み込むことにより、回線が系統事故に接続されているか否かを判定する。これらを前提にして、地絡順序遮断装置が系統事故に接続されている回線にのみ遮断指令を出力するようにした。このように地絡順序遮断装置を構成すると、事故回線の検出および遮断に要する時間を短縮化することができると共に、健全回線を不要に遮断することが抑制でき、地絡事故による被害を最小限に抑制できるというものである。
【0018】
一方、PTTテストプラグ50に関連して、特許文献2にはテストターミナルカバーが開示されている。テストターミナルカバーによれば、被覆部や脚部等を有するPTTターミナルや、CTTターミナル等に着脱可能なものである。被覆部は、PTTターミナル及びCTTターミナルのテストプラグ受入口を被覆する。脚部は被覆部に設けられ、テストプラグ受入口に挿入されてテストターミナルと係止可能となされている。
【0019】
被覆部は表示部、固定部及び係止手段を有している。被覆部において、表示部は、メッセージの表示及び非表示を行う。固定部は、表示部を動作可能に保持する。これらを前提にして、係止手段がメッセージの表示を行う表示位置とメッセージの非表示を行う隠蔽位置とに、表示部と固定部とを選択的に係止するようにした。このようにテストターミナルカバーを構成すると、簡単かつ確実にテストプラグ挿入についての表示及び非表示を繰り返し実行できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特表2010−074866号公報(第7頁 図4)
【特許文献2】特開2007−171750号公報(第3頁 図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、従来例に係る送配電線保護システムによれば、次のような問題がある。
i.特許文献1に見られるようなBGF装置には、零相電圧Voの発生(OVG動作)を検出して、外部警報及び表示出力する機能が備えられている。しかし、BGF装置の点検や、その取り替え等の作業を行う場合は、BGF装置を動作させてCBをトリップする機能や、外部警報及び表示出力する機能等が働かない。このため、運転要員による零相電圧Voの監視の下で、CBを動作させて、連系変圧器を線路から切り離す等の手切り操作により対応しなければならない。これにより、常に、零相電圧Voの監視を継続する必要が有り、運転要員による零相電圧Voの監視時間が長いと、監視場所を離れることができず、精神的負担が過大となってしまう。
【0022】
ii.また、BGF装置を適用した送配電線保護システムによれば、NGR機器の定格が、15秒または30秒等といった短時間であるため、地絡事故が継続して、CBの手切り操作に至るまでの時間が長くかかった場合、NGR機器の損傷を伴うことが懸念される。この点からも、地絡事故の発生を早期に運転要員に知らせる必要がある。
【0023】
iii.更に、6kV配電線の地絡継電器の一次試験においては、試験対象の地絡方向継電器(67F)及び地絡後備保護継電器(10G)の両方を共にロックし、試験時間、1.5時間乃至2.0時間を要して実施される。その試験実施中において、一線地絡等の事故が発生した場合、これらの保護継電器の機能が働かない(無い)。試験実施中に、一線地絡等の地絡事故が発生した場合、手切り操作が完了するまで、事故が継続し、公衆安全に支障を及ぼす。
【0024】
このため、地絡事故発生時、早期にCBを手切り操作する必要がある。そのためには、試験実施中、特許文献2に見られるようなPTTテストプラグに零相電圧計を接続し、運転要員による零相電圧Voの監視の下で、CBを動作させて、配電用変圧器から線路を切り離す手切り操作で対応を採るようになる。因みに、零相電圧Voについては、継続的に零相電圧計を注視(監視)していないと、地絡事故の発生を早期に検知することができない(判らない)。
【0025】
iv.特許文献2に見られるようなPTTテストプラグとBGF装置内の過電圧継電器等の外部警報及び表示出力の機能とを組み合わせて零相電圧監視手段を構成しようとした場合、単にPTTテストプラグと外部警報及び表示出力の機能とを組み合わせても、過電圧継電器の動作不能時間等に警報を鳴動させたり、警報を表示したりすることが解決されていないのが現状である。
【0026】
そこで、本発明はこのような課題を解決したものであって、零相電圧を監視する回路を工夫して、過電圧継電器等の動作不能時間等にも警報を鳴動できるようにすると共に、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようにした零相電圧監視装置、零相電圧監視機能付きの試験端子具及び零相電圧監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上述した課題を解決するために、請求項1に記載の零相電圧監視装置は、計器用変圧器に接続される試験端子具の1対の試験端子に取り付け可能な取り付け部材と、前記取り付け部材に接続された零相電圧監視回路とを備え、前記零相電圧監視回路は、計器用変圧器接続時、前記試験端子間に現れる零相電圧を検出し、地絡事故発生時の検出電圧に基づき警報動作を実行することを特徴とするものである。
【0028】
請求項1に係る零相電圧監視装置によれば、取り付け部材は、計器用変圧器の試験端子具の1対の試験端子に接続される。零相電圧監視回路は、取り付け部材に接続される。これを前提にして、零相電圧監視回路が、計器用変圧器接続時、試験端子間に現れる零相電圧を検出し、地絡事故発生時の検出電圧に基づき警報動作を実行する。
【0029】
