説明

電力供給装置、クレーン、及び電力供給方法

【課題】商用電源から車両へ供給する電力を低電力とし低圧送電を可能にする、ことを目的とする。
【解決手段】電力供給装置40は、クレーンが有する電力負荷に電力を供給するために、クレーンに搭載され、直流母線52を介して電力負荷と接続されて電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能なバッテリ42を備えている。そして、電力供給装置40は、商用電源から供給される交流電力を、PWMコンバータ41によって、第1電圧目標値の電圧とされると共に最大電力目標値を上限とした直流電力に変換し、直流母線52を介して電力負荷に供給させ、バッテリ充放電制御装置48によって、バッテリ42を第1電圧目標値よりも小さな第2電圧目標値の電圧で充放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に電力を供給する電力供給装置、クレーン、及び電力供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電装置を搭載し、蓄電装置から供給される電力によって電力負荷を駆動させる車両が開発されている。このような車両の例として、以下のようなクレーンが挙げられる。
【0003】
港湾等のコンテナヤードでは、船舶へ積み込む前のコンテナや、船舶から積み下ろされたコンテナが多数設置されている。これらコンテナは、上方へ複数積み上げられた段積みコンテナとされ、各段積みコンテナが所定配列に従ってレーンごとに並べられている。各レーンには、レーンを跨ぐように、RTG(Rubber Tired Gantry crane)等の自走式の門型クレーンが配置される。この門型クレーンによって、レーン内を走行するトレーラやAGV(Automatic Guided Vehicle)とのコンテナの受け渡しが行われ、また、レーン内のコンテナの設置等が行われる。
【0004】
このようなRTG等のクレーンは、従来、クレーンに搭載されたエンジン発電機にて発電し、クレーンの走行モータや荷役モータに電力を供給している。また、近年の環境負荷低減の要請から、エンジン発電機に加えてバッテリを搭載したハイブリッド電源方式が実用化されつつある。さらに環境負荷の低減を進める方式として、エンジン発電機を廃し、地上に設けた給電源から給電ケーブルおよびケーブルリールを介してクレーンに電力を供給するケーブルリール式地上給電方式がある。
【0005】
特許文献1には、商用電源と蓄電装置とからの給電によって駆動するクレーンが記載されている。
特許文献1に記載されているクレーンは、蓄電装置の蓄電量が第1閾値を上回っている場合、高圧領域及び低圧領域共に、蓄電装置単体でモータを駆動させ、蓄電装置の蓄電量が第1閾値を下回っている場合は、蓄電装置からの電力と商用電源からの電力の併用によってモータを駆動させ、蓄電装置の蓄電量が第1閾値よりも低い第2閾値を下回っている場合は、商用電源からの電力のみによってモータを駆動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−166775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、RTG等のクレーンは、吊荷の巻き上げに要する電力が例えば150kW(過負荷耐量180%時最大270kW)、トロリの横行走行に要する電力が例えば22kW(過負荷耐量200%時最大44kW)、その他ベースロードが最大の場合に要する電力が例えば35kW程度の負荷に対する電力を必要とするため、合計最大350kW程度の電力を必要とする。
【0008】
一方、吊荷を巻き下げる場合、クレーンは、発電機の振る舞いをし、商用電源へ電力を回生する。
【0009】
このように、クレーンによる電力の消費と発電とを平均すると数十kW程度となることから、クレーンによっては、負荷変動が大きくなる場合もある。
【0010】
しかし、特許文献1に記載のクレーンは、蓄電装置で補えない電力が商用電源から供給されるので、商用電源から供給される電力は場面に応じて変動するため、RTG等に適用する場合は、高圧電力(例えば、AC6600V)となることを想定して、商用電源からの給電のための電源設備等を構成しなければならない。そして、クレーンの電力変動が大きい場合は、さらに過剰な電源設備を必要とする。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、商用電源から車両へ供給する電力を低電力とし低圧送電を可能にできる、電力供給装置、クレーン、及び電力供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の電力供給装置、クレーン、及び電力供給方法は以下の手段を採用する。
【0013】
