説明

電位制御栽培方法

【課題】栽培床に由来する微生物叢の代謝反応を利用して、(1)栽培床からの温室効果ガスの発生を抑制でき、更に、(2)植物成長阻害因子の除去による植物生産性を向上できる電位制御栽培方法を提供すること。
【解決手段】栽培床に、ESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲の導電性炭素材を乾燥重量で1%以上含有させて導電性炭素材含有栽培床を形成し、前記導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に所定の電位を付与し、水の電気分解を防止した状態で、前記導電性炭素材含有栽培床を前記所定の電位の近傍に保持して、前記導電性炭素材含有栽培床における特定の代謝系関与物質の生成を抑制又は促進する電位制御栽培方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位制御栽培方法に関し、詳しくは、導電性炭素材を含有する栽培床に電位を付与して植物の栽培を行う電位制御栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水田、畑地、牧草地又はそれに準ずる栽培床からは、大量のメタン、一酸化二窒素が発生する。
【0003】
メタン、一酸化二窒素は共に温室効果ガスである。メタンによる地球温暖化係数は二酸化炭素の20倍以上、一酸化二窒素による地球温暖化係数は二酸化炭素の300倍以上とされ、京都議定書でも排出規制がかけられている。
【0004】
栽培床からの温室効果ガスの発生を抑制する技術が強く求められている。
【0005】
また、栽培床には、植物の成長を阻害する因子が存在する。特に、硫化水素を発生して植物の根に害を与える硫酸塩還元菌や、根腐萎凋病を引き起こすフザリウム菌のような有害菌による植物成長阻害を回避する技術が強く求められている。
【0006】
特許文献1には、培養土あるいは培養液内部の植物の根の下位かその近くに配置した電極から、水の電気分解によって酸素を発生し、その酸素を植物の根に供給して、植物の生育を促進する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−300078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、栽培床に由来する微生物叢の代謝反応を利用して、(1)栽培床からの温室効果ガスの発生を抑制でき、更に、(2)植物成長阻害因子の除去による植物生産性を向上できる電位制御栽培方法を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0011】
(請求項1)
栽培床に、ESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲の導電性炭素材を乾燥重量で1%以上含有させて導電性炭素材含有栽培床を形成し、
前記導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に所定の電位を付与し、水の電気分解を防止した状態で、前記導電性炭素材含有栽培床を前記所定の電位の近傍に保持して、
前記導電性炭素材含有栽培床における特定の代謝系関与物質の生成を抑制又は促進することを特徴とする電位制御栽培方法。
【0012】
(請求項2)
前記所定の電位の付与は、前記導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に接触させた電極に通電して行うことを特徴とする請求項1記載の電位制御栽培方法。
【0013】
(請求項3)
前記所定の電位の付与は、前記導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に酸化性物質又は還元性物質を添加して行うことを特徴とする請求項1記載の電位制御栽培方法。
【0014】
(請求項4)
前記導電性炭素材の見かけの体積抵抗率が10Ωcm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電位制御栽培方法。
【0015】
(請求項5)
前記所定の電位は、−1V〜+1V(対標準水素電極基準)の範囲であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電位制御栽培方法。
【0016】
(請求項6)
前記導電性炭素材含有栽培床は、畑地、牧草地又はそれに準ずる栽培床からなる栽培床に導電性炭素材を乾燥重量で10%以上含有させて形成することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電位制御栽培方法。
【0017】
(請求項7)
前記導電性炭素材含有栽培床は、水田作土からなる栽培床に導電性炭素材を乾燥重量で1%以上含有させて形成することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電位制御栽培方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、栽培床に由来する微生物叢の代謝反応を利用して、(1)栽培床からの温室効果ガスの発生を抑制でき、更に、(2)植物成長阻害因子の除去による植物生産性を向上できる電位制御栽培方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電位−pH図の一例
