説明

電力供給制御装置、電力供給制御方法、および、電気機器

【課題】外部から電源装置への供給電力の状態に応じて、負荷の消費電力を最適に調整すること。
【解決手段】電力供給制御装置は、電源装置による負荷への電力の供給を制御する。電源装置は、外部から入力される電力を所定の電圧の電力に変換して、負荷に出力するとともに、負荷に印加される電圧が所定範囲となるように、当該電源装置の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達との比率を増減させる。負荷は、当該負荷における消費電力を制御されることが可能である。電力供給制御装置は、比率を検知する検知部(S111,S121,S131)と、検知部によって検知された比率に応じて負荷の消費電力を制御する制御部(S113,S124,S133)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力供給制御装置、電力供給制御方法、および、電気機器に関し、特に、電源装置による負荷への電力の供給を制御する電力供給制御装置、電力供給制御方法、および、このような電力供給制御装置を有する電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、東日本大震災の影響もあり、電力不足が問題となっている。各機器自体は省エネルギーの技術が取入れられる流れがある。しかし、店舗および事務所などに導入されるIT(Information Technology)は増加している上、今まで設置が少なかった公共スペースへのIT機器の導入も進んでおり、電力の供給エリアごとの消費電力は増加傾向にある。
【0003】
しかし、公共スペースに設置されているIT機器の場合、常時または営業時間中などの所定時間の間、稼働させる必要があるものがある。また、従来から設置されている機器の中にも、停止すると大きな問題を引起こす機器が含まれている。
【0004】
また、IDP(Information Display)に関しても、公共交通システム(電車など)および大型工業プラント(発電所、コンビナートなど)の集中制御室にあるような各機器の中央制御に使用されて常に情報を表示させているディスプレイ、ならびに、前述のシステムでの各種情報(溶鉱炉および焼却炉などのプラントのセンサーでの検出値)を表示するためのディスプレイ、ならびに、公共の場所に設置されている情報を表示するためのディスプレイ(駅に設置されている電車の行先案内板、デパートなどの避難経路表示)などの、公共スペースや重要な施設に設置され、その近辺の多くの人に情報を伝達する用途など、特定の用途に用いられている表示装置は、常に動作を継続し続けることが求められている。
【0005】
従来、これらの表示機器への電力供給は、緊急時は、UPS(Uninterruptible Power Supply)に代表される停電時にも使用可能な電源や非常用発電機で対応されると考えられていた。
【0006】
しかし、これら緊急時に電力を供給する装置が高価であるため、東日本大震災で発覚したように、その設置率は、限りなく低い。その上、設置されていたとしても、その装置によって供給される電力がまったく足りていない場合があることが発覚している。また、これらの装置は寿命が短いことが多いため、数年ごとの交換が必要であるといった課題もある。
【0007】
さらに、急激なIT機器の普及の一方、これらの機器への非常時の電源系統は完全には整備されていない。サーバ等の中央機器の電源はバックアップされていたとしても、制御盤および端末装置などの末端部には、緊急電源が配置されていない所も多く存在しているのが現状である。
【0008】
その結果、夏場のピーク時などの電力需要が増加した際には、発電所からの電力が不足して、コンセント等からの電力が不足し、機器に供給される電力の電圧がドロップすることが懸念されている。さらに、緊急時に電力を供給する装置によって電力がバックアップされている機器においても、増加したIT機器の電力を賄いきれず、供給電力の電圧がドロップする可能性がある。
【0009】
このような状況において、万一、電力が不足し、電圧が降下した場合であっても、できるだけ装置の動作を続けさせるためには、予め、ディスプレイの輝度を落としたり、音声のボリュームを絞ったりすることで、負荷側の消費電力を予め抑えておくことが考えられる。このようにしておくことによって、ある程度、電力不足に対するマージンを増加させることができる。しかし、これらの方法であると、負荷側の消費電力を予め抑える設定にしておく必要があるため、非常時ではない通常時においても、性能を落として使用することになってしまう。
【0010】
ここで、特許文献1から特許文献3の電源装置によると、トランスの2次側(電源装置の出力側)の電圧に応じて、スイッチング回路のデューティ比を制御することにより、出力電圧を安定化させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−4465号公報
【特許文献2】特開2007−215359号公報
【特許文献3】特開平10−285921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1から特許文献3の電源装置であっても、供給電力の電圧が降下したときにおいて、できるだけ負荷の動作を継続させるためには、緊急時に電力を供給する機能が無い限り、負荷の消費電力を予め抑える設定にしておく必要があった。
