説明

電力供給システム

【課題】災害発生時の被害を早期に判断して被害対策を行うことができる電力供給システムを提供することを目的とする。
【解決手段】サーバ12は、事前情報(例えば、発電量、高層住宅地域18の消費量、低層住宅地域20の消費量、建物の高さ、築年数、構造、設置地盤や地域、高層住宅地域18の自動車24台数、低層住宅地域20の自動車24台数など)と、災害情報(地震の震度や水害情報など)に基づいて、建物の倒壊や損傷、停電等の被害状況の予測を行う。また、ライフラインの必要場所、量の予測を行って、必要場所へ必要量を供給するように災害対策(大規模太陽光発電所14の発電電力や系統電力16の供給電力の優先順位付けや電力源となる自動車の移動など)を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムにかかり、特に、災害時の電力不足などの被害に対する災害対策を行って電力供給を制御する電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な地震や水害等の災害発生時には、建物などに様々な被害が発生するので、復旧させるためには、被害状況を把握する必要があるが、被害が大きいと状況把握が困難となり、復旧に時間がかかってしまう。そこで、被害を予測して復旧に役立てる技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、リアルタイム地震情報を受信する受信部と、特定地域の一データ、建物位置データ及び建物属性データを保持するデータベース部と、リアルタイム地震情報と距離減衰式とに基づき特定地域の予測地震強度分布を演算し、該演算した特定地域の予測地震強度分布、建物位置データ、建物属性データ及び建物属性別の地震強度・建物被害関数に基づき特定地域の建物毎の予測被害を演算し、演算結果を出力する被害予測部と、特定地域の建物位置データ、予測地震強度分布、建物毎の予測被害を取得し、ディスプレイ上に特定地域の地理情報、予測地震強度分布、建物分布及び建物毎の予測被害を重ねて表示する表示部と、を備えることが提案されており、これによって、地震等の災害によって発生した被害状況を予測して、復旧に役立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−258639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、建物や地域毎の災害状況を予測するようにしているが、電気などのライフラインの被害までは予測していないと共に、災害対策までは求めていないため、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、災害発生時の被害を早期に判断して被害対策を行うことができる電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、系統電力及び自然エネルギに基づく発電電力を含む供給電力に関する情報、並びに予め定めた対象地域の建物に関する建物情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記建物情報に基づいて、予め想定される規模の災害発生時の前記対象地域の被害状況を予測する予測手段と、前記予測手段の予測結果及び前記取得手段によって取得された前記供給電力に関する情報に基づいて、優先的に電力供給する供給先及び優先割合を災害対策として決定する決定手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、取得手段では、系統電力及び自然エネルギ(例えば、太陽光、風力、水力、及び潮力等)に基づく発電電力を含む供給電力に関する情報(例えば、供給可能量等)、並びに予め定めた対象地域の建物に関する建物情報が取得される。
【0009】
予測手段では、建物情報に基づいて、予め想定される規模の災害発生時の対象地域の被害状況が予測される。
【0010】
そして、決定手段では、予測手段の予測結果及び取得手段によって取得された供給電力に関する情報に基づいて、優先的に電力供給する供給先及び優先割合が災害対策として決定される。これによって、災害発生時には、被害に応じた電力の供給割合を決定して決定した割合に従って電力供給することが可能となる。従って、災害発生時の被害を早期に判断して被害対策を行うことができる。
【0011】
なお、請求項2に記載の発明のように、実際の被害状況に関する情報を取得する取得手段と、被害状況取得手段によって取得された実際の被害状況に基づいて、予測手段の予測結果を補正する補正手段と、を更に備えて、決定手段が、補正手段の補正結果に基づいて、被害対策を再決定するようにしてもよい。これによって、実際の被害に合わせた被害対策が可能となる。
【0012】
