説明

電力伝送システム

【課題】能動電極を囲むように受動電極を配置することにより周囲への不要な電界が漏えいすることを未然に防止することができ、電極形状の制約を緩和することができる電力伝送システムを提供する。
【解決手段】送電装置又は受電装置は、柱状部と柱状部を囲む第一の筒状部とを備え、受電装置又は送電装置は、柱状部と第一の筒状部との間に装着することが可能な第二の筒状部を備えている。柱状部の外表面近傍と第二の筒状部の内表面近傍とに沿って、互いに対向する能動電極又は受動電極を、第一の筒状部の内表面近傍と第二の筒状部の外表面近傍とに沿って、互いに対向する受動電極又は能動電極が形成してある。受電装置の第二の受動電極と送電装置1の第一の受動電極の少なくとも一方が、送電装置の第一の能動電極及び受電装置の第二の能動電極の周囲を囲むように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的に接続することなく電力を伝送する電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で電力を伝送する電子機器が多々開発されている。電子機器において非接触で電力を伝送するためには、電力の送電ユニットと、電力の受電ユニットとの双方にコイルモジュールを設けた電磁誘導方式の電力伝送システムが採用されることが多い。
【0003】
しかし、磁界結合方式では、各コイルモジュールを通過する磁束の大きさが起電力に大きく影響され、電力を高い効率で伝送するためには、送電ユニット側(一次側)のコイルモジュールと受電ユニット側(二次側)のコイルモジュールとのコイル平面方向の相対位置の制御に高い精度が要求される。また、結合電極としてコイルモジュールを用いているので、送電ユニット及び受電ユニットの小型化が難しくなる。さらに、携帯機器等では、コイルの発熱による蓄電池への影響を考慮する必要があり、配置設計上のボトルネックになるおそれがあるという問題もあった。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、同心円筒構造を有する一次側コネクタと二次側コネクタとを用いる電磁誘導型コネクタを用いた非接触の電力伝送システムが開示されている。特許文献1では、一次側コネクタと二次側コネクタとを結合した場合、各コイルユニットに設けた一次と二次との両コアにより閉じた磁気回路が構成され、一次側から二次側へ電力が供給可能となっている。そして、両コアの長さ、挿入深さにばらつきが生じた場合であっても、電磁波の漏れを抑制して電力伝送効率を安定させている。また、特許文献2では、電気シェーバや電動歯ブラシに適用する、一次コイルから二次コイルへと電力を供給する非接触給電機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−260642号公報
【特許文献2】特許第4092895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示してある非接触給電機器を用いる電磁誘導方式を用いた非接触の電力伝送システムでは、電磁波の漏れが外部機器に影響を及ぼすおそれが残されている。その点、特許文献1では、両コアの相対位置を固定化することができるので、電磁波の漏れを抑制することはできる。
【0007】
しかし、電磁誘導方式を用いずに電界結合方式を用いた非接触の電力伝送システムにおいて、特許文献2の一次コイルと二次コイルとを互いに対向する一対の能動電極に置き換えただけでは、受動電極の構造によっては不要な電界が漏えいし、外部機器に影響を及ぼすおそれが残されていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、能動電極を囲むように受動電極を配置することにより周囲への不要な電界が漏えいすることを未然に防止することができ、電極形状の制約を緩和することができる電力伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る電力伝送システムは、第一の受動電極と、第一の能動電極と、前記第一の受動電極と前記第一の能動電極との間に接続された電圧発生回路とを有する送電装置と、該送電装置に装着された場合に、前記第一の受動電極に空隙を介して対向する第二の受動電極と、前記第一の能動電極に空隙を介して対向する第二の能動電極とを有する受電装置とを備える電力伝送システムであって、前記受電装置の前記第二の受動電極と前記送電装置の前記第一の受動電極の少なくとも一方が、前記送電装置の前記第一の能動電極及び前記受電装置の前記第二の能動電極の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、比較的低電位である受電装置の第二の受動電極と送電装置の第一の受動電極の少なくとも一方が、比較的高電位である送電装置の第一の