【0013】
このため、外部から電源装置への供給電力が減少していないときに、負荷に最大限の電力を供給することと、外部から電源装置への供給電力が減少したときに、負荷にできるだけ電力を供給することとを両立させることはできなかった。
【0014】
この発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その目的の1つは、外部から電源装置への供給電力の状態に応じて、負荷の消費電力を最適に調整することが可能な電力供給制御装置、電力供給制御方法、および、電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するために、この発明のある局面によれば、電力供給制御装置は、電源装置による負荷への電力の供給を制御する。電源装置は、外部から入力される電力を所定の電圧の電力に変換して、負荷に出力するとともに、負荷に印加される電圧が所定範囲となるように、当該電源装置の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達との比率を増減させる。負荷は、当該負荷における消費電力を制御されることが可能である。電力供給制御装置は、比率を検知する検知部と、検知部によって検知された比率に応じて負荷の消費電力を制御する制御部とを備える。
【0016】
この発明に従えば、電力供給制御装置によって、電源装置の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達との比率が検知され、検知された比率に応じて負荷の消費電力が制御される。電源装置においては、負荷の消費電力を変化させなければ、電源装置へ供給される電力が減少すれば、電力の伝達と非伝達との比率が増加され、電源装置へ供給される電力が増加すれば、電力の伝達と非伝達との比率が減少される。このため、比率に応じて負荷の消費電力を制御することによって、負荷の消費電力を最適に調整可能となる。その結果、外部から電源装置への供給電力の状態に応じて、負荷の消費電力を最適に調整することが可能な電力供給制御装置を提供することができる。
【0017】
好ましくは、制御部は、外部から入力される電力の減少に応じて、比率が所定値以下または未満となることを制御目標として、負荷の消費電力を制御する。
【0018】
この発明に従えば、電力供給制御装置によって、外部から入力される電力の減少に応じて、比率が所定値以下または未満となることを制御目標として、負荷の消費電力が制御される。その結果、外部から電源装置への供給電力が減少していないときには、負荷に最大限の電力を供給することができるとともに、外部から電源装置への供給電力が減少したときであっても、負荷にできるだけ電力を供給することができる。
【0019】
さらに好ましくは、制御部は、比率が所定値以上となった場合は、所定値以下または未満となるように消費電力を減少させるように制御する。
【0020】
この発明に従えば、電力供給制御装置によって、比率が所定値以上となった場合は、所定値以下または未満となるように消費電力を減少させるように制御される。その結果、外部から電源装置への供給電力が減少していないときには、負荷に最大限の電力を供給することができるとともに、外部から電源装置への供給電力が減少したときであっても、負荷にできるだけ電力を供給することができる。
【0021】
この発明の他の局面によれば、電力供給制御方法は、電源装置による負荷への電力の供給を制御する方法である。電源装置は、外部から入力される電力を所定の電圧の電力に変換して、負荷に出力するとともに、負荷に印加される電圧が所定範囲となるように、当該電源装置の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達との比率を増減させる。負荷は、当該負荷における消費電力を制御されることが可能である。電力供給制御方法は、比率を検知するステップと、検知された比率に応じて負荷の消費電力を制御するステップとを含む。
【0022】
この発明に従えば、外部から電源装置への供給電力の状態に応じて、負荷の消費電力を最適に調整することが可能な電力供給制御方法を提供することができる。
【0023】
この発明のさらに他の局面によれば、電気機器は、電源装置と、負荷と、電源装置による負荷への電力の供給を制御する電力供給制御装置とを有する。電源装置は、外部から入力される電力を所定の電圧の電力に変換して、負荷に出力するとともに、負荷に印加される電圧が所定範囲となるように、当該電源装置の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達との比率を増減させる。負荷は、当該負荷における消費電力を制御されることが可能である。電力供給制御装置は、比率を検知する検知部と、検知部によって検知された比率に応じて負荷の消費電力を制御する制御部とを備える。
【0024】
この発明に従えば、外部から電源装置への供給電力の状態に応じて、負荷の消費電力を最適に調整することが可能な電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態におけるディスプレイの構成の概略を示すブロック図である。