この警報動作時、例えば、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって、地絡事故発生時の試験端子間に零相電圧が現れたことを確認できるので、常に、零相電圧計を注視する必要が無い。従って、過電圧継電器等の動作不能時間等にも警報を鳴動できるので、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようになる。
【0030】
請求項2に記載の零相電圧監視装置は、請求項1において、前記零相電圧監視回路は、前記取り付け部材を介して前記試験端子に接続され、当該試験端子間に現れる零相電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部に接続され、当該電圧検出部から出力される検出電圧と、判定基準となる閾値電圧とを比較して零相電圧の出現有無を判別する電圧判別部とを有することを特徴とするものである。
【0031】
請求項3に記載の零相電圧監視装置は、請求項2において、前記電圧判別部に接続され、当該電圧判別部から出力される判定出力電圧に基づいて鳴動音を発生する警報部を有することを特徴とするものである。
【0032】
請求項4に記載の零相電圧監視装置は、請求項2又は3において、前記電圧判別部に接続され、当該電圧判別部から出力される判定出力電圧に基づいて警報色を表示する表示部を有することを特徴とするものである。
【0033】
請求項5に記載の零相電圧監視装置は、請求項2において、前記電圧検出部及び電圧判別部が筺体部内においてモールド樹脂封止されていることを特徴とするものである。
【0034】
請求項6に記載の零相電圧監視装置は、請求項1において、前記取り付け部材には、前記試験端子具の試験端子に接続可能な爪付き端子が使用されることを特徴とするものである。
【0035】
請求項7に記載の零相電圧監視機能付きの試験端子具は、端子台部位と板状部位とを有した端子本体部と、前記端子本体部の端子台部位に設けられる共に計器が接続可能な1対の第1の端子と、前記端子本体部の板状部位に設けられると共に第1の端子に接続され、計器用変圧器に接続された出力端子に対して挿抜接続可能な1対の第2の端子と、前記第1又は第2の端子に接続された前記請求項1乃至4に記載の何れかの零相電圧監視装置とを備え、前記零相電圧監視装置が前記端子本体部内に設けられることを特徴とするものである。
【0036】
請求項7に係る計器用変圧器の試験端子具によれば、本発明に係る何れかの零相電圧監視装置が端子本体部内に備えられるので、計器用変圧器接続時、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって地絡事故発生時の第1又は第2の端子間に零相電圧が現れたことを確認できるようになる。
【0037】
請求項8に記載の零相電圧監視システムは、端子台部位と板状部位とを有した端子本体部、前記端子本体部の端子台部位に設けられる共に計器が接続可能な1対の第1の端子と、前記端子本体部の板状部位に設けられると共に前記第1の端子に接続され、計器用変圧器に接続された出力端子に対して挿抜接続可能な1対の第2の端子とを有する試験端子具と、前記試験端子具の第2の端子に接続可能な請求項1乃至6に記載の何れかの零相電圧監視装置とを備えることを特徴とするものである。
【0038】
請求項8に係る計器用変圧器の試験端子装置によれば、本発明に係る何れかの零相電圧監視装置を備え、この零相電圧監視装置が、試験端子具の第2の端子に接続可能となされているので、計器用変圧器接続時、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって、地絡事故発生時の第2の端子間に零相電圧が現れたことを確認できるようになる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る零相電圧監視装置によれば、計器用変圧器に接続される試験端子具の1対の試験端子に、取り付け可能な取り付け部材を備え、この取り付け部材には零相電圧監視回路が接続され、零相電圧監視回路は、計器用変圧器接続時、当該試験端子間に現れる零相電圧を検出し、地絡事故発生時の検出電圧に基づき、警報動作を実行するようになる。
【0040】
この構成によって、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって、地絡事故発生時の試験端子間に零相電圧が現れたことを確認できるようになる。これにより、常に、零相電圧計を注視する必要が無いので、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようになる。しかも、過電圧継電器等の動作不能時間等にも警報を鳴動できるばかりか、既設のPTTテストプラグに接続するだけなので、取り扱いが簡単で、特別な調整等が不要で使用勝手が誠に良い。
【0041】
本発明に係る零相電圧監視機能付きの試験端子具によれば、本発明に係る何れかの零相電圧監視装置が端子本体部内に備えられるので、計器用変圧器接続時、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって地絡事故発生時の第1又は第2の端子間に零相電圧が現れたことを確認できるようになる。常に、零相電圧計を注視する必要が無いので、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようになる。これにより、簡易OVG警報装置内蔵型のテストプラグを提供できるようになる。
【0042】