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の原理について説明する。
【0021】
植物を栽培する栽培床に生育する微生物叢は、膨大な種類の代謝反応を発現し得る。
【0022】
そして、膨大な種類の代謝反応においては、多岐にわたる物質(以下、代謝系関与物質という場合がある。)が、反応物及び/又は反応生成物として代謝反応に関与している。
【0023】
これら代謝系関与物質には、温室効果ガスのような有害な物質や、病原菌の活動を抑制するような有用な物質が含まれている。
【0024】
これら代謝系関与物質は、微生物の生育環境に応じて、著しく増加又は減少する。これは、微生物の代謝反応の発現が、生育環境に大きく依存することによる。
【0025】
本発明者は、特に微生物の生育環境の一要素である電位に着目し、微生物叢に対して、特定の代謝系関与物質が安定に存在する電位を付与することで、該特定の代謝系関与物質の生成を促すように代謝反応が制御され、逆に、特定の代謝系関与物質が不安定となる電位を付与することで、該特定の代謝系関与物質の生成を抑制するように代謝反応が制御されることを見出した。
【0026】
即ち、所定の電位を付与することにより、特定の代謝系関与物質の生成を抑制又は促進することができる。また、同時に、生育に必要な代謝反応が活性化した微生物の生育は活性化し、逆に、生育に必要な代謝反応が不活性化した微生物の生育は不活性化する。
【0027】
特定の代謝系関与物質の生成を抑制又は促進するための所定の電位は、pHに依存して変動する場合があるため、所定の電位を設定する際には、特定の代謝系関与物質の電気化学的な平衡反応に基づいて、通常に用いられるような電位−pH図(図1)を作成し、これを参照することが好ましい。
【0028】
図1に示す電位−pH図の一例において、領域Aでは、一酸化二窒素生成側に平衡反応が傾き、領域Bでは、メタン生成側に平衡反応が傾くことがわかる。
【0029】
pH6〜9において、一酸化二窒素及びメタンが不安定となる電位として、領域Cを好ましく設定できることがわかる。これにより、一酸化二窒素及びメタンの生成を抑制することができる。
【0030】
このようにして、例えば、温室効果ガスを発生する代謝反応を抑制し、あるいは、これを分解する代謝反応を促進して、(1)栽培床からの温室効果ガスの発生抑制を実現する。さらに、例えば、植物の成長を阻害する阻害物質を分解する代謝反応を促進し、あるいは、病原菌の活動を抑制する物質を分解する代謝反応を抑制して、(2)植物成長阻害因子の除去による植物生産性を向上することを試みた。
【0031】
本発明では、栽培床に導電性炭素材を乾燥重量で1%以上含有させて導電性炭素材含有栽培床を形成し、導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に所定の電位を付与する。導電性炭素材含有栽培床は、所定の電位の伝播媒体として機能し、導電性炭素材含有栽培床が所定の電位の近傍に保持される。これにより、導電性炭素材含有栽培床の微生物叢の代謝反応を制御して、導電性炭素材含有栽培床における特定の代謝系関与物質の生成を抑制又は促進する。
【0032】
さらに、本発明者は、上記構成において、導電性炭素材における水の電気分解を防止することが必須となることを見出した。
【0033】
栽培床における主たる電力消費が、導電性炭素材からの水の電気分解による場合、ガス発生によって導電性炭素材表面及び栽培床の導電性が低下し、更に、水の電気分解に伴って、流れる電流が大きくなる。この結果、電圧降下が増加し、導電性炭素材含有栽培床を所定の電位の近傍に保持することができなくなる。このような、水の電気分解は、印加できる電位の範囲を制限することにもなり、多岐にわたる代謝反応の制御に対応できなくなる。さらにまた、水の電気分解により、導電性炭素材表面における微生物担持性も低下して、担持微生物の代謝制御も阻害される。
【0034】
これに対して、水の電気分解を防止した本発明では、導電性炭素材含有栽培床において消費される電力は、栽培床の酸化還元性雰囲気維持のためのものであって、具体的には栽培床内の各種酸化還元性物質(例えば、細胞外レドックス物質、遷移金属錯体等)との電極反応によって流れる電流に基づいている。一般にこのような反応によって流れる電流は極僅かであり、電圧降下(IRドロップ)の幅が極めて小さい範囲となる。これにより、栽培床がある程度の含水率を有していれば導電性炭素材同士が非接触であっても導電性炭素材含有栽培床を所定の電位の近傍に保持することができる。非接触でもよいため、導電性炭素材の使用量を軽減してコストを抑えることができ、広大な栽培床に対して実施できる実用性を備える。また、所定の電位の範囲を広く設定して、多岐にわたる代謝反応に対応することが可能となる。さらに、水の電気分解を防止したことにより、導電性炭素材表面における微生物担持性が向上し、微生物叢の代謝反応の制御が効率的となる。