この場合には請求項3に記載の発明のように、被害状況取得手段が、復旧中の被害状況も取得し、補正手段が、復旧中の被害状況に応じて被害予測を再補正するようにしてもよい。これによって復旧によって随時変化する状況に対応した災害対策を行うことができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明のように、決定手段によって決定された災害対策を、住宅に設けられた端末装置及び自動車に設けられた移動端末装置の少なくとも一方の端末装置へ送信する送信手段を更に備えるようにしてもよい。
【0014】
また、被害状況取得手段は、請求項5に記載の発明のように、実際の被害状況に関する情報を住宅に設けられた端末装置から取得するようにしてもよい。この場合には、請求項6に記載の発明のように、決定手段によって再決定された災害対策を建物に設けられた端末装置へ送信する送信手段を更に備えるようにしてもよい。また、送信手段は、請求項7に記載の発明のように、復旧が完了した場合に、普及完了を表す完了通知を更に送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、災害発生時の被害を早期に判断して被害対策を行うことができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係わる電力供給システムの概略を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる電力供給システムにおいてネットワーク接続された各端末の概略構成を示すブロック図である。
【図4】(A)は被害予測方法を説明するための図であり、(B)は災害対策の演算を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わる電力供給システムのサーバで災害発生前に行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係わる電力供給システムのサーバで行われる災害発生時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図7】サーバ以外のコンピュータで行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】災害対策の一例を説明するための図である。
【図9】水害の場合の災害予測を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる電力供給システムの概略を示す概略図であり、図2は、本発明の実施の形態に係わる電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係わる電力供給システム10は、太陽光を利用して発電する大規模太陽光発電所14や系統電力16を含む電力供給元から高層住宅地域18や低層住宅地域20等の予め定めた地域へ電力を供給するようになっている。なお、本実施の形態では、自然エネルギを利用した発電として太陽光発電を例に挙げて説明するが、これに限るものではなく、水力や、風力、潮力等の各種自然エネルギを利用した発電を適用するようにしてもよい。
【0019】
また、電力供給システム10は、災害発生時の被害状況の演算や被害対策の演算を行って、上記電力供給元から各地域への電力供給を制御するサーバ12を備えている。サーバ12は、電力供給元の電力量や、電力供給先(高層住宅地域18や低層住宅地域20等)の需要電力量などの情報を取得するために、上記電力供給元や電力供給先と通信可能とされている。
【0020】
すなわち、図2に示すように、サーバ12は、インターネット等のネットワーク22に接続されていると共に、該ネットワーク22には上記電力供給元や電力供給先に設けられたコンピュータ15、17、19、21が接続されている。具体的には、大規模太陽光発電所14に設けられたコンピュータ15、系統電力16に設けられたコンピュータ17、高層住宅地域18に設けられたコンピュータ19、及び低層住宅地域20に設けられたコンピュータ21がネットワーク22に接続されており、サーバ12及び各コンピュータ15〜21はネットワーク22を介して通信可能とされている。
【0021】
また、電力供給システム10は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の自動車24に搭載された端末装置25もネットワーク22に接続されており、サーバ12は、自動車24に搭載された端末装置25とも通信可能とされている。本実施の形態では、当該自動車24に搭載された車両用蓄電池についても電力源として利用することを想定している。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態に係わる電力供給システム10においてネットワーク接続された各端末(サーバ12、コンピュータ15〜21、移動端末装置25等)の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