本発明に係る零相電圧監視システムによれば、本発明に係る何れかの零相電圧監視装置を備え、この零相電圧監視装置が、試験端子具の第1の端子に接続可能となされているので、計器用変圧器接続時、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって、地絡事故発生時の第1の端子間に零相電圧が現れたことを確認できるようになる。これにより、常に、零相電圧計を注視する必要が無いので、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようになる。しかも、既存のPTTテストプラグに簡単に接続して使用できるようにしたため、汎用性に富んでいる。また、付属する短絡バーや、リード接続方法に支障が無く従来方式と使用感が変わらない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る第1の実施形態としての簡易OVG警報装置10の概略構成例を示すブロック図である。
【図2】簡易OVG警報装置10における零相電圧監視例を示す動作フローチャートである。
【図3】(A)及び(B)は、第2の実施形態としてのPTTテストプラグ20の構成例を示す断面図である。
【図4】PTTテストプラグ20の内部構成例を示す回路図である。
【図5】送配電線保護システム100におけるPTTテストプラグ20の適用例を示す送電系統図である。
【図6】第3の実施形態としての零相電圧監視システム300における簡易OVG警報装置30の構成例を示す外観図である。
【図7】簡易OVG警報装置30の取り付け例を示す正面図である。
【図8】簡易OVG警報装置30とPTTテストプラグ50との間の接続例を示す一部破砕の断面図である。
【図9】零相電圧監視システム300の内部及び外部接続例を示す回路図である。
【図10】零相電圧監視システム300の外部接続例を示す回路図である。
【図11】(A)及び(B)は、従来例に係るPTTテストプラグ50の構成例を示す正面及びその断面図である。
【図12】PTTテストプラグ50の接続例を示す配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る零相電圧監視装置、計器用変圧器の試験端子具及びその試験端子装置について説明する。
【0045】
<第1の実施形態としての簡易OVG警報装置>
図1に示す簡易OVG警報装置10は、零相電圧監視装置の一例を構成し、取り付け部材36,47及び零相電圧監視回路10’を有して構成される。取り付け部材36,47は、計器用変圧器に接続される試験端子具(以下でPTTテストプラグ50という)の1対の試験端子1a,2aに取り付け可能なものである。取り付け部材36,47には零相電圧監視回路10’の仕様によって、単なるリード線部材が使用されたり、零相電圧監視回路10’を内蔵した簡易OVG警報装置10の自重を支持するために所定の厚みを有した平型状の導電性の支持部材が使用される。
【0046】
零相電圧監視回路10’は、例えば、プリント基板15に実装され、当該プリント基板15が取り付け部材36,47を介してPTTテストプラグ50に接続可能な構成となされている。零相電圧監視回路10’は、計器用変圧器接続時、試験端子1a,2a間に現れる零相電圧(地絡電圧)Voを検出し、地絡事故発生時の検出電圧に基づき警報動作を実行する。
【0047】
零相電圧監視回路10’の駆動電源は、外部から供給せずに、計器用変圧器の三次巻線回路(PT三次回路:Vmax=110V)より供給するようにした。零相電圧監視回路10’の動作電圧は、20V前後であり、動作電流が極力少なくなるように回路定数を設定した。因みに、既設のOVG継電器の整定値は、64V整定値:30V、ディジタル継電器整定値(固定):20Vであるので、当該簡易OVG警報装置10は十分動作する。この例では、既設のOVG整定値(30V)以下を確保して、従前の警報と遜色が無いように所要の特性を持たせた。
【0048】
零相電圧監視回路10’は、例えば、電源&電圧検出部31、電圧リミッター部32、電圧設定部33及び警報&表示部34を有して構成されている。電源&電圧検出部31は電圧検出部の一例を構成する。電源&電圧検出部31は全波整流回路31aを有している。全波整流回路31aは直流出力側の端子+,−及び、交流入力側の端子(以下で交流入力端子a1,a2という)を有している。交流入力端子a1,a2は、PTTテストプラグ50の試験端子1a,2aに対応して接続される。
【0049】
電源&電圧検出部31には、電圧判別部の一部を構成する電圧リミッター部32が接続される。電圧リミッター部32は、抵抗素子R1及びツェナーダイオードZD1を有している。抵抗素子R1の一端は全波整流回路31aの直流出力側の端子+に接続される。抵抗素子R1の他端はツェナーダイオードZD1の一端に接続される。ツェナーダイオードZD1の他端は全波整流回路31aの直流出力側の端子−に接続される。抵抗素子R1は1.0kΩ程度であり、通電時の最大電流Irmaxは85mA程度である。
【0050】
電圧リミッター部32には電圧判別部の残りの一部を構成する電圧設定部33が接続される。電圧設定部33は、ツェナーダイオードZD2を有している。ツェナーダイオードZD2の一端は、上述の抵抗素子R1とツェナーダイオードZD1との接続点に接続される。ツェナーダイオードZD1の順方向の電圧降下Vzは24V程度である。その最大動作電流Imaxは70mA程度である。ツェナーダイオードZD2の順方向の電圧降下Vzは7V程度である。その最大動作電流Imaxは135mA程度である。このように、簡単な抵抗素子R1,R2とツェナーダイオードZD1,ZD2で検出電圧の安定化回路を構成し、零相電圧監視回路10’の簡素化及び信頼性を確保している。
【0051】