本発明の第一態様に係る電力供給装置は、車両が有する電力負荷に電力を供給するために、該車両に搭載される電力供給装置であって、商用電源から供給される交流電力を、第1目標値の電圧とすると共に予め定められた電力値を上限とした直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する変換手段と、前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置と、前記蓄電装置を前記第1目標値よりも小さな第2目標値の電圧で充放電させる充放電制御手段と、を備える。
【0014】
この構成によれば、電力供給装置は、車両が有する電力負荷に電力を供給するために、該車両に搭載される。なお、車両とは、クレーンや交通車両等である。
【0015】
そして、変換手段によって、商用電源から供給される交流電力が、第1目標値の電圧とされると共に予め定められた電力値を上限とした直流電力に変換され、導線を介して電力負荷に供給される。
さらに、充放電制御手段によって、導線を介して電力負荷と接続され、電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置が、第1目標値よりも小さな第2目標値の電圧で充放電される。
【0016】
これにより、電力負荷で消費される電力(消費電力)が上記予め定められた電力値以下の場合は、第1目標値の方が第2目標値よりも大きいので、変換手段から供給される電力の電圧が蓄電装置から供給される電力の電圧よりも大きい。このため、電力負荷は、変換手段から供給される直流電力、すなわち商用電源からの電力のみによって駆動されることとなる。
電力負荷の消費電力の増加に伴い、変換手段から供給される電力は増加することとなるが、消費電力が上記予め定められた電力値を超えると、電力負荷へ電力を供給することとなる導線における電圧が低下する。導線における電圧が第2目標値まで低下すると、充放電制御手段による蓄電装置の放電が開始される。そして、電力負荷は、予め定められた電力値を上限とした変換手段から供給される電力と蓄電装置から供給される電力とで駆動されることとなる。
【0017】
従って、商用電源から車両へ供給する電力を低電力とし低圧送電を可能にできる。
【0018】
また、上記第一態様では、前記充放電制御手段が、前記蓄電装置が充電を必要とし、かつ前記電力負荷で消費される電力が前記予め定められた電力値未満の場合、前記変換手段で変換された直流電力によって前記蓄電装置を充電させることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、変換手段で変換された直流電力のうち、電力負荷で消費されない余剰な電力が蓄電装置の充電に用いられるので、商用電源から蓄電装置へ効率的に充電が可能となる。
【0020】
また、上記第一態様では、前記電力負荷が、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する回生が可能とされ、前記充放電制御手段が、前記蓄電装置が充電を必要とし、かつ前記電力負荷が回生し、前記電力負荷の回生により生じる電力の電圧が前記第2目標値以上となった場合、該電力によって前記蓄電装置を充電させることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、簡易な構成により、電力負荷の回生により生じる電力を蓄電装置に充電させることができる。
【0022】
本発明の第二態様に係るクレーンは、上記記載の電力供給装置と、前記電力供給装置から供給される電力によって駆動する電力負荷と、を備える。
【0023】
本発明の第三態様に係る電力供給方法は、車両が有する電力負荷に電力を供給するために、該車両に搭載される電力供給方法であって、商用電源から供給される交流電力を、第1目標値の電圧とすると共に予め定められた電力値を上限とした直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する変換する第1工程と、前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置を、前記第1目標値よりも小さな第2目標値の電圧で充放電させる第2工程と、を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、商用電源から車両へ供給する電力を低電力とし低圧送電を可能にできる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るクレーンを示した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るクレーンの電気的構成の概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