【図2】この実施の形態におけるディスプレイに取付けられる電力供給制御装置で実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】この実施の形態におけるディスプレイの制御におけるディスプレイの輝度の変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0027】
以下の発明の実施の形態においては、電気機器の一例として表示装置の代表例としてのディスプレイ10にこの発明を適用する場合について説明する。しかし、電気機器は、ディスプレイなどの表示装置に限定されず、消費電力を変化させても動作することが可能であるとともに当該負荷における消費電力を制御されることが可能な負荷を有する電気機器であれば、以下の実施の形態で例示される発明を適用することができる。
【0028】
電気機器が液晶のディスプレイ10である場合、制御対象の負荷は、バックライトである。電気機器が空調機器である場合、制御対象の負荷は、冷媒のコンプレッサーが考えられる。電気機器が給湯機器および保温機器など熱源を有する機器である場合、制御対象の負荷は、熱源である。電気機器が工場の製造機器である場合、制御対象の負荷は、物品を加工または搬送するためのモータである。
【0029】
図1は、この発明の実施の形態におけるディスプレイ10の構成の概略を示すブロック図である。図1を参照して、ディスプレイ10は、主な構成として、ディスプレイ制御回路310と、バックライト320と、バックライト駆動回路330と、液晶パネル340と、液晶駆動回路350と、電源装置200と、電力供給制御装置100とを備える。
【0030】
電源装置200は、いわゆる、スイッチング電源であり、主な構成として、電源装置制御回路210と、整流ブリッジ220と、電解コンデンサ230と、MOS−FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor、電界効果トランジスタ)240と、高周波トランス250と、ダイオード260と、電解コンデンサ270とを備える。
【0031】
整流ブリッジ220は、電源装置200の入力端子の後段に接続される。電解コンデンサ230は、整流ブリッジ220の後段に接続される。高周波トランス250は、電解コンデンサ230の後段に接続される。MOS−FET240は、電解コンデンサ230と高周波トランス250との間に接続される。電解コンデンサ270は、高周波トランス250の後段に接続される。ダイオード260は、高周波トランス250と電解コンデンサ270との間に接続される。電源装置200の出力端子は、電解コンデンサ270の後段に設けられる。
【0032】
電源装置200の入力端子には、外部の交流電源20から交流電力が入力される。整流ブリッジ220は、交流電源20から入力された交流を整流する。電解コンデンサ230は、整流ブリッジ220で整流された電流を平滑化する。
【0033】
MOS−FET240は、電解コンデンサ230で平滑化された電流の高周波トランス250への伝達および非伝達を、電源装置制御回路210からの制御信号に応じて切替えることで、高周波の交流を生成する。
【0034】
高周波トランス250は、MOS−FET240によって高周波の交流にされた電流の電力を2次側に伝達する。ダイオード260は、高周波トランス250によって伝達された交流を整流する。電解コンデンサ270は、ダイオード260によって整流された電流を平滑化した直流を、電源装置200の出力端子から外部に出力する。
【0035】
電源装置制御回路210は、電源装置200から出力される直流の電圧を検出し、電源装置200において予め定められた所定電圧(たとえば、5V)となるよう、MOS−FET240の電力の伝達と非伝達とのデューティ比を制御する。なお、所定電圧となるよう制御することに替えて、所定範囲の電圧(たとえば、4.5Vから5.5V)となるよう制御するように構成されていてもよい。
【0036】
具体的には、電源装置制御回路210は、出力電圧が所定電圧よりも小さい場合、デューティ比を増加させる。これにより、出力側に供給される電力が増加され、出力電圧が増加する。一方、電源装置制御回路210は、出力電圧が所定電圧よりも大きい場合、デューティ比を減少させる。これにより、出力側に供給される電力が減少され、出力電圧が減少する。
【0037】
電源装置制御回路210は、このように動作するため、交流電源20からの電力が増加すると、電源装置200からの出力電圧が所定電圧よりも大きくなる方向に変化するので、デューティ比を減少させる方向に制御する。一方、電源装置制御回路210は、交流電源20からの電力が減少すると、電源装置200からの出力電圧が所定電圧よりも小さくなる方向に変化するので、デューティ比を増加させる方向に制御する。
【0038】
バックライト320は、バックライト駆動回路330からの供給される電力に応じて輝度を変化させて、液晶パネル340の背面から光を照射する。液晶パネル340は、液晶駆動回路350からの制御信号に応じて画素ごとにバックライト320からの光の透過率を変化させることで画像の表示を行なう。
【0039】