電圧設定部33には、警報&表示部34が接続される。警報&表示部34は、抵抗素子R2、警報部の一例を構成する圧電ブザー34a及び、表示部の一例を構成する動作表示灯34bを有している。動作表示灯34bには発光ダイオード(LED)や、表示ランプが使用される。抵抗素子R2及び圧電ブザー34aの各々の一端は共に接続されて、上述のツェナーダイオードZD2の他端に接続される。抵抗素子R2の他端は動作表示灯34bの一端に接続される。動作表示灯34bの他端及び圧電ブザー34aの他端は共に接続されて、上述の全波整流回路31aの直流出力側の端子−に接続される。
【0052】
抵抗素子R2は3.0kΩ程度であり、通電時の最大電流Irmaxは5mA程度である。圧電ブザー34aの消費電流は8mA(12V時)、発振周波数3.0±0.5kHzである。最低動作時の電流は、駆動電圧5V時、3.3mA程度である。最大動作電流Imaxは10mAである。音圧は75dBである。圧電ブザー34aの動作時の音量を70dB程度を確保すれば、零相電圧監視回路10’から少し離れた位置に居ても、室内であれば、十分監視可能な音量である。動作表示灯34bの動作電圧は2.4〜32V程度である。最大動作電流Imaxは5mA程度である。これらにより、零相電圧監視回路10’を構成する。
【0053】
続いて、図2を参照して、簡易OVG警報装置10における零相電圧監視例について、説明する。この例では、電源&電圧検出部31は取り付け部材36,47を介してPTTテストプラグ50の試験端子1a,2aに接続され、計器用変圧器接続時の当該試験端子1a,2a間に現れる零相電圧Voを検出する場合を前提とする。簡易OVG警報装置10では、電源部と電圧検出部とが共用され、電源電圧が目標値まで、上昇した場合に、圧電ブザー34aや動作表示灯34b等が動作するように回路構成されている。
【0054】
これらを動作条件にして、図2に示すステップST1で電源&電圧検出部31は地絡事故発生時、試験端子1a,2a間に現れる零相電圧Voを検出する。このとき、整流器電圧降下(2V)+ZD2電圧(7V)+ブザー動作電圧(5V)+R1による電圧降下(9V)を越える電源電圧(零相電圧Vo=検出電圧Vx)が検出される。但し、抵抗素子R1の電圧降下(9V)は、ブザー最低電流3.3mA+LED点灯5mA通電時の値である。
【0055】
ステップST2で電圧リミッター部32は零相電圧Voと判定基準値Vthとを比較する。このとき、電圧リミッター部32は、電源&電圧検出部31から出力される検出電圧Vxと、判定基準となるツェナーダイオードZD1の順方向の電圧降下Vz1とを比較して零相電圧Voの出現有無を判別する。
【0056】
電圧設定部33ではツェナーダイオードZD2の順方向の電圧降下Vz1が判定基準値Vthとして設定される。電圧リミッター部32ではツェナーダイオードZD1の順方向の電圧降下Vz1に基づくツェナー電流Izが流れる。この通電結果で、検出電圧Vxが判定基準値Vth以下の場合は、ステップST1に戻って電源&電圧検出部31は零相電圧Voを検出する。
【0057】
ステップST2で検出電圧Vxが判定基準値Vthを越える場合は、検出電圧Vx=零相電圧Voを検出するので、ステップST3に移行して警報&表示部34が警報動作を行う。このとき、圧電ブザー34aは電圧設定部33から出力される判定出力電圧に基づいて鳴動音を発生する。このように構成すると、鳴動音によって容易に、地絡事故発生時の試験端子1a,2a間に零相電圧Voが現れたことを確認できるようになる。
【0058】
これと共に、ステップST4で警報&表示部34が表示動作を行う。このとき、動作表示灯34bは、電圧設定部33から出力される判定出力電圧(動作電圧2.4〜32V)に基づいて、例えば、赤色や橙色等の警報色を表示する。このように構成すると、地絡事故発生時に試験端子1a,1b間に零相電圧Voが現れたことを警報色によって容易に確認できるようになる。
【0059】
このように、第1の実施形態としての簡易OVG警報装置10によれば、電圧リミッター部32及び電圧設定部33が、電源&電圧検出部31から出力される検出電圧Vxと、判定基準となる判定基準電圧Vthとを比較して零相電圧Voの出現有無を判別する。これを前提にして、警報&表示部34が電圧リミッター部32及び電圧設定部33による判定出力電圧に基づいて鳴動音を発生し、及び、警報色を表示するようになる。
【0060】
従って、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって、地絡事故発生時の試験端子1a,2a間に零相電圧Voが現れたことを確認できるようになる。これにより、常に、零相電圧計を注視する必要が無いので、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようになる。
【0061】
<第2の実施形態としてのPTTテストプラグ>
続いて、図3A及び図3Bを参照して、第2の実施形態としてのPTTテストプラグ20の構成例について説明する。この実施形態では、PTTテストプラグ20内に電源&電圧検出部31や、圧電ブザー34a、動作表示灯34b等の零相電圧監視回路10’が設置され、零相電圧Voが目標以上になった場合に警報音と色表示で警報するようにした。零相電圧監視回路10’を構成する電子部品は、必要最小限であって、単純な機能の回路素子を使用したので、装置全体の信頼性を確保できるようになっている。
【0062】
図3Aに示すPTTテストプラグ20はOVG警報機能内蔵型の試験端子具の一例を構成する。PTTテストプラグ20は端子本体部25を有している。端子本体部25は端子台部位26及び板状部位27を有している。端子台部位26は例えば、上面が開放された筺体を成している。端子本体部25は硬質樹脂やセラミックス等の絶縁部材から構成される。
