説明

電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物および電力ケーブル

【課題】ケーブル防食層上に電力ケーブルの連続的な静電容量測定や耐電圧試験に適した密着性の良い導電層を形成する。
【解決手段】電力ケーブルの防食層上に、(A)密度0.910〜0.960g/cm、MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)0.10〜0.30g/10分のポリエチレン85〜95質量%および(B)エチレン系共重合体5〜15質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)粒子径25〜45nmの導電性カーボンブラック5〜20質量部を含有する組成物からなる表面導電層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物およびこれを用いた電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に直接埋設されるいわゆる直接埋設式電力ケーブルとして、最外層に防食層を備えた架橋ポリエチレン絶縁ケーブルが使用されている。図3は、その一例を示したもので、導体1上に内部半導電層2、架橋ポリエチレン絶縁体3、外部半導電層4、遮蔽層5、アルミなどの金属シース6、およびポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などからなる防食層7を順に被覆した構造を有し、遮蔽層5と金属シース6の間は空隙21となっている。そして、このようなケーブルにおいては、連続的に静電容量を測定したり、防食層7の定期的な耐電圧試験を実施できるように、防食層7の表面にさらにグラファイトを塗布することにより導電層を設けることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、このグラファイトからなる導電層は密着性に乏しいため、延線の際などに防食層から脱落しやすく、連続的な静電容量の測定や耐電圧試験が実施できなくなるおそれがあった。
【0004】
そこで、グラファイトに代わり、押出被覆が可能な導電性樹脂組成物を用いて防食層上に密着性の良好な導電層を形成することが検討されている。しかし、未だそのような組成物は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−38269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、ケーブル防食層上に連続的な静電容量測定や耐電圧試験に適した密着性の良い導電層を形成することができる電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物、およびそのような導電性樹脂組成物を用いた、連続的な静電容量測定や安定した耐電圧試験が可能な電力ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の密度およびMFR(メルトフローレート)を有するポリエチレンと、エチレン系共重合体に、特定の粒子径の導電性カーボンブラックを配合することにより、防食層上に連続的な静電容量測定や耐電圧試験に適した密着性の良い導電層を形成可能な導電性樹脂組成物、およびこれを用いた電力ケーブルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記目的を解決するため、請求項1に記載された発明は、(A)密度0.910〜0.960g/cm、MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)0.10〜0.30g/10分のポリエチレン85〜95質量%および(B)エチレン系共重合体5〜15質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)粒子径25〜45nmの導電性カーボンブラック5〜20質量部を含有することを特徴とする電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物において、(A)成分90〜95質量%および(B)成分5〜10質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)成分5〜10質量部を含有することを特徴とする電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物である。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物において、(B)成分のエチレン系共重合体は、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・アクリル酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物である。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物において、(B)成分のエチレン系共重合体は、アクリル酸エステル含有量10〜40質量%、MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)2.00〜6.00g/10分のエチレン・アクリル酸エステル共重合体を含むことを特徴とする電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物である。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項4記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物において、エチレン・アクリル酸エステル共重合体は、エチレン・アクリル酸エチル共重合体であることを特徴とする電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物である。
【0013】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物において、(C)成分の導電性カーボンブラックは、ケッチェンブラックであることを特徴とする電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物である。
【0014】
請求項7に記載された発明は、防食層を備えた電力ケーブルであって、前記防食層上に、請求項1乃至6のいずれか1項記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物からなる表面導電層を有することを特徴とする電力ケーブルである。
【0015】
請求項8に記載された発明は、請求項7記載の電力ケーブルにおいて、前記防食層は、ポリエチレン樹脂からなることを特徴とする電力ケーブルである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物は、ケーブル防食層上に連続的な静電容量測定や耐電圧試験に適した密着性の良い導電層を形成することができる。
【0017】
また、本発明の電力ケーブルは、このような特性を有する導電層を防食層上に備えるので、連続的な静電容量測定や安定した耐電圧試験が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電力ケーブルの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の電力ケーブルの他の実施形態を示す断面図である。
【図3】従来の電力ケーブルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
まず、本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物について説明する。
【0021】