【0035】
本発明の電位制御栽培方法では、上記のようにして、栽培床に由来する微生物叢の代謝反応を利用して、(1)栽培床からの温室効果ガスの発生を抑制、及び、(2)植物成長阻害因子の除去による植物生産性の向上を図る。
【0036】
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
【0037】
本発明に用いられる栽培床としては、植物を栽培する栽培床であれば格別限定されず、水田作土、畑地、牧草地又はそれに準ずる栽培床等を好ましく例示できる。
【0038】
本発明では、栽培床に導電性炭素材を含有させて導電性炭素材含有栽培床を形成する。
【0039】
本発明に用いられる導電性炭素材は、形状として、粉末、粒状、片状およびある程度連続した糸、棒状(連続体)のものを好ましく用いることができる。
【0040】
本発明において、導電性炭素材は、ESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲である。
【0041】
元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲を満たす導電性炭素材は、その表面に、若干の酸素元素が導入された状態にある。これにより、導電性炭素材は、水素、酸素過電圧が高く、水の電気分解を防止することができると共に、担持微生物の代謝反応等を好適に制御することが可能となる。
【0042】
好ましくは、元素数比O/Cが0.03〜0.10の範囲を満たすことであり、これにより、導電性炭素材が、十分な水素、酸素過電圧を有し、且つ導電性も良好となるため、担持微生物の代謝反応等をより好適に制御することが可能となる。
【0043】
これに対して、元素数比O/Cが、0.01に満たない場合は、水素、酸素過電圧が低く、水の電気分解を防止することができなくなる。
【0044】
一方、元素数比O/Cが、0.30を超える場合は、導電性炭素材の表面に形成されるヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボニル基などの酸素含有官能基の密度が過多となり、これらが、導電性炭素材の導電性を低下させる等の問題を生じる。この結果、担持微生物の代謝反応等を制御することが困難となる。
【0045】
元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲を満たす導電性炭素材は、例えば焼成温度の設定や、表面に酸素を導入する処理を適宜行って、得ることができる。通常、元素数比O/Cが、0.30を超える場合は、焼成温度を高くし、一方、元素数比O/Cが、0.01に満たない場合は、表面に酸素を導入する処理を行うことで、元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲を満たす導電性炭素材が得られる。表面に酸素を導入する処理としては、例えば、通常の賦活ガスや賦活剤を用いた賦活処理を極軽度に施すことなどが挙げられる。
【0046】
本発明では、水の電気分解が防止され、大量の電気量の消費がないため、通常、100μA/cm以下の微弱電流が発生する程度である。そのため、導電性炭素材の体積抵抗率が、ある程度大きいものであっても、電圧降下の範囲が僅かであるため、好ましく用いることができる。
【0047】
本発明において、導電性炭素材の体積抵抗率は、体積抵抗率が10Ωcm以下であることが好ましく、1Ωcm以下であることがより好ましい。体積抵抗率の測定には、例えば直流4端子法を用いることができる。「見かけの体積抵抗率」は、多孔質のものであっても、孔隙を無視して測定された体積抵抗率を指す。
【0048】
導電性炭素材含有栽培床の形成領域は、格別限定されないが、通常は、栽培する植物の根が形成される深さの領域に形成され、栽培床が水田作土であれば、水底からの深さが10〜20cmの領域に形成することが好ましく、栽培床が畑地、牧草地又はそれに準ずる栽培床であれば、上端は最大で地表面とし、下端は地表から20〜30cmの深さの領域に形成することが好ましい。放牧地などにおいて、NO発生を防止する場合は、上端は最大で地表面とし、下端は地表から5〜10cmの深さの領域に形成することが好ましい。
【0049】
導電性炭素材含有栽培床を所定の深さで層状に形成し、複数の植物の根で一つの導電性炭素材含有栽培床を共有することも好ましいことである。これにより、所定の電位を付与する部位を、複数の植物の根で共有することも可能になり、設備コストを低減でき、更に栽培スペースを有効利用して、単位面積あたりの生産量を向上できる効果が得られる。
【0050】
導電性炭素材含有栽培床は、栽培時においてその形状が変化しない固定床であってもよいし、栽培時においてその形状が流動的に変化する流動床であってもよい。
【0051】
導電性炭素材含有栽培床に含有される導電性炭素材は、栽培床に対して乾燥重量で1%以上とし、特に上限はないが、30〜50%程度を上限とすることが好ましい。
【0052】