【0063】
第1の端子の一例を構成する試験端子1a,2a(テストターミナル)は、端子本体部25の端子台部位26の側に設けられる共に、第2の端子の一例を構成する一対の摺動型の接触端子1b,2b,1c,2cに接続され、かつ、電圧計等の計器が接続可能となされている。試験端子1a,2aには同軸二重構造のターミナルが使用される。試験端子1a,2aには短絡バー5,8も併用される(図8参照)。
【0064】
この例で、接触端子1b,2bは、端子本体部25の板状部位27の下面、また、接触端子1c,2cは、端子本体部25の板状部位27の上面に設けられると共に計器用変圧器に接続される配電盤の摺動電極(出力端子:PTTソケット)に対して挿抜接続可能となされる。接触端子1b,2b,1c,2cは、予備の端子3b,4b,3c,4cを含め(既設の互換性を持たすために予備として残してある)、例えば、板形状を上下共に4分割した形状を有している。
【0065】
板状部位27は、端子台部位26のリレー接続端子面と反対側から延在するように構成される。接触端子1b,2b,1c,2c及び予備の端子3b,4b,3c,4cは板状部位27の端子台部位26のリレー接端子面と反対方向に相互に絶縁距離を置いて設けられている。接触端子1b,2b,1c,2cは計器用変圧器のPTTソケットに挿入され、当該PTTソケットの内部電極(以下でソケット電極ともいう)に接触されて電気的に導通状態となされる。この導通状態で引き込み線及び送り線間を導通(オン)すると共に分岐端子を構成するようになる。
【0066】
試験端子1a,2a又は接触端子1b,2bには簡易OVG警報装置10が接続される。簡易OVG警報装置10は、端子台部位26内に設けられる。簡易OVG警報装置10には第1の実施形態で説明したものが使用される。簡易OVG警報装置10は、樹脂で固められ、端子台部位26(筺体)内に組み込まれる。
【0067】
例えば、端子台部位26に所定の容積を有した穴部が設けられ、図1に示したプリント基板15に実装した零相電圧監視回路10’が当該穴部に収納可能となされている。図3Aにおいて、端子台部位26は立方体(筺体)を成し、上面から見たとき、端子台部位26の上面開放の全体を覆うことが可能な正方形状の蓋部28を有している。蓋部28の上面(リレー接続端子面)の左辺側には、試験端子1a,2aが配置される。
【0068】
試験端子1a,2aを左右に結ぶ線分のほぼ中央部から下側には、動作表示灯34bが配置され、どの回路に零相電圧Voが発生したのかを確認し易くなっている。動作表示灯34bには、発光ダイオード(LED)が使用され、LEDは小電流で発光する。
【0069】
動作表示灯34bの下側であって、蓋部28の正面の下部側には、圧電ブザー34aが配置され、ブザー用の鳴動口(警報音の取出し口)が開口されている。例えば、警報音の取出し口は、蓋部28の上面の右辺側に複数のスリットが設けられ、警報音が内部に籠もらないように、必要量の隙間(格子構造)が確保されている。
【0070】
ここで、図4を参照して、PTTテストプラグ20の内部構成例について説明する。図4に示すPTTテストプラグ20の内部構成例によれば、試験端子1a,2a、接触端子1b,1c,2b,2c及び零相電圧監視回路10’を有して構成される。
【0071】
試験端子1aの一端は、図3に示した端子本体部25の板状部位27の下面の接触端子1bに接続される。試験端子1aの他端は、その板状部位27に設けられた上面の接触端子1cに接続されると共に、簡易OVG警報装置10の全波整流回路31aの交流入力端子a1に接続される。
【0072】
また、試験端子2aの一端は、図3に示した端子本体部25の板状部位27の下面の接触端子2bに接続される。試験端子2aの他端は、その板状部位27に設けられた上面の接触端子2cに接続されると共に、簡易OVG警報装置10の全波整流回路31aの交流入力端子a2に接続される。
【0073】
なお、零相電圧監視回路10’には、第1の実施形態で説明した簡易OVG警報装置10が使用される。零相電圧監視回路10’の内部構成例については、第1の実施形態を参照されたい。PTTテストプラグ20は市販のPTTテストプラグ50をベースに開発したもので、計器用変圧器(PT)の二次回路に挿入される可能性があるので、三次回路専用とした。すなわち、PTTテストプラグ20は、常時、荷電状態となり、連続警報動作となるため、誤使用を防止するためにも、2極構成として三次回路専用とした。
【0074】
次に、図5を参照して、送配電線保護システム100におけるPTTテストプラグ20の適用例について説明する。図5に示す送配電線保護システム100おいて、本発明に係る2個のPTTテストプラグ20(図中、PTT1,PTT2,PTT3と表示する)は、図中、◎印に示す部分の地絡過電圧継電器(64V)や、地絡方向継電器(図中の67G)に接続される。実際には、地絡過電圧継電器(64V)や、地絡方向継電器(67G)から引き出される配線が配電盤に導かれ、PTTテストプラグ20が配電盤のソケット電極に嵌合されて使用される。
【0075】
送配電線保護システム100は、連系変電所において、放射状送電線の地絡保護方式に適用される。連系変電所は、例えば、110kV母線(Bus)、66kV母線(Bus)、2台の変圧器(1MTr,2MTr)、一次側の2個の母線開閉器(BLS)、二次側の4個の母線開閉器(BLS)、送電線路側の2個の線路開閉器(LLS)、一次側の2個の回路遮断器(CBa,CBb)、二次側の2個の回路遮断器(CBc,CBd)、送電線路用の2個の回路遮断器(CBe,CBf)、2個の変圧器2次側中性点切替用開閉器(LS)、1個の母線区分切替用の開閉器(LS)、3個の零相変流器(ZCT;以下でZCT1〜ZCT3という)、1個の計器用変圧器(PT)、1個の零相電圧計29、1個の中性線接地抵抗器(NGR機器)、1台の地絡過電圧継電器(64V)、1台の地絡過電流継電器(51G)、2台の地絡方向継電器(67G)から構成される。