本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物のベースポリマーとして使用される(A)成分のポリエチレンは、密度が0.910〜0.960g/cmで、MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)が0.10〜0.30g/10分である。密度が0.910g/cm未満であると外力を受けた際に傷が付きやすくなるおそれがあり、0.960g/cmを超えると可とう性が悪くなるおそれがある。密度は0.920〜0.950g/cmであることが好ましく、0.930〜0.950g/cmであることがより好ましい。また、MFRが0.10〜0.30g/10分の範囲を外れると押出加工性が著しく低下するおそれがある。ポリエチレンは前記条件を満足するものであれば、その種類は特に限定されるものではなく、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)であってもよく、あるいは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などであってもよい。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
また、(B)成分のエチレン系共重合体としては、エチレンに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのビニルエステルを共重合させたエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレンに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルを共重合させたエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体;エチレンに、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどの不飽和カルボン酸を共重合させたエチレン・不飽和カルボン酸共重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
(B)成分のエチレン系共重合体としては、良好な加工性、および機械的特性(特に、引張伸び)を得る観点からは、なかでも、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体などのエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸エチル共重合体などのエチレン・アクリル酸エステル共重合体が好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステル含有量が10〜40質量%、MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)2.00〜6.00g/10分のエチレン・アクリル酸エステル共重合体である。アクリル酸エステル含有量が10質量%未満では、導電性カーボンブラックの添加が難しくなるおそれがあり、40質量%を超えると、機械的特性が低下するおそれがある。また、MFRが2.00〜6.00g/10分の範囲を外れると、本組成物の製造時に(A)成分との相溶性が悪くなるおそれがある。アクリル酸エステル含有量は15〜40質量%であることがより好ましい。エチレン・アクリル酸エステル共重合体としては、特に、エチレン・アクリル酸エチル共重合体が、(C)成分の導電性カーボンブラックを添加した際の剪断発熱による熱分解のおそれがない点から好ましい。
【0024】
本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物のベースポリマーにおける上記(A)成分および(B)成分の配合割合は、(A)成分のポリエチレンが85〜95質量%、好ましくは90〜95質量%、(B)成分のエチレン系共重合体が5〜15質量%、好ましくは5〜10質量%である。(B)成分のエチレン系共重合体の配合割合が5質量%に満たないと加工性、機械的特性などが低下する。また、(B)成分のエチレン系共重合体の配合割合が15質量%を超えると、機械的特性(引張伸び)が低下するとともに、外力を受けた際に傷が付きやすくなるおそれがある。
【0025】
本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物において使用される(C)成分の導電性カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。(C)成分の導電性カーボンブラックとしては、なかでも、機械的特性の点からケッチェンブラックが好ましい。(C)成分の導電性カーボンブラックは、粒子径が25〜45nmであるが、良好な加工性を得る観点からは、(C)成分の導電性カーボンブラックの粒子径は30〜40nmであることが好ましい。
【0026】
この(C)成分の導電性カーボンブラックの配合量は、前述したベースポリマー成分である(A)成分および(B)成分の合計量100質量部に対して、5〜20質量部、好ましくは5〜10質量部である。配合量が5質量部未満では、導電性が不十分となり、また、20質量部を超えると、機械的強度、特に引張伸びが低下するとともに、硬くなって押出被覆が困難となる。
【0027】
本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物には、以上の各成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、加工助剤、架橋剤、架橋助剤、滑剤、安定剤、難燃剤、難燃助剤などの添加剤を配合することができる。例えば、可塑剤としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸およびそれらの金属塩などが挙げられる。また、軟化剤としては、鉱物油、ワックス、パラフィン類などが挙げられる。さらに、難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、グアニジン系、メラミン系などの窒素系難燃剤、リン酸アンモニウム、赤燐などのリン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、ホウ酸亜鉛などのホウ酸化合物、炭酸カルシウムなどが例示される。
【0028】
本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物は、以上の各成分をバンバリーミキサ、タンブラー、加圧ニーダ、混練押出機、ミキシングローラなどの通常の混練機を用いて均一に混合することにより容易に製造することができる。
【0029】
本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物は、JIS K 7113に準拠して測定される引張伸びが350%以上であることが好ましく、450%以上であることがより好ましい。引張伸びが350%未満ではケーブル被覆として要求される可とう性を満足することができないおそれがある。
【0030】
また、本発明の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物は、体積固有抵抗が1×10Ω・cm未満であることが好ましく、1×10Ω・cm未満であることがより好ましい。体積固有抵抗が1×10Ω・cm以上であると、ケーブルに高電圧を印加した際の電界の緩衝材として働く半導電層としての機能が損なわれるおそれがある。
【0031】
次に、上記電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物を用いた本発明の電力ケーブルについて記載する。
【0032】
図1は、本発明の電力ケーブルの一実施形態を示す横断面図である。
【0033】
図1において、11は、例えば多数本の銅素線を撚り合わせ円形圧縮加工を施してなる導体を示している。この導体11上には、内部半導電層12、架橋ポリエチレンなどからなる絶縁体13、外部半導電層14、遮蔽層15、アルミなどからなる金属シース16およびポリエチレン樹脂などからなる防食層17が順に設けられ、遮蔽層15と金属シース16の間は空隙20となっている。そして、防食層17上には、前述した電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物を押出被覆することによって、例えば厚さ0.3〜1.5mmの表面導電層18が形成されている。
