説明

電力供給システム

【課題】電力需要家同士で余剰電力を融通し合う場合の費用的なメリットを改善する。
【解決手段】分散電源PVを有する第1の電力需要家群Aiにおける翌日の余剰電力量と、分散電源PVを有しない第2の電力需要家群Bjにおける翌日の需要電力量とを管理装置SSで予測する。さらに管理装置SSでは、それぞれの予測値に基づいて翌日の売買価格を設定するとともに、当該売買価格に対する第1の電力需要家群Aiの売電意思と第2の電力需要家群Bjの買電意思に応じて売買価格を調整する。故に、従来例と比較して、電力需要家Ai,Bj同士で余剰電力を融通し合う場合の費用的なメリットを改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散電源を有する電力需要家と分散電源を有しない電力需要家との間で電力供給を行うための電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力供給システムとして、特許文献1に記載されているものがある。この従来例は、それぞれが太陽光発電システムなどの分散電源を有する第1の電力需要家群と、分散電源を有しない第2の電力需要家群とが共用電力系統に接続され、第1の電力需要家の分散電源で生じる余剰電力を共用電力系統を介して第2の電力需要家に供給するとともに、第1及び第2の電力需要家における電力供給の収支を電力制御装置で一元的に管理するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−191748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている従来例においては、第1の電力需要家群から共用電力系統に供給される余剰電力の電力量を個別に電力量計で計測するとともに、第2の電力需要家群に対して共用電力系統から供給される需要電力の電力量を個別に電力量計で計測し、それぞれの計測値を電力制御装置で収集している。そして、電力制御装置では既定の売買単価に基づき、第1の電力需要家が共用電力系統に供給した余剰電力の売電価格と、第2の電力需要家に対して共用電力系統から供給された需要電力の買電価格とを算出している。
【0005】
しかしながら、上記従来例では、日々変動する余剰電力と需要電力の受給バランスに関係なく、既定の売買単価に基づいて買電価格及び売電価格が決定されるため、何れの電力需要家にとっても費用的なメリットが乏しくなる虞があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、電力需要家同士で余剰電力を融通し合う場合の費用的なメリットを改善することができる電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力供給システムは、売電側の電力需要家群の元にそれぞれ設置された複数の分散電源と、当該分散電源に生じる余剰電力を買電側の電力需要家の元に供給するための電力線と、前記売電側の電力需要家群並びに当該買電側の電力需要家群の元にそれぞれ設置される複数の端末装置と、当該複数の端末装置との間でデータ通信を行うとともに前記電力線を介して供給される余剰電力の売買価格を管理する管理装置とを有し、前記管理装置は、翌日以降における前記分散電源の発電量及び前記電力需要家における需要電力量をそれぞれ予測するとともに、当該予測結果に基づいて前記翌日以降の余剰電力量を予測し、当該余剰電力量の予測結果をデータ通信によって前記複数の端末装置へ通知し、前記端末装置は、前記管理装置から通知される前記余剰電力量の予測結果を前記電力需要家に提示するとともに当該電力需要家による売買の意思確認情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知し、前記管理装置は、前記端末装置から通知される前記意思確認情報に基づき、売買意思の有る前記電力需要家における前記余剰電力量の総量と前記需要電力量の総量とを算出するとともに当該余剰電力量の総量及び当該需要電力量の総量に応じて前記翌日以降における余剰電力の売買価格を決定し且つ当該売買価格をデータ通信によって前記複数の端末装置へ通知し、前記端末装置は、前記管理装置から通知される前記売買価格を前記電力需要家に提示するとともに当該電力需要家による売買の意思決定情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知することを特徴とする。
【0008】