本発明では、栽培床に由来する微生物叢の代謝反応を利用する上で、導電性炭素材含有栽培床に、本来の栽培床成分(土壌成分等)をある程度含むようにすることが好ましいが、導電性炭素材含有量が100%に達する場合でも、例えば土壌成分等に含まれる微生物を添加することで、微生物叢を維持することができる。
【0053】
導電性炭素材含有栽培床において、含有される導電性炭素材は、互いに接触していてもよいし、非接触であってもよい。非接触とする場合、導電性炭素材同士間の距離の平均値は5cm以下であることが好ましく、2cm以下であることがより好ましく、1cm以下であることが最も好ましい。
【0054】
本発明では、流れる電流が極僅かであるが故に、非接触であっても、導電性炭素材間に存在する土壌成分や水分が、ある程度の導電性を発現して、導電性炭素材含有栽培床を所定の電位に保持することができる。なお、導電性炭素材含有栽培床の含水率が低く、非接触で体積抵抗率が100Ωcmを超える場合は、十分な導電性を得るために、導電性炭素材を互いに接触するように充填して導電性炭素材含有栽培床を形成することが好ましい。
【0055】
栽培床への導電性炭素材の好ましい含有率は、栽培床の種類によって異なる。例えば、栽培床が、畑地、牧草地又はそれに準ずる栽培床からなる栽培床である場合は、導電性炭素材を乾燥重量で10〜30%含有させて導電性炭素材含有栽培床を形成することが好ましい。また、栽培床が、水田作土からなる栽培床である場合は、導電性炭素材を乾燥重量で5〜15%含有させて導電性炭素材含有栽培床を形成することが好ましい。水田作土のように含水率が大きい場合は、導電性を維持し易いため、導電性炭素材含有量を少量とすることが、コスト面等から好ましい。また、栽培床が海水のように電解質を多く含む場合は、電解質の存在により導電性を維持し易いため、導電性炭素材含有量を削減できる。メタン又は水素発酵消化液や焼酎粕濃縮液等のように電解質を含有するものを養液等として栽培床に添加して、導電性の維持を好適にすることも好ましいことである。
【0056】
本発明において、形成される導電性炭素材含有栽培床の体積抵抗率は、電位の付与時において、好ましくは1kΩcm以下、より好ましくは100Ωcm以下、最も好ましくは50Ωcm以下である。
【0057】
本発明では、導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に所定の電位を付与し、水の電気分解を防止した状態で、導電性炭素材含有栽培床を所定の電位の近傍に保持する。
【0058】
本発明において、導電性炭素材含有栽培床への所定の電位の付与は、(a)導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に接触させた電極に通電する方法、又は、(b)導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に酸化性物質又は還元性物質を添加する方法を好ましく用いることができる。これらの方法を兼用することも好ましいことである。
【0059】
(a)導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に接触させた電極に通電する方法を用いる場合は、導電性炭素材含有栽培床に対して作用極及び/又は対極を1又は複数の位置において接触させることができる。対極は、イオン透過膜などの隔膜を介して設けられることが好ましい。電位の制御は、参照極電位で制御する3電極法あるいは必要に応じて栽培床、育成場の電位を監視し、印加電圧を制御する2電極法を用いることができる。
【0060】
(b)導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に酸化性物質又は還元性物質を添加する方法を用いる場合は、導電性炭素材含有栽培床に対して酸化性物質又は還元性物質を1又は複数の位置において添加することができる。栽培床、育成場のpHに応じて、維持したい酸化還元性に相当する物質を添加し、添加量等の制御を参照極による電位監視によって行なうことができる。
【0061】
酸化性物質としては、第二鉄化合物(塩化物、硫酸塩等)、各種キノン化合物等を好ましく例示でき、酸素(空気)を用いることもできる。一方、還元性物質としては、第一鉄化合物、各種ヒドロキノン化合物等を好ましく例示できる。
【0062】
酸化性物質又は還元性物質の添加方法は、格別限定されないが、イオン透過膜などの隔膜を介して導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に添加する方法を好ましく用いることができる。酸素(空気)を用いる場合は、例えば、導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に通気処理を施す方法が挙げられる。
【0063】
