説明

電位治療器

【課題】 生体を高電圧によるプラス電位とマイナス電位をかける電界内に置くことにより治療する電位治療器において、生体イオンの急激な移動により発生する不快感を防止する。
【解決手段】 プラス電位とマイナス電位をかける中間にゼロ電位時間を設け、各電圧の印加時間を変化させてイオンバランスをとるようにした。これにより、人体に有害な高電界を防ぐとともに、電位治療効果を増した。マイクロコンピュータで制御された任意関数波形発生器と増幅回路を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に高電圧を印加して治療を行う電位治療器、とくに駆動出力方法に特徴のあるものに関する。
【背景技術】
【0002】
生体に高電圧をかけることによりイオン作用を推進し、正電圧による興奮作用と負電圧による鎮静作用を生体に与えることにより、生体の新陳代謝を強化して生体各部の機能を正常化することを目的とした治療器には、各種の駆動出力方法が考案され、明らかにされている。
【0003】
従来の交流電位治療器は、数百Vから数千Vの交流電圧により生じる電界内に生体を置くことにより、生体内のイオン作用が推進され、血液中のナトリウムやカルシウムのイオン化量がバランスして、正常な値に戻されるため治療効果が得られるとされている。通常は、正負1:1の正弦波交流をそのまま印加するのではなく、興奮作用を有する交流電圧の正電位を鎮静作用を有する負電位より低くすることが行われている。
【0004】
これは、生体内に存在する正負イオンの具体的な比率が1:3であれば、生体の新陳代謝が旺盛になり、治療効果が高まるとの経験則に基ずいて正負の比率が変化させられている。
【0005】
人体に印加される電界波形として、通常は、50又は60Hzの交流を昇圧した正弦波形又は高電圧正弦波形に高電圧直流波形を重畳した直流+交流波形が使用されている。電圧波形として、正弦波は実効電界が約0.7倍になるので、電界の効果を増すため、特許文献1には電圧波形として矩形波を使用して実効電位を増し、正負の電位を制御して1:3に変化させ、治療効果を増す電位治療器も提案されている。
【0006】
正弦波交流又は矩形波駆動のいずれの印加電圧駆動の場合でも、人体にかかる電界の時間変化が正から負に急激に変化するため、人体が電界変化に対応できず、不快感を感ずる場合もあるので、印加電圧波形の立上がり及び立下がりを緩やかにした駆動方式も提案されている(特許文献2)。
【0007】
電位治療器の使用方法としては、使用者が電位治療器を座位で使用する場合と、臥位で使用する場合があるが、何れも絶縁シート上に高電圧電極をセットした通電シートを配置し、その上に人体を置いて使用される。図3に実際の使用例を示す。
【0008】
この場合、電位治療器の負荷は、人体の身長、体重、年齢等で異なり、一定の電界をかけても治療に有効な生体電流が流れるとは限らない。特に交流周波数が30KHz位の高周波を使用する場合は、この傾向が著しくなる。このため、特許文献3には、直流電位及び交流電圧の周波数及び電圧を独立に制御して生体に流れる治療電流を制御する電位治療器も提案されている。
【0009】
直流電位及び交流周波数、電圧はマイクロコンピュータで生体電流を一定にするように制御され、治療効果を上げることも提案されている。
【0010】
また、電位治療器を医院等で治療目的に使用するときは、多数並べて使われる場合が多い。多数の電位治療器を並列運転する場合は、隣り合った治療器の印加電圧の位相が異なると、180度位相がずれた場合、隣同志では正負の電界がプラスされるので、大きな電位差が生じ、双方で放電が起こる場合もあるので、同期運転することも提案されている(特許文献4)。
【0011】
人体内の正負イオンの移動速度は速くなく慣性があるので、急激に電界変化が起こると対応が難しく不快感が生じる。図3は、電位治療器と、それを用いる場合の付属品を示す斜視図であり、(a)は椅子式、(b)は横臥式の例を示す。従来例の電圧駆動波形の代表的な例を図4に示す。図3において、101は電位治療器、102は絶縁マット、103は電極を含むマット、104は高圧ケーブル、105は治療器椅子、106は治療器マットである。
【0012】
図3に示されるように、電位治療器101の電極103上に人体を置いた場合、人体から離れた部分では電界強度が弱くなるので、イオンの移動速度も遅くなり、生体のイオンバランスをとるには時間がかかる。正負電圧波形が時間的につながった従来の駆動方式では、波形のプラス−マイナス、またマイナス−プラスの立上げ立下げ時間を制御することも提案されているが、生体反応はタイムラグがあるので、50−60Hzの比較的低い周波数の交流高電圧を使用した電位治療器でも、イオンの安定バランスを得ることは難しい。
【0013】
また、イオンバランスを取るため、正負の印加電圧を1:3にすることも提案され、各種の電気回路も提案されているが、負イオンをバランスするための電圧が高くなりすぎる場合が生じ、放電等の危険が生じる場合も出てくる(特許文献5)。
【0014】
生体が電界を受け、その電界強度に対応して安定化するには、時間がかかるので、従来の電圧駆動方式では使用中に不快感等を生じることがあった。
【特許文献1】特開2006−239032号公報
【特許文献2】特開2007−111196号公報
【特許文献3】特開2003−24456号公報
【特許文献4】特開2006−346301号公報