能動電極及び受電装置の第二の能動電極の周囲を囲むように配置されているので、周囲へ不要な電界が漏えいすることを未然に防止することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記送電装置又は前記受電装置は、柱状部と該柱状部を囲む第一の筒状部とを備え、前記柱状部の外表面近傍に沿って前記第一の能動電極又は前記第二の能動電極が形成され、前記第一の筒状部の内表面近傍に沿って前記第一の受動電極又は前記第二の受動電極が形成され、前記受電装置又は前記送電装置は、第二の筒状部を備え、前記第二の筒状部の内表面近傍に沿って第二の能動電極又は第一の能動電極が形成され、前記第二の筒状部の外表面近傍に沿って第二の受動電極又は第一の受動電極が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記構成では、送電装置(受電装置)は、柱状部と柱状部を囲む第一の筒状部とを備え、受電装置(送電装置)は、柱状部と第一の筒状部との間に装着することが可能な第二の筒状部を備えている。柱状部の外表面近傍と第二の筒状部の内表面近傍とに沿って、互いに対向する能動電極(受動電極)を、第一の筒状部の内表面近傍と第二の筒状部の外表面近傍とに沿って、互いに対向する受動電極(能動電極)が形成され、比較的低電位である受電装置の第二の受動電極と送電装置の第一の受動電極の少なくとも一方が、比較的高電位である送電装置の第一の能動電極及び受電装置の第二の能動電極の周囲を囲むように配置されているので、周囲へ不要な電界が漏えいすることを未然に防止することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記送電装置の前記第一の受動電極と、前記受電装置の前記第二の受動電極との間の容量は、前記送電装置の前記第一の能動電極と、前記受電装置の前記第二の能動電極との間の容量より大きくなるよう電極が配置されていることが好ましい。
【0014】
上記構成では、送電装置の第一の受動電極と、受電装置の第二の受動電極との間の容量は、送電装置の第一の能動電極と、受電装置の第二の能動電極との間の容量より大きくなるよう、両電極が対向する面積、両電極間の距離、あるいは高い誘電率を有する樹脂シート等の積層等を調整して両電極が配置されているので、高い伝送効率で電力を伝送することが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記送電装置の前記第一の受動電極と、前記受電装置の前記第二の受動電極との間の容量は、前記送電装置の前記第一の能動電極と、前記受電装置の前記第二の能動電極との間の容量の2倍以上となるよう電極が配置されていることが好ましい。
【0016】
上記構成では、送電装置の第一の受動電極と、受電装置の第二の受動電極との間の容量は、送電装置の第一の能動電極と、受電装置の第二の能動電極との間の容量の2倍以上となるよう電極が配置されているので、確実に高い伝送効率で電力を伝送することが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記送電装置の前記第一の受動電極の底面側、及び前記受電装置の前記第二の受動電極の上面側は、それぞれ他の受動電極により塞がれていることが好ましい。
【0018】
上記構成では、送電装置の第一の受動電極の底面側、及び受電装置の第二の受動電極の上面側は、それぞれ他の受動電極により塞がれているので、周囲への不要な電界が漏えいすることをより確実に防止することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記送電装置の前記第一の能動電極に隣接する第三の能動電極と、前記受電装置の前記第二の能動電極に隣接する第四の能動電極とを備え、前記受電装置の前記第二の受動電極と前記送電装置の前記第一の受動電極とが、前記送電装置の前記第一の能動電極及び前記第三の能動電極、並びに前記受電装置の前記第二の能動電極及び前記第四の能動電極の周囲を囲むように配置されていることが好ましい。
【0020】
上記構成では、送電装置の第一の能動電極に隣接する第三の能動電極と、受電装置の第二の能動電極に隣接する第四の能動電極とを備えている。受電装置の第二の受動電極と送電装置の第一の受動電極とが、送電装置の第一の能動電極及び第三の能動電極、並びに受電装置の第二の能動電極及び第四の能動電極の周囲を囲むように配置されているので、高い伝送効率で電力を伝送することができるとともに、高い信頼性でデータ通信を行うことも可能となる。
【0021】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記送電装置の前記第一の能動電極と前記受電装置の第二の能動電極とが互いに対向する面、及び前記送電装置の前記第一の受動電極と前記受電装置の第二の受動電極とが互いに対向する面は、それぞれ防水構造を有していることが好ましい。