液晶駆動回路350は、ディスプレイ制御回路310からの制御信号に応じて液晶パネル340の各画素ごとの印加電圧を制御する制御信号を生成し、液晶パネル340に供給する。
【0040】
バックライト駆動回路330は、ディスプレイ制御回路310から電力供給制御装置100を介して入力された制御信号に応じて、電源装置200からバックライト320に供給する電力を変化させてバックライトの輝度を変化させる。
【0041】
ディスプレイ制御回路310は、外部からの映像信号に応じて、バックライト320の輝度を所定輝度に制御する制御信号を、電力供給制御装置100を介してバックライト駆動回路330に供給するとともに、各画素ごとの濃度を示す制御信号を液晶駆動回路350に供給する。
【0042】
電力供給制御装置100は、主な構成として、負荷制御回路110と、デューティ比検知回路120とを備える。
【0043】
デューティ比検知回路120は、電源装置200の電源装置制御回路210からデューティ比を検知する。デューティ比の検知方法としては、たとえば、MOS−FET240の制御信号を取得して、オンおよびオフのパルスの比率を測定することによってデューティ比を検知する方法であってもよいし、電源装置制御回路210の内部での出力電圧から算出されたデューティ比を、直接、取得することによってデューティ比を検地する方法であってもよい。
【0044】
負荷制御回路110は、CPU(Central Processing Unit)およびその補助回路、ならびに、負荷制御回路110でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)と、負荷制御回路110で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)とを含む記憶部からなる。
【0045】
負荷制御回路110は、デューティ比検知回路120によって検知されたデューティ比に応じて、ディスプレイ制御回路310からの制御信号で示されるバックライト320の輝度を変化させた制御信号を、バックライト駆動回路330に供給する。この制御方法については、後述する図2で詳細に説明する。
【0046】
なお、図1においては、電源装置200からバックライト駆動回路330を介してバックライト320のみに電力が供給されているように示されているが、電源装置200からは、電力を必要とするディスプレイ10の他の部分にも電力が供給される。
【0047】
図2は、この実施の形態におけるディスプレイに取付けられる電力供給制御装置で実行される制御処理の流れを示すフローチャートである。図2を参照して、この制御処理は、負荷制御回路110のCPUによって実行される処理であり、メイン処理のサブルーチンとして実行される。
【0048】
まず、ステップS111で、CPUは、スイッチングトランジスタであるMOS−FET240のデューティ比を、デューティ比検知回路120から取得する。そして、ステップS112で、CPUは、取得したデューティ比が90%以上であるか否かを判断する。90%未満であると判断した場合(ステップS112でNOと判断した場合)、CPUは、実行する処理をこの制御処理の呼出元のメイン処理に戻す。
【0049】
一方、デューティ比が90%以上であると判断した場合(ステップS112でYESと判断した場合)、ステップS113で、CPUは、バックライト320の輝度を表示内容を視認可能な最低レベルにする制御信号を、バックライト駆動回路330に出力する。
【0050】
次に、ステップS121で、スイッチングトランジスタであるMOS−FET240のデューティ比を、デューティ比検知回路120から取得する。そして、ステップS122で、CPUは、取得したデューティ比が90%以上のままであるか否かを判断する。90%以上のままであると判断した場合(ステップS122でYESと判断した場合)、ステップS123で、CPUは、ディスプレイ10を待機状態に制御する制御信号を、ディスプレイ制御回路310に出力する。その後、CPUは、実行する処理をこの制御処理の呼出元のメイン処理に戻す。
【0051】
電力供給制御装置100の負荷制御回路110からの待機状態に制御する制御信号に応じて、ディスプレイ制御回路310は、画像を出力しないように制御する制御信号を液晶駆動回路350に出力するとともに、バックライト320を消灯する制御信号をバックライト駆動回路330に出力する。
【0052】
一方、デューティ比が90%未満となったと判断した場合(ステップS122でNOと判断した場合)、ステップS124で、CPUは、バックライト320の輝度のレベルを1増加する制御信号を、バックライト駆動回路330に出力する。
【0053】
次に、ステップS131で、スイッチングトランジスタであるMOS−FET240のデューティ比を、デューティ比検知回路120から取得する。そして、ステップS132で、CPUは、取得したデューティ比が90%以上となったか否かを判断する。90%未満であると判断した場合(ステップS132でNOと判断した場合)、CPUは、実行する処理を、ステップS124の処理に戻す。
【0054】
一方、デューティ比が90%以上となったと判断した場合(ステップS132でYESと判断した場合)、ステップS133で、CPUは、バックライト320の輝度のレベルを1減少する制御信号を、バックライト駆動回路330に出力する。その後、CPUは、実行する処理をこの制御処理の呼出元のメイン処理に戻す。
