説明

電力供給制御装置およびその制御方法

【課題】スリープモードを有しつつ、適切に通電路の保護を行うことのできる電力供給制御装置を提供すること。
【解決手段】電力供給制御装置は、電源と通電路との間に設けられ、電源から負荷への電力供給の許可および禁止を切替えるスイッチ回路、通電路保護回路、およびスリープモード設定回路を備える。通電路保護回路は、負荷への通電の開始または終了を指示する通電指示信号(入力SW信号)に応じてスイッチ回路の切替を制御するとともに、通電路の温度Twを、負荷への通電の有無にかかわらず算出し、スリープモードでは算出せず、算出された通電路の温度Twが所定の上限値Tsmに達した場合、スイッチ回路の通電を禁止する。スリープモード設定回路は、通電路の温度Twが所定の温度条件を満たす場合、該電力供給制御装置をスリープモードに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給制御装置およびその制御方法に関し、特に、電力供給制御装置がスリープモードを有する場合における、負荷の通電路を保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源と負荷とを接続する通電経路内に、例えばパワーMOSFETなどの大電力用半導体スイッチ素子を設け、この半導体スイッチ素子をオン・オフさせることにより負荷への電流供給を制御するとともに、負荷への通電路を過電流から保護するようにした電力供給制御装置が提供されている。このような電力供給制御装置では、過電流が流れると上記半導体スイッチ素子の制御端子の電位を制御回路によって制御して当該半導体スイッチ素子をオフにして通電を遮断するものが知られている(文献1参照)。
【0003】
また、電力供給制御装置が車載用の電力供給制御装置である場合、バッテリ上がりを防止するために、負荷の動作指示が無い場合には、消費電流を抑制する状態(スリープ状態)とすることが行われている。通常、このスリープ状態では、電力供給制御装置の機能は、スリープ状態を解除する機能を除いて、停止状態とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−217696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本出願の発明者らは、上記電力供給制御装置による通電路の保護を、通電路の温度検出に基づいて行う方法を考案した。その方法では、通電路の温度が、通電電流を検出して、通電電流による通電路の発熱と、通電路の放熱とに基づいて算出推定される。しかしながら、スリープ状態においては、上記したように、電力供給制御装置の動作はその一部を除いて停止されるため、通電路の温度算出を好適に行えず、通電路の保護を適切に行えない場合が生ずる虞があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、スリープモードを有しつつ、適切に通電路の保護を行うことのできる電力供給制御装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る電力供給制御装置は、電源から負荷への電力供給を制御する電力供給制御装置であって、前記電源から前記負荷へ電力を供給する通電路に接続され、消費電流を抑えたスリープモードの動作モードを有する電力供給制御装置において、前記電源と前記通電路との間に設けられ、前記電源から前記負荷への電力供給の許可および禁止を切替えるスイッチ回路と、前記負荷への通電の開始または終了を指示する通電指示信号に応じて前記スイッチ回路の切替を制御するとともに、前記通電路の温度を、前記負荷への通電の有無にかかわらず算出し、前記スリープモードでは算出せず、算出された前記通電路の温度が所定の上限値に達した場合、前記スイッチ回路の通電を禁止して前記通電路の保護を行う通電路保護回路と、前記通電路の温度が所定の温度条件を満たす場合、該電力供給制御装置を前記スリープモードに設定するスリープモード設定回路とを備える。
【0008】
第2の発明は、第1の発明の電力供給制御装置において、前記所定の温度条件は、前記負荷への通電の終了を指示する通電指示を受け取った後において、前記通電路の温度が所定のしきい値温度まで低下することである。