この電力供給システムにおいて、前記分散電源は、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを利用した発電設備を有することが好ましい。
【0009】
この電力供給システムにおいて、前記管理装置は、前記余剰電力量の総量と、前記翌日以降において実際に供給された需要電力量の総量との差分に応じて前記売買価格を調整することが好ましい。
【0010】
この電力供給システムにおいて、前記買電側の電力需要家の元に設置された前記端末装置は、当該買電側の電力需要家に対して電力会社から供給される商用電力の買電価格を提示するとともに、前記余剰電力と前記商用電力の何れの電力を買電するかという買電先決定情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知し、前記管理装置は、前記買電先決定情報に基づいて前記買電側の電力需要家における買電価格を決定することが好ましい。
【0011】
この電力供給システムにおいて、前記売電側の電力需要家の元に設置された前記端末装置は、当該売電側の電力需要家に対して電力会社へ売電する際の売電価格を提示するとともに、前記余剰電力を前記電力会社と前記買電側の電力需要家の何れに対して売電するかという売電先決定情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知し、前記管理装置は、前記売電先決定情報に基づいて前記売電側の電力需要家における売電価格を決定することが好ましい。
【0012】
この電力供給システムにおいて、前記管理装置は、前記端末装置から通知される前記意思決定情報に基づいて前記売買価格を変更するとともに当該変更後の売買価格をデータ通信によって前記複数の端末装置へ通知し、前記端末装置は、前記管理装置から通知される前記変更後の売買価格を前記電力需要家に提示するとともに当該電力需要家による売買の意思決定情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力需要家同士で余剰電力を融通し合う場合の費用的なメリットを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】同上における管理装置のブロック図である。
【図3】同上における管理装置の演算処理部の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施形態によって詳細に説明する。
【0016】
図1は本実施形態の電力供給システムを示すシステム構成図である。電力会社の電力系統ACから電力線Lpを介して電力需要家の元に商用電源(例えば、100V/200Vの単相交流)が供給されている。ここで、電力需要家のうちで分散電源PVが設置されている売電側の電力需要家を第1の電力需要家A1,A2,…と呼び、分散電源PVが設置されていない買電側の電力需要家を第2の電力需要家B1,B2,…と呼ぶことにする。
【0017】
第1の電力需要家Ai(i=1,2,…)の元には、電力量計M、分電盤PB、負荷L、分散電源PV、端末装置TUが設置されている。また図示は省略するが、第2の電力需要家群Bj(j=1,2,…)の元には分散電源PV以外の電力量計M、分電盤PB、負荷L、端末装置TUが設置されている。
【0018】
電力量計Mは電力線Lpから分電盤PB側へ流れる電力量(以下、「下り電力量」と呼ぶ。)と、分散電源PVから電力線Lpに逆潮流する電力量(以下、「上り電力量」と呼ぶ。)とを個別に計測し、それぞれの計測値を伝送線Lxを介して端末装置TUへ伝送する。ただし、この種の電力量計Mは従来周知であるから、詳細な構成についての図示並びに説明は省略する。
【0019】
分電盤PBはボックス内に主幹ブレーカ(図示せず)並びに複数の分岐ブレーカ(図示せず)を収納してなり、電力系統AC又は分散電源PVから供給される電力を分岐して負荷Lに配電している。
【0020】
分散電源PVは、太陽電池やパワーコンディショナ、解列開閉器などで構成される従来周知の系統連系形太陽光発電システムからなり、電力線Lpへの逆潮流(売電)の実行/停止はパワーコンディショナによって制御される。なお、分散電源PVは太陽光発電システムに限定されるものではなく、例えば、風力発電システムなどの自然エネルギーを利用した別の発電設備で構成されていても構わない。
【0021】