電力供給システム10における、サーバ12、コンピュータ15〜21、及び移動端末装置25はそれぞれ、図3に示すように、CPU30、ROM32、RAM34、及び入出力ポート36を備えた一般的なコンピュータの構成を有しており、それぞれアドレスバス、データバス、及び制御バス等のバス38に接続されている。
【0024】
また、入出力ポート36には、各種入出力機器としての表示部40、操作部42、及びメモリ44等が接続されている。なお、メモリ44は、ハードディスク等の記憶装置としてもよい。また、表示部40は液晶等のディスプレイを適用することができ、操作部42としては、キーボードやマウス等を適用してもよいし、各種スイッチ等を適用するようにしてもよいし、表示部と操作部を一体としたタッチパネル等を適用するようにしてもよい。
【0025】
高層住宅地域18に設けられるコンピュータ19や低層住宅地域20に設けられるコンピュータ21は、パーソナルコンピュータを適用するようにしてもよいし、住宅や内の使用電力の監視や電力の供給制御等を行うHEMS(Home Energy Management System)やビル内の使用電力の監視や電力の供給制御等を行うBEMS(Building and Energy Management System)等を適用するようにしてもよい。
【0026】
このように構成された本実施の形態に係わる電力供給システム10では、サーバ12が、地震等の災害が発生した場合に、予め想定される規模の災害に対する各地域の被害を、予め定めた対象地域の建物に関する情報に基づいて予測する。また、大規模太陽光発電所14のコンピュータ15や系統電力16のコンピュータ17から電力供給側の情報を取得すると共に、高層住宅地域18のコンピュータ19や低層住宅地域20のコンピュータ21から需要側の情報を取得して、予測した被害状況に応じて、被害対策として災害発生時の電力の供給制御を行うようになっている。
【0027】
具体的には、サーバ12は、事前情報(例えば、発電量、高層住宅地域18の消費量、低層住宅地域20の消費量、建物の高さ、築年数、構造、設置地盤や地域、高層住宅地域18の自動車24台数、低層住宅地域20の自動車24台数など)と、災害情報(地震の震度や水害情報など)に基づいて、建物の倒壊や損傷、停電等の被害状況の予測を行うと共に、ライフライン(本実施の形態では電力)の必要場所や量の予測を行って、必要場所へ必要量を供給するように災害対策(本実施の形態では、大規模太陽光発電所14の発電電力や系統電力16の供給電力の優先順位付けや電力源となる自動車24の移動など)を決定する。なお、ライフラインとしては、本実施の形態では、電力を例に説明するが、水道等についても考慮するようにしてもよい。
【0028】
被害予測方法としては、例えば、図4(A)に示すように、予め定めた要素(例えば、建物の強度などの要素)毎に被害の大中小を評価して、被害予測を行うことができる。このとき、被害の大中小に応じて係数等を用いて定量化して要素毎の係数を加算したりすることによりトータルの被害予測を行うようにしてもよい。なお、図4(A)では、建物の高さ(地震の振動周期が遅い場合)が高層の場合は被害大、中層の場合は被害中、低層の場合を被害小とし、建物の高さ(地震の振動周期が速い場合)が低層の場合は被害小、中層の場合は被害中、低層の場合は被害大とし、地盤が軟弱の場合は被害大、普通の場合は被害中、硬質の場合は被害小とし、建築年数が古い場合は被害大、中の場合は被害中、新しい場合は被害小とし、構造が弱い場合は被害大、中の場合は被害中、強い場合は被害小とし、耐震補強なしの場合は被害大、一部ありの場合は被害中、全てある場合には被害小とした例を示し、これらの要素を評価することにより被害を予測することができる。
【0029】
また、被害対策方法としては、例えば、各地域での消費電力量から必要電力量を算出して、その地域での供給可能電力量(太陽光発電量、蓄電池の蓄電量、自動車の車両用蓄電池の蓄電量など)及び他地域での供給可能電力量(太陽光発電量、蓄電池の蓄電量、自動車の車両用蓄電池の蓄電量など)を通信によって取得すると共に、その地域及び他地域での供給可能電力増加量(消費抑制によって得られる電力量)を予測して、以下の(1)式が成り立つように、大規模太陽光発電所14のコンピュータ15や、系統電力16のコンピュータ17、各地域の住戸に設けられたコンピュータ19、21や自動車24の移動端末装置25等に対して指令を送る。
【0030】
必要電力量=α×β×(その地域での電力供給可能量+その地域での供給可能電力増加量)+他地域での供給可能電力量+他地域での供給可能電力増加量・・・(1)
なお、αは、被害予測による係数を表し、例えば、図4(A)の各評価を係数化して積算する等により求めることができる。また、βは災害規模に応じて予め定めた係数を示す。
【0031】
次に、本発明の実施の形態に係わる電力供給システム10で行われる具体的な処理について説明する。
【0032】
図5は、本発明の実施の形態に係わる電力供給システム10のサーバ12で災害発生前に行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0033】