第3の発明は、第1または2の発明の電力供給制御装置において、前記通電路保護回路は、前記通電路に流れる通電電流を検出する電流検出手段と、環境温度を検出する温度検出手段と、前記通電路の前記環境温度からの上昇温度を、前記通電路に流れる通電電流による前記通電路の発熱と、前記通電路の放熱との差に基づいて算出し、前記通電路の温度を、前記環境温度に前記通電路の前記上昇温度を加算して算出する電線温度演算回路と、前記通電指示信号にしたがって前記スイッチ回路のオン・オフを制御するとともに、前記通電路の温度が所定の上限値に達した場合、前記スイッチ回路をオフする通電判断制御回路とを含む。
【0009】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明の電力供給制御装置において、前記しきい値温度は、環境温度に所定の温度値を加算した温度である。
【0010】
また、上記の目的を達成するための手段として、第5の発明に係る電力供給制御装置の制御方法は、電源から負荷へ電力を供給する通電路に接続され、前記電源から前記負荷への電力供給を制御する電力供給制御装置であって、前記電源から前記負荷への電力供給の許可および禁止を切替えるスイッチ回路と、消費電流を抑えたスリープモードの動作モードとを有する電力供給制御装置の制御方法において、前記負荷への通電の開始を指示する通電指示の受け取りに応じて、前記通電路に流れる通電電流を検出する検出工程と、前記通電路の温度を、前記負荷への通電の有無にかかわらず算出する算出工程と、前記通電路の温度が所定の上限値に達した場合、前記スイッチ回路の通電を禁止する禁止工程と、前記通電路の温度が所定の温度条件を満たす場合、該電力供給制御装置を前記スリープモードに設定する設定工程とを含む。
【0011】
第6の発明は、第5の発明の電力供給制御装置の制御方法において、前記所定の温度条件は、前記負荷への通電の終了を指示する通電指示を受け取った後において、前記通電路の温度が所定のしきい値温度まで低下することである。
第7の発明は、第5または6の発明の電力供給制御装置の制御方法において、
前記負荷への通電の開始を指示する通電指示に応じて、前記通電路に流れる通電電流および環境温度を検出する検出工程をさらに含み、前記算出工程は、前記環境温度からの前記通電路の上昇温度を、前記通電電流による前記通電路の発熱と、前記通電路の放熱との差に基づいて算出し、前記環境温度に前記通電路の上昇温度を加算して前記通電路の温度を算出する。
【0012】
第8の発明は、第5から7の発明のいずれか一つの電力供給制御装置の制御方法において、前記しきい値温度は、前記環境温度に所定の温度値を加算した温度である。
【0013】
上記第1および5の発明の構成によれば、通電路の温度が所定の温度条件を満たす場合に、電力供給制御装置がスリープモードに移行される。すなわち、負荷の通電が停止されても、通電路の温度が所定の温度条件を満たさない場合、電力供給制御装置はスリープモードに移行されない。そのため、電力供給制御装置は、負荷の通電が停止されても、通電路の温度の算出を継続することができ、通電路の温度推定が適正になされる。その結果、スリープモードを有しつつ、適切に通電路の保護を行うことができる。
【0014】
上記第2および6の発明の構成によれば、負荷への通電の終了を指示する通電指示を受け取った後において、通電路の温度が所定のしきい値温度まで低下した場合に電力供給制御装置がスリープモードに移行される。すなわち、負荷への通電が終了されても、通電路の温度が所定のしきい値温度まで低下しない場合は、電力供給制御装置がスリープモードに移行されない。そのため、特に、負荷への通電のオン・オフが比較的短期間に繰り替えされ、通電路の温度が環境温度まで低下しない場合においても、好適に通電路の温度が算出され、適切に通電路の保護を行うことができる。
【0015】
上記第3および7の発明の構成によれば、通電路の温度を、スリープモードではない通常の動作モードにおいて、負荷への通電の有無にかかわらず好適に算出推定することができる。
【0016】