【0076】
変圧器(1MTr)の一次側は、BLS及びCBaを介して110kV母線(Bus)に接続される。その二次側は、CBc及びBLSを介して66kV母線(Bus)に接続される。変圧器(2MTr)の一次側は、BLS及びCBbを介して110kV母線(Bus)に接続される。その二次側は、CBd及びBLSを介して66kV母線(Bus)に接続される。
【0077】
66kV母線(Bus)には、BLS,CBe及びLLSを介して66kVの第1のA線が接続される。66kV母線(Bus)には、他のBLS,CBf及びLLSを介して66kVの第2のB線が接続される。66kV母線(Bus)において、第1のA線の送電系統と、第2のB線の送電系統との間には母線区分切替用の開閉器(LS)が接続される。
【0078】
変圧器(1MTr)の二次側のY結線の中性点には、一方の開閉器(LS)を介して中性点接地抵抗(NGR機器)の一端が接続される。このNGR機器の他端は接地される。NGR機器の一端には、他の開閉器(LS)を介して変圧器(2MTr)の二次側のY結線の中性点に接続される。NGR機器に至る配線には、ZCT3が取り付けられる。このZCT3には、CTT(変流器試験端子)を介して、地絡過電流継電器(51G)が接続される。
【0079】
地絡過電流継電器(51G)には地絡過電圧継電器(64V)が接続される。地絡過電圧継電器(64V)はPTT1を介して計器用変圧器(PT)の三次巻線に接続される。零相電圧計29はPTT4を介して計器用変圧器(PT)の三次巻線に接続される。地絡方向継電器671は、ZCT1及びCBeに接続されると共に、PTT2を介して計器用変圧器(PT)の三次巻線に接続される。地絡方向継電器672は、ZCT2及びCBfに接続されると共に、PTT3を介して計器用変圧器(PT)の三次巻線に接続される。これらにより、送配電線保護システム100を構成する。
【0080】
送配電線保護システム100によれば、66kVの母線Busに2系統のA線,B線が接続され、2系統のA線,B線に電力を供給する場合を示している。例えば、B線で、地絡事故(図中の×印が地絡点)が発生した場合、NGR機器に地絡電流(零相電流io)が流れ、地絡過電流継電器(51G)が動作する。計器用変圧器(PT)の三次巻線に地絡電圧(零相電圧Vo)を発生すると、零相電圧計29が地絡電圧を表示する。また、PTT1を介して地絡過電圧継電器(64V)が動作し、既設の監視制御装置の警報音発生と、故障表示を行う。
【0081】
送配電線保護システム100では、何らかの理由で、地絡方向継電器671及び672が動作しないときには、地絡過電流継電器(51G)、地絡過電圧継電器(64V)及びタイマーで、66kVの母線Busの回路遮断器CBe、CBfの順で切ってから、110kVの母線BUSの回路遮断器CBa及びCBbを切るように動作する。これにより、地絡事故から、2台の変圧器(1MTr,2MTr)や送配電線等を保護できるようになる。
【0082】
このように第2の実施形態としてのPTTテストプラグ20によれば、端子本体部25内に零相電圧監視回路10’を備え、この零相電圧監視回路10’に本発明に係る簡易OVG警報装置10が使用されるので、計器用変圧器(PT)接続時、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって地絡事故発生時の第1又は第2の端子間に零相電圧Voが現れたことを確認できるようになる。これにより、常に、零相電圧計29を注視する必要が無いので、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようになる。OVG簡易警報装置内蔵型のテストプラグを提供できるようになる。
【0083】
また、簡易OVG警報装置10の全体を樹脂でモールドして、PTTテストプラグ20内に組み込む構造を採ったので、運搬や、取扱時の振動による断線や損傷防止が図られ、信頼性を確保、かつ、向上できるようになった。
【0084】
<第3の実施形態としてのPTTテスト端子装置>
続いて、図6〜図10を参照して、第3の実施形態としての零相電圧監視システム300の構成例及びその接続例について説明する。図6に示す零相電圧監視システム300は、従来例に係る試験端子具(以下でPTTテストプラグ50という)と、本発明に係る簡易OVG警報装置30から構成される。
【0085】
PTTテストプラグ50は、図11で説明したように、端子本体部25、1対の試験端子1a,2a(第1の端子)及び、1対の接触端子1b,2b(第2の端子)を有して構成される。端子本体部25は端子台部位26と板状部位27とを有している。試験端子1a,2aは、端子本体部25の端子台部位26に設けられる共に接触端子1b,2bに接続され、かつ、零相電圧計等の計器が接続可能となされている。接触端子1b,2bは、端子本体部25の板状部位27に設けられると共に計器用変圧器の出力端子に対して挿抜接続可能となされている。
【0086】