端末装置TUは、図2に示すように端末制御部1、データ通信部2、入力受付部3、表示部4、電力量計インタフェース(I/F)部5を備えている。データ通信部2は、通信線Lsを介して管理装置SSとの間でデータ通信を行う。電力量計I/F部5は、汎用のシリアル通信規格(RS232CやRS458など)に準拠し、伝送線Lxを介して電力量計Mから伝送される計測値のデータを受信するとともに受信した計測値データを端末制御部1に出力する。端末制御部1はCPUやメモリなどで構成され、電力量計I/F部5から受け取った計測値データをデータ通信部2から通信線Lsを介して管理装置SSへ送信させる。表示部4は液晶ディスプレイなどの表示デバイスとその駆動回路を具備し、端末制御部1の制御の下で種々の情報(後述する)を液晶ディスプレイに表示する。入力受付部3は、表示部4の表示デバイスと組み合わされたタッチパネルからなり、当該タッチパネルで受け付けた入力を端末制御部1へ出力する。ただし、これらデータ通信部2、入力受付部3、表示部4、電力量計I/F部5については従来周知の技術で実現可能であるから詳細な構成についての図示並びに説明は省略する。
【0022】
管理装置SSは、図1に示すようにデータ通信部10、演算処理部11、記憶部12を備えている。データ通信部10は、通信線Lsを介して端末装置TUのデータ通信部2との間でデータ通信を行う。記憶部12は、ハードディスクなどの大容量の記憶装置からなり、全ての電力需要家群(第1の電力需要家Aiと第2の電力需要家Bj)に関する情報を管理するためのデータベースを記憶している。このデータベースでは、各電力需要家に割り当てられた固有の識別符号(ID)毎に、需要電力量予測値、発電量予測値(第1の電力需要家群Aiのみ)、余剰電力量予測値(第1の電力需要家群Aiのみ)、売電意思(第1の電力需要家群Aiのみ)、買電意思(第2の電力需要家群Bjのみ)、売電電力量実績値(第1の電力需要家群Aiのみ)、買電電力量実績値(第2の電力需要家群Bjのみ)の各項目(フィールド)が設定されている。
【0023】
需要電力量予測値とは、各電力需要家の負荷Lで翌日に消費される電力量の予測値である。発電量予測値とは、第1の電力需要家Aiの元の分散電源PVで翌日に発電される発電量の予測値である。また、余剰電力量予測値とは、第1の電力需要家Aiにおける翌日の発電量予測値から翌日の需要電力量予測値を差し引いた差分の電力量である。ここで、管理装置SSの演算処理部11では、例えば、天気予報等の気象情報を提供しているウェブサイト(例えば、気象庁や各地方の地方管区気象台のホームページなど)からインターネットを通して取得する翌日の予想最高気温や予想日射量と各分散電源PVの発電能力に基づいて翌日の発電量を予測する。また、演算処理部11は、各電力需要家(第1の電力需要家Aiと第2の電力需要家Bj)毎に過去の電力消費の実績並びに天候などの履歴情報に基づいて翌日の需要電力量を予測する。なお、発電量や需要電力量を予測する方法は上記方法に限定されるものではない。
【0024】
また「売電意思」とは、翌日の余剰電力量予測値がゼロより大きい場合に第2の電力需要家群Bjに対して余剰電力を供給(売電)するか否かの意思であって、第1の電力需要家群Aiの元に設置されている端末装置TUの入力受付部3で受け付けられる入力に基づいて択一的に決定される。同様に「買電意思」とは、翌日の余剰電力量予測値がゼロより大きい場合に第1の電力需要家群Aiから余剰電力の供給を受ける(買電する)か否かの意思であって、第2の電力需要家群Bjの元に設置されている端末装置TUの入力受付部3で受け付けられる入力に基づいて択一的に決定される。
【0025】
さらに「売電電力量実績値」とは、第1の電力需要家群Aiの元に設置されている電力量計Mの計測値(上り電力量)であって、第1の電力需要家群Aiから第2の電力需要家群Bjに対して供給(売電)された電力量である。同様に「買電電力量実績値」とは、第2の電力需要家群Bjの元に設置されている電力量計Mの計測値(下り電力量)であって、第2の電力需要家群Bjが第1の電力需要家群Aiから供給(買電)された電力量である。なお、売電電力量実績値及び買電電力量実績値についても、各電力需要家Ai,Bjの元に設置されている電力量計Mの計測値データに基づいて管理装置SSの演算処理部11で演算される。
【0026】
次に、図3のフローチャートを参照しながら、管理装置SSの演算処理部11が行う処理を中心にして本実施形態の動作を説明する。
【0027】