係るクレーンの電力負荷で消費される電力の時間変化を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係るPWMコンバータから供給される直流電力のみによって電力負荷が駆動される場合を示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態に係るPWMコンバータから供給される電力とバッテリから供給される電力とで電力負荷が駆動される場合を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態に係るPWMコンバータで変換された直流電力によってバッテリが充電される場合を示す模式図である。
【図7】本発明の実施形態に係る電力負荷から生じた回生電力と共にPWMコンバータで変換された直流電力によってバッテリを充電が充電される場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る電力供給装置、クレーン、クレーンの電力供給方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施形態にかかるクレーン1を示している。
図1には、レーンRの走行方向Xに設置されたクレーン1が示されている。クレーン1は、地上に設置された給電ボックス31(給電設備)から供給された電力によって動作する地上給電方式の電動クレーンとされており、エンジン発電機を備えていない。また、クレーン1は、クレーン用給電ケーブルリール装置(以下、単に「ケーブルリール装置」という。)2を備えている。
【0028】
クレーン1は、いわゆるRTG(Rubber Tired Gantry crane)とされ、複数の車輪(ゴムタイヤ)3によって自走する門型のクレーンとされている。クレーン1は、複数のコンテナ(以下、「吊荷」という。)が上方に段積みされた段積み吊荷が所定配列をもって設置されたレーンRを跨ぐように配置され、レーンRの長手方向(走行方向X)に走行する。
【0029】
クレーン1は、各脚部11に4つの走行装置5を備えており、各走行装置5に4つの車輪3が設けられている。走行装置5は、走行制御装置7によって、その駆動が制御されるようになっている。走行装置5には、オートステアセンサ6が設けられている。このオートステアセンサ6は、レーンRの長手方向に敷設された磁気ガイドライン15からの磁気を検出するようになっており、これにより、クレーン1を走行方向Xに自動で直進運転できるようになっている。
【0030】
左右方向である走行方向Xに隣り合う走行装置5は、下梁9によって連結されており、この下梁9上に走行制御装置7が設置されている。ここで、左右とはクレーン1の走行方向を意味し、前後とはトロリ20の移動方向(横行方向Y)を意味する。これは、トロリ20に設置された運転室22内のオペレータの姿勢を基準として定められたものである。
【0031】
下梁9の中央には、下方に向けた状態のベイセンサ8が設けられている。このベイセンサ8は、設置された吊荷の左右方向の単位であるベイ毎に敷設された磁石16からの磁気を検出するようになっており、これにより、クレーン1を目標のベイに停止させることができる。
下梁9の両端には、上方に立設する柱10がそれぞれ設けられている。各柱10の上端は、もう一方の下梁9から立設された柱10の上端とガーダ12によって連結されている。
【0032】
ガーダ12は左右方向に2本並列に設けられており、これらガーダ12上をトロリ20が前後方向(横行方向Y)に移動する。トロリ20には運転室22が設けられており、この運転室22内にオペレータが待機し、クレーン1の操作を行う。
【0033】
トロリ20からはスプレッダ(吊具)24が吊り下げられており、このスプレッダ24によって吊荷が把持された状態で吊り下げられるようになっている。具体的には、スプレッダ24の四隅に、先端に拡大頭部を有するツイストロックピン(図示せず)が下方に突出した状態で設けられており、各ツイストロックピンの拡大頭部が吊荷の上面四隅に設けられた穴に挿入された状態で回転させられることによって係合するようになっている。このようにスプレッダ24によって吊り下げられることにより、吊荷はトロリ20の移動に応じて各位置に移動させられる。
【0034】
給電ケーブル33は、AC460Vといった低電圧仕様とされているので、従来のAC6600V級の高電圧仕様の給電ケーブルに比べて小径とされている。これに伴い、ケーブルリール35は、従来のケーブルリールに比べて小径となり小型化されている。このように小型化されたケーブルリール35は、クレーン1の走行方向X側に張り出すように設置されている。
【0035】
ケーブルリール35を備えたケーブルリール装置2は、クレーン1に対して着脱可能とされている。また、図1に示されているように、1つのクレーン1に対して複数設けることもできる。そして、給電ボックス31の位置に応じて、ケーブルリール装置2の位置が変更できるようになっている。