ステップ100では、電力供給側情報及び電力需要側情報の要求が行われてステップ102へ移行する。すなわち、大規模太陽光発電所14のコンピュータ15や系統電力16のコンピュータ17に対して供給可能電力量等の情報の要求が行われ、高層住宅地域18のコンピュータ19や低層住宅地域20のコンピュータ21に対して必要電力量(消費電力量)等の情報の要求が行われる。
【0034】
ステップ102では、要求情報を受信したか否かが判定され、該判定が肯定されるまで待機してステップ104へ移行する。
【0035】
ステップ104では、想定地震に対応する被害予測及び災害対策が演算されてステップ106へ移行する。すなわち、地域毎に災害予測を行って、上述の(1)式が成り立つ災害対策が演算される。災害予測及び災害対策の一例としては、例えば、地震の固有周期1s(長)、高層住宅地域50%停電、低層住宅地域5%停電、高層−低層a間道路が正常で、高層−低層B間道路が遮断と災害予測された場合に、太陽光発電電力を高層地域へ20%優先して自動車24を低層住宅地域から高層住宅地域へ100台移動のように災害対策が算出される。
【0036】
そして、ステップ106では、演算結果がメモリ44等に記憶されて災害前の処理を終了する。
【0037】
なお、災害対策の演算を行う際には、例えば、(1)式の必要電力量は、(必要電力量)=(各住戸の1日の消費量)×(曜日による補正値)×(今年の電力消費の増加率)として求めることができる。一例としては、図4(B)に示すように、前年及び前々年同月の平均値を用いてそれぞれを演算することができ、(各住戸の1日の消費量)は、前年及び前々年の平均値を用い、(今年の電力消費の増加率)は、(今年の電力消費の平均と、前年及び前々年同月の平均の差)/(前年及び前々年同月の平均の差)とすることができる。なお、(曜日による補正値)は、例えば、平日は、不在時間が長いため0.9とし、休日は在宅時間が長いため1.2とすることができる。
【0038】
また、(1)式のその地域での供給可能電力量は、各住戸における発電量の平均、蓄電池での蓄電量の平均、及び自動車での蓄電量の平均をそれぞれ加算して求める。すなわち、(その地域での供給可能電力量)=(その地域の住戸Aの発電量の平均+蓄電池での蓄電量の平均+自動車での蓄電量の平均)+(その地域の住戸Bの発電量の平均+蓄電池での蓄電量の平均+自動車での蓄電量の平均)+・・・から求めることができる。
【0039】
また、他地域での供給可能電力量は、同様にして、(他地域での供給可能電力量)=(他地域の住戸の電力量の平均+蓄電池での蓄電量の平均+自動車での蓄電量の平均)+(他地域の住戸Bの電力量の平均+蓄電池での蓄電量の平均+自動車での蓄電量の平均)+・・・から求めることができる。
【0040】
また、その地域での供給可能電力増加量は、(その地域での供給可能電力増加量)=(1住戸での災害時抑制できる機器(洗濯機、食洗機等)の1回あたりの消費量)×(1日の平均使用回数)×(その地域での設置台数(住戸数×一般的な装着率でも可))としてもよい。
【0041】
また、他地域での供給可能電力増加量についても同様に、(他地域での供給可能電力増加量)=(1住戸での災害時抑制できる機器(洗濯機、食洗機等)の1回あたりの消費量)×(1日の平均使用回数)×(その地域での設置台数(住戸数×一般的な装着率でも可))としてもよい。
【0042】
続いて、災害発生時のサーバ12の処理について説明する。図6は、本発明の実施の形態に係わる電力供給システム10のサーバ12で行われる災害発生時の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図6に示す災害発生時の処理は、気象庁等から緊急地震速報等が発信され、ネットワーク22を介して受信したときや、地震の発生を検出するセンサ等によって地震の発生を検出した場合に開始するものとして説明する。
【0043】
ステップ200では、ステップ106で記憶された被害予測及び災害対策が読み出されてステップ202へ移行する。
【0044】
ステップ202では、想定地震と実際の地震の差異より読み出した災害予測及び災害対策が補正されてステップ204へ移行する。災害対策の補正方法としては、例えば、災害予測を補正する計算式としては、(想定地震と実際の地震の差異(規模、発生源)による各種建物の被害予測の補正)=(その地域の固有周期「大」→「小」」によって被害が大きくなる建物(低層建物)の数、被害が小さくなる建物(高層建物)の数)×(上記数量をもとにした像化(減少)となる必要電力量)として、災害対策を補正する計算式としては、(想定地震での災害対策(○○地域への太陽光発電電力供給○%増加等)×(実際の地震での各地域での必要電力量)=(実際の地震での供給可能なライフラインと供給量(増加分))×(その数)−((実際の地震で供給不可能となったライフラインと供給量(減少分))×(その数))となる供給可能なライフラインを新たに選定する。
【0045】