水田のように土壌表面が水に覆われている場合を除いて、栽培床の表面は通常空気と接触している。このように、栽培床の表面が空気と接触していれば、通常、栽培床において表面からの深さ約5cm程度までに形成される酸化層は、空気中の酸素による好気電位に保持されている。したがって、酸化性物質として酸素(空気)を用いる場合は、酸化層に対して酸素による好気電位を付与する必要性が低い。従って、酸化性物質として酸素(空気)を用いる場合は、酸化層よりも深い層(還元層)のみに導電性炭素材含有栽培床を形成することが好ましい。これにより、導電性炭素材の使用量を削減して低コスト化を図ることができる。また、これにより、還元層を酸化雰囲気とするための好気電位の付与によって、酸化層の酸化雰囲気が過剰になることを防ぐことができ、酸化雰囲気の過剰による硝酸態窒素の過剰生成を防止して、硝酸イオンの土壌流出(土壌汚染)を回避する効果も得られる。
【0064】
なお、特許文献1のように、水の電気分解で酸素を発生させる場合は、たとえ還元層で酸素発生させても、酸素が培養土を上昇するため、酸化層を経由することになり、酸化層の酸化雰囲気を過剰にして硝酸態窒素が過剰生成する恐れがある。このような従来法と異なり、本発明では、所定の電位の形成範囲を、導電性炭素材含有栽培床の形成範囲内とすることができ、上記のような問題を防止すると共に、導電性炭素材含有栽培床における特定の代謝系関与物質の生成の抑制又は促進を好適に行うことができる。
【0065】
導電性炭素材含有栽培床の一部に所定の電位を付与すると、導電性炭素材含有栽培床が電位の伝播媒体となって、電位付与部の周囲には、導電性炭素材含有栽培床の体積抵抗率に依存した電位勾配等に基づく電位が形成される。
【0066】
本発明において、「所定の電位の近傍」とは、導電性炭素材含有栽培床における特定の代謝系関与物質の生成を抑制又は促進することができる電位の範囲のことであり、例えば上記のような電位勾配による電位の変化があっても、変化がこの電位の範囲内であれば、所定の電位の近傍であるとする。
【0067】
導電性炭素材含有栽培床が所定の電位の近傍に保持されていることを確認するためには、参照極による計測や、導電性炭素材含有栽培床の体積抵抗率に基づいた論理計算を用いることができる。
【0068】
本発明では、水の電気分解を防止しているために、電圧降下が僅かな範囲となるため、導電性炭素材含有栽培床において所定の電位の近傍に保持される領域(以下、有効領域という場合がある。)が広く形成される効果を奏する。
【0069】
形成される有効領域は、導電性炭素材含有栽培床の一部であってもよいし、全部であってもよい。一部とする場合は、導電性炭素材含有栽培床において栽培に寄与している床のみとすることも好ましい。
【0070】
所定の電位を付与する電位付与部を適宜増設することで、有効領域の形成範囲を拡張できる。電位付与部の増設は、具体的には、電位付与部を複数設ける、あるいは、1つの電位付与部を拡張することで対応できる。電位付与部を複数設ける場合、電位付与部間の間隔を、導電性炭素材含有栽培床の体積抵抗率に依存した電位勾配に基づいて決定することも好ましいことである。
【0071】
所定の電位の設定は、好ましくは−1V〜+1V(対標準水素電極基準)の範囲で、導電性炭素材含有栽培床における特定の代謝系関与物質の生成を抑制又は促進するように設定される。ESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲の導電性炭素材であれば、上記電位の範囲において、水の電気分解が好適に防止される。
【0072】
本発明において、特定の代謝系関与物質は、植物を栽培する栽培床に生育する微生物叢の代謝反応に反応物及び/又は反応生成物として関与する物質であれば格別限定されず、メタン、一酸化二窒素、硫化水素、ヒドロキシルアミン等の窒素の中間的な酸化還元性化学種等を好ましく例示でき、これらの生成を抑制又は促進するための所定の電位の設定には、電位−pH図を参照できることを上述した。具体的には、以下のような設定例を好ましく例示することができる。
【0073】
メタンや一酸化二窒素発生を好気条件で抑制する場合、導電性炭素材含有栽培床に付与する電位は、+0.0V〜+1.0V(対標準水素電極基準)の範囲であることが好ましい。メタンや一酸化二窒素を不安定化し、発生を抑制できる電位であれば、嫌気条件で抑制することも可能である。
【0074】
植物の根は通常、硝酸態窒素を栄養として好んで吸収するため、栽培床において硝酸態窒素が不足しないことが望ましい。その一方で、過剰に存在する硝酸態窒素は土壌流出(土壌汚染)の原因になる。栽培床では、好気条件が続くと硝酸態窒素が過剰となり易く、嫌気条件が続くと硝酸態窒素が不足し易い。そのため、本発明においては、メタンや一酸化二窒素発生を抑制する際に、好気条件での抑制と嫌気条件での抑制とを交互に行うことも好ましく、これにより、メタンや一酸化二窒素発生を抑制すると共に、硝酸態窒素の過剰及び不足を回避できる。硝酸態窒素の過剰及び不足が回避されることで、植物の成長を促進すると共に、土壌汚染を防止する効果が得られる。好気条件での抑制と嫌気条件での抑制とを交互に行うために、例えば、タイマーで切り換えをおこなってもよいし、硝酸態窒素の濃度をモニタリングして一定の濃度を境に切り替えをおこなってもよい。
【0075】