【0022】
上記構成では、送電装置の第一の能動電極と受電装置の第二の能動電極とが互いに対向する面、及び送電装置の第一の受動電極と受電装置の第二の受動電極とが互いに対向する面は、それぞれ防水構造を有しているので、水周りで使用する機器に用いる場合であっても送電装置の防水性を確保することが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記送電装置は、二次電池と、整流回路とを備え、該整流回路の第一の出力端子及び第二の出力端子は、前記二次電池に接続されており、第一の入力端子を前記送電装置の前記第一の受動電極に、第二の入力端子を前記送電装置の前記第一の能動電極に、それぞれ接続されていることが好ましい。
【0024】
上記構成では、送電装置は、二次電池と、整流回路とを備え、該整流回路の第一の出力端子及び第二の出力端子は、二次電池に接続されており、第一の入力端子を送電装置の第一の受動電極に、第二の入力端子を送電装置の第一の能動電極に、それぞれ接続されているので、送電装置の筐体を完全に密閉することができ、水周りで使用する機器に用いる場合であっても送電装置への水の浸入経路を完全に遮断することができ、確実に防水性を確保することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る電力伝送システムは、前記柱状部は円柱状であり、前記第一の筒状部及び前記第二の筒状部は円筒状であることが好ましい。
【0026】
上記構成では、柱状部が円柱状であり、第一の筒状部及び第二の筒状部が円筒状であるので、送電装置に受電装置を装着した状態で、送電装置に対して受電装置を回転することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る電力伝送システムでは、比較的低電位である受電装置の第二の受動電極と送電装置の第一の受動電極の少なくとも一方が、比較的高電位である送電装置の第一の能動電極及び受電装置の第二の能動電極の周囲を囲むように配置されているので、周囲へ不要な電界が漏えいすることを未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電力伝送システムの構成を模式的に示す等価回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電力伝送システムの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電力伝送システムの能動電極及び受動電極の配置構成を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る電力伝送システムの構成を示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る電力伝送システムの電極の位置関係を示す模式断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る電力伝送システムの電極の構成を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る電力伝送システムをスマートフォン(電子機器)に適用する場合の受電ジャケットの構成を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る電力伝送システムをスマートフォン(電子機器)に適用する場合の送電装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る電力伝送システムの電極の構成を示す模式図である。
【図10】2個の能動電極ごとに別々のスマートフォン(電子機器)に電力を伝送する場合のスマートフォン(電子機器)を装着した状態を示す模式図である。
【図11】能動電極をらせん状に配置した場合の、送電装置に受電装置を差し込む状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態における電力伝送システムについて、図面を用いて具体的に説明する。以下の実施の形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、実施の形態の中で説明されている特徴的事項の組み合わせの全てが解決手段の必須事項であるとは限らないことは言うまでもない。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力伝送システムの構成を模式的に示す等価回路図である。図1に示すように、本実施の形態1に係る電力伝送システムの送電装置1は、少なくとも電圧発生回路12及び昇圧トランス13を有する送電モジュール10と、結合電極11とを備えている。図1の等価回路では、電圧発生回路12で発生した10kHz〜10MHzの周波数の交流電圧が昇圧トランス13により昇圧され、能動電極(第一の能動電極)11aが高電圧となり、受動電極(第一の受動電極)11pが低電圧となる。