上記第4および8の発明の構成によれば、しきい値温度が、環境温度に所定の温度値を加算したものとして設定される。そのため、電力供給制御装置の設置状況に応じて、所定の温度値を適宜設定することによって、電力供給制御装置の省電力化と電線保護の信頼性とのバランスを適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電力供給制御装置およびその制御方法によれば、スリープモードを有しつつ、適切に通電路の保護を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る電力供給制御装置の概略的なブロック図
【図2】一実施形態に係る各信号の時間推移を概略的に示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
本発明の一実施形態について図1および図2を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電力供給制御装置10の概略的なブロック図である。図2は、一実施形態に係る各信号の時間推移を示すタイムチャートである。
【0020】
1.回路構成
電力供給制御装置10は、図1に示されるように、電源Baと負荷50との間において、電源Baから負荷50へ電力を供給する給電線(通電路)51に接続され、電源Baから負荷50へ電力供給を制御する。電力供給制御装置10は、消費電流を抑えたスリープモードの動作モードを有する。
【0021】
電力供給制御装置10は、大きくは、SW(スイッチ)入力検出回路(「スリープモード設定回路」の一例)40、スイッチ回路30、および通電路保護回路20とを含む。
【0022】
なお、本実施形態においては、電力供給制御装置10は、自動車のエンジンルーム内に配置される例を示す。電源Baはバッテリであり、負荷50として例えばモータが、通電路51である電線を介して電力供給制御装置10によって駆動制御される例が示される。また、図1において、スイッチ回路30にはバッテリ電圧Vbが直接印加されるが、通電路保護回路20およびSW入力検出回路40には、電圧変換器(図示せず)を介して、バッテリ電圧Vbは、所定の電圧に変換されて印加される。
【0023】
また、本発明の電力供給制御装置は、本実施形態に限られず、スリープモードを有し、負荷への電力供給を制御するとともに給電線を保護するために用いられる、あらゆる電力供給制御装置に適用可能である。
【0024】
スリープモード設定回路であるSW入力検出回路40は入力スイッチSWに接続される。SW入力検出回路40は、入力スイッチSWがオンされると、負荷50への通電の開始を指示する入力信号(通電指示信号)Sinを受け取って出力指示信号(通電指示信号)Stnを生成する。すなわち、本実施形態においては、負荷50への通電開始の指示は、入力スイッチSWがオンされることによって行われる。なお、図1には、入力スイッチSWがオンされるとローレベルの入力信号Sinを受け取る例が示される。
【0025】
また、SW入力検出回路40は、入力スイッチSWがオフされた場合、負荷50への通電の終了を指示する入力信号Sinを受け取る。なお、図1には、入力スイッチSWがオフされるとハイレベルの入力信号Sinを受け取る例が示される。すなわち、SW入力検出回路40の入力信号Sinを受け取る端子(図示せず)はプルアップされている。
【0026】
そして、入力スイッチSWがオフされた後において、環境温度Taからの通電路51の上昇温度(以下、「電線上昇温度」という)ΔTwが規定上昇量ΔT_lower以下となった場合、SW入力検出回路40は、スリープモード信号Spを生成する。そして、SW入力検出回路40は、スリープモード信号Spを電力供給制御装置10内の各回路に供給して、電力供給制御装置10をスリープモード(スリープ状態)に設定する。
【0027】
なお、SW入力検出回路40は、電力供給制御装置10のスリープ状態においても、負荷50への通電を指示する入力信号Sinの受け取りが可能な状態とされる。そして、SW入力検出回路40は、スリープ状態における入力信号Sinの受け取りに応じて電力供給制御装置10を起動状態とする機能、すなわちWake−up(ウェイクアップ)機能を有する。
【0028】