窒素含有液を用いる養液栽培において栽培植物に感染する真菌類発生を防止する場合、導電性炭素材含有栽培床に付与する電位は、窒素の中間的な酸化還元性化学種が安定に存在する範囲である−0.2Vから+0.2V(対標準水素電極基準)の範囲であることが好ましく、特に、一酸化二窒素が生成しない領域とすることが好ましい。これにより、例えば根腐れ病の原因菌であるフザリウム菌に対する阻害物質であるヒドロキシルアミン等を安定化でき、植物成長阻害を回避する効果を奏する。
【0076】
また、特に水田の場合は、硫酸塩還元菌の活動により生成する硫化水素が、イネの根に害を及ぼすことが問題となる。水田作土内では、根に共生する細菌Beggiatoalesが、硫化水素を酸化して、硫化水素による害を軽減するように働くが、水田作土の性状によっては、十分に根を保護するものではなかった。電位の付与を行わない水田作土の電位は通常−0.3V(対標準水素電極基準)程度であるが、付与する電位を、−0.3V(対標準水素電極基準)より貴に制御することによって、硫化水素の発生を抑制すると共に、分解を促進して、イネの硫化水素による害を軽減できる効果が得られる。
【0077】
これら所定の電位の設定を正確なものとするために、導電性炭素材含有栽培床のpHをモニタリングすることも好ましいことである。
【0078】
近年、家畜糞尿や汚泥を発酵してメタン又は水素を生成する技術が用いられている。
【0079】
メタン又は水素発酵によりメタン又は水素を得る場合、発酵液に対して、ESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲の導電性炭素材を、該発酵液の乾燥重量の10%以上含有させ、導電性炭素材含有発酵液を形成する。
【0080】
導電性炭素材含有発酵液に付与する電位は、水の電気分解により水素発生しない限界電位(―1.0V)〜―0.5V(対標準水素電極基準)の範囲であることが好ましい。これにより、メタン又は水素の収量を増加する効果が得られる。
【0081】
メタン又は水素発酵は、家畜糞尿や汚泥を原料とすることができるため、環境保護の観点から歓迎されているが、実際には、発酵過程で生成する消化液の廃棄処理が高コスト、高エネルギーを要するため、十分に環境を保護できていないのが実情である。
【0082】
本発明者は、メタン又は水素発酵からの消化液が、植物の成長に必要な栄養源を豊富に含むことに着目し、養液栽培における養液として用いることを検討してきた。
【0083】
しかしながら、栽培床に添加された消化液は、メタン及び一酸化二窒素を多量に発生する要因となる。
【0084】
そこで、電位制御栽培方法の他の態様では、メタン発酵消化液に、ESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲の導電性炭素材を、該メタン発酵消化液の固形分に対して1%(10%)以上含有させた養液を栽培床に添加して導電性炭素材含有栽培床を形成する。
【0085】
そして、この導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に所定の電位を付与し、水の電気分解を防止した状態で、導電性炭素材含有栽培床を所定の電位の近傍に保持する。
【0086】
導電性炭素材含有栽培床に付与する電位を、好ましくは+0.0V〜+1.0V(対標準水素電極基準)の範囲とすることにより、メタンや一酸化二窒素の発生を抑制することができる。
【0087】
発酵時に発酵液に混合した炭素材を、消化液としての栽培床への添加後まで継続して発酵液(消化液)中に保持することも好ましいことである。これにより、発酵時にメタン又は水素の収量を増加する電位を付与し、転じて、栽培床への添加後にメタンや一酸化二窒素の発生を抑制する電位を付与する際に、継続して炭素材を有効利用できる。
【実施例】
【0088】
以下に、本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0089】
1.水田作土における温室効果ガス発生抑制及び硫酸塩還元菌に対する抑制作用
【0090】
(試料1)
本発明の栽培床に相当する水田作土(千葉県睦沢町、含水率約90%)20mlを密閉容器に入れ、炭素棒を作土に挿入して、3電極法によって−0.5V(対Ag/AgCl)の電位を印加して、試料1とした。
【0091】
(試料2)
木片を1400℃で焼成して粉砕し、ESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.01〜0.30の導電性炭素材を得た。
試料1と同様の水田作土20mlに、上記導電性炭素材を乾燥重量で10重量%混合したものを密閉容器に入れ、炭素棒を作土に挿入して、3電極法によって−0.2V(対Ag/AgCl)の電位を印加して、試料2とした。
【0092】
(試料3)
試料2において、印加電位を−0.0V(対Ag/AgCl)とした以外は、試料2と同様にして、試料3とした。
【0093】
(試料4)
試料2において、印加電位を+0.2V(対Ag/AgCl)とした以外は、試料2と同様にして、試料4とした。
【0094】
(試料5)
試料2において、印加電位を+0.4V(対Ag/AgCl)とした以外は、試料2と同様にして、試料5とした。
【0095】