【0036】
図2は、本実施形態に係るクレーン1の電気的構成の概略図である。
【0037】
クレーン1は、電力負荷に電力を供給(給電)する電力供給装置であって、商用電源から予め定められた電力の供給を受け、電力負荷に電力を供給するPWMコンバータ41、及び充放電可能であり、電力負荷に電力を供給するためのバッテリ42(蓄電装置)を含む上述した電力供給装置40を備えている。
【0038】
給電ボックス31は、高圧受電盤44によって商用電源から受電し、受電した交流電力を変圧器45によって所定の大きさの交流電力に変換(例えば、6600Vを460Vに変換)し、電力供給装置40へ給電する。
【0039】
電力供給装置40は、給電ボックス31から交流電力が供給(給電)され、PWMコンバータ41によって交流電力から変換された直流電力を、導線である直流母線52を介して電力負荷に接続されている負荷駆動インバータ43A〜43Fへ供給する。また、バッテリ42は、放電により直流電力と、PWMコンバータ41と同様に直流母線52を介して電力負荷に接続されている負荷駆動インバータ43A〜43Fへ供給する。
【0040】
なお、PWMコンバータ41は、給電ボックス31に接続された給電ケーブル33に給電コネクタ46及びケーブルリール47を介して接続されている。
そして、PWMコンバータ41は、給電ボックス31から供給される交流電力を、第1目標値(以下、「第1電圧目標値」という。)の電圧とすると共に予め定められた電力値(以下、「最大電力目標値」という。)を上限とした直流電力に変換し、直流母線52を介して電力負荷に供給する。PWMコンバータ41は、電流制限機能を有しており、出力する電力を一定に保ち、電流の上限値が予め設定されることによって、PWMコンバータ41が出力する電力が最大電力目標値以下に制限されている。
なお、PWMコンバータ41は、力行時及び回生時共に電力を最大電力目標値以下に制限されている。また、電流の上限値は、例えば直流母線52で許容される電流値とされる。さらに、PWMコンバータ41は、回生時に地上給電側へは電流制限機能により、回生されないように構成されている。
【0041】
電力供給装置40が備えるバッテリ充放電制御装置48は、バッテリ42を第1目標値よりも小さな第2目標値(以下、「第2電圧目標値」という。)の電圧で充放電させる。
【0042】
電力負荷は、クレーン1が備えるトロリ20を横行させる横行用のモータ49A、車輪3を回転させるモータ49B〜49E及び旋回用のモータ49F、吊荷を巻き上げるための巻き上げ用モータ49G、並びに補機50等である。なお、巻き上げ用モータ49Gは、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する回生が可能とされており、巻き上げた吊荷を下げる場合、発電機として機能することによって発電する。
【0043】
以下の説明において、各モータ49を区別する場合は、符号の末尾にA〜Gの何れかを付し、各モータ49を区別しない場合は、A〜Gを省略する。また、各負荷駆動用インバータを区別する場合は、符号の末尾にA〜Fの何れかを付し、各負荷駆動インバータ43を区別しない場合は、A〜Fを省略する。
【0044】
そして、各モータ49及び補機50は、上述したように、各々対応する負荷駆動インバータ43によって電力供給装置40からの直流電力が交流電力へ変換され、給電される。
さらに、電力負荷で消費されなかった電力は、抵抗器51によって消費される。
【0045】
図3は、電力負荷で消費される電力の時間変化の一例を示すグラフである。
図3は、横軸が時間変化、縦軸が電力とされており、電力負荷で消費される消費電力の時間変化を示している、なお、電力が正の場合は、電力負荷が電力を消費している場合である一方、電力が負の場合は、クレーン1が吊荷の巻き下げを行っている場合であり、巻き上げ用モータ49Gが電力を発生させている場合である。
【0046】
そして、直線Aが消費電力の平均値を示しており、本実施形態では、PWMコンバータ41が電力負荷へ供給する電力の最大電力目標値を、一例として上記平均値(例えば45kW)とする。
【0047】
次に、本実施形態に係る電力供給装置40の作用を説明する。なお、本実施形態では、一例として、第1電圧目標値を660Vとし、最大電力目標値を45kWとし、第2電圧目標値を651Vとする。これにより、以下に説明するように、PWMコンバータ41及びバッテリ充放電制御装置48は、各々独立して、直流母線52の電圧を一定に制御する電圧制御を行うこととなる。
【0048】