スイッチ回路30は、バッテリBaと通電路51との間に設けられ、バッテリBaから負荷50への電力供給を、通電路保護回路20からの通電制御信号Scnに応じてオン・オフする。ここで、スイッチ回路30は半導体スイッチとして構成され、負荷50に電力を供給するメインスイッチ31と負荷電流(通電電流)Iを検出するためのセンストランジスタ(電流検出手段)32とを含む。メインスイッチ31およびセンストランジスタ32は、例えば、図1に示されるように、NチャネルFET(電界効果トランジスタ)によって構成される。
【0029】
通電路保護回路20は、通電判断制御回路21、電線温度演算回路22、電流検出回路(電流検出手段)23、および環境温度センサ(温度検出手段)24を含み、通電指示信号Stnにしたがってスイッチ回路30の通電を許可するとともに、通電路51の温度Twが所定の上限値Tsmに達した場合、スイッチ回路30の通電を禁止して通電路51を保護する。
【0030】
電流検出手段は、電流検出回路23およびセンストランジスタ32を含み、スイッチ回路30を介して通電路51に流れる負荷電流Iを検出する。電流検出回路23は、センストランジスタ32によって検出されるセンス電流を所定倍して負荷電流Iに換算する。通電電流Iの情報は、電線温度演算回路22に提供される。
【0031】
環境温度センサ24は、例えば、電線温度演算回路22の近傍に設けられ、自動車のエンジンルーム内の環境温度Taを検出する。検出された環境温度Taの情報は、電線温度演算回路22に提供される。
【0032】
電線温度演算回路22は、スリープモードではない通常の動作モードにおいては、通電電流Iの有無にかかわらず、通電電流Iによる通電路51の発熱と、通電路51の放熱との差に基づいて、環境温度Taからの電線上昇温度ΔTwを算出して、推定する。そして、電線温度演算回路22は、環境温度Taに、算出された電線上昇温度ΔTwを加算して、通電路51の温度(以下、単に「電線温度」という)Twを算出する。電線温度演算回路22は、算出した電線上昇温度ΔTwをSW入力検出回路40に提供し、電線温度Twの情報を通電判断制御回路21に提供する。
【0033】
ここで、電線温度演算回路22は、例えば、所定時間Δt毎に通電電流Iをサンプリングし、各通電電流Iの値を下式(1)に代入して、電線上昇温度ΔTwを算出する。
ΔTw(n)=ΔTw(n−1)×exp(−Δt/τw)+Rthw
×Rw(n−1)×I(n−1)×(1−exp(−Δt/τw)) ……(1)
ここで、I(n):検出n(1以上の整数)回目の検出通電電流値(A)
ΔTw(n):検出n回時での電線上昇温度(℃)
Rw(n)=Rw(0)×(1+κw×(Tw−To))
:検出n回時の電線抵抗(Ω)
Rw(0):所定基準温度Toでの電線抵抗(Ω)
Rthw:電線熱抵抗(℃/W)
τw:電線放熱時定数(s)
κw:電線抵抗温度係数(/℃)
なお、式(1)において、通電電流Iが含まれない第1項が通電路51の放熱を示し、通電電流Iを含む第2項が通電電流Iによる通電路51の発熱を示している。すなわち、負荷50への通電が遮断されて通電電流Iが無い場合は、通電路51の放熱によって、電線温度Twが決定される。
【0034】
通電判断制御回路21は、SW入力検出回路40からの通電指示信号Stnにしたがってスイッチ回路30のオン・オフを制御するとともに、電線温度Twが所定の上限値Tsmに達した場合、スイッチ回路30をオフする。なお、ここで電線温度Twの上限値Tsmは、電線発煙温度とされる。すなわち、通電判断制御回路21は、電線温度Twが電線発煙温度Tsmに達した場合、通電路51を保護するために、スイッチ回路30のメインスイッチ31をオフして、負荷50への通電を禁止する。
【0035】
2.電力供給制御装置の動作
次に、図2のタイムチャートを参照して、本実施形態における電力供給制御装置10の動作を説明する。
今、負荷(モータ)50が停止状態において、図2の時刻t0において、負荷50への通電を開始させるために入力スイッチSWがオンされたとする。すると、入力スイッチSWのオンに応じて、SW入力検出回路40は、Wake−up機能によって電力供給制御装置10を起動状態とする。また、SW入力検出回路40は、出力指示信号(通電指示信号)Stnを通電判断制御回路21に供給する。
【0036】
通電判断制御回路21は出力指示信号Stnに応じてスイッチ回路30のメインスイッチ31をオンする通電制御信号Scnを生成して、メインスイッチ31をオンさせる。すると、通電電流IがバッテリBaから負荷50に供給され、電線温度Twが環境温度Taから上昇する。