【0034】
このように構成される電力ケーブルにおいては、防食層17上に、防食層17に対する密着性に優れ、かつ、機械的特性および導電性が良好な表面導電層18が形成されるので、防食層17の連続的な静電容量測定や耐電圧試験を安定して実施することができる。
【0035】
本発明は、防食層を備えた電力ケーブルであれば、従来より知られる各種電力ケーブルに広く適用可能である。
【0036】
例えば、図2は、遮蔽層15上に、防食層を兼ねるポリエチレン樹脂などからなるプラスチックシース19が設けられている点を除いて、図1に示す電力ケーブルと同様に構成されている。このように構成される電力ケーブルにおいても、防食層を兼ねるプラスチックシース19上に、このプラスチックシース19に対する密着性に優れ、かつ、機械的特性および導電性が良好な表面導電層18が形成されているので、電力ケーブルの連続的な静電容量測定やプラスチックシース19の耐電圧試験を安定して実施することができる。
【0037】
また、図1および図2に示す電力ケーブルはいずれも単心型の電力ケーブルであるが、3心型やトリプレックス型のケーブルであってもよく、同様の効果を得ることができる。
【0038】
本発明は、以上説明した実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
高密度ポリエチレン:
密度0.943g/cm
MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)0.24g/10分
エチレン・アクリル酸エチル共重合体:
アクリル酸エチル含有量25質量%、
MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)5.00g/10分
ケッチェンブラック:
ライオン社製 商品名 ケッチェンブラックEC600JD(粒子径34nm)
【0040】
実施例1
高密度ポリエチレン87質量部、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)13質量部、およびケッチェンブラック6質量部を加圧ニーダを用いて均一に混練して導電性樹脂組成物を得た。
【0041】
次いで、断面積325mmの円形圧縮銅導体上に、内部半導電層、7.0mm厚の架橋ポリエチレン絶縁体、外部半導電層、0.1mm厚の遮蔽銅テープからなる遮蔽層、ポリエチレン樹脂からなる3.0mm厚のプラスチックシースを順に被覆してなる外径約44mmの22kV級CEケーブル上に、上記導電性樹脂組成物を表面導電層として0.5mm厚に押出被覆して電力ケーブルを得た。
【0042】
実施例2〜5、比較例1〜5
配合成分および配合量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして導電性樹脂組成物を得、さらに、得られた導電性樹脂組成物を用いて実施例1と同様にして電力ケーブルを製造した。
【0043】
上記各実施例および各比較例で得られた導電性樹脂組成物および電力ケーブルについて、下記に示す方法で各種特性を評価した。
【0044】
[引張伸び]
導電性樹脂組成物を180℃で5分間プレス成形して1mm厚の試験片を作成し、この試験片についてJIS K 7113に準拠して、引張速度50mm/分で測定した。
【0045】
[体積固有抵抗]
上記と同様にして作製した1mm厚さの試験シート上にφ50mmの電極を載せ、デジタルマルチメータにて測定した。
【0046】
[耐外傷性]
銅導体上に導電性樹脂組成物を0.5mm厚に押出被覆して絶縁電線を得、この絶縁電線について、スクレープ摩耗試験機(東洋精機製作所製)を用い、導体が露出するまでの回数を測定した。
【0047】
[押出加工性]
導電性樹脂組成物を押し出した際の状況から下記の基準で評価した。
◎:円滑に押出被覆可能
○:押出被覆可能(実用上、問題なし)
×:押出被覆が困難
【0048】
[防食層に対する密着性]
面取り加工(半径0.3mm)したエッジを持つ竹べらをケーブルに手で押し付けながら長さ方向に移動させ、竹べらに被覆が付着乃至堆積した場合を×(不良)、付着乃至堆積しなかった場合を○(良好)として評価した。
【0049】
これらの結果を表1の下欄に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、実施例1〜5はいずれも引張伸び、体積固有抵抗、耐外傷性、押出加工性、防食層に対する密着性において良好な結果が得られた。さらに、ポリエチレン90〜95質量%、エチレン・アクリル酸エステル共重合体5〜10質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、導電性カーボンブラック5〜10質量部とすることにより、引張伸び、体積固有抵抗、耐外傷性、押出加工性において極めて良好な結果が得られた(実施例2、3)。
【符号の説明】
【0052】
11…導体、12…内部半導電層、13…架橋ポリエチレン絶縁体、14…外部半導電層、15…遮蔽層、16…金属シース、17…防食層、18…表面導電層、19…プラスチックシース、20…空隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)密度0.910〜0.960g/cm、MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)0.10〜0.30g/10分のポリエチレン85〜95質量%および(B)エチレン系共重合体5〜15質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)粒子径25〜45nmの導電性カーボンブラック5〜20質量部を含有することを特徴とする電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分90〜95質量%および(B)成分5〜10質量%からなるベースポリマー100質量部に対し、(C)成分5〜10質量部を含有することを特徴とする請求項1記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分のエチレン系共重合体は、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・アクリル酸エステル共重合体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分のエチレン系共重合体は、アクリル酸エステル含有量10〜40質量%、MFR(JIS K 7210;190℃、2.16kg)2.00〜6.00g/10分のエチレン・アクリル酸エステル共重合体を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物。
【請求項5】
エチレン・アクリル酸エステル共重合体は、エチレン・アクリル酸エチル共重合体であることを特徴とする請求項4記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分の導電性カーボンブラックは、ケッチェンブラックであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物。
【請求項7】
防食層を備えた電力ケーブルであって、
前記防食層上に、請求項1乃至6のいずれか1項記載の電力ケーブル防食層被覆用導電性樹脂組成物からなる表面導電層を有することを特徴とする電力ケーブル。
【請求項8】
前記防食層は、ポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項7記載の電力ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−71096(P2011−71096A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155463(P2010−155463)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】