【0031】
受電装置2は、少なくとも降圧トランス23を有する受電モジュール20と、結合電極21とを備えている。図1の等価回路では、容量CGは、送電装置1の能動電極(第一の能動電極)11aと受動電極(第一の受動電極)11pとの間の容量である。容量CLは、受電装置2の能動電極(第二の能動電極)21aと受動電極(第二の受動電極)21pとの間の容量である。容量CMは送電装置1の能動電極(第一の能動電極)11aと受電装置2の能動電極(第二の能動電極)21aとの間の容量に相当する。なお、図1では、共振回路も含めて記載しているが、電力伝送の安定度を高めるためであり、必ずしも共振回路は必要ではない。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1に係る電力伝送システムの構成を示す模式図である。図2に示す送電装置1は、商用電源15から供給された電力を一次整流平滑回路14を経て昇圧トランス13で昇圧する。昇圧トランス13は、第一の能動電極11a及び第一の受動電極11pに接続されている。
【0033】
また、受電装置2は、第二の能動電極21a及び第二の受動電極21pが降圧トランス23に接続されており、伝送されてきた電力を降圧する。そして高周波負荷回路22を介して外部へ作用する作用部27に接続されている。
【0034】
例えば作用部27が電動歯ブラシの歯ブラシ部である場合、高周波負荷回路22は、整流回路24で整流し、二次電池25に蓄電し、モータ26を回転させる。これにより、水周りで使用する場合であっても、機器内部への水の浸入を防止するよう、筐体を密閉することができる。
【0035】
もちろん、送電装置にも、第二の二次電池(図示せず)と第二の整流回路(図示せず)とを備え、第二の整流回路の第一の出力端子及び第二の出力端子を第二の二次電池に接続し、第一の入力端子を送電装置1の第三の受動電極(図示せず)に、第二の入力端子を送電装置1の第三の能動電極(図示せず)に、それぞれ接続しても良い。このように、図1における商用電源15及び一次整流平滑回路14を、第二の二次電池(図示せず)と第二の整流回路(図示せず)、送電装置1の第三の受動電極(図示せず)、第三の能動電極(図示せず)に置き換えることにより、送電装置1の筐体を完全に密閉することができ、水周りで使用する機器に用いる場合であっても送電装置1への水の浸入経路を完全に遮断することができ、防水性を確保することが可能となる。第二の二次電池(図示せず)は、第三の受動電極(図示せず)と第三の能動電極(図示せず)とを介して、別途非接触充電される。
【0036】
送電装置1は、円柱状の柱状部101と柱状部101を囲む円筒状の第一の筒状部102とを備え、受電装置2は、柱状部101と第一の筒状部102との間に装着することが可能な円筒状の第二の筒状部201を備えている。
【0037】
柱状部101の外表面近傍に沿って第一の能動電極11aを、第二の筒状部201の内表面近傍に沿って第二の能動電極21aを、互いに対向するように形成してあり、第一の筒状部102の内表面近傍に沿って第一の受動電極11pを、第二の筒状部201の外表面近傍に沿って第二の受動電極21pを、互いに対向するように形成してある。受電装置2の第二の受動電極21p及び送電装置1の第一の受動電極11pが、送電装置1の第一の能動電極11a及び受電装置2の第二の能動電極21aの周囲を囲むように配置してある。
【0038】
高電位である送電装置1の第一の能動電極11a及び受電装置2の第二の能動電極21aの周囲が、低電位である受電装置2の第二の受動電極21p及び送電装置1の第一の受動電極11pにより囲まれているので、不要な電界が周囲へ漏えいすることを防止することができる。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電力伝送システムの能動電極及び受動電極の配置構成を模式的に示す斜視図である。図3に示すように、送電装置1は、円柱状の柱状部101の外表面近傍に沿って第一の能動電極11aを、円筒状の第一の筒状部102の内表面近傍に沿って第一の受動電極11pを配置してある。また、受電装置2は、円筒状の第二の筒状部201の外表面近傍に沿って第二の受動電極21pを配置し、第二の筒状部201の内表面近傍に沿って第二の能動電極21aを配置してある。
【0040】
受電装置2を図3に示す矢印方向に送電装置1へ差し込むことにより、送電装置1の第一の能動電極11aと受電装置2の第二の能動電極21aとが互いに対向し、送電装置1の第一の受動電極11pと受電装置2の第二の受動電極21pとが互いに対向し、電界結合することができる。しかも、送電装置1の第一の受動電極11p及び/又は受電装置2の第二の受動電極21pに、送電装置1の第一の能動電極11a及び受電装置2の第二の能動電極21aが囲まれているので、不要な電界が周囲へ漏えいすることを防止することもできる。