(試料6)
試料2において、水田作土に対する焼成炭素材の重量比を1重量%とし、印加電位を+0.4V(対Ag/AgCl)とした以外は、試料2と同様にして、試料6とした。
【0096】
(試料7)
試料4において、電位の付与を停止した後、3日間放置して試料7とした。
【0097】
(試料8)
試料5において、電位の付与を停止した後、3日間放置して試料7とした。
【0098】
<温室効果ガス濃度の測定>
試料1〜8について、密閉容器から生成するガス中の一酸化二窒素及びメタンの濃度を、ガスクロマトグラフで定量した。検出器として、メタンはTCD、一酸化二窒素はECDを使用した。
【0099】
結果を表1に示す。
【0100】
<硫酸塩還元菌の抑制>
ペプトン、肉エキス、乳酸ナトリウム、モール塩等を混合し、pH7に調整した培地10mlを試験管に分取し、各々の試験管に、試料1〜8を10μlそれぞれ添加し、37℃で3日間放置した。
硫酸塩還元菌の増殖に起因する培地の黒色変化を目視により観察し、硫酸塩還元菌の抑制状態を以下の評価基準で評価した。
◎:培地の変化はなく、硫酸塩還元菌が完全に抑制されている。
○:培地が極僅かに黒変しているが、硫酸塩還元菌は十分に抑制されている。
△:培地が僅かに黒変しているが、硫酸塩還元菌の抑制作用は認められる。
×:培地が黒変し、硫酸塩還元菌の抑制が認められない。
【0101】
結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
<評価>
導電性炭素材の混合を行っていない試料1(比較例)では、メタン、一酸化二窒素の発生量が多く、硫酸塩還元菌の抑制作用が認められなかった。
【0104】
メタンや一酸化二窒素発生を好気条件で抑制する場合に好ましい電位である+0.0V〜+1.0V(対標準水素電極基準)(−0.2V〜+0.8V(対Ag/AgCl電極)に略相当)の範囲の電位を付与した試料2〜6では、メタン、一酸化二窒素の発生が抑制される効果が得られることが分かる。
【0105】
また同時に、付与する電位を−0.5V(対Ag/AgCl電極)(−0.3V(対標準水素電極基準)に略相当)より貴とした試料2〜6では、硫酸塩還元菌の抑制作用が認められた。
【0106】
電位の付与を停止した後3日間放置した試料7、8(参考例)では、放置しなかった試料4、5と比べて、メタン、一酸化二窒素の発生量が増加し、硫酸塩還元菌の抑制作用が低下することがわかる。
【0107】
2.メタン発酵消化液を用いた養液栽培における病害発生抑制
トマト養液栽培に、養液としてメタン発酵消化液を用いる方法において、窒素の中間的な酸化還元性化学種(根腐れ病の原因菌であるフザリウム菌に対する阻害物質であるヒドロキシルアミン等)を安定化できる電位を付与し、病害発生抑制効果を検証した。
【0108】
(実施例1)
1400℃焼成木炭を粉砕して得たESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.03〜0.12の導電性炭素材を、本発明の栽培床に相当するトマト鉢の土壌に、乾式重量比で10%混合して、本発明の導電性炭素材含有栽培床を形成した。
この導電性炭素材含有栽培床に、養液としてメタン発酵消化液を点滴した。点滴部の導電性炭素材含有栽培床の体積抵抗率は700Ωcmであった。
土壌に金属片を挿入し、3電極法で−0.5V(対Ag/AgCl電極)を印加した。
鉢植えトマト5鉢について同試験を行い、根腐病の発生を観察したところ、何れの鉢においても根腐病は見られなかった。
【0109】
(比較例1)
実施例1において、トマト鉢の土壌に導電性炭素材を混合しない以外は実施例1と同様にして、養液の添加(点滴部の土壌の体積抵抗率3kΩcm)及び電位の付与を行って、鉢植えトマト5鉢について試験を行い、根腐病の発生を観察したところ、鉢植えトマト5鉢中2鉢にフザリウム病と見られる症状が顕著に発生した。
【0110】
(実施例2)
メタン発酵消化液に、木炭粉砕粉末であってESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.03〜0.12の導電性炭素材を、該メタン発酵消化液の固形分に対して10%含有させた養液を、実施例1と同様のトマト鉢の土壌(木炭未添加)に点滴供給により添加し、本発明の導電性炭素材含有栽培床を形成した。
この導電性炭素材含有栽培床に金属片を挿入し、3電極法で−0.5V(対Ag/AgCl電極)を印加した。
鉢植えトマト5鉢について同試験を行い、根腐病の発生を観察したところ、フザリウム病と見られる症状が、鉢植えトマト5鉢中2鉢に観察されたが、比較例1と比較して症状は大幅に軽減された。
【0111】
(比較例2)
本発明の栽培床に相当するトマト栽培を行う圃場において、メタン発酵消化液のみからなる養液を、土壌に対して実施例2と同様の添加率となるように、点滴供給により添加した。
鉢植えトマト5鉢中全鉢にフザリウム病の発生が確認された。
【0112】
(実施例3)
比較例2と同様のトマト栽培を行う圃場において、実施例2と同様の養液(導電性炭素材含有)を、土壌に対して同様の添加率となるように、点滴供給により添加し、本発明の導電性炭素材含有栽培床を形成した。