まず、バッテリ42が満充電状態であり、電力負荷(負荷駆動インバータ43)が電力を消費する場合、電力負荷へ電力を供給することとなる直流母線52における電圧(以下、「直流母線電圧」という。)が低下すると、PWMコンバータ41の第1電圧目標値(660V)の方が第2電圧目標値(651V)よりも大きいため、図4に示されるように、PWMコンバータ41から供給される直流電力、すなわち商用電源からの電力のみによって電力負荷が駆動される。この場合、直流母線52の電圧(実電圧)は、660Vで一定となる。また、バッテリ充放電制御装置48は、運転が停止状態とされている。
【0049】
このように、電力負荷で消費される電力(以下、「消費電力」という。)が最大電力目標値以下の場合は、PWMコンバータ41から供給される直流電力のみによって電力負荷が駆動される。
【0050】
そして、電力負荷の消費電力の増加に伴い、PWMコンバータ41から供給される電力は増加することとなるが、消費電力が最大電力目標値(45kW)を超えると、直流母線電圧が低下する。直流母線電圧が第2電圧目標値(651V)まで低下すると、図5に示されるようにバッテリ充放電制御装置48は運転状態(放電制御)となり、バッテリ42の放電(バッテリアシスト)が開始される。
そして、電力負荷は、最大電力目標値を上限としたPWMコンバータ41から供給される電力とバッテリ42から供給される電力とで駆動されることとなる。この場合、直流母線52の電圧(実電圧)は、651Vで一定となる。
【0051】
従って、本実施形態に係る電力供給装置40は、商用電源からクレーン1へ供給する電力を低電力とし低圧送電を可能にできる。
【0052】
一方、直流母線電圧がバッテリ充放電制御装置48の第2電圧目標値よりも高い場合は、直流母線電圧がバッテリ42を充電しようと働く。そのため、電力負荷の消費電力が低い場合は、PWMコンバータ41の最大電力目標値の範囲内で、電力負荷で消費されない余剰となる電力をバッテリに充電できる。すなわち、電力負荷で消費される電力と最大電力目標値との差が、バッテリ42に充電される電力となる。
そこで、バッテリ充放電制御装置48は、バッテリ42が充電を必要とし、かつ電力負荷の消費電力が最大電力目標値未満の場合、図6に示されるように運転状態(充電制御)となり、PWMコンバータ41で変換された直流電力によってバッテリ42を充電させる。この場合、直流母線52の電圧(実電圧)は、651Vで一定となる。
【0053】
また、電力負荷(巻き上げ用モータ49G等)から回生によって電力(以下、「回生電力」という。)が発生する場合もある。
そこで、バッテリ充放電制御装置48は、バッテリ42が充電を必要とし、かつ電力負荷が回生している場合、図7に示されるように運転状態(充電制御)となり、電力負荷からの回生電力と共にPWMコンバータ41で変換された直流電力によってバッテリ42を充電させる。すなわち、負荷駆動インバータ43は、回生電力を第2電圧目標値(651V)以上となるように直流母線52へ流す。この場合、直流母線52の電圧(実電圧)は、651Vで一定となる。
また、この場合、一例として、PWMコンバータ41は、最大電力目標値でバッテリ42へ電力を供給するが、該電力を最大電力目標値未満としてもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る電力供給装置40は、クレーン1が有する電力負荷に電力を供給するために、クレーン1に搭載され、直流母線52を介して電力負荷と接続されて電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能なバッテリ42を備えている。そして、電力供給装置40は、商用電源から供給される交流電力を、PWMコンバータ41によって、第1電圧目標値の電圧とされると共に最大電力目標値を上限とした直流電力に変換し、直流母線52を介して電力負荷に供給させ、バッテリ充放電制御装置48によって、バッテリ42を第1電圧目標値よりも小さな第2電圧目標値の電圧で充放電させる。
従って、本実施形態に係る電力供給装置40は、商用電源からクレーン1へ供給する電力を低電力とし低圧送電を可能にできる。
【0055】
また、本実施形態に係る電力供給装置40は、バッテリ充放電制御装置48を電圧制御で作動させるため、負荷駆動インバータ43の制御応答で遅れなく、電力負荷が必要とする電力をバッテリ42から放電させたり、電力負荷から発生する回生電力をバッテリ42からへ充電することが可能となる。すなわち、バッテリ充放電制御装置48の電力制御応答の速度が高速となる。
【0056】
また、電力供給装置40は、例えば、何らかの電力指令値によってバッテリ42を充放電させるのではなく、電力負荷で消費される電力と最大電力目標値との差がそのままバッテリ42から充放電させる電力となるため、バッテリ42から充放電させる電力を直接的に制御できることとなる。
【0057】