【0041】
上述した実施の形態1では、送電装置1に、円柱状の柱状部101と、柱状部101を囲む円筒状の第一の筒状部102とを備えており、受電装置2に、柱状部101と第一の筒状部102との間に装着することが可能な円筒状の第二の筒状部201を備えているが、逆に、受電装置2に、円柱状の柱状部と、柱状部を囲む円筒状の第一の筒状部とを備え、送電装置1に、柱状部と第一の筒状部との間に装着することが可能な円筒状の第二の筒状部を備えても良い。
【0042】
また、柱状部101の外表面近傍に沿って第一の能動電極11aを、第二の筒状部201の内表面近傍に沿って第二の能動電極21aを、互いに対向するように配置してあり、第一の筒状部102の内表面近傍に沿って第一の受動電極11pを、第二の筒状部201の外表面近傍に沿って第二の受動電極21pを、互いに対向するように配置しているが、送電装置1の第一の受動電極11pと受電装置2の第二の受動電極21pとが互いに対向し、電界結合することができ、しかも、送電装置1の第一の受動電極11p及び/又は受電装置2の第二の受動電極21pに、送電装置1の第一の能動電極11a及び受電装置2の第二の能動電極21aが囲まれるように配置することができれば特に限定されるものではない。
【0043】
以上のように本実施の形態1によれば、送電装置1に装着された場合に比較的低電位である受電装置2の第二の受動電極21pと送電装置1の第一の受動電極11pの少なくとも一方が、比較的高電位である送電装置1の第一の能動電極11a及び受電装置2の第二の能動電極21aの周囲を囲むように配置してあるので、周囲へ不要な電界が漏えいすることを未然に防止することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態1では、柱状部101は円柱状であり、第一の筒状部102及び第二の筒状部201は円筒状であるので、送電装置1に受電装置2を装着した状態で、送電装置1に対して受電装置2を回転させることもできる。しかし、特に斯かる形状に限定されるものではなく、柱状部101の断面形状が三角形、四角形等の多角形であっても良いし、テーパを有する多角錐台形状であっても良い。
【0045】
また、図示はしていないが、送電装置1の第一の受動電極11pの底面側、及び受電装置2の第二の受動電極21pの上面側は、それぞれ他の受動電極により塞がれていることが好ましい。送電装置1の第一の受動電極11pの底面側、及び受電装置2の第二の受動電極21pの上面側を、完全にそれぞれ他の受動電極で覆うことにより、周囲への不要な電界の漏えいをより確実に防止することが可能となる。
【0046】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る電力伝送システムの構成を示す模式図である。図4(a)は、本発明の実施の形態2に係る電力伝送システムの構成を模式的に示す側断面図であり、図4(b)は、本発明の実施の形態2に係る電力伝送システムの構成を模式的に示す正面図である。本実施の形態2は、受電装置2として電子機器を装着する受電ジャケット2aを用いる点で実施の形態1とは相違する。
【0047】
図4に示すように、送電装置1は、柱状部101と柱状部101を囲む第一の筒状部102とを備え、受電ジャケット2aは、柱状部101と第一の筒状部102との間に装着することが可能な第二の筒状部201を備えている。なお、充電の対象となる電子機器30と受電ジャケット2aとは、コネクタ41を介して接続されており、送電装置1から供給された電力は、コネクタ41を介して電子機器30内の二次電池(図示せず)を充電する。
【0048】
柱状部101の外表面近傍に沿って第一の能動電極11aを、第二の筒状部201の内表面近傍に沿って第二の能動電極21aを、互いに対向するように配置してあり、第一の筒状部102の内表面近傍に沿って第一の受動電極11pを、第二の筒状部201の外表面近傍に沿って第二の受動電極21pを、互いに対向するように配置してある。受電ジャケット2aの第二の受動電極21p及び送電装置1の第一の受動電極11pが、送電装置1の第一の能動電極11a及び受電装置2の第二の能動電極21aの周囲を囲むように配置してある。
【0049】
高電位である送電装置1の第一の能動電極11a及び受電装置2の第二の能動電極21aの周囲が、低電位である受電ジャケット2aの第二の受動電極21p及び送電装置1の第一の受動電極11pにより囲まれているので、不要な電界が周囲へ漏えいすることを防止することができ、高い伝送効率で電力を伝送することができる。
【0050】
図5は、本発明の実施の形態2に係る電力伝送システムの電極の位置関係を示す模式断面図である。図5は、柱状部101の高さ方向に直交する面における断面図である。