【特許文献5】特開平7−284535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従来の電位治療器の欠点を是正すること、すなわち、使用中に不快感等を生じることがない電位治療器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、生体イオンの電界による移動速度及び安定化に時間を要することに注目してなされたものであり、生体イオンが一定の電界強度を得て安定化するには、まず、電界強度に対応した移動速度で平衡点に達するまで移動するか又は変位する。次に、移動又は変位した位置で細胞内の他イオン等と相互作用して安定化する。
【0017】
印加電界強度が生体内のイオンを直接正負反転させる等の変化をさせるわけではないので、電位治療器の電極から離れた身体部分においても正負のイオンバランス1:3を得るためには、かなり強い負の強電界を人体にかける必要があり、異常放電のような危険が生じる場合がある。強い負電界を人体にかけるには、電位治療器の充分な絶縁性が要求され、夏場の湿度の高い時期には異常放電等起こす危険が増えるので、負電界をかける時間を制御してイオンバランスを調整して治療効果を得ることが望ましい。
【0018】
本発明の特徴点を羅列する。第一点は、正負の電界を生体にかける場合、正負の電界をかける時間帯を制御して正負の電界の間に無電界の休止時間を設けたことである。第二点は、正負の電界をかける時間を制御して、生体にかかる電界波形及び時間を変化させて、最適治療効果を得るようにしたことである。第三点は、前記効果を発揮するため、電位治療器を任意関数発生器、その関数発生器よりの電圧を昇圧して電位治療器の電極に所定の波形の高電圧を発生する増幅器及び全体を制御するマイコンを含むコントローラから構成したことである。以下に、詳述する。
【0019】
本発明は、上記目的を達成するため、生体を高電圧電界内に置き、プラス電位とマイナス電位を交互に印加することにより治療する電位治療器において、プラス電位とマイナス電位をかける時間の間に無電位の時間を設ける印加電位制御手段を備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0020】
そして、本発明は、前記印加電位制御手段が、プラス電位を印加する時間及びマイナス電位を印加する時間が可変であることを特徴としている(請求項2)。
【0021】
さらに、本発明は、前記印加電位制御手段が、無電位にする時間、もしくは、プラス電位を印加する時間、マイナス電位を印加する時間及び無電位にする時間が可変であることを特徴としている(請求項3)。
さらに、本発明は、電位治療器が、任意の電圧波形を出力する関数発生器、その関数発生器からの電圧波形を所定の高電圧に昇圧する増幅器及びこれらを制御するマイクロコンピュータ(マイコン)からなるコントローラから構成されていることを特徴としている(請求項4)。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、交流印加電圧波形において所定の時間ゼロ電位を人体に付加することにより、生体がプラス電位からマイナス電位に滑らかに移行できるので、電位治療で安定感が得られる。従って、生体内のイオンの急激な移動による不快感を起こすことを防止することができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、プラス電位を印加する時間及びマイナス電位を印加する時間が可変であるので、プラス及びマイナス電圧の継続時間を変えることによりイオンバランスを得易くなり、従って、生体内のイオンの急激な移動による不快感を起こすことを防止することができる。
【0024】
請求項3の発明によれば、ゼロ電位を継続する時間を任意に設定できるので、プラス又はマイナス電位状態にあった生体のイオンバランスが平衡状態に戻らない間に逆電界が印加されて治療者に不快感を与えることがないように、最適な継続時間を選定することができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、関数発生器より出力された所定の電圧波形は昇圧回路で必要な電圧まで増幅され、電極に供給されるが、関数発生器を使用することにより、正弦波、矩形波、変形交流波等各種の印加電圧波形を発生でき、各波形の通電時間をマイコンで任意に制御するので、より効率的な治療効果が得られやすい電位治療器の提供が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態について、図1及び図2に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る電位治療器の構成を概略的に示すブロックダイヤグラム、図2は関数発生器が発生する各種の電圧波形を例示する波形図である。図2において、(A)は正弦波駆動で負電圧と正電圧の比率が1:3の場合、(B)は矩形波駆動で負電圧と正電圧の継続時間の比率が1:3の場合、(C)は連続波駆動で、負電圧と正電圧の継続時間の比率が1:3の場合を示す。
【0027】
図1において、1はマイクロコンピュータ(マイコン)を中心として構成されたコントローラであり、図示されていない操作部を操作して、プラス電位を印加する時間、マイナス電位を印加する時間をそれぞれ任意に設定することができるように構成されている。また、好ましい実施の態様においては、さらに、プラス電位とマイナス電位をかける時間の間に無電位にする時間を任意に設定することができるように構成されている。
【0028】
そして、コントローラ1の中には、図示されていない印加電位制御手段が設けてあり、その印加電位制御手段は、前記操作部において設定された時間に応じて、プラス電位とマイナス電位を交互に印加し、かつ、そのプラス電位とマイナス電位の印加時間の間に設定された時間、電位をゼロにする機能を備えている。
【0029】