まず、管理装置SSの演算処理部11は、毎日一定の時刻(例えば、20時00分)になると第1の電力需要家Aiの元に設置されている分散電源PVの翌日の発電量を予測するとともに、第1の電力需要家Ai並びに第2の電力需要家Bjにおける負荷Lの翌日の需要電力量を予測し(ステップS1)、第1の電力需要家Aiの発電量予測値及び需要電力量予測値に基づいて翌日の余剰電力量を予測する(ステップS2)。そして、第1の電力需要家Aiにおける翌日の余剰電力量予測値がゼロよりも大きい場合、管理装置SSの演算処理部11は、第1の電力需要家Aiの端末装置TUに対して当該余剰電力量予測値とともに売電意思の確認要求をデータ通信部10から送信させ、第2の電力需要家Bjの端末装置TUに対しては前記需要電力量予測値とともに買電意思の確認要求をデータ通信部10から送信させる(ステップS3)。
【0028】
一方、第1の電力需要家Aiにおいては、管理装置SSから受け取った翌日の余剰電力量予測値が端末装置TUの表示部4に表示され、第2の電力需要家Bjにおいては、管理装置SSから受け取った翌日の需要電力量予測値が端末装置TUの表示部4に表示される。そして、それぞれの電力需要家Ai,Bjにおいて、端末装置TUの入力受付部3で売電意思又は買電意思の有無が受け付けられると、当該売電意思又は売電意思の情報(有無)が端末装置TUのデータ通信部2より通信線Lsを介して管理装置SSへ送信される。
【0029】
管理装置SSの演算処理部11は、データ通信部10で受信した売電意思及び買電意思の情報をデータベースにおける各電力需要家Ai,Bj毎の売電意思及び買電意思のフィールドに格納する。そして演算処理部11は、データベースを参照して売電意思有りとした第1の電力需要家Aiの余剰電力量予測値の総量を算出するとともに(ステップS4)、買電意思有りとした第2の電力需要家Bjの需要電力量予測値の総量を算出する(ステップS5)。さらに演算処理部11は、余剰電力量予測値の総量と需要電力量予測値の総量とに基づいて翌日の売買価格を設定し(ステップS6)、設定した売買価格を各電力需要家Ai,Bjの端末装置TUに対してデータ通信部10より送信する(ステップS7)。ここで、演算処理部11では、余剰電力量予測値の総量が需要電力量予測値の総量よりも多い場合(供給過多の場合)は売買価格を相対的に低めに設定し、反対に余剰電力量予測値の総量が需要電力量予測値の総量よりも少ない場合(需要過多の場合)は売買価格を相対的に高めに設定する。
【0030】
各電力需要家Ai,Bjにおいては、管理装置SSから受け取った売買価格が端末装置TUの表示部4に表示され、当該売買価格を考慮して売電意思及び買電意思が変更される場合が有る。そして、端末装置TUの入力受付部3で売電意思又は買電意思の変更(有無)が受け付けられると、当該売電意思又は売電意思の情報が端末装置TUのデータ通信部2より通信線Lsを介して管理装置SSへ送信される。
【0031】
管理装置SSの演算処理部11は、意思確認の締め切り時刻(例えば、23時00分)を経過するまではステップS4〜ステップS7の処理を繰り返す(ステップS8)。そして、演算処理部11は前記締め切り時刻を経過した時点で翌日の売買価格を決定(確定)し、確定した売買価格を各電力需要家Ai,Bjの端末装置TUに対してデータ通信部10より送信させる(ステップS9)。
【0032】
上述のように本実施形態によれば、分散電源PVを有する第1の電力需要家群Aiにおける翌日の余剰電力量と、分散電源PVを有しない第2の電力需要家群Bjにおける翌日の需要電力量とを管理装置SSで予測し、それぞれの予測値に基づいて管理装置SSが翌日の売買価格を設定するとともに、当該売買価格に対する第1の電力需要家群Aiの売電意思と第2の電力需要家群Bjの買電意思に応じて売買価格を調整しているので、従来例と比較して、電力需要家Ai,Bj同士で余剰電力を融通し合う場合の費用的なメリットを改善することができる。
【0033】
ところで、第1の電力需要家群Aiにおける余剰電力量予測値の総量と、第2の電力需要家群Bjへ実際に供給された需要電力量(買電電力量)の総量とが一致するとは限らない。さらに、実際に電力が供給されるときの電路の距離(電力線Lpの長さ)が均一でないため、例えば、第1の電力需要家A1,A2から第2の電力需要家B1に余剰電力を供給する場合、第1の電力需要家A1から第2の電力需要家B1までの電力線Lpの長さが第1の電力需要家A2から第2の電力需要家B1までの電力線Lpの長さよりも相当に長くなるときがある。この場合、第2の電力需要家B1までの電力線Lpの長さが長い第1の電力需要家A1の方が第1の電力需要家A2よりも電力供給の点で不利になる。つまり、電路の距離が大きくなるにしたがって電力線Lpの電気抵抗による電圧降下も大きくなり、相対的に高い電圧で送電する必要が生じてしまうからである。