【0055】
図3は、この実施の形態におけるディスプレイの制御におけるディスプレイ10の輝度の変化を説明するための図である。図3を参照して、上段の図で示すように、通常時は、画面の輝度は最も高い状態、つまり、ディスプレイ10の性能の最大限の状態に設定されるようにする。このため、表示されている画像(ここでは、「ABC」の文字)は、表示内容が明確に視認可能な状態である。
【0056】
電源装置200への入力電力が減少すると、ディスプレイ10の輝度が変更されていない間は、電源装置制御回路210によって、デューティ比が増加するよう制御される。そして、そのデューティ比が90%以上となると、図2のステップS113で説明したように、バックライト320の輝度が表示内容を視認可能な最低レベルに制御される。
【0057】
この状態においては、図3の中段の図で示すように、表示されている画像(ここでは、「ABC」の文字)は、表示内容が、最低限、視認可能な状態である。表示内容が、最低限、視認可能な状態とは、たとえば、10人中、9人のユーザが、画像の内容を認識できる最低限の状態であるが、他の基準であってもよい。
【0058】
そして、図2で説明した制御の結果、デューティ比が90%を少し下回るように、バックライト320の輝度が制御される。
【0059】
この状態においては、図3の下段の図で示すように、表示されている画像(ここでは、「ABC」の文字)は、表示内容が、図3の上段の図ほどではないが、ある程度、明確に視認可能な状態である。
【0060】
以上説明したように、この実施の形態における電力供給制御装置100によれば、以下のような効果が発揮される。
【0061】
(1) 電力供給制御装置100は、電源装置200によるバックライト320への電力の供給を制御する。電源装置200は、外部から入力される電力を所定の電圧の電力に変換して、バックライト320に出力するとともに、バックライト320に印加される電圧が所定範囲(たとえば、5V、または、4.5Vから5.5V)となるように、当該電源装置200の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達とのデューティ比を増減させる。バックライト320は、当該バックライト320における消費電力を制御されることが可能である。電力供給制御装置100は、負荷制御回路110によって、図2のステップS111、ステップS121、および、ステップS131で説明したように、デューティ比検知回路120で検知した比率を取得し、ステップS113、ステップS124、および、ステップS133で説明したように、取得されたデューティ比に応じてバックライト320の消費電力を制御する。
【0062】
これにより、電力供給制御装置100によって、電源装置200の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達とのデューティ比が検知され、検知されたデューティ比に応じてバックライト320の消費電力が制御される。電源装置200においては、バックライト320の消費電力を変化させなければ、電源装置200へ供給される電力が減少すれば、電力の伝達と非伝達とのデューティ比が増加され、電源装置200へ供給される電力が増加すれば、電力の伝達と非伝達とのデューティ比が減少される。
【0063】
このため、デューティ比に応じてバックライト320の消費電力を制御することによって、バックライト320の消費電力を最適に調整可能となる。その結果、外部から電源装置200への供給電力の状態に応じて、バックライト320の消費電力を最適に調整することができる。このように、電力が不足したときのマージンを確保することができる。
【0064】
また、デューティ比を検知する構成と、デューティ比に応じてバックライト320の消費電力を制御する構成とを備えればよいので、複雑な装置を設ける必要もなくすることができ、大きな技術的なブレークスルーも必要なくすることができる。
【0065】
(2) また、負荷制御回路110は、外部から入力される電力の減少に応じて、デューティ比が所定値(たとえば、90%)未満となることを制御目標として、バックライト320の消費電力を制御する。
【0066】
これにより、電力供給制御装置100によって、外部から入力される電力の減少に応じて、デューティ比が所定値未満となることを制御目標として、バックライト320の消費電力が制御される。その結果、外部から電源装置200への供給電力が減少していないときには、バックライト320に最大限の電力を供給することができるとともに、外部から電源装置200への供給電力が減少したときであっても、バックライト320にできるだけ電力を供給することができる。
【0067】
(3) さらに、負荷制御回路110は、デューティ比が所定値以上となった場合は、所定値未満となるように消費電力を減少させるように制御する。
【0068】
これにより、電力供給制御装置100によって、デューティ比が所定値以上となった場合は、所定値未満となるように消費電力を減少させるように制御される。その結果、外部から電源装置200への供給電力が減少していないときには、バックライト320に最大限の電力を供給することができるとともに、外部から電源装置200への供給電力が減少したときであっても、バックライト320にできるだけ電力を供給することができる。