【0051】
図5に示すように、柱状部101の外表面近傍に沿って設けてある第一の能動電極11aは、ギャップを介して、第二の筒状部201の内表面近傍に沿って設けてある第二の能動電極21aと対向している。第二の筒状部201の外表面近傍に沿って設けてある第二の受動電極21pは、ギャップを介して、第一の筒状部102の内表面近傍に沿って設けてある第一の受動電極11pと対向している。そして、高電位である第一の能動電極11a及び第二の能動電極21aは、低電位である第二の受動電極21p及び第一の受動電極11pに囲まれているので、不要な電界が受動電極を越えて周囲へ漏えいするおそれはほとんどない。
【0052】
以上のように本実施の形態2によれば、比較的低電位である受電ジャケット2aの第二一の受動電極21pと送電装置1の第一の受動電極11pとの少なくとも一方が、比較的高電位である送電装置1の第一の能動電極11a及び受電ジャケット2aの第二の能動電極21aの周囲を囲むように配置してあるので、周囲へ不要な電界が漏えいすることを未然に防止することができる。したがって、高い伝送効率で電力を伝送することが可能となる。
【0053】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3に係る電力伝送システムの電極の構成を示す模式図である。本実施の形態3は、送電装置1及び受電装置2に能動電極がそれぞれ2個設けてある点で実施の形態1及び2とは相違する。
【0054】
図6に示すように、送電装置1は、2つの能動電極、すなわち第一の能動電極11a1と隣接する第三の能動電極11a2とを備えており、受電装置2も2つの能動電極、すなわち第二の能動電極21a1と第四の能動電極21a2とを備えている。能動電極を2つ設けているのは、一方の能動電極は電力伝送用に用い、もう一方の能動電極をデータ通信用に用いることができるからである。
【0055】
そして、第一の能動電極11a1、第三の能動電極11a2、第二の能動電極21a1、第四の能動電極21a2は、送電装置1の第一の受動電極11p及び受電装置2の第二の受動電極21pに囲まれている。したがって、周囲へ不要な電界が漏えいすることを未然に防止することができる。
【0056】
図7は、本発明の実施の形態3に係る電力伝送システムをスマートフォン(電子機器)に適用する場合の受電ジャケット2aの構成を示す模式図である。図7(b)の斜視図に示すように、送電装置1に差し込むことが可能な受電ジャケット2aにスマートフォン(電子機器)30を装着することが可能となっている。
【0057】
図7(a)の断面図には、受電ジャケット2aの電極配置が示されている。受電ジャケット2aは、筐体に第二の受動電極21pを設けてある。これにより、送電装置1に差し込んだ状態で周囲へ不要な電界が漏えいすることを未然に防止することができる。
【0058】
受電ジャケット2aは、能動電極として、第二の能動電極21a1と第四の能動電極21a2との2つを備えており、第二の能動電極21a1は電力伝送用に用い、第四の能動電極21a2はデータ通信用に用いる。
【0059】
図8は、本発明の実施の形態3に係る電力伝送システムをスマートフォン(電子機器)30に適用する場合の送電装置1の構成を模式的に示す斜視図である。図8(a)に示すように、送電装置1は、受電ジャケット2aの2つの能動電極の位置に合わせて、柱状部101の外表面に巻きつけるように、第一の能動電極11a1と第三の能動電極11a2とを設けてある。第一の能動電極11a1は電力伝送用に用い、第三の能動電極11a2はデータ通信用に用いる。第一の受動電極11pは、第一の筒状部102の表面と底面とに形成されている。
【0060】
もちろん、送電装置1の第一の受動電極11pで第一の筒状部102全体を覆ってしまっても良い。例えば図8(b)に示すように、第一の筒状部102の表面と底面とに形成されている第一の受動電極11pに接続してある、コップ状の導電体81で、スマートフォン30を装着した受電ジャケット2aを送電装置1に差し込んだ状態のまま覆ってしまえば良い。このようにすることで、コップ状の導電体81が送電装置1の受動電極として機能し、周囲へ不要な電界が漏えいすることを確実に防止することができる。
【0061】
以上のように本実施の形態3によれば、2つの能動電極を設け、一方を電力伝送用に、他方をデータ通信用に、それぞれ用いることにより、安定した高い伝送効率で電力を伝送することができるとともに、データ品質を劣化させることなくデータ通信を行うことが可能となる。
【0062】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4に係る電力伝送システムの電極の構成を示す模式図である。図9(a)は、本発明の実施の形態4に係る電力伝送システムの電極の構成を模式的に示す正面図であり、図9(b)は、本発明の実施の形態4に係る電力伝送システムの電極の構成を模式的に示す部分拡大図である。本実施の形態4は、送電装置1の受動電極、受電装置2又は受電ジャケット2aの受動電極の表面に高誘電率層を設けてある点で実施の形態1乃至3とは相違する。