【0034】
そこで、余剰電力量予測値の総量よりも実際の買電電力量の総量が少なかった場合、管理装置SSの演算処理部11は、買電電力量の総量に売買価格(単価)を乗算して求めた売買料金の総額を、余剰電力量予測値の総量に対する割合に応じて、第1の電力需要家群Aiに配分する。反対に余剰電力量予測値の総量が実際の買電電力量の総量よりも少なかった場合、管理装置SSの演算処理部11は、売電電力量の総量に売買価格(単価)を乗算して求めた売買料金の総額を、需要電力量予測値の総量に対する割合に応じて、第2の電力需要家群Bjに配分する。このようにすれば、第1の電力需要家群Ai及び第2の電力需要家Bjがそれぞれ公平に売買料金を取得あるいは負担することができる。
【0035】
なお、上述のように余剰電力量予測値の総量と実際の需要電力量(買電電力量)の総量との間に大きな開き(差)が生じる状況が長く(例えば、1週間)続いた場合、管理装置SSの演算処理部11が余剰電力量予測値の総量と実際の需要電力量の総量との差分に応じて売買価格を調整することが望ましい。すなわち、売買価格を調整することで売電意思有り若しくは買電意思有りとする電力需要家(第1の電力需要家Ai又は第2の電力需要家Bj)の数を増やし、それによって余剰電力量や需要電力量を増やして、売買されずに無駄になる電力を減少させることができる。
【0036】
ところで、第2の電力需要家群Bjでは第1の電力需要家群Aiから余剰電力の供給を受ける代わりに、電力会社の電力系統ACから電力供給を受ける(買電する)ことも可能である。そこで、電力会社から購入(買電)するときの買電価格(電気料金)を管理装置SSから第2の電力需要家群Bjの元の端末装置TUに通知し、端末装置TUの表示部4に当該買電価格を表示(提示)する。そして、第2の電力需要家Bjにおいて、端末装置TUの入力受付部3で第1の電力需要家Aiと電力会社の何れから買電するかという買電先の決定情報が受け付けられると、当該買電先決定情報が端末装置TUのデータ通信部2より通信線Lsを介して管理装置SSへ送信される。
【0037】
管理装置SSの演算処理部11は、データ通信部10で受信した買電先決定情報に基づいて余剰電力の売買価格を決定する。具体的には、複数の第2の電力需要家Bjのうちで買電先として第1の電力需要家Aiを選択した数が電力会社を選択した数よりも多ければ余剰電力の売買価格を相対的に低めに設定し、第1の電力需要家Aiを選択した数が電力会社を選択した数よりも少なければ余剰電力の売買価格を相対的に高めに設定する。
【0038】
上述のようにして余剰電力量の売買価格を調整すれば、売買されずに無駄になる電力を減少させることができる。
【0039】
また、第1の電力需要家群Aiでは第2の電力需要家群Bjに余剰電力を供給する代わりに、電力会社の電力系統ACに逆潮流する(売電する)ことも可能である。そこで、電力会社に売電するときの売電価格(電力会社の買取料金)を管理装置SSから第1の電力需要家群Aiの元の端末装置TUに通知し、端末装置TUの表示部4に当該売電価格を表示(提示)する。そして、第1の電力需要家Aiにおいて、端末装置TUの入力受付部3で第2の電力需要家Bjと電力会社の何れに売電するかという売電先の決定情報が受け付けられると、当該売電先決定情報が端末装置TUのデータ通信部2より通信線Lsを介して管理装置SSへ送信される。
【0040】
管理装置SSの演算処理部11は、データ通信部10で受信した売電先決定情報に基づいて余剰電力の売買価格を決定する。具体的には、複数の第1の電力需要家Aiのうちで売電先として第2の電力需要家Bjを選択した数が電力会社を選択した数よりも多ければ余剰電力の売買価格を相対的に高めに設定し、第2の電力需要家Bjを選択した数が電力会社を選択した数よりも少なければ余剰電力の売買価格を相対的に低めに設定する。
【0041】
上述のようにして余剰電力量の売買価格を調整すれば、売買されずに無駄になる電力を減少させることができる。なお、本実施形態では管理装置SSの演算処理部11が予測する余剰電力量及び需要電力量を翌日分のみとしたが、例えば、1週間分の天気予報に基づいて翌々日から最長で1週間先までの余剰電力量及び需要電力量を予測して同様に処理することができる。
【符号の説明】
【0042】
Ai 第1の電力需要家(売電側の電力需要家)
Bj 第2の電力需要家(買電側の電力需要家)
PV 分散電源
TU 端末装置
SS 管理装置