【0069】
なお、スイッチング電源である電源装置200は、通常、最大負荷状態での動作電圧を保証値としているので、負荷の消費電力を減少させれば、より小さい入力電力でも、出力電圧を確保することができ、負荷に必要な電圧を供給することが可能となる。
【0070】
また、ディスプレイ10などの電気機器において、バックライト320などの高負荷のデバイスの消費電力を減少させることで、電気機器の他のデバイス(たとえば、電気機器全体および電源装置の制御回路など)へ供給される電力が低電圧となることを防止できるので、電気機器の動作に障害を来たすことを防止することができる。
【0071】
なお、バックライト320などの高負荷のデバイスとして、低電力での動作時の電力効率が高いものを用いることによって、電力供給制御装置100によって、電力が不足したときのマージンをさらに確保することができる。
【0072】
次に、上述した実施の形態の変形例を説明する。
(1) 前述した実施の形態においては、電源装置200は、図1で説明したような回路であることとした。しかし、これに限定されず、電源装置200の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達とをデューティ比を変化させて制御する電源回路であれば他のものであってもよい。
【0073】
(2) 前述した実施の形態においては、電源装置200は、交流が入力されて直流が出力されるものであることとした。しかし、これに限定されず、交流が入力されて交流が出力される電源装置であってもよいし、直流が入力されて交流が出力されるものであってもよいし、直流が入力されて直流が出力されるものであってもよい。
【0074】
(3) 前述した実施の形態においては、電源装置200の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達とを切替えるデバイスがMOS−FET240であることとした。しかし、これに限定されず、他のスイッチング素子であってもよい。
【0075】
(4) 前述した実施の形態においては、電力供給制御装置100の負荷制御回路110によって、図2で説明したソフトウェアの処理が実行されることによって、所定の機能が実行されるようにした。しかし、これに限定されず、図2の処理を実行するハードウェア回路として、負荷制御回路110が構成され、所定の機能が実行されるようにしてもよい。
【0076】
(5) 前述した実施の形態においては、デューティ比が所定値(前述した実施の形態においては90%)以上となった場合に、電源装置200への入力電力が減少したと判断するようにした。しかし、これに限定されず、デューティ比の増加率または増加速度が所定値以上となった場合に、電源装置200への入力電力が減少したと判断するようにしてもよい。また、所定値は、電源装置200のキャパシティ、および、負荷の特性などの周辺条件に応じた他の値であってもよい。
【0077】
(6) 前述した実施の形態においては、デューティ比が90%以上となった場合に、デューティ比が所定値(前述した実施の形態においては、90%)「未満」となるように、負荷の消費電力(前述した実施の形態においては、バックライトの輝度)を減少させるよう制御した。しかし、これに限定されず、所定値「以下」となるように、制御するようにしてもよい。
【0078】
(7) 前述した実施の形態のおいては、図2のステップS112からステップS123で説明したように、デューティ比が所定値以上となった場合に、バックライト320の輝度を表示内容を視認可能な最低レベルに制御し、それでも、デューティ比が所定値を下回らない場合に、ディスプレイ10を待機状態に制御するようにした。
【0079】
しかし、これに限定されず、デューティ比が所定値以上となった場合に、バックライト320の輝度を最低レベル(たとえば、0、または、制御可能な最も低い値)に制御するようにしてもよい。このようにすれば、必ず、デューティ比が、一旦、所定値を下回るようになり、以後、図2のステップS124で説明したように、徐々に、輝度を増加させるように制御することにより、大多数の人が表示内容を視認可能な最低レベル以下の輝度のレベルにも制御することが可能となり、そのような最低レベル以下の輝度のレベルでしか、デューティ比が所定値を下回らない場合であっても、低い割合ながらも一部の人にでも、表示内容を認識させることも可能とすることができる。
【0080】
(8) 電力供給制御装置100に、電源装置(たとえば、電源装置200)からデューティ比を入力する第1の入力部(たとえば、第1の入力端子)、負荷(たとえば、バックライト320)の制御装置(たとえば、ディスプレイ制御回路310)からの負荷の消費電力(たとえば、バックライト320の輝度)を制御する制御信号を入力するための第2の入力部(たとえば、第2の入力端子)、および、デューティ比に応じて調整された負荷の消費電力を制御する制御信号を出力するための出力部(たとえば、出力端子)を設けておくようにしてもよい。
【0081】