【0063】
本実施の形態4では、誘電率が高いチタン酸バリウムからなるセラミック板を高誘電率層91として、送電装置1の柱状部101に設けた第一の受動電極11pの表面に接着積層している。そして、同様の構成の高誘電率層92を、受電ジャケット2aの第二の筒状部201に設けた第二の受動電極21pの表面に接着積層している。チタン酸バリウム粉を混入したエポキシ樹脂層を高誘電率層として用いても良い。また、高誘電率の金属酸化物材料、高分子材料からなるシート等を用いても良い。高誘電率層の比誘電率が7以上であれば、第一の受動電極11p、第二の受動電極21pの表面にエポキシ樹脂からなる樹脂層を形成した場合に比べて、第一の受動電極11pと第二の受動電極21pとの間の容量結合を強めることができる。
【0064】
受動電極の表面に高誘電率層91、92を設けることで、送電装置1の第一の受動電極11pと受電ジャケット2aの第二の受動電極21pとの間の容量は、送電装置1の第一の能動電極11aと受電装置2の第二の能動電極21aとの間の容量より大きくすることができ、高い伝送効率で電力を伝送することが可能となる。
【0065】
特に、送電装置1の第一の受動電極11pと受電ジャケット2aの第二の受動電極21pとの間の容量は、送電装置1の第一の能動電極11aと受電ジャケット2aの第二の能動電極21aとの間の容量の2倍以上となる場合に、より確実に高い伝送効率で電力を伝送することができる。したがって、2倍以上となるように両電極が対向する面積、両電極間の距離を調整するとともに、本実施の形態4のように、高誘電率層91、92を積層することにより、電力の伝送効率を高めることができる。
【0066】
以上のように本実施の形態4によれば、送電装置1の第一の受動電極11pの表面に高誘電率層91を、受電装置2又は受電ジャケット2aの第二の受動電極21pの表面に高誘電率層92を設けることにより、送電装置1の第一の受動電極11pと受電装置2又は受電ジャケット2aの第二の受動電極21pとの間の容量が、送電装置1の第一の能動電極11aと受電装置2又は受電ジャケット2aの第二の能動電極21aとの間の容量の2倍以上となるよう調整することができ、高い伝送効率で電力を伝送することが可能となる。
【0067】
その他、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。例えば実施の形態3で、送電装置1及び受電装置2に能動電極がそれぞれ2個設けてある構成について説明しているが、この場合、2個の能動電極ごとに、別々の電子機器に電力を伝送しても良い。図10は、2個の能動電極ごとに別々のスマートフォン(電子機器)30に電力を伝送する場合のスマートフォン30を装着した状態を示す模式図である。
【0068】
図10では、受電ジャケット2aは中空の筒状体として形成してある。そして送電装置1の直立している柱状部101に一台目のスマートフォン30を装着した受電ジャケット2aを上から差し込む。
【0069】
次に、可動式のストッパ71を挟んで、二台目のスマートフォン30を装着した受電ジャケット2aを上から差し込む。このようにすることで、図10(a)、(b)に示すように、縦置きの二台のスマートフォン30を同時に充電することができる。
【0070】
もちろん、縦置きに限定されるものではなく、例えば図10(c)に示すように、送電装置1の水平方向に二本の柱状部101を設けておき、それぞれにスマートフォン30を装着した受電ジャケット2aを上から差し込んでも良い。このようにすることで、柱状部101の数だけスマートフォン30を同時に充電することが可能となる。
【0071】
また、実施の形態3で、送電装置1及び受電装置2に能動電極がそれぞれ2個設けてある構成について説明しているが、2個に限定されるものではなく、複数であれば良い。また、一の能動電極をらせん状に配置しても良い。図11は、能動電極をらせん状に配置した場合の、送電装置1に受電装置2を差し込む状態を示す模式図である。
【0072】
図11に示すように、送電装置1の柱状部101の表面に、第一の能動電極11aをらせん状に設けてあり、同じ形状で、受電装置2の第二の筒状部201の内表面に、第二の能動電極21aをらせん状に設けてある。これにより、送電装置1へ受電装置2を差し込んだ状態で受電装置2を回転させ、最も電力の伝送効率が高い位置で止めることができる。したがって、高い効率で電力を伝送することが可能となる
【符号の説明】
【0073】
1 送電装置
2 受電装置
2a 受電ジャケット
10 送電モジュール
11 結合電極
11a 能動電極(第一の能動電極)