この導電性炭素材含有栽培床に、通電用の金属片を1m間隔で挿入し、3電極法で−1.0V(対Ag/AgCl電極)を印加した。
鉢植えトマト5鉢中1鉢にフザリウム病の発生が確認されたが、その症状は比較例2と比較して軽度のものであった。
【0113】
3.搾乳牛糞尿処理用の嫌気性ポンドにおける温室効果ガス発生抑制
【0114】
(試料9)
搾乳牛糞尿処理時に発生した嫌気性ポンド処理汚泥試料20mlを試験管に採取し、発生ガス捕集用のバッグを付けて、室温でエアレーションを行いながら1ヶ月間放置し、試料9とした。
【0115】
(試料10)
試料9で用いたものと同様の嫌気性ポンド処理汚泥試料20mlを試験管に採取し、木炭粉砕粉末であってESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.03〜0.12の導電性炭素材を、乾燥重量で10%混合し、発生ガス捕集用のバッグを付けて、室温でエアレーションを行いながら1ヶ月間放置し、試料10とした。
【0116】
(試料11)
試料9において、嫌気性ポンド処理汚泥試料に代えて、搾乳牛糞尿を用いた以外は試料9と同様にして、試料11とした。
【0117】
(試料12)
試料10において、嫌気性ポンド処理汚泥試料に代えて、搾乳牛糞尿を用いた以外は試料10と同様にして、試料12とした。
【0118】
<電位の測定>
試料9〜12について、放置の前後における電位を、Ag/AgCl電極を参照極に用いて測定した。
【0119】
結果を表2に示す。
【0120】
<温室効果ガス濃度の測定>
試料9〜12について、生成したガス中の一酸化二窒素及びメタンの濃度を、ガスクロマトグラフで定量した。検出器として、メタンはTCD、一酸化二窒素はECDを使用した。
【0121】
結果を表2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
<評価>
導電性炭素材を混合していない試料9及び11では、エアレーションを行っているにもかかわらず、1ヶ月の放置により、酸化還元電位が大幅に減少し、一酸化二窒素及びメタンの濃度が高くなっていることがわかる。
【0124】
これに対して、導電性炭素材を混合した試料10及び12では、1ヶ月の放置による酸化還元電位の低下がなく、一酸化二窒素及びメタンの濃度の濃度が大幅に減少することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培床に、ESCAによる表面分析でC1S及びO1Sピーク面積から求める元素数比O/Cが0.01〜0.30の範囲の導電性炭素材を乾燥重量で1%以上含有させて導電性炭素材含有栽培床を形成し、
前記導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に所定の電位を付与し、水の電気分解を防止した状態で、前記導電性炭素材含有栽培床を前記所定の電位の近傍に保持して、
前記導電性炭素材含有栽培床における特定の代謝系関与物質の生成を抑制又は促進することを特徴とする電位制御栽培方法。
【請求項2】
前記所定の電位の付与は、前記導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に接触させた電極に通電して行うことを特徴とする請求項1記載の電位制御栽培方法。
【請求項3】
前記所定の電位の付与は、前記導電性炭素材含有栽培床の少なくとも一部に酸化性物質又は還元性物質を添加して行うことを特徴とする請求項1記載の電位制御栽培方法。
【請求項4】
前記導電性炭素材の見かけの体積抵抗率が10Ωcm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電位制御栽培方法。
【請求項5】
前記所定の電位は、−1V〜+1V(対標準水素電極基準)の範囲であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電位制御栽培方法。
【請求項6】
前記導電性炭素材含有栽培床は、畑地、牧草地又はそれに準ずる栽培床からなる栽培床に導電性炭素材を乾燥重量で10%以上含有させて形成することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電位制御栽培方法。
【請求項7】
前記導電性炭素材含有栽培床は、水田作土からなる栽培床に導電性炭素材を乾燥重量で1%以上含有させて形成することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電位制御栽培方法。


【図1】
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【公開番号】特開2012−44921(P2012−44921A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189890(P2010−189890)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(504300088)国立大学法人帯広畜産大学 (96)