これにより、電力供給制御装置100を既存の電気機器に容易に組込むことができるようにすることができる。具体的には、負荷の制御装置から負荷への制御信号の信号線を分断して、制御装置に接続されている側を、第2の入力端子に接続し、負荷に接続されている側を、出力端子に接続し、電源装置から取出したデューティ比の信号線を、第1の入力端子に接続するだけで、電力供給制御装置100を電気機器に組込むことができる。
【0082】
(9) 前述した実施の形態においては、図2で説明したように電源装置200のデューティ比に応じて負荷(たとえば、バックライト320)の消費電力を制御するようにした。しかし、これに限定されず、電源装置200のデューティ比が所定値(たとえば、90%)になることを制御目標として負荷の消費電力を制御する方法であれば、他の方法であってもよい。たとえば、電源装置200のデューティ比をフィードバックして負荷の消費電力を制御するフィードバック制御(たとえば、PID制御)であってもよい。
【0083】
(10) 前述した実施の形態においては、電力供給制御装置100として発明の実施の形態を説明した。しかし、電力供給制御装置100における図2で説明したような制御を行なう電力供給制御方法の発明として捉えることもできるし、電力供給制御装置100の図2で説明したような処理を実行させる電力供給制御プログラムの発明として捉えることもできるし、電力供給制御装置100を有する電気機器(たとえば、ディスプレイ10)の発明として捉えることもできる。
【0084】
(11) 今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
10 ディスプレイ、20 交流電源、100 電力供給制御装置、110 負荷制御回路、120 デューティ比検知回路、200 電源装置、210 電源装置制御回路、220 整流ブリッジ、230,270 電解コンデンサ、250 高周波トランス、260 ダイオード、310 ディスプレイ制御回路、320 バックライト、330 バックライト駆動回路、340 液晶パネル、350 液晶駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置による負荷への電力の供給を制御する電力供給制御装置であって、
前記電源装置は、外部から入力される電力を所定の電圧の電力に変換して、前記負荷に出力するとともに、前記負荷に印加される電圧が所定範囲となるように、当該電源装置の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達との比率を増減させ、
前記負荷は、当該負荷における消費電力を制御されることが可能であり、
前記比率を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された前記比率に応じて前記負荷の前記消費電力を制御する制御手段とを備える、電力供給制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、外部から入力される電力の減少に応じて、前記比率が所定値以下または未満となることを制御目標として、前記負荷の前記消費電力を制御する、請求項1に記載の電力供給制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記比率が前記所定値以上となった場合は、前記所定値以下または未満となるように前記消費電力を減少させるように制御する、請求項2に記載の電力供給制御装置。
【請求項4】
電源装置による負荷への電力の供給を制御する電力供給制御方法であって、
前記電源装置は、外部から入力される電力を所定の電圧の電力に変換して、前記負荷に出力するとともに、前記負荷に印加される電圧が所定範囲となるように、当該電源装置の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達との比率を増減させ、
前記負荷は、当該負荷における消費電力を制御されることが可能であり、
前記比率を検知するステップと、
検知された前記比率に応じて前記負荷の前記消費電力を制御するステップとを含む、電力供給制御方法。
【請求項5】
電源装置と、負荷と、前記電源装置による前記負荷への電力の供給を制御する電力供給制御装置とを有する電気機器であって、
前記電源装置は、
外部から入力される電力を所定の電圧の電力に変換して、前記負荷に出力するとともに、前記負荷に印加される電圧が所定範囲となるように、当該電源装置の入力側から出力側への電力の伝達と非伝達との比率を増減させ、
前記負荷は、
当該負荷における消費電力を制御されることが可能であり、
前記電力供給制御装置は、
前記比率を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された前記比率に応じて前記負荷の前記消費電力を制御する制御手段とを備える、電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−114922(P2013−114922A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260486(P2011−260486)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】