ステップ204では、各地域を比較して電力供給優先順位が決定されてステップ206へ移行する。例えば、被害が大きい順に電力供給優先順位を決定する。
【0046】
ステップ206では、災害対策内容が各地域や各住宅等へ送信されてステップ208へ移行する。これによって、災害対策に従って電力供給が行われることになる。例えば、被害予測として、地震固有周期0.1s(短)、高層住宅地域0%停電、低層住宅地域50%停電、高層−低層A間道路が正常で、高層−低層B間道路が遮断である場合に、太陽光発電電力を低層地域に対して20%優先し、自動車を高層住宅地域から低層住宅地域へ100台移動して電力源とするなどの災害対策に従って電力供給が行われる。
【0047】
ステップ208では、実際の被害状況が取得されてステップ210へ移行する。すなわち、高層住宅地域18のコンピュータ19、低層建物地域20のコンピュータ21、大規模太陽光発電所14のコンピュータ15、及び系統電力16のコンピュータ17等から被害状況を取得する。なお、ネットワーク22を介して他の情報機関等から被害状況を取得するようにしてもよい。
【0048】
ステップ210では、被害予測が適正か否か判定される。該判定は、算出した被害予測と実際の被害とを比較して予め定めた範囲内の誤差か否かを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ216へ移行し、否定された場合にはステップ212へ移行する。
【0049】
ステップ212では、実際の被害状況から災害対策が補正されてステップ214へ移行する。ステップ202と同様に、災害対策の補正方法としては、例えば、災害予測を補正する計算式として、(想定地震と実際の地震の差異(規模、発生源)による各種建物の被害予測の補正)=(その地域の固有周期「大」→「小」」によって被害が大きくなる建物(低層建物)の数、被害が小さくなる建物(高層建物)の数)×(上記数量をもとにした増加(減少)となる必要電力量)とし、災害対策を補正する計算式として、(想定地震での災害対策(○○地域への太陽光発電電力供給○%増加等)×(実際の地震での各地域での必要電力量)=(実際の地震での供給可能なライフラインと供給量(増加分))×(その数)−((実際の地震で供給不可能となったライフラインと供給量(減少分))×(その数))となる供給可能なライフラインを新たに選定する。
【0050】
ステップ214では、補正した災害対策内容が各地域や各住宅等へ送信されてステップ216へ移行する。これによって、補正した災害対策に従って電力供給が行われることになる。例えば、被害予測として、地震固有周期0.1s(短)、高層住宅地域0%停電、低層住宅地域50%停電、高層−低層A間道路が遮断で、高層−低層B間道路が遮断である場合に、太陽光発電電力を低層地域に対して50%優先し、自動車24が使用不可とされて災害対策に従って電力供給が行われる。
【0051】
ステップ216では、復旧完了か否か判定される。該判定は、災害による停電の普及等を検出して判断してもよいし、サーバ12のオペレータによって復旧完了を表す操作が行われたか否かを判断してもよい。該判定が否定された場合にはステップ208に戻って実際の被害状況の取得が再び行われて上述の処理が繰り返されることによって復旧によって随時変化する被害状況に対応した災害対策を行うことができる。そして、判定が肯定されたところでステップ218へ移行する。
【0052】
ステップ218では、災害対策終了を各コンピュータ15〜21(移動端末装置25を含む)に通知して一連の処理を終了する。災害対策終了通知を受けて各コンピュータ15〜15は、通常の制御(電力供給)を行うように制御される。
【0053】
次に、サーバ12以外のコンピュータ15、17、19、21や移動端末装置25で行われる処理について説明する。図7は、サーバ12以外のコンピュータ15、17、19、21や移動端末装置25で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0054】
ステップ300では、情報要求があるか否か判定される。該判定は、上述のステップ100で電力供給側情報及び電力需要側情報の要求が行われたか否かを判定し、該判定肯定された場合にはステップ302へ移行し、否定された場合にはステップ306へ移行する。
【0055】
ステップ302では、要求情報の取得が行われてステップ304へ移行する。例えば、大規模太陽光発電所14のコンピュータ15や系統電力16のコンピュータ17、移動端末装置25では、電力供給側情報として供給可能電力量などの情報が取得され、高層住宅地域18のコンピュータ19や低層住宅地域20のコンピュータ21では、必要電力量などの情報が取得される。
【0056】
ステップ304では、取得した各情報がサーバ12へ送信されてステップ306へ移行する。これによってサーバ12では、上述のステップ102の判定が肯定される。
【0057】