簡易OVG警報装置30は、図7に示すPTTテストプラグ50の試験端子1a,2aに接続可能なものである。簡易OVG警報装置30は、図4に示した電源&電圧検出部31及び電圧判別部を含む零相電圧監視回路10’が筺体部35の内側においてモールド樹脂封止されている。筺体部35の外側には、装置の所定の面に圧電ブザー34aの鳴動口及び動作表示灯34bの一部が露出するようになっている。圧電ブザー34aの鳴動口及び動作表示灯34bは、ユーザーが目視確認し易い面に設けられる。このように簡易OVG警報装置30を構成すると、運搬時、簡易OVG警報装置30の内部を外界から容易に保護できるようになる。
【0087】
この例では、簡易OVG警報装置30に、PTTテストプラグ専用の取り付け部材36,47が設けられている。取り付け部材36,47は、筺体部35の圧電ブザー34aの鳴動口及び動作表示灯34bが設けられた面と、例えば、直交する面から筺体部35の外側に引き出されている。取り付け部材36は、所定の厚みを有した平型状の絶縁配線3と、C形状を有した爪付き端子6とを有して構成されている。取り付け部材47は、所定の厚みを有した平型状の絶縁配線4と、C形状を有した爪付き端子7とを有して構成されている。爪付き端子6は絶縁配線3の終端部に接続され、爪付き端子7は絶縁配線4の終端部に接続される。
【0088】
ここで、図7を参照して、簡易OVG警報装置30の接続例について説明する。図7に示す簡易OVG警報装置30によれば、爪付き端子6は、PTTテストプラグ50の試験端子1aに接続可能となされ、爪付き端子7は、その試験端子2aに接続可能となされている。例えば、爪付き端子6を試験端子1aに差し込み、爪付き端子7を試験端子2aに差し込んで使用する。
【0089】
この例で、絶縁配線3が試験端子1aに対して直線配置されるのに対して、絶縁配線4は試験端子1aを迂回するように配置される。絶縁配線4は筺体部35の外側に引き出された後に一の方向に「く」の字状に折り曲がり、更に、反対の方向に「く」の字状に折り曲がって筺体部35の外側に引き出された方向と同一方向となるように配置されている。
【0090】
このように零相電圧監視システム300を構成すると、簡易OVG警報装置30を取り付ける際に、取り付け部材36,47を試験端子1a,2aに対して上方向から下方向へ爪付き端子6,7を落とし込むように降下させることで、既存のPTTテストプラグ50に容易に接続できるようになる。しかも、縦列に並んでいる試験端子1a,2aに対して、絶縁配線3,4が整然となり、簡易OVG警報装置30を所定の姿勢に維持できるようになる。PTTテストプラグ50には、従来例と同等の使用が可能なように汎用性を持たせている。これにより、運転要員は、通常の作業対応のみで良くなり、精神的負担から開放される。
【0091】
ここで、図8を参照して、簡易OVG警報装置30とPTTテストプラグ50との間の接続例について説明する。図8に示す簡易OVG警報装置30によれば、PTTテストプラグ50の試験端子1a,2aに短絡バー5,8を介して接続される。試験端子1a,2aには同軸二重構造のターミナルが使用される。ここで、試験端子1aの2つのターミナルの電極番号を11,21とする。同様に、試験端子2aの2つのターミナルの電極番号を12,22とする。短絡バー5,8には、コ字形状を有したものが使用される。
【0092】
この例では、簡易OVG警報装置30の爪付き端子6をPTTテストプラグ50の試験端子1aに挟み込んだ状態で、その電極番号11,21の2つのターミナル間が短絡バー5を介して短絡される。試験端子1aの電極番号11のターミナルは、その板状部位27に設けられた下面の接触端子1bに接続される。試験端子1aの電極番号21のターミナルは、その板状部位27に設けられた上面の接触端子1cに接続される。
【0093】
同様にして、簡易OVG警報装置30の爪付き端子7をPTTテストプラグ50の試験端子2aの電極番号12,22の2つのターミナル間が短絡バー8を介して短絡される。試験端子2aの電極番号12のターミナルは、その板状部位27に設けられた下面の接触端子2bに接続される。試験端子2aの電極番号22のターミナルは、その板状部位27に設けられた上面の接触端子2cに接続される。これらにより、簡易OVG警報装置30とPTTテストプラグ50との間が短絡バー5,8を介して接続される。
【0094】
ここで、図9及び図10を参照して、零相電圧監視システム300の内部及び外部接続例について説明する。図9に示す零相電圧監視システム300の内部接続例によれば、試験端子1aは取り付け部材36を介して簡易OVG警報装置30の交流入力端子a1に接続される。試験端子1aは取り付け部材47を介してその交流入力端子a2に接続される。簡易OVG警報装置30の内部の接続例については、図1に示した簡易OVG警報装置10の内部の接続例を参照されたい。
【0095】
零相電圧監視システム300の外部接続例によれば、PTTテストプラグ50を介して引き込み線in1及び送り出し線out1と、引き込み線in2及び送り出し線out2とに接続される。引き込み線in1,in2は、図10に示すように計器用変圧器(PT)の三次巻線に接続される。送り出し線out1、out2には、例えば、零相電圧計29が接続される(図10参照)。図10は、PTTテストプラグ50と配電盤のソケット電極とを接続した部分を展開した回路図を示している。
【0096】
図10に示す簡易OVG警報装置30は、電極番号11,21のターミナルが短絡バー5を介して短絡された試験端子1aと、電極番号12,22のターミナルが短絡バー8を介して短絡された試験端子2aとを有するPTTテストプラグ50に接続される。簡易OVG警報装置30が接続されたPTTテストプラグ50は、配電盤のソケット電極(以下でPTTソケット60という)に嵌合(挿入)される。
【0097】