ゼロ電位を継続する時間は、コントローラ1で任意に設定できるが、1秒以上5秒以内程度の時間が望ましい。1秒未満では、プラス電位又はマイナス電位状態にあった生体のイオンバランスが平衡状態に戻らない間に逆電界が印加されるため、治療者に不快感を与える場合があり、また、5秒を超えると、印加電圧の休止時間が長くなり、治療効率が落ちるからである。
【0030】
図1において、2は任意の電圧波形を発生する、例えばバイポーラー高圧増幅器等の関数発生器である。コントローラ1における設定値に対応する制御により、関数発生器2はプラス電位及びマイナス電位の付加時間を変えた電圧波形を出力する。
【0031】
従来の電位治療器は、正弦波、変形交流波、矩形波又はこれらの波形の合成波に直流電圧を重畳して使用するが、いずれの電圧波形も正負の電圧印加時間は同じである。このため、生体に有効であるとされている正負1:3のイオンバランスをとるため、マイナス電位はプラス電圧に対して3倍程度の高い電圧をかけている場合が多い。人体内のイオン移動は、電界強度に比例して速くなるものでもなく、実際の電位治療器の使用状況からみて、人体各部に一様な電界強度がかかっているわけではないので、いたずらに人体にマイナスの高電圧をかけて異常放電又は異常電流を人体に流すことは、治療効果にとってマイナスになる場合もある。
【0032】
図3(a)に示す椅子型の電位治療器101は、電位治療用電極を含むカバー103の上に座位して使用されるが、カバー103に近い人体には強い電界がかかり、カバー103から離れるに従って電界強度は下がる。従って、カバーから離れた人体部分に短時間で有効な高電界をかける時は、カバー103から近い部分では必要以上の電界強度になり治療効果がなくなる場合が起こる。
【0033】
本発明に係る電位治療器は、関数発生器2より出力される電圧波形においてプラス及びマイナス電圧の継続時間を変えることにより、イオンバランスを得ることを可能にした。 一例としては、マイナス電圧の付加時間をプラス時間の付加時間の3倍にすることにより、人体に必要かつ有効であるとされる正負1:3のイオンバランスを得ている。
使用される人体の状況によっては、この電圧継続時間を治療効果が最適になるよう制御する。この最適値データは、マイコンのメモリに記憶されるように構成されているので、電位治療器の次回以後の使用時には、この記憶されたデータを呼出して使用することができる。従って、良好な治療を反復して受けることができる。
【0034】
また、プラス電位及びマイナス電位の持続時間を変えることにより、生体のイオンバランスをとることができるため、異常な高電界をかけたり、異常放電等人体に有害な現象を及ぼしたりすることはなくなる。従って、安全な電位治療器を提供することができる。
また、比較的低い電界を人体に必要な時間かけることにより、生体内のイオンの急激な移動による不快感を起こすこともなくなるので、従来型の電位治療器の問題点が解消される。
【0035】
実際の使用形態は、必ずしも、図1のブロックダイヤグラムに限定されない。
関数発生器2より出力された所定の電圧波形は、高圧増幅器3により必要な電圧まで増幅されて、電位治療用電極4に供給される。関数発生器2を使用することにより、正弦波,矩形波、変形交流波等の各種の電圧波形が発生でき、各波形の通電時間は、コントローラ1のマイコンで任意に制御するので、より効率的な治療効果が得られやすい電位治療器の提供が可能である。
【0036】
本発明はプラス及びマイナス電圧の印可の間に所定のゼロ電位時間を設けること及びプラス−マイナスの電界印加時間を変えることにより滑らかに生体内のイオンバランスを得ることが目的である。このため、必要な電圧波形が得られる回路構成は必ずしも図4には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る電位治療器の構成を概略的に示すブロックダイヤグラム。
【図2】関数発生器が発生する本発明に係る各種の電圧波形を例示する波形図。
【図3】電位治療器とそれを用いる場合の付属品を示す斜視図。
【図4】電圧駆動波形の代表的な例を示す波形図。
【符号の説明】
【0038】
1 コントローラ
2 関数発生器
3 高圧増幅器
4 電位治療用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を高電圧電界内に置き、プラス電位とマイナス電位を交互に印加することにより治療する電位治療器において、プラス電位とマイナス電位をかける時間の間に無電位の時間を設ける印加電位制御手段を備えたことを特徴とする電位治療器。
【請求項2】
印加電位制御手段は、プラス電位を印加する時間及びマイナス電位を印加する時間が可変であることを特徴とする請求項1に記載の電位治療器。
【請求項3】
印加電位制御手段は、無電位にする時間が可変であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電位治療器。
【請求項4】
任意の電圧波形を出力する関数発生器、その関数発生器からの電圧波形を所定の高電圧に昇圧する増幅器及びこれらを制御するマイクロコンピュータからなるコントローラから構成されている請求項1、2又は3に記載の電位治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−125358(P2009−125358A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304291(P2007−304291)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(302000438)有限会社 日本アルタ (7)
【Fターム(参考)】