Lp 電力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
売電側の電力需要家群の元にそれぞれ設置された複数の分散電源と、当該分散電源に生じる余剰電力を買電側の電力需要家の元に供給するための電力線と、前記売電側の電力需要家群並びに当該買電側の電力需要家群の元にそれぞれ設置される複数の端末装置と、当該複数の端末装置との間でデータ通信を行うとともに前記電力線を介して供給される余剰電力の売買価格を管理する管理装置とを有し、
前記管理装置は、翌日以降における前記分散電源の発電量及び前記電力需要家における需要電力量をそれぞれ予測するとともに、当該予測結果に基づいて前記翌日以降の余剰電力量を予測し、当該余剰電力量の予測結果をデータ通信によって前記複数の端末装置へ通知し、
前記端末装置は、前記管理装置から通知される前記余剰電力量の予測結果を前記電力需要家に提示するとともに当該電力需要家による売買の意思確認情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知し、
前記管理装置は、前記端末装置から通知される前記意思確認情報に基づき、売買意思の有る前記電力需要家における前記余剰電力量の総量と前記需要電力量の総量とを算出するとともに当該余剰電力量の総量及び当該需要電力量の総量に応じて前記翌日以降における余剰電力の売買価格を決定し且つ当該売買価格をデータ通信によって前記複数の端末装置へ通知し、
前記端末装置は、前記管理装置から通知される前記売買価格を前記電力需要家に提示するとともに当該電力需要家による売買の意思決定情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知することを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記分散電源は、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを利用した発電設備を有することを特徴とする請求項1記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記管理装置は、前記余剰電力量の総量と、前記翌日以降において実際に供給された需要電力量の総量との差分に応じて前記売買価格を調整することを特徴とする請求項1又は2記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記買電側の電力需要家の元に設置された前記端末装置は、当該買電側の電力需要家に対して電力会社から供給される商用電力の買電価格を提示するとともに、前記余剰電力と前記商用電力の何れの電力を買電するかという買電先決定情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知し、
前記管理装置は、前記買電先決定情報に基づいて前記買電側の電力需要家における買電価格を決定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記売電側の電力需要家の元に設置された前記端末装置は、当該売電側の電力需要家に対して電力会社へ売電する際の売電価格を提示するとともに、前記余剰電力を前記電力会社と前記買電側の電力需要家の何れに対して売電するかという売電先決定情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知し、
前記管理装置は、前記売電先決定情報に基づいて前記売電側の電力需要家における売電価格を決定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記端末装置から通知される前記意思決定情報に基づいて前記売買価格を変更するとともに当該変更後の売買価格をデータ通信によって前記複数の端末装置へ通知し、
前記端末装置は、前記管理装置から通知される前記変更後の売買価格を前記電力需要家に提示するとともに当該電力需要家による売買の意思決定情報をデータ通信によって前記管理装置へ通知することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−188689(P2011−188689A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53469(P2010−53469)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】