この例で、引き込み線in1は、PTTソケット60の電極番号11の摺動電極に接続される。引き込み線in2は、その電極番号12の摺動電極に接続される。送り出し線out1は、PTTソケット60の電極番号21の摺動電極に接続される。送り出し線out2は、その電極番号22の摺動電極に接続される。
【0098】
PTTテストプラグ50がPTTソケット60に嵌合(挿入)されることで、電極番号11−11、電極番号12−12、電極番号21−21及び電極番号22−22のように同一の電極番号同士が接続される。電極番号11,21のターミナルを有する試験端子1aと、電極番号11の摺動電極を有する引き込み線in1と、電極番号21の摺動電極を有する送り出し線out1とが接続される。
【0099】
同様にして、電極番号12,22のターミナルを有する試験端子2aと、電極番号12の摺動電極を有する引き込み線in2と、電極番号22の摺動電極を有する送り出し線out2とが接続される。これらにより、零相電圧監視システム300を構成するが、その適用例については、図5を参照されたい。
【0100】
このように第3の実施形態としての零相電圧監視システム300によれば、本発明に係る簡易OVG警報装置10を備え、この簡易OVG警報装置10が、PTTテストプラグの試験端子1a,2aに接続可能となされているので、計器用変圧器接続時、鳴動音及び警報色の少なくともいずれか一方によって、地絡事故発生時の試験端子1a,2a間に零相電圧Voが現れたことを確認できるようになる。
【0101】
これにより、常に、零相電圧計29を注視する必要が無いので、運転員(現地対応員)の精神的負担を大幅に軽減できるようになる。しかも、既存のPTTテストプラグ50に簡単に接続して使用できるようにしたため、汎用性に富んでいる。また、付属する短絡バー5,8や、リード接続方法に支障が無く従来方式と使用感が変わらない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、発変電及び送電系統において、地絡事故発生時等の零相電圧を監視する線路保護システムに適用して極めて好適である。
【符号の説明】
【0103】
1a,2a 試験端子(第1の端子)
1b,2b 接触端子(第2の端子)
3,4 配線部材
5,8 短絡バー
6,7 爪付き端子
10 簡易OVG警報装置
10’零相電圧監視回路
15 プリント基板
20,50 PTTテストプラグ
25 端子本体部
26 端子台部位
27 板状部位
28 蓋部
29 零相電圧計
31 電源部
32 電圧検出部
33 電圧判定部
34 判定出力部
34a 圧電ブザー
34b 動作表示灯
35 筺体部
36,47 取り付け部材
60 PTTソケット
100 送配電線保護システム
300 零相電圧監視システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器用変圧器に接続される試験端子具の1対の試験端子に取り付け可能な取り付け部材と、
前記取り付け部材に接続された零相電圧監視回路とを備え、
前記零相電圧監視回路は、
計器用変圧器接続時、前記試験端子間に現れる零相電圧を検出し、地絡事故発生時の検出電圧に基づき警報動作を実行することを特徴とする零相電圧監視装置。
【請求項2】
前記零相電圧監視回路は、
前記取り付け部材を介して前記試験端子に接続され、当該試験端子間に現れる零相電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部に接続され、当該電圧検出部から出力される検出電圧と、判定基準となる閾値電圧とを比較して零相電圧の出現有無を判別する電圧判別部とを有することを特徴とする請求項1に記載の零相電圧監視装置。
【請求項3】
前記電圧判別部に接続され、当該電圧判別部から出力される判定出力電圧に基づいて鳴動音を発生する警報部を有することを特徴とする請求項2に記載の零相電圧監視装置。
【請求項4】
前記電圧判別部に接続され、当該電圧判別部から出力される判定出力電圧に基づいて警報色を表示する表示部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の零相電圧監視装置。
【請求項5】
前記電圧検出部及び電圧判別部が筺体部内においてモールド樹脂封止されていることを特徴とする請求項2に記載の零相電圧監視装置。
【請求項6】
前記取り付け部材には、
前記試験端子具の試験端子に接続可能な爪付き端子が使用されることを特徴とする請求項1に記載の零相電圧監視装置。
【請求項7】
端子台部位と板状部位とを有した端子本体部と、
前記端子本体部の端子台部位に設けられる共に計器が接続可能な1対の第1の端子と、
前記端子本体部の板状部位に設けられると共に前記第1の端子に接続され、計器用変圧器に接続された出力端子に対して挿抜接続可能な1対の第2の端子と、
前記第1又は第2の端子に接続された前記請求項1乃至4に記載の何れかの零相電圧監視装置とを備え、
前記零相電圧監視装置が前記端子本体部内に設けられることを特徴とする零相電圧監視機能付きの試験端子具。
【請求項8】
端子台部位と板状部位とを有した端子本体部、
前記端子本体部の端子台部位に設けられる共に計器が接続可能な1対の第1の端子を有する試験端子具と、
前記端子本体部の板状部位に設けられると共に計器用変圧器に接続された出力端子に対して挿抜接続可能な1対の第1の端子及び、
前記試験端子具の第1の端子に接続可能な請求項1乃至6に記載の何れかの零相電圧監視装置とを備えることを特徴とする零相電圧監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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