また、負荷駆動インバータ43が、電力負荷が必要とする電力を示す電力指令値を出力等することなく、自立的に電力制御を行うこととなるので、バッテリ42に対する充放電制御ロジックを簡易な構成にできる。
【0058】
また、クレーン1が、地上給電から離脱し(給電ボックス31と接断)、バッテリ42で給電されてレーンチェンジする場合も、バッテリ充放電制御装置48は電圧制御を続けるだけでよく、特別な制御を必要としない。また、レーンチェンジが完了し、クレーン1が、地上給電状態に復帰する場合も、同様にバッテリ充放電制御装置48は電圧制御を続けるだけで良い。
また、地上給電が瞬停した場合も、特別な制御を必要とすることなく、バッテリ充放電制御装置48は、バッテリ42を放電させ、クレーン1を動作させることが可能である。
【0059】
さらに、本実施形態に係る電力供給装置40は、バッテリ42が充電を必要とし、かつ電力負荷で消費される電力が最大電力目標値未満の場合、PWMコンバータ41で変換された直流電力によってバッテリ42を充電させるので、商用電源からバッテリ42へ効率的な充電が可能となる。
【0060】
また、本実施形態に係る電力供給装置40は、バッテリ42が充電を必要とし、かつ電力負荷が回生し、電力負荷の回生電力の電圧が第2電圧目標値以上となった場合、回生電力によってバッテリ42を充電させるので、簡易な構成により、電力負荷の回生電力をバッテリ42に充電させることができる。
【0061】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0062】
例えば、上記各実施形態では、電力供給装置40をクレーン1に適用する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、電力供給装置40を交通車両等の他の車両に適用する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 クレーン
40 電力供給装置
41 PWMコンバータ
42 バッテリ
43 負荷駆動インバータ
48 バッテリ充放電制御装置
49 モータ
50 補機
52 直流母線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が有する電力負荷に電力を供給するために、該車両に搭載される電力供給装置であって、
商用電源から供給される交流電力を、第1目標値の電圧とすると共に予め定められた電力値を上限とした直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する変換手段と、
前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置を前記第1目標値よりも小さな第2目標値の電圧で充放電させる充放電制御手段と、
を備えた電力供給装置。
【請求項2】
前記充放電制御手段は、前記蓄電装置が充電を必要とし、かつ前記電力負荷で消費される電力が前記予め定められた電力値未満の場合、前記変換手段で変換された直流電力によって前記蓄電装置を充電させる請求項1記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記電力負荷は、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する回生が可能とされ、
前記充放電制御手段は、前記蓄電装置が充電を必要とし、かつ前記電力負荷が回生し、前記電力負荷の回生により生じる電力の電圧が前記第2目標値以上となった場合、該電力によって前記蓄電装置を充電させる請求項1又は請求項2記載の電力供給装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の電力供給装置と、
前記電力供給装置から供給される電力によって駆動する電力負荷と、
を備えたクレーン。
【請求項5】
車両が有する電力負荷に電力を供給するために、該車両に搭載される電力供給方法であって、
商用電源から供給される交流電力を、第1目標値の電圧とすると共に予め定められた電力値を上限とした直流電力に変換し、導線を介して前記電力負荷に供給する変換する第1工程と、
前記導線を介して前記電力負荷と接続され、前記電力負荷に直流電力を供給するための充放電可能な蓄電装置を、前記第1目標値よりも小さな第2目標値の電圧で充放電させる第2工程と、
を含む電力供給方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−10629(P2013−10629A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145817(P2011−145817)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(312005957)三菱重工マシナリーテクノロジー株式会社 (11)