ステップ306では、被害対策内容を受信したか否か判定される。該判定は、上述のステップ206やステップ214でサーバ12から被害対策が通知されたか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ300に戻って上述の処理が繰り返され、判定が肯定された場合にはステップ308へ移行する。
【0058】
ステップ308では、災害対策内容に応じた対策(電力供給制御)が実行されて一連の処理を終了する。災害対策は、図8に示すように、系統電力16が遮断された場合に、上述した例のような被害対策が行われるが、例えば、図8の例では、高層住宅地域18に対して大規模太陽光発電所14から電力が優先供給され、低層住宅地域20では消費電力の抑制が行われ、各住宅に設けられた太陽光発電装置等の発電電力の売電等が行われる。また、各コンピュータや移動端末装置の表示部40への表示等により自動車の移動を促したりすることにより、自動車24を高層住宅地域18へ移動させて、電力源として用いることが可能となる。
【0059】
なお、上記の実施の形態では、災害の例として地震を例に挙げて説明したが、他の災害を適用するようにしてもよい。例えば、水害に災害予測する場合には、図9に示すように、予め定めた要素毎に被害の大中小を評価して、被害予測を行うことができる。
【0060】
また、上記の実施の形態では、災害対策としては電力供給のみを挙げているが、自動車も電力供給の一アイテムとして考えているため、被害予測の中に、水や食料などの項目も列挙し、必要量を自動車に載せて運ぶことも可能となり、その必要量の演算を行うようにしてもよい。
【0061】
また、災害対策に、災害に係わる避難情報として、建物倒壊情報(建物の倒壊の恐れのある建物の情報)を「災害に係わる避難情報」として送信するようにしてもよい。それにより、住人が事前に避難することが可能となる。倒壊の恐れのある建物の情報は、「被害予測」が「大」として定義づけてもよしい、「被害予測」が「大」で、かつ「耐震補強」が「なし」を「災害に係わる避難情報」の情報として定義づけて送信するようにしてもよい。それにより、住人が事前に避難する際に、目安として送信された情報をみることで、避難し易くなり、倒壊による被害を軽減できる。
【符号の説明】
【0062】
10 電力供給システム
12 サーバ
14 大規模太陽光発電所
15、17、19、21 コンピュータ
16 系統電力
18 高層住宅地域
20 低層住宅地域
24 自動車
25 移動端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電力及び自然エネルギに基づく発電電力を含む供給電力に関する情報、並びに予め定めた対象地域の建物に関する建物情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記建物情報に基づいて、予め想定される規模の災害発生時の前記対象地域の被害状況を予測する予測手段と、
前記予測手段の予測結果及び前記取得手段によって取得された前記供給電力に関する情報に基づいて、優先的に電力供給する供給先及び優先割合を災害対策として決定する決定手段と、
を備えた電力供給システム。
【請求項2】
実際の被害状況に関する情報を取得する被害状況取得手段と、前記被害状況取得手段によって取得された実際の被害状況に基づいて、前記予測手段の予測結果を補正する補正手段と、を更に備え、
決定手段が、前記補正手段の補正結果に基づいて、前記災害対策を再決定する請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記被害状況取得手段は、復旧中の被害状況も取得し、前記補正手段が、復旧中の被害状況に応じて被害予測を再補正する請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記決定手段によって決定された前記災害対策を、住宅に設けられた端末装置及び自動車に設けられた移動端末装置の少なくとも1つの端末装置へ送信する送信手段を更に備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記被害状況取得手段は、実際の被害状況に関する情報を住宅に設けられた端末装置から取得する請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記決定手段によって再決定された前記災害対策を前記端末装置へ送信する送信手段を更に備えた請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記送信手段は、復旧が完了した場合に、復旧完了を表す完了通知を更に送信する請求項4又は請求項6に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−21781(P2013−21781A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151818(P2011−151818)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】