【0037】
すなわち、負荷50への通電指令に応じて、センストランジスタ32および電流検出回路23は負荷電流Iを検出し、環境温度センサ24は環境温度Taを検出する(検出工程)。また、電線温度演算回路22は、式1に基づいて、環境温度Taからの電線上昇温度ΔTwを算出して、環境温度Taに電線上昇温度ΔTwを加算して、電線温度Twを算出する(算出工程)。
【0038】
なお、図2には、通電電流Iの値として、通電路51にショートが発生した場合のショート電流Isと通常時に流れる通常電流Inとが示される。なお、図2には、時刻t0において通電路51にショートが発生している場合が示されている。
【0039】
図2の時刻t1において、通電路51のショートが一旦解除されると、通電電流Iがショート電流Isから通常電流Inに減少する。このとき、通電電流Iによる発熱よりも通電路51の放熱のほうが大きくなるため、算出される電線温度Twは低下する。
【0040】
次いで、図2の時刻t2において通電電流Iが再び通常電流Inからショート電流Isに増加すると、電線温度Twも増加する。そして、図2の時刻t3において入力スイッチSWがオフされると、SW入力検出回路40は、通電電流Iを停止するための出力指示信号Stnを通電判断制御回路21に供給する。通電判断制御回路21は、出力指示信号Stnに応じてメインスイッチ31をオフする通電制御信号Scnを生成して、メインスイッチ31は通電制御信号Scnによってオフさせる。すると、負荷50への通電電流Iは遮断され、算出される電線温度Twは低下する。
【0041】
なお、図2の最下段には、入力スイッチSWがオフされると、その直後にスリープモードに移行する、従来のスリープモード移行における、電線温度Twの一例が示される。従来のスリープモード移行の場合、入力スイッチSWがオフされると、例えば、電線温度演算回路22は電線温度Twの算出動作を停止する。そのため、例えば、図2に示されるように、電線上昇温度ΔTwはリセットされ、電線温度Twは環境温度Taとされる。一方、本実施形態においては、入力スイッチSWのオフとともにスリープモードに移行しないため、入力スイッチSWがオフされても電線温度演算回路22は電線上昇温度ΔTwおよび電線温度Twの算出動作を継続する。
【0042】
次いで、図2の時刻t4において再び入力スイッチSWがオンされたとすると、時刻t0と同様に、入力検出回路40は、通電電流Iを流すための出力指示信号Stnを通電判断制御回路21に供給する。通電判断制御回路21は出力指示信号Stnに応じてメインスイッチ31をオンさせる。すると、通電電流Iに応じて算出される電線温度Twは、その時の温度から上昇する。
【0043】
一方、従来のスリープモード移行の場合、電線温度Twは、環境温度Taから上昇する。すなわち、電線温度演算回路22は、時刻t4における実際の電線温度Twが環境温度Taよりも高いにも係わらず、時刻t4における電線温度Twを環境温度Taに等しいとして電線温度Twの算出を開始する。
【0044】
そして、例えば、図2の時刻t5において電線温度Twが電線発煙温度Tsmに達した場合、本実施形態においては、入力スイッチSWがオン状態であっても、通電判断制御回路21は、通電路51を保護するために、メインスイッチ31をオフして、負荷50への通電を禁止する(禁止工程)。通電が禁止されることによって電線温度Twは低下し、通電路51は発煙に至らず、適切に保護される。
【0045】
一方、従来のスリープモード移行にしたがった電線温度Twの算出の場合には、時刻t5において、算出される電線温度Twが、まだ電線発煙温度Tsmにまで達していないため、通電電流Iは、図2の点線で示されるように、入力スイッチSWがオフされる時刻t6までさらに継続して流れることとなる。すなわち、従来のスリープモード移行にしたがって電線温度Twの算出を行うと、実際に電線温度Twが電線発煙温度Tsmまで達しているのもかかわらず、電力供給制御装置10は、それを誤認識して、さらに通電電流Iを流し続ける虞がある。
【0046】