11p 受動電極(第一の受動電極)
12 電圧発生回路
13 昇圧トランス
20 受電モジュール
21 結合電極
21a 能動電極(第二の能動電極)
21p 受動電極(第二の受動電極)
22 高周波負荷回路
101 柱状部
102 第一の筒状部
201 第二の筒状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の受動電極と、第一の能動電極と、前記第一の受動電極と前記第一の能動電極との間に接続された電圧発生回路とを有する送電装置と、
該送電装置に装着された場合に、前記第一の受動電極に空隙を介して対向する第二の受動電極と、前記第一の能動電極に空隙を介して対向する第二の能動電極とを有する受電装置と
を備える電力伝送システムであって、
前記受電装置の前記第二の受動電極と前記送電装置の前記第一の受動電極の少なくとも一方が、前記送電装置の前記第一の能動電極及び前記受電装置の前記第二の能動電極の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする電力伝送システム。
【請求項2】
前記送電装置又は前記受電装置は、柱状部と該柱状部を囲む第一の筒状部とを備え、
前記柱状部の外表面近傍に沿って前記第一の能動電極又は前記第二の能動電極が形成され、
前記第一の筒状部の内表面近傍に沿って前記第一の受動電極又は前記第二の受動電極が形成され、
前記受電装置又は前記送電装置は、第二の筒状部を備え、
前記第二の筒状部の内表面近傍に沿って第二の能動電極又は第一の能動電極が形成され、
前記第二の筒状部の外表面近傍に沿って第二の受動電極又は第一の受動電極が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項3】
前記送電装置の前記第一の受動電極と、前記受電装置の前記第二の受動電極との間の容量は、前記送電装置の前記第一の能動電極と、前記受電装置の前記第二の能動電極との間の容量より大きくなるよう電極が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力伝送システム。
【請求項4】
前記送電装置の前記第一の受動電極と、前記受電装置の前記第二の受動電極との間の容量は、前記送電装置の前記第一の能動電極と、前記受電装置の前記第二の能動電極との間の容量の2倍以上となるよう電極が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電力伝送システム。
【請求項5】
前記送電装置の前記第一の受動電極の底面側、及び前記受電装置の前記第二の受動電極の上面側は、それぞれ他の受動電極により塞がれていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力伝送システム。
【請求項6】
前記送電装置の前記第一の能動電極に隣接する第三の能動電極と、前記受電装置の前記第二の能動電極に隣接する第四の能動電極とを備え、
前記受電装置の前記第二の受動電極と前記送電装置の前記第一の受動電極とが、前記送電装置の前記第一の能動電極及び前記第三の能動電極、並びに前記受電装置の前記第二の能動電極及び前記第四の能動電極の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電力伝送システム。
【請求項7】
前記送電装置の前記第一の能動電極と前記受電装置の第二の能動電極とが互いに対向する面、及び前記送電装置の前記第一の受動電極と前記受電装置の第二の受動電極とが互いに対向する面は、それぞれ防水構造を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電力伝送システム。
【請求項8】
前記送電装置は、二次電池と、整流回路とを備え、
該整流回路の第一の出力端子及び第二の出力端子は、前記二次電池に接続されており、第一の入力端子を前記送電装置の前記第一の受動電極に、第二の入力端子を前記送電装置の前記第一の能動電極に、それぞれ接続されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電力伝送システム。
【請求項9】
前記柱状部は円柱状であり、前記第一の筒状部及び前記第二の筒状部は円筒状であることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか一項に記載の電力伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−93965(P2013−93965A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234247(P2011−234247)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)