そして、本実施形態においては、図2の時刻t7において、電線温度Twが所定のしきい値温度Tth以下まで低下し、電線上昇温度ΔTwが判定上昇量(本発明における「所定の温度値」に相当)ΔT_lower以下となった場合、SW入力検出回路40は、スリープモード信号Spを生成し、電力供給制御装置10をスリープモードに設定する(設定工程)。
【0047】
このように、本実施形態においては、しきい値温度Tthは、環境温度Taに所定の温度値(判定上昇量ΔT_lower)を加算したものとして設定される。そのため、電力供給制御装置10の設置状況に応じて、所定の温度値ΔT_lowerを適宜設定することによって、電力供給制御装置10をスリープモードとするタイミング、すなわち、省電力化と電線保護の信頼性とのバランスを適宜調整することができる。例えば、電線保護の信頼性を重きが置かれる場合は、しきい値温度Tthを環境温度Taに近い温度に設定するようにすればよい。すなわち、所定の加算温度(判定上昇量ΔT_lower)を小さく、例えば、0.1℃から5℃の間とするようにすればよい。
【0048】
3.本実施形態の効果
上記したように、本実施形態においては、スリープモードに移行する条件に、電線上昇温度ΔTwの条件が加味される。すなわち、入力スイッチSWがオフされた場合であっても、電線上昇温度ΔTwが判定上昇量ΔT_lowerより大きい場合(電線温度Twがしきい値温度Tthより大きい場合)、電力供給制御装置10はスリープモードに移行せず、電線温度演算回路22は電線温度Twの算出動作を継続する。そのため、負荷50への通電のオン・オフが比較的短期間に繰り替えされ、電線温度Twが環境温度Taまで低下しない場合においても、好適に電線温度Twが算出され、適切に通電路51の保護を行うことができる。すなわち、本実施形態による電力供給制御装置10によれば、スリープモードを有しつつ、適切に通電路51の保護を行うことができる。
【0049】
また、しきい値温度Tthは、環境温度Taに所定の温度値ΔT_lowerを加算したものとして設定される。そのため、電力供給制御装置10の設置状況に応じて、所定の温度値ΔT_lowerを適宜設定することによって、電力供給制御装置10の省電力化と電線保護の信頼性とのバランスを適宜調整することができる。
【0050】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
(1)本実施形態においては、しきい値温度Tthが、環境温度Taに所定の温度値(判定上昇量ΔT_lower)を加算したものとして設定される例を示したが、これに限定されない。しきい値温度Tthを環境温度Taに依存しない、所定の一定温度として設定するようにしてもよい。この場合であっても、電線保護の信頼性を確保することができる。
【0052】
(2)上記実施形態では、電流検出手段を、電流検出回路23およびセンストランジスタ32によって構成する例を示したが、これに限られない。通電電流の検出を、例えば、シャント抵抗を用いて行うようにしてもよいし、あるいはメインスイッチ(NチャネルFET)のドレイン−ソース間電圧Vdsに基づいて行うようにしてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、スリープモード設定回路をSW入力検出回路40とする例を示したが、これに限られない。SW入力検出回路40とは別個に、スリープモード設定回路を設けるようにしてもよい。
【0054】
(4)上記実施形態において、電力供給制御装置10の各回路を個別の回路として構成する例を示したが、これに限れない。例えば、環境温度センサ24を除く通電路保護回路20とSW入力検出回路40とを、ASIC(特定用途向け集積回路)によって構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…電力供給制御装置
20…通電路保護回路
21…通電判断制御回路
22…電線温度演算回路
23…電流検出回路(電流検出手段)
24…環境温度センサ(温度検出手段)
30…スイッチ回路
31…メインスイッチ(スイッチ回路)
32…センストランジスタ(電流検出手段)
40…SW入力検出回路(スリープモード設定回路)
I…通電電流
Ta…環境温度
Tth…しきい値温度
Tw…通電路の温度(電線温度)
ΔTw…通電路の上昇温度
ΔT_lower…判定上昇量(所定の温度値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷への電力供給を制御する電力供給制御装置であって、前記電源から前記負荷へ電力を供給する通電路に接続され、消費電流を抑えたスリープモードの動作モードを有する電力供給制御装置において、
前記電源と前記通電路との間に設けられ、前記電源から前記負荷への電力供給の許可および禁止を切替えるスイッチ回路と、
前記負荷への通電の開始または終了を指示する通電指示信号に応じて前記スイッチ回路の切替を制御するとともに、前記通電路の温度を、前記負荷への通電の有無にかかわらず算出し、前記スリープモードでは算出せず、算出された前記通電路の温度が所定の上限値に達した場合、前記スイッチ回路の通電を禁止して前記通電路の保護を行う通電路保護回路と、
前記通電路の温度が所定の温度条件を満たす場合、該電力供給制御装置を前記スリープモードに設定するスリープモード設定回路と、
を備える電力供給制御装置。
【請求項2】
前記所定の温度条件は、前記負荷への通電の終了を指示する通電指示を受け取った後において、前記通電路の温度が所定のしきい値温度まで低下することである、請求項1に記載の電力供給制御装置。
【請求項3】
前記通電路保護回路は、
前記負荷に流れる通電電流を検出する電流検出手段と、
環境温度を検出する温度検出手段と、
前記通電路の前記環境温度からの上昇温度を、前記通電路に流れる通電電流による前記通電路の発熱と、前記通電路の放熱との差に基づいて算出し、前記通電路の温度を、前記環境温度に前記通電路の前記上昇温度を加算して算出する電線温度演算回路と、
前記通電指示信号にしたがって前記スイッチ回路のオン・オフを制御するとともに、前記通電路の温度が所定の上限値に達した場合、前記スイッチ回路をオフする通電判断制御回路とを含む、請求項1または2に記載の電力供給制御装置。
【請求項4】
前記しきい値温度は、環境温度に所定の温度値を加算した温度である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力供給制御装置。
【請求項5】
電源から負荷へ電力を供給する通電路に接続され、前記電源から前記負荷への電力供給を制御する電力供給制御装置であって、前記電源から前記負荷への電力供給の許可および禁止を切替えるスイッチ回路と、消費電流を抑えたスリープモードの動作モードとを有する電力供給制御装置の制御方法において、
前記通電路の温度を、前記負荷への通電の有無にかかわらず算出する算出工程と、
前記算出された通電路の温度が所定の上限値に達した場合、前記スイッチ回路の通電を禁止する禁止工程と、
前記通電路の温度が所定の温度条件を満たす場合、該電力供給制御装置を前記スリープモードに設定する設定工程と、
を含む、電力供給制御装置の制御方法。
【請求項6】
前記所定の温度条件は、前記負荷への通電の終了を指示する通電指示を受け取った後において、前記通電路の温度が所定のしきい値温度まで低下することである、請求項5に記載の電力供給制御装置の制御方法。
【請求項7】
前記負荷への通電の開始を指示する通電指示に応じて、前記負荷に流れる通電電流および環境温度を検出する検出工程をさらに含み、
前記算出工程は、
前記環境温度からの前記通電路の上昇温度を、前記通電電流による前記通電路の発熱と、前記通電路の放熱との差に基づいて算出し、前記環境温度に前記通電路の上昇温度を加算して前記通電路の温度を算出する、請求項5または6に記載の電力供給制御装置の制御方法。
【請求項8】
前記しきい値温度は、前記環境温度に所定の温度値を加算した温度である、請求項5から7のいずれか一項に記載の電力供給制御装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−239835(P2010−239835A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87534(P2009−87534)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【上記1名の代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
【Fターム(参考)】